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明細書 :塗膜の形成方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5092173号 (P5092173)
公開番号 特開2008-104933 (P2008-104933A)
登録日 平成24年9月28日(2012.9.28)
発行日 平成24年12月5日(2012.12.5)
公開日 平成20年5月8日(2008.5.8)
発明の名称または考案の名称 塗膜の形成方法
国際特許分類 B05D   3/04        (2006.01)
B05D   3/12        (2006.01)
FI B05D 3/04 C
B05D 3/12 D
請求項の数または発明の数 11
全頁数 15
出願番号 特願2006-289208 (P2006-289208)
出願日 平成18年10月24日(2006.10.24)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成18年5月15日~16日 社団法人 日本マリンエンジニアリング学会主催の「第74回(平成18年春季)マリンエンジニアリング学術講演会」において文書をもって発表
審査請求日 平成21年10月7日(2009.10.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
発明者または考案者 【氏名】原田 信弘
【氏名】中村 翼
【氏名】緒方 俊文
個別代理人の代理人 【識別番号】100080089、【弁理士】、【氏名又は名称】牛木 護
【識別番号】100137800、【弁理士】、【氏名又は名称】吉田 正義
【識別番号】100140394、【弁理士】、【氏名又は名称】松浦 康次
【識別番号】100119312、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 栄松
審査官 【審査官】岩本 昌大
参考文献・文献 特開平06-063180(JP,A)
特開2001-062383(JP,A)
特開2003-311210(JP,A)
特開2002-144231(JP,A)
調査した分野 B05D1/00-7/26
特許請求の範囲 【請求項1】
被塗装体の塗膜形成面に対して表面処理を施す表面処理工程と、この表面処理工程において表面処理を施した前記被塗装体の前記塗膜形成面へ塗膜を形成する塗膜形成工程とを備えた塗膜の形成方法であって、前記表面処理工程において、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で対向する電極間に存在する気体に高周波電圧を印加して発生させたプラズマを用いて表面処理を施し、前記被塗装体の少なくとも塗膜形成面は、予め下地処理を施され、前記下地処理は、フライス加工を含むことを特徴とする塗膜の形成方法。
【請求項2】
前記気体は、空気を含むことを特徴とする請求項1記載の塗膜の形成方法。
【請求項3】
前記気体は、空気及び放電ガスを含むことを特徴とする請求項1記載の塗膜の形成方法。
【請求項4】
前記放電ガスは、He,Ne,Ar,Kr,Xeのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項記載の塗膜の形成方法。
【請求項5】
前記電極の少なくとも一方の対面側は、誘電体で遮蔽されたものであることを特徴とする請求項1記載の塗膜の形成方法。
【請求項6】
前記高周波電圧の周波数は、10kHz以上であることを特徴とする請求項1記載の塗膜の形成方法。
【請求項7】
前記高周波電圧は、パルス成分を含むことを特徴とする請求項1又は記載の塗膜の形成方法。
【請求項8】
前記表面処理工程において、前記プラズマを前記被塗装体の少なくとも前記塗膜形成面に対して間接的に照射することを特徴とする請求項1記載の塗膜の形成方法。
【請求項9】
前記表面処理工程において、前記プラズマを前記被塗装体の少なくとも前記塗膜形成面に対して直接的に照射することを特徴とする請求項1記載の塗膜の形成方法。
【請求項10】
前記表面処理工程において、前記プラズマを前記被塗装体の少なくとも前記塗膜形成面に対して間欠的に照射することを特徴とする請求項1記載の塗膜の形成方法。
【請求項11】
前記表面処理工程において、前記プラズマを前記被塗装体の少なくとも前記塗膜形成面に対して連続的に照射することを特徴とする請求項1記載の塗膜の形成方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、塗膜の耐久性を向上させるための塗膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塗膜は、長時間にわたって被塗装体を保護して美観を保つだけでなく、被塗装体に必要に応じた機能を付与することができる。これらの効果は、1層の塗膜で実現することが困難なために、塗膜を多層に塗り重ねて形成することにより実現される。
【0003】
したがって、塗膜は、少なくとも下塗り塗膜と上塗り塗膜とから構成される。下塗り塗膜は、鋼材などの被塗装体の表面に形成する塗膜であり、長時間にわたって被塗装体の腐食又はサビの発生を防止する効果を有する。一方、上塗り塗膜は、下塗り塗膜などの表面に形成する塗膜であり、長時間にわたって塗膜全体を外部環境から保護して美観を保つ効果を有する。また、被塗装体に必要に応じた機能を付与する効果を有する。
【0004】
下塗り塗膜や上塗り塗膜などの塗膜の効果を維持するためには、塗膜の耐久性を高め、塗膜の劣化又は剥離を少なくすればよい。しかしながら、塗膜の劣化のしやすさは、塗膜の形成場所や使用環境により大きく異なる。例えば、被塗装体の接合部又は端部などのような場所又は異物などが存在する場所に塗膜を形成した場合や、海水に曝されるような環境で塗膜を使用した場合は、特に塗膜が劣化しやすくなる。さらに、塗膜の劣化にともない、塗膜が剥離しやすくなり、塗膜の効果を維持するのが困難になる。
【0005】
塗膜の劣化又は剥離により被塗装体にサビが生じてしまうと、塗膜の剥離が加速されるために、塗膜の耐久性が低くなる。図7は、サビのない塗膜形成面又はサビのある塗膜形成面を有する被塗装体に形成された塗膜の耐久性の一例を示すグラフである。グラフの横軸は塗膜の超音波洗浄時間であり、縦軸は塗膜の剥離率である。ここで、剥離率は、塗膜の面積に対する塗膜の剥離した面積である。グラフ中のサビなしはサビのない塗膜形成面を有する被塗装体に形成された塗膜を指し、サビありはサビのある塗膜形成面を有する被塗装体に形成された塗膜を指している。図7のグラフより、塗膜の剥離率が100%となるための洗浄時間は、サビのある塗膜形成面を有する被塗装体に形成した塗膜が65分程度であるのに対し、サビのない塗膜形成面を有する被塗装体に形成した塗膜が142分程度である。このように、被塗装体の塗膜形成面にサビや異物などがない方が、塗膜の耐久性は高くなる。 したがって、被塗装体の塗膜形成面に存在するサビ,汚れ,異物などを除去した後に塗膜を形成することによって、塗膜の耐久性を高める必要がある。
【0006】
被塗装体の塗膜形成面に存在するサビや異物などを除去する方法として、ブラスト処理により被塗装体の下地処理を行う方法(例えば、特許文献1)などがある。

【特許文献1】特開2003-311210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術において、被塗装体の塗膜形成面に存在するサビ,汚れ,異物などを除去する方法は、樹脂粒子からなる投射材を用いたブラスト処理により被塗装体の下地処理を行う方法である。この方法によれば、被塗装体を不必要に損傷することなく、被塗装体の塗膜形成面に存在する汚れや異物などを除去して清浄化することができる。さらに、塗膜形成面を適切な表面粗さまで粗面化して、塗膜との密着性を向上させることができる。これにより、塗膜の耐久性を高めることができる。
【0008】
しかしながら、下地処理時に被塗装体の塗膜形成面に投射材が残留した場合は、投射材自体が異物となってしまい、塗膜の耐久性が低くなる可能性がある。また、被塗装体に応じた投射材を選択しなければならない。さらに、下地処理の作業場所が限定されてしまうばかりか、処理後に投射材を回収又は廃棄しなければならないため、コストがかかる。
【0009】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、被塗装体の種類によらず、簡単でかつ低コストに塗膜の耐久性を高めることができる塗膜の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1記載の塗膜の形成方法は、被塗装体の塗膜形成面に対して表面処理を施す表面処理工程と、この表面処理工程において表面処理を施した前記被塗装体の前記塗膜形成面へ塗膜を形成する塗膜形成工程とを備えた塗膜の形成方法であって、前記表面処理工程において、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で対向する電極間に存在する気体に高周波電圧を印加して発生させたプラズマを用いて表面処理を施し、前記被塗装体の少なくとも塗膜形成面は、予め下地処理を施され、前記下地処理は、フライス加工を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項記載の塗膜の形成方法は、請求項1において、前記気体は、空気を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項記載の塗膜の形成方法は、請求項1において、前記気体は、空気及び放電ガスを含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項記載の塗膜の形成方法は、請求項6において、前記放電ガスは、He,Ne,Ar,Kr,Xeのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項記載の塗膜の形成方法は、請求項1において、前記電極の少なくとも一方の対面側は、誘電体で遮蔽されたものであることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項記載の塗膜の形成方法は、請求項1において、前記高周波電圧の周波数は、10kHz以上であることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項記載の塗膜の形成方法は、請求項1又は9において、前記高周波電圧は、パルス成分を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項記載の塗膜の形成方法は、請求項1において、前記表面処理工程において、前記プラズマを前記被塗装体の少なくとも前記塗膜形成面に対して間接的に照射することを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項記載の塗膜の形成方法は、請求項1において、前記表面処理工程において、前記プラズマを前記被塗装体の少なくとも前記塗膜形成面に対して直接的に照射することを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項10記載の塗膜の形成方法は、請求項1において、前記表面処理工程において、前記プラズマを前記被塗装体の少なくとも前記塗膜形成面に対して間欠的に照射することを特徴とする。
【0020】
本発明の請求項11記載の塗膜の形成方法は、請求項1において、前記表面処理工程において、前記プラズマを前記被塗装体の少なくとも前記塗膜形成面に対して連続的に照射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の請求項1によれば、被塗装体の塗膜形成面に対して表面処理を施す表面処理工程と、この表面処理工程において表面処理を施した前記被塗装体の前記塗膜形成面へ塗膜を形成する塗膜形成工程とを備えた塗膜の形成方法であって、前記表面処理工程において、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で対向する電極間に存在する気体に高周波電圧を印加して発生させたプラズマを用いて表面処理を施すことにより、被塗装体の種類によらず、簡単でかつ低コストに塗膜の耐久性を高めることができる。
【0022】
また、前記被塗装体の少なくとも塗膜形成面は、予め下地処理を施されたことにより、塗膜の耐久性をより高めることができる。
【0023】
また、前記下地処理は、フライス加工を含むことにより、塗膜の耐久性をより高めることができる。また、表面粗さをより精密に制御できる精密フライス加工を含む下地処理を行うことにより、塗膜の耐久性を極めて高くすることができる
【0024】
本発明の請求項によれば、前記気体は、空気を含むことにより、場所を問わずに、より低コストにプラズマを発生させて表面処理を行うことができる。
【0025】
本発明の請求項によれば、前記気体は、空気及び放電ガスを含むことにより、より効率的に安定なプラズマを発生させて表面処理を行うことができる。
【0026】
発明の請求項によれば、前記放電ガスは、He,Ne,Ar,Kr,Xeのうちの少なくとも1つを含むことにより、より効率的に安定なプラズマを発生させて表面処理を行うことができる。
【0027】
発明の請求項によれば、前記電極の少なくとも一方の対面側は、誘電体で遮蔽されたものであることにより、誘電体バリア放電を用いて大気圧下で安定したプラズマを発生させて表面処理を行うことができる。また、誘電体バリア放電を用いることにより、大気圧下で大型又は多量の被塗装体の表面処理が可能なだけでなく、装置寿命を長くすることができる。
【0028】
発明の請求項によれば、前記高周波電圧の周波数は、10kHz以上であることにより、大気圧又は大気圧近傍の圧力下においてプラズマを発生させて表面処理を行うことができる。
【0029】
発明の請求項によれば、前記高周波電圧は、パルス成分を含むことにより、より均一なプラズマを発生させて表面処理を行うことができ、被塗装体に対する損傷を極めて少なくすることができる。
【0030】
発明の請求項によれば、前記表面処理工程において、前記プラズマを前記被塗装体の少なくとも前記塗膜形成面に対して間接的に照射することにより、被塗装体への損傷を極めて少なくできる。
【0031】
発明の請求項によれば、前記表面処理工程において、前記プラズマを前記被塗装体の少なくとも前記塗膜形成面に対して直接的に照射することにより、表面処理の時間をより短くすることができるだけでなく、表面処理の時間を短くすることによって被塗装体への損傷を少なくすることができる。
【0032】
発明の請求項10によれば、前記表面処理工程において、前記プラズマを前記被塗装体の少なくとも前記塗膜形成面に対して間欠的に照射することにより、被塗装体への損傷を極めて少なくできるだけでなく、表面処理の程度を制御しやすくなる。
【0033】
発明の請求項11によれば、前記表面処理工程において、前記プラズマを前記被塗装体の少なくとも前記塗膜形成面に対して連続的に照射することにより、多量の被塗装体に対する表面処理の時間をより短くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
発明の塗膜の形成方法は、被塗装体の塗膜形成面に対して表面処理を施す表面処理工程と、この表面処理工程において表面処理を施した前記被塗装体の前記塗膜形成面へ塗膜を形成する塗膜形成工程とを備えた塗膜の形成方法であって、前記表面処理工程において、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で対向する電極間に存在する気体に高周波電圧を印加して発生させたプラズマを用いて表面処理を施すことを特徴とするものである。
【0035】
発明の被塗装体は、特定のものに限定されないが、鋼材であるのが好ましく、特に、造船用鋼材,一般構造用圧延鋼材,溶接用圧延鋼材,鋳鋼,鍛鋼などであるのが好ましい。また、被塗装体は、金属,セラミックス,ガラス,樹脂などからなる各種材料であってもよい。
【0036】
発明の塗膜形成面は、塗装により塗膜を形成することのできる面であれば特定のものに限定されないが、被塗装体の表面の少なくとも一部であるのが好ましい。
【0037】
発明の下地処理工程は、被塗装体の少なくとも塗膜形成面を下地処理できる工程であれば特定のものに限定されないが、被塗装体の少なくとも塗膜形成面に予め施すことのできる下地処理工程であるのが好ましい。また、下地処理は、フライス加工又はブラスト加工であってもよい。いずれの下地処理を行った場合においても、塗膜の耐久性をより高めることができる。特に、フライス加工により下地処理を行った場合は、塗膜の耐久性をより高めるだけでなく、表面粗さをより精密に制御できる精密フライス加工を含む下地処理を行うことにより、塗膜の耐久性を極めて高くすることができる。一方で、ブラスト加工により下地処理を行った場合は、塗膜の耐久性をより高めるだけでなく、大面積又は多量の被塗装体の下地処理が可能となる。
【0038】
発明の表面処理工程は、被塗装体の塗膜形成面に塗膜を形成するのを阻害するサビ,汚れ,異物などを除去し、塗膜形成面を適度な表面粗さまで粗面化することのできる表面処理方法であれば特定のものに限定されないが、大気圧又は大気圧近傍の圧力下において発生させたプラズマを用いた表面処理であるのが好ましい。大気圧又は大気圧近傍の圧力下において発生させたプラズマを用いた表面処理を行うことにより、被塗装体の種類によらず、簡単でかつ低コストに塗膜の耐久性を高めた塗膜を形成することができる。また、表面処理後に他の処理を行うことなく、塗膜形成工程を行うことができる。ここで、塗膜形成面上の汚れ,異物は、ミルスケール,水,油,埃,化学物質などである。特に、被塗装体又は被塗装体に形成された塗膜を海水に曝される環境で使用した後に再塗装を行う場合には、被塗装体,被塗装体の塗膜形成面又は被塗装体に形成された塗膜にフジツボ,フナクイムシ,藻類などの海中生物なども付着していることが考えられる。なお、表面処理工程は、非加熱の被塗装体に対して行ってもよく、これによりいかなる材質の被塗装体に対しても表面処理を行うことができる。
【0039】
発明の塗膜は、特定のものに限定されないが、防錆塗料から形成された塗膜,防汚塗料から形成された塗膜,防食塗料から形成された塗膜などが好ましい。防錆塗料から形成された塗膜である場合は、被塗装体のサビの発生が抑制できる。防汚塗料から形成された塗膜である場合は、被塗装体に汚れとなる水,油,埃,化学物質などの付着を抑制できる。防食塗料から形成された塗膜である場合は、被塗装体自体の腐蝕を抑制できる。
【0040】
発明の塗膜形成工程は、特定のものに限定されないが、塗料の塗布又は散布,塗料の硬化又は固化などを含む塗膜形成工程であるのが好ましい。
【0041】
発明の表面処理工程における圧力は、プラズマを発生させることのできる圧力であれば特定のものに限定されないが、大気圧又は大気圧近傍の圧力であるのが好ましい。大気圧又は大気圧近傍の圧力において発生させたプラズマを用いることにより、被塗装体の種類によらず、簡単でかつ低コストに塗膜の耐久性を高めた塗膜を形成することができる。
【0042】
発明の電極は、プラズマを発生させることのできる電極であれば特定のものに限定されないが、略平行に対向する一対の電極であるのが好ましい。また、電極の少なくとも一方の対面側は、誘電体で遮蔽された電極であるのが好ましい。電極の対面側を誘電体で遮蔽することにより、誘電体バリア放電を用いて大気圧又は大気圧近傍の圧力下で安定したプラズマを発生させて表面処理を行うことができる。また、誘電体バリア放電を用いることにより、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で大型又は多量の被塗装体の表面処理が可能なだけでなく、装置寿命を長くすることができる。ここで、誘電体バリア放電とは、電極の一方又は両方を誘電体で遮蔽することにより、電極又は誘電体へのストリーマやアークを防ぎつつ、電極又は誘電体間にプラズマを発生させる放電のことを指す。なお、電極の材料は、銀,白金,ステンレス,鉄などの金属であってもよい。また、電極の形状は、板状,円板状,円筒状,球状などの各種形状であってもよい。
【0043】
発明の気体は、プラズマを発生させることのできる気体であれば特定のものに限定されないが、空気を含む気体又は空気及び放電ガスを含む気体であるのが好ましい。気体として空気を含む気体を用いた場合は、場所を問わずに、より低コストにプラズマを発生させて表面処理を行うことができる。また、気体として空気及び放電ガスを含む気体を用いた場合は、より効率的に安定なプラズマを発生させて表面処理を行うことができる。ここで、プラズマを発生させるための気体は、主成分を空気としてもよく、空気を主成分とすることにより、場所を問わずに、より低コストにプラズマを発生させて表面処理を行うことができる。さらに、放電ガスは、特定のものに限定されないが、He,Ne,Ar,Kr,Xeのうちの少なくとも1つを含むガスであるのが好ましい。放電ガスとして、He,Ne,Ar,Kr,Xeのうちの少なくとも1つを含むガスを用いた場合は、より効率的に安定なプラズマを発生させて表面処理を行うことができる。
【0044】
発明の高周波電圧は、大気圧又は大気圧近傍の圧力下においてプラズマを発生させることのできる高周波電圧であれば特定のものに限定されないが、周波数が10kHz以上の高周波電圧であるのが好ましい。周波数が10kHz以上の高周波電圧を用いることにより、大気圧又は大気圧近傍の圧力下においてプラズマを発生させて表面処理を行うことができる。また、高周波電圧は、パルス成分を含む高周波電圧であるのが好ましい。パルス成分を含む高周波電圧を用いることにより、より均一なプラズマを発生させて表面処理を行うことができ、被塗装体に対する損傷を極めて少なくすることができる。
【0045】
本発明のプラズマは、被塗装体上の汚れや異物などを除去し、塗膜と被塗装体との密着性を確保するための表面処理工程に用いることのできるプラズマであれば特定のものに限定されないが、大気圧又は大気圧近傍の圧力下において生じるプラズマが好ましい。また、プラズマを被塗装体の少なくとも塗膜形成面に対して間接的,直接的,間欠的又は連続的に照射してもよい。プラズマを被塗装体の少なくとも塗膜形成面に対して間接的に照射した場合は、被塗装体への損傷を極めて少なくできる。プラズマを被塗装体の少なくとも塗膜形成面に対して直接的に照射した場合は、表面処理の時間をより短くすることができるだけでなく、表面処理の時間を短くすることによって被塗装体への損傷を少なくすることができる。プラズマを被塗装体の少なくとも塗膜形成面に対して間欠的に照射した場合は、被塗装体への損傷を極めて少なくできるだけでなく、表面処理の程度を制御しやすくなる。プラズマを被塗装体の少なくとも塗膜形成面に対して連続的に照射した場合は、多量の被塗装体に対する表面処理の時間をより短くすることができる。
【0046】
以下、具体的な実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0047】
以下、本発明の塗膜の形成方法の一実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0048】
本実施例では、被塗装体の塗膜形成面に対して、下地処理を施す下地処理工程を行った後に、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で対向する電極間に存在する気体に高周波電圧を印加して発生させたプラズマを用いて表面処理を施す表面処理工程を行った。さらに、被塗装体の塗膜形成面に塗膜を形成する塗膜形成工程を行った。
【0049】
まず、被塗装体の塗膜形成面に対して下地処理工程を行った。
【0050】
本実施例では、下地処理工程としてブラスト加工又はフライス加工を行った。
【0051】
ここで、ブラスト加工は砥粒として砂粒などを吹き付けて被処理体の表面を研磨する加工法のことであり、フライス加工は工具の外周面又は端面などに切れ刃を持つフライスを回転させて被処理体の表面又は溝を切削する加工法ことである。本実施例でのブラスト加工は、砥粒として研磨砂を用いたサンドブラストであるが、砥粒として、金属,セラミックス,ガラス,樹脂などからなる材料を用いたブラストであってもよい。
【0052】
次に、被塗装体の塗膜形成面に対して表面処理工程を行った。
【0053】
本実施例では、表面処理工程としてプラズマ照射による表面処理を行った。
【0054】
図1は、本実施例の表面処理工程に用いるプラズマ表面処理装置を示す。
【0055】
図1において、1は電圧を印加してプラズマを発生させるための電極である。2は誘電体バリア放電を起こさせるための誘電体であり、対向する電極1の少なくとも一方の対面側は誘電体2で遮蔽されるように構成されている。3は電極カバーであり、電極1を絶縁するように構成されている。4は表面処理を施す被塗装体としての鋼材である。5は電極1に高周波電圧を供給する電源である。なお、電源より供給される高周波電圧の周波数やパルス成分の有無は鋼材4の大きさ、設置状態又は雰囲気ガスなどによって変化する。そこで、電源5は制御回路6により調整可能に構成されている。また、制御回路6は発生させるプラズマモードを切替え可能に構成されている。さらに、図示しないが、電極1は水冷式の冷却管により冷却されるように構成されている。なお、図1においては、鋼材4は誘電体2上に配置されることにより、発生したプラズマを直接的に照射する構成になっているが、間接的に照射する構成にしてもよい。発生したプラズマを間接的に照射するためには、鋼材4を誘電体2上に配置せず、電極1間外又は誘電体2間外の位置に、電極1の長さ方向に対して垂直の向きになるように配置してもよい。
【0056】
本実施例では、上記のプラズマ表面処理装置における電極1はAl板により構成した。Al板の大きさは、長さ30mm×幅150mm×厚さ14mmであった。また、電極1を遮蔽した誘電体2はAl板により構成し、電極1の両方を遮蔽するように構成した。Al板の大きさは、長さ100mm×幅200mm×厚さ2mmであった。この誘電体2間の距離は4mmである。さらに、電極カバー3はアクリル樹脂により構成した。加えて、鋼材4は一般構造用圧延鋼材(SS400)を用いた。また、鋼材4の大きさは、幅15mm×長さ20mm×厚さ11mmであった。なお、誘電体の材料は、セラミックス又はガラスであってもよく、酸化物系,窒化物系,炭化物系又は珪化物系のセラミックスやケイ酸塩系,ホウ酸塩系,リン酸塩系などのガラスであってもよい。また、誘電体の形状は、電極1の少なくとも対面側を遮蔽することのできるものであればよく、平板,円板,円筒状,球状などの各種形状あってもよい。さらに、鋼材4の厚さは数mm~数10cmであってもよい。
【0057】
上記のプラズマ表面処理装置において、プラズマを発生させるための気体は、電極1間に存在する気体であり、空気又は空気と放電ガスとの混合気体を用いた。放電ガスとしてのHeの流量は、1~数L/minとした。
【0058】
プラズマ表面処理装置において、プラズマを発生させたときの代表的な電極1間に印加した電圧は、誘電体2間距離が4mmであるのに対して、印加電圧の周波数が45kHz、印加電圧が8kVであった。なお、印加電圧の周波数、印加電圧又は電極1間電流などは、鋼材4の大きさ,設置状態,電極1間距離又は雰囲気ガスなどにより変化するが、印加電圧の周波数は10kHz以上であればよく、印加電圧は、1~数kVであってもよい。
【0059】
このように誘電体2間に発生させたプラズマを非加熱の鋼材4に直接的に照射した。照射時間は1~60秒であった。なお、プラズマは鋼材4に対して間接的、間欠的又は連続的に照射してもよい。ここで、本実施例でのプラズマのモードはRIE(Reactive Ion Etching)方式及びDP(Direct Plasma)方式の両方を用いている。これにより、物理的及び化学的に表面処理を行うことができる。
【0060】
表面処理工程としてプラズマ照射により表面処理を行った鋼材4及び未処理の鋼材4の形態観察を行った。形態観察は、走査電子顕微鏡(SEM)法を用いて行った。図2は、下地処理工程としてサンドブラスト加工を施した鋼材4の表面SEM像である。(A)は表面処理を施していない鋼材4の表面SEM像であり、(B)はプラズマにより表面処理を施した鋼材4の表面SEM像である。
【0061】
図2のSEM像より、鋼材4に対してプラズマによる表面処理を施しても、鋼材4の形態はほとんど変化しないを確認した。また、下地処理工程としてフライス加工を施した鋼材4に関しても、プラズマによる表面処理を施すことによる形態変化はほとんどないことを確認した。なお、プラズマによる表面処理を施すことにより、鋼材4の表面をわずかに塑性破壊させて、部分的に表面形態を変化させてもよい。これにより、鋼材4を適度に粗面化してもよい。
【0062】
さらに、被塗装体の塗膜形成面に対して塗膜形成工程を行った。
【0063】
本実施例では、塗膜形成工程として被塗装体の塗膜形成面に防錆塗料からなる塗膜を形成した。
【0064】
以上のように形成した塗膜の耐久性の評価を行った。
【0065】
塗膜の耐久性の評価は、塗膜を超音波洗浄した時間に対する塗膜の剥離率により行った。評価に用いた超音波洗浄器の超音波出力は80Wであり、超音波周波数は47kHzである。また、剥離率は、塗膜の面積に対する塗膜の剥離した面積である。
【0066】
本実施例の超音波洗浄を用いた塗膜の耐久性の評価は、加速試験の意味をもつ。したがって、比較対象となる塗膜の寿命が10年であり、塗膜の剥離率一定としたときの塗膜の洗浄時間が比較対象となる塗膜に比べて50%増の場合は、塗膜の寿命は15年以上と推定することができる。
【0067】
図3は、下地処理後にプラズマによる表面処理を施して塗膜を形成した場合の塗膜の耐久性を示すグラフである。グラフの横軸は塗膜の超音波洗浄時間であり、縦軸は塗膜の剥離率である。グラフ中のプラズマ照射なしは下地処理としてフライス加工を施した被塗装体の塗膜形成面に対してプラズマによる表面処理を行わずに形成した塗膜を指し、プラズマ照射ありは下地処理としてフライス加工を施した被塗装体の塗膜形成面に対してプラズマによる表面処理を行なった後に形成した塗膜を指している。また、いずれの塗膜も、防錆塗料からなる塗膜を指している。
【0068】
図3のグラフより、塗膜の剥離率が100%となるための超音波洗浄時間は、プラズマ照射なしが142分程度であったのに対し、プラズマ照射ありが215分程度であった。したがって、塗膜の耐久性は、被塗装体の塗膜形成面に対してプラズマによる表面処理を行なった方が、高くなることを確認した。また、プロットを直線近似して得られる傾きは、プラズマ照射なしに対してプラズマ照射ありの方が緩やかであった。特に、プラズマ照射ありの傾きは、79分以降により緩やかになった。さらに、単位時間当たりの剥離率は、被塗装体の塗膜形成面に対してプラズマによる表面処理を行なった方が、低くなることを確認した。
【0069】
したがって、塗膜の耐久性は、被塗装体の塗膜形成面に対してプラズマによる表面処理を行なった方が、高くなることを確認した。
【0070】
図3の結果に対する再現性及び実用性を確認するために、塗膜を長時間海中曝露した後に、塗膜の耐久性を評価した。
【0071】
図4は、下地処理後にプラズマによる表面処理を施して塗膜を形成し、長時間海中曝露した場合の塗膜の耐久性を示すグラフである。耐久性の評価は、塗膜を2ヶ月間海中曝露した後に行われた。グラフの横軸は塗膜の超音波洗浄時間であり、縦軸は塗膜の剥離率である。グラフ中のプラズマ照射なしは下地処理としてフライス加工を施した被塗装体の塗膜形成面に対してプラズマによる表面処理を行わずに形成した塗膜を指し、プラズマ照射ありは下地処理としてフライス加工を施した被塗装体の塗膜形成面に対してプラズマによる表面処理を行なった後に形成した塗膜を指している。また、いずれの塗膜も、防錆塗料からなる塗膜を指している。
【0072】
図4のグラフより、塗膜の剥離率が100%となるための超音波洗浄時間は、プラズマ照射なしが60分程度であったのに対し、プラズマ照射ありが90分程度であった。図3と同様に、塗膜の耐久性は、被塗装体の塗膜形成面に対してプラズマによる表面処理を行なった方が、高くなることを確認した。また、プロットを直線近似して得られる傾きは、プラズマ照射なしに対してプラズマ照射ありの方が緩やかであった。この傾向は、特に38分以降により顕著になった。図3及び図4の結果より、単位時間当たりの剥離率は、被塗装体の塗膜形成面に対してプラズマによる表面処理を行なった方が、低くなることを確認した。
【0073】
したがって、塗膜を長時間海中曝露した場合においても、塗膜の耐久性は、被塗装体の塗膜形成面に対してプラズマによる表面処理を行なった方が、高くなることを確認した。
【0074】
さらに、塗膜形成面の下地処理による塗膜の耐久性を評価した。
【0075】
図5は、各種下地処理後にプラズマによる表面処理を施して塗膜を形成した場合の塗膜の耐久性を示すグラフである。グラフの横軸は塗膜の超音波洗浄時間であり、縦軸は塗膜の剥離率である。グラフ中のサンドブラスト加工,サンドブラスト加工+プラズマ照射,フライス加工,フライス加工+プラズマ照射のうち、サンドブラスト加工は、下地処理としてサンドブラスト加工を施した被塗装体の塗膜形成面に対してプラズマによる表面処理を行わずに形成した塗膜,サンドブラスト加工+プラズマ照射は、下地処理としてサンドブラスト加工を施した被塗装体の塗膜形成面に対してプラズマによる表面処理を行った後に形成した塗膜,フライス加工は、下地処理としてフライス加工を施した被塗装体の塗膜形成面に対してプラズマによる表面処理を行わずに形成した塗膜,フライス加工+プラズマ照射は、下地処理としてフライス加工を施した被塗装体の塗膜形成面に対してプラズマによる表面処理を行った後に形成した塗膜を指している。また、いずれの塗膜も、防錆塗料からなる塗膜を指している。
【0076】
図5のグラフより、塗膜の剥離率が100%となるための超音波洗浄時間は、サンドブラスト加工が103分程度,サンドブラスト加工+プラズマ照射が125分程度,フライス加工が144分程度,フライス加工+プラズマ照射が210分程度であった。また、プロットを直線近似して得られる傾きは、サンドブラスト加工+プラズマ照射に対してフライス加工+プラズマ照射の方が緩やかであった。図5の結果に加えて、下地処理としてフライス加工を用いた場合は、サンドブラスト加工に比べて被塗装体の塗膜形成面の表面粗さが小さくなることから、単位時間当たりの剥離率は、比較的表面粗さの小さい被塗装体の塗膜形成面に対してプラズマによる表面処理を行なった方が、低くなることを確認した。
【0077】
したがって、塗膜の耐久性は、比較的表面粗さの小さい被塗装体の塗膜形成面に対してプラズマによる表面処理を行なった方が、高いことを確認した。
【0078】
以上の結果を踏まえて、被塗装体の塗膜形成面の表面粗さを精密に制御できる下地処理を施し、プラズマによる表面処理を施した後に塗膜を形成した場合について評価した。
【0079】
図6は、精密な下地処理後にプラズマによる表面処理を施して塗膜を形成した場合の塗膜の耐久性を示すグラフである。精密な下地処理として精密フライス加工を用いた。精密フライス加工を用いた場合の表面粗さは1~2μm程度である。ここで、表面粗さは中心線平均粗さである。グラフの横軸は塗膜の超音波洗浄時間であり、縦軸は塗膜の剥離率である。グラフ中のプラズマ照射なし,プラズマ照射あり,精密フライス加工+プラズマ照射のうち、プラズマ照射なし及びプラズマ照射ありは図3のグラフと同様の処理を施した塗膜を指し、精密フライス加工+プラズマ照射は下地処理としてより精密なフライス加工を施した被塗装体の塗膜形成面に対してプラズマによる表面処理を行なった後に形成した塗膜を指している。また、いずれの塗膜も、防錆塗料からなる塗膜を指している。
【0080】
図6のグラフより、塗膜の剥離率が60%となるための塗膜の超音波洗浄時間は、プラズマ照射なしが73分程度、プラズマ照射ありが70分程度と同程度であるのに対し、精密フライス加工+プラズマ照射が125分程度であった。また、プロットを直線近似して得られる傾きは、プラズマ照射なし又はプラズマ照射ありに対して精密フライス加工+プラズマ照射の方が緩やかであることを確認した。特に、塗膜の洗浄初期段階における傾きが緩やかであることを確認した。
【0081】
したがって、塗膜の耐久性は、被塗装体の塗膜形成面の表面粗さとなる中心線平均粗さが1~数μm程度である方が高いことを確認した。また、これにより、塗膜の洗浄初期段階における塗膜の耐久性が飛躍的に向上することを確認した。
【0082】
以上のように、被塗装体としての鋼材4の塗膜形成面に対して表面処理を施す表面処理工程と、この表面処理工程において表面処理を施した鋼材4の前記塗膜形成面へ塗膜を形成する塗膜形成工程とを備えた塗膜の形成方法であって、前記表面処理工程において、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で対向する電極1間に存在する気体に高周波電圧を印加して発生させたプラズマを用いて表面処理を施すことにより、被塗装体の種類によらず、簡単でかつ低コストに塗膜の耐久性を高めることができる。
【0083】
また、鋼材4の少なくとも塗膜形成面は、予め下地処理を施されたことにより、塗膜の耐久性をより高めることができる。
【0084】
また、前記下地処理は、フライス加工を含むことにより、塗膜の耐久性をより高めることができる。また、表面粗さをより精密に制御できる精密フライス加工を含む下地処理を行うことにより、塗膜の耐久性を極めて高くすることができる。
【0085】
また、前記下地処理は、ブラスト加工を含むことにより、塗膜の耐久性をより高めることができる。また、大面積又は多量の被塗装体の下地処理が可能となる。
【0086】
また、前記気体は、空気を含むことにより、場所を問わずに、より低コストにプラズマを発生させて表面処理を行うことができる。
【0087】
また、前記気体は、空気及び放電ガスを含むことにより、より効率的に安定なプラズマを発生させて表面処理を行うことができる。
【0088】
また、前記放電ガスは、He,Ne,Ar,Kr,Xeのうちの少なくとも1つを含むことにより、より効率的に安定なプラズマを発生させて表面処理を行うことができる。
【0089】
また、電極1の少なくとも一方の対面側は、誘電体2で遮蔽されたものであることにより、誘電体バリア放電を用いて大気圧下で安定したプラズマを発生させて表面処理を行うことができる。また、誘電体バリア放電を用いることにより、大気圧下で大型又は多量の被塗装体の表面処理が可能なだけでなく、装置寿命を長くすることができる。
【0090】
また、前記高周波電圧の周波数は、10kHz以上であることにより、大気圧又は大気圧近傍の圧力下においてプラズマを発生させて表面処理を行うことができる。
【0091】
また、前記高周波電圧は、パルス成分を含むことにより、より均一なプラズマを発生させて表面処理を行うことができ、被塗装体に対する損傷を極めて少なくすることができる。
【0092】
また、前記表面処理工程において、前記プラズマを鋼材4の少なくとも前記塗膜形成面に対して間接的に照射することにより、被塗装体への損傷を極めて少なくできる。
【0093】
また、前記表面処理工程において、前記プラズマを鋼材4の少なくとも前記塗膜形成面に対して直接的に照射することにより、表面処理の時間をより短くすることができるだけでなく、表面処理の時間を短くすることによって被塗装体への損傷を少なくすることができる。
【0094】
また、前記表面処理工程において、前記プラズマを鋼材4の少なくとも前記塗膜形成面に対して間欠的に照射することにより、被塗装体への損傷を極めて少なくできるだけでなく、表面処理の程度を制御しやすくなる。
【0095】
また、前記表面処理工程において、前記プラズマを鋼材4の少なくとも前記塗膜形成面に対して連続的に照射することにより、多量の被塗装体に対する表面処理の時間をより短くすることができる。
【0096】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、本発明の思想を逸脱しない範囲で種々の変形実施が可能である。例えば、上記実施例では、被塗装体の塗膜形成面の表面処理工程として大気圧又は大気圧近傍下における開放型のプラズマ表面処理を用いたが、これに限らず、密閉型のプラズマ表面処理などを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の塗膜の形成方法によるプラズマを用いた表面処理工程を説明する図である。
【図2】本発明の塗膜の形成方法による下地処理工程としてサンドブラスト加工を施した鋼材の表面SEM像である。
【図3】本発明の塗膜の形成方法による下地処理後にプラズマによる表面処理を施して塗膜を形成した場合の塗膜の耐久性を示すグラフである。
【図4】本発明の塗膜の形成方法による下地処理後にプラズマによる表面処理を施して塗膜を形成し、長時間海中曝露した場合の塗膜の耐久性を示すグラフである。
【図5】本発明の塗膜の形成方法による各種下地処理後にプラズマによる表面処理を施して塗膜を形成した場合の塗膜の耐久性を示すグラフである。
【図6】本発明の塗膜の形成方法による精密な下地処理後にプラズマによる表面処理を施して塗膜を形成した場合の塗膜の耐久性を示すグラフである。
【図7】従来の被塗装体に形成された塗膜の耐久性の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0098】
1 電極
2 誘電体
4 鋼材(被塗装体)
図面
【図1】
0
【図3】
1
【図4】
2
【図5】
3
【図6】
4
【図7】
5
【図2】
6