TOP > 国内特許検索 > 工業製品の生産支援プログラム > 明細書

明細書 :工業製品の生産支援プログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4971074号 (P4971074)
公開番号 特開2008-084306 (P2008-084306A)
登録日 平成24年4月13日(2012.4.13)
発行日 平成24年7月11日(2012.7.11)
公開日 平成20年4月10日(2008.4.10)
発明の名称または考案の名称 工業製品の生産支援プログラム
国際特許分類 G06F  17/50        (2006.01)
G06Q  50/04        (2012.01)
FI G06F 17/50 604A
G06F 17/60 106
請求項の数または発明の数 6
全頁数 10
出願番号 特願2007-218241 (P2007-218241)
出願日 平成19年8月24日(2007.8.24)
優先権出願番号 2006230052
優先日 平成18年8月28日(2006.8.28)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成22年8月3日(2010.8.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
発明者または考案者 【氏名】田辺 郁男
個別代理人の代理人 【識別番号】100106770、【弁理士】、【氏名又は名称】円城寺 貞夫
【識別番号】100093687、【弁理士】、【氏名又は名称】富崎 元成
審査官 【審査官】伊知地 和之
参考文献・文献 特開2001-325307(JP,A)
特開2006-018681(JP,A)
特開2004-210106(JP,A)
特開2005-250802(JP,A)
“理想の設計がここにある 品質工学とCAEの最強タッグ”,NIKKEI DIGITAL ENGINEERING,日本,日経BP社,2003年 9月15日,第70号,p.92-99
調査した分野 G06F 17/50
G06Q 50/04
CSDB(日本国特許庁)
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
工業製品の特性値を調整するための設計パラメータを制御因子とし、前記工業製品の前記特性値に誤差を生じさせるパラメータを誤差因子として、複数の前記制御因子のそれぞれに設定された複数の水準の組み合わせの中から選択された一部の組み合わせに対する前記特性値を求める手順(203,303)と、
前記一部の組み合わせについて、前記誤差因子による前記特性値の変動を求める手順(203,303)と、
前記一部の組み合わせについての前記特性値とその変動から、加法性により前記制御因子の全ての水準の全ての組み合わせについて前記特性値の平均値と標準偏差を求める手順(204,304)と、
前記制御因子の全ての水準の全ての組み合わせについて前記特性値の度数分布を求める手順(205,305)と、
前記工業製品の受注条件、前記工業製品の生産条件および生産者の希望条件を入力する手順(206,306)と、
前記度数分布により、前記希望条件を満足する前記制御因子の水準の組み合わせを抽出する手順(208,308)とをコンピュータに実行させるための工業製品の生産支援プログラム。
【請求項2】
請求項に記載した工業製品の生産支援プログラムであって、
前記特性値の平均値と標準偏差を求める手順(304)は、前記誤差因子に設定された複数の水準に対応する前記特性値と当該水準に対して設定された度数に基づいてそれらを求めるものである工業製品の生産支援プログラム。
【請求項3】
請求項に記載した工業製品の生産支援プログラムであって、
前記誤差因子の複数の水準に対する度数は、正規分布に基づいて設定されたものである工業製品の生産支援プログラム。
【請求項4】
請求項に記載した工業製品の生産支援プログラムであって、
前記誤差因子の複数の水準に対する度数は、最尤値を境界に標準偏差の異なる2つの正規分布を合成した分布に基づいて設定されたものである工業製品の生産支援プログラム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載した工業製品の生産支援プログラムであって、
前記一部の組み合わせは、直交表に基づいて選択されたものである工業製品の生産支援プログラム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載した工業製品の生産支援プログラムであって、
前記特性値の度数分布を求める手順(205,305)は、度数分布が正規分布であるとして求めるものである工業製品の生産支援プログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、品質工学に基づいて、最小限の実験やコンピュータ・シミュレーションにより工業製品の最適な設計パラメータを求めるとともに、生産者の希望条件を満足する最適な設計パラメータを求めることができる工業製品の生産支援方法およびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、工業製品の開発・生産に対して、期間の短縮化および低コスト化の要求が厳しくなっており、そのための効果的な手法が望まれている。一方、品質工学(タグチ・メソッドとも呼ばれる。)の手法は、使用条件や他の誤差要因による特性への影響が少なく、安定性の高い工業製品を設計するための手法である。この品質工学の手法の概要は図1に示されている。図1を参照して品質工学の手法の概要を説明する。
【0003】
工業製品の設計において、設計者が任意に設定可能な設計パラメータを制御因子とし、動作特性等の結果に誤差を生じさせるパラメータを誤差因子とする。手順101では、まず制御因子と誤差因子にどのようなパラメータを割り当てるかを決定し、複数の制御因子にそれぞれに複数の水準(数値や工程の種類など)を設定する。誤差因子にもそれぞれ複数の水準を設定する。それらの水準の組み合わせに対する特性値を実験により求めるのである。
【0004】
各水準の組み合わせは直交表に基づいて選択される。すなわち、手順102で、直交表に複数の制御因子の各水準を割り付ける。そして、手順103で、直交表に基づいて実験(コンピュータによるシミュレーションも含む)を行い、その結果の特性値を求める。
【0005】
実験を行う各水準の組み合わせは、組み合わせ全体に比較すると極めて少数の一部の組み合わせのみが選択される。例えば、標準L18直交表は、制御因子として8パラメータの複数の水準(1パラメータが2水準、7パラメータが3水準)の組み合わせを実験・評価することができるものである。各水準の組み合わせ全体は4374通り存在するが、標準L18直交表ではその中から18通りの組み合わせのみが選択されている。この18通りの組み合わせは、各パラメータの各水準に対する評価が均等に行えるように選択されている。これにより、各パラメータの各水準に対して均等で妥当な評価を行うことができ、また、そのための時間を大幅に短縮することができる。
【0006】
次に、手順104で、各水準の組み合わせに対する実験結果の特性のSN比(誤差因子による特性値のばらつきを示す値)と感度(特性値の平均値に関連する値)を計算する。具体的には、SN比は(特性値の平均値の二乗)/(特性値の分散)をデシベル[dB]表記とした値であり、感度は特性値の平均値の二乗をデシベル[dB]表記とした値である。そして、手順105で、SN比と感度に関して最適な水準の組み合わせを選択する。すなわち、誤差因子に対して安定性(ロバスト性)が高く、目的とする特性(望目特性)に近くなるような制御因子の水準の組み合わせを決定する。
【0007】
そして、手順106で、その最適な組み合わせが工業製品としての諸条件を満足するか否かを判断し、満足するものであれば、その設計によって工業製品を生産すればよい。諸条件を満足しないのであれば根本的に設計や生産工程を変更する必要がある。つまり、手順106で条件を満足しない場合は、手順101からやり直すことになる。また、この品質工学の手法では、手順107として示すように、加法性を利用して全ての水準の全ての組み合わせについてSN比と感度を推定することができる。すなわち、全ての水準の全ての組み合わせについて特性値の平均値と特性値の標準偏差を推定することができる。
【0008】
図1に示すような、品質工学の手法を用いた開発がうまく成功すれば、誰がどのような使用条件で使用しても、使い勝手がよく希望の成果が得られるような工業製品を開発できる。しかし、望目特性の近辺に特性値のばらつきが極めて小さくなるような設計パラメータの水準の組み合わせがある場合は少なく、この品質工学の手法にも多くの制限がある。
【0009】
品質工学の手法を利用した設計・製造方法としては、下記の特許文献1が公知である。特許文献1には、成形品の温度分布のばらつきを評価特性として用い、その温度分布のばらつきを最小とする最適解を求め、この最適解に基づいて金型設計を行い、金型を製造したうえ射出成形を行うことが記載されている。また、成形品の温度分布のばらつきを評価特性として、品質工学の手法を用いて主要パラメータを抽出し、抽出されたパラメータのSN比が大きい値を選択することにより成形品の温度分布のばらつきを最小とする最適解を求めることが記載されている。

【特許文献1】特開2004-268318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のように、製品開発における最適設計に関しては、品質工学の手法が有効に利用でき、このような品質工学の手法を利用するためのコンピュータ・ソフトウェアも存在している。しかし、受注条件(製品仕様、価格、納期、個数など)、生産条件(材料費、加工費、ランニングコストなど)、生産者の希望条件(製品精度、生産コスト、良品率など)も考慮した、最適な生産マネージメントのためのパラメータ決定方法は今までになく、そのためのコンピュータ・ソフトウェアも存在していなかった。
【0011】
そこで、本発明は、品質工学に基づいて、最小限の実験やコンピュータ・シミュレーションにより工業製品の最適な設計パラメータを求めるとともに、生産者の希望条件を満足する最適な設計パラメータを短時間で求めることができる工業製品の生産支援方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の工業製品の生産支援方法は、工業製品の特性値を調整するための設計パラメータを制御因子とし、前記工業製品の前記特性値に誤差を生じさせるパラメータを誤差因子として、複数の前記制御因子のそれぞれに設定された複数の水準の組み合わせの中から選択された一部の組み合わせに対する前記特性値を求める手順と、前記一部の組み合わせについて、前記誤差因子による前記特性値の変動を求める手順と、前記一部の組み合わせについての前記特性値とその変動から、加法性により前記制御因子の全ての水準の全ての組み合わせについて前記特性値の平均値と標準偏差を求める手順と、前記制御因子の全ての水準の全ての組み合わせについて前記特性値の度数分布を求める手順と、前記工業製品の受注条件、前記工業製品の生産条件および生産者の希望条件を入力する手順と、前記度数分布により、前記希望条件を満足する前記制御因子の水準の組み合わせを抽出する手順とを有するものである。
【0013】
また、上記の工業製品の生産支援方法において、前記特性値の平均値と標準偏差を求める手順は、前記誤差因子に設定された複数の水準に対応する前記特性値と当該水準に対して設定された度数に基づいてそれらを求めるものであることが好ましい。
【0014】
また、上記の工業製品の生産支援方法において、前記誤差因子の複数の水準に対する度数は、正規分布に基づいて設定されたものとすることができる。
【0015】
また、上記の工業製品の生産支援方法において、前記誤差因子の複数の水準に対する度数は、最尤値を境界に標準偏差の異なる2つの正規分布を合成した分布に基づいて設定されたものとすることができる。
【0016】
また、上記の工業製品の生産支援方法において、前記一部の組み合わせは、直交表に基づいて選択されたものであることが好ましい。
【0017】
また、上記の工業製品の生産支援方法において、前記特性値を求める手順と、前記特性値の変動を求める手順とは、コンピュータによるシミュレーションによって前記特性値およびその変動を求めるものであることが好ましい。
【0018】
また、上記の工業製品の生産支援方法において、前記特性値の度数分布を求める手順は、度数分布が正規分布であるとして求めるものであることが好ましい。
【0019】
また、本発明の工業製品の生産支援プログラムは、工業製品の特性値を調整するための設計パラメータを制御因子とし、前記工業製品の前記特性値に誤差を生じさせるパラメータを誤差因子として、複数の前記制御因子のそれぞれに設定された複数の水準の組み合わせの中から選択された一部の組み合わせに対する前記特性値を求める手順と、前記一部の組み合わせについて、前記誤差因子による前記特性値の変動を求める手順と、前記一部の組み合わせについての前記特性値とその変動から、加法性により前記制御因子の全ての水準の全ての組み合わせについて前記特性値の平均値と標準偏差を求める手順と、前記制御因子の全ての水準の全ての組み合わせについて前記特性値の度数分布を求める手順と、前記工業製品の受注条件、前記工業製品の生産条件および生産者の希望条件を入力する手順と、前記度数分布により、前記希望条件を満足する前記制御因子の水準の組み合わせを抽出する手順とをコンピュータに実行させるものである。
【0020】
また、上記の工業製品の生産支援プログラムにおいて、前記特性値の平均値と標準偏差を求める手順は、前記誤差因子に設定された複数の水準に対応する前記特性値と当該水準に対して設定された度数に基づいてそれらを求めるものであることが好ましい。
【0021】
また、上記の工業製品の生産支援プログラムにおいて、前記誤差因子の複数の水準に対する度数は、正規分布に基づいて設定されたものとすることができる。
【0022】
また、上記の工業製品の生産支援プログラムにおいて、前記誤差因子の複数の水準に対する度数は、最尤値を境界に標準偏差の異なる2つの正規分布を合成した分布に基づいて設定されたものとすることができる。
【0023】
また、上記の工業製品の生産支援プログラムにおいて、前記一部の組み合わせは、直交表に基づいて選択されたものであることが好ましい。
【0024】
また、上記の工業製品の生産支援プログラムにおいて、前記特性値の度数分布を求める手順は、度数分布が正規分布であるとして求めるものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、以上のように構成されているので、以下のような効果を奏する。
【0026】
少数の実験により、生産者の希望条件を満足する制御因子の各水準の組み合わせを適切に短時間で選択することができ、工業製品の開発・生産の期間の短縮化および低コスト化を実現することが可能である。
【0027】
誤差因子の各水準に度数を設定することにより、誤差因子の値の統計的分布を考慮に入れて、特性値の平均値および標準偏差を高精度に求めることができる。
【0028】
コンピュータによるシミュレーションを利用すれば、実際に実験設備を使用した実験を全く行うことなく、短時間で最適な水準の組み合わせを求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図2は、本発明の第1実施形態の生産支援方法の手順を示すフローチャートである。この生産支援方法の各手順は、コンピュータ上で実行される。前述の品質工学の手法と同様に、工業製品の設計において、設計者が任意に設定可能な設計パラメータを制御因子とし、動作特性等の結果に誤差を生じさせるパラメータを誤差因子とする。手順201では、まず制御因子と誤差因子にどのようなパラメータを割り当てるかを決定し、複数の制御因子にそれぞれに複数の水準(数値や工程の種類など)を設定し、1つ以上の誤差因子にもそれぞれ複数の水準を設定する。
【0030】
次に、手順202で、直交表(例えば、標準L18直交表など)に複数の制御因子の各水準を割り付ける。すなわち、各水準の組み合わせは直交表に基づいて選択される。そして、手順203で、直交表に基づいて実験(コンピュータによるシミュレーションも含む)を行い、その結果の特性値を求める。すなわち、制御因子の各水準の組み合わせによる特性値を求めると同時に、誤差因子による特性値の変動を求めることになる。実験を行う各水準の組み合わせは、組み合わせ全体に比較すると極めて少数の一部の組み合わせのみが選択される。前述のように、直交表に基づいた実験計画により、各パラメータの各水準に対して均等で妥当な評価を行うことができ、また、そのための時間を大幅に短縮することができる。
【0031】
なお、手順202、手順203における、実験数の削減は、直交表に基づいて行うことに限定されるものではなく、それ以外の手法によって実験数を削減するようにしてもよい。ただし各制御因子の各水準が均等に評価可能な手法が望ましい。さらに、手順203の実験は、実際に実験設備を使用して行うものでもよいし、コンピュータによるシミュレーションでもよい。シミュレーションとしては、例えば、有限要素法によるシミュレーション等が使用できる。また、手順201~203に関しては、品質工学を実施するためのコンピュータ・ソフトウェアをそのまま利用することができる。
【0032】
次に、手順204で、全ての制御因子の全ての水準の組み合わせに対して、特性値の平均値と標準偏差を計算する。前述のように、品質工学のソフトウェアによって、全ての制御因子の全ての水準の組み合わせに対して、加法性を利用して特性値のSN比と感度を求めることができるので、そのデータを利用して容易に特性値の平均値と標準偏差を計算することができる。
【0033】
次に、手順205で、全ての制御因子の全ての水準の組み合わせに対して、特性値の度数分布を計算する。この度数分布は、一般的には分布が正規分布であるとして、平均値と標準偏差から度数分布を計算することができる。ただし、予め正規分布以外の分布が予想される場合には、その予想される分布を使用することができる。
【0034】
次に、手順206で、受注条件、生産条件、生産者の希望条件のデータを入力する。これらの条件は、生産マネージメントに必要なデータである。受注条件としては、製品仕様、特性値の許容範囲、価格、納期、受注個数などがある。生産条件としては、材料費、加工費、生産設備のランニングコスト、工賃、廃棄単価、減価償却費などがある。生産者の希望条件としては、製品精度、生産コスト、生産速度、良品率などがある。
【0035】
この希望条件は受注条件と生産条件を前提に設定されるものであり、受注条件と生産条件をともに満足するように設定される。また、例えば、生産コストに関してできるだけ低コストにしたいのであれば、生産コスト:○○以下という条件を設定すればよいし、できるだけ早く生産したいのであれば、生産速度:○○以上という条件を設定すればよい。
【0036】
次に、手順207で、全ての制御因子の全ての水準の組み合わせに対して、生産マネージメント要因の計算を行う。これは手順206で入力された希望条件を満足するか否かを判断するための要因の計算である。生産マネージメント要因としては、良品率、総生産個数、加工時間、総生産時間、生産コストなどがある。良品率は特性値の度数分布と特性値の許容範囲から求められる。総生産個数は、受注個数/良品率として求められる。加工時間は、生産速度の逆数として求められる。総生産時間は、総生産個数×加工時間として求められる。生産コストは、(材料費+ランニングコスト)×総生産個数+廃棄単価×廃棄数+工賃×総生産時間として求められる。
【0037】
次に、手順208で、全ての制御因子の全ての水準の組み合わせから、希望条件を満足する各制御因子の各水準の組み合わせを全て抽出し、それらの抽出した組み合わせを出力する。複数の組み合わせが該当する場合は、それらを最も好ましいものから順序付けて出力する。なお、希望条件を満足する各水準の組み合わせを出力する際は、各水準の組み合わせのみでなく、その組み合わせにおける生産マネージメント要因も同時に出力することが好ましい。生産者は、希望条件を満足する水準の組み合わせによって生産を行えばよい。複数の組み合わせが出力されている場合には、他の副次的な条件を考慮して最も適切な組み合わせを選択すればよい。
【0038】
また、希望条件として、特性値のSN比、感度を同時に設定するようにすれば、生産マネージメント要因の観点からの希望条件を満足すると同時に、品質工学の観点からのSN比と感度に関する条件も満足する最適な水準の組み合わせを求めることも可能となる。
【0039】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図3は、本発明の第2実施形態の生産支援方法の手順を示すフローチャートである。この第2実施形態の生産支援方法の各手順も、第1実施形態と同様にコンピュータ上で実行される。第2実施形態は第1実施形態とほぼ同様の手順に沿って処理を行うものであるが、誤差因子の各水準に対して度数を設定するようにして、その後の計算結果の精度を向上させるようにしたものである。以下、第1実施形態に対する改良点を中心に説明する。
【0040】
第1実施形態と同様に、設計者が任意に設定可能な設計パラメータを制御因子とし、動作特性等の結果に誤差を生じさせるパラメータを誤差因子とする。手順301では、まず制御因子と誤差因子にどのようなパラメータを割り当てるかを決定し、複数の制御因子にそれぞれに複数の水準(数値や工程の種類など)を設定し、1つ以上の誤差因子にもそれぞれ複数の水準を設定する。この第2実施形態では、誤差因子に設定する複数の水準のそれぞれに対して度数を設定する。
【0041】
誤差因子の値の統計的分布は一般的には平坦な分布ではなく、正規分布等の分布曲線を示すことが多い。しかし、品質工学の手法や本発明の第1実施形態では、誤差因子の複数の水準のそれぞれを同等に扱って、その後の特性値のSN比と感度を求めているため、それらの値に誤差を生じることになり、特性値の分布(平均値および標準偏差)にも誤差が生じることになる。つまり、品質工学や第1実施形態では、誤差因子の分布を平坦なものとして処理しているのと同等である。
【0042】
品質工学では、SN比と感度の定性的な変化を問題にすることが多く、誤差因子の値の分布によって生じるSN比と感度の誤差が問題となることはほとんどない。しかし、本発明では、SN比と感度から求めた特性値の分布を利用して生産マネージメント要因の計算を行っているため、SN比と感度を高精度に求めることが極めて重要となる。
【0043】
誤差因子に複数の水準を設定するだけでなく、それらの複数の水準のそれぞれに対して度数を設定することにより、誤差因子の値の統計的分布を考慮に入れて、SN比と感度を高精度に求めることができる。具体的には、誤差因子の水準iに対して度数nが設定されている場合、特性値の平均値および標準偏差を求める際に、水準iに対する特性値データを1個ではなくn個のデータとして取り扱えばよい。なお、手順301としては、一般的な品質工学を実施するためのコンピュータ・ソフトウェアは使用できないため、本発明独自のソフトウェアとする必要がある。
【0044】
手順302、手順303については、第1実施形態の手順202、手順203と同じであるため説明は省略する。手順304も手順204と同様であるが、ただ前述のように誤差因子の水準iに対する特性値データをn個のデータとして取り扱い、誤差因子の値の統計的分布を考慮に入れた計算を行う。手順305~308は、第1実施形態の手順205~208と同じであるため説明は省略する。
【0045】
この第2実施形態の生産支援方法によれば、誤差因子の値の統計的分布を考慮に入れて、特性値の平均値および標準偏差を高精度に求めることができる。今まで通常行われていた計算方法(誤差因子の水準数を2,3とし度数を設定しない)に比較して、この第2実施形態では特性値の平均値および標準偏差の計算精度を4~5倍以上に向上させることができる。具体的には、誤差因子の水準数を3とした場合、特性値の平均値および標準偏差の計算誤差は10%程度となるが、水準数を5とし各水準に適切な度数を設定すると、それらの計算誤差を1%まで低減できた。
【0046】
次に、第2実施形態における誤差因子の水準と度数の設定方法について説明する。誤差因子に設定する水準数と各水準の数値範囲は任意でよく、それらの値を個別に設定し、各水準に対して誤差因子の分布に即した度数を設定することができる。このような設定方法が自由度が最も高くどのような誤差因子の分布に対しても適応できるが、設定値の個別入力が面倒であり、数値の誤入力などの可能性も大きい。
【0047】
誤差因子の分布は正規分布となることが多いので、これに基づいて誤差因子の水準と度数の設定を簡略化することができる。誤差因子の分布は正規分布を仮定し、複数の誤差因子のそれぞれについて、平均値と標準偏差を入力する。誤差因子のそれぞれについて、評価を行う全体範囲とそれを等分する水準数を入力する。全体範囲を水準数で等分して設定された各水準に対して、正規分布に基づいて適切な度数を計算して設定する。このような入力方法によれば、水準数を増加させても入力する数値が少なく、容易に誤差因子の水準と度数の設定を行うことができる。
【0048】
誤差因子の分布は正規分布から外れて最尤値(ピーク値)に対して非対称となることも多い。このような場合、最尤値の両側で標準偏差の異なる2つの正規分布を最尤値で連続するように合成した分布として近似的に取り扱うことができる。このような場合も、2つの正規分布に基づいて誤差因子の水準と度数の設定を簡略化することができる。誤差因子の分布は上記のような合成正規分布であると仮定し、複数の誤差因子のそれぞれについて、2つの正規分布の平均値と標準偏差を入力する。
【0049】
誤差因子のそれぞれについて、最尤値の両側の評価範囲とそれを等分する水準数を入力する。両側の評価範囲をそれぞれの水準数で等分して設定された各水準に対して、正規分布に基づいて適切な度数を計算して設定する。このような入力方法によれば、正規分布から外れた非対称の分布にも対応できる。また、水準数を増加させても入力する数値が少なく、容易に誤差因子の水準と度数の設定を行うことができる。
【0050】
以上のように、本発明の工業製品の生産支援方法を使用して、少数の実験により、生産者の希望条件を満足する制御因子の各水準の組み合わせを適切に短時間で選択することができる。また、コンピュータによるシミュレーションを利用すれば、実際に実験設備を使用した実験を全く行うことなく、短時間で最適な水準の組み合わせを求めることができる。
【0051】
なお、本発明の工業製品の生産支援方法は、コンピュータ上で実行されるプログラムとして実装することが適当である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、少数の実験により、生産者の希望条件を満足する制御因子の各水準の組み合わせを適切に短時間で求めることができ、工業製品の開発・生産の期間の短縮化および低コスト化を実現するものである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】品質工学の手法の概要を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態の生産支援方法の手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第2実施形態の生産支援方法の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0054】
101~107 品質工学の手法の各手順
201~208 本発明の第1実施形態の生産支援方法の各手順
301~308 本発明の第2実施形態の生産支援方法の各手順
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2