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明細書 :粗大結晶粒組織を有する高温クリープ強度に優れたフェライト系酸化物分散強化型鋼の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3792624号 (P3792624)
公開番号 特開2004-068121 (P2004-068121A)
登録日 平成18年4月14日(2006.4.14)
発行日 平成18年7月5日(2006.7.5)
公開日 平成16年3月4日(2004.3.4)
発明の名称または考案の名称 粗大結晶粒組織を有する高温クリープ強度に優れたフェライト系酸化物分散強化型鋼の製造方法
国際特許分類 B22F   3/20        (2006.01)
B22F   1/00        (2006.01)
B22F   3/24        (2006.01)
C22C  33/02        (2006.01)
FI B22F 3/20 C
B22F 3/20 B
B22F 1/00 V
B22F 3/24 B
C22C 33/02 103B
C22C 33/02 103G
請求項の数または発明の数 1
全頁数 10
出願番号 特願2002-231781 (P2002-231781)
出願日 平成14年8月8日(2002.8.8)
審査請求日 平成14年8月8日(2002.8.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000224754
【氏名又は名称】核燃料サイクル開発機構
【識別番号】000130259
【氏名又は名称】株式会社コベルコ科研
発明者または考案者 【氏名】大塚 智史
【氏名】鵜飼 重治
【氏名】皆藤 威二
【氏名】藤原 優行
個別代理人の代理人 【識別番号】100096862、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 千春
審査官 【審査官】米田 健志
調査した分野 B22F 1/00~8/00
特許請求の範囲 【請求項1】
元素粉末または合金粉末とY23粉末を混合して機械的合金化処理を行ない、熱間押出しにより固化した後、最終熱処理としてAc3変態点以上への加熱保持とそれに続くフェライト形成臨界速度以下での徐冷熱処理を施すことにより、質量%で、Cが0.05~0.25%、Crが8.0~12.0%、Wが0.1~4.0%、Tiが0.1~1.0%、Y23が0.1~0.5%、残部がFeおよび不可避不純物からなるY23粒子を分散させたフェライト系酸 化物分散強化型鋼を製造する方法であって、機械的合金化処理に際して混合するTi成分の元素粉末としてTiO2粉末を使用することを特徴とする粗大結晶粒組織を有する高温クリープ強度に優れたフェライト系酸化物分散強化型鋼の製造方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高温クリープ強度に優れたフェライト系酸化物分散強化型鋼の製造方法に関し、さらに詳しくは、粗大結晶粒組織をもたらすことにより、優れた高温クリープ強度を付与することができるフェライト系酸化物分散強化型鋼の製造方法に関するものである。
【0002】
本発明のフェライト系酸化物分散強化型鋼は、特に高温での強度が求められる高速増殖炉燃料被覆管用材料、核融合炉第一壁材料、火力発電用材料等に好ましく利用できる。
【0003】
【従来の技術】
優れた高温強度と耐中性子照射特性が要求される原子炉、特に高速炉の構成部材には、従来よりオーステナイト系ステンレス鋼が用いられてきたが、耐スエリング特性などの耐照射特性に限界がある。一方、フェライト系ステンレス鋼は耐照射特性に優れるものの、高温強度が低い欠点がある。
【0004】
そこで、耐照射特性と高温強度特性に優れた材料として、フェライト系鋼中に微細な酸化物粒子を分散させたフェライト系酸化物分散強化型鋼が提案されている。またこのフェライト系酸化物分散強化型鋼の強度を向上させるためには、鋼中にTiを添加して酸化物分散粒子をさらに微細分散化させることが有効であることも知られている。
【0005】
特に、フェライト系酸化物分散強化型鋼の高温クリープ強度の改善には、粒界すべりを抑制するため結晶粒の大粒径化および等軸晶化を図ることが有効である。かような粗大結晶粒組織を得る方法として、Ac3変態点以上に加熱保持する熱処理により十分なα→γ変態量を確保してα相からγ相へ相変態させることによりオーステナイト化し、その後に、γ相からα相へ相変態させてフェライト組織が得られるように十分遅い速度、すなわちフェライト形成臨界速度以下で徐冷する方法が提案されている(例えば特開平11-343526号公報参照)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、フェライト系酸化物分散強化型鋼にTiを添加した場合には、Tiがマトリックス中のCと結合して炭化物を形成する結果、マトリックス中のC濃度が低下し、熱処理時に十分なα→γ変態量が確保できないという問題がある。
【0007】
すなわち、上述したように、粗大結晶粒組織を得るためのフェライト系酸化物分散強化型鋼の熱処理は、Ac3変態点以上に加熱保持する熱処理を施すことによってγ相とした後、フェライト形成臨界速度以下で徐冷するものであるが、Tiはマトリックス中のγ相生成元素であるCと親和力が強いため、TiとCとが結合して炭化物を形成し、その結果マトリックス中のC濃度が低下すると、Ac3変態点以上で熱処理してもγ相の単相とならず、未変態のα相が残留する。そのため、γ相からフェライト形成臨界速度以下、例えば100℃/時間以下で徐冷しても残留α相の存在によりγ相から変態したα相は細粒組織となってしまう。かような細粒組織は、高温強度の改善には寄与しない。
【0008】
そこで本発明は、フェライト系酸化物分散強化型鋼にTiを添加した場合でも、TiとCとの結合を抑制してマトリックス中のC濃度を維持し熱処理時に十分なα→γ変態を確保することにより、高温クリープ強度の改善に有効な粗大化した結晶粒組織を有するフェライト系酸化物分散強化型鋼を製造できる方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、元素粉末または合金粉末とY23粉末を混合して機械的合金化処理を行ない、熱間押出しにより固化した後、最終熱処理としてAc3変態点以上への加熱保持とそれに続くフェライト形成臨界速度以下での徐冷熱処理を施すことにより、質量%で、Cが0.05~0.25%、Crが8.0~12.0%、Wが0.1~4.0%、Tiが0.1~1.0%、Y23が0.1~0.5%、残部がFeおよび不可避不純物からなるY23粒子を分散させたフェライト系酸化物分散強化型鋼を製造する方法であって、機械的合金化処理に際して混合するTi成分の元素粉末としてTiO2粉末を使用することを特徴とする粗大結晶粒組織を有する高温クリープ強度に優れたフェライト系酸化物分散強化型鋼の製造方法である。(なお、以下の本明細書中の記載において「%」はいずれも「質量%」を表すものとする。)
【0010】
上述したごとき本発明によれば、原料粉末として金属Ti粉末に代えて酸化物であるTiO2粉末を使用することにより、TiがCと結合して炭化物を形成するのを予め阻止することができるため、マトリックス中のC濃度を低下させることがない。この結果、Ac3変態点以上での熱処理時に十分なα→γ変態が生じてγ単相とすることができ、さらにそれに続くフェライト形成臨界速度以下で徐冷する熱処理を行うことにより粗大化結晶粒組織を有するα相を形成することができ、高温クリープ強度の向上をもたらすことができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に本発明のフェライト系酸化物分散強化型鋼の化学成分およびその限定理由について説明する。
【0012】
Crは、耐食性の確保に重要な元素であり、8.0%未満となると耐食性の悪化が著しくなる。また12.0%を超えると、靱性および延性の低下が懸念される。この理由から、Cr含有量は8.0~12.0%とする。
【0013】
Cの含有量は以下の理由から決定される。本発明は、一旦Ac3変態点以上の熱処理を施すことによるα→γ変態とそれに続く徐冷熱処理により、等軸かつ粗大な結晶粒組織を得るものである。すなわち、等方的かつ粗大な結晶粒組織を得るためには、熱処理によりα→γ変態を生じさせることが不可欠である。
Cr含有量が8.0~12.0%の場合に、α→γ変態を生じさせるためには、Cを0.05%以上含有させる必要がある。このα→γ変態は1000~1150℃×0.5~1時間の熱処理により生じる。C含有量が高くなるほど炭化物(M236、M6C等)の析出量が多くなり高温強度が高くなるが、0.25%より多量に含有すると加工性が悪くなる。この理由から、C含有量は0.05~0.25%とする。
【0014】
Wは、合金中に固溶し高温強度を向上させる重要な元素であり、0.1%以上添加する。W含有量を多くすれば、固溶強化作用、炭化物(M236、M6C等)析出強化作用、金属間化合物析出強化作用により、クリープ破断強度が向上するが、4.0%を超えるとδフェライト量が多くなり、かえって強度も低下する。この理由から、W含有量は0.1~4.0%とする。
【0015】
Tiは、Y23の分散強化に重要な役割を果たし、Y23と反応してY2Ti27またはY2TiO5という複合酸化物を形成して、酸化物粒子を微細化させる働きがある。この作用はTi含有量が1.0%を超えると飽和する傾向があり、0.1%未満では微細化作用が小さい。この理由から、Ti含有量は0.1~1.0%とする。
【0016】
23は、分散強化により高温強度を向上させる重要な添加物である。この含有量が0.1%未満の場合には、分散強化の効果が小さく強度が低い。一方、0.5%を超えて含有すると、硬化が著しく加工性に問題が生じる。この理由から、Y23の含有量は0.1~0.5%とする。
【0017】
本発明によるフェライト系酸化物分散強化型鋼の製造方法は、金属元素粉末または合金粉末さらには酸化物粉末といった原料粉末を目標組成となるように調合し、いわゆる機械的合金化処理(メカニカルアロイング)によって合金化する。この合金化粉末を押出用カプセルに充填した後、脱気、密封して熱間押出しを行って固化し、例えば押出棒材とする。
【0018】
得られた熱間押出棒材は、最終熱処理として、Ac3変態点以上での加熱保持とそれに続くフェライト形成臨界速度以下での徐冷熱処理を施す。徐冷熱処理は通常は炉内で徐々に冷却する炉冷熱処理とすることができ、フェライト形成臨界速度以下の冷却速度は、一般的には100℃/時間以下、好ましくは50℃/時間以下とすることができる。
本発明のフェライト系酸化物分散強化型鋼の場合、Ac3変態点は約900~1200℃程度であり、C量が0.13%の場合にはAc3変態点は約950℃である。
【0019】
本発明においては、鋼中のTiがCと結合して炭化物を形成し、マトリックス中のC濃度が低下しないようにする手段として、機械的合金化処理に際して混合する原料粉末として、金属Ti粉末に代えてTiO2粉末を使用する方法が採用できる。この場合、TiO2はTiのようにCと結合することはなく、その結果、マトリックス中のC濃度の低下を抑制することができる。TiO2粉末の混合量は、Ti含有量として0.1~1.0%の範囲内となるようにすればよい。
【0020】
表1は、フェライト系酸化物分散強化型鋼試作材の目標組成と成分の特徴をまとめて示している。
【0021】
【表1】
JP0003792624B2_000002t.gif【0022】
各試作材とも、元素粉末あるいは合金粉末と酸化物粉末を目標組成に調合し、高エネルギーアトライター中に装入後、99.99%のAr雰囲気中で撹拌して機械的合金化処理を行った。アトライターの回転数は約220rpm、撹拌時間は約48hrとした。得られた合金化粉末を軟鋼製カプセルに充填後、高温真空脱気して約1150~1200℃、7~8:1の押出比で熱間押出しを行い、熱間押出棒材を得た。
【0023】
表1中、試作材T14が基本組成であり、T6とT7はT14の組成におけるTiを化学的に安定な酸化物(TiO2)の形態でそれぞれ0.125Ti、0.25Ti添加して過剰酸素量を増加させた試料である。
【0024】
上記で得られた各試作材(熱間押出棒材)の成分分析結果を表2にまとめて示す
【0025】
【表2】
JP0003792624B2_000003t.gif【0026】
これらの試作材について、最終熱処理として、熱処理(Ac3変態点以上での加熱保持:1050℃×1hr)とそれに続く炉冷熱処理(フェライト形成臨界速度以下での徐冷熱処理:37℃/hrの速度で1050℃から600℃まで徐冷)を施した。
【0027】
熱処理後の各試作材の金相組織の光学顕微鏡写真を図1(T14、T6、T7)に示す。これらを観察してわかるように、炉冷熱処理により結晶粒が十分成長している試料と成長していない試料がある。結晶粒成長が生じているT6、T7は、Tiに代えてTiO2を添加した試料である。これらの試料においては、鋼中でTiがTiO2として存在するため、炭化物TiCの形成によるマトリックス中のC濃度の減少を抑えられる結果、熱処理時におけるα→γ変態、その後の炉冷熱処理での結晶粒成長が効果的に生じると考えられる。
【0028】
なお、T14では、Tiを金属元素として添加しているため、炭化物TiCの形成によるマトリックス中C濃度の減少が生じて、結晶粒成長が少なくなっている
【0029】
【試験例】
〈高温クリープ破断試験〉
試作材T7に対して、本発明による熱処理、すなわち、熱処理(Ac3変態点以上での加熱保持:1050℃×1hr)とそれに続く炉冷熱処理(フェライト形成臨界速度以下での徐冷熱処理:37℃/hrの速度で1050℃から600℃まで徐冷)を施して、結晶粒を粗大化させた試料(T7(FC材))を準備した。
【0030】
これとは別に、試作材T14、T7に対して、焼ならし熱処理(1050℃×1hr・空冷(AC))とそれに続く焼戻し熱処理(780℃×1hr・空冷(AC))を施して、結晶粒が微細となっている試料(T14(NT材)、T7(NT材))を準備した。
【0031】
これらの試料について、試験温度700℃で単軸クリープ破断試験を行った結果を図2のグラフに示す。金属Ti粉末に代えてTiO2粉末を使用するとともに、炉冷熱処理で結晶粒を増大させたT7(FC材)が、その他の試作材に比べて高温クリープ強度が向上していることが図2のグラフからわかる。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したところからわかるように本発明によれば、フェライト系酸化物分散強化型鋼にTiを添加した場合でも、TiとCとの結合を抑制してマトリックス中のC濃度を維持し熱処理時に十分なα→γ変態を確保することができ、これにより粗大化した結晶粒を生成できる結果、優れた高温クリープ強度を有するフェライト系酸化物分散強化型鋼を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】 試作材T14、T6、T7の光学顕微鏡金相写真。
【図2】 試作材T14、T7の700℃における高温クリープ破断試験を示すグラフ。
図面
【図2】
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【図1】
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