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明細書 :酸化物分散強化型フェライト鋼管の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3672903号 (P3672903)
公開番号 特開2004-131816 (P2004-131816A)
登録日 平成17年4月28日(2005.4.28)
発行日 平成17年7月20日(2005.7.20)
公開日 平成16年4月30日(2004.4.30)
発明の名称または考案の名称 酸化物分散強化型フェライト鋼管の製造方法
国際特許分類 C22C 33/02      
B22F  3/24      
B22F  5/12      
C21D  8/10      
C22C 38/00      
C22C 38/28      
G21C  3/06      
G21C  3/07      
FI C22C 33/02 103G
B22F 3/24 E
B22F 5/12
C21D 8/10 D
C22C 38/00 304
C22C 38/28
G21C 3/06 GDFM
G21C 3/06 P
請求項の数または発明の数 2
全頁数 8
出願番号 特願2002-298650 (P2002-298650)
出願日 平成14年10月11日(2002.10.11)
審査請求日 平成14年10月11日(2002.10.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000224754
【氏名又は名称】核燃料サイクル開発機構
【識別番号】592244376
【氏名又は名称】住友金属テクノロジー株式会社
発明者または考案者 【氏名】皆藤 威二
【氏名】鵜飼 重治
【氏名】大塚 智史
【氏名】小林 十思美
個別代理人の代理人 【識別番号】100096862、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 千春
審査官 【審査官】米田 健志
調査した分野 B22F 1/00~8/00
C22C 33/02
特許請求の範囲 【請求項1】
金属粉末と酸化物粉末との混合焼結により素材を作製し、合計3回以上の冷間圧延および熱処理を繰り返して所要形状の管にするに際して、圧延途中の中間熱処理の各々を、第1段階目の熱処理温度を1100℃以下で行い第2段階目の熱処理温度を第1段階目より高い1100~1250℃で行う2段階熱処理とし、最終の熱処理を1100℃以上で行うことを特徴とする酸化物分散強化型フェライト鋼管の製造方法。
【請求項2】
前記酸化物分散強化型フェライト鋼が、質量%で、Cr:11~15%、Ti:0.1~1%およびY2 3 :0.15~0.35%を含むものであることを特徴とする請求項1に記載の酸化物分散強化型フェライト鋼管の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、特に、高速炉の炉心構成要素である燃料被覆管のような優れた耐中性子照射性と高温強度(内圧クリープ破断強度等)に優れた酸化物分散強化型フェライト鋼製の管の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、耐中性子照射特性と高温強度特性に優れた材料として、フェライト鋼中に微細な酸化物粒子を分散させた酸化物分散強化型フェライト鋼が開発されており、これを用いた燃料被覆管等の製管加工も種々検討されている。
厳しい寸法精度を要求される燃料被覆管は細径薄肉であるため、その製造には加工度の大きい冷間圧延による製管加工が採用されている。
【0003】
しかしながら、冷間圧延で製造した酸化物分散強化型フェライト鋼被覆管は、圧延方向に沿って結晶粒が細く伸びた針状結晶粒形態(繊維状組織)となるため、高速炉炉心構成要素として重要な管の周方向(圧延方向に直交する方向)の延性や内圧クリープ破断強度が低いという重大な技術的課題があった。また、酸化物分散強化型フェライト鋼は冷間圧延を繰り返すことにより硬化し、冷間圧延が困難になるとともに、割れが発生するなどの問題があった。
【0004】
これらの問題を改善するために、冷間圧延後の熱処理を十分に行って結晶粒を粗大化させ、管の周方向にも結晶粒が成長した再結晶組織を生成させることが提案されている。例えば特開平8-229851号公報には、酸化物分散強化型フェライト鋼のY2 3 の含有量および過剰酸素の量を規定することにより、再結晶組織を生成し得る成分組成が記載されている。
【0005】
さらに、冷間圧延を繰り返し行うことにより硬化するのを防止するために、例えば特願2001-062913号では、3回以上の冷間圧延および熱処理を繰り返して所要形状の管にするに際して、圧延途中の中間熱処理の温度を1100℃未満とすることにより再結晶組織を生じさせることなく加工により生じた歪みや転位を回復させて軟化させ、次工程の冷間圧延を効果的に行えるようにし、最終の熱処理を1100℃以上で行って再結晶組織を生成させる酸化物分散強化型フェライト鋼管の製造方法が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したような酸化物分散強化型フェライト鋼の成分組成を採用したり、冷間圧延途中の中間熱処理を行う場合でも、以下のような課題があった。
【0007】
すなわち、再結晶組織を生じさせることなく中間熱処理を行おうとする場合には、毎回の冷間圧延後に管の端から試験片を切り出し、この試験片について再結晶組織の有無や軟化の程度を先行試験により確認して最適な中間熱処理条件を設定した後、本番の熱処理を行う必要があった。
【0008】
また、中間熱処理温度を1100℃未満で行った場合には、硬さが400Hv程度にしか軟化しないため、次工程の冷間圧延は可能であるが、割れが発生する場合があり、安定した製管加工が行えなかった。
【0009】
そこで本発明の目的は、冷間圧延途中の中間熱処理時に再結晶組織を生じさせることなく、かつ、比較的高温で中間熱処理を行うことで十分に軟化させて次工程の冷間圧延を効果的に行えるようにするとともに、冷間圧延工程における割れの発生を防止することができる、酸化物分散強化型フェライト鋼からなる管の製造方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、酸化物分散強化型フェライト鋼を用いて製管加工を行うに際して、複数回の冷間圧延途中の各々の中間熱処理を2段階で行ない、第1段階目の熱処理では再結晶組織を生じさせない処理温度を設定し、第2段階目の熱処理では第1段階目より高温で熱処理を行なうことで再結晶組織を生じさせることなく十分に軟化させることができ、次工程の冷間圧延を容易かつ効果的に行えることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0011】
すなわち本発明の酸化物分散強化型フェライト鋼管の製造方法は、金属粉末と酸化物粉末との混合焼結により素材を作製し、合計3回以上の冷間圧延および熱処理を繰り返して所要形状の管にするに際して、圧延途中の中間熱処理の各々を、第1段階目の熱処理温度を1100℃以下で行い第2段階目の熱処理温度を第1段階目より高い1100~1250℃で行う2段階熱処理とし、最終の熱処理を1100℃以上で行うことを特徴とするものである。
【0012】
本発明で用いる酸化物分散強化型フェライト鋼としては、質量%で、Cr:11~15%、Ti:0.1~1%およびY2 3 :0.15~0.35%を含むものが好ましく使用できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は、酸化物分散強化型フェライト鋼を用いた本発明による被覆管の製造工程の1例を示している。先ず、酸化物微細粒子の均一分散を図るため、金属粉末と酸化物粉末との混合焼結により素管を作製し、これに冷間圧延4回、圧延途中の中間熱処理3回および最終熱処理を施して所要形状の管に成形する。
【0014】
素管の製造は、例えば、所要組成の金属粉末および酸化物粉末を、ボールミル等を用い、いわゆるメカニカルアロイングの手法により十分粉砕混合する。次いでこの粉末を軟鋼製カプセル等に封入して、加熱押出により一体化焼結して冷間圧延加工用素管を作製する。要すればこれをさらに加熱焼鈍して冷間加工用素材とする。この段階までの製造は、従来実施されている技術に準じて行えばよい。
【0015】
素管の冷間圧延は、ピルガー圧延機またはHPTR圧延機を用いるのが望ましい。冷間圧延の圧延率(断面減少率)は30%以上、好ましくは40%以上とする。ここで、冷間圧延の圧延率とは、素管または焼鈍後の軟化状態から圧延を開始して、次の軟化のための中間熱処理(焼鈍)または最終熱処理(焼鈍)を行うまでの間の圧延の合計の圧延率であり、1パスで30%以上の圧延でもよく、2パス、3パスと複数パス圧延して30%以上としてもよい。
【0016】
本発明においては、圧延加工途中の各中間熱処理(図1の例では中間熱処理▲1▼~▲3▼)を2段階熱処理とする。
この2段階熱処理における第1段階目の熱処理は、1100℃以下の処理温度とすることで再結晶組織を生じさせないようにする。これによって、第2段階目のより高温の熱処理でも再結晶が生じないようにできるとともに、冷間圧延で導入された加工歪みエネルギーを十分に解放することができる。1100℃より高い熱処理温度、例えば1150℃では部分的に再結晶が生じ、1200℃以上では完全な再結晶組織になってしまう(図3の顕微鏡写真参照)。
【0017】
2段階熱処理における第2段階目の熱処理は、第1段階目より高い1100~1250℃の処理温度で行う。第2段階目の熱処理温度として1100℃を採用する場合には、第1段階目の熱処理温度を1100℃より低い温度、例えば1050℃で行うようにする。第2段階目の熱処理を、第1段階目より高い1100~1250℃で行うことにより、再結晶を生じさせることなく、十分に軟化させることができる。すなわち、第1段階目の熱処理により完全に回復させて加工歪みエネルギーを解放させるため、第2段階目の熱処理温度をより高温で行っても再結晶組織は生じない。また、第2段階目の熱処理により十分に軟化するため、次工程の冷間圧延加工を容易に行うことができ、割れの発生を効果的に防止することができる。1250℃を超える温度での熱処理は、分散粒子の粗大化を引き起こすとともに、工業的な熱処理温度として望ましくない。
【0018】
最終の熱処理は、再結晶組織とするために1100℃以上の加熱温度とする。1100℃未満では再結晶組織が十分に形成されず、圧延方向とそれに直交する周方向との強さの異方性が低減できないおそれがある。一方、最終熱処理を1250℃を超える温度で行うと、強さの異方性が低減できてもクリープ強度が低下してしまうことがあるため、1250℃以下とすることが望ましい。
【0019】
上記の中間熱処理および最終熱処理における加熱時間は、10分以上2時間程度その温度に保持すれば、十分にその目的を達成することができる。
本発明における上述した圧延と熱処理の条件は、圧延と中間熱処理および最終熱処理とをそれぞれ合計3回以上繰り返す場合に特に効果がある。
【0020】
本発明の対象とする管は、素材が合金粉末と酸化物粉末とを混合焼結したもので、酸化物を分散させて強化したフェライト鋼製のものである。合金中に分散させる微細な酸化物粒子としては、Y2 3 の他にも、MgO、Al2 3 、MgAl2 4 、ThO2 、TiO2 、ZrO2 などがあり、これらの1種または2種以上が添加される。いずれの酸化物の微細粒子の分散であっても、それによって管の高温強度向上を図る場合、本発明の適用が強度向上や強度の異方性低減に効果を発揮する。
【0021】
本発明を適用して最も効果のある管の一つは、質量%で、Crを11~15%、Tiを0.1~1%、Y2 3 を0.15~0.35%含有する酸化物分散強化型フェライト鋼管である。なお、鋼中にはこれら成分に加えて、フェライト鋼に通常添加される他の合金成分を含んでいてもよい。
【0022】
この場合、Crの含有量が11%未満では耐酸化性や耐食性が不足し、15%を超えると中性子照射などによる脆化が起こりやすくなるため、11~15%とするのがよい。TiはY2 3 などの酸化物粒子を微細化させる作用があり、0.1~1%の範囲で含有させるのが好ましい。これは、0.1%未満ではその効果が小さく、1%を超えるとその効果が飽和するからである。
【0023】
分散させる酸化物としては、Y2 3 を0.15~0.35%含ませるが、Y2 3 は容易に微細に分散し、かつ高温強さを向上させるために極めて有効な酸化物である。その含有量は、0.15%を下回る場合、圧延途中の中間熱処理の過程で再結晶組織を生じやすくなる。しかし、含有量が0.35%を超えると、最終熱処理で再結晶組織を得るのに要する処理温度が高くなり、加工も困難になってくる。したがって、Y2 3 の含有量は0.15~0.35%がよい。
【0024】
【試験例】
0.03C-12.0Cr-2W-0.26Ti-0.23Y2 3 を基本組成とする酸化物分散強化型フェライト鋼による管の製造過程における中間熱処理試験を図2の工程により実施した。
【0025】
鉄基合金粉末にY2 3 の粉末を混ぜ、アトライタボールミルにてアルゴン雰囲気中で粉砕混合し、得られた粉末を軟鋼製カプセルに封入して1175℃に加熱し、押出し比約7.8として外径約25mmの合金棒を作製した。この合金棒を1150℃で熱間鍛造して外径23mmとし、1200℃にて1時間の熱処理を行った後、機械加工にて外径18mm、肉厚3mmの冷間圧延用素管を作製した。この素管の化学組成を表1に示す。
【0026】
【表1】
JP0003672903B2_000002t.gif
【0027】
この素管を用いて図2に示す工程により中間熱処理試験を実施した。冷間圧延はピルガー圧延機を用い、冷間圧延▲1▼では1パスにて圧延率約50%の加工を行った。
【0028】
冷間圧延▲1▼の後の中間熱処理▲1▼は、1050℃、1100℃、1150℃、1200℃および1250℃の5種類の温度で1段階のみの熱処理を行った。
【0029】
冷間圧延▲2▼の後の中間熱処理▲2▼は、中間熱処理▲1▼と同様な5種類の温度での1段階熱処理に加えて、1050℃+1100℃および1050℃+1150℃の2種類の2段階熱処理を行った。
【0030】
冷間圧延▲3▼の後の中間熱処理▲3▼は、中間熱処理▲2▼と同様な熱処理に加えて、さらに1050℃+1250℃の2段階熱処理も行った。
【0031】
これらの中間熱処理▲1▼~▲3▼は、所定温度での保持時間をいずれも30分とした。各中間熱処理を施した後の管の端部分より試験片を切り出し、硬さを測定するとともに縦断面の顕微鏡組織を観察した。試験結果を表2に示す。また、中間熱処理▲3▼を施した後の顕微鏡組織を図3に示す。
【0032】
【表2】
JP0003672903B2_000003t.gif
【0033】
これらの結果からわかるように、冷間圧延を繰り返すことにより管は硬くなり、熱処理による軟化の程度も小さくなる。中間熱処理▲2▼および▲3▼では、熱処理温度1100℃未満の1段階熱処理とした場合、例えば硬さ400Hv以下といった十分な軟化を起こさせることができない。硬さ400Hv以下にするためには1段階熱処理の温度を1150℃以上にする必要があるが、この場合には再結晶が生じてしまう。
【0034】
これに対して、本発明による2段階熱処理からなる中間熱処理を行った場合には、1050℃での第1段階目の熱処理によって冷間圧延で導入された加工歪みエネルギーを十分に解放でき、これによって第2段階目の熱処理を1250℃といった高温で行っても再結晶組織が生じることがなく、管の硬さも400Hv以下まで十分に軟化させることができる。
【0035】
【発明の効果】
本発明の酸化物分散強化型フェライト鋼管の製造方法によれば、圧延途中の中間熱処理を2段階熱処理とし、第1段階目の熱処理を1100℃以下で行い、第2段階目の熱処理をそれより高温の1100~1250℃で行うことにより、中間熱処理時に再結晶組織を生じさせることなく、しかも十分に軟化させることができ、次工程の冷間圧延を容易かつ効果的に行えるようにして冷間圧延の信頼性を向上させることが可能となる。
その結果、これまで製造工程で生じていた割れの発生数を抑えられることで製品の歩留まりが向上し、製造コストの低減にもつながることとなる。
【0036】
また、従来の製管加工においては、毎回の冷間圧延後に管から試験片を切り出して再結晶組織の有無や軟化の程度を先行試験により確認して最適な中間熱処理条件を設定した後、本番の熱処理を行う必要があったのに対して、本発明におけるように中間熱処理を2段階熱処理とすることにより、先行試験を行うことなく、直接本番の熱処理を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による管の製造工程の1例を示す工程図。
【図2】管の製造過程における中間熱処理試験の工程図。
【図3】中間熱処理試験における管の縦断面顕微鏡写真(×100)。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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