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明細書 :核燃料物質の結晶精製方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4905714号 (P4905714)
公開番号 特開2009-058350 (P2009-058350A)
登録日 平成24年1月20日(2012.1.20)
発行日 平成24年3月28日(2012.3.28)
公開日 平成21年3月19日(2009.3.19)
発明の名称または考案の名称 核燃料物質の結晶精製方法
国際特許分類 G21C  19/46        (2006.01)
C01G  56/00        (2006.01)
FI G21C 19/46 Z
C01G 56/00
請求項の数または発明の数 4
全頁数 6
出願番号 特願2007-225517 (P2007-225517)
出願日 平成19年8月31日(2007.8.31)
審査請求日 平成21年6月5日(2009.6.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】独立行政法人日本原子力研究開発機構
発明者または考案者 【氏名】鷲谷 忠博
【氏名】樋口 英俊
【氏名】紙谷 正仁
個別代理人の代理人 【識別番号】100074631、【弁理士】、【氏名又は名称】高田 幸彦
審査官 【審査官】村川 雄一
参考文献・文献 特開2005-249692(JP,A)
樋口英俊 外6名,「晶石装置の伝熱性能に及ぼすUNH結晶の影響」,日本原子力学会2006年春の年会要旨集,日本,社団法人日本原子力学会,2006年 3月 9日,I15
野村和則 外6名,「先進的湿式再処理技術開発に関する試験研究の現状」,JAERI-Conf,日本,日本原子力研究所,2004年 7月,2004-011,107頁
調査した分野 G21C 19/46
G21F 9/06
JSTPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
原子力発電所の使用済燃料の再処理工程で分離される硝酸ウラニル溶液を冷却し、晶析操作を行い、該晶析によって回収された硝酸ウラニル結晶を発汗精製し、その後融解分離操作を行って、硝酸ウラニルを回収することを特徴とする核燃料物質の結晶精製方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記晶析によって回収された硝酸ウラニル結晶を洗浄し、結晶表面、結晶粒間に付着している母液等の液体状不純物を除去した後、前記発汗精製を行うことを特徴とする核燃料物質の結晶精製方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、前記発汗精製を硝酸ウラニルの融点とほぼ同温度に保持された恒温チャンバにて行うことを特徴とする核燃料物質の結晶精製方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法において、前記融解分離を60℃以上245℃以下で行うことを特徴とする核燃料物質の結晶精製方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所で使用された、使用済燃料からウランを取り出す再処理工程において使用する核燃料物質の結晶精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所から運ばれてくる使用済燃料は、燃料貯蔵プールで一時的に冷却貯蔵される(受入・貯蔵段階)。その後、貯蔵された使用済燃料は、核燃料物質を覆っている被覆管とともに、約3.5cm程度にせん断され、溶解させられる(せん断・溶解段階)。溶解された使用済燃料は、リサイクル可能な硝酸ウラニルUO(NO、硝酸プルトニウムPu(NOと、廃棄される核分裂生成物に分離される(分離段階)。分離された核分裂生成物は、一般にはガラス固化され、高レベル放射性廃棄物として保管される。一方、分離された硝酸ウラニル、硝酸プルトニウムは、最終的には硝酸が取り除かれ(精製・脱硝段階)、ウラン酸化物やウラン・プルトニウム混合酸化物として専用の容器で貯蔵される(製品貯蔵段階)。
【0003】
使用済燃料の再処理工程において分離された硝酸ウラニルの精製については、例えば特許文献1に「使用ずみ核燃料物質の再処理工程において回収されるウランまたはプルトニウムのバッチ式純精製法」と題して詳細に開示されている。また、特に本発明の工程の一部で採用している発汗現象の利用による物質の精製については、例えば特許文献2に「結晶精製方法及びそのための装置」と題して開示されている。
【0004】

【特許文献1】特公平6-31802
【特許文献2】特開2006-69959
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、上述の特許文献に記載された技術の存在にもかかわらず、現在の再処理工程の分離段階において分離された硝酸ウラニルには、有意な量の母液や核分裂生成物元素等の不純物が、除染されずに含まれている。このため、分離された硝酸ウラニルの除染係数(DF値)を高めることが求められている。
【0006】
そこで、本発明の目的は、使用済燃料の再処理工程において分離された硝酸ウラニルに付着している不純物を効果的に除染するための核燃料物質の結晶精製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
現在開発されている晶析技術では、有意な量の母液やFP元素等の不純物が硝酸ウラニル結晶に取り込まれ、除染係数があまり高いとは言えない。そこで、本発明者等は、結晶に取り込まれた母液やFP元素等を除去するため、硝酸ウラニル結晶の精製に際し、これまでの晶析に加え、発汗現象と融解分離の技術の適用を試み、これらの技術が再処理において有用であることを見出した。
【0008】
その結果、本発明に係る核燃料物質の結晶精製方法では、これまで除去できなかった不純物を除去するため、発汗精製の工程と融解分離操作の工程を加えている。具体的には、本発明の方法では、原子力発電所の使用済燃料の再処理工程で分離される硝酸ウラニル溶液を冷却し、晶析操作を行い、該晶析によって回収された硝酸ウラニル結晶を発汗精製し、その後融解分離操作を行って、硝酸ウラニルを回収することとした。ここで、発汗精製とは、結晶中に取り込まれた母液を融点近くに加熱することで、内包している不純物が外に吐き出される発汗現象を利用して精製することである。また、融解分離操作とは、物質間の融点の差異を利用して、物質同士を分離精製する操作である。
【0009】
また、晶析によって回収された硝酸ウラニル結晶を発汗精製する前に、洗浄し、結晶表面、結晶粒間に付着している母液等の液体状不純物を除去することによって、より精製精度を向上させることができる。
【0010】
また、上述の方法において、発汗精製を硝酸ウラニルの融点とほぼ同温度に保持された恒温チャンバで行うことによって、除染係数(DF値)をより一層改善できる。
【0011】
さらにまた、上述の方法において、複塩生成されると思われる不純物の融点を勘案すると、核燃料物質の再処理工程においては、前記融解分離を60℃以上245℃以下で行うことが好ましい。すなわち、60℃未満では硝酸ウラニル結晶(融点60℃)が溶融せず、245℃を超えると固体状不純物の溶融が始まるためである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、原子力発電所から出される使用済核燃料物質の再処理工程において回収されるウランの精製精度を格段に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の核燃料物質の結晶精製方法について説明する。本発明の結晶精製方法は、大別して、晶析、発汗及び融解の3つの工程を有する。晶析の実証に使用された晶析装置の全体構成を図1に示す。また、発汗精製の実証に使用された2種類の発汗精製装置の全体構成を、それぞれ図2及び図3に示す。図2は、恒温チャンバ方式を採用した発汗精製装置の全体構成図であり、図3は、温水ジャケット方式を採用した発汗精製装置の全体構成図である。
【0014】
次に、これらの図を参照して、本発明の主要な工程について、その有用性を確証するために行った試験例について説明する。
<晶析操作の試験例>
【0015】
図1に示された晶析試験装置を用いて、晶析操作の試験を行った。液体状不純物としてストロンチウム(Sr)溶液を硝酸ウラニル溶液と共に、晶析槽10において攪拌機11を用いて混合し、サーミスタ式温度計12で温度を監視しながら、約50℃から硝酸ウラニルの飽和温度よりも1℃低い33℃まで徐々に冷却した。約33℃で微量のU結晶を種晶として投入し、晶析を開始させた。この液温で約1時間保持し、硝酸ウラニル結晶を成長させた。その後最終的に10℃まで冷却し、晶析操作を行った。晶析後に得られた結晶は、回収した後、洗浄し、表面・結晶粒間に付着した液体状不純物(母液等)を除去した後、次の発汗精製試験を行った。
<発汗精製の試験例>

【0016】
発汗精製試験は、図2(A)に示す恒温チャンバ方式と図2(B)に示す温水ジャケット方式の2つの方式について行った。晶析操作後に回収した結晶を精製容器に封入し、恒温チャンバ20及び保温したウォータージャケット(図示せず)で、硝酸ウラニルの融点(60℃)よりやや低い温度に保持した。温度は熱電対21を用いて監視した。一定時間、保持した後、精製容器22のサンプリング位置(高さ)を変えて、具体的には、例えば図2(A)のA点、B点、C点の各位置において結晶を回収し、濃度分析を行った。
【0017】
発汗精製の効果を、図3にグラフで示す。横軸は、60℃の温水ジャケット方式を採用した場合のサンプリング位置と、60℃、58℃及び56℃の恒温チャンバを採用した場合のサンプリング位置を示している。また、その縦軸は、DF値を示している。DF値(精製前の硝酸ウラニルに対するSr濃度と、精製後の硝酸ウラニルに対するSr濃度の比)から1.3~1.4の精製効果が得られた。このことから、発汗操作により、硝酸ウラニル結晶から液体状不純物が排出され、硝酸ウラニル結晶が精製されることが確認された。発汗現象の利用は、硝酸ウラニル結晶の精製に有効であることがわかった。
<融解分離の試験例>
【0018】
CsのDFの低下をもたらす原因として、PuとCsの複塩(固体状不純物)生成が考えられる。Pu-Cs複塩の安定な分離を実現するため、U-Pu溶液にCs溶液を添加し、室温においてPu-Cs複塩を生成させた後、熱重量測定を行い、融点を測定した。 ここで、生成物がPu-Cs複塩であることは、生成物を硝酸溶液で洗浄後、それを乾燥させ、X線解析分析を行って確認した。
【0019】
上述のようにして調整したPu-Cs複塩を用いて行った融解分離の効果確認の結果を図4を用いて説明する。図4は、Pu-Cs複塩の熱重量変化を表している。図において、横軸は温度(℃)を示し、縦軸は重量変化(%)を示している。融解分離試験の結果、245℃付近と300℃付近に重量減少がみられた。
【0020】
以上の試験結果から、本固体状不純物は、約60℃にて実施する硝酸ウラニル結晶の発汗の際は安定に存在すると考えられる。また、本固体状不純物は融解操作により硝酸ウラニルと分離することが可能であると思われる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明によれば、原子力発電所から出される使用済核燃料物質の再処理工程において回収されるウランの精製精度を格段に向上させることができるので、現在世界各国において稼働中の再処理施設等で有効に活用される発明である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】晶析装置の概略構成図である。
【図2】発汗精製装置の概略構成図である。
【図3】発汗精製の効果を説明するグラフである。
【図4】融解分離の効果を説明するグラフである。
【符号の説明】
【0023】
10 晶析槽、11 攪拌機、12 サーミスタ式温度計、20 恒温チャンバ
21 熱電対、22 精製容器
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3