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明細書 :炭化ホウ素セラミックスおよびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5057327号 (P5057327)
公開番号 特開2009-067642 (P2009-067642A)
登録日 平成24年8月10日(2012.8.10)
発行日 平成24年10月24日(2012.10.24)
公開日 平成21年4月2日(2009.4.2)
発明の名称または考案の名称 炭化ホウ素セラミックスおよびその製造方法
国際特許分類 C04B  35/563       (2006.01)
C04B  35/80        (2006.01)
FI C04B 35/56 B
C04B 35/80 B
請求項の数または発明の数 2
全頁数 19
出願番号 特願2007-239028 (P2007-239028)
出願日 平成19年9月14日(2007.9.14)
審査請求日 平成22年9月14日(2010.9.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
発明者または考案者 【氏名】廣田 健
【氏名】中山 賀博
【氏名】中根 慎護
個別代理人の代理人 【識別番号】110000475、【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
審査官 【審査官】小川 武
参考文献・文献 特開平04-160012(JP,A)
特開昭59-184767(JP,A)
国際公開第2006/031404(WO,A1)
米国特許出願公開第2006/0057050(US,A1)
特開2007-320802(JP,A)
米国特許第7419925(US,B1)
原宏明,放電プラズマ法による高強度SiCセラミックスのの合成同時焼結,2005年度修士論文要旨集,同志社大学,2006年 2月14日,A34,全2頁
安田栄一,ヘテロ構造デザインによるバルクセラミックスの特性発現と信頼性向上,東京工業大学応用セラミックス研究所共同利用研究報告書,1998年 9月,Vol.1997,P.13-14
調査した分野 C04B 35/563,35/80
特許請求の範囲 【請求項1】
相対密度が99%以上である炭化ホウ素セラミックスを製造するための方法であって、
非晶質ホウ素(boron)Bと、非晶質炭素(carbon)Cと、焼結助剤である酸化アルミニウムAl2O3粉体からなる出発原料を秤量して準備する工程と、
さらに、炭化ホウ素に対して内割りで3~15vol.%のカーボンナノファイバーを、水またはメタノール中にて分散処理を行った後、前記出発原料に添加する工程と、
前記出発原料及び前記カーボンナノファイバーを水またはアルコール中に分散させて湿式混合を行ったのち乾燥することにより混合粉を得る工程と、
さらに、前記混合粉を放電プラズマ焼結法により加圧しながら加熱昇温し、前記混合粉から直接炭化ホウ素セラミックスを合成同時焼結することによって所望の炭化ホウ素セラミックスを得る工程、
を含むことを特徴とする炭化ホウ素セラミックスの製造方法。
【請求項2】
前記放電プラズマ焼結法による加圧および加熱が、前記混合粉を、10Pa以下の略真空中で、10~100MPaの圧力で加圧しながら、1500~1900℃の温度、および1~60分の条件で加熱する工程からなることを特徴とする請求項1に記載の炭化ホウ素セラミックスの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高温構造材料として有効に使用される炭化ホウ素セラミックスおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化ホウ素セラミックスは、軽量,高強度(一例によれば曲げ強度323-430MPa),高硬度(一例によればビッカース硬度27.4-34.3GPa),高融点(一例によれば2400°C),高弾性率(一例によればヤング率455 GPa),耐食性等の秀れた特性を備えているほか、化学的に安定であり、熱伝導性、電気伝導性が良好なセラミックス材料である。図10に示すのは、この炭素-ホウ素(以下、炭素系を「C」、ホウ素系を「B」とそれぞれ称することとする。)系の相図であり、縦軸は温度(℃)を、横軸はBに対するCの含有比率を示している。
それゆえ、炭化ホウ素セラミックスは、例えばエンジン部品等の高温構造材料として現在注目されているセラミックス材料であり、これまでにも、数々の研究が進められて来ている(非特許文献1等)。
【0003】
ところで、これまでに得られてきたセラミックスは、金属材料などに比べて耐熱性、耐摩耗性、耐食性などに優れているが、「脆さ」という欠点があり、主として強度面における信頼性に問題を残していた。
そのため、セラミックスの実用化に当たっては、より生産性が高く、更に常温および高温環境下における機械的特性に優れた焼結体およびその製造方法を確立することが切望されている。
現在までに研究されている脆性の改善方法としては、セラミックス自身の焼結密度を製造工程の改善により向上させる外に、i)金属との複合化、ii)粒子分散、iii)繊維との複合化(強化)、等がある。
i)の方法は、複合化した金属の延性すなわち塑性変形を利用して高靭性化するもので、高温構造材料には不適当であり、
ii)の方法は、セラミックスマトリックス中に異種の粒子を分散させるものであり、
iii)は、各種の繊維をセラミックスマトリックスに複合化して高靭化しようとするもので、とりわけ軽量化に有効であって、
複合化する物質の選択の多様さおよび有効性の点からii)およびiii)の研究が現在盛んとなってきている。
【0004】
これらの内、主相(マトリックス。母相とも言う。)および繊維を構成要素とする、iii)に係る繊維強化型セラミックスは、構成要素であるマトリックスおよび繊維を適当に組み合わせることによって、目的の性能をもつ複合セラミックスを創製することが可能なものであり、近年、特に注目されている。
なお、繊維強化セラミックスに使われる繊維は、耐熱性、高温強度およびマトリックスとの適合性などの条件を満たさなければならないとされる。

【非特許文献1】Boron-doped carbon nano tube prepared throug a substituition reaction Weiqiang Han, Yoshito Bando, Keiji Kurashima, Tadao Sato Chemical Physics Letters 299 (1999) 368-373.
【非特許文献2】B4C分散SiC系複合材料の微細組織と機械的性質、中平敦、 吉田剛, 木島著、 「材料」 (J.Soc.Mat.Sci.,Japan), Vol.47, No.6, pp.571-575, June 1998.
【非特許文献3】Development of functionally graded A1/A1203-B4C by pressure assisted FACS process C. W. WON, J. J. AHN, J. H. LEE JOURNAL OF MATERIALS SCIENCE LETTERS 21, 2002, 1407-1409.
【非特許文献4】Densification and Mechanical Properties of B4C with A1203 as a Sintering Aid Hae-Won Kim, Young-Hag Koh, and Hyoun-Ec Kim J. Am. Soc., 83 [11] 2863-65(2000).
【非特許文献5】B4C/(W, Mo)B2系硬質材料の機械的性質に及ぼすB添加の影響、横内正洋著、 Journal of the Japan Society of Powder and Powder Metallurgy Vol.48, No.7. 660-664. 2001.
【非特許文献6】SiC-B4C composites for synergistic enhancement of thermoelectoric property Masato Uehara, Ryousuke Shiraishi, Atsushi Nogami, Naoya Enomoto, Junichi Hojo Journal of the European Ceramic Society, 24 (2004) 409-412.
【非特許文献7】Processing and properties of zirconium diboride-based composites F.Monteverde, A.Be11iosi, S.Guicciardi Journal of the European Ceramic Society, 22 (2002) 279-288.
【非特許文献8】B4C-CrB2 composites with improved mechanical properties Suzuya Yamada, Kiyoshi Hirano, Yukihiko Yamauchi, Shuzo Kanzaki Journal of the European Ceramic Society, 23 (2003) 561-565.
【非特許文献9】Densification and mechanical properties of mu11ite / Ti02-coated B4C composites Hailei Zhao, Keisuke Hiragushi, Yasuo Mizota Journal of the European Ceramic Society, 23 (2003) 1485-1490.
【非特許文献10】Microstructure and interface characteristics of B4C, SiC and A1203 reinforced Al matrix composites: a comparative Study K. M. Shorowordi, T.Laoui, A. S. M. A. Haseeb, J. P. Celis, Li Froyen Journal of Materials Processing Technology 142 (2003) 738-743.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これまでの手法にて得られた炭化ホウ素セラミックスは、難焼結性であるために緻密な材料が得られず、かつ、非常に脆いという欠点があった。
すなわち、これまでの手法にて得られた炭化ホウ素セラミックスはいずれも破壊靭性値が低く(一例によればKIC=1.2~3.6MPa・m1/2)、信頼性の向上が残された重要な課題となっていた。
【0006】
さらに、上記炭化ホウ素をマトリックスとして創製されたセラミックス基複合材料に関しては、ii)粒子分散、およびiii)繊維との複合化(強化)共に、マトリックスに対して内割りで添加する粒子や繊維の分散性に難があり、出来上がった製品の均質性に問題があるだけでなく、強度になお問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記各課題を解決すべく種々検討を重ねた結果、本願発明者は、各構成原料である,非晶質B,非晶質C,および微量の焼結助剤であるAl2O3粉体の均質な混合物から緻密な成形体を作製し,これを放電プラズマ法により加圧しながら加熱し合成同時焼結させることにより,99%以上の緻密なセラミックスが容易に作製できる事を見い出し、本発明を完成した。
【0008】
また同時に、本願発明者は、高強度電気良導体のカーボンナノファイバー(CNF)を前述の混合原料成形体中に均質に分散させてから、放電プラズマ焼結法により焼結させると、CNFを均質に分散させた高密度炭化ホウ素B4Cセラミックスが容易に製造でき,その機械的特性が改善されることをも見出した。
このように、本願発明者は、強化材としてカーボンナノファイバーを添加することにより、炭化ホウ素セラミックスのさらなる高靭性化を図ることが可能なことを確認し、本発明の更なる改善を図った。
【0009】
上記課題を解決可能な本発明の炭化ホウ素セラミックスは、(1)炭化ホウ素セラミックスであって、非晶質Bと、非晶質Cと、焼結助剤であるAl2O3粉体からなる出発原料より構成され、さらに、前記出発原料に対してカーボンナノファイバーを略均質に分散させた状態で含み、焼結体の炭化ホウ素セラミックスとしての略相対密度が99%以上であることを特徴とするものである。
このように、最終的に炭化ホウ素中にCNFが分散して添加された状態で得られる炭化ホウ素セラミックスについては、CNF添加炭化ホウ素コンポジットセラミックスとも称される。
【0010】
ここで、(2)前記カーボンナノファイバーを、3~15vol.%、炭化ホウ素に対して内割りで含むことが好ましい。
【0011】
又、本発明は、(3)前記非晶質Cに代え、出発原料としてカーボンナノファイバーを用いたことを特徴とする炭化ホウ素セラミックスである。
このように、最終的にCNFが分散した状態で得られる炭化ホウ素セラミックスについては、CNF分散炭化ホウ素コンポジットセラミックスとも称される。
【0012】
なお、(4)上記の炭化ホウ素セラミックス(CNF添加炭化ホウ素コンポジットセラミックス或いはCNF分散炭化ホウ素コンポジットセラミックス)は、前記出発原料と前記カーボンナノファイバーとの混合粉体を、放電プラズマ焼結法を用いて合成同時焼結することにより調製されることが好ましい。
【0013】
又、本発明は、炭化ホウ素セラミックスを製造するための方法であって、(5)非晶質Bと、非晶質Cと、焼結助剤であるAl2O3粉体からなる出発原料を秤量して準備する工程と、 さらに、炭化ホウ素に対して内割りで3~15vol.%のカーボンナノファイバーを、水またはメタノール中にて分散処理を行った後、前記出発原料に添加する工程と、前記出発原料及び前記カーボンナノファイバーを水またはアルコール中に分散させて湿式混合を行ったのち乾燥することにより混合粉を得る工程と、さらに、前記混合粉を放電プラズマ焼結法により加圧しながら加熱昇温し、前記混合粉から直接炭化ホウ素セラミックスを合成同時焼結することによって所望の炭化ホウ素セラミックスを得る工程、を含むことを特徴とするものである。
【0014】
なお、(6)前記放電プラズマ焼結法による加圧および加熱が、前記混合粉を、10Pa以下の略真空中で、10~100MPaの圧力で加圧しながら、1,500~1,800℃の温度、および1~60分の条件で加熱する工程からなるものであればより好ましい。
【0015】
又、本発明に係る炭化ホウ素セラミックスの製造方法は、(7)前記非晶質Cに代え、出発原料としてカーボンナノファイバーを用いたことを特徴とするものである。
【0016】
上記の通り、構造材料として使用する場合の炭化ホウ素のメリットとしては、高強度、高硬度であり、耐熱性や耐食性、さらには高温強度に優れている点が挙げられる。その一方、破壊靭性値が低く、信頼性の向上が残された重要な課題となっていた。
【0017】
本発明では、これより詳細を説明する通り、
・放電プラズマ焼結法を用いて結晶粒子の微細化、高密度化を図ったほか、
・合成同時焼結によるプロセスの短縮化を図り、さらに、
・カーボンナノファイバー添加による高強度、高靭性化を実現し、
上記の信頼性に関わる課題を一挙に解決した。
【0018】
[用語の定義]
本明細書中で「カーボンナノファイバー」とは、強化繊維或いは複合材料として利用されているカーボンファイバーの中でも、直径がナノサイズの繊維を指し、特に繊維径150nmφ前後、繊維長4~5μm前後、密度2.00Mg/m前後、また、機械的特性として引張り強度~2.20GPa程度、弾性率100~300GPa程度のものを指し示すものとする。
マトリックスに対してカーボンナノファイバーを添加するメリットとしては、結果として得られるコンポジット材料の高強度、高靭性化および軽量化が図れる点がまず挙げられる。このほか、特にマトリックスの単一相が絶縁体である場合には、これにカーボンナノファイバーを適宜添加することによって導電性が付加されるという作用効果を挙げることが出来る。
一例によれば、カーボンナノファイバーは、径方向と軸方向で膨張係数が異なり、径方向に比べ軸方向には相対的に伸び難く、引張りに強いという傾向がある。また、マトリックスと繊維の熱膨張係数の差がマイナスであるほどマトリックスに圧縮残留応力が、繊維との間に引っ張り残留応力が誘起され、マトリックスの亀裂発生を抑制する働きをする。
【0019】
また、複合セラミックスの特性は、繊維の直径の大きさによっても変わり得る。
強化繊維として直径がナノサイズの繊維を用いた場合、強度と靭性の両方が同時に向上することが知られており、これらの材料は、一般にセラミックスナノコンポジットと呼ばれている。
【0020】
その中でも、炭素材は、ナノテクノロジーを認識させた重要な対象物質であり、現在もナノテクノロジーに期待される高機能性への挑戦課題の中核を構成している。ナノ相炭素材としては、フラーレン、カーボンナノチューブ(Carbon Nano Tube:CNT)およびカーボンナノファイバー(Carbon Nano Fiber:CNF)等が現在代表的なものとして挙げられる。
【0021】
なお、高強度で軽量なカーボンファイバー自体の開発は40年以上前から行われ、航空機、スポーツ器具などには複合材料として利用されている。これらのファイバーは非常に大きな弾性率Eと引っ張り強度σ(ファイバー:2~5GPa、ウィスカー:20GPa)をもっているが、格子欠陥が多いために理論最大強度よりも低い値に止まっている。
これに対して、構造完全性の高いCNTやCNFは、従来のファイバーをしのぐ引っ張り強度と弾性率を有するばかりでなく、ナノメートルスケールの細い円筒構造から優れた機械的強度を示す。
【0022】
先に説明した通り、近年、セラミックスを種々の炭素繊維やセラミックス繊維で強化してセラミックス基複合材料(CMC)を作製し、高温環境下での破局的な破壊を防止する研究が行われている。一方、特異な物性を示すカーボンナノチューブ(CNT)の研究開発の延長上に見出されたカーボンナノファイバー(CNF)は、優れた物理的性質・機械的強度を示すことから、ナノテクノロジーの中心材料の一つとして注目を集めているが、CNFの分散性の悪さやマトリックス界面での結合力の制御が困難であるため、CNFを添加分散させたCMCを得ることも、現状では実現が極めて困難であり、これまで実現されていなかった。
【0023】
本明細書において、パルス通電加圧焼結(Pulsed Electric-current Pressure Sintering: PECPS)法または放電プラズマ焼結(Spark Plasma Sintering :SPS)法とは、導電性の型内に原料粉末を充填した後、例えば一軸加圧状態においてOn-Off直流パルス電流を型内に流して加熱する焼結方法を指し示すものとする。
粉体が高い電気伝導度を示すのであれば、電流は圧粉体中にも流れて粒子の隙間に放電プラズマが誘導され、粒子表面が局所的に極めて高温度にまで加熱される。さらに、粒子表面はこのプラズマ処理により活性化され焼結性が向上するため、難焼結性物質の緻密化、低温焼結が必要な粉体材料の固化、燃焼接合に応用されている。
【0024】
従来法がヒーターなどにより外部から加熱するのに対し、上記の通りSPS法では対象粉末にパルス状の大電流(例えば数百アンペア以上)を流し、粉末粒子同士の僅かな空隙の部分で放電を起こさせ、その際発生する熱を利用して加熱、焼結を行う。
そのため、このSPS法によれば、従来の電気炉焼結法、ホットプレス(HP)法等に比べて低温で迅速かつ均一な加熱・焼結が可能であることから、粒成長を抑制した微細組織の制御が可能であると言われる。
このように、SPS法は、高性能焼結体が作製可能な焼結方法である。
以下に説明する本発明の一実施例では、全て放電プラズマ焼結(SPS)法と称している。
【0025】
本明細書中で「合成同時焼結」とは、出発原料の均質な混合物から緻密な化合物焼結体を作製することを指し示すものとする。
【発明の効果】
【0026】
上記の通り放電プラズマ焼結法を用いて原料混合粉体から直接化合物を合成することにより、炭化ホウ素セラミックスの焼結温度としては低温の1800℃で,短時間に緻密(略相対密度99%)に焼結された本発明の炭化ホウ素セラミックスは,三点曲げ強度sb610 MPaという高強度を示す。
【0027】
また、この炭化ホウ素セラミックスに15体積%のCNFを添加均質分散させたコンポジットセラミックスは、曲げ強度sbが710 MPaまで増加し、さらに硬度HvがCNF無添加の29 GPaから36 GPaまで向上し、靱性の目安である破壊靭性値KICは無添加の4.9からCNFを15%添加すると7.6 MPa・m1/2まで約1.6倍となった(後に説明する図9参照)。
【0028】
以下、添付図面に基づき、本発明の一実施形態に付き説明する。
以下では、出発原料にCNFを適量添加し、放電プラズマ焼結(SPS)法により焼結することによって強化した炭化ホウ素セラミックス(CNF添加炭化ホウ素コンポジットセラミックス)を調製する場合について説明したのち、
出発原料の非晶質Cに代えてCNFを用い、これを同様にSPS法を用いて焼結して得た炭化ホウ素セラミックス(CNF分散炭化ホウ素コンポジットセラミックス)を調製する場合について順次説明する。
最初に、夫々秤量・混合した所定の組成の混合粉体から本発明の炭化ホウ素セラミックス焼結体を調製する要領について説明する。CNFの添加量等の変化に伴うCNF添加炭化ホウ素コンポジットセラミックス或いはCNF分散炭化ホウ素コンポジットセラミックスの諸特性については、実施例を用いて後に説明する。
図1は放電プラズマ焼結法により本発明の炭化ホウ素セラミックスを調製するに当たっての工程図、図2は本発明の炭化ホウ素セラミックスを製造するために用いる放電プラズマ焼結装置のシステム構成を示す概念図、図3は非晶質Bと、非晶質Cと、焼結助剤であるAl2O3粉体からなる出発原料より構成された混合圧粉体をSPS法により加圧昇温した際における、混合圧粉体の温度およびZ軸方向の変位を示す図、図4は1,800℃で焼結して得られた本発明の炭化ホウ素コンポジットセラミックスについて、XRDパターンを示す図、図5は1,800℃で焼結して得られた炭化ホウ素コンポジットセラミックスについて、CNFの添加量を変化させた場合におけるXRDパターンを示す図、図6は1,800℃で焼結して得られた炭化ホウ素コンポジットセラミックスについて、CNFの添加量を変化させた場合における炭化ホウ素コンポジットセラミックスの微細構造を表わすSEM写真を示す図、図7は1,800℃で焼結して得られた炭化ホウ素コンポジットセラミックスについて、CNFの添加量を変化させた場合におけるXRDパターンを示す別の図、図8は1,800℃で焼結して得られた炭化ホウ素コンポジットセラミックスについて、CNFの添加量を変化させた場合における炭化ホウ素コンポジットセラミックスの微細構造を表わすSEM写真を示す別の図、図9はCNFを添加して得た本発明に係る炭化ホウ素コンポジットセラミックスの種々の機械的特性を示す図である。
【0029】
[第1実施形態]
はじめに、本発明の炭化ホウ素セラミックスの内、SPS法によりCNF添加炭化ホウ素コンポジットセラミックスを調製する要領に付き説明する。
【0030】
図1はSPS法により本発明の炭化ホウ素セラミックス(CNF添加炭化ホウ素コンポジットセラミックス或いはCNF分散炭化ホウ素コンポジットセラミックス)を調製するに当たっての工程図である。図中に記されている数値或いは焼結条件等は、次に説明する実施例1および2で用いた数値であり、本発明はこれらに何ら限定されない。
【0031】
まず、出発原料の秤量からスタートする(S1)。本実施形態では、出発原料は非晶質Bと、非晶質Cと、焼結助剤であるAl2O3粉体より構成される。好ましくは、上記出発原料は、Al2O3は平均粒径P=0.2μm程度で2.5vol%程度、またBの純度は96%程度、とされる。焼結助剤は必要に応じて添加量を加減して良い。
【0032】
また本実施形態では、出発原料である上記粉体に、さらに内割りで3~15vol.%のCNFを強化剤として添加する処理を行った(S2)。このとき、CNFについては、超音波ホモジナイザーその他の手段により水またはメタノール中にて分散処理を行った後(S2’)、上記出発原料に添加した。
【0033】
次に、CNFを含む出発原料を、ステップS3にて水またはアルコール中に分散させて湿式混合を行ったのち、乾燥することにより、焼結対象となる混合粉体を得た。
【0034】
得られた焼結対象となる混合粉体は、必要に応じ圧縮成形(S4a)および静水圧プレス(S4b)が行われた後、SPS法により加圧しながら加熱昇温される(S5)。
【0035】
なお、SPS法は、低電圧でパルス状直流大電流を投入し、火花放電現象により瞬時に高エネルギーを発生させ、急激なジュール加熱により溶解と高速拡散を起こす焼結手法であって、短時間、比較的低温で粒成長を抑制した緻密な焼結体が得られる手法である。
このほか、SPS法は、
・焼結することが難しい材料の焼結が可能、
・焼結時間が短い、
・硬度等の機械的特性が向上する、
・焼結体の微細組織の制御が行いやすい、
・焼結できる材料範囲が広い、
・被対象物に導電性が無くても適用可能、
等の特徴を有する有用な手法である。
【0036】
放電プラズマ焼結装置の概要に関しては図2に示す通りである。ここで、図1の1a~1dの各原料からなる圧縮成形粉体Pは、真空チャンバー1内に設置された、カーボンよりなるモールド型6にセットされる。
【0037】
図2に示す放電プラズマ焼結装置10は、真空チャンバー1と、パルス電流発生器9と、真空チャンバー1内に設置され、パルス電流発生器9に夫々接続される上方および下方の電極4,5と、上方および下方の電極4,5を夫々加圧し、プランジャ7を介して圧縮成形粉体Pを加圧する加圧手段8と、モールド型6内にセットされた圧縮成形粉体Pに加圧手段8からの押圧力を伝達するプランジャ7と、から構成される。
本実施例では、モールド型6とプランジャ7はカーボンより構成される。真空チャンバー1と、電極4,5は、それぞれ水冷され得る。また、加圧手段8は、一例ではロードセルからなる。さらに、真空チャンバー1には、真空/空気/Arガスの雰囲気制御ユニット2が、導入管3を介して接続されており、内部の気圧等を自在に制御し得る様構成されている。
【0038】
上で説明した通り、SPS法は、一例ではカーボン製モールド型に材料を挿入して加圧しつつ、例えば10V程度の電圧と数百A以上の電流をパルス状に流すことによって対象物を焼結するものである。このとき、カーボン製モールド型が加熱されるとともに、粉体粒子同士の接触部に放電プラズマが発生して焼結を促進するとされる。
本法をセラミックスの調製に適用すると、通常の電気炉加熱等に比べて200~500℃も低い温度で、かつ数分~数十分の短時間で焼結できる。さらに、互いの焼結性が良くない相が組み合わさったコンポジットの焼結にも適用できる。このように、本法は焼結組織のナノサイズ化やナノコンポジットの合成に有効な手法である。
【0039】
上記SPS法による加圧および加熱の条件は、混合粉体の量、質その他によっても変動するが、予め得られた上記混合粉体を、10Pa以下の略真空中で、10~100MPaの圧力で加圧しながら、1,700~1,800℃の温度、および1~60分の条件で加熱することが好ましい。
【0040】
以上の工程から、予め準備した非晶質Bと、非晶質Cとを主成分とする混合粉体から直接炭化ホウ素を合成同時焼結することによって、本発明に係る炭化ホウ素セラミックス焼結体を調製することができる。
【0041】
本実施形態によれば、最終的に焼結体の炭化ホウ素セラミックスとしての略相対密度が99%以上の緻密な炭化ホウ素セラミックスが得られる。得られた炭化ホウ素セラミックスに係る機械的特性ついての評価(S6)については、後記実施例にて説明する。
【0042】
[第2実施形態]
又、以下では、上記非晶質Cに代え、出発原料としてカーボンナノファイバーを用いることによって得られるCNF分散炭化ホウ素コンポジットセラミックスを調製する要領に付き説明する。工程図および放電プラズマ焼結装置の概要に関しては、先に説明した図1および図2に示す通りであり、詳細な説明はここでは省略する。
【0043】
本実施形態では、上記非晶質Cに代え、出発原料としてカーボンナノファイバーを用いている。なお、出発原料に、さらに内割りで3~15vol.%のCNFを添加する処理(S2)は第1実施形態と変わらない。このとき、CNFについては、超音波ホモジナイザーその他の手段により水またはメタノール中にて分散処理を行った後(S2’)、出発原料に添加した。
次に、上記出発原料及びCNFを含む粉体を、水またはアルコール中に分散させて湿式混合(S3)を行ったのち、乾燥することにより、焼結対象となる混合粉体を得た。
得られた混合粉体は、第1実施形態と同様に、必要に応じて圧縮成形(S4a)および静水圧プレス(S4b)した後、SPS法を用いて合成同時焼結される(S5)。これにより、所望の焼結体が調製される。
【0044】
このように、本実施形態によれば、カーボンナノファイバーを略均質に分散させた状態で含む炭化ホウ素セラミックス焼結体(CNF分散炭化ホウ素コンポジットセラミックス)を得ることが出来る。
【実施例1】
【0045】
以下、一実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1では、出発原料にCNFを適量添加し、これをSPS法を用いて合成同時焼結することにより強化した炭化ホウ素セラミックス(CNF添加炭化ホウ素コンポジットセラミックス)を実際に調製した一例について説明する。
また実施例2では、非晶質Cに代え、出発原料としてカーボンナノファイバーを用い、これを同様にSPS法を用いて合成同時焼結することにより得た炭化ホウ素セラミックス(CNF分散炭化ホウ素コンポジットセラミックス)を実際に調製した一例について説明する。
ここで、図3~図9はSPS法を用いて得られる本発明の炭化ホウ素セラミックス(CNF添加炭化ホウ素コンポジットセラミックス或いはCNF分散炭化ホウ素コンポジットセラミックス)に係る諸特性を示す図表である。実施例1の解説で更に用いる、製造方法に係る図1および図2の説明については前記の通りである。
【0046】
[炭化ホウ素セラミックスの合成同時焼結と機械約特性]
上記した通り、炭化ホウ素セラミックスは脆いほか、理論密度に焼結させることが難しく、これまで、
・より高密度で機械的特性の優れた焼結体の作製、
・および、そうして得られたより高硬度の材料から精密な部品の作製、
を目指して多種多様な焼結および加工方法の改良が行われてきた。
本実施例では、出発原料にさらにCNFを適量添加し、補強すると同時にSPS法を用いて、合成同時焼結により緻密な炭化ホウ素セラミックス(CNF添加炭化ホウ素コンポジットセラミックス)を作製することを試み、その生成過程並びに機械的特性について評価を行った一例につき説明する。なお次の実施例2では、実施例1の非晶質Cに代え、出発原料としてカーボンナノファイバーを用いた炭化ホウ素セラミックス(CNF分散炭化ホウ素コンポジットセラミックス)につき説明する。
【0047】
先に説明した通り、近年、セラミックスを種々の炭素繊維やセラミックス繊維で強化してセラミックス基複合材料(CMC)を作製し、高温環境下での破局的な破壊を防止する研究が行われている。
本実施例では、実施例1に記載の粉体に、更に強化材としてCNFを添加し、SPSを用いて、合成同時焼結により緻密なCNF添加炭化ホウ素コンポジットセラミックスを作製することを試みた。以下では、その生成過程並びに機械的特性について説明する。
【0048】
[粉体および焼結体の調製]
はじめに、出発原料として非晶質B、非晶質C、焼結助剤であるAl2O3粉体(住友化学、AKP-50、純度99.9%、粒子径P=0.2μm)を用い、最終的に焼結体として炭化ホウ素セラミックスが得られるように各粉末を秤量した(図1のS1、1a、1b、1c)。
【0049】
また本実施例では、上記出発原料に、更に強化材のCNF(VGCF-H,昭和電工,純度99%,直径≦150nm,長さ4~5μml)を(同じく出発原料として)追加している(図1のS2、1d)。
CNFの添加量は3~15vol.%とすることが好ましい。本実施例では、3~15vol.%を炭化ホウ素に対して内割りで添加した。
【0050】
まず、CNFをメタノール中で超音波ホモジナイザー(周波数20kHz、出力300W)を用いて30min分散処理を行う(S2’)。
その後、S1に係る出発原料の混合粉のスラリーに上記処理(S2’)を行ったCNFを3~15vol.%添加し、同様に湿式混合して30分の分散処理を行った(S3)。
【0051】
なお、S3の分散処理にあたっては、S1の秤量粉末及び追加CNFからなる混合粉体を、メタノール中に添加し、そして遊星ボールミル(ジルコニアボール(2mmφ))を用いて湿式混合した。
【0052】
次に、得られた混合粉体を室温で乾燥後、一軸金型成形(98MPa)、静水圧プレス処理(245MPa)してから、図2に示す放電プラズマ焼結装置(住友石炭鉱業,SPS-510A)内に設置したカーボン製モールド(40φ-15φ-40mm)内に充填した(図2の6)。
【0053】
その後、真空中(~10Pa)一軸加圧(30MPa)しながらDCパルス電流(ON/OFF=12:2)を流し、昇温速度100℃/min,1,500~1,800℃の温度範囲で10min保持後、降温速度~50℃/minの条件で焼結した(図1のS5)。
なおここで、図2のモールド6に外部より、混合圧粉体Pから~5mmの位置まで~3mmφの孔を開け、その孔底部の温度を単色温度計を用いて測定し、また、加圧昇温中の圧粉体の加圧軸(Z軸)方向の収縮量を測定した。さらに、昇温中の試料を急冷して取り出し、X線回折(XRD、(リガク、Rint2000、CuKα1))による生成相の同定、および微細構造のSEM観察(FE-SEM、(日本電子、JSM7000))を行った。
【0054】
[粉体および焼結体の評価]
得られた焼結体についてSEM写真によりその表面を観察したところ、組成i)炭化ホウ素のみ,およびii)炭化ホウ素+CNFの混合圧粉体を1,800℃で熱処理して得られた炭化ホウ素セラミックスに関し、i)炭化ホウ素のみの混合粉体からは粒子の粗大化が起こって緻密化しなかったが、ii)炭化ホウ素+CNF組成では(CNFの働きにより)高密度に焼結した(図6及び図8参照)。
【0055】
次に、非晶質B、非晶質C、及び焼結助剤としてのAlを2.5vol.%添加した混合圧粉体(B:C=4:1モル)を室温(R.T.)から1,800℃まで加圧昇温する際のZ軸の変位を図3(a)に、温度を(b)に示す。
なお、図3に示す傾向は、本発明の炭化ホウ素セラミックス(CNF添加炭化ホウ素コンポジットセラミックス、及びCNF分散炭化ホウ素コンポジットセラミックス)に関して言えることと考えてよい。
【0056】
上記の組成では、~600℃付近から圧粉体の膨張が始まり、1,500~1,800℃にかけては急激な収縮が起きている。
また、僅かながら図3(b)の曲線にもこの温度付近で、試料の発熱によるプログラムされた昇温速度からの偏り(温度上昇)が認められる。
【0057】
なお、前述の収縮に対応する、SPS加熱昇温時1,500~1,800℃という比較的低温度で炭化ホウ素の自己燃焼合成(SHS)が起こっていると推定される。
SPSプロセスでは、加熱と同時に混合圧粉体の粒子間にDC大電流のON/OFFパルスが誘導されるので、生成時に発熱反応を示す高融点無機化合物についても持続的にSHSが生じると考えられる。この混合粉体からの炭化ホウ素セラミックスの直接生成は、通常のホットプレスではこの様な低温では生成しない。
【0058】
[焼結体の機械的特性]
図9に、放電プラズマ焼結法を用いて得られる本発明の炭化ホウ素セラミックスに係る諸特性を示す図表を示す。図9(A)が本実施例に係る結果、図9(B)が実施例2に係る結果である。
【0059】
まず、図9(A)に3点曲げ強度σ、ビッカース硬度Hおよび破壊靭性値KICのCNF添加量依存性を示す。データは測定試料数10個の平均値を示している。セラミックスの組成は、上記実施例1の組成に係る炭化ホウ素セラミックス(CNF添加炭化ホウ素コンポジットセラミックス)である。
【0060】
本実施例で得られた炭化ホウ素セラミックスのビッカース硬度Hは、図9(A)に示す様に、CNF添加量の増加とともに緩やかに増加し、CNF添加量15vol.%で最高値36GPaを示した。このHの最高値は、同じく図9(A)に示すCNF無添加の場合のHの値(29GPa)よりも格段に向上している。
また、曲げ強度σと破壊靭性値KICについても、それぞれ、同じくCNF添加量15vol.%で最高値710MPa、7.6MPa・m1/2を示した。
【0061】
このように、本実施例ではCNF添加量15vol.%で作製された炭化ホウ素セラミックスが最も高い機械的特性、すなわち、曲げ強度σ(710MPa)、ビッカース硬度H(36GPa)および破壊靭性値KIC(7.6MPa・m1/2)を示すことが明らかとなった。
【実施例2】
【0062】
又以下では、非晶質Cに代え、出発原料としてカーボンナノファイバーを用いたCNF分散炭化ホウ素コンポジットセラミックスを合成同時焼結によって得る実施例につき説明する。
ここで、図7~図9には、CNF添加量の多寡に応じたCNF分散炭化ホウ素コンポジットセラミックスの諸特性の変化を示す図表が含まれている。実施例2の解説で更に用いる図1および図2の説明については上記した通りである。
【0063】
[粉体および焼結体の調製]
基本的に実施例1に準ずる条件で焼結した。
【0064】
[粉体および焼結体の評価]
得られた焼結体破面のSEM写真から、CNFはナノ形状、構造を維持しながら良好に分散した状態で緻密化(略相対密度:99%以上)している様子が確認された(図8参照)。
【0065】
[焼結体の機械的特性]
図9(B)に、CNF添加量の多寡に応じたCNF分散炭化ホウ素コンポジットセラミックスの電気抵抗、および種々の機械的特性の変化をグラフ化して示す。
【0066】
図9(B)に示す通り、実施例2に係る単一相炭化ホウ素セラミックスの室温での機械的特性は、3点曲げ強度σ=約583MPa、ビッカース硬度H=約36.5GPa、破壊靭性値KIC=約6.76MPa・m1/2であった。
【0067】
[実施例1および2で得られた試料の対比評価]
[組織の均一性、緻密性について]
焼結体のXRDパターンを図4、5および7に示す。図4では、CNF添加量は3vol.%である。図5において、Al2O3の添加量は2.5vol.%、CNF添加量は、それぞれ(A)0vol.%、(B)5vol.%、(C)10vol.%、(D)15vol.%、(E)20vol.%である。図7において、Al2O3の添加量は2.5vol.%、CNF添加量は、それぞれ(a)14at%、(b)17at%、(c)20at%、(d)23at%、(e)26at%である。
なお、図4、5および7に示すXRDパターンにおいて、Cの回折ピークはCNFの回折ピークをも包含している(CNFもCには変わりは無い)。
i)炭化ホウ素セラミックスが1,800℃で生成し、
ii)また、カーボンナノファイバーを添加した試料においては、炭化ホウ素セラミックスとCNFの回折ピークのみが観察された。
【0068】
次に、カーボンナノファイバーを適量添加した複合体の破面のSEM写真を図6および8に示す。図5において、Al2O3の添加量は2.5vol.%、CNF添加量は、それぞれ(A)5vol.%、(B)10vol.%、(C)15vol.%、(D)20vol.%である。焼結条件は、1800℃、10分である。図8において、Al2O3の添加量は2.5vol.%、CNF添加量は、それぞれ(A)14at%(B:CNF=4:0.6)、(B)17at%(B:CNF=4:0.8)、(C)20at%(B:CNF=4:1)、(D)23at%(B:CNF=4:1+CNF5vol.%)、(E)26at%(B:CNF=4:1+CNF10vol.%)、(G)29at%(B:CNF=4:1+CNF15vol.%)である。
SEM写真を観察した結果、カーボンナノファイバーによる緻密化阻害の影響は無く、いずれも相対密度略99%以上の緻密な焼結体が得られた。
【0069】
カーボンナノファイバーを5~15vol.%添加した試料では、カーボンナノファイバーが均一に分散し、かつ、マトリックスの粒成長が抑制された緻密な焼結体が得られた。
これに対して、カーボンナノファイバーを20vol.%添加した試料では、粒成長が顕著に抑制された箇所が偏在し、組織の均一性が失われていた。換言すれば、粒成長の抑制効果が見られない箇所も一部に存在するということであり、カーボンナノファイバーの添加比率については或る一定の範囲で有用な効果が認められるものと考察される。
【0070】
[三点曲げ強度(σ)について]
図9(A)および(B)に、三点曲げ強度(σ)の測定結果を示す。
三点曲げ強度(σ)は、カーボンナノファイバーの添加量が増加するにしたがって増大し、CNF無添加でσ=約550MPaであったものが、カーボンナノファイバーを15vol.%添加した試料では、最高値約710MPaが得られた。
しかし、カーボンナノファイバーを20vol.%添加した試料では、σ=約510MPaに低下しており、組織の均一性、緻密性の考察結果と同様にカーボンナノファイバーの添加比率について或る一定の範囲で有用な効果が認められるものと考察される。
【0071】
[将来の可能性]
このように、本発明によれば、i)放電プラズマ焼結法を用いて原料混合粉体から直接化合物を合成することにより、高密度で緻密な微細構造を有する焼結体を作製することができる。
また、ii)強化材であるカーボンナノファイバーを添加することにより、さらなる高靭性化を図ることが可能なことも確認された。
さらに、本発明によれば、iii)化学プラントの精密部品等、耐食性が要求される用途への展開の可能性も拡大する。
【0072】
具体的には、例えば以下の様な製品への応用展開が期待される。
i)エンジン燃焼副室(燃焼を助けるため、燃料と空気を一度高温の部位に導き、気化と混合を十分に行わせるための装置: 高温、急熱急冷、爆圧、機械的応力に耐える性能が求められ、熱応力は最大約300MPa程度。)
ii)バルブ(エンジンのシリンダーヘッドに搭載され,燃焼室を密閉する装置: 高温、急熱急冷、反応性ガスとの接触、そして微粒子による摩擦に耐える性能が求められ、エンジン始動時と運転中時で約500℃の温度変化に晒される。)
iii)ターボチャージャー(出力向上のために利用される装置: 遠心力、熱応力、高速粒子との衝突、そして磨耗に耐える性能が求められ、翼端の周速約500m/sで受ける力は約350~400MPa程度。)
iv)ガスタービン(高出力系エンジンに用いられる: エンジン出力は概ね300~400馬力で、高温強度が求められる。タービン入口温度は1,270℃~1,350℃)
【0073】
[まとめ]
本願発明につき、これまでの成果を纏めると次の通りである。
・はじめに、放電プラズマ焼結法で、炭化ホウ素セラミックスとしては低温の1,800℃ を短時間保持することによって、緻密な炭化ホウ素セラミックスが生成することが確認された。このようにして生成した炭化ホウ素セラミックスは三点曲げ強度sb610 MPaという高強度を示す。
・次に、このようにして生成した炭化ホウ素セラミックスに15vol.%のCNFを添加均質分散させたコンポジットセラミックスは,曲げ強度sbが710 MPaまで増加し,さらに硬度HvがCNF無添加の29 GPaから36 GPaまで向上し,靱性の目安である破壊靭性値KICは無添加の4.9からCNFを15%添加すると7.6 MPa・m1/2まで約1.6倍となり、それぞれ最高値を示すことが確認された(図9参照)。
【0074】
[本願発明の有用性]
本願発明の有用性は、要すれば以下の通りである。
i)非晶質のカーボンとホウ素を採用することにより、焼結性が向上し、且つ、同時に添加する結晶性のカーボンナノファイバー(CNF)が、非晶質よりも反応性が低いため、B4Cの合成に消費されずにBCセラミックス中に残る事。
ii)CNFの最適添加量を見出したこと。
iii)通常はどちらか一方のみ向上する強度と靭性が、本発明によれば同時に向上すること。さらに硬度も36GPaと高硬度となること。
【0075】
[変形例]
以上、本発明を実施例その他により詳細に説明したが、本発明は上記各例記載の構成および条件に何ら限定されず、種々の変形が可能である。
【0076】
例えば、湿式混合を行うに当たり、上記各例ではメタノールを用いたが、その他のアルコール或いは水を用いても構わない。
【0077】
上記各例では、放電プラズマ焼結法により炭化ホウ素セラミックスを得るに当たり、一軸金型成形により混合粉を加圧成形することによって成形体を得ていたが、成形体の形成手段は一軸金型成形に特に限定されない。
【0078】
その他、各種原料の平均粒径や、放電プラズマ焼結を行う際の雰囲気、圧力、温度、電流、その他のパラメータに関しては、各例で挙げたものに何ら限定されない。
【0079】
このように、本発明は上記実施形態等に記載の構成に限定されるものではなく、当業者であれば、以上に開示された基本的技術思想および教示に基づき、種々の変形例を導き出すことが出来る事は自明である。
【0080】
以上に説明したとおり、本願発明は、より生産性が高く、かつ、機械的特性に優れた炭化ホウ素セラミックスおよびその製造方法を提供する新規かつ有用なるものであることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】放電プラズマ焼結法により本発明の炭化ホウ素セラミックスを調製するに当たっての工程図である。
【図2】本発明の炭化ホウ素セラミックスを製造するために用いる放電プラズマ焼結装置のシステム構成を示す概念図である。
【図3】非晶質Bと、非晶質Cと、焼結助剤であるAl2O3粉体からなる出発原料より構成された混合圧粉体をSPS法により加圧昇温した際における、混合圧粉体の温度およびZ軸方向の変位を示す図である。
【図4】1,800℃で焼結して得られた本発明の炭化ホウ素コンポジットセラミックスについて、XRDパターンを示す図である。
【図5】1,800℃で焼結して得られた炭化ホウ素コンポジットセラミックスについて、CNFの添加量を変化させた場合におけるXRDパターンを示す図である。
【図6】1,800℃で焼結して得られた炭化ホウ素コンポジットセラミックスについて、CNFの添加量を変化させた場合における炭化ホウ素コンポジットセラミックスの微細構造を表わすSEM写真を示す図である。
【図7】1,800℃で焼結して得られた炭化ホウ素コンポジットセラミックスについて、CNFの添加量を変化させた場合におけるXRDパターンを示す別の図である。
【図8】1,800℃で焼結して得られた炭化ホウ素コンポジットセラミックスについて、CNFの添加量を変化させた場合における炭化ホウ素コンポジットセラミックスの微細構造を表わすSEM写真を示す別の図である。
【図9】CNFを添加して得た本発明に係る炭化ホウ素コンポジットセラミックスの種々の機械的特性を示す図である。
【図10】炭化ホウ素セラミックスの相図である。
【符号の説明】
【0082】
P 圧縮成形粉体
1a~1d 原料
1 真空チャンバー
2 雰囲気制御ユニット
3 導入管
4 電極
5 電極
6 モールド型
7 プランジャ
8 加圧手段
9 パルス電流発生器
10 放電プラズマ焼結装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図7】
5
【図9】
6
【図10】
7
【図6】
8
【図8】
9