TOP > 国内特許検索 > ガスバリア性の炭素繊維強化プリプレグ及び炭素繊維強化プラスチック並びにそれらの製造方法 > 明細書

明細書 :ガスバリア性の炭素繊維強化プリプレグ及び炭素繊維強化プラスチック並びにそれらの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5294609号 (P5294609)
公開番号 特開2009-120627 (P2009-120627A)
登録日 平成25年6月21日(2013.6.21)
発行日 平成25年9月18日(2013.9.18)
公開日 平成21年6月4日(2009.6.4)
発明の名称または考案の名称 ガスバリア性の炭素繊維強化プリプレグ及び炭素繊維強化プラスチック並びにそれらの製造方法
国際特許分類 C08J   5/24        (2006.01)
B29B  11/16        (2006.01)
C08K   7/00        (2006.01)
C08L 101/00        (2006.01)
B32B   5/30        (2006.01)
FI C08J 5/24 CER
C08J 5/24 CEZ
B29B 11/16
C08K 7/00
C08L 101/00
B32B 5/30
請求項の数または発明の数 14
全頁数 12
出願番号 特願2007-292659 (P2007-292659)
出願日 平成19年11月10日(2007.11.10)
審査請求日 平成22年10月7日(2010.10.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
発明者または考案者 【氏名】米本 浩一
【氏名】蛯名 武雄
【氏名】水上 富士夫
【氏名】奥山 圭一
【氏名】神谷 祥二
個別代理人の代理人 【識別番号】100077263、【弁理士】、【氏名又は名称】前田 純博
審査官 【審査官】▲吉▼澤 英一
参考文献・文献 特開2005-264052(JP,A)
特開昭62-151337(JP,A)
特開2007-277078(JP,A)
特開平9-280496(JP,A)
特開2002-104297(JP,A)
調査した分野 C08J 5/24
B29B 11/16
B32B 5/30
C08K 7/00
C08L 101/00
特許請求の範囲 【請求項1】
シート状の炭素繊維強化材とマトリックス樹脂とからなる炭素繊維強化プリプレグであって、該プリプレグの内部に、板状の結晶構造を持つ粘土鉱物が、一方向に配向し且つ緻密に積層したガスバリア層を有することを特徴とするガスバリア性の炭素繊維強化プリプレグ。
【請求項2】
ガスバリア層が、粘土鉱物に対して3~30質量%の有機添加物を含むことを特徴とする請求項1記載のガスバリア性の炭素繊維強化プリプレグ。
【請求項3】
シート状の炭素繊維強化材とマトリックス樹脂とからなる炭素繊維強化プリプレグの積層体の少なくとも一つの層間に、板状の結晶構造を持つ粘土鉱物が、一方向に配向し且つ緻密に積層したガスバリア性のフィルム状物を配置し、その後、該積層体を加熱及び/又は加圧することを特徴とするガスバリア性の炭素繊維強化プリプレグの製造方法。
【請求項4】
ガスバリア性のフィルム状物が、粘土鉱物に対して3~30質量%の有機添加物を含むことを特徴とする請求項3記載のガスバリア性の炭素繊維強化プリプレグの製造方法。
【請求項5】
シート状の炭素繊維強化材とマトリックス樹脂とからなる炭素繊維強化プリプレグの表面に、粘土鉱物の分散液を塗布又は含浸させ、該プリプレグの表面に、板状の結晶構造を持つ粘土鉱物が、一方向に配向し且つ緻密に積層したガスバリア層を形成させ、その後、該
ガスバリア層を形成されたプリプレグを加熱及び/又は加圧するか、あるいは更に、該ガスバリア層の表面にマトリックス樹脂層又は前記炭素繊維強化プリプレグを配置した積層体とした後、該積層体を加熱及び/又は加圧することを特徴とするガスバリア性の炭素繊維強化プリプレグの製造方法。
【請求項6】
粘土鉱物の分散液が、粘土鉱物に対して3~30質量%の有機添加物を含むことを特徴とする請求項5記載のガスバリア性の炭素繊維強化プリプレグの製造方法。
【請求項7】
炭素繊維強化材とマトリックス樹脂とからなる繊維強化プラスチックであって、その内部に、板状の結晶構造を持つ粘土鉱物が、一方向に配向し且つ緻密に積層したガスバリア層を有することを特徴とするガスバリア性の炭素繊維強化プラスチック。
【請求項8】
ガスバリア層が、粘土鉱物に対して3~30質量%の有機添加物を含むことを特徴とする請求項7記載のガスバリア性の炭素繊維強化プラスチック。
【請求項9】
成形型に敷設された炭素繊維強化材とマトリックス樹脂とからなる炭素繊維強化プリプレグの積層体の少なくとも一つの層間に、板状の結晶構造を持つ粘土鉱物が、一方向に配向し且つ緻密に積層したガスバリア性のフィルム状物を配置し、その後、成形型を型締めし、加熱及び/又は加圧して成形することを特徴とするガスバリア性の炭素繊維強化プラスチックの製造方法。
【請求項10】
ガスバリア性のフィルム状物が、粘土鉱物に対して3~30質量%の有機添加物を含むことを特徴とする請求項9記載のガスバリア性の炭素繊維強化プラスチックの製造方法。
【請求項11】
成形型に敷設されたシート状の炭素繊維強化材の積層体の少なくとも一つの層間に、板状の結晶構造を持つ粘土鉱物が、一方向に配向し且つ緻密に積層したガスバリア性のフィルム状物を配置し、その後、樹脂トランスファー成形法又は樹脂フィルムインフュージョン成形法で成形することを特徴とするガスバリア性の炭素繊維強化プラスチックの製造方法。
【請求項12】
ガスバリア性のフィルム状物が、粘土鉱物に対して3~30質量%の有機添加物を含むことを特徴とする請求項11記載のガスバリア性の炭素繊維強化プラスチックの製造方法。
【請求項13】
フィラメントワインディング成形法において、マンドレルに炭素繊維強化材とマトリックス樹脂とからなる複合材を巻回・積層するに際し、板状の結晶構造を持つ粘土鉱物が、一方向に配向し且つ緻密に積層したガスバリア性のフィルム状物を、巻回途中の層中に配置し、その後、マトリックス樹脂を加熱硬化させることを特徴とするガスバリア性の炭素繊維強化プラスチックの製造方法。
【請求項14】
ガスバリア性のフィルム状物が、粘土鉱物に対して3~30質量%の有機添加物を含むことを特徴とする請求項13記載のガスバリア性の炭素繊維強化プラスチックの製造方法。




発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明はガスバリア性能を有する、特に、水素ガスバリア性に優れた炭素繊維強化プリプレグ及び炭素繊維強化プラスチック、並びにそれらの製造方法又は成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化プラスチック(FRP)は、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン等の熱可塑性樹脂のマトリックス樹脂と、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等の繊維強化材とからなる複合材料である。これらの複合材料は、例えば、繊維強化材にマトリックス樹脂が含浸された中間製品であるプリプレグから、加熱・加圧といった成形・加工工程を経て成形される。特に、炭素繊維を繊維強化材として用いた複合材料は、軽く、高強度等の優れた機械的特性を有するので、近年、航空機、自動車等の部材として多く用いられるようになって来ている。
【0003】
ところで、炭化水素燃料に替えてクリーンな燃料である水素を利用する時代、いわゆる水素エネルギー社会が到来しつつある状況下では、取り扱いの容易さを考えて、水素の貯蔵容器の軽量化が一層求められると予想される。そして、そのためには、従来から用いられてきたステンレスやアルミニウム等の金属材料よりも比強度に優れた、炭素繊維強化プラスチックを用いることが有効であると考えられる。しかしながら、有機系のプラスチックは一般的にガスバリア性が低く、特に水素ガスは容易に通してしまうという性質があるため、従来の方法で製作される炭素繊維強化プラスチックも、そのまま水素用の容器として使用することは殆ど不可能である。
【0004】
従って、炭素繊維強化プラスチックを利用する場合には、何らかの方法でガスバリア性、特に水素ガスバリア性を付与することが必要となる。従来、炭素繊維強化プラスチックを、例えば、水素タンク用の構造材料として使用する場合、アルミニウム板をライナーとして、あるいはアルミ箔の接着等により水素ガスバリア性を付与することが多く試みられてきた。しかし、これらの方法では、熱膨張率の差によって接着面が剥離する等の問題があり実用化が阻まれている。かかる方法とは別に、水素タンクの表面を有機系のフィルムで覆うことも試みられているが、この方法による場合は、ある程度水素透過率は下がるものの、実用化に耐えられる十分な水素ガスバリア性は、必ずしも得られていないのが現状である(例えば、特許文献1)。

【特許文献1】特開2005-126651号公報
【0005】
一方、最近、粘土鉱物で出来た耐熱性のガスバリア材料が開発されている(特許文献2参照)。これは、層状の結晶構造を持つ珪酸塩等の粘土鉱物の、一方向に高配向、且つ、緻密な層を、少量の有機系バインダによって結合させ、単独で耐熱性と高いガスバリア性を有する柔軟なフィルム等に加工したものである。これまでFRPのガスバリア性能の向上には、フィラーとしての層状の珪酸塩(粘土)を添加物の形で用いることが行われてきた。そして、ある程度その効果は認められたものの、プラスチック自体の成形性が悪くなるため添加量には限界があった。特許文献1の技術は、従来フィラーとして少量添加した粘土を主材料とした膜にすると、飛躍的に耐熱性とガスバリア性が向上することを見出した画期的な技術であると考えられる。

【特許文献2】特開2006-188645号公報
【0006】
本発明者らは、前記技術と炭素繊維強化プラスチックの技術を有機的に結合することによって、従来得られなかった高いガスバリア性、特に水素ガスバリア性を有する複合材料を開発することを目的として、鋭意検討の結果本発明に至ったものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、高いガスバリア性、特に水素ガスバリア性を有する炭素繊維強化複合材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に記載された発明は、シート状の炭素繊維強化材とマトリックス樹脂とからなる炭素繊維強化プリプレグであって、該プリプレグの内部に、板状の結晶構造を持つ粘土鉱物が、一方向に配向し且つ緻密に積層したガスバリア層を有することを特徴とするガスバリア性の炭素繊維強化プリプレグである。
【0009】
本発明において炭素繊維強化プリプレグとは、炭素繊維強化材に樹脂を含浸させ、流動性や粘着性を調節して取り扱い性を良くしたシート状の成形中間体を意味する。
【0010】
請求項3に記載された発明は、シート状の炭素繊維強化材とマトリックス樹脂とからなる炭素繊維強化プリプレグの積層体の少なくとも一つの層間に、板状の結晶構造を持つ粘土鉱物が、一方向に配向し且つ緻密に積層したガスバリア性のフィルム状物を配置し、その後、該積層体を加熱及び/又は加圧することを特徴とするガスバリア性の炭素繊維強化プリプレグの製造方法である。
【0011】
請求項5に記載された発明は、シート状の炭素繊維強化材とマトリックス樹脂とからなる炭素繊維強化プリプレグの表面に、粘土鉱物の分散液を塗布又は含浸させ、該プリプレグの表面に、板状の結晶構造を持つ粘土鉱物が、一方向に配向し且つ緻密に積層したガスバリア層を形成させ、その後、該ガスバリア層を形成されたプリプレグを加熱及び/又は加圧するか、あるいは更に、該ガスバリア層の表面にマトリックス樹脂層又は前記炭素繊維強化プリプレグを配置した積層体とした後、該積層体を加熱及び/又は加圧することを特徴とするガスバリア性の炭素繊維強化プリプレグの製造方法である。
【0012】
請求項7に記載された発明は、炭素繊維強化材とマトリックス樹脂とからなる繊維強化プラスチックであって、その内部に、板状の結晶構造を持つ粘土鉱物が、一方向に配向し且つ緻密に積層したガスバリア層を有することを特徴とするガスバリア性の炭素繊維強化プラスチックである。
【0013】
本発明において炭素繊維強化プラスチックとは、炭素繊維強化材とマトリックス樹脂を用いて、各種の成形方法で成形加工して得られた成形品(完成品又は部品)を意味する。
【0014】
請求項9に記載された発明は、成形型に敷設された炭素繊維強化材とマトリックス樹脂とからなる炭素繊維強化プリプレグの積層体の少なくとも一つの層間に、板状の結晶構造を持つ粘土鉱物が、一方向に配向し且つ緻密に積層したガスバリア性のフィルム状物を配置し、その後、成形型を型締めし、加熱及び/又は加圧して成形することを特徴とするガスバリア性の炭素繊維強化プラスチックの製造方法である。
【0015】
請求項11に記載された発明は、成形型に敷設されたシート状の炭素繊維強化材の積層体の少なくとも一つの層間に、板状の結晶構造を持つ粘土鉱物が、一方向に配向し且つ緻密に積層したガスバリア性のフィルム状物を配置し、その後、樹脂トランスファー成形法又は樹脂フィルムインフュージョン成形法で成形することを特徴とするガスバリア性の炭素繊維強化プラスチックの製造方法である。
【0016】
請求項13に記載された発明は、フィラメントワインディング成形法において、マンドレルに炭素繊維強化材とマトリックス樹脂とからなる複合材を巻回・積層するに際し、板状の結晶構造を持つ粘土鉱物が、一方向に配向し且つ緻密に積層したガスバリア性のフィルム状物を、巻回途中の層中に配置し、その後、マトリックス樹脂を加熱硬化させることを特徴とするガスバリア性の炭素繊維強化プラスチックの製造方法である。
【0017】
前記いずれの発明の場合にも、粘土鉱物と共に、粘土鉱物に対して3~30質量%、好ましくは4~20質量%の有機添加物を、バインダーとして用いるのが好ましい。有機添加物としては特に限定されるものではないが、マトリックス樹脂と同一又は同種の成分を含むものが好適に用いられる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、従来得られなかった高いガスバリア性、特に水素ガスバリア性を有する炭素繊維強化複合材料(中間材料を含む)が得られる。そして、かかる複後材料は、ステンレスやアルミニウム等の金属材料に代わって軽量化を図ろうとする、例えば、水素タンクあるいは水素貯蔵設備等の容器材料に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明における「板状の結晶構造を持つ粘土鉱物が、一方向に配向し且つ緻密に積層したガスバリア層又はフィルム状物」は、特許文献2に開示されているが、その製法と特性について以下に説明する。
【0020】
本発明のガスバリア層又はガスバリア性のフィルム状物は、主体が粘土層からなり、その基本構成は、層厚約1nm、粒子径約1μm、アスペクト比約300程度の天然又は合成の膨潤性粘土、あるいは膨潤性粘土を有機化処理した有機化粘土が約70質量%以上と、分子の大きさ数nm以下の天然又は合成の低分子・高分子の有機添加物が約30質量%以下の構成からなる。ここで有機化処理とは、シリル化処理あるいは有機イオン交換処理を意味し、本発明においては、かくして得られたものも粘土鉱物に含むものとする。
【0021】
この粘土層は、層状結晶を、同じ向きに配向させて重ねて緻密に積層することで作製される。得られた粘土層は、粘土層の膜厚が3~100μmであり、ガスバリア性能は、粘土層の厚さ30μmで酸素透過度0.1cc/m/24hr/atm未満、水素透過度0.1cc/m/24hr/atm未満であり、面積は100×40cm以上に大面積化することが可能であり、粘土層に対して、垂直方向の直流電気抵抗は1メガΩ以上である。
【0022】
粘土としては、天然、あるいは合成物、好ましくは、天然スメクタイト及び合成スメクタイトの何れか、あるいは有機化粘土又はそれらの混合物を用い、これを、溶媒に加え、希薄で均一な分散液を調製する。粘土として、雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト及びノントロナイトからなる群のうちの一種以上を用いることができる。粘土分散液の濃度は、好適には0.5~15質量%、より好ましくは、1~10質量%である。
【0023】
次に、固体状又は液体状の有機添加物を、粘土分散液に加え、均一な分散液を調製する。有機添加物としては、粘着粘土膜のフレキシビリティー、あるいは機械的強度を向上させる、粘土と均一に混合するものであれば、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、グリセリン等の低分子化合物、デキストリン、澱粉、ゼラチン、寒天、小麦粉、グルテン等の天然物、後述のマトリックス樹脂として用いられる熱硬化性や熱可塑性樹脂を用いることができる。特に、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニル樹脂、シリコン樹脂が好ましい。有機添加物の添加の割合は、粘土鉱物に対して3~30質量%、好ましくは4~20質量%である。粘土分散液と有機添加物を混合する順序は、溶剤に粘土を加えた後に有機添加物を加えることも可能であり、その逆も可能である。また、粘土分散液と有機添加物溶液を別々に作製しておき、両者を混合することも可能である。
【0024】
粘土層の作製方法としては、例えば、分散液である液体を基材の上でゆっくりと蒸発させ、膜状に成形する。乾燥は、例えば、強制送風式オーブン中で30~100℃の温度条件下、好ましくは30~50℃の温度条件下で、10分間~半日間程度、好ましくは10分間~5時間、乾燥して粘土層が得られる。
【0025】
次に、粘土層をフィルム状物として得る場合には、前記のごとくして得られた粘土層を基材から剥離する。かくして自立膜として用いることのできるフィルム状物が得られる。
【0026】
本発明において、シート状の炭素繊維強化材とは、炭素繊維の織編物、多軸織物、ストランドの一方向配列シート状物等の平面状の形態のものを意味する。チョップトストランドを用いて作成された炭素繊維ペーパーであっても良い。なお、多軸織物とは、一般に、一方向に引き揃えた繊維強化材の束をシート状にして角度を変えて積層したもの(多軸織物基材)を、ナイロン糸、ポリエステル糸、ガラス繊維糸等のステッチ糸で、この積層体を厚さ方向に貫通して、積層体の表面と裏面の間を表面方向に沿って往復しステッチした織物をいう。
【0027】
本発明において用いられるマトリックス樹脂のうち熱硬化性のマトリックス樹脂は、特に限定されないが、具体例として、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、シアン酸エステル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、フェノキシ樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、マレイミド樹脂とシアン酸エステル樹脂の予備重合樹脂、ビスマレイミド樹脂、アセチレン末端を有するポリイミド樹脂及びポリイソイミド樹脂、ナジック酸末端を有するポリイミド樹脂等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上の混合物として用いることもできる。中でも、耐熱性、弾性率、耐薬品性に優れたエポキシ樹脂やビニルエステル樹脂が、特に好ましい。これらの熱硬化性樹脂には、硬化剤、硬化促進剤以外に、通常用いられる着色剤や各種添加剤等が含まれていてもよい。
【0028】
また、本発明において用いられるマトリックス樹脂のうち熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエステル、芳香族ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリアリーレンオキシド、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリ乳酸なる群から選ばれた1種若しくは2種以上の樹脂が挙げられる。また、用途によっては、一部熱硬化性樹脂と混合して用いることもできる。中でも、耐熱性、弾性率、耐薬品性に優れたポリアミド樹脂やアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂が、特に好ましい。これらの熱可塑性樹脂には、通常用いられる着色剤や各種添加剤等が含まれていても良い。
【0029】
本発明のプリプレグの製造法は特に限定されないが、公知の方法、例えば、シート状の炭素繊維強化材に、溶融した熱可塑性樹脂を含浸させる方法(溶融含浸法)、パウダー化した熱可塑性樹脂を流動床法や懸濁法によって塗布・融着させる方法、熱可塑性樹の溶液を繊維強化材に含浸させた後、溶媒を除去する方法を採用することができる。好ましいのは、溶融含浸法であり、中でも、フィルム状の樹脂と繊維強化材を重ね合わせて供給し、連続的にベルトの間で加熱・加圧して樹脂を溶融すると共に強化繊維に含浸させる方法である。これらの熱可塑性樹脂は、プリプレグ中の樹脂含量として10~90質量%、より好ましくは20~60質量%の範囲で用いられる。
【0030】
本発明のガスバリア性の炭素繊維強化プリプレグは、好ましくは、下記の方法で製造される。
【0031】
第1の方法は、前記のようにして得られたシート状の炭素繊維強化材とマトリックス樹脂とからなる炭素繊維強化プリプレグを用い、その積層体の少なくとも一つの層間に、これも前記のようにして得られた、板状の結晶構造を持つ粘土鉱物が、一方向に配向し且つ緻密に積層したガスバリア性のフィルム状物を配置し、その後、この積層体を加熱及び/又は加圧する方法である。
【0032】
加熱及び/又は加圧の方法・手段としては、例えば、この積層体をスチールベルトで挟み、スチールベルトごと熱ロール間に通すことによって加熱・加圧して、あるいは間欠プレスすることによって、マトリックス樹脂を軟化あるいは溶融させて積層体を一体化する方法がある。あるいは、ベルトプレスにより、積層体の加熱冷却を連続して行う方法、また、積層体を遠赤外線ヒータによって予熱した後、コールドプレスする方法、又は、加熱冷却プレスを用いるバッチ方式などがある。加熱温度はマトリックス樹脂の軟化点あるいは溶融点以上、加圧は0.1~10MPa程度が好ましい。
【0033】
第2の方法は、シート状の炭素繊維強化材とマトリックス樹脂とからなる炭素繊維強化プリプレグの表面に、粘土鉱物の分散液を塗布又は含浸させ、このプリプレグの表面に、板状の結晶構造を持つ珪酸塩を主成分とする粘土鉱物が、一方向に配向し且つ緻密に積層したガスバリア層を形成させ、その後、このガスバリア層を形成されたプリプレグを加熱及び/又は加圧するか、あるいは更に、このガスバリア層の表面にマトリックス樹脂層又は炭素繊維強化プリプレグを配置した積層体とした後、この積層体を加熱及び/又は加圧する方法である。かかる方法においては、プレプレグ中の樹脂成分が完全には固化していない状態で、その表面に粘土鉱物の分散液を塗布又は含浸させ、ガスバリア層を形成させるのが好ましい。例えば、マトリックス樹脂の溶液を繊維強化材に含浸させる方法の場合には、溶媒が完全に除去される前で樹脂が流動性を保持している間に、繊維強化材表面に粘土鉱物の分散液を塗布又は含浸させると、プリプレグとガスバリア層の接着がより強固なものが得られる。
【0034】
本発明のもう一つの態様は、炭素繊維強化材とマトリックス樹脂とからなる繊維強化プラスチックであって、その内部に、板状の結晶構造を持つ粘土鉱物が、一方向に配向し且つ緻密に積層したガスバリア層を有することを特徴とするガスバリア性の炭素繊維強化プラスチック、即ち、成形品(部品も含む)である。かかる成形品を成形するには以下のような方法が好ましい。
【0035】
例えば、かかる炭素繊維強化プラスチック成形品(部品も含む)は、前記のような方法で得られた本発明のシート状の炭素繊維強化プリプレグを、成形型に1枚あるいは複数枚積層・配置し、その後、成形型を型締めし、加熱及び/又は加圧して得られる。具体的には、金型プレス法、オートクレーブ法、加熱・冷間プレス法等で成形して炭素繊維強化プラスチックの成形品が得られる。この際、成形品中の繊維体積分率(Vf)、樹脂含量、あるいはガスバリア性能を調整するために、必要に応じて、繊維強化材、樹脂、あるいは粘土鉱物からなるガスバリア性のフィルム状物を追加積層することもできる。成形品中の樹脂の含有率は、通常、10~90質量%、好ましくは30~70質量%が適当である。
【0036】
本発明のシート状の炭素繊維強化プリプレグの積層状態は、目的とする成形品の構造上の要求に基づいて、適宜設定することができる。例えば、成形品がタンクのような薄肉円筒の場合、大きな応力は円周方向に発生する。この場合、プリプレグの繊維方向は、この応力に耐荷できるように円周方向を主とする。また、成形品内部の主たる応力方向を定めることができない、あるいはほぼ均一である場合には、例えば、プリプレグの積層方向を0°/45°/90°/45°/0°のようにし、強度や弾性係数が等方的な値を持つようにすれば良い。成形装置としては特に制限はなく、例えば、ホットプレス、オートクレーブを用いることができる。
【0037】
あるいは、前記炭素繊維強化プラスチックの成形品は、中間素材としての本発明のガスバリア層を有するプリプレグを経ることなく、以下の様な方法で製造することもできる。
【0038】
例えば、成形型に敷設された炭素繊維強化材とマトリックス樹脂とからなる炭素繊維強化プリプレグの積層体の少なくとも一つの層間に、板状の結晶構造を持つ粘土鉱物が、一方向に配向し且つ緻密に積層したガスバリア性のフィルム状物を配置し、その後、成形型を型締めし、加熱及び/又は加圧するとガスバリア性の炭素繊維強化プラスチックが得られる(請求項9の発明)。成形型の種類や加熱と加圧の手段は、何ら制限されず、例えば、ホットプレス成形法、オートクレーブ成形法、真空バッグ成形法を用いることができる。
【0039】
また、成形型に敷設されたシート状の炭素繊維強化材の積層体の少なくとも一つの層間に、板状の結晶構造を持つ粘土鉱物が、一方向に配向し且つ緻密に積層したガスバリア性のフィルム状物を配置し、その後、樹脂トランスファー成形法又は樹脂フィルムインフュージョン成形法で成形することによってガスバリア性の炭素繊維強化プラスチックが得られる(請求項11の発明)。
【0040】
シート状に加工した繊維強化材を使用した繊維強化プラスチック成形品は、樹脂トランスファー成形法(RTM法)又は樹脂フィルムインフュージョン成形法(RFI法)を用いて成形されるものがある。RTM法においては、繊維強化材を型に敷設した後、型のキャビティーに樹脂を注入して繊維強化材に樹脂を含浸させ、硬化させることにより繊維強化プラスチック成形品を得る。一方、RFI法においては、繊維強化材と共に樹脂フィルムを型に敷設して、加熱することにより繊維強化材に樹脂を含浸させ、硬化させることにより成形品を得る。
【0041】
また、フィラメントワインディング成形法において、マンドレルに炭素繊維強化材とマトリックス樹脂とからなる複合材を巻回・積層するに際し、板状の結晶構造を持つ粘土鉱物が、一方向に配向し且つ緻密に積層したガスバリア性のフィルム状物を、巻回途中の層中に配置し、その後、マトリックス樹脂を加熱硬化させることによってガスバリア性の炭素繊維強化プラスチックが得られる(請求項13の発明)。
【0042】
フィラメントワインディング成形法も公知の成形方法であり、回転しているマンドレルの上に、マトリックス樹脂を含浸させた繊維強化材(フィラメント、ロービング、テープ状物)を巻回して所定の肉厚にした後、硬化し脱型する成形方法である。フィラメントワインディング成形法でタンクやホースを成形することができる。
【実施例】
【0043】
(1)粘土膜Sの製造
粘土として、2gの天然モンモリロナイト(クニピアP、クニミネ工業株式会社製)を、60ccの蒸留水に加え、プラスチック製密封容器に、テフロン(登録商標)製回転子と共に入れ、激しく振とうし、均一な分散液を得た。次に、真空脱泡装置により、この粘土分散液の脱気を行った。この分散液を、長さ約30cm、幅20cmの真鍮製板の上に、厚さ約2mmで塗布し、これを水平に静置し、強制送風式オーブン中で60℃の温度条件下で30分乾燥し、厚さ約40μmの粘土層を得、これを真鍮製板から剥離し、粘土自立膜を得た。その後、送風定温恒温器中で、110℃で30分熱処理して粘土膜を得た(粘土膜S)。
【0044】
(2)粘土膜Hの製造
粘土として、2.7gの天然モンモリロナイト(クニピアP、クニミネ工業株式会社製)と0.72gの合成雲母(ソマシフME-100、コープケミカル株式会社製)とを、100ccの蒸留水に加え、プラスチック製密封容器に、テフロン(登録商標)回転子と共に入れ、25℃で2時間激しく振とうし、均一な分散液を得た。この分散液に、有機添加物として、メチルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合体(ダイセル化学工業株式会社製)を0.18g加え、激しく振とうし、天然モンモリロナイト及びイプシロンカプロラクタムを含む均一な分散液を得た。これを徐々に乾燥させ、粘土ペーストを得た。
【0045】
次に、真空脱泡装置により、この粘土ペーストの脱気を行った。そして、この粘土ペーストを、真鍮製トレイに塗布した。塗布には、ステンレス製地べらを用いた。スペーサーをガイドとして利用し、均一厚の粘土ペースト膜を成型した。ここでペーストの厚みを2mmとした。このトレイを強制送風式オーブン中において、60℃の温度条件下で1時間乾燥することにより、厚さ約40μmの均一な有機添加物複合粘土膜を得た。生成した粘土膜をトレイから剥離して、自立した、フレキシビリティーに優れた粘土膜を得た(粘土膜H)。
【0046】
(3)本発明の炭素繊維強化プリプレグの製造
図1に示したように、炭素繊維強化プリプレグに上記で得られた粘土膜S又はHを挟み込んで積層し、ホットプレスにより高温硬化させて成形する方法を試みた。炭素繊維強化プリプレグとしては、三菱レイヨン株式会社のPYROFIL#380(製品名)を用いた(PAN系の炭素繊維を用いた弾性率24tonのクロスに、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂を主成分とした樹脂を含浸させた常温タイプのプリプレグ)。
【0047】
このプリプレグを、150×100mmの大きさに切断したものを3枚積層し、その上に同じ大きさの前記粘土膜S又はHを1枚重ね、更に同じ大きさのプリプレグを3枚積層した。得られた積層体を、ホットプレス(USAホットプレス、型番#PE1645)で130℃で90分間、約900kgfで加圧して試験用の成形体を得た(昇温速度3℃/分)。
【0048】
(4)試験体の水素透過率の測定
前記で得られた、成形体から半径29mmの円盤を切り取った。そして、一方向の長さが55mmになるように端部を切断して試験片を作成した。試験片の厚みは、ほぼ1.1~1.2mmであった。かくして得られた試験片を、常温ガス透過試験装置を用いて水素ガスの透過率を測定した(試験体の面積が1521mm、一次側圧力が93~209kPa、二次側圧力が真空状態、温度が23.8~24.6℃で測定)。
【0049】
その結果、粘土膜Sを用いた場合の試験体の水素透過率は、0.0078×10-16mol・m/m・s・Pa(試験体の厚さは1.176mm)、粘土膜Hを用いた場合の試験体の水素透過率は、0.0035×10-16mol・m/m・s・Pa(試験体の厚さは1.174mm)であった。従って、本発明のガスバリア性の炭素繊維強化プリプレグは、以下に述べる比較例のものに比べて、水素透過率は2~3桁下がり、極めて高い水素ガスバリア性を有するものであることがわる。
【0050】
(5)比較例(公知例)
代表的な複合材であるガラス繊維強化プラスチック及び炭素繊維強化プラスチックの水素透過率は、凡そ0.5~5×10-16mol・m/m・s・Pa程度である。水素透過率は大きく、即ち、水素ガスバリア性が殆どないために、このままでは水素タンクの構造材料として使うことはできない。
【0051】
これまで炭素繊維強化プラスチックを水素タンク用の構造材料として使う場合、アルミニウム板をライナーとして、あるいはアルミ箔の接着等により高い水素ガスバリア性を持たせることが試みられてきた。具体的には、本発明者の実験では、ガラス繊維強化プラスチックに25μmのアルミ箔を貼り付ける場合、水素透過率は0.0002~0.01×10-16mol・m/m・s・Pa程度まで下がることが分かった。
【0052】
しかし、炭素繊維強化プラスチック等への適用は、その熱膨張率の差によって接着面が剥離するなど、実用化を阻んでいるのが実情である。このようにアルミニウム材料を使う試みとは別に、水素タンクの表面を有機系のフィルムで覆うことも考えられている。この方法によって水素透過率は下がるが、実用化に耐えられる十分な水素ガスバリア性は得られていない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
水素ガスバリア性能を有する炭素繊維強化プラスチックの利用分野は、あらゆる産業分野にわたっており、ステンレスやアルミニウム等の金属材料に代わって軽量化を図ろうとする、例えば、水素タンクあるいは水素貯蔵設備等の容器材料が対象になる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】炭素繊維強化プリプレグと粘土膜(ガスバリア性のフィルム状物)を積層し、ホットプレスにより高温硬化させて成形する方法を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1 炭素繊維強化プリプレグ
2 粘土膜
3 成形型
4 ホットプレス





図面
【図1】
0