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明細書 :エバネッセントカテーテルシステム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4423421号 (P4423421)
公開番号 特開2006-149938 (P2006-149938A)
登録日 平成21年12月18日(2009.12.18)
発行日 平成22年3月3日(2010.3.3)
公開日 平成18年6月15日(2006.6.15)
発明の名称または考案の名称 エバネッセントカテーテルシステム
国際特許分類 A61B   5/1459      (2006.01)
A61B   1/00        (2006.01)
FI A61B 5/14 321
A61B 1/00 300D
A61B 1/00 300U
請求項の数または発明の数 6
全頁数 15
出願番号 特願2004-348482 (P2004-348482)
出願日 平成16年12月1日(2004.12.1)
審査請求日 平成19年3月23日(2007.3.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504300181
【氏名又は名称】国立大学法人浜松医科大学
発明者または考案者 【氏名】宮川 厚夫
【氏名】土井 松幸
【氏名】山本 清二
【氏名】寺川 進
個別代理人の代理人 【識別番号】100088155、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 芳樹
【識別番号】100092657、【弁理士】、【氏名又は名称】寺崎 史朗
【識別番号】100108257、【弁理士】、【氏名又は名称】近藤 伊知良
【識別番号】100124800、【弁理士】、【氏名又は名称】諏澤 勇司
審査官 【審査官】東 治企
参考文献・文献 国際公開第03/005890(WO,A2)
特開2002-214132(JP,A)
特開平4-221743(JP,A)
調査した分野 A61B 5/145
A61B 10/00
G01N 21/27
A61B 1/00
特許請求の範囲 【請求項1】
クラッド層を除去し、コア層を露出した光ファイバを血中に留置してエバネッセント光を発生させ、該エバネッセント光で励起された蛍光物質からの蛍光を検出して蛍光強度に基づき血中の物質の存在量を測定するエバネッセントカテーテルシステムであって、
前記光ファイバの円柱形状先端の前記コアを覆うクラッドの略半分を除去することにより前記コアの上側円柱形状面にエバネッセント光を発生させ、
前記クラッド層を除去して露出したコアの下側円柱形状面に、所定波長領域の蛍光を通過させる光学フィルタを配置し、該光学フィルタの背面に受光素子を配置し、該受光素子で前記蛍光物質からの蛍光を検出することを特徴とするエバネッセントカテーテルシステム。
【請求項2】
励起光を送出するための第1の光ファイバと、蛍光を受光するための第2の光ファイバよりなり、前記第1の光ファイバのクラッド層を除去し、コア層を露出した光ファイバを血中に留置してエバネッセント光を発生させ、該エバネッセント光で励起された蛍光物質からの蛍光を前記第2の光ファイバで受光して蛍光強度に基づき血中の物質の存在量を測定するエバネッセントカテーテルシステムであって、
前記第1の光ファイバの円柱形状先端の前記コアを覆うクラッド層の略半分を除去することにより前記コアの上側円柱形状面にエバネッセント光を発生させ、
前記クラッドの略半分を除去したコアに対向する前記第2の光ファイバ中に反射鏡を配置し、該反射鏡で前記蛍光物質からの蛍光を反射することにより第2の光ファイバの出力端に前記蛍光を導くことを特徴とするエバネッセントカテーテルシステム。
【請求項3】
クラッド層を除去し、コア層を露出した光ファイバを血中に留置してエバネッセント光を発生させ、該エバネッセント光で励起された蛍光物質からの蛍光を検出して蛍光強度に基づき血中の物質の存在量を測定するエバネッセントカテーテルシステムであって、
前記光ファイバの円柱形状先端のコア全周囲のクラッド層を除去し、クラッド層を除去したコア部分の先端上部より根元に向かって傾斜面を形成し、該傾斜面に反射鏡を配置することにより前記除去したコアの円柱形状上面にエバネッセント光を発生させ、
前記反射鏡で前記蛍光物質からの蛍光を反射することにより光ファイバの出力端に前記蛍光を導くことを特徴とするエバネッセントカテーテルシステム。
【請求項4】
クラッド層を除去し、コア層を露出した光ファイバを血中に留置してエバネッセント光を発生させ、該エバネッセント光で励起された蛍光物質からの蛍光を検出して蛍光強度に基づき血中の物質の存在量を測定するエバネッセントカテーテルシステムであって、
前記光ファイバの円柱形状先端の前記コアを覆うクラッドの略半分を除去し、前記クラッドを除去して露出したコアの円柱形状上面にエバネッセント光を発生させ、前記クラッドを除去したコアの円柱形状面の下側円柱形状面に、光軸に対し所定の傾斜角になるように多数の反射鏡を配列することにより、
前記多数の反射鏡で前記蛍光物質からの蛍光を反射することにより光ファイバの出力端に前記蛍光を導くことを特徴とするエバネッセントカテーテルシステム。
【請求項5】
クラッド層を除去し、コア層を露出した光ファイバを血中に留置してエバネッセント光を発生させ、該エバネッセント光で励起された蛍光物質からの蛍光を検出して蛍光強度に基づき血中の物質の存在量を測定するエバネッセントカテーテルシステムであって、
前記光ファイバの円柱形状先端の前記クラッド層を除去したコア部分を、光軸に対し所定の角度になるような円錐形状に形成することにより、
前記円錐形状のコア部分の表面にエバネッセント光を発生させ、
前記蛍光物質からの蛍光を前記円錐形状のコア部分で反射させ光ファイバの出力端に前記蛍光を導くことを特徴とするエバネッセントカテーテルシステム。
【請求項6】
光ファイバの先端を血中に留置してエバネッセント光を発生させ、該エバネッセント光で励起された蛍光物質からの蛍光を検出して蛍光強度に基づき血中の物質の存在量を測定するエバネッセントカテーテルシステムであって、
前記光ファイバの円柱形状先端の前記クラッド層の保護層を削除するとともに該クラッド層内のコアを螺旋状に形成し、
前記螺旋状のコアより漏れる励起光がクラッド層の円柱形状表面に達することにより該クラッド層の円柱形状表面にエバネッセント光を発生させ、
前記蛍光物質からの蛍光を前記螺旋状のコア部分で反射させ光ファイバの出力端に前記蛍光を導くことを特徴とするエバネッセントカテーテルシステム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバの先端を血中に留置し、励起光を導入して励起された蛍光物質からの蛍光を検出する光ファイバを備えたエバネッセントカテーテル、さらに詳しくいえばカテーテル先端部におけるエバネッセント光の発生構造および蛍光物質からの蛍光を確実に受光できる構造を考慮したカテーテルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
血中の濃度変化などを測定または検出する方法の1つとして採血し、血球分離膜や遠心分離器などを用いることにより血球分離後に、非血球成分を通常の方法で定量することが行われている。
一方、血中から直接定量する場合、血中に注入した蛍光物質(医薬品など)から蛍光を検出する際に赤血球中に存在するヘモグロビンにより広い波長帯域の光が吸収されるため、ヘモグロビンの光吸収の影響を受けないようにすることは、多くの医薬品では困難である。上記ヘモグロビンの光吸収の影響を受けないで定量できる医薬品はごく少数しか存在しない。
【0003】
ところで、光ファイバエバネッセント光を利用し血液中などに含まれる有機物を検出する光学的方法が特許文献1(自動化されたシステム及びサンプルの分析方法)に開示されている。これは光感知センサを構成する光ファイバのクラッド層を除去してコア層の表面にエバネッセント光を発生させ、この部分を血液などの液体標本に浸漬し、液体標本からの検出蛍光を光感知センサで受光し、光学呼び掛けモジュールを経て血液などの液体標本の有機物を検出するものである。
また、特許文献2(光検出装置)には、光ファイバ(ガイド)を利用し、液体標本(血液など)を光ガイドに接触させ、エバネッセント界内で発光物質を励起し、光電検出器により測定する光検出装置が開示されている。
【0004】
上記特許文献1,2はいずれも、エバネッセント光を利用して血液中などの発光組成物の選択的,定量的な測定はできるものであるが、引用文献1における、光ファイバ先端部のクラッドを除きコアの被膜の上にエバネッセント光を発生させる光学照明系は一般的な構造であり、その受光光学系は光ファイバの反射帰還光路によって構成されている。また、引用文献2は光ガイドの表面にエバネッセント光を発生させ、受光系は光ガイドの他端側に別途設けた光電検出器により行うものである。また、特許文献1,2は共通して液体標本を別途取り出して定量するものである。
したがって、生体内で定量することができない構成であり、血中のヘモグロビンの影響を除外するためには必要に応じて予め赤血球を分離しなければならない。
生体内でヘモグロビンの影響をなくして定量するためには、光ファイバの先端部の照明系と受光系の構成が重要であるが、特許文献1,2には光ファイバの先端部に関し、特別な構造の詳細な開示はない。
【0005】
つぎに光ファイバ先端のコア部を尖鋭化することにより照明系および受光系が形成されるシステムに注視した場合、光ファイバの先端構造部分を示すものとして特許文献3,4および5が開示されている。
特許文献3(全反射を用いた吸収スペクトル測定用光ファイバセンサおよびそのシステム)は、特許文献3の図1に示すように光ファイバのクラッド部の一部を除去するとともに、光ファイバの先端に全反射によるエバネッセント光を用いたセンサ部を備え、このセンサ部を生体内に挿入し、センサ部を生体組織に直接接触させ、全反射を繰り返して伝搬してきた光波によりセンサ部でエバネッセント光を発生させ、エバネッセント光がセンサ部に接触した生体組織の化学成分によって吸収されスペクトルを変化させ全反射幕で反射して再度、化学成分によって吸収させ反射光を、光ファイバを逆光させるものである。
【0006】
これは、生体組織中の吸収スペクトルを測定するものであって、血中の蛍光物質からの蛍光を検出するものではない。そして、生体組織中の伝搬をなくし伝搬に伴う多重散乱を発生せず、散乱の影響を極力下げ、かつ空間分解能を有する吸収スペクトルの精度を向上させるものである。
引用文献3の光ファイバ先端部のクラッド部付近の構成は、クラッド部の外側に発生するエバネッセント光の強度を入射する光の強度に応じたものにするものであり、エバネッセント光が生体組織の化学成分で吸収されて変化するスペクトル変化を捉えることはできる。しかし、光ファイバ外部のエバネッセント光が生じている領域で発生した蛍光を光ファイバで補足し、入射側へ戻すことはできない。
【0007】
特許文献4(光ファイバ及びその製造方法)は生体組織の血液などを含めて化学物質の存在などを検出する近接場光学顕微鏡の光プローブの形状であり、特許文献4の図1,2,5,7および8に示すように先端部はクラッドからコアを円錐状に突出させ、先端の開口部を除き突出部のコアおよびクラッド表面に遮光膜を形成したものである。
この構造の光ファイバプローブは、突出部の円錐状のコア部にも遮光膜を設けて集光させることにより、コア検出端部の表面に発生されるエバネッセント場を強くして検出感度を高めるものである。
しかしながら、エバネッセント場にある試料による散乱光を、特許文献4の図11に示すように表面積が非常に小さい先端部の開口部に入射させるものであるので、広い面積の散乱光を集める点では不利となりトータルとしての受光パワーの増加は小さいと考えられる。また、生体組織中で直に蛍光物質からの蛍光の強度を検出するものではない。
【0008】
さらに、特許文献5(光ファイバ及びその製造方法)は、物質の表面の光の波長より小さい領域に局在するエバネッセント光を検出するフォトン走査型顕微鏡などに用いられるものであり、コアの一端を先細り状に先鋭化し、先鋭化したコアの表面に遮光性の被覆層を形成し先端部を露出させた開口部を有する光ファイバで、この光ファイバの他端より光を入出力させ、光ファイバの端部から入射した光は上記先細り状の部分で集光されて開口部から外部に照射されるものである。これにより物質表面に近接させて発生させたエバネッセント光を散乱させ、この散乱光を開口部を介してコアに導き光ファイバの他端から出力させるものである。
【0009】
この構成は、従来、クラッド径が検出端部の長さより非常に大きかったためクラッド周端部が試料の表面に衝突して試料または光プローブの先端が破損するおそれがあったという問題を解決し、クラッドの周端部が試料表面に衝突することなく、光プローブの検出効率を高くするものである。
この構成も特許文献4と類似する形状で、上述した通り、散乱光を集める点では不利となりトータルとしての受光パワーの増加は小さいと考えられる。

【特許文献1】特許3429282号公報
【特許文献2】特表2000-516719号公報
【特許文献3】特開2002-214132号公報
【特許文献4】特開平10-2905号公報
【特許文献5】特許3278164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記諸問題を解決するもので、その目的はエバネッセント光を利用する光ファイバを備えたカテーテルにおいて、赤血球中ヘモグロビンの光吸収に妨害されず、カテーテル先端周囲の物質の蛍光強度や蛍光スペクトルを確実に測定できる光ファイバ先端部の構造を有し、エバネッセント光発生部分に存在する蛍光を発生する物質の存在量を測定することができるエバネッセントカテーテルシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために本発明の請求項1は、クラッド層を除去し、コア層を露出した光ファイバを血中に留置してエバネッセント光を発生させ、該エバネッセント光で励起された蛍光物質からの蛍光を検出して蛍光強度に基づき血中の物質の存在量を測定するエバネッセントカテーテルシステムであって、前記光ファイバの円柱形状先端の前記コアを覆うクラッドの略半分を除去することにより前記コアの上側円柱形状面にエバネッセント光を発生させ、前記クラッド層を除去して露出したコアの下側円柱形状面に、所定波長領域の蛍光を通過させる光学フィルタを配置し、該光学フィルタの背面に受光素子を配置し、該受光素子で前記蛍光物質からの蛍光を検出することを特徴とする。
本発明の請求項2は、励起光を送出するための第1の光ファイバと、蛍光を受光するための第2の光ファイバよりなり、前記第1の光ファイバのクラッド層を除去し、コア層を露出した光ファイバを血中に留置してエバネッセント光を発生させ、該エバネッセント光で励起された蛍光物質からの蛍光を前記第2の光ファイバで受光して蛍光強度に基づき血中の物質の存在量を測定するエバネッセントカテーテルシステムであって前記第1の光ファイバの円柱形状先端の前記コアを覆うクラッド層の略半分を除去することにより前記コアの上側円柱形状面にエバネッセント光を発生させ、前記クラッドの略半分を除去したコアに対向する前記第2の光ファイバ中に反射鏡を配置し、該反射鏡で前記蛍光物質からの蛍光を反射することにより第2の光ファイバの出力端に前記蛍光を導くことを特徴とする。
本発明の請求項3は、クラッド層を除去し、コア層を露出した光ファイバを血中に留置してエバネッセント光を発生させ、該エバネッセント光で励起された蛍光物質からの蛍光を検出して蛍光強度に基づき血中の物質の存在量を測定するエバネッセントカテーテルシステムであって、前記光ファイバの円柱形状先端の所定範囲のコア全周囲のクラッド層を除去し、クラッド層を除去したコア部分の先端上部より根元に向かって傾斜面を形成し、該傾斜面に反射鏡を配置することにより前記除去したコアの円柱形状上面にエバネッセント光を発生させ、前記反射鏡で前記蛍光物質からの蛍光を反射することにより光ファイバの出力端に前記蛍光を導くことを特徴とする。
本発明の請求項4は、クラッド層を除去し、コア層を露出した光ファイバを血中に留置してエバネッセント光を発生させ、該エバネッセント光で励起された蛍光物質からの蛍光を検出して蛍光強度に基づき血中の物質の存在量を測定するエバネッセントカテーテルシステムであって、前記光ファイバの円柱形状先端の前記コアを覆うクラッドの略半分を除去し、前記クラッドを除去して露出したコアの円柱形状上面にエバネッセント光を発生させ、前記クラッドを除去したコアの円柱形状面の下側円柱形状面に、光軸に対し所定の傾斜角になるように多数の反射鏡を配列することにより、前記多数の反射鏡を配列することにより、前記多数の反射鏡で前記蛍光物質からの蛍光を反射することにより光ファイバの出力端に前記蛍光を導くことを特徴とする。
本発明の請求項5は、クラッド層を除去し、コア層を露出した光ファイバを血中に留置してエバネッセント光を発生させ、該エバネッセント光で励起された蛍光物質からの蛍光を検出して蛍光強度に基づき血中の物質の存在量を測定するエバネッセントカテーテルシステムであって、前記光ファイバの円柱形状先端の前記クラッド層を除去したコア部分を、光軸に対し所定の角度になるような円錐形状に形成することにより、前記円錐形状のコア部分の表面にエバネッセント光を発生させ、前記蛍光物質からの蛍光を前記円錐形状のコア部分で反射させ光ファイバの出力端に前記蛍光を導くことを特徴とする。
本発明の請求項6は、光ファイバの先端を血中に留置してエバネッセント光を発生させ、該エバネッセント光で励起された蛍光物質からの蛍光を検出して蛍光強度に基づき血中の物質の存在量を測定するエバネッセントカテーテルシステムであって、前記光ファイバの円柱形状先端の前記クラッド層の保護層を削除するとともに該クラッド層内のコアを螺旋状に形成し、前記螺旋状のコアより漏れる励起光がクラッド層の円柱形状表面に達することにより該クラッド層の円柱形状表面にエバネッセント光を発生させ、前記蛍光物質からの蛍光を前記螺旋状のコア部分で反射させ光ファイバの出力端に前記蛍光を導くことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上記構成によれば、エバネッセント光はコア層のごく近傍、すなわちコア層表面の約0.1μmで発生し、赤血球は数μmの大きさがあり、さらに蛍光物質として例えばリボフラビンやプロポフォール,ビリルビンの分子サイズは赤血球に対し1/1000以下のnm単位であるため、赤血球中ヘモグロビンに影響されることは少なくエバネッセント光で励起された蛍光物質からの蛍光を確実に検出することができる。この蛍光強度は、エバネッセント光の部分に存在する蛍光物質量に依存するので、蛍光強度に基づきリボフラビンなどの蛍光発生物質の存在量を演算することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳しく説明する。
図1は、本発明によるエバネッセントカテーテルシステムの構成例を示す図である。
この例は第3,第4,第5および第6の実施の形態(図6,図7,図8および図9)のカテーテル構造に適用される光学系および回路系の構成図である。
制御部8は操作卓12からの指示に基づき光源制御部11に対し光源起動の制御信号を送る。光源制御部11は半導体レーザやキセノンランプ等の光源13を起動させる。光源13の励起光は集光レンズ14,励起フィルタ15を通過し反射鏡16,ダイクロイックミラー3で反射され集光レンズ2により光コネクタ1の光ファイバ端に導かれる。光ファイバ端から入射した励起光はエバネッセントカテーテルの先端に伝達される。
エバネッセントカテーテルの先端部からの蛍光は同じ光ファイバ端から出力され、集光レンズ2,ダイクロイックミラー3を通過し、さらにダイクロイックミラー3の背後にある蛍光を通過させる蛍光フィルタ(バンドパスフィルタ)4,集光レンズ5を介してフォトマルチプライヤやフォトダイオード等の光検出器6に入射する。
なお、図示しないが、測定する蛍光物質に適した励起波長と蛍光波長を選択するために、発光波長の異なる半導体レーザやLEDを複数設けたり、励起フィルタや蛍光フィルタを手動や自動で交換する機構を付属させることも可能である。
【0014】
光検出器6は検出器制御部7bから起動信号およびタイミング信号を受けることにより蛍光が検出可能状態になる。光検出器6で検出した蛍光(所定の波長領域)は電気信号に変換され検出器用増幅器7aで増幅される。
制御部8は、制御プログラムに基づきCPUなどの演算素子によって光源制御や測定動作を行うとともに受信した増幅器7aの出力をA/D変換して所定の式に基づき蛍光強度を演算する。そして蛍光強度に基づき血中の蛍光物質の存在量を算出する。
モニタ9には測定動作のためのメニュー画面が表示されるとともに測定した蛍光強度および蛍光物質の存在量が表示される。メニュー画面では光源の出力,波長領域などのスペックが表示され、操作卓12により光源の発光波長や出力,蛍光フィルタの選択などを調整することができる。また、出力すべき演算内容についても調整することが可能である。
記録計10は時間とともに血中のリボフラビンなどの蛍光物質による蛍光強度の変化が刻まれる。
また、半導体レーザは単色光であるため光源側に励起フィルタなどのバンドパスフィルタは不要となる。
なお、図示しないが、エバネッセントカテーテルには注射用細管やバルーン膨脹用パイプ等を付属させることも可能である。
【0015】
多くの生体内物質や医薬品は蛍光を持っているので、蛍光物質としてターゲットとなる可能性がある物質は数多い。例として以下のものが挙げられる。
生体内物質 ;ビリルビン,ビタミンB類など
医薬品 ;プロポフォール,リボフラビン,インドシアニングリーンなど
上記医薬品は多くの場合、静脈注射により生体内に注入する。また筋肉注射や経口投与(飲み薬)などでも血中濃度変化を測定することが可能な種類もある。
【0016】
光ファイバに入射させる光、すなわエバネッセント光を発生させる光は、対象とする蛍光物質(リボフラビン,インドシアニングリーンなど)の励起光が用いられる。具体的にはリボフラビンでは、450nm付近のものが、インドシアニングリーンでは750nm付近の光が用いられる。なお、上記「付近」とは励起波長帯の光を指す意味である。
また、光ファイバから出力させる光は、蛍光発光波長であり、リボフラビンによる蛍光では525nmをピーク波長とする波長帯,インドシアニングリーンによる発光では830nmをピークとする波長帯となる。
【0017】
つぎに励起光強度から得られる蛍光強度の関係を計算例を用いて説明する。
蛍光強度は
em=2.30359 ×Iex×ε×C×φ ・・・(1)
で表される。
ただし、Iem:単位体積(cm3)当たりの蛍光光子数
ex:単位面積(cm2)当たりの励起光光子数
ε: 蛍光分子のモル吸光係数
フルオレッセイン:90,000M -1cm-1
C: 蛍光分子のモル濃度 1μM
φ: 蛍光分子の量子収率 フルオレッセイン:0.9
ここに例に挙げたフルオレッセインはモル吸光係数も量子収率も高く、牛体内の蛍光分子では1/100以下のものも多い。また、濃度も1μMより遙かに薄いことが多い。したがって、理想的な最高の強度の計算となる。
【0018】
使用する光ファイバは、直径rが0.25mmで、エバネッセント光を生じている長さLが10mmとする。
前記光ファイバに入射させる励起光強度Fi を10mWとする(正確には光子数で示さなければならないが、励起光と蛍光の波長は近いので、近似的にエネルギーの単位で表示。以下も同様)。
したがって、単位面積当たりの励起光強度Fex
ex=Fi /(π×r2)=10/(3.14159×0.01252)=20371.8 mWcm-2・・・(2)で表される。
コアと血液の屈折率により異なるが、この強度の光がエバネッセント光となっているとする。
【0019】
励起されている体積Vは、エバネッセント光が発生している厚さtを100nm(0.00001cm)とすると、
V=2 ×π×r ×L ×t
=2 ×3.14159 ×0.0125×10×0.00001 =0.00000785398cm3・・・(3)
したがって(1)式に(2)(3)式を代入すると、
発生する蛍光強度はFem
em=0.0298415 mWとなる。
よって入射させた励起光強度の約1/335が蛍光となる。
【0020】
後述の図4の第1の実施の形態ではエバネッセント光を発生している面積は、上記計算条件の半分で、蛍光の入射効率は30%程度と考えられる。したがって、約1/2000が蛍光として受光できることになる。図5以下の第2~第6までの実施の形態はさらに入射効率が悪いことから受光できる蛍光はさらに弱いことになる。
【0021】
図2は、本発明によるエバネッセントカテーテルシステムの構成例を示す図で、カテーテル先端の構造の第2の実施の形態に適用する例である。励起光入射用と蛍光出力用にそれぞれ光ファイバを用いている点で図1とは異なるので相違する構造のみを説明する。
光コネクタ17の端部には2つの光ファイバ端部17a,17bがあり、光ファイバ端部17aには蛍光出力を受信する出力光学系が図1と同様に接続されている。一方、光ファイバ端部17bには集光レンズ18,反射鏡16,19,励起フィルタ15および集光レンズ14が配置され、半導体レーザなどの光源13からの励起光を光ファイバ端部17bに導く。
この実施形態における光源側の反射鏡16,19はエバネッセントカテーテルの光コネクタ17の入射側と射出側の間隔が小さいため用いているが、光源13に小型の半導体レーザ等を用いれば、省略することが可能である。また、半導体レーザは単色光であるため、光源側に励起フィルタ用のバンドパスフィルタ等は不要となる。
【0022】
図3は励起光と蛍光の分離光学系の一例を示す図である。
戻ってきた励起光の処理は図3に示すように受光光学系にダイクロイックミラーまたはノッチフィルタ81を挿入して励起光を励起光吸収コ-ン82に向けて送出する。検出器6に励起光が戻らないようにして蛍光の相対的レベルを上げている。
上記の1枚のフィルタでは実質は10-3~10-4程度の減衰率である。このため、後述の図4の構造の実施の形態では測定が難しくなるため、ロックインアンプなどの信号処理を行うことが必要である。また、後述の図5以下の構造の実施の形態では2枚以上のフィルタを用いて励起光を防止する必要がある。実際の測定では暗黒化で行うことは難しいため、蛍光帯域だけを透過するバンドパスフィルタの使用では外部光の妨害を十分に除去するのは困難であり、ロックインアンプなどを利用した信号処理が必要になる。
【0023】
つぎにカテーテルの先端部の実施の形態を説明する。
図4は、本発明によるエバネッセントカテーテルシステムのカテーテル先端部の第1の実施の形態を示す図で、(a)は正面断面図,(b)は側面断面図,(c)は斜視図をそれぞれ示している。
カテーテル21の先端部付近において光ファイバの半円に渡り保護層22およびクラッド23が除去された構造である。また、光ファイバの先端部に反射鏡を配置することにより、エバネッセント光の強度を高め、励起光の血液中への漏出を減少できる。除去した部分の下半分のコア24aに対向して円弧状に光学フィルタ26が配置されている。さらにその背面にはフォトダイオード28が同じように円弧状に配置されている。フォトダイオード28は図示しない電線に接続され、電線はカテーテル21の他端に到達するように内装されている。
光学フィルタ26は光の干渉作用を利用して任意の波長を数nmから数10nmのバンド幅で取り出すことができる干渉フィルタなどが利用できる。例えば、蛍光物質としてリボフラビンを用いれば525nmを中心に数nmから数10nm幅の波長域を通過させ、他の波長はカットされる。
【0024】
光学フィルタ26は薄膜蒸着技術により、半円筒状のフォトダイオード28は半導体作成技術によりカテーテルの先端部に形成される。
この実施の形態は、測定項目毎に専用のカテーテルが必要であり、光学フィルタ26の1枚では励起光を完全にカットできないので、受光素子で受光した後、信号処理回路にロックインアンプなどを挿入することが必要である。
このカテーテルの先端部の構造は図1の信号処理装置では受光光学系は必要ではなく光源の励起光を送り出す光学系のみの構成であり、図示しない電線が検出器用増幅器7に入力する構成となる。
光ファイバ内に励起光29が入射すると、エバネッセント光25が剥き出しとなったコア24の上半分の表面に発生する。蛍光物質で発生する蛍光30は光学フィルタ26で励起光29が除かれてフォトダイオード28に入射する。
この実施の形態は光ファイバが1本であるため、カテーテルの外形が細くでき、通常のカテーテルと同一サイズ以下にすることができる。酸素飽和度を測定するカテーテルは、通常2本の光ファイバを用いているが、1本の光ファイバとしてカテーテルの外形サイズを小さくすることができる。また、蛍光を受ける効率が高い。
【0025】
図5は、本発明によるエバネッセントカテーテルシステムのカテーテル先端部の第2の実施の形態を示す図で、(a)は正面断面図,(b)は側面断面図,(c)は斜視図をそれぞれ示している。
この実施の形態は図2の信号処理装置を用いるものである。
励起光用の光ファイバの先端付近において半円に渡り保護層32およびクラッド33が除去された構造である。また、光ファイバの先端部に反射鏡を配置することにより、エバネッセント光の強度を高め、励起光の血液中への漏出を減少できる。蛍光受光のための他方の光ファイバの対応する部分には軸はずし放物面鏡36や平面鏡などの反射鏡が形成されている。
【0026】
励起光用の光ファイバ内を励起光38が入射すると、エバネッセント光35が剥き出しとなったコア34の上半分の表面に発生する。蛍光物質で発生する蛍光39は反射鏡で反射され蛍光受光用の光ファイバの端部に導かれる。
酸素飽和度を測定するカテーテルは通常2本の光ファイバを用いており、同じサイズでありながら、励起光と蛍光を異なる光ファイバを通しているため励起光と蛍光の分離は容易である。また、蛍光を受ける効率も比較的高く、製作も容易である。
【0027】
図6は、本発明によるエバネッセントカテーテルシステムのカテーテル先端部の第3の実施の形態を示す図で、(a)は正面断面図,(b)は側面断面図をそれぞれ示している。
カテーテル41の先端部付近においてクラッド43が除去され、コア44の先端部は円柱先端部の一端から斜め方向に切り取られた形状44aになっている。切り取られた面には軸はずし放物面鏡や平面鏡などの反射鏡47が形成されている。
励起光48が入射すると、エバネッセント光45はクラッド43が削除されたコア形状44aの上側表面に発生する。エバネッセト光45で励起され蛍光物質から発せられる蛍光49は反射鏡47により反射され光ファイバを戻る。
【0028】
図7は、本発明によるエバネッセントカテーテルシステムのカテーテル先端部の第4の実施の形態を示す図で、(a)は正面断面図,(b)は側面断面図をそれぞれ示している。
カテーテル51の先端部付近において上側半円に渡りクラッド53が除去された構造である。このクラッド53を除去したコア部分54aの下側半分の面はフレネル面と類似の形状の反射鏡57が多数形成されている。
励起光58が入射すると、エバネッセント光55はクラッド53が削除されたコア形状54aの上側表面に発生する。エバネッセト光55で励起され蛍光物質から発せられる蛍光59は多数の反射鏡57により反射され光ファイバを戻る。
【0029】
上記第3,第4の実施の形態は図1の信号処理装置を用いるものである。
また、これらカテーテルはその外形を細くでき製作が容易であり、特に第3の構造は簡単に製作できる。しかしながら反射鏡の影響でエバネッセント光以外の光が強く漏出する。検出面積は第2の実施の形態と略同じ程度であり、蛍光を受ける効率は低いので、信号処理装置で励起光と蛍光信号の十分な分離が必要となる。
【0030】
図8は、本発明によるエバネッセントカテーテルシステムのカテーテル先端部の第5の実施の形態を示す図で、(a)は正面断面図,(b)は側面図をそれぞれ示している。
カテーテル61の先端部付近において保護層62およびクラッド63が除去され、コア64は円錐形状になっている。
励起光68が入射すると、円錐形状のコア64aの表面全体にエバネッセント光65が発生する。エバネッセント光65により蛍光物質で発せられ蛍光69は光ファイバを戻る。
この実施の形態はカテーテルの外形を細くでき製作が容易である。なお、光ファイバのテーパの影響でエバネッセント光以外が強く漏出する。検出面積は狭く、蛍光を受ける効率は低いので、信号処理装置で励起光と蛍光信号の十分な分離が必要となる。
【0031】
図9は、本発明によるエバネッセントカテーテルシステムのカテーテル先端部の第6の実施の形態を示す図で、(a)は正面断面図,(b)は側面図をそれぞれ示している。
カテーテル71の先端部付近において保護層72のみが除去され円柱形のクラッド73aが露出している。この露出したクラッド73の先端部73aの内部はコア74が螺旋状74aに形成されている。また、光ファイバの終端部に反射鏡77を形成することにより、エバネッセント光の強度を高め、励起光の血液中への漏出を減少できる。
励起光79がクラッド73aに突き抜ける。これによりクラッド73aの表面にエバネッセント光75が発生する。また、反射鏡77で反射した励起光は同様に励起光79の進行方向に対し波形状74aの立ち下がり面でクラッド73aに突き抜け、クラッド73aの表面でエバネッセント光75を発生させる。エバネッセント光75により蛍光物質で発せられた蛍光80は、逆の経路で光ファイバに捉えられ、入射端へ戻る。
この実施の形態は上記と同様、カテーテルの外形を細くでき、検出面積を他の実施の形態に比較し広くすることができる。光ファイバの蛇行の影響でエバネッセント光以外の光が強く漏出する。また蛇行光ファイバの製作は他の実施の形態に比べ難しくなる。戻る励起光も多くなるため、信号処理装置で励起光と蛍光信号の十分な分離が必要となる。
【0032】
図10は、エバネッセントカテーテルの一例を示す図である。
カテーテルは光ファイバを挿入する部分,サンプリングポートおよび液体または薬剤投与ポートを持っている。光ファイバの端部にはコネクタが接続されており、信号処理装置である測定装置に接続される。
図11はエバネッセントカテーテルを生体組織中に留置した状態を示す図である。上腕部根元からカテーテルを挿入し、心臓の所定の静脈部分に先端部が達している。本発明によれば、生体組織中にもかかわらず、血中ヘモグロビンの影響を軽減した蛍光物質の存在量の測定を可能にするものであり、励起光に対し測定可能な蛍光出力を得るカテーテルの先端部の構造を提供できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
臨床検査や薬剤モニタするために生体組織中に導入して血中濃度変化などを測定するカテーテルシステムである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明によるエバネッセントカテーテルシステムの構成例を示す図で、カテーテル先端の構造の第3,第4,第5および第6の実施の形態に適用する場合である。
【図2】本発明によるエバネッセントカテーテルシステムの構成例を示す図で、カテーテル先端の構造の第2の実施の形態に適用する場合である。
【図3】励起光と蛍光の分離光学系の一例を示す図である。
【図4】本発明によるエバネッセントカテーテルシステムのカテーテル先端部の第1の実施の形態を示す図で、(a)は正面断面図,(b)は側面断面図,(c)は斜視図をそれぞれ示している。
【図5】本発明によるエバネッセントカテーテルシステムのカテーテル先端部の第2の実施の形態を示す図で、(a)は正面断面図,(b)は側面断面図,(c)は斜視図をそれぞれ示している。
【図6】本発明によるエバネッセントカテーテルシステムのカテーテル先端部の第3の実施の形態を示す図で、(a)は正面断面図,(b)は側面断面図をそれぞれ示している。
【図7】本発明によるエバネッセントカテーテルシステムのカテーテル先端部の第4の実施の形態を示す図で、(a)は正面断面図,(b)は側面断面図をそれぞれ示している。
【図8】本発明によるエバネッセントカテーテルシステムのカテーテル先端部の第5の実施の形態を示す図で、(a)は正面断面図,(b)は側面図をそれぞれ示している。
【図9】本発明によるエバネッセントカテーテルシステムのカテーテル先端部の第6の実施の形態を示す図で、(a)は正面断面図,(b)は側面図をそれぞれ示している。
【図10】エバネッセントカテーテルの一例を示す図である。
【図11】生体組織中にエバネッセントカテーテルを留置し,血中の蛍光物質の存在量を測定するシステム例を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1 光コネクタ
2,5,14,18 集光レンズ
3 ダイクロイックミラー
4 蛍光フィルタ
6 検出器(フォトダイオードなど)
7 検出器用増幅器・検出器制御部
8 制御部
9 モニタ
10 記録計(X-Yプロッタ)
11 光源制御部
12 操作卓
13 光源(半導体レーザ,LED,キセノンランプなど)
15 励起フィルタ
16,19 反射鏡
21,31,41,51,61,71 カテーテル
22,32,72 保護層
23,33,43,53,63,73 クラッド
24,34,44,54,64,74 コア
25,35,45,55,65,75 エバネッセント光
26 光学フィルタ
27,37,47,57,77 反射鏡
28 フォトダイオード
29,38,48,58,68,79 励起光
30,39,49,59,69,80 蛍光
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10