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明細書 :乗り物酔い防止回復装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4892731号 (P4892731)
公開番号 特開2008-230575 (P2008-230575A)
登録日 平成24年1月6日(2012.1.6)
発行日 平成24年3月7日(2012.3.7)
公開日 平成20年10月2日(2008.10.2)
発明の名称または考案の名称 乗り物酔い防止回復装置
国際特許分類 B60R  11/02        (2006.01)
FI B60R 11/02 C
請求項の数または発明の数 4
全頁数 15
出願番号 特願2007-077249 (P2007-077249)
出願日 平成19年3月23日(2007.3.23)
審査請求日 平成22年3月12日(2010.3.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504300181
【氏名又は名称】国立大学法人浜松医科大学
発明者または考案者 【氏名】寺川 進
【氏名】山本 清二
【氏名】高矢 昌紀
個別代理人の代理人 【識別番号】100088155、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 芳樹
【識別番号】100092657、【弁理士】、【氏名又は名称】寺崎 史朗
【識別番号】100108257、【弁理士】、【氏名又は名称】近藤 伊知良
【識別番号】100124800、【弁理士】、【氏名又は名称】諏澤 勇司
【識別番号】100128107、【弁理士】、【氏名又は名称】深石 賢治
審査官 【審査官】加藤 信秀
参考文献・文献 特開2006-188132(JP,A)
特開2006-069522(JP,A)
特開2006-035980(JP,A)
特開2005-271902(JP,A)
特開2006-138710(JP,A)
特開2002-154350(JP,A)
特開2003-154900(JP,A)
特開2006-130944(JP,A)
特開2008-225245(JP,A)
調査した分野 B60R 11/02
特許請求の範囲 【請求項1】
乗り物の加速度の方向及び大きさを検出する加速度センサと、
所定の放射点から画面の手前方向に画像が移動する動画像を生成する動画像生成手段と、
前記加速度センサにより検出された加速度の方向及び大きさに応じて、前記動画像生成手段により生成される動画像の放射点、及び動画像の方向を制御する動画像制御手段と、
前記動画像生成手段により生成された動画像を出力する出力手段と、
を備える乗り物酔い防止回復装置。
【請求項2】
前記動画像制御手段は、前記動画像生成手段により生成される動画像に、前記加速度センサにより検出された加速度の方向及び大きさに応じて視点を誘導するマーカを表示させることを特徴とする請求項1に記載の乗り物酔い防止回復装置。
【請求項3】
前記動画像制御手段は、前記加速度の方向及び大きさに応じて、前記動画像生成手段により生成される動画像の輝度を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の乗り物酔い防止回復装置。
【請求項4】
前記乗り物酔い防止回復装置は、前記乗り物に乗る者の頭部の動きを検出する頭部動き検出手段を更に備え、
前記動画像制御手段は、前記動画像生成手段により生成される動画像に、前記加速度センサにより検出された加速度の方向及び大きさ、並びに頭部動き検出手段により検出された前記頭部の動きに応じて当該頭部の動きを指示する情報を表示させることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の乗り物酔い防止回復装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、車酔い等の乗り物酔いを防止し、あるいは乗り物酔いから回復させる乗り物酔い防止回復装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車酔い等の乗り物酔いを防止するための薬剤があり、過敏な神経作用を抑えることにより、強い酔い止め効果を発揮する。
【0003】
また、運転者以外の者に対して、乗り物の右左折等の操作を示す情報を提示して、操作を予知させることにより、乗り物酔いを防止する方法が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。また、乗り物に乗っている者に、ルートの画像を示して、当該ルートの先端部分を加速度やハンドルの操作角度に応じて湾曲させることによって、乗り物酔いを防止する方法が提案されている(特許文献3参照)。

【特許文献1】特開2002-154350号公報
【特許文献2】特開2003-154900号公報
【特許文献3】特開2006-130944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、市販の乗り物酔いを防止する薬剤は睡眠薬としての効果を持つことも多く、服用したものが眠くなるという副作用があり、眠っている間に目的地に到着することになる。更に、効果が強い薬剤ほど、目的地に到着した後も眠気が続き、半日ほどの現実感の喪失が起こることもある。
【0005】
また、特許文献1及び2に記載された方法においても、操作を知覚していたとしても、乗り物の振動の人体へ影響を低減することはできず、十分に乗り物酔いを防止することができない。また、この方法では一旦、乗り物酔いになった場合に、回復させることができない。更に、特許文献3に記載された方法においても、先端部分を湾曲させるだけの画像では、十分な乗り物酔いの防止効果を奏することができない。
【0006】
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、副作用や眠気を発生させずに、乗り物酔いを十分に防止し、あるいは乗り物酔いから回復させることができる乗り物酔い防止回復装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る乗り物酔い防止回復装置は、乗り物の加速度の方向及び大きさを検出する加速度センサと、所定の放射点から画面の手前方向に画像が移動する動画像を生成する動画像生成手段と、加速度センサにより検出された加速度の方向及び大きさに応じて、動画像生成手段により生成される動画像の放射点、及び動画像の方向を制御する動画像制御手段と、動画像生成手段により生成された動画像を出力する出力手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る乗り物酔い防止回復装置では、乗り物内部にて用いられる。当該乗り物内部において、所定の放射点から画面の手前方向に画像が移動する動画像が動画像生成手段により生成され、出力手段により出力される。また、上記の乗り物に加速度センサが設置されて、当該加速度センサによって乗り物の加速度の方向及び大きさが検出される。検出された乗り物の加速度の向き及び大きさに応じて、動画像制御手段によって上記生成され出力される動画像の放射点及び動画像の向きが制御される。
【0009】
上記の乗り物に乗っている者がこの動画像を見ることにより、乗り物に乗っている者の眼球を乗り物酔いしないように動かすことができる。このような眼球の動きとしては、例えば、眼球が乗り物の加速度の方向及び大きさに適した眼振の発生や、眼球の滑車動眼筋が過度に働くことの防止等が考えられる。これにより本発明に係る乗り物酔い防止回復装置によれば、副作用や眠気を発生させずに、乗り物酔いを十分に防止し、あるいは乗り物酔いから回復させることができる。
【0010】
また、動画像制御手段は、動画像生成手段により生成される動画像に、加速度センサにより検出された加速度の方向及び大きさに応じて視点を誘導するマーカを表示させることが望ましい。この構成によれば、乗り物に乗っている者の視覚や平衡器官を、更に乗り物酔いをしない状態にさせることができ、より確実に乗り物酔いを防止し、あるいは乗り物酔いから回復させることができる。
【0011】
また、動画像制御手段は、加速度の方向及び大きさに応じて、動画像生成手段により生成される動画像の輝度を制御することが望ましい。この構成によれば、必要なとき、即ち加速度の変化が頻繁となり乗り物酔いが誘発されそうなときにのみ、乗り物に乗っている者に動画像を見させることができる。
【0012】
また、乗り物酔い防止回復装置は、乗り物に乗る者の頭部の動きを検出する頭部動き検出手段を更に備え、動画像制御手段は、動画像生成手段により生成される動画像に、加速度センサにより検出された加速度の方向及び大きさ、並びに頭部動き検出手段により検出された頭部の動きに応じて当該頭部の動きを指示する情報を表示させることが望ましい。この構成によれば、更に確実に乗り物酔いを防止し、あるいは乗り物酔いから回復させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、乗り物に乗っている者に対して、眼球を乗り物酔いしないように動かすことができる動画像が提供される。これにより、本発明によれば、副作用や眠気を発生させずに、乗り物酔いを十分に防止し、あるいは乗り物酔いから回復させることができる。また、頭部を左右と前後に適切に傾けることにより、前庭器官と三半規管とに加わる加速度刺激の方向を通常の重力による方向のみに集中させることができ、乗り物酔いの誘発力を下げ、乗り物酔いからの回復力を上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面とともに本発明による乗り物酔い防止回復装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0015】
図1は、本発明に係る乗り物酔い防止回復装置1の実施形態を概略的に示す構成図である。本実施形態に係る乗り物酔い防止回復装置1は、乗り物に乗っている者に対して、乗り物酔いを防止し、乗り物酔いから回復させる動画像を提供することによって、乗り物に乗っている者の乗り物酔いを防止し、乗り物酔いから回復させるための装置である。本実施形態では、乗り物酔い防止回復装置1は、自動車やバス等の車両2に乗っている搭乗者3の乗り物酔いを防止、あるいは回復させる装置である。ここで、乗り物酔いの防止及び回復の対象となる搭乗者3は、図1に示すように例えば、車両の後部座席2aに座っている者等の、車両2の運転者以外の者である。
【0016】
図1に示すように、乗り物酔い防止回復装置1は、車両用加速度センサ10と、頭部用加速度センサ20と、情報処理装置30と、ディスプレー40とを含んで構成されている。
【0017】
車両用加速度センサ10は、車両2の揺れ、即ち、車両2の加速度の方向及び大きさを検出する加速度センサである。車両用加速度センサ10は、車両2の内部の部材2bに固定して設けられ、車両2の揺れが確実に伝わるようにされる。また、車両用加速度センサ10は、車両2の進行方向に対して、何れの方向に加速度が発生したかが検出されるように向き等が適切に設定されて設けられる。車両用加速度センサ10は、ケーブル50によって情報処理装置30と接続されており、当該ケーブル50を通じて検出した車両2の加速度の方向及び大きさを示す情報を情報処理装置30に出力する。車両用加速度センサ10は、具体的には、ジャイロスコープを利用したセンサーモジュール等の装置により実現される。
【0018】
頭部用加速度センサ20は、車両2の搭乗者3の頭部3aの動きを検出する頭部動き検出手段である。頭部用加速度センサ20は、搭乗者3の頭部3aのアダプタとしての帽子21と、当該帽子21の上部に固定されて設けられる加速度センサ装置22とを含んで構成される。頭部用加速度センサ20では、搭乗者3の頭部3aに装着された帽子21が、頭部3aの動き、即ち、頭部3aの加速度の方向及び大きさを加速度センサ装置22に伝え、加速度センサ装置22が頭部3aの加速度の方向及び大きさを検出する。加速度センサ装置22は、ケーブル50によって情報処理装置30と接続されており、当該ケーブル50を通じて検出した頭部3aの加速度の方向及び大きさを示す情報を情報処理装置30に出力する。頭部用加速度センサ20の加速度センサ装置22は、車両用加速度センサ10と同様に、具体的には、ジャイロスコープを利用したセンサーモジュール等の装置により実現される。
【0019】
情報処理装置30は、所定の放射点から画面の手前方向に画像が移動する動画像を生成して、当該動画像の情報をディスプレー40に出力される装置である。情報処理装置30は、生成する動画像を、車両用加速度センサ10及び頭部用加速度センサ20から入力する加速度の情報に基づいて動画像の生成を制御する。情報処理装置30は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ等のハードウェアにより構成され、具体的にはPC(PersonalComputer)等に相当する。これらのハードウェアが動作することにより、情報処理装置30の後述する機能が発揮される。情報処理装置30は、図2に示すように、機能的な構成要素として、加速度入力部31と、動画像生成部32と、動画像制御部33と、出力部34とを備えて構成される。
【0020】
加速度入力部31は、車両用加速度センサ10及び頭部用加速度センサ20から入力する加速度の情報を入力する手段である。加速度入力部31は、入力した加速度の情報を動画像制御部33に出力する。
【0021】
動画像生成部32は、所定の放射点から画面の手前方向に画像が移動する動画像を生成する動画像生成手段である。即ち、動画像生成部32は、車両2が移動しているときにその進行方向を視点とした三次元的な表示がなされる動画像を生成する。そのような動画像は、具体的には図3に示すように、画像における乗り物が走行する地面を示す部分101と、左右の壁面を示す部分102,103と、例えば空等の上側の面を示す部分104とを透視図法によりそれぞれ平面的に表示し、それらの部分が図中の矢印で示すように手前方向に流れるように移動するものである。このように移動する各面を示す部分は、所定の放射点から移動しているものとする。また、各面を示す部分の色彩をそれぞれ異なるものとしてもよい。例えば、上側の面104は空の色を表す水色としてもよい。また、立体感を表すため、奥の方(放射点に近い部分)は色彩を濃くして影があるように示して、手前の方は色彩を薄くするようにしてもよい。
【0022】
ここで放射点(消失点)とは、透視図法における中心点を示すものである。放射点は、車両2の揺れが検出されていないときは、図3に示すようにほぼ画面の中央に位置する。また、画像が手前方向に移動していることがより明確になるように、各面を示す部分101~104に移動方向と垂直な帯105(全体としては筒状な表示となる)を表示させて、それが手前に迫ってくるようにしてもよい。
【0023】
このような動画像は、搭乗者3にしてみると、車両2の移動に応じた動画像となる。動画像生成部32により生成される動画像は、搭乗者3に対して前に進んでいるように感じさせる動画像であればよいので、上記のような地面や壁面を平面的に表示したものでなくてもよい。例えば、背景を暗くし光る星が放射点から手前に迫ってくるような動画像でもよい。動画像生成部32は、生成した動画像を出力部34に出力する。
【0024】
動画像制御部33は、加速度センサ10により検出された車両2の揺れ(加速度)の方向及び大きさに応じて、動画像生成部32により生成される動画像の放射点、及び動画像の方向を制御する動画像制御手段である。上記のように車両2の揺れ(加速度)の方向及び大きさを示す情報は、加速度入力部31から動画像制御部33に入力される。
【0025】
例えば、動画像制御部33は、加速度入力部31から入力される情報により、搭乗者3からみて、左側への揺れ(図1では、奥行き方向への揺れ)が発生したことを検出すると、図4に示す画像のように、動画像生成部32に対して、動画像の放射点を中心から左側へ移動させる制御を行う。また、放射点を移動させる度合は、遠心加速度の大きさに応じて決められる。遠心加速度の大きさが大きければ大きく左側へ移動させ、遠心加速度の大きさが小さければ小さく左側へ移動させる。動画像生成部32は、その制御に基づいて、動画像を生成する。また、動画像制御部33は、動画像生成部32に対して、画像の向きを左側に傾ける制御を行う。この画像上の路面の傾きに頭の傾きを合わせることで、前庭器官と三半規管に過剰な刺激が加わらないようにすることができる。動画像生成部32は、動画像制御部33による上記の制御に基づいて、動画像を構成する画像を生成する。
【0026】
また、動画像制御部33は、加速度入力部31から入力される情報により、搭乗者3からみて、右側への揺れ(図1では、手前方向への揺れ)が発生したことを検出すると、動画像生成部32に対して、動画像の放射点を中心から右側へ移動させる制御を行う。
【0027】
また、動画像制御部33は、加速度入力部31から入力される情報により、搭乗者3からみて、上側への揺れが発生したことを検出すると、動画像生成部32に対して、動画像を放射点と共に動画像を上方へ平行移動させる制御を行う。また、動画像制御部33は、加速度入力部31から入力される情報により、搭乗者3からみて、上側への揺れが発生したことを検出すると、動画像生成部32に対して、動画像を放射点と共に動画像を上方へ平行移動させる制御を行う。
【0028】
また、動画像制御部33は、加速度入力部31から入力される情報により、搭乗者3からみて、後方への揺れ(図1では、左側方向への揺れ)が発生したことを検出すると、図5(a)に示すように、動画像生成部32に対して、動画像の放射点を中心から下方へ移動させる制御を行う。また、この場合、動画像生成部32に対して、搭乗者3の視点を誘導するマーカ106を動画像の上方に表示させる制御を行う。マーカ106は、搭乗者3の視点を引くような表示であれば足り、例えば、図5に示すように、手前に移動する画像と色彩の異なる立方体の画像を用いることができる。
【0029】
同様に、動画像制御部33は、加速度入力部31から入力される情報により、搭乗者3からみて、前方への揺れ(図1では、右側方向への揺れ)が発生したことを検出すると、図5(b)に示すように、動画像生成部32に対して、動画像の放射点を中心から上方へ移動させる制御を行う。また、この場合、動画像生成部32に対して、搭乗者3の視点を誘導するマーカ106を動画像の下方に表示させる制御を行う。
【0030】
このように動画像制御部33により制御されて動画像生成部32により生成された動画像は、車両2に発生した揺れに対応したものとなり、搭乗者3に対して、車両2の揺れに応じた自身の揺れに応じた視覚を与えることができる。これにより、搭乗者3の眼球が、搭乗者3に加わる加速度の方向及び大きさに適した眼振を起こす。また、搭乗者3の眼球の滑車動眼筋が過度に働くことを防止し、前庭器官と三半規管に与えられる加速度を、通常の重力による刺激の方向に集束することができる。これらにより、揺れが発生しているにもかかわらず、搭乗者3が乗り物酔いを起こすことを防止することができる。
【0031】
また、搭乗者3の視線が表示されたマーカに注がれると、当該視線の変更による頭部の動きにより、搭乗者3の前庭器官や三半規管におけるリンパ液の流れや回転を少なくして、搭乗者3に加わる加速度を通常の重力加速度の方向のみにかかるようにすることができる。これにより、揺れに対する搭乗者3の乗り物酔いの防止効果を向上させることができる。
【0032】
なお、頭部用加速度センサ20から入力される加速度の情報による、動画像制御部33の動画像に対する制御は後述する。
【0033】
出力部34は、動画像制御部33により制御されて動画像生成部32により生成された動画像をディスプレー40に出力する出力手段である。
【0034】
ディスプレー40は、ケーブル50によって情報処理装置30と接続されており、当該ケーブル50を通じて情報処理装置から入力された動画像を、搭乗者3が見ることが可能なように表示する表示手段である。ディスプレー40は、その表示部分が搭乗者3によって見えるように、車両2内に設けられる。例えば、図1に示すように、搭乗者3が座席2aに座ったときの前方(図1における右側)に、表示部分が搭乗者3に対向するように設けられる。ディスプレー40、具体的には例えば、20インチ程度の液晶ディスプレーにより実現される。以上が、乗り物酔い防止回復装置1の構成である。
【0035】
引き続いて、図6のフローチャートを用いて、本実施形態に係る乗り物酔い防止回復装置1の動作を説明する。この動作は、車両2に搭乗者3が乗って、車両2が運転されて、車両2に乗り物酔いの原因となる揺れが発生する場合のものである。なお、搭乗者3は、車両2に乗る際に、予め頭部用加速度センサ20の帽子21を被っておく。
【0036】
乗り物酔い防止回復装置1では、車両用加速度センサ10によって、車両2に発生する揺れ(加速度)の向き及び大きさが検出される(S01)。検出された揺れの向き及び大きさを示す情報は、車両用加速度センサ10から情報処理装置30の加速度入力部31に入力される。また、頭部用加速度センサ20によって、搭乗者3の頭部3aの動き(加速度)の向き及び大きさが検出される。検出された揺れの向き及び大きさを示す情報は、頭部用加速度センサ20から情報処理装置30の加速度入力部31に入力される。
【0037】
続いて、動画像制御部33では、通知された揺れの方向及び大きさを示す情報に基づいて、動画像生成部32により生成される動画像の放射点及び動画像の方向が決定される(S02)。また、図5に示すようにマーカを表示するか否かも決定される。動画像制御部33により決定された動画像に係る情報は、動画像生成部32に送信される。
【0038】
動画像生成部32では、動画像制御部33により決定された動画像に係る情報に基づいて動画像が生成される(S03)。動画像生成部32により生成された動画像は、出力部34を介してディスプレー40に出力される。ディスプレー40では、情報処理装置30から入力された動画像が、搭乗者3に向けて表示される(S04)。動画像の表示は、動画像制御部33により制御された当該動画像の放射点及び当該動画像の方向が、当該制御の基礎となった揺れに対応するように行われる。動画像の方向とは、放射点の位置によって決まるものと、車両2の底面およびそれに平行な路面が傾くことを含む。遠心加速度と重力加速度を合成した方向に垂直な面(実効的な水平面)が、搭乗者3に分かるように表示する。
【0039】
このとき、搭乗者3は、より確実に乗り物酔いを防止、又は乗り物酔いから回復させるために、動画像の傾き(車内における実効的水平面、すなわち車内のコップの水が作る水面)にあわせて、自身の頭部3aを傾けることが望ましい。例えば、動画像が図4に示すようなものであれば、頭部3aを、搭乗者3からみて左後に傾けることが望ましい。そこで、図7に示すように、動画像制御部33によって、動画像に頭部3aの動きを指示する情報110を表示させることが望ましい。頭部3aの動きを指示する情報110は、車両用加速度センサ10により検出された加速度の方向及び大きさ、並びに頭部用加速度センサ20により検出された頭部3aの動きに応じて生成される。具体的には、例えば、頭部用加速度センサ20により検出された頭部の動きが、車両用加速度センサ10により検出された加速度の方向及び大きさを打ち消すものでなかった場合に、頭部3aの動きを指示する情報110はそれを打ち消させるように頭部3aを動かすようにするものとされる。なお、頭部3aの制御については、必ずしも行う必要はなく、その場合、頭部用加速度センサ20は、乗り物酔い防止回復装置1に含まれていなくてもよい。
【0040】
また、ヘッドフォン等の音声信号により搭乗者3に通知を行う手段を設けておき、それによって車両2の向かう方向を通知し、搭乗者3の頭部3aの実際の傾きと、酔わないために必要な傾き(上記の頭部3aの動きを指示する情報110に対応する傾き)との誤差に応じた音量の音を聞かせることで誤差を無くすような搭乗者3の努力を助けることとしてもよい。
【0041】
揺れの検出(S02)から動画像の表示(S04)までは、連続的に繰り返し行われる。例えば、車両用加速度センサ10による揺れの方向及び大きさの検出が、例えば、0.01秒後毎等の一定間隔で行われて、上記の動作が行われる。
【0042】
また、動画像制御部33は、車両用加速度センサ10によって検出される、車両2に発生する加速度の方向及び大きさに応じて、動画像生成部32によって生成される動画像の輝度を制御することが望ましい。具体的には、例えば、検出された車両2に発生する加速度がほとんど変化せず、車両2の速度や方向が一定であるか、停止しているときには、動画像の輝度とコントラストとを低下させ、車両2に加速度が発生しているときには動画像の輝度とコントラストとを適正なレベルに高めることが望ましい。
【0043】
車両2の搭乗者3には、車両2の揺れに応じた揺れが発生する。通常、揺れが発生すると、搭乗者3は乗り物酔いになるが、上述したように、乗り物酔いを防止する動画像の効果により、搭乗者3には乗り物酔いは発生しない。また、既に、搭乗者3が乗り物酔いしている場合には、上述したように乗り物酔いから回復させることができる。即ち、動画像の効果は、上述したように、搭乗者3が上記の動画像を見ることによる、搭乗者3の眼球や三半規管等の平衡器官に対する効果である。
【0044】
従って、本実施形態に係る乗り物酔い防止回復装置1によれば、薬剤による副作用や眠気を発生させずに、かつ、眼球や三半規管等の平衡器官に対して乗り物酔いに対して効果的な作用を及ぼすことから、乗り物酔いを十分に防止し、あるいは乗り物酔いから回復させることができる。また、乗り物酔い防止回復装置1を継続して使用することによって、搭乗者3は乗り物酔いに慣れ、乗り物に乗っても乗り物酔いにならないようになる。
【0045】
また、本実施形態のように、乗り物酔いを起こさせないように、搭乗者3の眼球を適切に動かすようなマーカを表示することとすれば、搭乗者3がマーカを見ることによって、搭乗者3の視覚や平衡器官を更に乗り物酔いをしない状態にさせることができ、より確実に乗り物酔いを防止し、あるいは乗り物酔いから回復させることができる。
【0046】
また、本実施形態のように、車両用加速度センサ10によって検出される、車両2に発生する加速度の方向及び大きさに応じて、動画像の輝度を制御することとすれば、乗り物酔いの防止あるいは回復効果に必要な場合のみに、搭乗者3に動画像を注視させることができ、より適切に乗り物酔いを十分に防止し、あるいは乗り物酔いから回復させることができる。
【0047】
なお、本実施形態では、乗り物酔い防止回復装置1は、自動車等の車両2の搭乗者3に対する乗り物酔いを防止又は回復させるものであったが、乗り物酔いの対象となる乗り物は車両2だけに限られない。
【0048】
例えば、乗り物として船を対象とする場合は、動画像を水平線が移動するようなものとすることが望ましい。また、搭乗者3の前面だけでなく側面にもディスプレーを設け、側面に応じた動画像を表示させることが望ましい。例えば、加速度センサによって搭乗者3に対して上下方向の加速度が検出された場合(船がヨーイングする場合)は、前面のディスプレーの水平線は上述した実施形態と同様に上下に移動させ、側面のディスプレーの水平面は傾くようにする。また、加速度センサによって搭乗者3に対して左右方向の加速度が検出された場合(船がローリングする場合)は、前面のディスプレーの水平線は上述した実施形態と同様に傾かせ、側面のディスプレーの水平面は上下に移動するようにする。上記の場合、搭乗者3は前面か側面のディスプレーの水平線を注視する努力をし、水平線が上下した場合は頭を固定したまま眼でそれを追跡する。水平線が傾いた場合には、傾きがキャンセルされる方向に同期させて頭を傾ける。また、大きな波(船の躯体軸の向きが変わらずに、船の高さが変動する)による加速度が生じる場合は、加速度センサからの信号に基づき、水平線の模様を、明暗を連続的に変えた縞状に表示し、その縞が水平線の位置を中心に流れるように移動することで、眼振を引き起こすようにする。信号量に応じた流れの速度とする。
【0049】
また、乗り物として飛行機を対象とする場合は、船の場合と同様であるが、ディスプレーは、搭乗者3の前方に置くだけでよい。ジャイロ等の加速度センサからの信号を使用し回転量に応じた信号を縦縞が画面上で水平に移動する動画像を提示し、搭乗者3はそれを目で追うことと画面外に出たときは画面の反対から出現する縞に眼を戻して、この縞を追跡する動作を促す(眼振を人為的に発生させる)。頭部の傾きに関しては上述した車両の場合に従う。
【0050】
また、上述したディスプレー40は、PC、ノートPC、携帯ゲーム器、表示機能付携帯電話、機内テレビ、ヘッドマウント表示器、ゴーグル式表示器、壁掛けビデオ装置等の2次元画面を表示できるものを利用してもよい。なお、ディスプレー40は、大きな視野角で刺激できるものの方が効果は大きい。また、上記のPC等は、ディスプレー40の機能だけでなく、本実施形態における情報処理装置30の機能を有していてもよい。
【0051】
また、乗り物の進行方向として、左右、上下の方向を提示して注意を引くために、定位性の高い音源を備えることも効果を高める。左に方向転換する場合は、ステレオ音声の左チャネルから適当な音を流すなどの、背景効果をつけることができる。また、表示画像そのものを、コンテンツのある一般のテレビ画像としたり、子供などが興味を持てる漫画としたりすることもよい。
【実施例1】
【0052】
実際に、自動車に、上記の実施形態に係る乗り物酔い防止回復装置を搭載し、酔いやすいと自信のある被験者を対象に、ヘアピンカーブの多い道、急な坂道、発進・停止の頻繁な繰り返しの自動車走行により、酔いの感覚の程度をスコア化して効果を試験した。いずれの被験者に対しても、本装置を使うと、使わないときに比べて、劇的な酔いの感覚の抑制があった。通常5分以内の乗車で酔いが始まる被験者でも、1時間以上酔わなかった。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施形態に係る乗り物酔い防止回復装置の構成を示す図である。
【図2】乗り物酔い防止回復装置に含まれる情報処理装置の構成を示す図である。
【図3】乗り物酔い防止回復装置が備えるディスプレーに表示される画面の例を示した図である。
【図4】乗り物酔い防止回復装置が備えるディスプレーに表示される画面の別の例を示した図である。
【図5】乗り物酔い防止回復装置が備えるディスプレーに表示される画面の別の例を示した図である。
【図6】本発明の実施形態に係る乗り物酔い防止回復装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】乗り物酔い防止回復装置が備えるディスプレーに表示される画面の別の例を示した図である。
【符号の説明】
【0054】
1…乗り物酔い防止回復装置、2…車両、3…搭乗者、3a…頭部、10…車両用加速度センサ、20…頭部用加速度センサ、30…情報処理装置、31…加速度入力部、32…動画像生成部、33…動画像制御部、34…出力部、40…ディスプレー。
図面
【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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