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明細書 :軟骨疾患のモデル非ヒト動物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5240756号 (P5240756)
公開番号 特開2009-131169 (P2009-131169A)
登録日 平成25年4月12日(2013.4.12)
発行日 平成25年7月17日(2013.7.17)
公開日 平成21年6月18日(2009.6.18)
発明の名称または考案の名称 軟骨疾患のモデル非ヒト動物
国際特許分類 A01K  67/027       (2006.01)
A61K  38/00        (2006.01)
A61K  48/00        (2006.01)
A61K  31/7088      (2006.01)
A61P  19/08        (2006.01)
G01N  33/15        (2006.01)
G01N  33/50        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI A01K 67/027 ZNA
A61K 37/02
A61K 48/00
A61K 31/7088
A61P 19/08
G01N 33/15 Z
G01N 33/50 Z
C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 13
全頁数 15
出願番号 特願2007-308884 (P2007-308884)
出願日 平成19年11月29日(2007.11.29)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 第2回臨床ストレス応答学会大会抄録集 掲載頁:30頁、演題番号20(平成19年11月19日)第2回臨床ストレス応答学会大会事務局発行に発表
審査請求日 平成22年11月26日(2010.11.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504224153
【氏名又は名称】国立大学法人 宮崎大学
発明者または考案者 【氏名】今泉 和則
【氏名】日野 真一郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100096183、【弁理士】、【氏名又は名称】石井 貞次
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
審査官 【審査官】濱田 光浩
参考文献・文献 Mol. Cell. Biol.,2007年 3月,Vol. 27, No. 5,p. 1716-1729
調査した分野 A01K 67/027
C12N 15/00
CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
PubMed
特許請求の範囲 【請求項1】
BBF2H7遺伝子の機能不全を特徴とする軟骨疾患のモデル非ヒト動物。
【請求項2】
軟骨疾患が軟骨形成異常を伴うものである、請求項1に記載のモデル非ヒト動物。
【請求項3】
軟骨疾患がさらに骨格形成異常を伴うものである、請求項2に記載のモデル非ヒト動物。
【請求項4】
非ヒト動物が哺乳動物である、請求項1~3のいずれか1項に記載のモデル非ヒト動物。
【請求項5】
哺乳動物がげっ歯類である、請求項4に記載のモデル非ヒト動物。
【請求項6】
げっ歯類がマウスである、請求項5に記載のモデル非ヒト動物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のモデル非ヒト動物に候補薬剤を投与することを含む、軟骨疾患の治療薬をスクリーニングする方法。
【請求項8】
軟骨疾患が軟骨形成異常を伴うものである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
候補薬剤が、小分子、ペプチド、蛋白質又は核酸である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
候補薬剤が、BBF2H7蛋白質、その変異体又は化学修飾誘導体である、請求項7又は9に記載の方法。
【請求項11】
候補薬剤が、BBF2H7蛋白質又はその変異体をコードするDNAを含むベクターである、請求項7又は9に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~6のいずれか1項に記載のモデル非ヒト動物に軟骨疾患治療薬を投与することを含む、軟骨疾患治療薬の薬効を評価する方法。
【請求項13】
軟骨疾患が軟骨形成異常を伴うものである、請求項12に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、BBF2H7遺伝子の機能不全を特徴とする軟骨疾患のモデル非ヒト動物に関する。
【0002】
本発明はまた、上記非ヒト動物を使用して、軟骨疾患の治療薬をスクリーニングする方法、あるいは、軟骨疾患治療薬の薬効を評価する方法に関する。
本発明はさらに、軟骨疾患治療剤に関する。
【背景技術】
【0003】
神経変性疾患や糖尿病などの多くの難治性疾患の発症に小胞体ストレスが深く関与することが明らかになってきた。本発明者らは先に、小胞体ストレスから回避するためのシグナル伝達に重要な役割を担う新規の小胞体局在転写因子であるOASIS(Old Astrocyte Specifically-Induced Substance)を見出し、さらにOASIS蛋白質の活性化又は発現を促進することにより、小胞体ストレスから生じる神経細胞死を抑制し得ることや、神経変性疾患を治療する可能性があることなどを見出した(特許文献1)。その後、本発明者らは、OASIS遺伝子の機能を解明するために、OASIS遺伝子欠損マウスを作出し、このマウスが、意外にも骨粗鬆症と酷似する病変を示すことを見出した(特許文献2)。
【0004】
この小胞体ストレスに関与する別の小胞体局在転写因子の探索研究の過程で、本発明者らはさらに、小胞体局在転写因子BBF2H7を新たに同定し、この蛋白質が、小胞体(ER)ストレスのトランスジューサーであり、損傷した神経細胞内での非ホールディング蛋白質の蓄積を防止する重要な役割を果たしうることを見出した(非特許文献1)。
【0005】
非特許文献1によると、BBF2H7遺伝子は、肺、膀胱、子宮、脾臓、精巣などで多く発現され、その他、心臓、肝臓、腎臓、副腎、顎下腺、大脳、膵臓、前立腺などでも発現している。また、この蛋白質は、OASIS蛋白質と機能的ドメインの点で類似した構造を有しており、OASISファミリーの1つのメンバーであることが示されている(非特許文献1)。
【0006】

【特許文献1】特開2005-52016
【特許文献2】WO2007/102240
【非特許文献1】S.Kondoら,Mol.Cell.Biol.2007,27(5):1716-1729
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、BBF2H7の生体内での役割又は機能については、上記の知見以外は不明であった。このために、本発明者らは、BBF2H7遺伝子欠損非ヒト動物を作製し、その特性を明らかにすることを試みた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
その結果、本発明者らは、意外にも、BBF2H7が軟骨形成に密接に関わる重要な働きをもつことを今回見出した。
【0009】
したがって、本発明は、以下の特徴を含む。
(1)BBF2H7遺伝子の機能不全を特徴とする軟骨疾患のモデル非ヒト動物。
(2)軟骨疾患が軟骨形成異常を伴うものである、上記(1)に記載のモデル非ヒト動物。
(3)軟骨疾患がさらに骨格形成異常を伴うものである、上記(2)に記載のモデル非ヒト動物。
【0010】
(4)非ヒト動物が哺乳動物である、上記(1)~(3)のいずれかに記載のモデル非ヒト動物。
(5)哺乳動物がげっ歯類である、上記(4)に記載のモデル非ヒト動物。
(6)げっ歯類がマウスである、上記(5)に記載のモデル非ヒト動物。
【0011】
(7)上記(1)~(6)のいずれかに記載のモデル非ヒト動物に候補薬剤を投与することを含む、軟骨疾患の治療薬をスクリーニングする方法。
(8)軟骨疾患が軟骨形成異常を伴うものである、上記(7)に記載の方法。
(9)候補薬剤が、小分子、ペプチド、蛋白質又は核酸である、上記(7)に記載の方法。
【0012】
(10)候補薬剤が、BBF2H7蛋白質、その変異体又は化学修飾誘導体である、上記(7)又は(9)に記載の方法。
(11)候補薬剤が、BBF2H7蛋白質又はその変異体をコードするDNAを含むベクターである、上記(7)又は(9)に記載の方法。
(12)上記(1)~(6)のいずれかに記載のモデル非ヒト動物に軟骨疾患治療薬を投与することを含む、軟骨疾患治療薬の薬効を評価する方法。
【0013】
(13)軟骨疾患が軟骨形成異常を伴うものである、上記(12)に記載の方法。
(14)BBF2H7蛋白質又はその変異体をコードするDNAを含むベクターを有効成分として含む、軟骨疾患治療剤。
(15)BBF2H7蛋白質、その変異体又は化学修飾誘導体を有効成分として含む、軟骨疾患治療剤。
(16)軟骨疾患が軟骨形成異常を伴うものである、上記(14)又は(15)に記載の軟骨疾患治療剤。
【0014】
本明細書中で使用する用語は、以下の定義を含む。
本明細書中の「BBF2H7」なる用語は、膜貫通bZIP転写因子の1つであり、小胞体ストレストランスデューサーであると推定される蛋白質であり、別名CREB3L2(ヒト)、Creb3l2(マウス)とも称されている(非特許文献1)。このBBF2H7蛋白質又はそれをコードするDNAのアミノ酸配列又はヌクレオチド配列は、例えばGneBank Accession Number NM_178661(マウスCreb3l2)、NM_194071(ヒトCREB3L2)として登録されている。本明細書中で使用する「BBF2H7」なる用語は、ヒトやマウス由来のものに加えて、他の動物由来のもの(すなわち、ホモログ)も包含するものとする。
【0015】
本明細書中の「機能不全」なる用語は、非ヒト動物のゲノム上のBBF2H7遺伝子の一部または全部が改変(例えば、置換、欠失、付加又は挿入)されることによって、該遺伝子の発現産物であるBBF2H7蛋白質がその生物学的機能を発揮しないか、或いは生物額的機能をほとんど発揮しないような状態をいう。ここで、BBF2H7の生物学的機能とは、生体内における軟骨形成に関わる機能をいう。本明細書中では、このような機能不全を有する非ヒト動物を、軟骨疾患のモデル非ヒト動物と称する。あるいは、そのような非ヒト動物を、BBF2H7欠損非ヒト動物又はBBF2H7ノックアウト非ヒト動物ということもある。
【0016】
本明細書で使用する「軟骨疾患」なる用語は、軟骨形成の異常を伴う疾患を指し、これにはさらに骨格形成異常も含まれる。具体的には、本発明に関わる軟骨疾患には、軟骨無形成症、軟骨低形成症、骨端異形成症、変形性関節症などが含まれる。これらの疾患には、四肢や体幹の短縮、額、鼻、顔面、四肢、腰椎などの部位の骨異形成、低身長などのいずれかの症状が見られる場合が多い。
【0017】
本明細書で使用する「野生型」なる用語は、正常BBF2H7遺伝子をもつ非ヒト動物を指す。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、BBF2H7遺伝子が軟骨形成に密接に関わることが判明した。また、この遺伝子が欠損すると、軟骨低形成病変が現れることも判明した。この知見に基づき、軟骨疾患の原因がBBF2H7の機能不全による場合には、患者における、BBF2H7遺伝子を正常型に変換するための遺伝子治療、あるいは、BBF2H7蛋白質投与による治療によって、軟骨疾患の改善又は治療が可能になる。
【0019】
さらにまた、上記の知見に基づき、非ヒト動物において、ゲノム上のBBF2H7遺伝子の全部又は一部を欠損させることによって、本発明の軟骨疾患モデル非ヒト動物を提供することができ、このモデル動物を利用すると、軟骨疾患の治療剤のスクリーニングを可能にし、或いは、軟骨疾患の病態解析又は原因解明のツールになる、などの格別の作用効果を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
1.軟骨疾患のモデル非ヒト動物
本発明のBBF2H7遺伝子の機能不全を特徴とする軟骨疾患のモデル非ヒト動物は、そのゲノム上のBBF2H7遺伝子が欠失されたか、或いは機能不全にされた、所謂ノックアウト非ヒト動物である。すなわち、BBF2H7遺伝子のゲノムDNAの一部に欠失、置換、付加又は挿入を生じさせることによって、該遺伝子の機能が全く又は実質的に不全となるか或いは欠損される。遺伝子欠損のためにBBF2H7遺伝子が発現されず、その結果、BBF2H7蛋白質が合成されないため、生体内でその機能を果たすことができない。このとき、生体内で重要な働きをする蛋白質であれば、発生及び発達の過程に影響し、病的な症状が現れると考えられる。
【0021】
本発明のBBF2H7遺伝子欠損非ヒト動物は、次のような特性を有する。
すなわち、本発明の非ヒト動物では、四肢および体幹の著明な短縮、胸郭の強い形成不全を呈する骨格の形成異常、特に低形成が認められる。この胸郭の低形成により動物は出生直後に呼吸不全により死亡することがある。病理組織学的解析では、成長軟骨帯の増殖層および肥大層の発達が極めて悪く、この部位に存在する軟骨細胞は、細胞質の肥大化と多数の大型空胞が観察される。さらに、トルイジンブルー染色の結果、軟骨基質量の著明な減少が認められる。これらの所見から、BBF2H7は軟骨基質の小胞体内タンパク質品質管理に密接に関わり、この遺伝子が欠損すると軟骨基質の分泌障害を来たし、骨格の低形成を招くものと考えられる。このため、本発明のモデル動物は、軟骨疾患の病態解析あるいは疾患発症の原因解明に有効なツールになりうる疾患モデル動物である。
【0022】
本発明において、軟骨疾患は、上記のように、成長軟骨帯の増殖層と肥大層の発達が悪く、軟骨細胞の細胞質が肥大化し、かつ細胞質に多数の大型空胞が観察されるような病理学的に特徴付けられる疾患であり、具体的には、軟骨形成異常を伴う疾患である。この疾患にはさらに骨格形成異常を伴うこともある。本発明における軟骨疾患の具体例は、軟骨無形成症、軟骨低形成症、骨端異形成症、変形性関節症などである。
【0023】
このように、本発明の非ヒト動物は、BBF2H7の機能不全により軟骨低形成病変などの軟骨形成異常を有することから、軟骨疾患のモデル非ヒト動物として有用である。従来、BBF2H7は、小胞体ストレスに起因する、例えば損傷した神経細胞内での非ホールディング蛋白質の蓄積を防止する重要な役割を果たしうること知られていたが(非特許文献1)、軟骨形成に密接に関わることについては全く知られていなかった。このような特性は、BBF2H7遺伝子を欠損させた非ヒト動物を作製し得たことによって初めて明らかになり、全く予想もしていなかったことであった。
【0024】
本発明において、非ヒト動物は、脊椎動物であり、魚類、爬虫類、両生類、鳥類及び哺乳類を含むが、好ましい動物は、哺乳動物である。哺乳動物の好ましい例は、げっ歯類であり、例えばマウス、ラット、モルモット、ハムスターなどである。
【0025】
本発明の非ヒト動物は、一般に、公知の標的遺伝子組換え技術、ノックアウト技術、相同組換え技術、ジーンターゲティング技術などを使用することによって作製することができる(例えばMethods in Enzymology 225:803-890, 1993; S.L. Mansourら, Nature 1988, 336:348-352; M. Zijlstraら, 1989, Nature 342:435-438; M. Zijlstraら, Nature 1990, 344:742-746; P. Hastyら, 1991, Nature 1991, 350:242-246)。具体的なノックアウト手法については以下に説明する。
【0026】
非ヒト動物のBBF2H7遺伝子(又はDNA又はcDNA)のヌクレオチド配列は、例えばマウスについて、GenBankにNM_178661で登録されており、後述の配列表中に、蛋白質のアミノ酸配列、DNAのヌクレオチド配列がそれぞれ配列番号1、配列番号2として示されている。マウス以外の動物の配列については、GenBank(米国NCBI)、EMBL(欧州EBI)などの遺伝子バンクにアクセスすることによって検索し入手することができる(例えば、高木利久と金久實編,ゲノムネットのデータベース利用法,第2版, 共立出版(1998年))。あるいは、マウスのBBF2H7のDNA配列に基づいてプライマーを作製し、RT-PCR法によって、非ヒト動物、例えば他のげっ歯類、の組織のmRNAから調製したcDNAを鋳型にして、目的のBBF2H7のDNAを増幅し、配列を決定することができる(例えば、J. Sambrookら,Molecular Cloning: A Laboratory Mannual, Cold Spring Harbor Laboratories, 1989; F.M. Ausubelら,Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, 2002)。
【0027】
このヌクレオチド配列に基づいてプローブ(例えば約30~150塩基)を作製し、放射性(32Pなど)又は蛍光ラベル(フレオレサミン、ローダミン、シアニンなど、例えばFITC、Cyなど)で標識し、BBF2H7遺伝子のゲノムDNAを検出又は単離するために使用することができる。脳、尾などの組織由来の細胞から定法に従いゲノムDNAを取り出したのち、ゲノムDNAを制限酵素で切断後、サザンハイブリダイゼーション、in situハイブリダイゼーションなどのハイブリダイゼーション法によって上記プローブを用いて、目的のBBF2H7遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)を探索する。必要に応じて制限酵素地図を作成し、相同組換えを行うための任意のターゲット部位を決定する。あるいは、BBF2H7遺伝子の塩基配列に基づいて作製したプライマー(例えば約15~25塩基)を用いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、BBF2H7遺伝子含有ゲノムDNA断片を増幅し配列決定する(例えば、Ausubelら、上記)。相同組換えするための相同領域は、約1~7kbあるいはそれ以上が好ましい。
【0028】
BBF2H7遺伝子をノックアウトするために、ターゲティングベクター中の上記相同領域内に薬剤耐性遺伝子(例えばネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ遺伝子など)などの外来DNAを挿入又は置換してもよいし、或いは、BBF2H7遺伝子の全部又は一部を欠失してもよい。欠失位置又は外来DNAの挿入若しくは置換位置は、例えばBBF2H7遺伝子のいずれかのエクソン、例えばエクソン2(図1のE2)である。ここで、外来DNAとしての薬剤耐性遺伝子は、ターゲティングベクターを有する胚性幹細胞のポジティブ選択のために有用となる。また、ベクターには、ネガティブ選択用遺伝子を導入してもよく、そのような遺伝子には、例えばHSVチミジンキナーゼ(HSV-tk)遺伝子、ジフテリア毒素A遺伝子などが含まれる。ネガティブ選択は、抗ヘルペス薬、FIAU、シクロビル、ガンシクロビルなどの薬剤に感受性のランダムベクター組込み胚性幹細胞の選択のために有用である。
【0029】
ターゲティングベクターは、任意のベクターでよく、例えばpGT-N28(New England Bio Labs)、pBluescript II SK(Stratagene)、pSP72、pPNTなどが含まれる。
【0030】
相同組換え効率を高めるために、例えばCre-loxP系(R.Kuhnら, Science 1995,269:1427-1429)を利用することもできる。
【0031】
本発明の非ヒト動物を作製するために、受精卵に直接ベクターDNAを注入し仮親に移植する方法もあるが、胚性幹(ES)細胞を用いる方法が好ましい。好ましいES細胞は、げっ歯類ES細胞、例えばマウスES細胞である。
【0032】
ES細胞は、受精後の胚盤胞(blastocyst)又は8細胞期胚内に存在する未分化細胞である内部細胞塊の細胞を培養し、細胞塊の解離と継体を繰り返しながら樹立された未分化状態を保持したまま増殖を続ける細胞株である。マウスES細胞株の例は、D3細胞株、E14細胞株、TT2細胞株、AB-1細胞株、J1細胞株、R1細胞株などであるが、これらに限定されない。
【0033】
上記のようにBBF2H7遺伝子を改変してその機能を欠損させたターゲティングベクターを、公知の方法でES細胞に導入する。導入方法には、ミクロセル法、エレクトロポレーション法、リポソーム法、リン酸カルシウム法、DEAE-デキストラン法などが含まれるがこれらに限定されない。
【0034】
得られた組換えES細胞について、相同組換えが起こっているかどうかのスクリーニングを、例えば、プローブ又はプライマーを使用する公知のサザンブロット法、ゲノムPCR法、in situ PCR法などによって行うことができる。これによって、正しく相同組換えが起こった細胞を選択する。
【0035】
BBF2H7遺伝子がノックアウトされたES細胞を、野生型非ヒト動物の胚盤胞又は8細胞期胚内に導入する。そして、このES細胞を含む胚を偽妊娠仮親非ヒト動物の子宮に移植し、出産させることによりキメラ動物を作製することができる。好ましい動物は、げっ歯類、例えばマウスである。
【0036】
ES細胞を胚盤胞等の胚に導入する方法としては、マイクロインジュクション法や凝集法が知られているが、いずれの方法を用いることも可能である。マウスの場合には、ホルモン剤により過排卵処理を施した雌マウスを、雄マウスと交配させて初期発生胚を得るが、組換えES細胞の導入胚として、胚盤胞を用いる場合には受精から3.5日目に、8細胞期胚を用いる場合には2.5日目に、それぞれ子宮から初期発生胚を回収する。このようにして回収した胚に対して、ターゲティングベクターを用いて相同組換えを行ったES細胞をin vitroにおいて注入し、キメラ胚を作製する。
【0037】
一方、仮親とするための偽妊娠雌非ヒト動物は、正常性周期の雌動物を、精管結紮などにより去勢した雄動物と交配することにより得ることができる。作出した偽妊娠非ヒト動物に対して、上記の方法により作製したキメラ胚を子宮内移植し、妊娠・出産させることによりキメラ非ヒト動物を作製することができる。キメラ胚の着床、妊娠がより確実に起こるようにするため、受精卵を採取する雌動物と仮親となる偽妊娠動物とを、同一の性周期にある雌動物群から作出することが望ましい。
【0038】
ES細胞移植胚に由来する非ヒト動物個体が、このようなキメラ動物の中から得られた場合、このキメラ動物を純系の動物と交配し、そして次世代個体にES細胞由来の被毛色が現れることにより、ES細胞がキメラ動物生殖系列へ導入されたことを確認することができる。ES細胞が生殖系列へ導入されたことを確認するには、様々な形質を指標として用いることができるが、確認の容易さを考慮して、被毛色によることが望ましい。また、体の一部(例えば尾部)からDNAを抽出し、サザンブロット解析やPCRアッセイを行うことにより、選抜を行うこともまた可能である。
【0039】
このように、胚内に移植された組換えES細胞が生殖系列に導入された動物を選択し、そのキメラ動物を繁殖させることにより、目的とする遺伝子が欠損した個体を得ることができる。得られたBBF2H7遺伝子欠損ヘテロ接合体非ヒト動物(+/-)同士を交配させることにより、メンデルの法則に従う比で目的とする遺伝子欠損ホモ接合非ヒト動物(-/-)を得ることができる。作製されたBBF2H7変異遺伝子を保有するヘテロ接合体、あるいはホモ接合体は生殖細胞および体細胞のすべてに安定的にBBF2H7遺伝子欠損を有しており、子孫動物に伝達される。
【0040】
本発明のノックアウト非ヒト動物を作製するときには、ノックアウトマウスの作製において使用されるCre/loxP系(R.Kuhnら, Science 1995,269:1427-1429)を用いることも可能である。Cre/loxP系においては、標的となる相同配列内にloxP配列で挟まれた外来DNA配列が挿入された遺伝子をもつBBF2H7遺伝子欠損マウスを、大腸菌のP1ファージ由来の組換え酵素であるCre酵素を発現している動物と交配させた時に、Cre酵素はloxP配列で挟まれた配列を認識して削除するために、その領域を欠損させた動物を作出することが可能となる。そのようなCre/loxP系を用いて、組織特異的にCre酵素を発現している非ヒト動物と交配させることにより、組織特異的に遺伝子が欠損した特性を有するノックアウト動物を作製することができる。このような手法の具体例が、コンディッショナル・ノックアウト法と称されるものである。
【0041】
ジーンターゲティングに関する具体的な手法については、例えば相沢慎一,ジーンターゲティング-ES細胞を用いた変異マウスの作製,バイオマニュアルシリーズ8,羊土社(1995年)を参照することができる。
【0042】
2.軟骨疾患治療薬のスクリーニング及び薬効評価
本発明のBBF2H7遺伝子欠損非ヒト動物は、軟骨疾患(例えば、軟骨無形成症、軟骨低形成症、骨端異形成症、変形性関節症など)のモデル動物であるため、当該疾患の病態解析、疾患発症の原因解明、治療薬のスクリーニング、薬物の薬効評価などのために使用することができる。
【0043】
したがって、本発明は、上記モデル非ヒト動物に候補薬剤を投与することを含む、軟骨疾患の治療薬をスクリーニングする方法を提供する。
【0044】
本発明はまた、上記モデル非ヒト動物に軟骨疾患治療薬を投与することを含む、軟骨疾患治療薬の薬効を評価する方法を提供する。
【0045】
候補薬剤は、限定されないが、例えば小分子、(ポリ)ペプチド、(糖)蛋白質、(ポリ)ヌクレオチド、核酸、ヌクレオシド、糖質、脂質などを含む。候補薬剤の例には、BBF2H7蛋白質、その化学修飾誘導体(例えばペグ化、アシル化、アルキル化、グリコシル化、リン酸化誘導体など)である。候補薬剤には、例えばヒトBBF2H7蛋白質(GenBank:NM_194071;配列番号3)、その変異体、ホモログ、化学修飾誘導体などが含まれる。
【0046】
ヒトBBF2H7蛋白質の変異体は、当該蛋白質のアミノ酸配列と90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、例えば99%以上の同一性を有する配列を有するものであるか、あるいは当該アミノ酸配列と1もしくは数個のアミノ酸の欠失、置換又は付加を含む配列を有するものである。ここで、%同一性は、ヒトBBF2H7蛋白質のアミノ酸配列と別のアミノ酸配列を、ギャップを導入するか又は導入しないで、整列したとき、全アミノ酸数に対する同一アミノ酸数の百分率(%)を意味する。同一性は、BLAST、FASTAなどの公知のアルゴリズムを利用して決定されうる。
【0047】
候補薬剤の他の例は、BBF2H7蛋白質又はその変異体をコードするDNAを含むベクターである。このベクターの作製等については、下記の「3.軟骨疾患治療剤」に記載されている。
【0048】
軟骨疾患治療薬は、成長ホルモンなどを含むが、限られた薬剤が知られているに過ぎない。本発明における治療薬には、軟骨疾患改善を可能にするかもしれない潜在的な薬剤も含まれる。
【0049】
候補薬剤又は治療薬の投与方法は、限定されないが、経口投与又は非経口投与(例えば静脈内投与、腹腔内投与、鼻腔内投与など)などを含む。経口投与の場合には、候補薬剤を餌に混ぜて投与することができる。
投与量は、限定されないが、約1μg~100mgの範囲である。
【0050】
製薬上許容可能な慣用の担体や希釈剤などの賦形剤、添加剤などと組み合わせて候補薬剤又は治療薬を投与することもできる。また、リポソーム(例えば正電荷リポソーム)やナノ粒子に候補薬剤又は治療薬を封入して投与してもよい。
【0051】
評価は、軟骨疾患の症状の軽減又は改善、成長軟骨帯の増殖層や肥大層の発達、軟骨細胞の細胞質内の空胞の減少、軟骨基質量の増大などを指標として、肉眼観察、体重測定、病理組織学的観察(例えば組織染色後の顕微鏡観察)などによって行うことができる。
【0052】
3.軟骨疾患治療剤
本発明はさらに、BBF2H7蛋白質又はその変異体をコードするDNAを含むベクターを有効成分として含む軟骨疾患治療剤を提供する。
【0053】
本発明はまた、BBF2H7蛋白質、その変異体又は化学修飾誘導体を有効成分として含む軟骨疾患治療剤を提供する。
【0054】
ここで、軟骨疾患は、軟骨形成異常を伴うものであり、さらに骨格形成異常を伴ってもよい。軟骨疾患は、例えば軟骨無形成症、軟骨低形成症、骨端異形成症、変形性関節症などを含む。
【0055】
BBF2H7蛋白質及びそれをコードするDNAは、動物患者に由来するものであり、ヒト患者の場合には、ヒトBBF2H7蛋白質(配列番号3)及びそれをコードするDNA(配列番号4)が使用される。
【0056】
有効成分としてのベクターは、例えば、市販の又は文献記載の、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターなどのウイルスベクター、プラスミドベクターなどを基本ベクターとしうる。これらのベクターは、癌化を起こさない、ウイルス複製しないなど、患者(ヒトを含む)に有害でないベクターであるべきである。ベクターには、上記DNA以外に、プロモーター(例えばウイルスプロモーターなどの構成的プロモーター、組織特異的プロモーター、誘導性プロモーターなど)、選択マーカー(例えば薬剤耐性遺伝子、チミジンキナーゼ遺伝子など)などを含むことができる。
【0057】
ベクターは、生理食塩水、緩衝液などの適する賦形剤に懸濁した形態にしうる。
ベクターの投与は、患部の骨組織に、直接注入するか、あるいはリポソーム(好ましくはカチオン性リポソーム)に封入された形態で注入してもよい。
【0058】
有効成分としてのBBF2H7蛋白質又はその変異体は、遺伝子組換え技術、変異導入用PCR技術などによって作製しうる(例えば、Sambrookら、上記;Ausubelら、上記)。
【0059】
BBF2H7蛋白質をコードするDNAは、動物の特定の組織(例えば、肺、子宮など)から調製したcDNAライブラリーから、特異的プライマーを用いるPCR法によって増幅、合成することができる。該DNAをアガロースゲル電気泳動などによって精製したのち、市販の又は文献記載の適当な発現ベクター(通常、プロモーター、複製開始点、ターミネーター、シャイン-ダルガルノ配列又はリボソーム結合サイト、マルチクローニングサイト、選択マーカー(例えば薬剤耐性遺伝子)などのエレメントを含むことができる。)に挿入し、原核生物細胞(例えば大腸菌、枯草菌、シュードモナス属細菌など)又は真核生物細胞(例えば酵母、糸状菌、担子菌、昆虫細胞、植物細胞、哺乳動物細胞など)に導入して該細胞を形質転換し、適当な培養培地中で培養増殖し、目的蛋白質を、培地又は細胞から回収することを含む手法によって、BBF2H7蛋白質を得ることができる。
【0060】
上記変異体は、天然型BBF2H7蛋白質のアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸の置換、欠失又は付加を含む配列を有するか、或いは、該アミノ酸配列と90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、例えば99%以上の同一性を有する配列を含む。変異体は、BBF2H7蛋白質のもつ軟骨形成に関わる生物学的活性を保持するべきである。該変異体は、部位特異的突然変異誘発法、変異導入PCR法などによって、慣用的手法で作製することができる。
【0061】
変異の例は、保存的アミノ酸間の置換である。保存的アミノ酸は、構造、荷電性、疎水性又は極性、などの各特性が類似したアミノ酸群を指す。例えば、構造類似のアミノ酸には、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシンからなる芳香族アミノ酸、荷電性類似のアミノ酸には、アルギニン、リジン、ヒスチジンからなる塩基性アミノ酸、アスパラギン酸、グルタミン酸からなる酸性アミノ酸、疎水性類似のアミノ酸には、アラニン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリンなどの疎水性アミノ酸、セリン、トレオニン、システイン、アスパラギン、グルタミン、グリシンなどの極性アミノ酸、などがそれぞれ含まれる。
【0062】
上記化学修飾誘導体は、ペグ化、アシル化、アルキル化、グリコシル化、リン酸化誘導体などを含み、これらに限定されない。特にペグ化は、ポリエチレングリコール(例えば分子量4000~10000)分子を蛋白質に結合することであり、これによって生体内で酵素的分解を受け難い、蛋白質の抗原性を低減するなどの利点を付与することが知られている。このような化学修飾の手法は、具体的には、上記蛋白質や変異体のアミノ基、カルボキシル基、トレオニン残基、セリン残基などに化学的手法によって官能基を導入することを含む。
【0063】
本発明の治療剤は、上記有効成分に加えて、医薬業界で慣用される賦形剤、希釈剤、担体、添加剤(例えば、安定化剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、界面活性剤、緩衝剤、懸濁化剤、甘味料、風味剤など)などを含むことができる。治療剤の剤型は、特に限定されないが、溶液剤、懸濁剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、粉剤、遅延放出剤、座剤、リポソーム封入剤などを含む。このような剤型の作製については、例えばRemington, The Science and Practice of Pharmacy, Mack Publishing Company, 1995を参照することができる。
【0064】
本発明の治療剤の投与法は、経口投与又は非経口投与を含む。非経口投与は、静脈内、筋肉内、皮内、皮下、腹腔内、直腸内投与などを含むが、これに限定されない。また、投与法には、直接患部に注入する方法も含まれる。
【0065】
本発明の上記治療剤の有効成分の投与量は、軟骨疾患を軽減又は改善する用量であり、最適用量は、医師の判断に依存するものとし、年齢、性別、体重、病状などによって変化しうる。
【0066】
本発明の治療剤によって、軟骨疾患の症状の軽減又は改善、軟骨形成の改善などに導くことができる。具体的には、本発明の治療剤は、成長軟骨帯の増殖層や肥大層の発達、軟骨細胞の細胞質内の空胞の減少、軟骨基質量の増大などを可能にする。
【0067】
以下に、実施例を挙げて、さらに本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例によって制限されないものとする。
【実施例1】
【0068】
ターゲティングベクターの作製
マウスBBF2H7ゲノム配列(ENSMUSG00000038648)に基づいて作製したプライマーを用い、129マウス由来ゲノムDNAを鋳型としてPCR(変性94℃ 1分、アニーリング55℃ 1分、伸長72℃ 3分を35サイクル)を行い、BBF2H7遺伝子のエキソン2前後のDNA断片1.5kb(短腕)および6kb(長腕)を単離した。このときに用いたプライマーは、短腕側が、
5’-GCGGCCGCTTCGACACTTTGTCTGCCACTC-3’ (配列番号5)および
5’-CTCGAGTCACTCCGAGAAGTGCTGCAAGAAGC-3’(配列番号6)、
長腕側が、
5’-CAGAGATGCCCTGAGATCAGCTG-3’ (配列番号7)および
5’-GGTACCCTACACCATGCGCCACCAGCCATG-3’ (配列番号8)である。
【0069】
シーケンシングにより塩基置換が起こっていないことを確認した後、各DNA断片をターゲッティン用ベクターpPNT1.1(Cell 1991 Jun 28, 65(7):1153-1163;岡部勝博士(大阪大学、大阪、日本国)から恵与された)のNotI-XhoIサイト(短腕側)およびKpnI-KpnIサイト(長腕側)にそれぞれ組み込んでターゲティングベクターを作製した(図1参照)。
【実施例2】
【0070】
BBF2H7ノックアウトマウスの作製
エレクトロポレーション法により、未分化の培養マウスES細胞(約0.8×10
個)(D3細胞株(Doetschmanら,J Embryol Exp Morphol. 1985, 87:27-45)に実施例1のターゲティングベクターを25μg/mlの割合で導入して遺伝子導入ES細胞を得た。これらの細胞をプレート(培地ESM)に播き、24時間後にG418、48時間後にG418およびガンシクロビルを培地に添加して更に7~10日間培養し、G418およびガンシクロビルに耐性を示すコロニーを得た。これらのコロニーを個別に分離し、さらに培養したのち、DNAを抽出してサザンブロッティングにより相同組換えES細胞を選別した。
【0071】
次いで、この相同組換えES細胞を、C57BL/6CR SLC系マウスの胚盤胞へ常法により注入し、仮親マウスへ移植して個体へと発生させた。その結果、6匹のキメラマウスを得た。キメラマウスはキメラ率(黒C57BL6に対する茶色129の割合)により、ジャームラインにのる割合が高いマウスを選抜した。得られたキメラマウスのうち、雄の個体と雌の野生型C57B/6系マウスとを交配させて初代(F)マウスを得た。これらのFマウスのサザンブロットを行った。図2Aに示すように、BBF2H7遺伝子をBamHI消化およびSphI消化したときのサザンブロッティングを行った結果、ヘテロマウスゲノムでは、BamHI消化の際には6.4kbpおよび2.7kbp、SphI消化の際に11.6kbpおよび8.1kbpのバンドがそれぞれ検出された。この結果は、BBF2H7遺伝子の相同組換えが上手く行われていることを示しており、BBF2H7遺伝子ヘテロマウス作製に成功した。2倍体染色体の一方に変異配列が確認された個体(雄、雌)を選別し、これらを交配させて第2世代(F)マウスを得た。
【0072】
プライマーとして、
5’-CTGCAGTGGTCAGATGGACAG-3’(配列番号9)、
5’-TGGCTGCGCTGCTGCCCAAGACCCAG-3’(配列番号10)、
5’-CTTGACGAGTTCTTCTGAGG-3’(配列番号11)
を用い、ゲノムPCRの結果、ノックアウトマウス(-/-)においてBBF2H7遺伝子が欠損していることを確認した(図2B参照)。本発明のBBF2H7遺伝子ノックアウトマウスの作製に成功した。
【実施例3】
【0073】
BBF2H7ノックアウトマウスの特徴付け
BBF2H7ノックアウトマウスは出生直後に胸郭の低形成により死亡する場合がある。胎生期のノックアウトマウスには四肢および体幹の著明な短縮、胸郭の強い形成不全を呈する骨格の低形成が認められた。
【0074】
胎生期のノックアウトマウスのアリザリン・アルシアンブルー染色を行うと図3に示すように軟骨形成がほとんど観察されない。一方、骨格系以外の臓器・組織では組織学的に異常は認められなかった。胎生18.5日齢マウスの長幹骨の病理組織学的検査では、成長軟骨帯の増殖層および肥大層の発達が極めて悪く(図4)、この部位に存在する軟骨細胞は、細胞質の肥大化と多数の大型空胞が観察された(図5)。さらに、トルイジンブルー染色の結果、軟骨基質量の著明な減少を認めた(図6)。以上の所見から、BBF2H7は軟骨基質の小胞体内タンパク質品質管理に密接に関わり、この遺伝子が欠損すると軟骨基質の分泌障害を来たし、骨格の低形成を招くものと考えられた。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明により、軟骨疾患のモデル非ヒト動物が提供される。本発明のモデル動物を使用することによって、軟骨疾患の治療薬の開発・効能評価や発症機序の解析などが可能になるため、このモデル動物は産業上極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】BBF2H7欠損マウス作製用ターゲッティングベクターの構築を示す。E1およびE2はそれぞれBBF2H7遺伝子のエキソン1およびエキソン2を表す。Neoはネオマイシン耐性遺伝子を、またHSV-tkはHSVチミジンキナーゼ遺伝子をそれぞれ表す。
【図2】サザンブロッティングおよびゲノムPCRによるBBF2H7遺伝子の欠損確認を示す。BBF2H7遺伝子欠損ゲノムではBamHI消化の際には2.7kbp、SphI消化の際には8.1kbpのバンドがそれぞれ検出される(図2A)。図2BはゲノムPCRを示す。+/+は野生型、+/-はヘテロマウス、-/-はノックアウトマウスである。
【図3】BBF2H7欠損マウスの表現型を示す。A:胎生18.5日齢マウスの肉眼写真。B:アリザリンレッド・アルシアンブルー染色。アルシアンブルー・アリザリンレッド染色後の骨格比較。遺伝子欠損マウス(KO)ではアルシアンブルー(水色)で染まる軟骨組織がほとんど観察されない。軟骨形成異常による骨格の低形成を起こしている。前肢(C)、後肢(D)および脊椎(E)のアリザリンレッド・アルシアンブルー染色拡大写真。
【図4】BBF2H7欠損マウス(KO)の前肢のヘマトキシリン・エオジン(HE)染色。上パネル:胎生18.5日齢マウス(WT又はKO)前肢のHE染色。上腕骨の形成が悪く、著しく短縮している。下パネル:上パネルで四角で囲んだ部位の拡大像。BBF2H7欠損マウスでは軟骨の増殖層および肥大層がほとんど存在しない。
【図5】胎生18.5日齢マウス(WT又はKO)からのBBF2H7欠損軟骨細胞の拡大像(右パネル)及び増殖層の軟骨細胞の拡大像(左パネル)(HE染色)。野生型(WT)の軟骨細胞は扁平な細胞質をもち柱状に配列している。遺伝子欠損マウス(KO)の軟骨細胞は細胞質内に大きな空胞が多数認められ、細胞の配列も乱れている。
【図6】胎生18.5日齢マウス(KO)からのBBF2H7欠損軟骨のトルイジンブルー染色。野生型(WT)の軟骨はトルイジンブルー染色に良く染まる軟骨基質を豊富にもつが、遺伝子欠損マウスの軟骨では明らかに染色性が低下し、軟骨基質量が減少している。

【配列表フリ-テキスト】
【0077】
配列番号5~11:プライマー
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5