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明細書 :静電アクチュエータ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4660758号 (P4660758)
公開番号 特開2006-280180 (P2006-280180A)
登録日 平成23年1月14日(2011.1.14)
発行日 平成23年3月30日(2011.3.30)
公開日 平成18年10月12日(2006.10.12)
発明の名称または考案の名称 静電アクチュエータ
国際特許分類 H02N   1/00        (2006.01)
B81B   3/00        (2006.01)
FI H02N 1/00
B81B 3/00
請求項の数または発明の数 3
全頁数 8
出願番号 特願2005-099686 (P2005-099686)
出願日 平成17年3月30日(2005.3.30)
審査請求日 平成19年12月5日(2007.12.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】南 和幸
審査官 【審査官】仲村 靖
参考文献・文献 特開2005-245151(JP,A)
特開平08-066057(JP,A)
特開2004-074347(JP,A)
特開平10-337061(JP,A)
特開平09-081924(JP,A)
特開平05-076187(JP,A)
特開2005-074561(JP,A)
特開平5-220680(JP,A)
調査した分野 H02N 1/00
B81B 3/00
特許請求の範囲 【請求項1】
第1の固定電極と、該電極に対向し、出力部を一体に構成し、出力部の外部負荷によって第1の電極に接近することを妨げる力を受ける第2の可動電極と、第1の電極と第2の電極との間隔を広げることによって歪を生じ、そのエネルギーを弾性力として蓄積し、第2の電極を第1の電極に向けて押し付ける力となるばねと、両電極間に静電引力を生成するために電圧を印加する手段とを備え、電圧印加時に静電引力とばねの弾性力の合力によって第2の電極と、これと一体となった出力部を第1の電極方向に移動させる機構を有する静電アクチュエータ。
【請求項2】
前記ばねは、非線形ばねであることを特徴とする請求項1記載の静電アクチュエータ。
【請求項3】
第1の固定電極を対向する第2の可動電極に対して任意の位置に固定するための電極間距離を調節する手段を備えた請求項1又は請求項2記載の静電アクチュエータ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、静電引力を弾性エネルギーにより補完して常に大きな発生力を出力することができる静電アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
一対の対向電極に電圧を印加したときに生じる静電引力により対向電極間のギャップ間隔が変位する現象を利用する静電アクチュエータが知られている。静電アクチュエータにおいて、静電引力は、ギャップ間隔の2乗に反比例するため、大きな静電引力を達成するためには、ギャップ間隔を出来る限り微小な値に設定する必要がある。一方、大きな変位量を得るためにはギャップ間隔を広くする必要があり、トレードオフの関係がある。すなわち、アクチュエータとして十分な変位量を得ようとすると、初期状態で静電引力は小さく、大きな出力を得ることができない。また、外力と釣合うギャップ間隔を任意に設定することができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたもので、本発明の目的は、静電引力と弾性力とを効率良く協働させることにより、静電引力の弱い初期状態からでも所定設定の高出力を取り出すことができ、しかも静電引力と弾性力の仕事量を可変して外力と釣合うギャップ間隔を任意に設定することができるため位置制御を精度良く行うことができる静電アクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に係る静電アクチュエータは、第1の固定電極と、該電極に対向し、出力部を一体に構成し、出力部の外部負荷によって第1の電極に接近することを妨げる力を受ける第2の可動電極と、第1の電極と第2の電極との間隔を広げることによって歪を生じ、そのエネルギーを弾性力として蓄積し、第2の電極を第1の電極に向けて押し付ける力となるばねと、両電極間に静電引力を生成するために電圧を印加する手段とを備え、電圧印加時に静電引力とばねの弾性力の合力によって第2の電極と、これと一体となった出力部を第1の電極方向に移動させる機構を有する静電アクチュエータである。
【0005】
請求項2に係る静電アクチュエータは、請求項1記載の静電アクチュエータにおいて、前記ばねとして非線形ばねを用いることを特徴する静電アクチュエータである。
【0006】
請求項3に係る静電アクチュエータは、第1の固定電極を対向する第2の電極に対して任意の位置に固定するための、電極間距離を調節する手段を備えた請求項1又は請求項2記載の静電アクチュエータである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る静電アクチュエータによれば、静電引力と弾性力を効率良く協働させることができるために、静電引力の弱い初期状態からでも所定設定の高出力を取り出すことができ、しかも静電引力と弾性力の仕事量を可変することができるため位置制御を精度良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して本発明に係る静電アクチュエータを詳述する。
図1は、本発明に係る第1実施例の静電アクチュエータを示す概略図である。図2は、図1の静電アクチュエータの部分分解図である。該図において、静電アクチュエータ10は、矩形形状の可動電極12と、可動電極に対向して所定の間隔をもって配置された、可動電極とほぼ同じ矩形形状で同じ面積の固定電極14と、可動電極12と固定電極14との距離の変化による仕事を弾性エネルギーとして蓄積するための弾性手段としての非線形ばね16と、静電気力と弾性力により駆動する出力部18とを備える。出力部18は、可動電極と固定電極のほぼ中心に嵌挿され上下方向に移動可能に設けられている。なお、弾性手段は、線形ばねであってもよい。
【0009】
可動電極12は、出力部18と一体に設けられている。固定電極14は、枠体20の上面21に設けられており、かつ枠体20の上面に設けられている4本の電動プランジャ22により上下に移動することができる。各非線形ばね16の一端は、枠体の下面23に固定して設けられ、かつ他端は、可動電極12に当接されている。非線形ばねとして非線形板ばねが使用されているが、非線形板ばねは、荷重に比例してばね定数が変化するように変形形状、板厚変化、ばね幅変化、複数のばねの組み合わせ等により実現できる。例えば、非線形ばねとして、有効スパンを減少させることによりばね定数を増大させる、プログレッシブスプリングを使用する。
【0010】
可動電極と固定電極に電圧が印可されると、可動電極と固定電極との間に静電引力Feが生じる。静電引力は、可動電極と固定電極の間隔に依存して生じる。弾性手段としての非線形ばねは、固定電極と可動電極との距離の変化による仕事を弾性力Fsとして蓄積する。かくして、出力部は、静電引力と弾性力により移動する。
【0011】
以下に出力部の動作を図3-図5を参照して詳述する。
工程1、電圧印加;可動電極及び固定電極をOFF状態とする。可動電極は、非線形ばねを圧縮した状態にある(図3)。この結果、可動電極と固定電極との間隔が大きく静電引力は小さいが、一方弾性力は圧縮されて大きい。
【0012】
工程2、電圧印加;可動電極及び固定電極をON状態にする。可動電極は、固定電極に向けて上方へ移動して、固定電極に到達する(図4—図5)。この結果、可動電極と固定電極との間隔が狭くなり静電引力は大きくなり、一方弾性力は解放されて小さくなる。
【0013】
図6は、図1の静電アクチュエータの出力を示す図である。静電アクチュエータは、固定電極と可動電極間の間隔の二乗に反比例して静電引力Feが働く。該図において、初期設定d0は、両電極の距離が十分に大きく設定しているために、静電引力Feは小さい。そして、可動電極が固定電極に向かって移動することにより、両電極間の間隔は狭くなる。これに伴い静電引力の値Feは大きくなる。一方、非線形ばねは、初期設定状態で可動電極により圧縮されているので、弾性力Fsは大きい。しかし、可動電極が、固定電極に向けて移動すると両電極間の距離は狭くなり、ばねの弾性力は小さくなる。静電アクチュエータは、静電引力とばねの弾性力で仕事をすることができるため、Fe+Fsの力を発生する。
【0014】
また、静電引力Feと弾性力Fsの和の発生力W;(Fe+Fs)を可変することができる。発生力可変手段は、可動電極及び固定電極の印加電圧を可変すること、又は固定電極の初期位置を可変することにより可動電極及び固定電極の間隔を可変することにより達成される。図7は、可動電極及び固定電極の印加電圧を可変することにより、静電引力Feと弾性力Fsの和の発生力が可変することにより得られる発生力W1、W2を示す図である。ここで、静電引力Feに合わせて弾性力Fsを設計することにより、発生力Wを直線状にすることができる。該図において、印加電圧を可変することにより、静電引力はFeからFe’ に変化する。すなわち、静電引力の値は、大きくなる。この結果、発生力は、発生力W1(電圧可変前;Fe+Fs)から発生力W2(電圧可変後;Fe’ +Fs)に変化する。発生力W2(電圧可変後)は、電圧の2乗に比例した発生力W1より高い出力曲線を有する。ここで、電極間隔は、点Xから点Yに変化させることができる。なお、該図において、横軸は間隔dを示す。ここで、間隔d0は、初期設定状態を示す。縦軸は、力Fを示す。
【0015】
図8は、初期設定として固定電極を電動プランジャで可動電極側に向けて下方に移動させた場合の静電アクチュエータの出力を示す図である。固定電極を初期状態で距離d1移動させることにより、電極間隔は、dからd’ と小さくなり、よって静電引力Feは大きくなる。一方弾性力Fsは、変化しないが、距離d1分だけシフトしたことになる。かくして、静電アクチュエータは、静電引力Feとばねの弾性力Fs’ で仕事をするため、静電アクチュエータは、静電引力Feとばねの弾性力Fsの発生力W1に比べて高い発生力W2(静電引力Fed+ばねの弾性力Fs’)を行うことができる。
【0016】
かくして、電圧可変後の発生力の曲線により、発生力が決まれば、その発生力に応じて外力と釣合う間隔dを定めることができ、よって静電アクチュエータによって位置制御が可能となる。
【0017】
図9は、本発明に係る第2実施例の静電アクチュエータを示す概略図である。該図において、静電アクチュエータ10は、可動電極12と、可動電極に対向して所定の間隔をもって固定配置された固定電極14と、可動電極12と固定電極14との距離の変化による仕事を弾性エネルギーとして蓄積するための弾性手段としての非線形ばね16と、静電引力と弾性力により駆動する出力部18とを備える。出力部18は、可動電極と固定電極のほぼ中心を嵌挿して上下方向に移動可能に設けられている。
【0018】
可動電極12は、出力部18と一体に設けられている。固定電極14は、枠体20の上面21固定して設けられており、可動電極は、枠体20の下面に設けられて、4本の電動プランジャ22により上方に押される。この場合、静電引力とばね力との関係を一定に保ったまま可動電極の動作範囲を変化できるようにすることにより、荷重に対してアクチュエータの最適な特性範囲で使用することができる。
【0019】
図10は、各部材が平板31上に配置され、固定電極と可動電極との間隔を調整するために可動電極に設けられたピエゾアクチュエータを備えた静電アクチュエータの概略図を示す。該図において、静電アクチュエータ10は、可動電極12と、可動電極に対向して所定の間隔をもって固定配置された固定電極14と、可動電極12と固定電極14との距離の変化による仕事を弾性エネルギーとして蓄積するための弾性手段としての非線形ばね16と、静電引力と弾性力により駆動する出力部18と、可動電極12の初期仕事を変化させるピエゾアクチュエータ24を備える。
【0020】
以下に静電アクチュエータの出力部の動作を図11-図13を参照して詳述する。
工程1(スタート)、電圧印加;可動電極及び固定電極をOFF状態に設定する。
【0021】
工程2、電圧印加;ピエゾアクチュエータをONにする。可動電極は、固定電極に向けて移動する(図12)、そして可動電極は、固定可動電極に固着して停止する(図13)。かくして、可動電極は、固定電極に向けて移動することにより、電極間距離に依存して静電引力が生じる。一方、非線形ばねは弾性力を開放する。
【0022】
図14及び図15は、静電アクチュエータにおける可動電極の非線形及び線形構造をそれぞれ示す概略図である。図14において、静電アクチュエータは、可動電極12の下方に所定の間隔をもって平板31上に配設された固定電極14を備え、静電引力と電極間隔の変化を非線形な変位に変換する構造を有する。すなわち、可動電極12は、板ばね28と非線形形状ばね押し案内部26、ここでは案内部は、図6の非線形ばねの曲線を有する。
【0023】
図15において、線形形状のばね押し案内部30、ここでは所定の角度の傾斜面を有して、可動電極の下方向の変位を線形な横方向の変位に変換する。
【産業上の利用可能性】
【0024】
発生力、変位の大きい実用的で、かつ省エネルギー、環境負荷の小さな静電アクチュエータ、位置制御アクチュエータ、ナノ静電アクチュエータ、近接場静電アクチュエータ
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る静電アクチュエータの発生力を示す概略図である。
【図2】図1の静電アクチュエータの部分分解を示す概略図である。
【図3】図1において、可動電極及び固定電極の印加電圧をOFFにした静電アクチュエータの発生を示す概略図である。
【図4】可動電極及び固定電極の印加電圧をONにした静電アクチュエータの発生を示す概略図である。
【図5】可動電極及び固定電極の印加電圧をONにして静電アクチュエータの移動の終点を示す概略図である。
【図6】図1の静電アクチュエータの出力を示す概略図である。
【図7】静電引力Feと弾性力Fsの仕事量を可変することによる仕事量可変の出力を示す概略図である。
【図8】静電引力Feと弾性力Fsの仕事量を可変することによる他の仕事量可変の出力を示す概略図である。
【図9】本発明に係る第2実施例の静電アクチュエータを示す概略図である。
【図10】図9でピエゾアクチュエータを使用した静電アクチュエータを示す概略図である。
【図11】図10において、可動電極及び固定電極の印加電圧をOFFにした静電アクチュエータの発生を示す概略図である。
【図12】可動電極及び固定電極の印加電圧をONにした静電アクチュエータの発生を示す概略図である。
【図13】可動電極及び固定電極の印加電圧をONにして静電アクチュエータの移動の終点を示す概略図である。
【図14】静電アクチュエータにおける可動電極の非線形構造を示す概略図である。
【図15】静電アクチュエータにおける可動電極の線形構造を示す概略図である。
【符号の説明】
【0026】
10 静電アクチュエータ
12 可動電極
14 固定電極
16 非線形ばね
18 出力部
20 枠体
22 電動プランジャ
24 ピエゾアクチュエータ
26 非線形形状のばね押しガイド部
28 板ばね
30 線形形状のばね押しガイド部
31 平板
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14