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明細書 :振動水柱型波力発電装置用動力変換装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第4054880号 (P4054880)
登録日 平成19年12月21日(2007.12.21)
発行日 平成20年3月5日(2008.3.5)
発明の名称または考案の名称 振動水柱型波力発電装置用動力変換装置
国際特許分類 F03B  13/24        (2006.01)
FI F03B 13/24
請求項の数または発明の数 3
全頁数 9
出願番号 特願2006-338569 (P2006-338569)
出願日 平成18年12月15日(2006.12.15)
審査請求日 平成19年4月17日(2007.4.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】羽田野 袈裟義
【氏名】専徳 博文
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
審査官 【審査官】尾崎 和寛
参考文献・文献 特開昭60-027788(JP,A)
調査した分野 F03B 13/12 ~ 13/26
要約 【課題】振動水柱型波力発電装置用動力変換装置においてエネルギー変換効率を損なうことなく一定の向きに回転する軸の運動の動力を獲得する。
【解決手段】空気室と連絡した、または空気室の一部を構成する筒体内に配置されたタービンの回転軸にラチェット機構を連結し、水面変動により筒体内に発生する流体の往復流から一定の向きに回転する軸の動力として取り出し、発電機を回して発電する。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
空気室の一部を構成する筒体と、前記筒体内に配置されて前記筒体内の流体の往復流により回転し、前記往復流の動力を回転の動力に変換するタービンと、前記タービンの回転軸と、前記回転軸に連結されたラチェット機構と、前記ラチェット機構により作動する伝導機構と、前記伝導機構により一方向に回転する軸と、を備え、前記筒体内で発生する前記往復流から前記伝導機構により一方向に回転する前記軸の回転運動のエネルギーに変換する振動水柱型波力発電装置用動力変換装置において、
水面波の運動により生じる前記空気室内の圧力変動において、前記空気室内が加圧状態の時間帯にはエネルギー変換を行なわず、減圧状態の時間帯にのみエネルギー変換することを特徴とする振動水柱型波力発電装置用動力変換装置。
【請求項2】
前記空気室内の断面積について、前記タービンの稼働部の部分の断面積を水面上下動部分の断面積よりも小さくしたことを特徴とする請求項に記載の振動水柱型波力発電装置用動力変換装置。
【請求項3】
前記ラチェット機構の後段にフライホイールを挿入して前記回転軸の回転の速度の変動を抑えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の振動水柱型波力発電装置用動力変換装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、水面波のエネルギーを回転のエネルギーに変換することにより発電を行う振動水柱型波力発電装置用動力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水面波のエネルギーを利用するシステムは、水面波のエネルギーを他の力学的エネルギーに変換するための1次変換装置、1次変換装置により得られたエネルギーを電気等の利用し易いエネルギーに変換する2次変換装置等で構成される。(例えば、非特許文献1、非特許文献2)
【0003】
1次変換装置をエネルギー変換の観点から分類すると、可動物体型、水流型、振動水柱型等に分類される。
【0004】
このうち、振動水柱型は波力発電の方式の主要な方式であり、多くの技術者がその研究に取り組んでいる。
【0005】
振動水柱型波力発電装置は、容器を海面に伏せた形式で、水面波により空気室内に水位変動と圧力変動を作り空気室内外の圧力差によりタービンを回して発電する。
【0006】
タービンを通過する空気などの流体の流れは空気室内の圧力変動のため往復動を繰り返すが、ウェールズタービンや衝動タービンなど特殊なタービンでは、気流、水流の往復流の動力を一方向に回転する軸の動力に変換し、その動力を取り出している。
【0007】
そして、タービンを通過する流体の流れの往復動の両方の時間帯においてエネルギー変換するが、エネルギー変換は空気室内の水位変動に伴う空気室内の圧力の大気圧からの偏差圧力によりなされるため、エネルギー変換する状態では空気室内の水位変動とタービンを通過する流体の往復運動は拘束される。このため、空気室内の水位変動と流体の往復運動のストロークはエネルギー変換を行なわない自由状態に比べて小さい。
【0008】
また、ウェールズタービンや衝動タービンなど特殊なタービンは、タービンの翼自体がラチェット機構と同じ機能を有するが、この機能をもたせるためにエネルギー変換効率が犠牲になっており、50%弱の最大効率を与える回転数帯以外の回転数域では効率がかなり低い。

【非特許文献1】「気象利用研究」、気象利用研究会、NO.15.2002、波浪エネルギー利用技術の現状、12~16頁
【非特許文献2】「自然エネルギー利用学」(改訂版)、清水幸丸編、パワー社、1999年、第7章波力発電、161~194頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
振動水柱型波力発電装置が常時エネルギー変換する状態では、空気室内が常に加圧状態または減圧状態となっており、その圧力状態によりタービンを過ぎる流体の往復運動は拘束される。このため、そのストロークはエネルギー変換を行なわない自由状態に比べて小さい。したがって、加圧状態の時間帯のみ、あるいは減圧状態の時間帯のみにおいてエネルギー変換する場合と常時エネルギー変換する場合のエネルギー変換量を比べると、前者は後者より小さいがその差はそれほど大きいわけではない。
【0010】
常時エネルギー変換する構成では、空気室内で繰り返される空気の加圧と減圧により、空気室を構成する隔壁材が圧縮力と引張力を繰り返し受ける。空気の圧縮は水面上昇時に衝撃的に起こることから、隔壁材を引張衝撃に強いものにする必要がある。このため振動水柱型波力発電装置が高コストとなっている。
【0011】
そこで、本発明の目的は、振動水柱型波力発電装置において、加圧状態の時間帯のみ、あるいは減圧状態の時間帯のみにおいてエネルギー変換することで、エネルギー変換効率を損なうことなく一定の向きに回転する軸の運動により動力を獲得することである。
【0012】
本発明のさらなる目的は、タービンの回転軸にラチェット機構、そしてラチェット機構の後段にフライホイールを組み入れることでエネルギー変換効率を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらの目的を達成するため本発明は次のように構成する。
【0014】
請求項1に係る発明は、空気室の一部を構成する筒体と、前記筒体内に配置されて前記筒体内の流体の往復流により回転し、前記往復流の動力を回転の動力に変換するタービンと、前記タービンの回転軸と、前記回転軸に連結されたラチェット機構と、前記ラチェット機構により作動する伝導機構と、前記伝導機構により一方向に回転する軸と、を備え、前記筒体内で発生する前記往復流から前記伝導機構により一方向に回転する前記軸の回転運動のエネルギーに変換する振動水柱型波力発電装置用動力変換装置において、水面波の運動により生じる前記空気室内の圧力変動において、前記空気室内が加圧状態の時間帯にはエネルギー変換を行なわず、減圧状態の時間帯にのみエネルギー変換することを特徴とする振動水柱型波力発電装置用動力変換装置である。
【0015】
請求項2に係る発明は、前記空気室内の断面積について、前記タービンの稼働部の部分の断面積を水面上下動部分の断面積よりも小さくしたことを特徴とする請求項に記載の振動水柱型波力発電装置用動力変換装置である。
【0016】
請求項3に係る発明は、前記ラチェット機構の後段にフライホイールを挿入して前記回転軸の回転の速度の変動を抑えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の振動水柱型波力発電装置用動力変換装置である。
【発明の効果】
【0019】
往復流から一定の向きに回転する回転軸の動力に変換する場合、従来のウェールズタービンなどでは変換効率が犠牲になっていたが、本発明では変換効率を犠牲にすることなく一定の向きに回転する軸の動力に変換することが可能である。
【0020】
従来の方式では、筒体内の往復流の両方を利用する方式であった。この場合、エネルギー変換は空気室内外の圧力差を利用して行なわれるため、空気室内の水位変動のストロークは空気室外の水位変動のストロークより小さくなる。また、特に空気室内が加圧状態になったときに空気室に作用する有効浮力(空気室隔壁に作用する浮力と空気圧による揚力)が過大となり、空気室が有効浮力に耐えきれず流失する事態が生じていた。これを防ぐには空気室隔壁の引張強度を確保すると共に、空気室隔壁を重量物で構成する必要があった。このことが、現行の振動水柱型波力発電装置を高コストにする最大の原因である。本発明では、常時エネルギー変換する場合には、空気室内が加圧状態または減圧状態の時のみエネルギー変換する場合に比べて空気室内の水位変動のストロークが低下し、したがって両方の場合のエネルギー変換量の差が小さいことに着目し、空気室内が減圧状態のときだけエネルギー変換する構成を提示している。これにより、空気室内が加圧状態になることを避けることが出来、空気室の流失を回避することが出来る。
【0021】
往復流の全ての時間帯でエネルギー変換する従来方式で課題であった、空気室内の加圧状態において生じる過大な有効浮力の増大による空気室の流失を回避できることから、コンパクトに装置を設計できる。振動水柱型波力発電装置では空気室のコストが全コストの主要部を占めるため、空気室のコンパクト化はそのまま装置の低コスト化につながる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態としての実施例を図面に基づいて説明する。
【0023】
図1に示すように、振動水柱型波力発電装置用動力変換装置Aは、空気室を構成する筒体1の中に、タービン2、回転軸3、ラチェット内蔵ギアボックス4、支え5、軸受6、発電機7を納めている。波の上下動により筒体1内に生じる流体の往復流により反転を繰り返す回転軸3の回転をラチェット機構により一方向の回転に変換し、エネルギーを獲得する。
【0024】
ラチェット機構としては、例えば特開平9-105430号公報に開示されたような一方向クラッチを利用することができる。
【0025】
ラチェット内蔵ギアボックス4に含まれる機構を図2に示す。
【0026】
タービン2の回転軸3には、内輪11がキー溝で固定されている。内輪11と外輪12の間に規則的に多数のカム13が配置されている。外輪12には歯車14が一体的に回転可能に取り付けられている。この歯車14に噛み合う歯車15には、発電機7を駆動する軸16が取り付けられている。
【0027】
したがって、内輪11と外輪12とが互いに空転する方向の回転力がタービン2の回転軸3を介して付加された場合には、各カム13が内輪11の外周面と外輪12の内周面から離間する向きの摩擦力が作用し、内輪11は外輪12に対して空転する。一方、前記と反対向きに回転力が付与された場合には、カム13を内輪11の外周面と外輪12の内周面とに噛み込ませる方向に作用し、外輪12に対する内輪11の回転が阻止され、両者は一体に回転することで、歯車14を回転させる。そして歯車機構を介して発電器7を駆動する軸16を回転することで発電機7を作動させる。この歯車機構をベルト伝導機構等、適宜の伝導機構としても良いことは当然である。
【0028】
本発明は、回転軸3の回転をラチェット機構により一方向の回転に変換するものであるので、水面波の運動による前記空気室内の圧力変動において、前記空気室内が加圧状態または減圧状態のいずれか一つの時間帯にのみエネルギー変換するようにすることができる。
【0029】
また、空気室が一体構造となりにくい場合や空気室隔壁をコンクリートなど引張力に弱い材料で構成する場合などでは、空気室内の圧力の時間変動において、空気室内が加圧状態の時間帯にはエネルギー変換を行なわず、減圧状態の時間帯にのみエネルギー変換するのが望ましい。
【0030】
また、タービンの回転速度を上げるため、空気室の断面積について、タービンの稼働部の部分の断面積を空気室内の水面上下動部分の断面積よりも小さくするとよい。
【0031】
さらに、ラチェット機構の後段にフライホイールを挿入することで、回転軸の回転速度の変動を抑え、発電機の回転速度変動による発電ロスを抑えることができる。
【0032】
次に、本発明の動力変換装置Aを組み込んだ振動水柱型波力発電装置の実施の態様を示す。
【0033】
図3(b)は本発明の動力変換装置Aを組み込んだ振動水柱型波力発電装置の全体の中央鉛直断面図である。図3(a)は、動力変換装置A近傍の拡大図である。
【0034】
図3(b)において、海底に着底した外周側壁26を持つ下部構造25の上にドーム状上部構造20が据えつけられている。上部構造20は空気室として機能し、下部構造25を構成する外周側壁26は水の流通を阻害しないように有孔とする。空気室中央部に鉛直に立てた筒体21内は空気で満たされている。上部構造20下端の位置には中央から水平方向に放射状に広がる支持構造22を有する。遊水室中央部の筒体21の下端付近から通気管23が放射状に外周に向けて延びている。通気菅は、空気室内では上記の支持構造22により支持され、空気室外ではドームの上面に沿って水面より高い位置まで延びており、終端部は開口24となっている。
【0035】
図4に図3の構成の平面図を示す。
【0036】
図5は風により揺動する浮体30に設置した場合の例である。浮体の上部に並べた回転抵抗板33を回転させることにより風の作用力の時間的変動をつくり浮体の揺動を誘起する。浮体には遊水室が設けてあり遊水室内の相対水位が変動することにより空気室を出入りする空気流がおこる。浮体30に所要個数の振動水柱型波力発電用動力変換装置Aが取り付けられており、曳き舟で設営を希望する位置まで移動可能であり、係留ロープで水面に配されている。
【0037】
図6は潮流により揺動する浮体40に設置した場合の例である。浮体揺動を利用することは図5と同様であるが、回転抵抗板43を浮体の下部に並べて水流の作用力の時間変動により浮体の揺動を作る。図5と同様に浮体40に所要個数の動力変換装置Aが取り付けられており、曳き舟で設営を希望する位置まで移動可能であり、係留ロープで水面に配されている。
【0038】
図7は後ろ曲げダクト形状の浮体50に設置した場合の例である。浮体50に所要個数の振動水中型波力発電装置の動力変換装置Aが取り付けられている。後ろ曲げダクトでは、波による浮体50の揺動のため浮体50内で大量の水の移動が生じ、これによって浮体50の空気室内で空気の大量の移動が生じるため発電能力が高く、しかも浮体50を係留するのに必要な力が、通常の浮体に比べて遥かに小さく、係留に好都合である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施例の縦断図。
【図2】ラチェット内蔵ギアボックスに含まれる構造を示す図である。
【図3】本発明の実施例の断面図及びその一部拡大図である。
【図4】図3の構成の平面図を示す。
【図5】本発明の振動水柱型波力発電装置用動力変換装置を搭載した具体例を示す図である。
【図6】本発明の振動水柱型波力発電装置用動力変換装置を搭載した具体例を示す図である。
【図7】本発明の振動水柱型波力発電装置用動力変換装置を搭載した後ろ曲げダクト形状の浮体に設置した場合の例を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
A 振動水柱型波力発電装置用動力変換装置
1 筒体
2 タービン
3 回転軸
4 ラチェット内蔵ギアボックス
5 支え
6 軸受
7 発電機
11 内輪
12 外輪
13 カム
14、15 歯車
16 軸
20、30、40 浮体
21 筒体
22 支持構造
23 通気管
24 開口
25 下部構造
26 外周側壁
33、43 回転抵抗板
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6