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明細書 :放射性廃液のガラス固化処理方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4665103号 (P4665103)
公開番号 特開2009-115490 (P2009-115490A)
登録日 平成23年1月21日(2011.1.21)
発行日 平成23年4月6日(2011.4.6)
公開日 平成21年5月28日(2009.5.28)
発明の名称または考案の名称 放射性廃液のガラス固化処理方法
国際特許分類 G21F   9/16        (2006.01)
FI G21F 9/16 541F
請求項の数または発明の数 2
全頁数 6
出願番号 特願2007-286060 (P2007-286060)
出願日 平成19年11月2日(2007.11.2)
審査請求日 平成21年2月5日(2009.2.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】独立行政法人 日本原子力研究開発機構
発明者または考案者 【氏名】伊藤 義之
【氏名】新原 盛弘
【氏名】高谷 暁和
個別代理人の代理人 【識別番号】100078961、【弁理士】、【氏名又は名称】茂見 穰
審査官 【審査官】村川 雄一
参考文献・文献 特開昭58-007599(JP,A)
特開昭61-145500(JP,A)
特開昭57-054900(JP,A)
特表2004-506536(JP,A)
新原盛弘 他4名,「ゾルゲル法を用いた高レベル放射性廃液の低温ガラス固化」,日本原子力学会2007年春の年会要旨集,日本,社団法人 日本原子力学会,2007年 3月 6日,H09
調査した分野 G21F 9/00 - 9/36
JSTPlus(JDreamII)
JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
放射性廃液中に、ガラス固化体として必要なガラス物性を得るための水溶性原料、及びアルコキシドの加水分解を促進するための溶媒を添加し、更に親油性のアルコキシド原料を添加して混和し、加水分解・重合反応を進めてゾルをゲル化し、得られた湿潤ゲルを粉砕して乾燥させ、その乾燥ゲルを仮焼することによりゲル中の結晶水、溶媒を分解、揮発させ、次いで仮焼粉体を圧縮成型し、その圧縮成型体をガラス軟化点以下の温度で焼結させることにより緻密なガラス固化体にすることを特徴とする放射性廃液のガラス固化処理方法。
【請求項2】
前記水溶性原料として硝酸塩を、アルコキシドの加水分解を促進するための溶媒としてアルコールを、親油性のアルコキシド原料としてトリメチルボラートとケイ酸エチルを用いる請求項1記載の放射性廃液のガラス固化処理方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性廃液を物理的にも化学的にも安定なガラス固化体にする方法に関し、更に詳しく述べると、主なガラス原料にアルコキシドを用いることにより、軟化点以下の温度で均質なガラス固化体を製造できる方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、再処理工場などの原子力施設から発生する放射性廃液は、濃縮した後、ガラス原料と共にガラス溶融炉に供給され、1000℃以上の高温で溶融処理した後、物理的、化学的に安定なガラス固化体へと処理される。得られたガラス固化体は、放射性廃棄物保管施設で保管される。このような技術は従来周知である。ガラス溶融炉には、加熱方式、炉材質、形式などによって種々のものが開発されている。代表的な例としては、炉の側壁に対向するように主電極を設置し、ガラスに直接通電することにより溶融させる直接通電方式がある。直接通電方式のガラス溶融炉による放射性廃液のガラス固化処理については、例えば特許文献1などにも記載がある。しかし、溶融ガラスは非常に腐食性が高いことから、溶融炉については、侵食に対応する設計とメンテナンスが必要であり、費用が増大する問題があった。
【0003】
ところで、高レベル放射性廃液の放射能のうち約98%はセシウムが占めており、セシウムの沸点は700℃程度であることから、従来のガラス溶融固化処理方法ではセシウム回収などの揮発対策が必要となっている。そのため、セシウムなど放射性元素の回収設備を付設しなければならず、その点でも設備やメンテナンスに要する費用が多くなる欠点があった。

【特許文献1】特開2007-24816号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、放射性廃液のガラス固化処理に際し、ガラスの軟化点以下の低温でガラス固化できるように工夫することで、設備材料の侵食や放射性元素の揮発を抑制し、設備やメンテナンスの費用を大幅に削減できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、放射性廃液中に、ガラス固化体として必要なガラス物性を得るための水溶性原料、及びアルコキシドの加水分解を促進するための溶媒を添加し、更に親油性のアルコキシド原料を添加して混和し、加水分解・重合反応を進めてゾルをゲル化し、得られた湿潤ゲルを乾燥させ、その乾燥ゲルを熱処理でガラス軟化点以下の温度で焼結させることによりガラス固化体にすることを特徴とする放射性廃液のガラス固化処理方法である。
【0006】
ここで、湿潤ゲルを乾燥させる際、ゲル中の湿潤部分と乾燥部分の間に応力がかかり、ひび割れを生じる恐れがあるので、湿潤ゲルを粉砕して乾燥させる。燥ゲルを仮焼した後、所定の形状に圧縮成型し、焼結させることで、大型で緻密なガラス固化体を得る。



【0007】
本発明において、例えば水溶性原料として硝酸塩を、アルコキシドの加水分解を促進するための溶媒としてアルコールを、親油性のアルコキシド原料としてトリメチルボラートとケイ酸エチルを用いるのが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る放射性廃液のガラス固化処理方法は、ガラス原料に主にアルコキシドを用いることで、軟化点(ホウケイ酸ガラスであれば約600℃)以下の温度でガラス固化体を製造することが可能となる。これにより、侵食性の高い溶融ガラスを取り扱う必要がなくなり、設備材料の侵食が抑制され、メンテナンス費用を削減することができる。また、高レベル放射性廃液には多くのセシウムが含まれているが、本発明では全工程を通じてセシウムの沸点未満で取り扱うことができるので、回収設備も簡略化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、主に、水溶性原料による組成調整、アルコキシドの加水分解を促進するための溶媒の添加、親油性原料による組成調整とゲル骨格を形成するゾルの生成、ゲル化、乾燥、熱処理の工程からなる。本発明の処理対象となる放射性廃液としては、不揮発性の廃棄物を含む水溶液、ゾル、サスペンションなどでもよい。
【0010】
図1は、本発明によるガラス固化処理方法の一例を示す工程図である。これは、バルク乾燥方式の例である。放射性廃液10中に、必要なガラスの物性(転移温度、融点、強度等)を得るための水溶性原料を添加する。水溶性原料としては、例えば金属硝酸塩を用いる。また、次に添加する親油性アルコキシド原料を水溶性の廃液と混和し、加水分解を促進するための溶媒を添加する。この溶媒には、エタノールやメタノールなどのアルコールを用いる。その後、前記水溶性原料と同様、必要なガラスの特性を得るために、ケイ酸エチルやケイ酸メチルなどの親油性アルコキシド原料を添加し、混和する。
【0011】
そして、適当な温度に加熱し超音波を加えるなどして加水分解・重合反応を進め、ゾルをゲル化する。次に、得られた湿潤ゲルを乾燥させる。その際、ゲル中の乾燥部分と湿潤部分の間に応力がかかり、ひび割れを生じる恐れがある。そこで、ひび割れを防ぐ簡易な方法として、一度に処理するゲル量を制限し、加熱によって徐々に乾燥させる。その他のひび割れ防止手段として、超臨界乾燥あるいは凍結乾燥などの技術を用いてもよい。最後に、その乾燥ゲルをガラス軟化点以下の温度で熱処理し、ゲル中の結晶水、溶媒を分解、揮発させ、焼結させることにより緻密なガラス固化体12にする。
【0012】
このガラス固化処理方法において、水溶性原料として特に金属硝酸塩が好ましいのは、金属硝酸塩は、放射性廃液に溶解し易く加熱により脱硝することから、均質なガラス固化体を得る上で好都合だからである。例えば、アルミナを含むガラスは結晶化し難い性質を持つ。放射性廃液に硝酸アルミニウムを添加すれば、後の熱処理によって脱硝され、アルミナを均質に含むガラス固化体が合成できる。硝酸アルミニウムの他には、硝酸カルシウムを添加すると(ガラス固化体中では酸化カルシウムとして均質に存在)、アルカリ金属の溶出防止効果などが生じる。なお、金属硝酸塩は水和物であってもよい。
【0013】
ところで、ガラス原料として、例えばホウ酸は軟化点を下げる効果がある。しかし、放射性廃液にホウ酸を添加しても完全には溶解せず、ガラス固化体は不均質となる。そこで本発明では、ホウ素原料として水溶性のホウ酸の代わりに、トリメチルボラートなどのアルコキシドを使用している。アルコキシドを添加すれば、既に添加されているアルコールによく混和し、均質なガラス固化体を得ることができる。特にトリメチルボラートおよびケイ酸エチル等の中心元素にアルコキシドが2つ以上配位した化合物は、添加とともに重合を起こしゲル化するため、最後に混合する。
【0014】
なお、アルコキシド原料がトリメチルボラートなどの反応性の高い物質であると、反応の過程でアルコキシドからアルコールが発生するため、必ずしもアルコール溶媒を添加する必要はないが、通常は加水分解を促進するためにエタノールなどを添加するのが好ましい。後の乾燥の工程では、ゲルの乾燥部分と湿潤部分に応力がかかり、ひび割れを生じる恐れがあるが、アルコールの一部をジメチルホルムアミドによって置き換えることで乾燥時のひび割れ防止を図ることができるし、熱処理時におけるガラスの相分離を抑えることもできる。
【0015】
図2は、本発明によるガラス固化処理方法の他の例を示す工程図である。これは、粉砕乾燥方式の例である。前記の例と同様、放射性廃液10中に水溶性原料、溶媒(アルコール)を添加する。更に、親油性アルコキシド原料を添加し混和する。加水分解・重合反応を進め、ゾルをゲル化する。そして、この例では得られた湿潤ゲルを粉砕し乾燥させる。最後に、その乾燥ゲルをガラス軟化点以下の温度で熱処理する。まず、仮焼することでゲル中の結晶水、溶媒を分解、揮発させ、仮焼粉体を所定の形状に圧縮成形し、その圧縮成形体を焼結させることにより大型の緻密なガラス固化体12にする。
【0016】
前述したように、乾燥の工程では、乾燥部分と湿潤部分に応力がかかり、ひび割れを生じる恐れがある。しかし、この例では、湿潤ゲルを粉砕するため、ひび割れ対策が不要であり、一度に乾燥するゲルの量を増加できるとともに、乾燥時間の短縮が可能となる。但し、乾燥ゲルが粉体であることから、ガラス固化体を製造するために新たに圧縮成型の工程を追加している。
【0017】
本発明は、高レベル放射性廃液や低レベル放射性廃液のガラス固化処理など、広い分野への応用が可能である。
【実施例】
【0018】
図1に示すバルク乾燥方式により、加圧水型軽水炉にて28000MWD/t燃焼した燃料を0.5年冷却後再処理し、5年冷却した放射性廃液の模擬物をガラス固化した。
【0019】
まず、廃液8.18ml中に、必要なガラスの特性(転移温度、融点、強度等)を得るために、水溶性原料として次のような組成の硝酸塩を添加した。
・LiNO3 … 0.69g
・Ca(NO3 2 ・4H2 O … 0.63g
・Zn(NO3 2 ・6H2 O … 0.55g
・Al(NO3 3 ・9H2 O … 1.84g
なお、添加量は、いずれもガラス固化体5g当たりの原料重量である。
【0020】
次に、加水分解を促進するための溶媒としてエタノールを添加した。更に、重合を起こす親油性のアルコキシド原料であるケイ酸エチル8.09g及びトリメチルボラート2.51gを添加した。
【0021】
このようにして得られた混合物を、35℃の超音波洗浄器中で1時間攪拌した。加水分解・重合反応を進め、ゾルをゲル化させた。その後、2日間室温にて放置し、十分ゲル化を進めた。そして、100℃の浴槽中で乾燥させ、乾燥ゲルを得た。この乾燥ゲルを、一旦300℃で3時間加熱し、更に600℃まで温度上昇して1時間加熱することで焼結させ、ガラス固化体5.00gを得た。
【0022】
上記ようにして作製したガラス固化体を粉砕し、比表面積を計測するとともに、95℃500ml湯浴に1日浸漬し、溶出重量を計測することにより、単位面積あたりの溶出速度を既存のガラス溶融固化体と比較した。その結果、本発明によって作製したガラス固化体の溶出速度は0.263g/m2 dayであり、既存のガラス溶融固化体の溶出速度0.232g/m2 dayと同等の性能を有することが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るガラス溶融処理方法の一例を示す工程図。
【図2】本発明に係るガラス溶融処理方法の他の例を示す工程図。
【符号の説明】
【0024】
10 放射性廃液
12 ガラス固化体
図面
【図1】
0
【図2】
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