TOP > 国内特許検索 > 逆ミセル液-液抽出法を利用した金属ナノ粒子の製造方法 > 明細書

明細書 :逆ミセル液-液抽出法を利用した金属ナノ粒子の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5120929号 (P5120929)
公開番号 特開2009-132953 (P2009-132953A)
登録日 平成24年11月2日(2012.11.2)
発行日 平成25年1月16日(2013.1.16)
公開日 平成21年6月18日(2009.6.18)
発明の名称または考案の名称 逆ミセル液-液抽出法を利用した金属ナノ粒子の製造方法
国際特許分類 B22F   9/24        (2006.01)
B01D  11/00        (2006.01)
B01D  11/04        (2006.01)
C02F   1/26        (2006.01)
C22B   3/26        (2006.01)
C22B   7/00        (2006.01)
FI B22F 9/24 E
B01D 11/00
B01D 11/04 A
C02F 1/26 C
C22B 3/00 J
C22B 7/00 G
請求項の数または発明の数 7
全頁数 9
出願番号 特願2007-308126 (P2007-308126)
出願日 平成19年11月29日(2007.11.29)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成19年11月8日 日本溶媒抽出学会発行の「第26回溶媒抽出討論会講演要旨集」に発表
審査請求日 平成22年6月25日(2010.6.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】独立行政法人日本原子力研究開発機構
発明者または考案者 【氏名】長縄 弘親
【氏名】下条 晃司郎
【氏名】三田村 久吉
個別代理人の代理人 【識別番号】100074631、【弁理士】、【氏名又は名称】高田 幸彦
審査官 【審査官】米田 健志
参考文献・文献 特開2005-060816(JP,A)
調査した分野 B22F 9/00~9/30
特許請求の範囲 【請求項1】
少なくとも1種以上の目的金属イオンを含む金属水溶液である水相と、界面活性剤および有機配位子を含む不活性溶媒である有機相とを混合し、前記目的金属イオンを逆ミセルに濃集させた後、逆ミセルを含む前記有機相を分取し、分取された前記有機相に還元剤を加え、一定時間反応させて金属ナノ粒子を生成することを特徴とする逆ミセル液-液抽出法を利用した金属ナノ粒子の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の製造方法において、前記不活性溶媒である有機相は、前記金属水溶液である水相と完全に混じり合わず、水相と有機相の2相を形成する液体もしくは超臨界流体であることを特徴とする逆ミセル液-液抽出法を利用した金属ナノ粒子の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の製造方法において、前記界面活性剤は、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤および非イオン性界面活性剤のうちのいずれかであり、前記有機配位子は、金属イオンなどに対して配位能を有する有機化合物であることを特徴とする逆ミセル液-液抽出法を利用した金属ナノ粒子の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の製造方法において、前記陽イオン性界面活性剤がアミン塩型もしくは第4級アンモニウム塩型、前記陰イオン性界面活性剤がスルホン酸塩型、硫酸エステル塩型、リン酸エステル塩型、もしくはカルボン酸塩型、前記両性界面活性剤がスルホン酸塩型、硫酸エステル塩型、リン酸エステル塩型、もしくはカルボン酸塩型、前記非イオン性界面活性剤がポリエチレングリコール型もしくは多価アルコール型であることを特徴とする逆ミセル液-液抽出法を利用した金属ナノ粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項3記載の製造方法において、前記有機配位子が1個の官能基または同一ないしは別異の複数個の官能基を持つ化合物であることを特徴とする逆ミセル液-液抽出法を利用した金属ナノ粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の製造方法において、前記官能基が、ホスホリル基、チオホスホリル基、ホスフィン基、カルボニル基、カルバモイル基、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピロリジニル基、ピペリジル基、メルカプト基、アミド基、イミド基、アミノ基、アミンオキシド基、イミダゾール基、エーテル基、アルコキシル基、チオエーテル基、水酸基、グリコール基、チオール基、チエニル基、スルホニル基、チアジル基、もしくはアルデヒド基から選択されるいずれか1つであることを特徴とする逆ミセル液-液抽出法を利用した金属ナノ粒子の製造方法。
【請求項7】
金イオンを含む金属水溶液である水相と、界面活性剤としてAOTおよび有機配位子としてTODGAを含む不活性溶媒である有機相とを混合し、前記金イオンを逆ミセルに濃集させた後、逆ミセルを含む前記有機相を分取し、分取された前記有機相に還元剤としてヒドラジンを加え、一定時間反応させて金ナノ粒子を生成することを特徴とする逆ミセル液-液抽出法を利用した金属ナノ粒子の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、廃液などの水溶液から、金などの金属ナノ粒子を製造する方法に関する。さらに詳細には、本発明は、水と有機溶媒などの抽出媒体から成る2液相系の抽出媒体相中で生成する逆ミセルと呼ばれるナノ反応場を利用して、金属ナノ粒子を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
初めに、逆ミセルとは、不活性媒体(アルカン、超臨界流体二酸化炭素など)中で生成する界面活性剤の集合体であり、多くの場合、その内側には内核水相と呼ばれるナノメーターサイズの微小水滴を有する。別の言い方をすると、逆ミセルとは、界面活性剤の形成する単分子膜に覆われたナノ水滴である。このようなナノ反応場を利用して、金属ナノ粒子を製造する方法は既に広く知られている。この方法は、生成するナノ粒子の均質性が高い、種々の化学反応を利用して多様な形態の粒子を製造できる、粒子の表面を修飾できる、また、穏やかな条件(例えば、室温)でナノ粒子を製造ができるなどの利点があり、ナノ粒子の大量生産にも適している。
【0003】
さて、このような逆ミセルを利用したナノ粒子製造法(逆ミセル法)として、従来から、微量注入法が知られている。微量注入法とは、ナノ粒子化したい金属イオンを高濃度かつ高純度で含む水溶液を、界面活性剤を含む不活性溶媒に微量注入することによって、高濃度かつ高純度の目的金属イオンを含む逆ミセルを生成させた後、還元剤などを作用させて金属ナノ粒子を生成させる方法である(例えば、非特許文献1を参照)。図1に上述した従来技術である微量注入法の概要を示す。
【0004】
一方、水相中の金属イオンを有機溶媒などの抽出溶媒相に抽出した後、還元剤などを作用させてナノ粒子を製造する方法(液-液抽出法)がある。例えば、M. Brustらは、水相中のテトラクロロ金酸イオンをトルエン相へ相間移動させる試薬としてテトラアルキルアンモニウム塩を用いることで、2液相系での金ナノ粒子の製造に成功している(例えば、非特許文献2を参照)。
【0005】
また、本願発明者の長縄らは、以前の研究において、界面活性剤と有機配位子を組み合わせて生じる逆ミセル系が、ランタノイドなどの金属イオンに対して非常に大きな抽出機能と優れた選択的分離機能を有することを発見している(例えば、非特許文献3を参照)。

【非特許文献1】小泉光恵ら、ナノ粒子の製造・評価・応用・機器の最新技術、(株)シーエムシー出版、第2章ナノ粒子の製造、1 単分散ナノ粒子の製造、1.2 溶液法、1.2.4 逆ミセル法、16-23(2002年)
【非特許文献2】M. Brustら、Journal of Chemical Society, Chemical Communications、801-802(1994年)
【非特許文献3】長縄弘親ら、Physical Chemistry Chemical Physics、2巻、3247-3253(2000年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
金属ナノ粒子を製造する方法は様々であるが、上述した逆ミセル法(微量注入法)では、例えば工場からの廃水のように、ナノ粒子にしたい金属を僅かにしか含まないうえに多数の他金属が共存する水溶液を原材料として、高品質な金属ナノ粒子を製造することが困難である。一方、上述した液-液抽出法では、目的金属イオンの抽出およびそのナノ粒子化を同じ溶媒相で行うことができ、ナノ粒子化したい目的金属イオンの濃度が希薄な水溶液からであっても目的金属イオンを抽出溶媒中に濃集することでナノ粒子を製造することが可能である。しかしながら、Brust法のような従来の液-液抽出法では、不純物として他金属イオン(例えば、白金族元素、亜鉛、鉄など)が共存する水溶液中からナノ粒子化したい目的金属イオン(例えば、金)だけを選択的に抽出してナノ粒子化することはできない。また、Brust法は、クロロ錯陰イオンを形成する金属以外のナノ粒子化には適用できない。また、Brust法のような従来の液-液抽出法での還元反応には、水素化ホウ素ナトリウムのような強力な還元剤が必要であるが、このような試薬の扱いには危険を伴う。
【0007】
逆ミセル法と液-液抽出法を組み合わせることができれば、逆ミセルのナノサイズ反応場を利用して高品質で多様なナノ粒子を製造できるという逆ミセル法の利点と、目的金属イオンの濃度が希薄な水溶液からであっても抽出・濃集することでナノ粒子を製造できるという液-液抽出法の利点の両方を合わせ持つ、新たなナノ粒子製造法が生まれると期待できる。具体的には、水と抽出溶媒から成る2液相系の抽出溶媒相において逆ミセルを形成させ、その逆ミセルに金属イオンを抽出する機能(抽出機能)を持たせれば、逆ミセルをナノ粒子生成の反応場だけではなく、液-液抽出にも利用できる。また、このときの逆ミセルに、目的とする金属イオンを選択的に分離する機能(選択的分離機能)を持たせれば、多数の不純物が共存する水溶液からであっても、目的金属イオンのみを選択的に抽出してナノ粒子化できる。これが可能になれば、従来の液-液抽出を利用した方法(例えば、Brust法)にはなかったメリットになる。これら抽出機能と選択的分離機能を合わせ持つ逆ミセル系(以後、“機能化逆ミセル系”と称する)は、すでに本願発明者によって開発されている(前述の非特許文献3を参照)。図2に模式的に示すように、有機配位子を添加することにより生じる機能化逆ミセル系では、目的金属イオンのみを高選択的に抽出できる。しかし、多数の不純物が共存する水溶液から目的とする金属イオンのみを取り出して、成分、形状および粒径の整った、高品質の金属ナノ粒子を製造するまでには至っていない。
【0008】
本発明の目的は、逆ミセル法と液-液抽出法の両方の利点を合わせ持ち、かつ目的金属のみを選択的にナノ粒子化できるという、従来法では実現できない優れた特徴を有する新しい金属ナノ粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者は、前述の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、目的金属イオンを逆ミセルに濃集した後、還元剤などを作用させることで高品質の金属ナノ粒子を製造できる方法を開発した。この新しい金属ナノ粒子の製造方法は、言わば逆ミセル法と液-液抽出法を組み合わせた方法であるので、“逆ミセル液-液抽出法”と名付けることにする。
【0010】
本発明に係る逆ミセル液-液抽出法を利用した金属ナノ粒子の製造方法は、少なくとも1種以上の目的金属イオンを含む金属水溶液である水相と、界面活性剤および有機配位子を含む不活性溶媒である有機相とを混合し、前記目的金属イオンを逆ミセルに濃集させた後、逆ミセルを含む前記有機相を分取し、分取された前記有機相に還元剤を加えるなどして、一定時間反応させて金属ナノ粒子を生成するステップから成る。生成する金属ナノ粒子が金である場合には、界面活性剤としてAOT(後述)、有機配位子としてTODGA(後述)、そして還元剤としてはヒドラジンが好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る逆ミセル液-液抽出法を利用した金属ナノ粒子の製造方法によって、ナノ粒子化したい目的の金属イオンが低濃度でかつ不純物として多数の他金属イオンが共存する水溶液中からであっても、目的金属イオンのみを高選択的に逆ミセルに抽出・濃集した後にナノ粒子化することで、廃液のような水溶液から高純度で均質性の高い高品質なナノ粒子を製造することが可能となる。
【0012】
逆ミセル液-液抽出法では、界面活性剤と有機配位子を組み合わせて用いるが、目的とする金属イオンに対する有機配位子の選択性と界面活性剤が形成する逆ミセルと金属-配位子錯体との親和性から、目的金属イオンに対する抽出機能と選択的分離機能が同時に逆ミセルに付加される。とくに、優れた選択的分離機能は、Brust法のような従来の液-液抽出法にはない特徴である。
【0013】
また、逆ミセル液-液抽出法では、目的金属イオンに合わせて有機配位子を選択するが、このことは、金属イオンを限定することなく、自由に系を設計できることを意味している。一方、Brust法はクロロ錯陰イオンを形成する金属イオン以外には適用できないので、あらゆる金属イオンに対して適用可能な逆ミセル液-液抽出法は、この点でもBrust法にはないメリットを持つと言える。
【0014】
また、逆ミセル液-液抽出法は、危険な試薬を用いることなく室温での操作でナノ粒子製造ができるという点で、安全面においても有利である。従来法であるBrust法では、例えば金のナノ粒子を作製する際、水相中のテトラクロロ金酸イオンをトルエン相に抽出した後、分取したトルエン相にアルカンチオールを加えてテトラクロロ金酸イオンを安定な錯体にした後、そこに強力な還元剤である水素化ホウ素ナトリウムを作用させることで金ナノ粒子を生成させる。テトラクロロ金酸イオンをアルカンチオールなしで還元すると、金ナノ粒子が生成すると同時に即座に凝集してしまうため、アルカンチオールは必ず還元剤を添加する前に加える必要がある。アルカンチオールはテトラクロロ金酸イオンを安定化する配位子として有効である反面、生成した錯体は容易に還元することができないため、必然的に強力な還元剤が必要になってしまう。一方、逆ミセル液-液抽出法では、逆ミセルという体積の制限された反応場で還元反応を起こすことによって金ナノ粒子が生成する。このとき、1つ1つの金ナノ粒子は逆ミセルというカプセルに閉じ込められた状態で単分散しているので、金ナノ粒子同士が凝集しにくい。すなわち、還元によって金ナノ粒子を生成させた後に、金ナノ粒子にアルカンチオールを化学吸着させて安定化させることができる。このことから、穏やかに反応する還元剤(例えば、ヒドラジン)でも十分に働くため、水素化ホウ素ナトリウムのような水などと激しく反応する強力な試薬を用いる必要がなく、危険を伴わない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明で使用する逆ミセル液-液抽出法の概要を図3に示す。図3から理解されるように、初めに、少なくとも1種以上の目的金属イオンを含む金属水溶液である水相と、界面活性剤および有機配位子を含む不活性溶媒である有機相が準備され、これらが充分に混合される。図3では、混合プロセスを抽出として矢印で示している。混合の結果、ほぼ前記目的金属イオンのみが、逆ミセルに濃集させられる。次に、逆ミセルを含む前記有機相が分取され、分取された前記有機相に還元剤と保護剤が加えられる。この状態で、一定時間反応させると金属ナノ粒子が生成される。これらの各ステップは室温にて行われる。なお、前記還元剤の代わりに、特定の試薬を加えるとか、光や放射線を当てて金属ナノ粒子を生成することも可能である。
【0016】
この製造方法は、従来の逆ミセル法(微量注入法)とは異なり、純粋で高濃度の目的金属イオンを含む水溶液を用意する必要がなく、廃液のように、目的金属イオンの濃度が低いうえに多くの不純物が含まれる水溶液からであっても、ナノ粒子を製造することができる点に大きな特徴がある。なお、図3においては、この点を強調するために、水相は低濃度で不純物の多い金属水溶液になっているが、当然高濃度であっても、不純物の少ない金属水溶液であっても良いことは明らかである。
【0017】
なお、逆ミセル液-液抽出法では、例えば金のナノ粒子を作製する際、水素化ホウ素ナトリウムのような強力な還元剤を使用する必要がなく、作用が緩やかで安全な還元剤(例えば、ヒドラジン)でも十分であるため、ほとんど危険性がない。また、逆ミセル液-液抽出法には、室温のような穏やかな条件下でナノ粒子が製造できるというメリットもある。
【0018】
金のナノ粒子は、ナノ触媒、診断薬材料などとして広いニーズを持つ代表的な金属ナノ粒子として知られている。また、金は、実際に、メッキ工場からの廃水などに少量含まれるので、ナノ粒子として再資源化する意義も大きい。そこで、廃水を模擬した金含有水溶液を作製し、金ナノ粒子を製造するための原材料として利用する試験を行った。
【0019】
本発明による逆ミセル液-液抽出法では、界面活性剤と有機配位子を組み合わせて用いる。模擬廃液から金ナノ粒子を製造する試験では、界面活性剤としてビス(ジエチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム[Bis(2-ethylhexyl)sulfosuccinate sodium salt](商標名AerosolOT:AOTと略す)、有機配位子としてN,N,N',N'-テトラオクチル-3-オキサペンタン-1,5-ジアミド:テトラオクチルジグリコールアミド[N,N,N',N'-tetraoctyl-3-oxapentane-1,5-diamide:tetraoctyldiglycolamide](TODGAと略す)を使用した。下記の実施例に、その詳細を記す。
【実施例】
【0020】
(実施例1)AOTとTODGAを組み合わせた逆ミセルによる模擬廃液からの金イオンの選択的抽出
【0021】
AOTとTODGAを含むイソオクタン溶液と塩酸水溶液の間の金イオンといくつかの共存金属イオンの液-液分配比を測定した。実験操作を以下に示す。
1)5 mM AOTと10 mM TODGAを含むイソオクタン溶液5 mlとそれぞれ1 ppmの鉄、ニッケル、銅、亜鉛、パラジウム、白金、および金を含む1 M 塩酸水溶液(模擬廃液)5 mlを試験管の中に入れ、ボルテックスミキサーにより、15分間振とうした。
2)5分間の遠心分離の後、水相の一部を採取した。
3)採取した水相を0.5 M硝酸水溶液で希釈し、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)を用いて、それぞれの金属イオンの濃度を測定した。
4)それぞれの金属イオンについて、初濃度から水相に残った濃度を引き算して有機相に抽出された濃度とし、抽出率(=有機相中の濃度/初濃度)を求めた。
【0022】
図4は、上記のようにして求めた模擬廃液中のそれぞれの金属イオンの抽出率を示した図である。金イオンでは94%の抽出率が得られたが、金イオン以外の金属イオンは9%以下の抽出率であり、金イオンが高選択的に抽出されていることがわかる。また、この図から、化学的性質が類似していて金イオンとの分離が困難と言われる白金イオンやパラジウムイオンとも、十分に分離できていることがわかる。
(比較例1)
テトラアルキルアンモニウム塩を用いた模擬廃液からの金イオンの抽出
【0023】
従来法であるBrust法では、液-液抽出過程において、テトラアルキルアンモニウム塩を用いて金イオンをトルエン相(抽出溶媒相)に抽出した後、抽出した金イオンをナノ粒子化する。そこで、(実施例1)と同じ模擬廃液を用いて金イオンの抽出を行い、(実施例1)の結果と比較した。
1)10 mMテトラオクチルアンモニウム(TOA)ブロマイドを含むトルエン溶液5 mlと(実施例1)と同じ模擬廃液5 mlを試験管の中に入れ、ボルテックスミキサーにより、15分間振とうした。
2)5分間の遠心分離の後、水相の一部を採取した。
3)採取した水相を0.5 M硝酸水溶液で希釈し、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)を用いて、それぞれの金属イオンの濃度を測定した。
4)それぞれの金属イオンについて、(実施例1)と同様にして抽出率を求めた。
【0024】
図5は、上記のようにして求めた模擬廃液中のそれぞれの金属イオンの抽出率を示した図である。この図から、従来の製造方法では、金イオン以外にも多くの金属イオンが同時に抽出されてしまうことがわかる。
(実施例2)
AOT-TODGA逆ミセルに抽出した金イオンのナノ粒子化
【0025】
金イオンを抽出したAOT-TODGA逆ミセルに還元剤を作用させて、金ナノ粒子を製造した。実験操作は以下の通りである。
1)金イオンを抽出したAOT-TODGA逆ミセルを含むイソオクタン溶液を4 ml分取し、ヒドラジンを2 mg添加した。
2)その後、ドデカンチオールを0.8 mg添加した。
3)イソオクタンをエバポレータで蒸発させ、残った金ナノ粒子をエタノールで洗浄した後、透過型電子顕微鏡を用いて観測した。
【0026】
図6は、上記のようにして得られた金ナノ粒子の透過型電子顕微鏡写真である。個々の金ナノ粒子の表面はドデカンチオールによって化学修飾されていると考えられる。なお、金ナノ粒子の直径は、およそ5 nmである(表面修飾部分を除いて)。また、特性X線および電子線回折の測定結果から、ナノ粒子は高純度の金を成分としていることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明に係る逆ミセル液-液抽出法は、例えば工場廃水を処理して金属含有ナノ材料を製造するなど、エコテクノロジーとナノテクノロジーの合わせ技として、また従来法よりも安全かつ簡便な方法として、種々の産業で利用できる。例えば、工業廃水処理技術としての利用が期待できる。現在、工業廃水中の金属の除去にはアルカリ沈殿法が用いられているが、この方法は簡便である反面、大量のアルカリを加えることによって生じるスラッジの問題を抱えている。廃水処理によって生じる莫大な量のスラッジは産業廃棄物として処分されるが、近年の産廃処分場の不足や処分場周辺の環境への影響が懸念され、大きな社会問題になっている。このような大きな環境負荷に加えて、廃水中の有価成分を廃棄物にしてしまっていることは、資源循環の考え方にも相反する。本発明によれば、産業廃棄物であるスラッジの代わりに価値の高い金属ナノ粒子が得られることで、環境負荷の大幅な軽減と同時に資源回収が可能となり、画期的な廃水処理法として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】従来の逆ミセルを利用した金属ナノ粒子の製造方法である微量注入法の概要を示す図である。
【図2】従来の機能化逆ミセル系(逆ミセル+有機配位子)による目的金属イオンの高選択的な抽出・分離を模式的に示した図である。
【図3】本発明の逆ミセル液-液抽出法による金属ナノ粒子の製造方法の概要を示す図である。
【図4】本発明で使用するAOT-TODGA機能化逆ミセル系による模擬廃液中のそれぞれの金属イオンの抽出率を示した図である。
【図5】従来のBrust法で用いるTOAによる模擬廃液中のそれぞれの金属イオンの抽出率を示した図である。
【図6】本発明の逆ミセル液-液抽出法によって得られた金ナノ粒子の透過型電子顕微鏡写真である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5