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明細書 :ラジカル滅菌装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5007386号 (P5007386)
登録日 平成24年6月8日(2012.6.8)
発行日 平成24年8月22日(2012.8.22)
発明の名称または考案の名称 ラジカル滅菌装置
国際特許分類 A61L   2/14        (2006.01)
FI A61L 2/14
請求項の数または発明の数 8
全頁数 12
出願番号 特願2007-526782 (P2007-526782)
出願日 平成17年7月28日(2005.7.28)
国際出願番号 PCT/JP2005/013858
国際公開番号 WO2007/013160
国際公開日 平成19年2月1日(2007.2.1)
審査請求日 平成20年5月16日(2008.5.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504209655
【氏名又は名称】国立大学法人佐賀大学
発明者または考案者 【氏名】佐藤 三郎
【氏名】林 信哉
個別代理人の代理人 【識別番号】100099634、【弁理士】、【氏名又は名称】平井 安雄
審査官 【審査官】神田 和輝
参考文献・文献 特表平11-506677(JP,A)
特開平11-501530(JP,A)
林信哉、佐藤三郎、山部長兵衛、後藤昌昭,酸素および水蒸気を用いた低圧高周波プラズマによる医療材料の滅菌特性,プラズマ科学シンポジウム2005/第22回プラズマプロセシング研究会プロシーディングス,日本,プラズマ科学シンポジウム2005/第22回プラズマプロセシング研究会,2005年 1月26日,P691-692
調査した分野 A61L 2/00-2/26
特許請求の範囲 【請求項1】
滅菌処理の対象となる被処理物を収納し、気密性容器からなる収納手段と、
前記収納手段内の気圧を低気圧に維持する低気圧維持手段と、
前記収納手段と一体に同一の気密性容器で構成され、当該気密性容器内で直線状に複数のノズルが配設された拡散器を配設してなり、微少流量バリアブルニードルバルブを用いて液体の水を気化させて水蒸気ガスを発生させ、低気圧状態に維持された前記気密性容器内に、当該発生した水蒸気ガスを前記複数のノズルから拡散散布する水蒸気ガス発生手段と、
前記収納手段内に少なくともアンテナ線路からなる電極が前記複数のノズル近傍に沿って収納され、当該収納手段内に水蒸気ガスが供給された水蒸気雰囲気中で電極に電流を流して放電により前記水蒸気ガスの酸化水素を電離させてヒドロキシ(OH)ラジカル及び酸素(O)ラジカルを生成するラジカル生成手段とを備えることを
特徴とするラジカル滅菌装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載のラジカル滅菌装置において、
前記収納手段が、円筒状の筒体で形成され、
前記電極が、前記収納手段の筒体の中心軸に平行に複数屈曲して形成されるとともに、当該中心軸を中心として円弧状に配設される直線状のアンテナ線路からなり、
前記拡散器が、前記電極と前記収納手段内壁との間に配設されることを
特徴とするラジカル滅菌装置。
【請求項3】
前記請求項1または2に記載のラジカル滅菌装置において、
前記水蒸気ガス発生手段における水蒸気ガス発生の気圧が、収納手段における気密性容器の内部気圧より高い気圧であって大気圧より低い気圧とされることを
特徴とするラジカル滅菌装置。
【請求項4】
前記請求項1ないし3のいずれかに記載のラジカル滅菌装置において、
前記ラジカル生成手段が、電極に供給される電流により低気圧グロー放電を発生させることを
特徴とするラジカル滅菌装置。
【請求項5】
前記請求項1ないし4のいずれかに記載のラジカル滅菌装置において、
前記ラジカル生成手段が、電極に供給される電流の周波数を1kHzないし10kHzとすると共に当該電極に印加される交流電圧を7kVないし13kVとして駆動されるこ
とを
特徴とするラジカル滅菌装置。
【請求項6】
前記請求項1ないし5のいずれかに記載のラジカル滅菌装置において、
前記低気圧維持手段が、前記収納手段の気密性容器内において水蒸気ガスの圧力を1Paから1,000Paまで変化させることを
特徴とするラジカル滅菌装置。
【請求項7】
前記請求項1、2、4ないし6のいずれかに記載のラジカル滅菌装置において、
前記水蒸気ガス発生手段の容器内気圧を10Paないし10,000Paとすると共に、前記収納手段の気密性容器内気圧を1Paないし1,000Paとし、
前記水蒸気ガス発生手段と収納手段との各気圧を比例させて増減させることを
特徴とするラジカル滅菌装置。
【請求項8】
前記請求項1ないし7のいずれかに記載のラジカル滅菌装置において、
前記水蒸気ガスの発生時の容器内気圧を放電時の容器内気圧より高くし、当該水蒸気ガスの発生と放電によるヒドロキシ(OH)ラジカル及び酸素(O)ラジカルの発生とを交互に実行することを
特徴とするラジカル滅菌装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロキシ(OH)ラジカルにより医療器材等の被処理物を滅菌するラジカル滅菌装置に関し、特に水蒸気ガスから生成したヒドロキシ(OH)ラジカルにより被処理物を滅菌するラジカル滅菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術となるプラズマ滅菌装置は、特開平10-99415号公報(第1の背景技術)、特開平7-18461号公報(第2の背景技術)に開示されるものがある。この各背景技術を図5及び図6に概略構成断面図として示す。
図5において、この第1の背景技術に係るプラズマ滅菌装置は、大気圧でプラズマを発生させるプラズマ発生器112を備えた第1のチャンバー114と、被処理物136を配置しうるとともに耐圧構造の第2のチャンバー118と、両者を開閉自在に連結し、第1のチャンバーから第2のチャンバー118内へ供給する殺菌因子を含んだ気体の流れを制御する開閉バルブ120と加圧装置であるコンプレッサー122とを備えた連結管124とからなる。第2のチャンバー118には、チャンバー118内の気体を吸排することにより内部の気圧を一定に保つ圧力調整器116が連結されている。プラズマ発生器112においては、パルス電源を用いて気体と液体の混合物の少なくとも一部を電離させることができ、かくして得られた電離混合物が殺菌因子となる。
【0003】
このように被処理物136を滅菌する第2のチャンバー118とは別に殺菌因子を貯留するための第1のチャンバー114を備え、両者を開閉バルブ120を備えた連結管124で連結することにより、滅菌に必要な殺菌因子の貯留と、被処理物の乾燥等の前処理とを平行して行うことができ、さらに、相当量の殺菌因子を短時間で被処理物に接触させることができるため、有効な滅菌処理を効率よく行い得る。
【0004】
また、図6において第2の背景技術に係るプラズマ滅菌装置は、蓋202を開放して、真空容器201に殺菌しようとする容器218を入れ、次に蓋202を閉じて真空ポンプ204により真空容器内をプラズマを発生させる時の圧力より充分低くなるまで排気し、次いで気体源214から適当な流量で気体を導入し、弁215を調整してプラズマに適した圧力に保持する。一方真空ポンプ204が運転を続けて、圧力を安定させた後高周波電源212から、電極208に高周波電力を印加して容器218内にプラズマを発生させ、充分な殺菌が行なわれる時間プラズマを保持した後、高周波電力の印加を停止して容器218の殺菌を行う構成である。また、この高周波電力の印加停止と同時に気体の導入を停止し、しばらく排気してから真空ポンプの運転を停める。そして次に大気導入弁217を開いて大気を導入し、その後蓋202を開いて容器218を取り出す。

【特許文献1】特開平10-99415号公報
【特許文献2】特許第3209944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記第1の背景技術に係るプラズマ滅菌装置は以上のように構成されていたことから、大気圧の第1のチャンバー114内でプラズマを生成して酸素プラズマを発生させたとしても大気圧下では、この酸素プラズマが大気圧で第1のチャンバー114内に存在する気体、例えば酸素、水素、窒素等と極めて短時間で結合することとなり、酸素プラズマ単体として存在し得ず滅菌効果が十分得られないという課題を有する。
【0006】
また、前記第2の背景技術に係るプラズマ滅菌装置は、真空容器210内で殺菌対象となる容器218を殺菌しようとするものであるが、不活性ガスと反応ガスとの混合気体からなるプラズマ生成用ガスを導入してプラズマPを生成していることから、酸素プラズマ単体を高密度に発生させることができず、対象となる容器218を確実に滅菌処理できないという課題を有する。この第2の背景技術における殺菌は、微生物学的には微生物を殺して生存数を減らすことをいい、滅菌が対象となる物質及びその周囲空間の微生物を全て死滅又は除去することとは大きく異なる。
【0007】
さらに、他の背景技術に係るプラズマ滅菌装置としては、過酸化水素を原料ガスとして用い、ヒドロキシ(OH)ラジカルを発生させ、このヒドロキシ(OH)プラズマの殺菌能力で滅菌を行うものがあるが、この過酸化水素が常温常圧で液体であることから、低圧のプラズマ容器内に液体を導入する場合には装置構造と運転方法(圧力調整)とがいずれも複雑化すると共に、過酸化水素が高価であることから、装置自体及びランニングコストの双方が高価格となるという課題を有していた。
【0008】
特に、原料ガスが過酸化水素水の場合には、その濃度も58%程度が必要であることから毒性が極めて強く、取扱いに危険性を有すると共に、滅菌処理後に残留ガスとして残存する過酸化水素のガスにより作業者がガス中毒になるという課題を有する。この残留する過酸化水素ガスを除去するためには、プラズマ滅菌装置とは別途に過酸化水素ガスを分解する分解装置を配設しなければならず、システム構成が複雑化且つ大型化するという新たな課題を有する。
【0009】
また、滅菌対象となる被処理物を収納する容器内の圧力を高真空状態と低真空状態とに切替えて滅菌処理を実行する場合に、液体である過酸化水素を原料ガスとして用いると、前記圧力調整が極めて困難な作業となり、水酸化物プラズマを容器内に均一に拡散させるのに長時間を要する等の課題をも有する。
【0010】
本発明は、前記課題を解消するためになされたもので、ヒドロキシ(OH)ラジカル及び酸素(O)ラジカルを高密度に発生させて被処理物を確実且つ安価に滅菌させると共に、作業者の安全性を確保することができるプラズマ滅菌装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るラジカル滅菌装置は、滅菌処理の対象となる被処理物を収納し、気密性容器からなる収納手段と、前記収納手段内の気圧を低気圧に維持する低気圧維持手段と、前記収納手段と一体に同一の気密性容器で構成され、当該気密性容器内で直線状に複数のノズルが配設された拡散器を配設してなり、微少流量バリアブルニードルバルブを用いて液体の水を気化させて水蒸気ガスを発生させ、低気圧状態に維持された前記気密性容器内に、当該発生した水蒸気ガスを前記複数のノズルから拡散散布する水蒸気ガス発生手段と、前記収納手段内に少なくともアンテナ線路からなる電極が前記複数のノズル近傍に沿って収納され、当該収納手段内に水蒸気ガスが供給された水蒸気雰囲気中で電極に電流を流して放電により前記水蒸気ガスの酸化水素を電離させてヒドロキシ(OH)ラジカル及び酸素(O)ラジカルを生成するラジカル生成手段とを備えるものである。
【0012】
このように本発明においては、被処理物を収納する収納手段を低気圧維持手段により低気圧に維持し、この収納手段に水蒸気ガス発生手段から水蒸気ガスを供給し、この水蒸気ガスの酸化水素をラジカル生成手段がプラズマ化してヒドロキシ(OH)ラジカル及び酸素(O)ラジカルを生成するようにしているので、ヒドロキシ(OH)ラジカル及び酸素(O)ラジカルを長時間単体として維持させると共に、高密度に発生させることができることとなり、被処理物を確実且つ安価に滅菌できる。また、本発明に係るラジカル滅菌装置は、水蒸気ガス発生手段が、収納手段と一体に同一の気密性容器で構成されるものである。このように本発明においては、水蒸気ガス発生手段が、収納手段と一体に同一の気密性容器で構成されることにより、簡略化した装置構成でヒドロキシ(OH)ラジカル及び酸素(O)ラジカルを長時間単体として維持させると共に、高密度に発生させることができることとなり、被処理物を確実且つ安価に滅菌できる。
【0013】
また、本発明に係るラジカル滅菌装置は必要に応じて、前記収納手段が、円筒状の筒体で形成され、前記電極が、前記収納手段の筒体の中心軸に平行に複数屈曲して形成されるとともに、当該中心軸を中心として円弧状に配設される直線状のアンテナ線路からなり、前記拡散器が、前記電極と前記収納手段内壁との間に配設されるものである。このように本発明においては、交流電流が電極に流れ、当該電極のアンテナ線路周囲に電磁場を生じさせる。この電磁場の磁場強度が強い当該電極の導電線(アンテナ線路)の極めて近傍を通過させるように水蒸気ガスを強制的に供給させることができることとなり、強い電磁場により水蒸気ガスのラジカル化をより促進させることができる。
【0014】
また、本発明に係るラジカル滅菌装置は必要に応じて、水蒸気ガス発生手段における水蒸気ガス発生の気圧が、収納手段における気密性容器の内部気圧より高い気圧であって大気圧より低い気圧とされるものである。このように本発明においては、水蒸気ガス発生手段を収納手段の内部気圧により高い気圧で水蒸気ガスを発生させるようにしているので、大気圧より低気圧で水蒸気ガスを急速且つ多量に発生させ、この発生した水蒸気ガスをより低圧な収納手段へ円滑に導入し、導入した水蒸気ガスの低気圧雰囲気内でラジカル生成手段が放電を確実且つ円滑に行えることとなり、より効率的にヒドロキシ(OH)ラジカル及び酸素(O)ラジカルを発生できることとなる。
【0015】
また、本発明に係るラジカル滅菌装置は必要に応じて、ラジカル生成手段が、電極に供給される電流により低気圧グロー放電を発生させるものである。このように本発明においては、ラジカル生成手段が、電極に供給される電流により低気圧グロー放電を発生させることから、収納手段の気密性容器内でラジカル生成手段の電極により体積放電が行えることとなり、この気密性容器内の全領域で高効率にヒドロキシ(OH)ラジカル及び酸素(O)ラジカルを生成できる。
【0016】
また、本発明に係るラジカル滅菌装置は必要に応じて、ラジカル生成手段が、電極に供給される電流の周波数を1kHzないし10kHzとすると共に当該電極に印加される交流電圧を7kVないし13kVとして駆動されるものである。このように本発明においては、ラジカル生成手段が、電極に供給される電流の周波数を1kHzないし10kHzとすると共に当該電極に印加される交流電圧を7kVないし13kVとして駆動されることから、1kHzないし10kHzの周波数の電流を電極に供給して水蒸気ガスの水分子(イオン)と共鳴でき、且つ7kVないし13kVの交流電圧を印加して水蒸気雰囲気中での放電の開始及び維持が確実且つ容易に制御でき、ヒドロキシ(OH)ラジカル及び酸素(O)ラジカルの発生量を増大させることができる。特に、印加電圧を7kVないし13kVとすることにより、電極の印加状態をセルフバイアス状態とすることなく、放電の開始及び維持が容易に制御できることから、電極形状を特殊な構造及び特定の制限を受けることなく構成できる。
【0017】
また、本発明に係るラジカル滅菌装置は必要に応じて、微少流量バリアブルニードルバルブを用いて、液体の水を直接低気圧容器内に導入するものである。このように本発明においては、液体の水を直接低気圧容器内に導入する際に微少流量バリアブルニードルバルブを用いていることから、水蒸気ガスの発生量を微細・精密に調整できることとなり、ヒドロキシ(OH)ラジカル及び酸素(O)ラジカルの生成を効率的に実行できる。
【0018】
また、本発明に係るラジカル滅菌装置は必要に応じて、低気圧維持手段が、前記収納手段の気密性容器内において水蒸気ガスの圧力を1Paから1,000Paまで変化させるものである。このように本発明においては、低気圧維持手段が、前記収納手段の気密性容器内において水蒸気ガスの圧力を1Paから1,000Paまで変化させることから、収納手段内の被処理物へのヒドロキシ(OH)ラジカル及び酸素(O)ラジカルの浸透性をより確実に行えることとなり、滅菌効果を向上できる。
【0019】
また、本発明に係るラジカル滅菌装置は必要に応じて、水蒸気ガス発生手段の容器内気圧を10Paないし10,000Paとすると共に、前記収納手段の気密性容器内気圧を1Paないし1,000Paとし、前記水蒸気ガス発生手段と収納手段との各気圧を比例させて増減させるものである。このように本発明においては、水蒸気ガス発生手段を収納手段の内部気圧より高い気圧(1Pa→10Pa,・・・,1,000Pa→10,000Pa)で水蒸気ガスを発生させるようにしているので、大気圧より低気圧の10Paないし10,000Paで水蒸気ガスを急速且つ多量に発生させ、この発生した水蒸気ガスをより低圧な1Paないし1,000Paの気圧の収納手段へ円滑に導入し、導入した水蒸気ガスの1Paないし1,000Paという低圧雰囲気内でラジカル生成手段が放電を確実且つ円滑に行えることとなり、より効率的にヒドロキシ(OH)ラジカル及び酸素(O)ラジカルを発生させることができることとなる。
【0020】
また、本発明に係るラジカル滅菌装置は必要に応じて、水蒸気ガスの発生時の容器内気圧を放電時の容器内気圧より高くし、当該水蒸気ガスの発生と放電によるヒドロキシ(OH)ラジカル及び酸素(O)ラジカルの発生とを交互に実行するものである。このように本発明においては、水蒸気ガスの発生時の容器内気圧を放電時の容器内気圧より高くし、当該水蒸気ガスの発生と放電によるヒドロキシ(OH)ラジカル及び酸素(O)ラジカルの発生とを交互に実行することから、水蒸気ガスの発生と放電によるヒドロキシ(OH)ラジカル及び酸素(O)ラジカルの発生との各最適条件気圧を設定できることとなり、より効率的なヒドロキシ(OH)ラジカル及び酸素(O)ラジカルの発生ができることとなる。特に、水蒸気ガス発生手段を収納手段の気密性容器と一体に形成された場合には、単一の気密性容器内を水蒸気ガスの発生と放電によるヒドロキシ(OH)ラジカル及び酸素(O)ラジカルの発生との各々で気圧状態を調整できることとなり、より効率的なヒドロキシ(OH)ラジカル及び酸素(O)ラジカルの発生が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るラジカル滅菌装置の概略構成図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係るラジカル滅菌装置の概略構成図である。
【図3】図2記載のラジカル滅菌装置の動作タイミングチャートである。
【図4】本発明の第3の実施形態に係るラジカル滅菌装置における収納手段内の横断面図及び縦断面図である。
【図5】従来のラジカル滅菌装置の概略構成断面図である。
【図6】従来のラジカル滅菌装置の概略構成断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 収納手段
2 低気圧維持手段
3 水蒸気ガス発生手段
4 ラジカル生成手段
5 容器内条件制御部
6 医療器具
21 ロータリーポンプ
22 排出管
23 調整バルブ
24、34 コネクタ
31 水タンク
32、35 供給パイプ
32a、32b 供給パイプ
33 微少量流バリアブルニードルバルブ
34 密閉容器
34a、34b、36a、37a、46a、46b 封止部
35 排出パイプ
36 排出バルブ
41 電極
42 電源部
43 周波数切替部
45 配電線
210 真空容器
Q 仮想の中心線
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係るラジカル滅菌装置を図1に基づいて説明する。この図1は本実施形態に係るラジカル滅菌装置の概略構成図を示す。
同図において本実施形態に係るラジカル滅菌装置は、滅菌処理の対象となる医療器具6を収納する気密性容器からなる収納手段1と、前記収納手段1内の気圧を低気圧に維持する低気圧維持手段2と、前記収納手段1に連通し、水が導入されて水蒸気ガスを発生させる水蒸気ガス発生手段3と、前記収納手段1内に少なくとも電極41が収納され、当該電極41に電流を流して前記水蒸気ガスの水分子をプラズマ化してヒドロキシ(OH)ラジカル及び酸素(O)ラジカルを生成するラジカル生成手段4とを備える構成である。
【0024】
この低気圧維持手段2は、収納手段1内の空気を排出するロータリーポンプ21と、このロータリーポンプ21及び収納手段1に各々連通して接続する排出管22と、この排出管22の中間に介装され空気の排出量を調整する調整バルブ23と、前記排出管22を収納手段1の側壁孔に気密状態で接続するコネクタ24とを備える構成である。
【0025】
前記水蒸気ガス発生手段3は、水を貯溜する水タンク31と、この水タンク31に供給パイプ32aを介して接続され、後段側の低気圧状態により水蒸気ガスを発生させる微少流量バリアブルニードルバルブ33と、この微少流量バリアブルニードルバルブ33の後段側に接続される供給パイプ32bを介して接続されると共に、前記ラジカル生成手段4に排出バルブ36を有する排出パイプ35を介して接続され、供給パイプ32から供給される微量の水から微少流量バリアブルニードルバルブ33にて生成される水蒸気ガスをラジカル生成手段4へ排出して供給する密閉容器34とを備える構成である。この密閉容器34と供給パイプ32及び供給パイプ35とは、封止部34a、34bを介して接続される構成である。
【0026】
前記ラジカル生成手段4は、渦巻き状に導電線を巻回された誘導結合型アンテナからなる電極41と、この電極41に交流電流を供給する電源部42と、この電源部42及び電極41間に接続する配電線45と、この配電線45が貫通する収納手段1の側壁孔部分を気密状態とする封止部46a、46bとを備える構成である。このラジカル生成手段4は、電極41と接地された収納手段1との間の空間をインピーダンスZとし、このインピーダンスZを移動する電子によって水蒸気ガスの水分子からヒドロキシ(OH)ラジカル及び酸素(O)ラジカルを生成する構成である。
【0027】
次に、前記構成に基づく本実施形態に係るラジカル滅菌装置の動作について説明する。まず、調整バルブ23を開放状態にしてロータリーポンプ21を起動させることにより、収納手段1内の空気が排出され、この収納手段1内が所定の低気圧状態、例えば1Paないし1,000Paの気圧となる。この調整バルブ23による排出が継続している状態で、水蒸気ガス発生手段3の調整微少流量バリアブルニードルバルブ33が開放されて水タンク31から供給パイプ32を介して密閉容器34内に微量の水が供給される。
【0028】
前記密閉容器34は、低気圧状態に維持される収納手段1に供給パイプ35を介して連結されていることから、この収納手段1からの排気により大気圧より低く且つ収納手段1の内部気圧より高い低気圧状態、例えば10Paないし10,000Paの気圧に制御されており、この低気圧により供給パイプ32から供給される微量の水から水蒸気ガスを生成する。この生成された水蒸気ガスは供給パイプ35を介して排出バルブ36により供給量を制御されて収納手段1に供給される。
【0029】
前記収納手段1内の酸素ガス圧力を所定値(例えば、1Paから1,000Paまた望ましくは1Paから10Pa)となった状態で、ラジカル生成手段4の電源部42から交流電流が電極41に供給される。この交流電流により電極41が電磁波を発生させ、この電磁波により水蒸気ガス(HO)の水分子をプラズマ化(電離)させて水分子イオン(H)及び電子(e)を生成する。
【0030】
前記生成された電子(e)は、収納手段1内の水蒸気ガス(HO)の原子と衝突し、この水蒸気ガス(HO)に高いエネルギーを与えて、ヒドロキシ(OH)ラジカル及び酸素(O)ラジカルを生成する。このように水蒸気ガス(HO)が高いエネルギーを持つ電子によりヒドロキシ(OH)ラジカル及び酸素(O)ラジカルが生成されることから、プラズマ密度を高くすることによりヒドロキシ(OH)ラジカル及び酸素(O)ラジカルの生成量を増大させることができると共に、この生成されたヒドロキシ(OH)ラジカル及び酸素(O)ラジカルを単体としてより長く継続させるために収納手段1内を低気圧状態下で水蒸気ガスのみ原料とするものである。
【0031】
特に、生成されるヒドロキシ(OH)ラジカル及び酸素(O)ラジカルの密度を最大(例えば、1010cm-3)とするためには、前記ラジカル生成手段4は電源周波数を1kHzないし10kHzとし、電極41に印加される交流電圧を7kVないし13kVとし、放電消費電力を50Wないし150Wとする。さらに、収納手段1は、内部の酸素ガス圧力を3Pa及び酸素ガス流量を10sccm(standard cc/min)とする。
【0032】
(本発明の第2の実施形態)
図2及び図3に基づいて本発明の第2の実施形態に係るラジカル滅菌装置を説明する。この図2は本実施形態に係るラジカル滅菌装置の概略構成図、図3は図2に記載のラジカル滅菌装置の動作タイミングチャートを示す。
前記各図において本実施形態に係るラジカル滅菌装置は、前記第1の実施形態に係るラジカル滅菌装置と同様に収納手段1、低気圧維持手段2、水蒸気ガス発生手段3及びラジカル生成手段4を備え、この構成のうちの水蒸気ガス発生手段30(第1の実施形態における3に相当)の構成を異にする。この水蒸気ガス発生手段30は、水を貯溜する水タンク31と、この水タンク31に供給パイプ32aを介して接続されると共に前記収納手段1に排出パイプ37を介して接続され、この収納手段1の低気圧状態により水蒸気ガスを生成させる微少流量バリアブルニードルバルブ33と、この生成された水蒸気ガスを収納手段1内で均一に拡散散布する拡散器38とを備える構成である。
【0033】
この微少流量バリアブルニードルバルブ33は、別途設けられる容器内条件制御部5によりその開度が調整されて後段側である収納手段1側の低気圧(真空)領域と水との接触面積が精密に微調整され、水の導入量を精密に調整して水蒸気ガスの生成量を厳密に制御する。また、前記容器内条件制御部5は、低気圧維持手段2の調整バルブ23の開度をロータリーポンプ21の吸引量を調整することにより、収納手段1内の気圧を1Paから1,000Paの間で制御することができる。
【0034】
前記微少流量バリアブルニードルバルブ33の開度を所定値に固定した状態において、ロータリーポンプ21の吸引量を調整して収納手段1内の水蒸気ガスの圧力を1Paから1,000Paまで変化させた後、前記微少流量バリアブルニードルバルブ33が導入する水の量を0.01sccmから10sccmまで調整し、水蒸気ガスの供給量としては10sccmから10,000sccmmに制御することができる。
【0035】
次に、前記構成に基づく本実施形態に係るラジカル滅菌装置の動作について説明する。まず、容器内条件制御部5の制御に基づいて調整バルブ23を全開放となるように制御して、ロータリーポンプ21を駆動させる。また、このロータリーポンプ21の駆動により収納手段1を所定の低気圧(例えば、1Pa)まで減圧させ、この低気圧状態で水蒸気ガス発生手段3の微少流量バリアブルニードルバルブ33を開放する方向に微調整して供給パイプ32を介して水タンク31からの水の水蒸気ガスを生成し、この水蒸気ガスを拡散器38により収納手段1内全体領域に均一に供給されるように制御される。
【0036】
このように、収納手段1内の水蒸気ガスが均一に拡散供給された状態で、電源部42から交流電流の周波数を1kHzないし10kHzで電極41に供給し、交流電圧を7kVないし13kVで電極41に印加する。
さらに、容器内条件制御部5は、低気圧維持手段2の調整バルブ23と水蒸気ガス発生手段3の微少流量バリアブルニードルバルブ33とを各々開度調整することにより、収納手段1内の水蒸気ガス圧を1Paとし、且つ収納手段1への水蒸気ガスの流量を10sccmの状態を5分間継続させ、次に収納手段1内の水蒸気ガス圧を1,000Paとし且つ収納手段1への水蒸気ガス流量を10,000sccmの状態を5分間継続させ、この各状態を交互に90分間サイクリックに実行する(図3参照)。
【0037】
このように水蒸気ガス圧を1Paから1,000Paへ変化させると共に水蒸気ガス流量を10sccmから10,000sccmへ5分間隔でサイクリックに切替えるようにしているので、医療器具の微細部分及び載置下面等に対してもヒドロキシ(OH)ラジカル及び酸素(O)ラジカルを浸透できることとなり、医療器具の全領域に亘って確実且つ簡易に滅菌できる。
【0038】
(本発明の第3の実施形態)
図4に基づいて本発明の第3の実施形態に係るラジカル滅菌装置を説明する。この図4は本実施形態に係るラジカル滅菌装置における収納手段内の横断面図及び縦断面図を示す。
同図において本実施形態に係るラジカル滅菌装置は、前記第1及び第2の実施形態と同様に収納手段1、低気圧維持手段2、水蒸気ガス発生手段3及びラジカル生成手段4を共通して備え、前記ラジカル生成手段4における電極41の配置構成を異にする。この電極41は、円筒状の筒体で形成された収納手段1における仮想の中心軸Qに平行な複数屈曲して形成された直線状のアンテナ線路からなり(図4(A)を参照)、この直線上のアンテナ線路が前記中心軸Qを中心として円弧状に配設(図4(B)を参照)して構成される。この電極41と収納手段1内壁との間には前記平行な複数屈曲して形成された直線状の
アンテナ線路の電極41に沿って直線状に延出して形成され、この直線状の下側に等間隔で複数(前記図2記載の第1実施例の拡散器38と同様に5個にて形成)のノズルを備える拡散器38が配設され、この拡散器38の複数の各ノズルから拡散散布される水蒸気ガスを電極41の直線状のアンテナ線路を通過させ、この通過の際に直線状のアンテナ線路で誘起される電磁界により生じる円弧状(図4(B)に二点鎖線で示す)電場により水蒸気ガスをプラズマ化(電離)させて水酸化物イオン及び電子(e-)を生成し、この電子(e-)が水蒸気ガスと衝突してヒドロキシ(OH)ラジカル及び酸素(O)ラジカルを発生させる構成である。

【0039】
次に、前記構成に基づく本実施形態に係るラジカル滅菌装置の動作について説明する。前記各実施形態と同様に収納手段1内の気圧及び水蒸気ガスの状態が調整され、電源部42から供給される交流電流が電極41に流れ、この電極41のアンテナとしてのアンテナ線路周囲に電磁場を生じさせる。この磁場の磁界強度が強い電極41の導電線(アンテナ線路)の極めて近傍を通過させるように水蒸気ガスを強制的に供給させることができることとなり、強い電磁界により水蒸気ガスのラジカル化をより促進させることができる。
【0040】
(本発明の他の実施形態)
本発明の他の実施形態に係るラジカル滅菌装置は、前記第2の実施形態と同様に収納手段1、低気圧維持手段2、水蒸気ガス発生手段3及びラジカル生成手段4を備え、この収納手段1の容器内気圧を水蒸気ガス発生時と放電時とを異なるように低気圧維持手段2で制御し、この水蒸気ガス発生工程と放電工程とを所定時間毎にサイクリックに実行する構成である。この収納手段1の容器内気圧はヒドロキシ(OH)ラジカル及び酸素(O)ラジカル発生時には1Paから100Paの間の任意の値に制御される。
【0041】
このように収納手段1を構成する単一の気密性容器における二つの異なる気圧により水蒸気ガス発生と放電によるヒドロキシ(OH)ラジカル及び酸素(O)ラジカルの発生とを各々最適気圧で実行できるとこととなり、簡略な装置構成でより効率的なヒドロキシ(OH)ラジカル及び酸素(O)ラジカルの発生が可能となる。
【0042】
また、本発明の他の実施形態に係るラジカル滅菌装置は、前記各実施形態と同様に各種構成され、この各種構成に各々加えて、収納手段1内に収納する被処理物をヒドロキシ(OH)ラジカル及び酸素(O)ラジカルが透過し、細菌を透過させないシート、例えばマイクロメッシュシート等で被覆した状態で滅菌処理を行うようにしているので、処理後に収納手段1から取出す場合にも外部の細菌が再付着することを未然に防止することができる。
【0043】
また、本発明の他の実施形態に係るラジカル滅菌装置は、前記第2の実施形態が収納手段1の水蒸気ガス圧力及び水蒸気ガス流量を各々調整する構成としたが、水蒸気ガス圧力若しくは水蒸気ガス流量のいずれか一方のみを調整制御するように構成することもできる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
2
【図4】
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【図5】
4
【図6】
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