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明細書 :微粒子固定装置および微粒子固定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5447759号 (P5447759)
公開番号 特開2009-006311 (P2009-006311A)
登録日 平成26年1月10日(2014.1.10)
発行日 平成26年3月19日(2014.3.19)
公開日 平成21年1月15日(2009.1.15)
発明の名称または考案の名称 微粒子固定装置および微粒子固定方法
国際特許分類 B01J  19/12        (2006.01)
B82B   3/00        (2006.01)
B01J  19/08        (2006.01)
C25D  15/00        (2006.01)
FI B01J 19/12 B
B82B 3/00
B01J 19/08 F
C25D 15/00 D
請求項の数または発明の数 12
全頁数 20
出願番号 特願2008-014642 (P2008-014642)
出願日 平成20年1月25日(2008.1.25)
優先権出願番号 2007144629
優先日 平成19年5月31日(2007.5.31)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成23年1月12日(2011.1.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
発明者または考案者 【氏名】岩田 太
個別代理人の代理人 【識別番号】100136674、【弁理士】、【氏名又は名称】居藤 洋之
審査官 【審査官】原 賢一
参考文献・文献 特開2001-213047(JP,A)
特開2003-089896(JP,A)
特開2005-349254(JP,A)
特開2006-265571(JP,A)
特開2006-233232(JP,A)
特開2007-169669(JP,A)
マイクロマシン技術総覧,株式会社産業技術サービスセンター,2003年 1月22日,p.512-523, 645-647
伊藤聡 他,レーザマニピュレーションと界面相互作用を用いた微粒子の基板固定方法の開発,2006年度精密工学会春季大会学術講演会講演論文集,社団法人精密工学会,2006年 3月 1日,p.939~940
調査した分野 B01J 10/00-12/02,14/00-19/32
B82B 3/00
C25D 13/00-15/02
特許請求の範囲 【請求項1】
光が照射されることによって電気的特性が変化する光導電性物質で構成された基材の表面に微粒子を固定するための微粒子固定装置であって、
帯電した状態の前記微粒子を含んだ液体を介して前記基材に対向して配置した透明電極材料からなる電極部と、
前記電極部に前記微粒子の帯電極性と同じ極性の電位を形成させるとともに、前記基材側に前記微粒子の帯電極性とは逆の極性の電位を形成させて前記液体内に電界を形成させることにより、前記液体内に含まれる前記微粒子を前記基材に向けて移動させて同微粒子を同基材の表面に固定するための電界形成手段と、
レーザ光を出射するレーザ光源を有し、同レーザ光源から出射したレーザ光を前記基材の前記表面側から前記液体内に導いて集光させるとともに同レーザ光を前記基材に照射して同基材における前記電気的特性を変化させる集光光学手段を有した特性変化手段と、
前記液体内を照らすための光源を有し、同光源によって照らされた前記液体内の前記微粒子の状態を観察可能とする微粒子観察手段と、
前記基材と前記液体内に集光したレーザ光とを相対的に変位させる変位手段とを備え、
前記電界形成手段は、前記基材に前記微粒子の帯電極性とは逆の極性の電位を形成させ、
前記微粒子観察手段は、前記光源から出射されて前記基材および前記電極部を介した光を導く対物レンズを有し、前記対物レンズが前記基材における前記表面側に設けられていることを特徴とする微粒子固定装置。
【請求項2】
請求項1に記載した微粒子固定装置において、
前記微粒子は、粒の大きさが1~100nmのナノ粒子である微粒子固定装置。
【請求項3】
請求項1または請求項に記載した微粒子固定装置において、
前記微粒子は、前記液体中においてコロイド状に存在する微粒子固定装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項のうちのいずれか1つに記載した微粒子固定装置において、
前記液体は、水、純水または生理食塩水である微粒子固定装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項のうちのいずれか1つに記載した微粒子固定装置において、
前記電界形成手段は、前記基材の表面に複数の前記微粒子を固定することにより膜を形成する微粒子固定装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項のうちのいずれか1つに記載した微粒子固定装置において、
前記電界形成手段は、前記基材の表面に複数の前記微粒子を積み重ねることにより立体構造物を形成する微粒子固定装置。
【請求項7】
光が照射されることによって電気的特性が変化する光導電性物質で構成された基材の表面に微粒子を固定するための微粒子固定方法であって、
帯電した状態の前記微粒子を含んだ液体を介して前記基材に対向して透明電極材料からなる電極部を配置する電極部配置工程と、
前記電極部配置工程によって配置された前記電極部に前記微粒子の帯電極性と同じ極性の電位を形成させるとともに、前記基材側に前記微粒子の帯電極性とは逆の極性の電位を形成させて前記液体内に電界を形成させることにより、前記液体内に含まれる前記微粒子を前記基材に向けて移動させて同微粒子を同基材の表面に固定するための電界形成工程と、
レーザ光を出射するレーザ光源を有し、同レーザ光源から出射したレーザ光を前記基材の前記表面側から前記液体内に導いて集光させる集光光学手段を用いて同液体内にレーザ光を集光させる集光工程と、
前記液体内を照らすための光源および同光源によって照らされた前記液体内の前記微粒子の状態を表示する表示装置を備える微粒子観察手段を用いて前記液体内の前記微粒子の状態を表示させる液体内表示工程と、
前記表示装置にて表示される前記微粒子の状態を確認しながら、前記液体内に集光させたレーザ光と、前記基材と前記液体内に集光したレーザ光とを相対的に変位させる変位手段とを用いて、前記液体内に含まれた前記微粒子を前記基材の表面における所定の位置に位置決めさせる位置決め工程と、
前記集光光学手段を用いて前記レーザ光を前記基材に照射して同基材における前記電気的特性を変化させる特性変化手段とを含み、
前記電界形成工程は、前記基材に前記微粒子の帯電極性とは逆の極性の電位を形成させ、
前記微粒子観察手段は、前記光源から出射されて前記基材および前記電極部を介した光を導く対物レンズを有し、前記対物レンズが前記基材における前記表面側に設けられていることを特徴とする微粒子固定方法。
【請求項8】
請求項に記載した微粒子固定方法において、
前記微粒子は、粒の大きさが1~100nmのナノ粒子である微粒子固定方法。
【請求項9】
請求項7または請求項に記載した微粒子固定方法において、
前記微粒子は、前記液体中においてコロイド状に存在する微粒子固定方法。
【請求項10】
請求項ないし請求項のうちのいずれか1つに記載した微粒子固定方法において、
前記液体は、水、純水または生理食塩水である微粒子固定方法。
【請求項11】
請求項ないし請求項10のうちのいずれか1つに記載した微粒子固定方法において、
前記電界形成工程は、前記基材の表面に複数の前記微粒子を固定することにより膜を形成する微粒子固定方法。
【請求項12】
請求項ないし請求項11のうちのいずれか1つに記載した微粒子固定方法において、
前記電界形成手段は、前記基材の表面に複数の前記微粒子を積み重ねることにより立体構造物を形成する微粒子固定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、基材の表面に微粒子を固定する微粒子固定装置および微粒子固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基材の表面に複数の微粒子を固定することにより、同基材表面に所定形状のパターンを形成するパターニングを行ったり、同基材表面を被覆するコーティングが行われたりしている。例えば、電子デバイス、マイクロマシンまたはMEMS(Micro Electro Mechanical System)などの集積回路をパターニングする場合においては、光リソグラフィ技術などを用いて基材表面上に微細なパターンの形成が行われている。また、電子顕微鏡を用いて試料を観察する場合においては、スパッタ法、蒸着法または電気鍍金法などを用いて観察対象である試料の表面に金属膜を形成して観察可能な状態としている。
【0003】
しかしながら、このような光リソグラフィ技術などのパターニング方法においては、有機金属を蒸着する工程やエッチング工程などの加工工程おいて基材が過酷な加工環境に曝されるため、基材の選択の幅を制限しているという問題がある。また、これらの加工工程のために加工装置の構成を複雑化しているという問題もある。一方、スパッタ法、蒸着法および電気鍍金法などを用いて膜を形成する従来の成膜方法においても、膜の形成過程において膜の形成対象である基材に与える負担が大きいため基材の選択の幅が制限されるという問題がある。例えば、上記電子顕微鏡における観察試料が細胞などの生体試料である場合には、生体試料を真空、乾燥、高温または電界液中などの環境下に曝すため試料本来の性状が変化して正確な観察ができないことがある。
【0004】
したがって、環境変化に敏感な基材に対して少ない負担でパターニングや膜の形成を行うことができる技術が望まれるが、未だ見出されていない。このような背景から、本発明の発明者は、基材に対して負担の少ない液中においてパターニングや膜の形成に適用できる技術を新たに見出したものである。したがって、記載すべき先行技術文献はない。
【発明の開示】
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、基材に対して負担の少ない液体環境下において微粒子を固定することができ、幅広い種類の基材の表面に対してパターニングや膜の形成を行う加工などにも適用することができる微粒子固定装置および微粒子固定方法を提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、光が照射されることによって電気的特性が変化する光導電性物質で構成された基材の表面に微粒子を固定するための微粒子固定装置であって、帯電した状態の微粒子を含んだ液体を介して基材に対向して配置した透明電極材料からなる電極部と、電極部に微粒子の帯電極性と同じ極性の電位を形成させるとともに、基材側に微粒子の帯電極性とは逆の極性の電位を形成させて液体内に電界を形成させることにより、液体内に含まれる微粒子を基材に向けて移動させて同微粒子を同基材の表面に固定するための電界形成手段と、レーザ光を出射するレーザ光源を有し、同レーザ光源から出射したレーザ光を基材の表面側から液体内に導いて集光させるとともに同レーザ光を基材に照射して同基材における電気的特性を変化させる集光光学手段を有した特性変化手段と、液体内を照らすための光源を有し、同光源によって照らされた液体内の微粒子の状態を観察可能とする微粒子観察手段と、基材と液体内に集光したレーザ光とを相対的に変位させる変位手段とを備え、電界形成手段は、基材に微粒子の帯電極性とは逆の極性の電位を形成させ、微粒子観察手段は、前記光源から出射されて基材および電極部を介した光を導く対物レンズを有し、前記対物レンズが基材における表面側に設けられていることにある。
【0007】
このように構成した本発明の特徴によれば、基材の表面に微粒子を固定させる工程は液体内で行われる。この場合、液体は基材と電極部材との間に電界が形成可能であるとともに、同液体内において微粒子の移動が可能なでれば特に限定されるものではない。このため、基材に与える影響の小さい液体を用いることができる。これにより、従来技術のように、基材を過酷な環境下に曝すことがない。この結果、幅広い種類の基材に微粒子を固定することができる。また、微粒子を固定する装置の構成として、従来例のような基材の加工に対して特殊な環境を用意する必要がなく簡単な構成で微粒子を固定することができるため経済的効果、作業性の向上は大きい。
【0008】
また、このように構成した本発明の特徴によれば、微粒子固定装置は、電気的特性が変化する物質で構成された基材における前記電気的特性を変化させるための特性変化手段を備えている。これによれば、前記電気的特性を備えた物質で構成された基材を用いることにより、基材に対して微粒子を固定するときだけ、電気的特性を変化させて微粒子を固定することができる。すなわち、基材の表面における任意の位置に微粒子を選択的に固定することができる。



【0009】
この場合、基材は、光が照射されることによって不導体的性質と導体的性質とが選択的に変化する物質で構成されるとよい。これによれば、微粒子固定装置は、電気を流さない不導体的性質と電気を流す導体的性質とが選択的に変化する電気的特性を備えた物質で構成された基材における前記電気的特性を変化させるための特性変化手段を備えている。これによれば、前記電気的特性を備えた物質で構成された基材を用いることにより、基材に対して微粒子を固定するときだけ、基材における微粒子を固定する部分の電気的特性を導体的性質に変化させて微粒子を固定することができる。すなわち、不導体からなる基材の表面における任意の位置に微粒子を選択的に固定することができる。


【0010】
削除


【0011】
また、このように構成した本発明の特徴によれば、微粒子を含む液体内にレーザ光を集光させて微粒子を捕捉するとともに、同集光したレーザ光に対して基材を変位させる機構により捕捉した微粒子を所望する位置に位置決めして基材の表面上に固定させている。これにより、所望する位置に所望する量だけ微粒子を固定することができる。

【0013】
この場合、微粒子を、例えば、粒の大きさが1~100nmのナノ粒子で構成するとよい。これによれば、導体・不導体を問わず液体内において容易に帯電した微粒子を得ることができる。これにより、不導体である微粒子を基材の表面に固定することができ、本発明適用範囲が広がる。
【0014】
また、この場合、微粒子を、例えば、液体中においてコロイド状に存在させるとよい。これによれば、基材の表面に均一な状態で微粒子を固定し易くなる。
【0015】
また、この場合、前記微粒子固定装置において、液体は、例えば、水、純水または生理食塩水を用いるとよい。これによれば、幅広い種類の基材または微粒子を用いることができる。
【0016】
また、このように構成した本発明の他の特徴は、微粒子固定装置において、電界形成手段は、基材の表面に複数の微粒子を固定することにより膜を形成するようにしたことにある。これによれば、従来技術のように、パターニングや膜を形成する基材を過酷な環境下に曝すことがないため、基材に与える影響を極めて小さくすることができる。この結果、幅広い種類の基材に膜を形成することができる。また、膜を形成する装置の構成として、従来例のような基材の加工に対して特殊な環境を用意する必要がなく簡単な構成で膜を形成することができるため経済的効果、作業性の向上は大きい。
【0017】
また、このように構成した本発明の他の特徴は、微粒子固定装置において、電界形成手段は、基材の表面に複数の微粒子を積み重ねることにより立体構造物を形成するようにしたことにある。これによれば、より多様な態様で微粒子を基材WK上に固定することができ、本発明適用範囲を広げることができる。
【0018】
また、本発明は装置の発明として実施できるだけでなく、この方法の発明としても実施できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1参考形態)
以下、微粒子固定装置の第1参考形態について図面を参照しながら説明する。図1(A),(B)は、本参考形態に係る微粒子固定装置の構成を模式的に示した図であり、図2は、複数の微粒子Pからなる薄膜Fが形成された基材WKを模式的に示した図である。なお、図1(A),(B)および図2は、本参考形態に係る微粒子固定装置の構成等を模式的に示したものであり、本参考形態の理解を容易にするため各構成要素または各構成要素相互の関係を適宜誇張して示している。この微粒子固定装置は、基材WKの表面に複数の微粒子Pを固定することによって薄膜Fを形成するための装置である。
【0020】
微粒子固定装置は、プレート部材11を備えている。プレート部材11は、透明なガラス材を板状に形成して構成されており、微粒子固定装置の図示しない支持具により水平な状態で支持されている。プレート部材11における一方の表面(図において下面)には、導電性を有する電極層12が形成されている。電極層12は、透明電極材料(例えば、ITO(Indium Tin Oxide))からなる厚さ約60~80μmの層でありプレート部材11における一方の表面にスパッタ法により形成されている。この電極層12は、電極部に相当する。なお、本参考形態においては、プレート部材11および電極層12を透明な材料で構成したが、プレート部材11および電極層12を不透明な材料で構成してもよい。
【0021】
プレート部材11における電極層12側には、所定の隙間(約150μm)を介して基材WKが配置されている。基材WKは、微粒子Pからなる薄膜Fを形成する対象となる部材であり、透明かつ導電性を有するガラス材であるITO(Indium Tin Oxide)ガラスで構成されている。この基材WKも微粒子固定装置の図示しない支持具により水平な状態で支持されている。すなわち、プレート部材11と基材WKとは所定の隙間を介して互いに対向した状態で支持されている。プレート部材11と基材WKとの間には、水層Wが設けられている。水層Wは、純水中に基材WKに固定させるための微粒子Pを分散した状態(コロイド状)で含む液体である。この水層Wは、プレート部材11と基材WKとの間に表面張力によって保持されている。微粒子Pは、基材WKの表面に形成される薄膜Fを構成する金(Au)の微粒子である。この微粒子Pは、大きさが約3~10nmの所謂ナノ微粒子であり分散媒である水層Wの電荷層によりプラス極性またはマイナス極性に帯電している。本参考形態においては、マイナス極性に帯電しているものとする。なお、微粒子Pと同様に水層W内に存在する電極層12および基材WKの表面もマイナス極性に帯電した状態となっている。
【0022】
また、プレート部材11と基材WKとの間における周縁部には、シール13が設けられている。シール13は、塩化ビニル製の薄膜(厚さ約150μm)であり、水層Wの周囲を囲んで水層W内を液密状態に維持している。なお、水層Wは表面張力によってプレート部材11と基材WKとの間に保持されているため、シール13は必ずしも必要ではない。プレート部材11の電極層12および基材WKには、電気配線14a,14bを介して電源装置15がそれぞれ接続されている。電源装置15は、作業者による手動操作によって電極層12と基材WKとの間に所定の電圧を印加して水層W中に電界を形成させるための電源であり、電界形成手段に相当する。
【0023】
次に、上記のように構成した微粒子固定装置の作動について説明する。まず、作業者は、薄膜Fの形成対象である基材WKを微粒子固定装置にセットする。具体的には、作業者は、基材WK、微粒子Pをコロイド状に含んだ純水およびシール13をそれぞれ用意する。次に、作業者は、薄膜Fを形成する基材WKの表面とプレート部材11の電極層12との間に前記純水、すなわち、水層Wを存在させた状態で基材WKとプレート部材11とをシール13によって貼り合わせる。そして、作業者は、貼り合わせた状態の基材WKとプレート部材11とを微粒子固定装置の図示しない支持具によって支持させるとともに、電極層12および基材WKを電気配線14a,14b介して電源装置15にそれぞれ接続する(図1(A)参照)。
【0024】
次に、作業者は、電源装置15を操作して電極層12と基材WKとの間に電圧を印加する。この場合、電極層12と基材WKとにそれぞれ印加する電圧の極性は、水層W中を漂う微粒子Pが帯電している極性によって設定される。すなわち、図1(B)に示すように、本第1参考形態においては、水層W中を漂う微粒子Pがマイナス極性に帯電しているため、基材WKにはプラス極性の電圧を印加するとともに、電極層12にはマイナス極性の電圧を印加する。一方、水層W中を漂う微粒子Pがプラス極性に帯電している場合には、基材WKにはマイナス極性の電圧を印加するとともに、電極層12にはプラス極性の電圧を印加する。
【0025】
これにより、電極層12にはマイナス極性の電位が形成されるとともに基材WKの表面はプラス極性の電位が形成され、電極層12と基材WKとの間に存在する水層Wには電界が形成される。このため、水層W中を漂う微粒子Pは電極層12と基材WKとの間に生じた電界によって基材WK側に移動、すなわち、基材WK側に電気泳動を開始する。このように、電極層12と基材WKとの間に電界を生じさせた状態を維持することにより、基材WKの表面には微粒子Pが次々と引き寄せられ堆積する。この場合、基材WKの表面に引き寄せられた微粒子Pは、ファンデルワールス力によって固定される。作業者は、所定の時間、電極層12と基材WKとの間に電圧を印加させた後、電源装置15を操作して同電圧の印加を停止する。これにより、電極層12と基材WKとの間に生じていた電界が消滅し、微粒子Pの電気泳動が停止する。この場合、基材WKの表面に固定された微粒子Pは、電極層12と基材WKとの間に生じていた電界が消滅した後もファンデルワールス力によって基材WK上に固定された状態を維持し薄膜Fを形成する。
【0026】
次に、作業者は、図2に示すように、基材WKから水層Wやシール13などを除去して薄膜Fが形成された基材WKを得る。なお、微粒子Pはファンデルワールス力によって強固に基材WKの表面に固定しているため、基材WKから水層Wを乾燥させて除去する場合であっても水層Wの乾燥過程で生じる気液界面における表面張力によって基材WKの表面に固定している微粒子Pが剥がれることはない。
【0027】
上記作動説明からも理解できるように、上記第1参考形態によれば、基材WKの表面に微粒子Pを固定させる工程、すなわち、基材WKの表面に薄膜Fを形成する工程は、純水で構成される水層Wの中で行われる。このため、従来技術のように、パターニングや膜を形成する基材を過酷な環境下に曝すことがないため、基材WKに与える影響は極めて少ない。この結果、幅広い種類の基材WKに微粒子Pを固定して薄膜Fを形成することができる。また、膜を形成する装置の構成として、従来例のような基材WKの加工に対して特殊な環境を用意する必要がなく簡単な構成で薄膜Fを形成することができるため経済的効果、作業性の向上は大きい。
【0028】
(第2参考形態)
次に、微粒子固定装置の第2参考形態について図面を参照しながら説明する。図3は、本参考形態に係る微粒子固定装置の構成を模式的に示す全体概略図である。なお、図3は、本参考形態に係る微粒子固定装置の構成を模式的に示したものであり、本参考形態の理解を容易にするため構成要素または各構成要素相互の関係を適宜誇張して示している。また、本第2参考形態においては、上記第1参考形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。この微粒子固定装置は、基材WKの表面における所望する位置に1つまたは複数の微粒子Pを固定させるための装置である。
【0029】
微粒子固定装置は、四角板状に形成したベース21の四隅に各1つの支柱22を起立した状態で設けて構成したワーク台23を備えている。ワーク台23は、4つの支柱22の上面にて基材WKの底面を支持する支持台である。ワーク台23におけるベース21の上面中央部には、反射ミラー24が設けられている。反射ミラー24は、水平方向から入射した光を垂直方向に反射して基材WKの底面に導く光学素子である。反射ミラー24における水平方向の光軸の延長線上にはハロゲンランプ25が設けられている。ハロゲンランプ25は、図示しない電源に接続された照明装置であり、反射ミラー24に向けて光を照射する。
【0030】
ワーク台23は、微駆動ステージ26上に固定されている。微駆動ステージ26は、その上面にてワーク台23を支持するとともに、同ワーク台23を3軸方向にそれぞれ微小変位させる変位機構を備えている。ここで、3軸方向とは、図3に示すように、水平方向において互いに直交する2つの軸方向(X,Y軸方向)と、同2つの軸方向に直交する1つの垂直軸方向(Z軸)である。微駆動ステージ26に内蔵される変位機構は、PZT(チタン酸ジルコ酸鉛)などからなる圧電素子によって構成され、後述する微駆動ステージ回路45から出力される電圧の大きさおよび極性に応じて前記上面を前記3軸方向に微小変位させる。
【0031】
微駆動ステージ26は、粗駆動ステージ27上に固定されている。粗駆動ステージ27は、その上面にて微駆動ステージ26を支持するとともに、同微駆動ステージ26を3軸方向にそれぞれ粗変位させる変位機構を備えている。ここで、3軸方向とは前記3軸方向と同じ向きの方向のである。また、粗変位とは、微駆動ステージ26による単位時間当たりの変位量よりも大きな変位量である。粗駆動ステージ27に内蔵される変位機構は、ボールネジ、ナットおよび電動モータなどからなるネジ送り機構であり、後述する粗駆動ステージ回路46から出力される電圧の大きさおよび極性に応じて前記上面を前記3軸方向に粗変位させる。
【0032】
ワーク台23に支持された基材WKの上方には、対物レンズ31が設けられている。対物レンズ31は、レーザ光源32から出射されたレーザ光を水層W内で集光させるための光学部品である。本参考形態においては、開口率(NA)=1.2、倍率=60倍の水浸(液浸)タイプの対物レンズを用いる。レーザ光源32は、514.5nmの波長(λ)
のアルゴンイオンレーザ光を出射する光学部品であり、後述するレーザ駆動回路42によって作動が制御される。レーザ光源32の光軸上にはコリメートレンズ33およびビームスプリッタ34が配置されている。コリメートレンズ33は、入射した光を平行光束に変換する光学部品である。また、ビームスプリッタ34は、入射した光の一部を透過させるとともに、同入射した光の他の一部を入射方向と直交する方向(図において下方)に反射させて対物レンズ31に導く光学部品である。すなわち、ビームスプリッタ34は、レーザ光源32の光軸と対物レンズ31の光軸との交点上の配置されている。これらの対物レンズ31、レーザ光源32、コリメートレンズ33およびビームスプリッタ34が、集光光学手段に相当する。
【0033】
対物レンズ31の光軸上には、ビームスプリッタ34の他に集光レンズ35、フィルタ36およびCCD素子37がそれぞれ配置されている。集光レンズ35は入射した光をフィルタ36を介してCCD素子37上に集光する光学部品である。フィルタ36は、レーザ光源32から出射されたレーザ光と同一波長の光をカットするとともに、入射した光の光量を適切にするための光学フィルタである。CCD素子37は、集光レンズ35の集光位置に配置され、受光面に結像した像に応じた電気信号をモニタ装置38に出力する撮像器である。モニタ装置38は、CCD素子37によって撮像された像を表示する表示装置である。このモニタ装置38は、微粒子固定装置の図示しない支持部材により、作業者の視認し易い位置に固定されている。
【0034】
微粒子固定装置は、コントローラ41を備えている。コントローラ41は、CPU、ROM、RAMなどからなり、入力装置42からの指示に応じて、レーザ駆動回路43、電圧印加回路44、微駆動ステージ回路45および粗駆動ステージ回路46の作動をそれぞれ制御する。入力装置42は、複数の押しボタンスイッチからなり、レーザ駆動回路43、電圧印加回路44、微駆動ステージ回路45および粗駆動ステージ回路46のそれぞれの作動を指示する。レーザ駆動回路43は、コントローラ41からの指示に応じて、レーザ光源32の作動を制御する。電圧印加回路44は、コントローラ41からに指示に応じてプレート部材11と基材WKとの間に所定の電圧を印加する回路であり、上記第1参考形態における電源装置15に相当する。
【0035】
微駆動制御回路45は、コントローラ41からに指示に応じて微駆動ステージ26に内蔵される変位機構の作動を制御する回路であり、コントローラ41から入力した電気信号に応じた電圧の大きさおよび極性の電気信号を微駆動ステージ26に出力する。粗駆動制御回路46は、コントローラ41からに指示に応じて粗駆動ステージ27に内蔵される変位機構の作動を制御する回路であり、コントローラ41から入力した電気信号に応じた電圧の大きさおよび極性の電気信号を粗駆動ステージ27に出力する。
【0036】
次に、上記のように構成した微粒子固定装置の作動について図4(A)~(C)を参照しながら説明する。図4(A)~(C)は、本参考形態に係る微粒子固定装置によって微粒子P’が基材WK上に固定される様子を模式的に示した図である。なお、図4(A)~(C)は、微粒子固定装置によって微粒子P’が基材WK上に固定される様子を模式的に示したものであり、本参考形態の理解を容易にするため構成要素または各構成要素相互の関係を適宜誇張して示している。
【0037】
まず、作業者は、微粒子Pの固定対象である基材WKを微粒子固定装置にセットする。この工程は、上記第1参考形態におけるセット工程と同様の手順にて行われるため、その説明は省略する。基材WKが微粒子固定装置にセットされた際における水層W内の微粒子Pは、図4(A)に示すように、水層W内において均一に分散した状態(コロイド状)で浮遊している。この水層W内における物体表面は、水層Wを構成する液体の種類やpHなどの状態によりプラス極性またはマイナス極性に帯電した状態となっている。本第2参考形態においては、上記第1参考形態と同様に、微粒子Pはマイナス極性に帯電しているものとする。なお、微粒子Pと同様に水層W内に存在する電極層12および基材WKの表面もマイナス極性に帯電した状態となっている。
【0038】
次に、作業者は、コントローラ41、CCD素子37およびモニタ装置38の図示しない電源スイッチをそれぞれ投入して作動を開始させるとともに、ハロゲンランプ25を点灯させる。これにより、ハロゲンランプ25から照射された光は、反射ミラー24および基材WKを介して水層W内に導かれるとともに、電極層12、プレート部材10、対物レンズ31、ビームスプリッタ34、集光レンズ35およびフィルタ36を介してCCD素子37上に結像する。CCD素子37は、結像状態に応じた電気信号をモニタ装置38に出力する。モニタ装置38は、CCD素子37から出力された電気信号に応じた画像、すなわち、水層W内の様子を表示する。これにより、作業者は、水層W内の様子、具体的には、水層W内を浮遊する微粒子Pの様子を確認することができる。すなわち、ハロゲンランプ25、反射ミラー24、対物レンズ31、ビームスプリッタ34、集光レンズ35、フィルタ36、CCD素子37およびモニタ装置38は、微粒子観察手段に相当する。
【0039】
次に、作業者は、コントローラ41の入力装置42を操作してレーザ光源32からレーザ光を出射させる。これにより、レーザ光源32から出射されたレーザ光は、コリメートレンズ33、ビームスプリッタ34および対物レンズ31を介して水層W内に集光される。この場合、図4(B)に示すように、水層W内に集光したレーザ光Lの周辺に浮遊する微粒子Pは、集光したレーザ光Lの光強度勾配から生じる勾配力(以下、「光強度勾配力」という)によって最も明るい点(焦点)に引き寄せられる。換言すれば、微粒子Pは、集光したレーザ光Lに捕捉される。これは、微粒子Pの大きさがレーザ光Lの波長より小さいためである。そして、作業者は、基材WKの表面に固定させたい分量に相当する数の微粒子Pをレーザ光Lに捕捉させる。本実施形態においては、複数の微粒子Pを捕捉させる。
【0040】
具体的には、作業者は、モニタ装置38に表示される水層W内の様子、より具体的には、レーザ光Lによって捕捉された微粒子P’の様子を確認しながら、入力装置42を操作して微駆動ステージ26および粗駆動ステージ27を3軸方向に適宜変位させることにより、水層W内のレーザ光Lの位置を変位させて微粒子Pをレーザ光Lに捕捉させる。すなわち、これらの微駆動ステージ26、粗駆動ステージ27、コントローラ41、入力装置42、微駆動ステージ回路45および粗駆動ステージ回路46が、変位手段に相当する。次に、作業者は、基材WKにおける微粒子P’を固定させたい位置の近傍に、レーザ光Lによって捕捉した微粒子P’を位置決めする。この微粒子P’の位置決め工程も、前記と同様に入力装置42を操作して微駆動ステージ26および粗駆動ステージ27を3軸方向に適宜変位させることにより行う。
【0041】
この場合、レーザ光Lによって捕捉した微粒子P’を基材WKにおける微粒子P’を固定させたい位置の近傍に位置決めするのは、捕捉した微粒子P’がレーザ光Lから外れることを防止するためである。すなわち、前記したように、基材WKの表面および微粒子Pはマイナス極性に帯電している。このため、基材WKおよび微粒子Pの表面周辺部はプラス極性に帯電した状態、すなわち電気二重層が形成された状態となっている。したがって、基材WKの表面に微粒子P’を近づけた場合、互いの電気二重層が重なって静電気的相互作用により斥力が生じる。一方、レーザ光Lが微粒子P’を捕捉する力は前記斥力より小さい(0.1~100pN程度)ため、レーザ光Lによって捕捉した微粒子P’を基材WKの表面に近づけすぎると、前記斥力によって捕捉した微粒子P’がレーザ光Lから外れてしまうためである。
【0042】
作業者は、捕捉した微粒子P’を基材WKにおける微粒子P’を固定させたい位置の近傍に位置決めした状態で、入力装置42を操作して電極層12と基材WKとの間に電圧を印加する。この場合、電極層12と基材WKとに印加する電圧の極性は、上記第1参考形態と同様に電極層12側をマイナス極性とし基材WK側をプラス極性とする。これにより、電極層12にはマイナス極性の電位が形成されるとともに基材WKの表面はプラス極性の電位が形成され、電極層12と基材WKとの間に存在する水層Wには電界が形成される。このため、基材WKの表面近傍に位置決めされた微粒子P’は、水層Wに生じた電界によってレーザ光Lから離れて基材WKの表面に引き寄せられる。そして、基材WKの表面に引き寄せられた微粒子P’は、上記第1実施形態と同様にファンデルワールス力によって基材WKの表面に固定される。
【0043】
作業者は、モニタ装置38を介して微粒子P’が基材WKの表面に固定されたことを確認した後、直ちに、入力装置42を操作して電圧の印加を停止させて電極層12と基材WKとの間に生じていた電界を消滅させる。これは、電極層12と基材WKとの間に生じさせた電界によって水層W内を浮遊する他の微粒子Pが電気泳動により基材WKの表面に引き寄せられ固定することを防止するためである。このため、第2参考形態においては、上記第1参考形態より小さい電圧を電極層12と基材WKとの間に印加している。これにより、図4(C)に示すように、レーザ光Lによって捕捉した微粒子P’のみを基材WKの所望する位置に固定することができる。また、基材WK上に固定した微粒子P’は、電極層12と基材WKとの間に生じていた電界が消滅した後もファンデルワールス力によって基材WK上に固定された状態を維持する。作業者は、このような微粒子Pを捕捉する工程、微粒子P’を位置決めする工程および微粒子P’を基材WKの表面に固定させる工程を適宜繰り返して、基材WKの表面における所望する位置ごとに微粒子P’を固定させる。
【0044】
そして、作業者は、上記第1参考形態と同様にして、基材WKから水層Wやシール12などを除去して微粒子P’が固定した基材WKを得る。なお、微粒子P’はファンデルワールス力によって強固に基材WKの表面に固定しているため、基材WKから水層Wを乾燥させて除去する場合であっても水層Wの乾燥過程で生じる気液界面における表面張力によって基材WKの表面に固定している微粒子P’が剥がれることはない。
【0045】
上記作動説明からも理解できるように、上記第2参考形態によれば、微粒子Pを含む水層W内にレーザ光を集光させて微粒子Pを捕捉するとともに、同集光したレーザ光Lに対して基材WKを変位させる機構により捕捉した微粒子P’を所望する位置に位置決めして基材WKの表面上に固定させている。これにより、作業者は、上記第1実施形態における効果と同様の効果に加えて、所望する位置に所望する量だけ微粒子Pを固定することができる。これによれば、例えば、電子回路基板上に配置された互いに異なる電子デバイス間を微粒子P’によって結ぶ、すなわち、配線することができる。また、電子回路基板における所定の位置に電子デバイスを微粒子P’の塊によって固定することもできる。
【0046】
本発明の実施形態)
次に、本発明に係る微粒子固定装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。図5は、本発明に係る微粒子固定装置の構成を模式的に示す全体概略図である。なお、図5は、本発明に係る微粒子固定装置の構成を模式的に示したものであり、本発明の理解を容易にするため構成要素または各構成要素相互の関係を適宜誇張して示している。また、本実施形態においては、上記第1参考形態および上記第2参考形態における各構成要素と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。この微粒子固定装置は、導体的性質と不導体的性質とが選択的に変化する電気的特性を備えた物質で構成される基材WKの表面における所望する位置に、1つまたは複数の微粒子Pを固定させるための装置であり、上記第2参考形態に係る微粒子固定装置と略同様な構成である。
【0047】
微粒子Pが固定される基材WKの表面には、PVCz(ポリビニルカルバゾール)からなる固定層WLが形成されている。PVCzは、波長が488nm付近の所謂短波長の光が照射されることによって不導体的性質(電位形成不能な性質)から導体的性質(電位形成可能な性質)に変化する光導電性を有する高分子物質(ポリマー)である。本実施形態においては、基材WKの表面上に10~30nmの厚さのPVCz膜により固定層WLを構成している。この固定層WLが形成された基材WKは、上記第2参考形態と同様に、ワーク台23上に着脱自在な状態で保持される。
【0048】
基材WKに対してレーザ光を照射するレーザ光源32’は、前記固定層WLの電気的特性を変化させる、具体的には、不導体的性質から導体的性質に変化させる光を出射する光源である。本実施形態においては、波長が488nm付近の短波長の光を出射するアルゴンレーザを用いる。また、基材WKの下方から光を照射するためのハロゲンランプ25と反射ミラー24との間には、フィルタ28が配置されている。フィルタ28は、ハロゲンランプ25から出射される光のうち、波長が488nm付近の短波長の光を除くための光学フィルタである。
【0049】
次に、上記のように構成した微粒子固定装置の作動について図6(A)~(C)を参照しながら説明する。図6(A)~(C)は、本発明に係る微粒子固定装置によって微粒子Pが基材WK上に固定される様子を模式的に示した図である。なお、図6(A)~(C)は、微粒子固定装置によって微粒子Pが基材WK上に固定される様子を模式的に示したものであり、本発明の理解を容易にするため構成要素または各構成要素相互の関係を適宜誇張して示している。
【0050】
まず、作業者は、上記第2参考形態と同様に、微粒子Pの固定対象である基材WKを微粒子固定装置のワーク台23上にセットする。この場合、基材WKが微粒子固定装置にセットされた際における水層W内の微粒子Pは、図6(A)に示すように、水層W内において均一に分散した状態(コロイド状)で浮遊した状態で存在している。なお、水層W内の微粒子P、電極層12および基材WKの表面(固定層WL)は、上記第1参考形態および上記第2参考形態と同様に、マイナス極性に帯電しているものとする。また、基材WKには、短波長の光が照射されていないため、基材WKの表面に形成された固定層WLは不導体の状態である。
【0051】
次に、作業者は、コントローラ41、CCD素子37およびモニタ装置38の図示しない電源スイッチをそれぞれ投入して作動を開始させるとともに、ハロゲンランプ25を点灯させる。これにより、上記第2参考形態と同様に、モニタ装置38には、水層W内の様子が表示され、作業者は、水層W内の様子、具体的には、水層W内を浮遊する微粒子Pの様子を確認することができる。この場合、ハロゲンランプ25から出射された光は、基材WKの固定層WLを透過する。しかし、基材WKの固定層WLを透過する光は、ハロゲンランプ25と反射ミラー24との間に配置されたフィルタ28によって短波長成分がカットされている。このため、ハロゲンランプ25から出射された光によって基材WKの固定層WLの電気的性質が変化することはない。
【0052】
次に、作業者は、コントローラ41の入力装置42を操作してレーザ光源32’からレーザ光を出射させる。これにより、レーザ光源32’から出射されたレーザ光は水層W内に集光する。この場合、水層W内に集光したレーザ光Lの焦点部分には、上記第2参考形態と同様に、レーザ光Lの焦点部分の周辺を浮遊する微粒子Pが引き寄せられて捕捉される(図4(B)参照)。そして、作業者は、図6(B)に示すように、モニタ装置38に表示される水層W内の様子を確認しながら、入力装置42を操作して微駆動ステージ26および粗駆動ステージ27を3軸方向に適宜変位させることにより、水層W内に集光されたレーザ光Lの集点を基材WKの固定層WL上に位置決めする。この場合、レーザ光Lの焦点を位置決めする固定層WL上の位置は、微粒子Pの固定を予定する位置である。
【0053】
基材WKの固定層WL上においてレーザ光Lの焦点が位置決めされた部分は、短波長のレーザ光Lが照射されることにより不導体的性質から導体的性質に電気的特性が変化する。すなわち、対物レンズ31、レーザ光源32’、コリメートレンズ33およびビームスプリッタ34が、本発明に係る特性変化手段に相当する。そして、作業者は、入力装置42を操作して電極層12と基材WKとの間に電圧を印加する。この場合、電極層12と基材WKとに印加する電圧の極性は、上記第1参考形態および上記第2参考形態と同様に、電極層12側をマイナス極性とし基材WK側をプラス極性とする。これにより、電極層12にはマイナス極性の電位が形成されるとともに、基材WKにはプラス極性の電位が形成される。
【0054】
この場合、基材WKにおける固定層WLは、レーザ光Lが照射された部分のみ導体的性質に変化している。したがって、水層W内では電極層12と導体的性質に変化した固定層WLとの間に電界が形成される。このため、基材WKの固定層WLにおけるレーザ光Lが照射された部分(導体的性質に変化した部分)には、上記第2参考形態と同様に、レーザ光Lによって捕捉された微粒子P’が引き寄せられてファンデルワールス力によって固定層WKに固定される。本実施形態においては、複数の微粒子Pを固定層WK上に固定する。
【0055】
次に、作業者は、モニタ装置38に表示される水層W内の様子、より具体的には、固定層WL上におけるレーザ光Lの焦点の位置を確認しながら、入力装置42を操作して微駆動ステージ26および粗駆動ステージ27を2軸方向(図示X-Y平面)に適宜変位させることにより、固定層WL上におけるレーザ光Lの焦点の位置を変化させる。本実施形態においては、図6(C)に示すように、レーザ光Lを図示左側に向けて約2μm/sの速度で変化させる。これにより、固定層WL上には、レーザ光Lの焦点が通過することによって不導体的性質から導体的性質に変化した部分が連続的に形成される。そして、同連続的に形成された導体的性質に変化した部分に微粒子P’が連続的に固定される。
【0056】
この場合、固定層WLにおける導体的性質に変化した部分には、レーザ光Lを介して微粒子P’が連続的に供給される。これは、レーザ光Lによって捕捉された微粒子P’が固定層WL上に連続的に形成される導体的性質に変化した部分に連続的に引き寄せられ固定される一方で、同レーザ光Lの焦点部分に同焦点部分の周辺に浮遊する微粒子Pが連続的に引き寄せられて捕捉されるためである。このように、レーザ光Lの焦点部分に微粒子Pが連続的に引き寄せられるのは、微粒子Pがナノ微粒子であることに起因している。
【0057】
したがって、レーザ光Lには、固定層WLに固定されることによって捕捉した微粒子P’が失われても、レーザ光Lの焦点部分の周辺に浮遊する微粒子Pが連続的に引き寄せられて捕捉される。このため、作業者は、レーザ光Lに微粒子Pを敢えて捕捉させることなく、レーザ光Lの焦点の位置を変化させるだけで、固定層WLに微粒子P’を連続的に固定することができる。これにより、固定層WL上には、レーザ光Lの焦点の変位に沿って微粒子P’が連続的に固定される。なお、このように、敢えてレーザ光Lに微粒子Pを捕捉させさせなくても、レーザ光Lの焦点付近に微粒子Pが引き寄せられる現象は、上記参考形態2においても同様に生じているものである。
【0058】
そして、レーザ光Lの焦点が通過した後の固定層WLは、再び、不導体的性質に変化する。このため、レーザ光Lの焦点が通過した後において、水層W内を浮遊する微粒子Pが固定層WLに固定されることはない。また、作業者は、入力装置42を操作してレーザ光Lの焦点位置を固定層WLから上方に離す(図示Z方向)とともに、現在位置とは異なる固定層WL上の位置に位置決めした後、レーザ光Lの焦点位置を変位させて固定層WL上に微粒子Pを固定することもできる。すなわち、固定層WL上において互いに非連続な部分に微粒子P’を固定することができる。
【0059】
基材WKの固定層WLにおける所望する位置に微粒子Pを固定した場合には、作業者は、入力装置42を操作して電圧の印加を停止させて電極層12と基材WKとの間に生じていた電界を消滅させる。この場合、基材WKの固定層WL上に固定した微粒子P’は、電極層12と基材WKとの間に生じていた電界が消滅した後もファンデルワールス力によって固定層WL上に固定された状態を維持する。そして、作業者は、上記第1参考形態および上記第2参考形態と同様にして、基材WKから水層Wやシール12などを除去して微粒子P’が固定した基材WKを得る。なお、微粒子P’はファンデルワールス力によって強固に基材WKの表面に固定しているため、基材WKから水層Wを乾燥させて除去する場合であっても水層Wの乾燥過程で生じる気液界面における表面張力によって基材WKの表面に固定している微粒子P’が剥がれることはない。また、この場合においても、基材WKには、短波長の光が照射されていないため、基材WKの表面に形成された固定層WLは不導体の状態である。
【0060】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、微粒子固定装置は、電気を流さない不導体的性質と電気を流す導体的性質とが選択的に変化する電気的特性を備えた物質で構成された基材WKにおける前記電気的特性を変化させるためのレーザ光源32’などからなる特性変化手段を備えている。これによれば、上記第1参考形態における効果と同様の効果に加えて、前記電気的特性を備えた物質で構成された基材WKを用いることにより、基材WKに対して微粒子P’を固定するときだけ、基材WKにおける微粒子P’を固定する部分である固定層WLの電気的特性を導体的性質に変化させて微粒子P’を固定することができる。すなわち、不導体からなる基材WKの表面における任意の位置に微粒子P’を選択的に固定することができる。したがって、これによれば、例えば、不導体である電子回路基板上における各電子デバイスを電気的に繋げるパターン配線を微粒子P’を連続的に固定することにより形成することができる。
【0061】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0062】
記参考形態および上記実施形態においては、電極層12にプラス極性の電圧を印加するとともに、基材WKにマイナス極性の電圧を印加するように構成した。しかし、印加する電圧の極性は、水層W中に存在する微粒子Pの帯電極性に応じて決定されるものである。したがって、電極層12および基材WKに印加する電圧の極性は水層W中に存在する微粒子Pが電気泳動によって基材WK側に移動する極性にそれぞれ設定すればよい。なお、水層W中に存在する微粒子Pの帯電極性は、水層Wを構成する液体の種類やpHなどの状態により決定される。このため、電極層12および基材WKに特定の極性の電圧を印加する必要がある場合には、電極層12および基材WKに印加する電圧の極性に応じた微粒子Pの帯電極性とするための液体で水層Wを構成すればよい。これによっても上記参考形態および上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0063】
また、上記参考形態及び上記実施形態においては、基材WKに固定させる微粒子Pとして金(Au)のナノ微粒子を用いた。しかし、基材WKに固定させる微粒子Pは、水層W内においてプラス極性またはマイナス極性に帯電可能な微粒子であれば、これに限定されるものではなく、例えば、金以外の他の金属粒子、高分子粒子、セラミック粒子、バイオ粒子などであってもよい。特に、粒の大きさが概ね1~100nmの所謂ナノ粒子は、導体・不導体を問わず容易にプラス極性またはマイナス極性に帯電するため、本発明に用いる微粒子Pとしては好適である。すなわち、ナノ粒子を微粒子Pとして用いれば、導体物質のみならず不導体物質も基材WKに固定させることができる。これによれば、上記参考形態および上記実施形態と同様な効果が期待できるとともに、本発明の適用分野を一層広げることができる。例えば、導体材料の他、不導体材料を用いて電子回路基板をパターニングすることもできる。
【0064】
なお、本発明は微粒子Pとしてナノ微粒子より大きい大きさの微粒子(例えば、0.1~50μm程度)を排除するものではない。また、微粒子Pの粒の形状も球形以外の形状であってもよい。但し、上記第2参考形態において、微粒子Pの大きさが水層W内に集光させるレーザ光Lの波長より大きい場合、レーザ光Lによって微粒子Pが捕捉できないことがある。すなわち、光放射圧を利用して微小物体を捕捉する光トラップでは、レーザ光の波長より大きい物質を捕捉できないことがある。このような場合、レーザ光Lによって微粒子Pを捕捉するためには、微粒子Pが透明かつ略球体である必要がある。したがって、微粒子Pの光の反射率が高い場合や微粒子Pの形状が球体以外の形状である場合には、集光したレーザ光Lの光放射圧を利用して微粒子Pを弾きながら、またはその一部を捕捉して引き摺りながら所望する位置に位置決めすることになる。
【0065】
なお、この光トラップ技術を用いれば、微粒子P以外の部材を基材WKの所望する位置に位置決めすることができる。すなわち、基材WK上に所望する部材を所望する位置に配置して微粒子P’によって固定することができる。例えば、電子回路基板上における電子デバイスや電子顕微鏡における試料片を光トラップ技術を用いて所定の位置に位置決めした後、微粒子P’によって固定することができる。
【0066】
また、上記参考形態および上記実施形態においては、微粒子Pを水層Wの中で分散した状態(コロイド状)で存在するように構成したが、これに限定されるものではない。すなわち、基材WKの表面に均一に微粒子Pを固定するためには、微粒子Pを水層Wの中で分散した状態(コロイド状)で存在するように構成することが好ましいが、微粒子Pが水層Wの底部に沈殿または水層Wの上層に浮遊した状態で存在するように構成してもよい。
【0067】
例えば、上記第1参考形態において、プレート部材11および電極層12を水層Wの底部側に配置するとともに、基材WKを水層Wの上部側に配置した構成とする。そして、微粒子Pを水層Wの底部に沈殿させた状態で存在させる。この状態で、電極層12と基材WKとの間に電圧を印加すれば、水層W中に沈殿した微粒子Pが上部にある基材WKに向かって電気泳動により移動し固定される。また、上記第2参考形態において、水層Wの上層に微粒子Pを浮遊させた状態で存在させた場合には、基材WKの表面近傍に微粒子Pが存在しないため、集光したレーザ光Lによって捕捉した微粒子P’のみをより正確に基材WK上に固定することができる。すなわち、微粒子P’以外の意図しない微粒子Pの固定を防止することができる。
【0068】
また、上記参考形態および上記実施形態においては、水層Wを構成する液体を純水とした。しかし、水層Wを構成する液体は、基材WKと電極層12との間に電界が形成可能であるとともに、水層W中において微粒子Pの移動が可能な液体でれば、純水に限定されるものではない。例えば、水道水などの通常の水や生理食塩水などであってもよい。これによれば、上記参考形態および上記実施形態と同様な効果が期待できるとともに、本発明の適用分野を一層広げることができる。例えば、電子顕微鏡によってバイオ試料を観察する際、水層Wを構成する液体に生理食塩水を用いれば、水層Wを構成する液体によってバイオ試料を損傷することなくコーティングすることができ、バイオ試料本来の状態を正確に観察することができる。
【0069】
また、上記参考形態および上記実施形態においては、水層Wに接する状態で電極層12を設けて構成した。しかし、水層W内に電界を形成できる構成であれば、水層W内に電界を形成するための電極を水層Wに接する状態で設ける必要はない。例えば、図7(A)に示すように、電極層12をプレート部材11(不導体)の上面に形成、すなわち、水層Wに接しない状態で形成してもよい。この場合、プレート部材11は、電極12と基材WKとの間に印加する電圧によって水層W内に電界が形成可能な厚さで構成される。
【0070】
また、上記第1参考形態および第2参考形態においては、図7(B)に示すように、不導体で構成されるプレート部材11と、同不導体の部材で構成される基材WKとを水層Wに接した状態で配置するとともに、プレート部材11および基材WKの外側に電極層12,12’をそれぞれ設けて構成してもよい。この場合においても、プレート部材11および基材WKは、電極12と基材WKとの間に印加する電圧によって水層W内に電界が形成可能な厚さで構成される。そして、微粒子Pは基材WK上に電気泳動によって固定される。これらのように、水層Wに不導体の部材を介して電界を形成するように構成すれば、水層W内に電界を形成した際、水層Wを構成する液体の電気分解を防止することができ、精度良く微粒子Pを基材WK上に固定することができる。
【0071】
また、上記参考形態および上記第3実施形態においては、基材WKの表面に複数の微粒子P’を平面的または部分的に固定した。しかし、基材WK上に微粒子P’を固定する態様は、上記参考形態および上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記第2参考形態および上記実施形態において、レーザ光Lにより1粒ずつ微粒子P’を捕捉するとともに、同捕捉した微粒子P’を1粒ずつ基材WK上に固定することもできる。
【0072】
また、上記第2参考形態および上記実施形態において、レーザ光Lを図示Z方向に変位させることにより、基材表面WK上に固定した微粒子P’上に新たな微粒子P’を積み重ねて固定して複数の微粒子P’からなる立体構造物を造形することもできる。なお、上記実施形態において、立体構造物を造形する際には、基材WKの固定層WLに常にレーザ光Lを照射する必要があるため、固定層WLに照射するためのレーザ光Lと、微粒子P’を捕捉して積み上げるためのレーザ光Lとが必要となる。これらによれば、本発明の適用分野を一層広げることができる。
【0073】
また、上記第1参考形態および第2参考形態においては、導体である基材WKの表面に微粒子Pまたは微粒子P’を固定するように構成した。しかし、水層W内に電界が形成されるように構成すれば、不導体の物質上に微粒子Pまたは微粒子P’を固定することもできる。例えば、導体である基材WK上の表面に水層W内の電界形成を妨げない程度の不導体(例えば、薄膜)を配置した状態で電極層12と基材WKとの間に電圧を印加すれば、水層W内の微粒子Pを前記不導体に固定することもできる。これによれば、上記各参考形態と同様の効果が期待できるとともに、適用分野を一層広げることができる。
【0074】
また、上記第2参考形態および上記実施形態においては、水層W内に集光するレーザ光Lを1つとして構成したが、これに限定されるものではない。すなわち、水層W内に集光するレーザ光Lを2つ以上として構成してもよい。例えば、上記第2参考形態においてレーザ光源32から出射されたレーザ光Lを光変調器(レーザ分岐素子)を用いて複数のレーザ光Lとする。そして、各レーザ光Lをそれぞれ水層W内の所定の位置に集光させる。これによれば、所定の位置に集光させた各レーザ光Lによって同時に微粒子Pを捕捉することができるとともに、捕捉した各微粒子P’を同時に固定位置に位置決めすることができる。これにより、微粒子P’の固定を効率的に行うことができる。
【0075】
また、上記第2参考形態および上記実施形態においては、電極層12および基材WKに対する電圧の印加、微駆動ステージ26の駆動制御および粗駆動ステージ27の駆動制御を、電圧印加装置44、微駆動ステージ回路45および粗駆動ステージ回路46を介してコントローラ41によって行うように構成した。しかし、これらの制御を作業者自身の手動操作によって行うように構成してもよい。すなわち、電極層12および基材WKに対する電圧の印加には、電極層12および基材WKに手動操作により電圧を印加および停止を行うことができる上記第1参考形態における電源装置15を用いることができる。また、微駆動ステージ26および粗駆動ステージ27の各変位機構に手動操作のための操作子を設けることによりワーク台23を手動操作によって変位させることができる。
【0076】
また、上記第2参考形態および上記実施形態においては、水層W内に集光させたレーザ光Lに対して微駆動ステージ26および粗駆動ステージ27により基材WKを変位させるように構成した。しかし、水層W内に集光させたレーザ光Lと基材WKが相対的に変位すように構成すれば良く、必ずしも基材WK側を変位させる必要はない。すなわち、水層W内に集光させたレーザ光L側を基材WKに対して変位するように構成してもよい。これによっても、同様の効果が期待できる。
【0077】
また、上記第1参考形態においては、透明電極材料からなる層で構成した電極層12を水層W内に電界を生じさせる一方の電極とした。しかし、水層W中に電界を生じさせることができれば、これに限定されるものではない。例えば、電極層12に代えて、鉄材やアルミニウム材などの導電性の部材を基材WKに対向して配置してもよい。これによれば、同様の効果が期待できるとともにプレート部材11は不要となり微粒子固定装置の構成をより簡単にすることができる。なお、第2参考形態においては、モニタ装置38によって水層W内の様子(微粒子Pや微粒子P’)を確認する必要があるため、透明かつ導電性を有する部材(例えば、ITOガラス)を用いれば、プレート部材11および電極層12は上記第2参考形態に限定されるものではない。
【0078】
また、上記第1参考形態においては、基材WKの表面に微粒子Pを大量に固定して薄膜Fを形成する微粒子固定装置について説明した。しかし、基材WKの表面に固定する微粒子Pの量は、電極層12と基材WKとの間に印加する電圧の大きさおよび時間や水層W中の微粒子Pの数(濃度)によって決定されるものである。すなわち、印加する電圧の大きさや時間、微粒子Pの濃度を適宜調節することにより、基材WKの表面に固定する微粒子Pの量を減少させれば、基材WKの表面に微粒子Pを散乱させた状態(膜には至らない状態)で固定することができる。このような微粒子固定装置の用途としては、例えば、ナノチューブやナノワイヤの作製に用いることができる。具体的には、ナノチューブやナノワイヤを成長(結晶成長)させるための触媒となる金(Au)やコバルト(Co)などのナノ微粒子を基材WKの表面に散乱した状態で固定する装置(または方法)として用いることができる。
【0079】
一方、印加する電圧の大きさや時間、微粒子Pの濃度を適宜調節することにより、基材WKの表面に固定する微粒子Pの量を増加させれば、基材WKの表面に形成される薄膜Fの厚さが増大し微粒子Pの層を形成することができる。これによれば、例えば、基材WK上に配置した物体(例えば、生体試料)を微粒子Pによって埋没させることができる。そして、基材WK上に堆積した微粒子Pの塊を基材WKから剥がすことにより、基材WK上に配置した物体の形状の転写物(すなわち、型)を得ることができる。すなわち、上記第1参考形態における微粒子固定装置をこのような型の製造に利用すれば、同微粒子固定装置は微小物体の型製造装置と捉えることもできる。
【0080】
また、上記第1参考形態においては、水層Wに接する基材WKの表面全体に微粒子Pを固定させ薄膜Pを形成するように構成したが、これに限定されるものではない。すなわち、微粒子Pを選択的に固定させることも可能である。例えば、基材WKにおいて微粒子Pを固定させたい部分以外の部分を電界を遮蔽可能な部材でマスクすることにより、選択的に微粒子Pを固定させることができる。また、基材WKを不導体で構成し、基材WKの表面における微粒子Pを固定させたい部分に導体材料を配置またはエッチングし、同微粒子Pを固定させたい部分に電圧を印加するように構成してもよい。これらによっても、同様な効果が期待できるとともに、本発明の適用分野を一層広げることができる。例えば、電子回路基板のパターニングに用いることができる。また、電子回路基板上における電子デバイスの固定や、電子顕微鏡における試料片の固定にも用いることもできる。
【0081】
また、上記実施形態においては、波長が488nmの短波長のレーザ光Lを用いて基材WKにおける固定層WLを不導体性質から導体的性質に変化させた。しかし、固定層WLの電気的性質を変化させるために用いるレーザ光Lは、固定層WLを構成する物質の性質に応じて適宜決定されるものであり、上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、488nm以外の波長のレーザ光Lを用いてもよい。これは、基材WKの固定層WLを構成する物質がPVCzに限定されないことも意味している。
【0082】
また、上記実施形態においては、レーザ光Lの焦点を基材WKの固定層WL上に位置決めして同固定層WLにおける不導体性質を導体的性質に変化させるように構成した。しかし、基材WKの固定層WLにおける電気的特性を変化できるように光を照射すれば、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、レーザ光源32’に代えて投影画像を照射するプロジェクタを用いて固定層WLに光を照射するように構成してもよい。この場合、投影画像として電子回路基板における回路パターンを固定層WL上に投影すれば、基材WK上に電子回路をパターニングすることもできる。
【0083】
また、上記実施形態においては、光が照射されることによって固定層WLの電気的特性が変化するように構成した。しかし、固定層WLは、何らかの外的な作用によって電気的特性が変化する物質で構成されれば、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、熱、磁気、圧力、振動、超音波等によって電気的特性が変化する物質を用いて固定層WL、すなわち、基材WKを構成することができる。この場合、固定層WLの電気的特性を変化させるための特性変化手段は、固定層WLを構成する物質に応じた構成、例えば、熱、圧力、磁気、振動、超音波等を固定層WLに対して発生させる構成とすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】(A),(B)は、第参考形態に係る微粒子固定装置の構成を模式的に示した一部断面図である。
【図2】図1(A),(B)に示す微粒子固定装置によって複数の微粒子Pからなる薄膜Fが形成された基材WKを模式的に示した一部断面図である。
【図3】 参考形態に係る微粒子固定装置の構成を模式的に示す全体概略図である。
【図4】(A)~(C)は、図3に示す微粒子固定装置によって微粒子P’が基材WK上に固定される様子を模式的に示した一部断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る微粒子固定装置の構成を模式的に示す全体概略図である。
【図6】(A)~(C)は、図5に示す微粒子固定装置によって微粒子Pが基材WK上に固定される様子を模式的に示した一部断面図である。
【図7】(A),(B)は、本発明の変形例に係る微粒子固定装置の構成を模式的に示した一部断面図である。
【符号の説明】
【0085】
WK…基材、WL…固定層、P,P’…微粒子、W…水層、L…レーザ光、11…プレート部材、12,12’…電極層、13…シール、14a,14b…電気配線、15…電源装置、21…ベース、22…支柱、23…ワーク台、24…反射ミラー、25…ハロゲンランプ、26…微駆動ステージ、27…粗駆動ステージ、28…フィルタ、31…対物レンズ、32,32’…レーザ光源、34…ビームスプリッタ、37…CCD素子、38…モニタ装置。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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