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明細書 :多点電極

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5158696号 (P5158696)
公開番号 特開2009-172265 (P2009-172265A)
登録日 平成24年12月21日(2012.12.21)
発行日 平成25年3月6日(2013.3.6)
公開日 平成21年8月6日(2009.8.6)
発明の名称または考案の名称 多点電極
国際特許分類 A61B   5/0408      (2006.01)
A61B   5/0478      (2006.01)
A61B   5/0492      (2006.01)
G01N  27/02        (2006.01)
FI A61B 5/04 300J
G01N 27/02 D
A61B 5/04 300M
請求項の数または発明の数 5
全頁数 8
出願番号 特願2008-015866 (P2008-015866)
出願日 平成20年1月28日(2008.1.28)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成19年10月12日 第59回日本生理学会中国四国地方会、徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部発行の「第59回日本生理学会中国四国地方会 予稿集」に発表
審査請求日 平成22年11月12日(2010.11.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504155293
【氏名又は名称】国立大学法人島根大学
発明者または考案者 【氏名】廣田 秋彦
【氏名】伊藤 眞一
【氏名】藤田 恭久
個別代理人の代理人 【識別番号】100116861、【弁理士】、【氏名又は名称】田邊 義博
審査官 【審査官】湯本 照基
参考文献・文献 廣田秋彦,新しく開発した透明電極を用いた膜電位光学的多部位同時記録測定領野からの脳波測定,第59回日本生理学会中国四国地方会予稿集,日本,第59回日本生理学会中国四国地方会,2007年10月12日,16
調査した分野 A61B 5/0408
A61B 5/0478
A61B 5/0492
G01N 27/02
特許請求の範囲 【請求項1】
一方の面が平面であり他方の面が凹曲面である透明基板の凹曲面側に透明導電体層と透明絶縁体層とを設けた、in situ用の多点電極であって、
導電体層は、凹曲面上で互いに分離独立した領域として複数区画しつつそれぞれの領域の一部を凹曲面周縁部ないし基板側周部まで延伸して形成し、
絶縁体層は、導電体層の領域間部分および領域表面を被膜して形成し、
電極部を、各領域表面上の絶縁体層にピンホールを設けて導電体を露出させることにより形成したことを特徴とする多点電極。
【請求項2】
凹曲面が、生体の観測部位に沿った形状であることを特徴とする請求項1に記載の多点電極。
【請求項3】
基板の凹曲面周縁部の角を丸めたことを特徴とする請求項1または2に記載の多点電極。
【請求項4】
導電体層の素材を、GZO、AZO、IZO、ITO、In、ZnO、FZO、SnO、FTO、または、TiOとしたことを特徴とする請求項1、2または3に記載の多点電極。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の多点電極により、生体を電気的に刺激しつつまたは生体電気活動を測定しつつ、当該刺激部位または測定部位を含み、凹曲面による被覆領域の結像面を平面化して光学的にも観測することを特徴とするin situ状態における生体観測方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、多点電極に関し、特に、脳や心臓などの曲面形状の表面からin situの状態で、光学的手法により測定あるいは観察しつつ、当該部位の電気的刺激または電気的測定を可能とする多点電極に関する。
【背景技術】
【0002】
生命科学分野の研究においては、近年、生体機能を光学的手法により、多点から同時測定する方法が普及しつつある。たとえば、脳や心臓などの測定領域の中の何百ヶ所、何千ヶ所という非常に多くの点から、細胞の膜電位や細胞内カルシウム濃度などを蛍光色素などのプローブを用いたり、生体内に内在する物質の蛍光や吸光を測定したりして、これを指標に生体機能を調べる研究が広く行われている。
【0003】

【非特許文献1】[online]アルファメドサイエンス株式会社[平成20年1月9日検索]、インターネット<URL:http://www.amedsci.com/med64jp/ver1/1prod/prod_medprobe.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生体機能をより深く解明すべく、特にin situ、すなわち、生体から取り出さない状態で、光学的測定や形態観察と並行して、同領域を電気的に刺激したり、同領域の電気的活動を直接測定したりしたいという要請もある。しかしながら、電極は通常不透明であるため、従来では、光学的測定は光学的測定として、電気的な測定は電気的な測定として、別々におこない、また、電気的刺激は測定領域以外の部分でおこなう必要があり、上記要請を満たすものではなかった。
【0005】
一部に透明電極も開発されているが、測定対象はスライス標本や培養試料等の平面形状をした試料であり、単に多点から同時に電位を計測するためのものであって、電極位置の同定などで観察しやすいように便宜的に透明としたに過ぎない。換言すれば、in situ の状態の立体形状をした実験動物の脳などに用いることを想定したものではなく、測定対象を強く圧迫することなく、多点同時測定または多点刺激に用いることはできないという問題点があった。
【0006】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、脳や心臓などの立体的形状をした生体表面部の機能を光学的に測定あるいは観察しつつ、当該部位の電気的刺激または電気的測定を可能とする多点電極を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の多点電極は、一方の面が平面であり他方の面が凹曲面である透明基板の凹曲面側に透明導電体層と透明絶縁体層とを設けた、in situ用の多点電極であって、導電体層は、凹曲面上で互いに分離独立した領域として複数区画しつつそれぞれの領域の一部を凹曲面周縁部ないし基板側周部まで延伸して形成し、絶縁体層は、導電体層の領域間部分および領域表面を被膜して形成し、電極部を、各領域表面上の絶縁体層にピンホールを設けて導電体を露出させることにより形成したことを特徴とする。
【0008】
すなわち、請求項1に係る発明は、測定部位を生体外に取り出したり、測定器具で押しつけたりするようなことなく自然な形状ないし状態を保ったまま、曲面形状表面の広範囲に散在する多数の点からの電位変化を測定しつつ、光学的手法により当該部位の生体活動を把握でき、生体機能の解明に資することが可能となる。また、請求項1に係る発明は、測定部位を生体外に取り出したり、測定器具で押しつけたりするようなことなく自然な形状ないし状態を保ったまま、曲面形状表面の広範囲に散在する複数の点に電気刺激を与えることができ、光学的手法により当該部位の活性等を把握でき、生体機能の解明に資することが可能となる。ここで、基板自体が有する光学的性状により、観測対象部の全域に渡ってピントを同時に合わせることが可能となり、従来の方法では生体表面が立体形状のため測定部位周縁部がピンボケとなり解析精度が劣っていたところ、この基板を光路に挿入することにより、測定部位全域にピントが合うこととなり、従来の方法より光学的な解析精度も向上させることが可能となる。
【0009】
なお、分離独立した領域は、ピンホール周辺のみとし、領域の延伸部分は、電気的に隔絶さえしていれば、平面視において交差部分が存在してもよいものとする。これにより、電極の配置や電極数の設計自由度を高めることが可能となる。
【0010】
また、請求項2に記載の多点電極は、請求項1に記載の多点電極において、凹曲面が、生体の観測部位に沿った形状であることを特徴とする。
【0011】
すなわち、請求項2に係る発明は、各種精度をより向上させることができる。
【0012】
また、請求項3に記載の多点電極は、請求項1または2に記載の多点電極において、基板の凹曲面周縁部の角を丸めたことを特徴とする。
【0013】
すなわち、請求項3に係る発明により、導電体層にクラックなどが生じにくくなり製品信頼性が向上し、製品寿命が向上する。
【0014】
また、請求項4に記載の多点電極は、請求項1、2または3に記載の多点電極において、導電体層の素材を、GZO、AZO、IZO、ITO、In、ZnO、FZO、SnO、FTO、または、TiOとしたことを特徴とする。
【0015】
すなわち、請求項4に係る発明により、透明で凝着性に優れる素材による導電体層および電極を提供可能となる。なお、GZOはGa添加ZnO、AZOはAl添加ZnO、IZOはIn-ZnO系酸化物、ITOはSn添加酸化インジウム、FZOはF添加ZnO、FTOはF添加SnO、を意味する。ZnOは酸化亜鉛、Inは酸化インジウム、SnOは酸化錫、TiOは酸化チタンである。このうち特にGZOは少なくとも短時間の使用では生体毒性が見られないことが確認されているので、好ましい。また、GZOはZnOより電気抵抗が小さいので、好ましい。また、FZOは化学的安定性の観点から好ましい。また、TiOは耐食性の観点から好ましい。
【0016】
また、請求項5に記載の方法は、請求項1から4のいずれか一つに記載の多点電極により、生体を電気的に刺激しつつまたは生体電気活動を測定しつつ、当該刺激部位または測定部位を含み、凹曲面による被覆領域の結像面を平面化して光学的にも観測することを特徴とするin situ状態における生体観測方法である。
【0017】
すなわち、請求項5に係る発明は、従来の光学的方法による生体機能測定の情報に加え、同時に当該部位の電気活動の情報を得ることができ、あるいは、従来の方法ではなし得なかった、測定中の光学測定領野内に電気刺激を加えることも可能となる。このとき、光学的性状により、生体の平面でない表面の観測対象部位に広くピントを合わせることが可能となり、光学計測の精度(機能測定や形態観測)を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、市販の光学的測定装置や形態観測装置自体のハードやソフトを改造することなく、光学系の照光系を交換するだけで導入可能であって、脳や心臓などの立体的部位の機能を光学的手法により部位全域にわたって精度良く測定および観察しつつ、光学測定領野内における電気的刺激または電気的測定を可能とする多点電極を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施の形態の多点電極の断面図および平面図である。図示したように、多点電極1は、ガラス製の平凹レンズを半切した透明基板2上に、導電体層を形成するGZO薄膜3を二酸化ケイ素膜4で被膜し、底面部は、シリコンゴム5を接着剤として支持用ガラス板6に張り付けた構成としている。GZOとはガリウム添加酸化亜鉛(Ga Doped ZnO)である。
【0020】
GZO薄膜3の一部は透明基板2の側周まで延伸し、銀ペースト部7を介してリード線8に接続されている。ここで、絶縁性を確保するため、二酸化ケイ素膜4は側周部上部まで被膜し、その末端部は側周部下部の銀ペースト部7とともに、シリコンゴム9によりガラス板6部分まで被覆された構造としている。
【0021】
また、GZO薄膜3は、透明基板2の凹曲面上で複数個の島に区分けされており(図では5つの島)、それぞれの島は互いに独立し、それぞれのリード線8と一対一に対応している。また、二酸化ケイ素膜4は、それぞれの島の任意の位置に1個ずつピンホール10があけられ、透明基板2の凹曲面上ではこの部分のみでGZO薄膜3が暴露し外部と電気的に導通し、電極として機能する。
【0022】
透明基板2の凹曲面(従って、二酸化ケイ素膜4の凹曲面)は、ラットの大脳の曲率と同じであり、ここでは、感覚運動野に沿うように電極を作製している。
【0023】
製造にあたっては、まず、ガラス製の平凹レンズを半分に切断し角を丸めて基板とし、平面側を支持用のガラス板にシリコンゴムで接着する。この基板の凹面と側面全体に、GZOをスパッターで凝着する。このとき、予めレジストペンで基板にGZOが凝着出来ない部分を設けておき、GZOを5つの島状の領域に分けて凝着させる。
【0024】
続いて、凹面と側面上部とを二酸化ケイ素膜で覆い絶縁する。このとき、凹面部にはGZOのそれぞれの島ごとに1ヶ所ずつ直径約0.3ミリのシリカビーズを置いて二酸化ケイ素で覆われないように前処置し、直径約300μmのピンホールが形成されるようにする。次に、平凹レンズ側面下部でGZOが露出している部分に、導電性接着剤である銀ペーストを用い、リード線を取り付ける。最後に二酸化ケイ素膜末端部、銀ペーストおよびその近傍のガラス板をシリコンゴムで被膜してピンホール以外をすべて絶縁し、多点電極を形成する。平凹レンズ、GZO,二酸化ケイ素は透明であるので、得られる多点電極は透明である。なお、透明基板2の角を丸めることで、GZOの凝着性と連続性を高め、クラックが入ることなどに起因する、角での導電層断裂をしにくくしている。
【0025】
使用に際しては、ラットの頭蓋骨にこの多点電極に合わせた半円形の穴をあけ、凹面側を挿入して脳皮質に体液代用液を介して密着させる。図2および図3は、脳に電極を装着した様子を示した図である。
【0026】
多点電極は、数百ヶ所、数千ヶ所から光学的機能測定(たとえばfura-2を用いた蛍光観察による細胞内カルシウム濃度測定)を行っている測定領野内に設置して電気活動の測定や電気刺激をおこなうことができ、さらに光学的には測定系に電極基板である凹レンズ等を挿入したことになる。このことは、光学的には、測定対象の立体形状をした脳などの表面に沿った曲面を一つの実像面(平面)に結像する効果がある(図3参照)。このため、通常ピンボケとなる結果、光学シグナルの大きさが小さくなったり、近隣のピクセルにクロストークが生じたりする、といった、中央部のフォーカス面から離れた部位に生じる悪影響を減ずる結果をもたらし、光学系に本多点電極を挿入することは、光学測定の質も向上させるものとなる。
【実施例】
【0027】
図4は、ラットの脳の感覚運動野への多点電極の装着例を示した写真である。ここでは、図1に示した5点の電極としている。図示したように、脳の凸曲面が平面部分に鮮明に浮かび上がり、電極やその導線が光学系を阻害しないのに加え、周辺部がぼけていないことが確認できる。図5は、ラット後肢の電気刺激に対する、感覚運動野5点の電位変化を測定した測定結果である。▼で示したように、いずれの測定点でも3回の電気刺激に対応した脳皮質の反応が表面脳波として観測されている。なお▽は、自発応答である。
【0028】
なお、以上は5点電極であるため、各島からのリード線の引き出しは簡単であるが、多数の点を電極とする場合は、導電体の一部を立体交差させるようにして集積度を上げるようにする。このとき、導電体同士(すなわち各島)間は絶縁層を挿入するなどして絶縁する。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明によれば、光学的手法による測定に干渉せず、これと同時に電気刺激や電位変化測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施の形態の多点電極の断面図および平面図である。
【図2】ラットの頭蓋骨に開けた穴に多点電極を装着したときの平面模式図である。
【図3】多点電極を挿入した観測系と挿入しない観測系を示した模式図であって、光学系(光軸)を含むラットの前額断(体の左右対称面および水平面に垂直方向の断面)の模式図である。
【図4】ラットの脳の感覚運動野への多点電極の装着例を示した写真である。
【図5】ラット後肢の電気刺激に対する、感覚運動野5点の電位変化を測定した測定結果である。
【符号の説明】
【0031】
1 多点電極
2 透明基板
3 GZO薄膜
4 二酸化ケイ素膜
5 シリコンゴム
6 ガラス板
7 銀ペースト
8 リード線
9 シリコンゴム
10 ピンホール(電極部)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4