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明細書 :研削方法及び研削加工装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5352892号 (P5352892)
公開番号 特開2009-196048 (P2009-196048A)
登録日 平成25年9月6日(2013.9.6)
発行日 平成25年11月27日(2013.11.27)
公開日 平成21年9月3日(2009.9.3)
発明の名称または考案の名称 研削方法及び研削加工装置
国際特許分類 B24B  53/00        (2006.01)
B24D   3/00        (2006.01)
B24B   1/04        (2006.01)
B24B   7/02        (2006.01)
FI B24B 53/00 Z
B24D 3/00 310D
B24B 1/04 C
B24B 7/02
請求項の数または発明の数 3
全頁数 14
出願番号 特願2008-041827 (P2008-041827)
出願日 平成20年2月22日(2008.2.22)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成19年9月3日 社団法人精密工学会発行の「2007年度精密工学会秋季大会 プログラム&アブストラクト集」に発表
審査請求日 平成23年2月10日(2011.2.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】磯部 浩已
【氏名】原 圭祐
個別代理人の代理人 【識別番号】100082337、【弁理士】、【氏名又は名称】近島 一夫
審査官 【審査官】中野 裕之
参考文献・文献 特開平05-016070(JP,A)
特開平11-058194(JP,A)
特開2007-015042(JP,A)
調査した分野 B24B 53/00
B24B 1/04
B24B 7/02
B24D 3/00
特許請求の範囲 【請求項1】
軸状の工具本体の先端面に多数のダイヤモンド砥粒を固着した研削工具を用いた研削方法であって、
前記各ダイヤモンド砥粒に切れ刃高さを揃えるトランケーションを施すトランケーション工程と、
前記トランケーション工程で前記各ダイヤモンド砥粒に前記トランケーションを施した後、前記工具本体の先端面を被加工物表面に対向させ、前記研削工具に軸まわりに回転及び軸方向に超音波振動を与えて、前記研削工具を所定の切込み深さで被加工物表面に沿う送り方向へ相対移動させることにより、前記トランケーションが施された前記ダイヤモンド砥粒で被加工物表面を研削すると共に、前記研削工具の軸方向への超音波振動により、前記ダイヤモンド砥粒において前記トランケーションにより形成された面で被加工物表面の研削した部分を圧潰して、被加工物表面を鏡面加工する加工工程と、を備える、
ことを特徴とする研削方法。
【請求項2】
軸状の工具本体及び前記工具本体の先端面に固着された多数のダイヤモンド砥粒を有し、前記各ダイヤモンド砥粒に切れ刃高さを揃えるトランケーションが施された研削工具と、
前記研削工具が装着され、前記研削工具を軸まわりに回転させると共に、前記研削工具に軸方向に超音波振動を与えるスピンドルと、
前記研削工具と被加工物とを切込方向に相対移動させる第1移動手段と、
前記研削工具と被加工物とを被加工物表面に沿う送り方向に相対移動させる第2移動手段と、を備え、
前記工具本体の先端面を被加工物表面に対向させ、前記研削工具に軸まわりに回転及び軸方向に超音波振動を与えて、前記研削工具を所定の切込み深さで送り方向に相対移動させることにより、前記トランケーションが施された前記ダイヤモンド砥粒で被加工物表面を研削すると共に、前記研削工具の軸方向への超音波振動により、前記ダイヤモンド砥粒において前記トランケーションにより形成された面で被加工物表面の研削した部分を圧潰して、被加工物表面を鏡面加工する、
ことを特徴とする研削加工装置。
【請求項3】
前記研削工具に対向するよう取り外し可能に取り付けられ、前記各ダイヤモンド砥粒にトランケーションを施すトランケーション手段を備えた、
ことを特徴とする請求項2に記載の研削加工装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材料等の被加工物の平面、傾斜面或いは自由曲面といった表面の鏡面加工を行う研削方法及び研削加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、産業界において金型の需要が急増しており、金型の表面を鏡面に仕上げる鏡面加工の重要度が高まってきている。金型の製作では、まずエンドミル等を用いた工作機械で機械加工を行い、金型表面を鏡面に仕上げる最終仕上げ加工を熟練作業者が手作業で行うようにしている。このような作業者による手作業では時間がかかってしまい、また、金型の精度も作業者の能力に依存しているため、改善が求められている。
【0003】
従来、ダイヤモンド砥粒を先端に固着した研削工具を用いて被加工物を研削する超音波平面研削加工装置が知られている(特許文献1参照)。この超音波平面研削加工装置では、ダイヤモンド砥粒を先端に固着した研削工具に回転及び超音波振動を付与しながら被加工物を研削するものである。通常、ダイヤモンドは、ダイヤモンドと親和性の高い材料(例えば鉄)を加工する場合、加工時の発熱により化学反応を起こし激しく摩耗するものであるが、この超音波平面研削加工装置によれば、研削工具に超音波振動を付与することにより、ダイヤモンドの化学反応を抑制し、ダイヤモンドの摩耗を抑制することができる。
【0004】

【特許文献1】特開平11-58194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、研削工具を超音波振動させる従来の超音波平面研削加工装置では、砥粒先端が鋭いので加工抵抗は小さいものであり、研削工具にびびり振動が生じることなく加工処理を施すことができるが、被加工物表面には、砥粒による鋭い研削痕が残り、加工表面が粗く、高品位な仕上げ加工は困難であった。
【0006】
また、ダイヤモンド砥粒の切れ刃高さを揃えるトランケーションを施して精密研削する研削加工装置を自ら研究しているが、砥粒にトランケーションを施したことで加工抵抗が高くなりすぎてしまい、加工中に研削工具がびびり振動を起こしてしまったり、砥粒が脱落してしまったりするので、高品位な仕上げ加工は困難であった。
【0007】
つまり、上記いずれの装置も被加工物表面に高品位な仕上げ加工を施すものではなかったため、高品位な仕上げ加工を被加工物表面に施すものが望まれていた。
【0008】
そこで本発明は、研削工具がびびり振動するのを抑制し、被加工物表面を高品位な鏡面に加工することができる研削方法及び研削加工装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は(例えば、図2、図3、図4、図6、図9参照)、軸状の工具本体(51)の先端面(51a)に多数のダイヤモンド砥粒(52)を固着した研削工具(5)を用いた研削方法であって、
前記各ダイヤモンド砥粒(52)に切れ刃高さ(h)を揃えるトランケーションを施すトランケーション工程と、
前記トランケーション工程で前記各ダイヤモンド砥粒(52)に前記トランケーションを施し後、前記工具本体(51)の先端面(51a)を被加工物表面(8a)に対向させ、前記研削工具(5)に軸まわりに回転及び軸方向に超音波振動を与えて、前記研削工具(5)を所定の切込み深さで被加工物表面(8a)に沿う送り方向へ相対移動させることにより、前記トランケーションが施された前記ダイヤモンド砥粒(52)で被加工物表面(8a)を研削すると共に、前記研削工具(5)の軸方向への超音波振動により、前記ダイヤモンド砥粒(52)において前記トランケーションにより形成された面(52b)で被加工物表面(8a)の研削した部分を圧潰して、被加工物表面(8a)を鏡面加工する加工工程と、を備える、
ことを特徴とする研削方法にある。
【0011】
また、本発明は、軸状の工具本体(51)及び前記工具本体(51)の先端面(51a)に固着された多数のダイヤモンド砥粒(52)を有し、前記各ダイヤモンド砥粒(52)に切れ刃高さ(h)を揃えるトランケーションが施された研削工具(5)と、
前記研削工具(5)が装着され、前記研削工具(5)を軸まわりに回転させると共に、前記研削工具(5)に軸方向に超音波振動を与えるスピンドル(4)と、
前記研削工具(5)と被加工物(8)とを切込方向に相対移動させる第1移動手段(3)と、
前記研削工具(5)と被加工物(8)とを被加工物表面(8a)に沿う送り方向に相対移動させる第2移動手段(6)と、を備え、
前記工具本体(51)の先端面(51a)を被加工物表面(8a)に対向させ、前記研削工具(5)に軸まわりに回転及び軸方向に超音波振動を与えて、前記研削工具(5)を所定の切込み深さで送り方向に相対移動させることにより、前記トランケーションが施された前記ダイヤモンド砥粒(52)で被加工物表面(8a)を研削すると共に、前記研削工具(5)の軸方向への超音波振動により、前記ダイヤモンド砥粒(52)において前記トランケーションにより形成された面(52a)で被加工物表面(8a)の研削した部分を圧潰して、被加工物表面(8a)を鏡面加工する、
ことを特徴とする研削加工装置(1)にある。
【0012】
また、前記研削加工装置(1)において、前記研削工具(5)に対向するよう取り外し可能に取り付けられ、前記各砥粒(52)にトランケーションを施すトランケーション手段(7)を備えた、
ことを特徴とするものである。
【0013】
尚、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0014】
請求項1,2に係る本発明によると、研削工具には超音波振動が付与されるので、研削工具にかかる加工抵抗が低減し、研削工具のびびり振動が抑制される。そして、ダイヤモンド砥粒により被加工物表面に形成される研削痕は、トランケーションにより各ダイヤモンド砥粒の切り刃高さが揃えられているので、超音波振動が与えられているとしてもきめ細かい平滑化されたものからなり、更に超音波振動に基づき、トランケーションにより揃えられたダイヤモンド砥粒においてトランケーションにより形成された面が被加工物表面を押し叩いて被加工物表面の凹凸が圧潰されて均平化され、被加工物表面を高品位な鏡面に加工することができる。また、研削工具にかかる加工抵抗が低減するので、ダイヤモンド砥粒の脱落や摩耗が低減し、工具寿命が延び、長期に亘って被加工物表面を高品位な鏡面に加工することができる。
【0017】
請求項3に係る本発明によると、被加工物の加工に使用される研削加工装置で研削工具のダイヤモンド砥粒にトランケーションを施すようにしたので、トランケーションを施した後、被加工物を仕上げ加工する際に研削工具を着脱する作業を省略できる。そして、研削工具の着脱の際のずれや各研削加工装置のスピンドルの運動精度のばらつきに起因する研削工具先端の振れ回りを抑制することができる。従って、より高精度に被加工物表面を鏡面加工することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて詳細に説明する。
【0019】
図1は、トランケーション部を装備した研削加工装置を示す概略正面図であり、図2は、トランケーション部を装備した研削加工装置の要部を示す概略斜視図である。
【0020】
研削加工装置1は、ベース2aと、ベース2aの後端部に立設するコラム2bとを有する装置本体2を備えている。また、研削加工装置1は、コラム2bの正面に上下方向(Z軸方向)にスライド可能に固定される昇降スライダ3(第1移動手段)と、昇降スライダ3に固定されるスピンドル4と、スピンドル4に装着される研削工具5と、装置本体2のベース2aに送り方向(X軸方向及びY軸方向)に移動可能に固定される移動テーブル6(第2移動手段)とを備えている。
【0021】
昇降スライダ3は、上下方向に移動することにより、スピンドル4に保持されている研削工具5を、切込方向(Z軸方向)に移動させることができる。
【0022】
スピンドル4は、研削工具5を軸周りに回転させる不図示の回転部と、研削工具5を軸方向に超音波振動させる不図示の超音波振動子とを有しており、回転部及び超音波振動子が動作することで、研削工具5に回転及び超音波振動を付与することができる。このように研削工具5に超音波振動を付与することで、研削時において研削工具5にかかる加工抵抗が低減される。
【0023】
図3は、研削工具5の先端を示す平面図である。研削工具5は、工具本体51と、工具本体51の先端に固着された多数の砥粒52とを有している。工具本体51は、超硬合金からなる軸体であり、基端がスピンドル4に挟持固定される。砥粒52は、ダイヤモンド砥粒であり、工具本体51の先端に固着される。具体的には、不図示の電着装置により工具本体51の先端にニッケルめっきが施され、砥粒52がめっき層53に保持される。このように、多数の砥粒52が工具本体51の先端における先端面51a及び周面51bに電着される。研削工具5は、小型の金型等の被加工物表面を鏡面加工するのに適した大きさに設定されている。本実施の形態では、工具本体51の直径が3mmのものを用い、ダイヤモンド砥粒52の平均粒径が150μmのものを用いた。
【0024】
このダイヤモンド砥粒52を有する研削工具5では、鉄を含む金属材料を研削する場合、超音波振動を付与しないと加工抵抗が大きく加工時の発熱量が大きくなり、ダイヤモンドが鉄と化学反応を起こして激しく摩耗してしまう傾向にあるが、本実施の形態において、研削工具5には、スピンドル4により超音波振動が付与されるので、加工抵抗が低減し、砥粒52の化学反応が抑制され、砥粒52の摩耗が抑制される
【0025】
この工具本体51の先端面51aに固着された各砥粒52は、トランケーションを施す前はその先端が鋭く尖っており、仮にそのまま被加工物を研削すると被加工物の表面には砥粒による鋭い研削痕が残ってしまう。
【0026】
そこで、本実施の形態における研削加工装置1は、図2に示すように、移動テーブル6に取り外し可能に取り付けられ、工具本体51の先端面51aに固着された各砥粒52にトランケーションを施すトランケーション部7を備えている。
【0027】
このトランケーション部7は、工具本体51の先端面51aに固着された砥粒52に摺接するよう配置され、研削工具5のダイヤモンド砥粒52と同じダイヤモンド砥粒を有する円筒形状の砥石71と、砥石71が固定され、砥石71と共に回転する回転部72と、回転部72を回転可能に支持する基部73とを有しており、基部73が不図示のねじ等の固定手段により移動テーブル6に固定される。このように、研削工具5の砥粒52と同質の砥粒を有する砥石71で研削工具5の砥粒52にトランケーションを施すようにしたので、研削工具5の砥粒52及び砥石71の砥粒のうち、いずれか一方のみが著しく摩耗したり欠けたりしてしまうのを抑制することができ、研削工具5の砥粒52に安定してトランケーションを施すことができる。
【0028】
研削工具5の砥粒52にトランケーションを施す場合、トランケーション部7の回転部72を回転させることで砥石71を回転させる。また、スピンドル4により研削工具5を砥石71と同一方向に回転させ、この状態で研削工具5を切込方向に移動させる。そして、移動テーブル6を、工具本体51の先端面51aが砥石71の面から外れない範囲でY軸方向に往復移動させる。ここで、スピンドル4は、研削工具5に超音波振動を付与せずに、回転のみを付与している。
【0029】
図4は、工具本体51の先端面51aに固着した砥粒52を示す模式化した説明図である。
【0030】
工具本体51の先端面51aに固着した各砥粒52には、トランケーション部7の砥石71によりトランケーションが施されて先端52aが削り落とされ、各砥粒52の切れ刃高さhが揃えられて、トランケーションにより形成された面である平坦部52bが形成される。ここで、切れ刃高さhとは、めっき層53の表面に対する砥粒52の平坦部52bの高さのことである。このように各砥粒52にトランケーションを施すことにより、研削加工時に単に砥粒の先端が摩耗したり欠けたりする場合とは異なり、各砥粒52の切れ刃高さhが整然と揃えられる。
【0031】
次に、被加工物表面に鏡面加工を施す場合について説明する。図5は、トランケーション部7を取り外して被加工物に正面研削を施す際の研削加工装置1を示す概略正面図であり、図6は、トランケーション部7を取り外して被加工物に正面研削を施す際の研削加工装置1の要部を示す概略斜視図である。
【0032】
図5及び図6において、研削工具5にトランケーションを施した後、トランケーション部7が移動テーブル6から取り外され、表面8aが水平面である被加工物8がワークテーブル9を介して取り付けられている。ここで、トランケーションが施された研削工具5は、取り外されることなくそのまま装着した状態であり、研削工具5を着脱する作業を省略している。つまり、本実施の形態では、研削加工装置1で研削工具5にトランケーションを施すと共に、トランケーションが施された研削工具5で被加工物8の表面8aに鏡面加工を施すようにしているので、研削加工装置1の他に、別途、スピンドルを備えて研削工具にトランケーションを施す装置を用意する必要がない。
【0033】
次に、研削工具5が装着されている状態で、取り外されたトランケーション部7の代わりに、金型等の被加工物8がワークテーブル9を介して移動テーブル6に載置される。なお、研削工具5の先端には、オイルミストが噴射されるミストノズル11の噴射口11aが対向しており、研削工具5により被加工物8を研削しているときにミストノズル11の噴射口11aからオイルミストが噴射される。
【0034】
次に、スピンドル4を動作させ、トランケーションを施した研削工具5に回転及び超音波振動を付与し、昇降スライダ3を下方向に移動させて、研削工具5を被加工物8の表面8aに対して所定の切込み深さとなるよう切込方向に移動させる。そして、この状態で移動テーブル6を移動させることにより、研削工具5が被加工物8の表面8aに沿って相対的に移動することとなる。
【0035】
本実施の形態では、研削工具5が、被加工物8に対して、被加工物8の表面8aに沿う送り方向(図6中、X軸方向)に往復移動すると共に、所定のピッ送り幅Wで往復移動させる送り方向と直交する方向(図6中、Y軸方向)に移動するよう、移動テーブル6を移動させている。
【0036】
図7は、トランケーションを施していない砥粒52’により被加工物8の表面8aを研削した場合を示す説明図であり、(a)は工具本体51の先端面51aを見た場合の図、(b)は、研削工具51の砥粒52’により被加工物8の表面8aを研削している状態を示している図、(c)は、加工後の被加工物8の表面8aを示す図である。また、図8は、トランケーションを施した砥粒52により被加工物8の表面8aを研削した場合を示す説明図であり、(a)は工具本体51の先端面51aを見た場合の図、(b)は、研削工具51の砥粒52により被加工物8の表面8aを研削している状態を示している図、(c)は、加工後の被加工物8の表面8aを示す図である。
【0037】
トランケーションを施していない砥粒52’により被加工物8の表面8aを研削した場合、図7の(a)の如く研削工具5を回転方向(矢印A方向)に回転させながら送り方向(矢印B方向)に移動させ、図7の(b)の如く被加工物8の表面8aを研削すると、図7の(c)の如く被加工物8の表面8aには鋭い研削痕が形成されてしまい、被加工物8の表面8aが粗く、鏡面の品位は低いものである。
【0038】
これに対し、本実施の形態では、図8に示すように、トランケーションを施した砥粒52により被加工物8の表面8aを研削しているものである。この場合、図8の(a)の如く研削工具5を回転方向(矢印A方向)に回転させながら送り方向(矢印B方向)に移動させ、図8の(b)の如く被加工物8の表面8aを研削することとなり、図8の(c)の如く被加工物8の表面8aには砥粒52による研削痕がほとんど残らず、被加工物8の表面8aは平坦なものとなる。
【0039】
図9は、研削工具5の砥粒52により被加工物8の表面8aに鏡面加工を施している動作を示す説明図である。この図9を参照しながら研削工具5による鏡面加工について詳細に説明する。まず、研削工具5は回転しながら送り方向に移動するので、砥粒52の平坦部52bにおける縁部52cが被加工物8の表面8aを削ることとなる。このように削られた被加工物8の表面8aは、加工を施す前よりは表面粗さが向上するものであるが、この状態では被加工物8の表面8aには微小な凹凸(図9中、表面8aの破線部分)が残っている。ところが研削工具5には超音波振動が付与されているので、被加工物8の表面8aにある微小な凹凸は、砥粒52の平坦部52b全体で打ち均され、被加工物8の表面8aの凸部8bが圧潰されてその部分の肉が凹部8cに塑性流動することとなる。このように、研削工具5に超音波振動が付与されることで、被加工物8の表面8aの微小な凹凸が砥粒52の平坦部52bで打ち均され、被加工物8の表面粗さが向上し、被加工物8の表面8aを高品位な鏡面に加工することができる。
【0040】
また、研削工具5に超音波振動を付与することにより加工抵抗が低減するので、砥粒52の脱落や摩耗が低減し、工具寿命が延び、長期に亘って被加工物8の表面8aを高品位な鏡面に加工することができる。
【0041】
また、トランケーションを施した研削工具5を取り外すことなく、そのまま被加工物8の表面8aの鏡面加工を行うようにしたので、研削工具5を着脱することが原因で各砥粒52の平坦部52bで形成される法絡面が傾いてしまうことはなく、研削工具5を回転させた際の研削工具5の先端面51aの振れ回りが抑制される。従って、より効果的に被加工物8の表面8aを高品位な鏡面に加工することができる。
【0042】
更に、本実施の形態における研削加工装置1のスピンドル4と、他の研削加工装置におけるスピンドルとは、同様の構成であっても、その運動精度にばらつきが存在するが、本実施の形態では、トランケーションを施した研削工具5を取り外すことなく、そのまま被加工物8の表面8aの鏡面加工を行うようにしたので、スピンドル4の精度のばらつきに起因する研削工具5の先端面51aの振れ回りが抑制される。従って、より効果的に被加工物8の表面8aを高品位な鏡面に加工することができる。
【0043】
また、研削工具5の砥粒52のトランケーション量(砥粒の除去高さ)を増大させた場合、平坦部52の面積が増えるので、トランケーション量が増大するに連れ、被加工物8の表面粗さも向上するものである。以下、実験例を参照しながら詳細に説明する。
【0044】
まず、研削工具5の砥粒52にトランケーションを施した際の条件として、研削工具5の回転速度を2000min-1(18.8m/min)、砥石71の回転速度を600min-1(140m/min)、砥石71に対する研削工具5の送り方向(図1中、Y軸方向)への送り速度を1mm/minとした。そして、研削工具5の切込方向への切込み深さを1μm、研削工具5の送り方向の往復回数を2往復とし、これを1セットとしてトランケーションを実施した。つまり、1セット当たりのトランケーション量(砥粒の除去高さ)は、1μmとした。
【0045】
そして、トランケーション量が3μm、5μmの研削工具5をそれぞれ作成し、また、トランケーションを施していない研削工具も実験に用いた。なお、被加工物8の表面8aに鏡面加工を施した際の条件として、研削工具5の回転速度を2000min-1、被加工物に対する研削工具の送り方向(図6中、X軸方向)への送り速度を500mm/min、ピック送り量を20μm、超音波振動を60kHz/0.25mmとした。
【0046】
図10は、各研削工具5で研削した被加工物8の表面8aを示す図である。なお、この場合の切込み深さは、0.2μmとした。
【0047】
トランケーションを施していない研削工具で被加工物8の表面8aに鏡面加工を施した場合は、図10(a)に示すように、被加工物8の表面粗さが0.75μmRzであるのに対し、トランケーション量が3μm,5μmのそれぞれの研削工具5で被加工物8の表面8aに鏡面加工を施した場合は、図10(b),(c)に示すように、被加工物8の表面粗さがそれぞれ0.30μmRz,0.25μmRzである。
【0048】
つまり、トランケーション量が増大するほど、被加工物8の表面粗さが向上するものである。
【0049】
図11は、切込み深さに対する被加工物8の表面粗さを示す図である。この図11において、折れ線a0は、トランケーションを施していない研削工具で被加工物8の表面8aに鏡面加工を施した場合を示し、折れ線a1は、トランケーション量が3μmの研削工具5で被加工物8の表面8aに鏡面加工を施した場合を示し、折れ線a2は、トランケーション量が5μmの研削工具5で被加工物8の表面8aに鏡面加工を施した場合を示している。なお、図11は、切込み深さを0.1~0.5μmの間で変えて被加工物8の表面粗さを測定した結果を示している。
【0050】
この図11からも明らかなように、切込み深さを変更した場合であっても、研削工具5の砥粒52のトランケーション量が増大するほど、被加工物8の表面粗さは向上するものである。従って、被加工物8の表面粗さは向上するので、被加工物8の表面8aが高品位な鏡面に加工することができる。
【0051】
ここで、図12は、切込み深さに対する加工抵抗を示す図であり、折れ線b0は、トランケーションなしの研削工具で被加工物8の表面8aに鏡面加工を施した場合を示し、折れ線b1は、トランケーション量が3μmの研削工具5で被加工物8の表面8aに鏡面加工を施した場合を示し、折れ線b2は、トランケーション量が5μmの研削工具5で被加工物8の表面8aに鏡面加工を施した場合を示している。
【0052】
この図12に示すように、トランケーションを施していない研削工具で鏡面加工を施した場合には、加工抵抗は著しく低く、トランケーション量を増大させるに連れて、加工抵抗が増大するものである。
【0053】
図13は、被加工物8の表面粗さに対する加工抵抗を示す図である。この図13における双曲線cは、図12の実験結果に基づく回帰曲線であり、被加工物8の表面粗さと加工抵抗とは、反比例の関係がある。つまり、被加工物8の表面粗さが向上するほど(トランケーション量が増大するほど)加工抵抗が増大するものである。そして、仮に、加工抵抗が臨界値を超えてしまうと(トランケーション量が多すぎると)、研削工具がびびり振動を起こしてしまうものである。
【0054】
そこで、本実施の形態では、加工抵抗が臨界値以下となるように、研削工具5の砥粒52にトランケーションを施すようにしている。このように、加工抵抗を臨界値以下とすることで、研削工具5のびびり振動を効果的に抑制することができ、被加工物8の表面8aを高品位な鏡面に加工することができる。
【0055】
以上、本実施の形態によれば、研削工具5には超音波振動が付与されるので、研削工具5にかかる加工抵抗が低減し、研削工具5のびびり振動が抑制される。そして、砥粒52により被加工物表面8aに形成される研削痕は、尖っている砥粒52’よりも平坦なものとなり、しかも超音波振動している砥粒52の平坦部52bで被加工物表面8aの凹凸が圧潰されて均平化され、被加工物表面8aを高品位な鏡面に加工することができる。また、研削工具5にかかる加工抵抗が低減するので、砥粒52の脱落や摩耗が低減し、工具寿命が延び、長期に亘って被加工物表面8aを高品位な鏡面に加工することができる。
【0056】
なお、上記実施の形態に基づいて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0057】
即ち、上記実施の形態では、昇降スライダ3により研削工具5を切込方向に移動するようにしたが、これに限定するものではなく、トランケーション部7や被加工物8が切込方向に移動するようにしてもよい。
【0058】
また、上記実施の形態では、移動テーブル6がトランケーション部7や被加工物8を送り方向に移動させる場合について説明したが、これに限定するものではなく、研削工具5(例えば、スピンドル4)が送り方向に移動するようにしてもよい。
【0059】
また、上記実施の形態では、被加工物8の表面8aが水平面である場合について説明したが、これに限定するものではなく、被加工物8の表面8aが傾斜面、湾曲面等、あらゆる形状の面であっても適用可能である。
【0060】
また、上記実施の形態では、砥石71として、ダイヤモンド砥粒を有する場合について説明したが、ダイヤモンド砥粒の代わりに、例えば、鋳鉄やシリコンなどのダイヤモンド砥粒と親和性の高い材料とすることも可能であり、また、砥石71でトランケーションを施す代わりに、放電加工によりトランケーションを施すようにしてもよい。
【0061】
また、上記実施の形態では、仕上げ加工として、被加工物8の表面8aを鏡面加工する場合について説明したが、例えば、被加工物8の表面8aを梨地状に加工する場合についても適用可能であり、その場合も、被加工物表面を高品位な面に仕上げ加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】トランケーション部を装備した研削加工装置を示す概略正面図。
【図2】トランケーション部を装備した研削加工装置の要部を示す概略斜視図。
【図3】研削工具の先端を示す平面図。
【図4】工具本体の先端面に固着した砥粒を示す模式化した説明図。
【図5】トランケーション部を取り外して被加工物に正面研削を施す際の研削加工装置を示す概略正面図。
【図6】トランケーション部を取り外して被加工物に正面研削を施す際の研削加工装置の要部を示す概略斜視図。
【図7】トランケーションを施していない砥粒により被加工物の表面を研削した場合を示す説明図。
【図8】トランケーションを施した砥粒により被加工物の表面を研削した場合を示す説明図。
【図9】研削工具の砥粒により被加工物の表面に鏡面加工を施している動作を示す説明図。
【図10】各研削工具で研削した被加工物の表面を示す図。
【図11】切込み深さに対する被加工物の表面粗さを示す図。
【図12】切込み深さに対する加工抵抗を示す図。
【図13】被加工物の表面粗さに対する加工抵抗を示す図。
【符号の説明】
【0063】
1 研削加工装置
3 昇降スライダ(第1移動手段)
4 スピンドル
5 研削工具
6 移動テーブル(第2移動手段)
7 トランケーション部(トランケーション手段)
8 被加工物
8a 表面
51 工具本体
52 砥粒
52b 平坦部
52c 縁部
71 砥石
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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