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明細書 :電解発光物質を内封するリポソームを用いた迅速高感度アッセイ法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5344450号 (P5344450)
公開番号 特開2009-156691 (P2009-156691A)
登録日 平成25年8月23日(2013.8.23)
発行日 平成25年11月20日(2013.11.20)
公開日 平成21年7月16日(2009.7.16)
発明の名称または考案の名称 電解発光物質を内封するリポソームを用いた迅速高感度アッセイ法
国際特許分類 G01N  33/544       (2006.01)
G01N  21/76        (2006.01)
G01N  27/416       (2006.01)
FI G01N 33/544 A
G01N 21/76
G01N 27/46 U
請求項の数または発明の数 17
全頁数 18
出願番号 特願2007-334525 (P2007-334525)
出願日 平成19年12月26日(2007.12.26)
審査請求日 平成22年12月16日(2010.12.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】507234438
【氏名又は名称】公立大学法人県立広島大学
発明者または考案者 【氏名】江頭 直義
【氏名】三苫 好治
個別代理人の代理人 【識別番号】100081422、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 光雄
【識別番号】100084146、【弁理士】、【氏名又は名称】山崎 宏
【識別番号】100122301、【弁理士】、【氏名又は名称】冨田 憲史
審査官 【審査官】加々美 一恵
参考文献・文献 特開昭63-045563(JP,A)
特開2002-214231(JP,A)
調査した分野 G01N 33/48-33/98
特許請求の範囲 【請求項1】
下記工程:
(i)電解発光物質を内封するリポソームの表面上で被検物質もしくは被検物質の一部とそれに特異的に結合する物質とを反応させ、ここで被検物質もしくは被検物質の一部またはそれに特異的に結合する物質のいずれかがリポソーム表面上に結合されており、次いで、
(ii)該反応が表面上で起こったリポソーム、または該反応が表面上で起こらなかったリポソームに電圧を印加して電解発光強度を測定する
を含み、リポソームの破壊を伴わないことを特徴とする、被検物質のアッセイ方法。
【請求項2】
下記工程:
(a)被検物質もしくは被検物質の一部を表面に有し、電解発光物質を内封するリポソームと、リポソームに結合されていない被検物質とを、固相表面に固定化された被検物質もしくは被検物質の一部と特異的に結合する物質と反応させ、
(c)該固相表面上の被検物質と特異的に結合する物質に結合したリポソームに電圧を印加して電解発光強度を測定する
を含む、被検物質の検出または定量方法であって、リポソームの破壊を行わないことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程(a)と工程(c)との間に、工程(b):
被検物質と特異的に結合する物質が結合したリポソームを、被検物質と特異的に結合する物質が結合していないリポソームから分離する
を含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
工程(a)において固相が電極であり、工程(c)において電極に電圧を印加することによりリポソームに電圧が印加されることを特徴とする、請求項2または3記載の方法。
【請求項5】
電解発光強度の測定を、金作用電極を用いたチップリーダーにて行う請求項4記載の方法。
【請求項6】
下記工程:
(a’)被検物質と特異的に結合する物質を表面に有し、電解発光物質を内封するリポソームを、固相表面に固定化された被検物質もしくは被検物質の一部および固相表面に固定化されていない被検物質と反応させ、
(c’)該固相表面上の被検物質もしくは被検物質の一部に結合したリポソームに電圧を印加して電解発光強度を測定する
を含む、固相表面に固定化されていない被検物質の検出または定量方法であって、リポソームの破壊を行わないことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項7】
工程(a’)と工程(c’)との間に、工程(b’):
固相表面上の被検物質もしくは被検物質の一部に結合したリポソームを、固相表面上の被検物質もしくは被検物質の一部に結合しなかったリポソームから分離する
を含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
工程(a’)において固相が電極であり、工程(c’)において電極に電圧を印加することによりリポソームに電圧が印加されることを特徴とする、請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
電解発光強度の測定を、金作用電極を用いたチップリーダーにて行う請求項8記載の方法。
【請求項10】
下記工程:
(d)被検物質と特異的に結合する物質を表面に有し、電解発光物質を内封するリポソームと、被検物質とを反応させ、
(e)被検物質が結合したリポソームを、被検物質が結合していないリポソームから分離し、次いで、
(f)被検物質が結合したリポソームあるいは結合していないリポソームに電圧を印加して電解発光強度を測定する
を含む、被検物質の検出または定量方法であって、リポソームの破壊を行わないことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項11】
工程(e)が電気泳動、クロマトグラフィーまたは膜分離を用いて行われる、請求項10記載の方法。
【請求項12】
電解発光物質がルテニウム(II)錯体である請求項1ないし11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
ルテニウム(II)錯体がトリス(2,2’-ビピリジン)ルテニウム(II)錯体であって、ピリジン部分がヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基を有する側鎖を1~6個有していてもよいものである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
ルテニウム(II)錯体が、トリス(2,2’-ビピリジン)ルテニウム(II)錯体、ビス(2,2’-ビピリジン)-{4,4’-ビス[フタルイミノブチル]-2,2’-ビピリジン}ルテニウム(II)錯体、ビス(2,2’-ビピリジン)-[4,4’-ビス(4-アミノブチル)-2,2’-ビピリジン]ルテニウム(II)錯体、ビス(2,2’-ビピリジン)-(4-アミノブチル-4’-メチル-2,2’-ビピリジン)ルテニウム(II)錯体、またはビス(2,2’-ビピリジン)-[2,2’-ビス(4-メルカプトブチル)-2,2’-ビピリジン]ルテニウム(II)錯体である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
被検物質と被検物質と特異的に結合する物質との反応が、抗原抗体反応であるか、あるいはリガンドと受容体の反応である、請求項1ないし14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
請求項1ないし15のいずれか1項記載の方法による被検物質の検出または定量に用いられる、請求項12ないし14のいずれか1項記載の電解発光物質を内封したリポソーム試薬であって、電解発光反応に際して破壊する必要のないリポソーム試薬。
【請求項17】
請求項1ないし15のいずれか1項記載の方法による被検物質の検出または定量に用いられる、請求項12ないし14のいずれか1項記載の電解発光物質を内封したリポソーム試薬を必須成分として含むアッセイキットであって、電解発光反応に際してリポソームを破壊しないことを特徴とするアッセイキット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、微量な被検物質の迅速かつ高感度な分析を可能とする、電解発光物質を内封するリポソームを用いたアッセイ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質の分析は迅速高感度分析方法が望まれている。現在、様々な分析方法があるが、抗体または抗原を酵素で標識化したものを用いるELISA法(Enzyme-linked Immunosorbent Assay)が広く使用されている。一般に、ELISA法の感度は概ねタンパク質0.001~0.1μgといわれており、分析ステップとしては被検物質のタンパク質との抗原抗体反応、二次抗体との抗原抗体反応、酵素反応による発色反応の3ステップから構成されており(例えば、特許文献1および2参照)、リポソームによる感度増幅が知られている(非特許文献1参照)。この手法は2つの抗原抗体反応と1つの酵素反応が必要であるため比較的分析時間が長く、ELISA法より更に短時間で簡便な分析方法が望まれている。
【0003】
また、最終ステップとして、発色反応の他に蛍光および化学発光があるが、最近では温和な条件での発光が可能である電解発光法が利用されている。電解発光する化学物質としてトリス(2,2’-ビピリジン)ルテニウム錯体を基本構造とするものが最も多く用いられ、タンパク質のアミノ基と結合できる反応活性な側鎖を有するルテニウム錯体も報告されている(非特許文献2参照)。従来のルテニウム錯体を利用した電解発光によるタンパク質の定量はやはり反応時間が長く、感度も十分ではないという問題がある。
【0004】
さらに、イムノリポソーム内に電解発光物質を内封させたものを利用して、抗原抗体反応した後、該イムノリポソームを破壊し、漏出した電解発光物質を電極上で電解発光することにより高感度を達成している(非特許文献3参照)。しかし、測定操作が多段であり、長時間を要している。また、これまで江頭らによる電解発光とイムノリポソームを組み合わせた手法(特許文献3参照)は、抗原抗体反応の後、イムノリポソームの破壊と破壊によりもれ出たルテニウム錯体の電極への吸着操作を必要としたので長時間を要し、さらに、破壊及び吸着の操作が自動測定の障害となる問題がある。

【特許文献1】特開昭63-502958号公報
【特許文献2】特表2000-509494号公報
【特許文献3】特開平2007-101339号公報
【非特許文献1】Danke Xu, Quan Cheng, J. Am. Chem. Soc., 124, 14314-14315 (2002)
【非特許文献2】Gary F. Blackburn, Haresh P. Shah, John H. Kenten, Jonathan Leland, Ralph A. Kamin, John Link, Jeff Peterman, Michael J. Powell, Arti Shah, David B. Talley, Surendera K. Tyagi, Elizabeth Wilkins, Tai-Guang Wu, and Richard J. Massey, Clin. Chem. 37(9), 1534-1539 (1991)
【非特許文献3】平田 崇、三苫好治、宇田泰三、江頭直義、化学センサ、124, Supplement B,58-60 (2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
被検物質を迅速かつ高感度でアッセイするための方法を開発することが本発明の課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
電解発光物質を内封するリポソームの表面上で被検物質とそれに特異的に結合する物質とを反応させ、次いで、リポソームを破壊することなくリポソームに電圧を印加したところ、十分な発光強度が観測されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)下記工程:
(i)電解発光物質を内封するリポソームの表面上で被検物質もしくは被検物質の一部とそれに特異的に結合する物質とを反応させ、ここで被検物質もしくは被検物質の一部またはそれに特異的に結合する物質のいずれかがリポソーム表面上に結合されており、次いで、
(ii)該反応が表面上で起こったリポソーム、または該反応が表面上で起こらなかったリポソームに電圧を印加して電解発光強度を測定する
を含み、リポソームの破壊を伴わないことを特徴とする、被検物質のアッセイ方法;
(2)下記工程:
(a)被検物質もしくは被検物質の一部を表面に有し、電解発光物質を内封するリポソームと、リポソームに結合されていない被検物質とを、固相表面に固定化された、被検物質もしくは被検物質の一部と特異的に結合する物質と反応させ、
(c)該固相表面上の、被検物質もしくは被検物質の一部と特異的に結合する物質に結合したリポソームに電圧を印加して電解発光強度を測定する
を含む、被検物質の検出または定量方法であって、リポソームの破壊を行わないことを特徴とする、(1)記載の方法;
(3)工程(a)と工程(c)との間に、工程(b):
被検物質と特異的に結合する物質が結合したリポソームを、被検物質と特異的に結合する物質が結合していないリポソームから分離する
を含む、(2)記載の方法;
(4)工程(a)において固相が電極であり、工程(c)において電極に電圧を印加することによりリポソームに電圧が印加されることを特徴とする、(2)または(3)記載の方法;
(5)電解発光強度の測定を、金作用電極を用いたチップリーダーにて行う(4)記載の方法;
(6)下記工程:
(a’)被検物質と特異的に結合する物質を表面に有し、電解発光物質を内封するリポソームを、固相表面に固定化された被検物質もしくは被検物質の一部および固相表面に固定化されていない被検物質と反応させ、
(c’)該固相表面上の被検物質もしくは被検物質の一部に結合したリポソームに電圧を印加して電解発光強度を測定する
を含む、固相表面に固定化されていない被検物質の検出または定量方法であって、リポソームの破壊を行わないことを特徴とする、請求項1記載の方法。
(7)工程(a’)と工程(c’)との間に、工程(b’):
固相表面上の被検物質もしくは被検物質の一部に結合したリポソームを、固相表面上の被検物質もしくは被検物質の一部に結合しなかったリポソームから分離する
を含む、(6)記載の方法;
(8)工程(a’)において固相が電極であり、工程(c’)において電極に電圧を印加することによりリポソームに電圧が印加されることを特徴とする、(6)または(7)記載の方法;
(9)電解発光強度の測定を、金作用電極を用いたチップリーダーにて行う(8)記載の方法;
(10)下記工程:
(d)被検物質と特異的に結合する物質を表面に有し、電解発光物質を内封するリポソームと、被検物質とを反応させ、
(e)被検物質が結合したリポソームを、被検物質が結合していないリポソームから分離し、次いで、
(f)被検物質が結合したリポソームあるいは結合していないリポソームに電圧を印加して電解発光強度を測定する
を含む、被検物質の検出または定量方法であって、リポソームの破壊を行わないことを特徴とする、(1)記載の方法;
(11)工程(e)が電気泳動、クロマトグラフィーまたは膜分離を用いて行われる、(10)記載の方法;
(12)電解発光物質がルテニウム(II)錯体である(1)ないし(11)のいずれかに記載の方法;
(13)ルテニウム(II)錯体がトリス(2,2’-ビピリジン)ルテニウム錯体であって、ピリジン部分がヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基を有する側鎖を1~6個有していてもよいものである、(12)記載の方法;
(14)ルテニウム(II)錯体が、トリス(2,2’-ビピリジン)ルテニウム(II)錯体、ビス(2,2’-ビピリジン)-{4,4’-ビス[フタルイミノブチル]-2,2’-ビピリジン}ルテニウム(II)錯体、ビス(2,2’-ビピリジン)-[4,4’-ビス(4-アミノブチル)-2,2’-ビピリジン]ルテニウム(II)錯体、ビス(2,2’-ビピリジン)-(4-アミノブチル-4’-メチル-2,2’-ビピリジン)ルテニウム(II)錯体、またはビス(2,2’-ビピリジン)-[2,2’-ビス(4-メルカプトブチル)-2,2’-ビピリジン]ルテニウム(II)錯体である、(13)記載の方法;
(15)被検物質と被検物質と特異的に結合する物質との反応が、抗原抗体反応であるか、あるいはリガンドと受容体の反応である、(1)ないし(14)のいずれかに記載の方法;
(16)(1)ないし(15)のいずれかに記載の方法による被検物質の検出または定量に用いられる、(12)ないし(14)のいずれかに記載の電解発光物質を内封したリポソーム試薬であって、電解発光反応に際して破壊する必要のないリポソーム試薬;
(17)(1)ないし(15)のいずれかに記載の方法による被検物質の検出または定量に用いられる、(12)ないし(14)のいずれかに記載の電解発光物質を内封したリポソーム試薬を必須成分として含むアッセイキットであって、電解発光反応に際してリポソームを破壊しないことを特徴とするアッセイキット
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、本発明は、電解発光物質を内封するリポソームの表面上での被検物質とそれに特異的に結合する物質との反応を利用することにより、迅速、高感度かつ高精度で被検物質の検出および定量を行うことができる。しかも本発明においては、リポソームを破壊することなくそのまま電圧を印加するので、操作工程の省略を図ることができ、アッセイの感度および精度が飛躍的に向上する。一般に、本発明の方法によれば、所要時間は約30分~約10時間、タンパク質を被検物質とした場合の感度は約1fg~約1ngが提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、下記工程:
(i)電解発光物質を内封するリポソームの表面上で被検物質もしくは被検物質の一部とそれに特異的に結合する物質とを反応させ、ここで被検物質もしくは被検物質の一部またはそれに特異的に結合する物質のいずれかがリポソーム表面上に結合されており、次いで、
(ii)該反応が表面上で起こったリポソーム、または該反応が表面上で起こらなかったリポソームに電圧を印加して電解発光強度を測定する
を含み、リポソームの破壊を伴わないことを特徴とする、被検物質のアッセイ方法を提供する。
【0010】
本発明で使用するリポソームは特に限定されるものでなく、いずれのリポソームであってもよい。例えば多重層膜リポソーム、一枚膜リポソームのいずれであってもよく、好ましくは一枚膜リポソームである。リポソームは、修飾された不活性または負に帯電したリン脂質、例えば、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール等を使用し、ルテニウム(II)錯体含有液の存在下、常法により調製することができる。
【0011】
本発明においてリポソームに内封される電解発光物質も電圧印加により発光するものであればよく、限定されるものではないが、好ましくは、配位子に複素環系化合物を有する金属錯体、ルブレン、アントラセン、コロネン、ピレン、フルオランテン、クリセン、フェナントレン、ペレリン、ビナフチル、オクタテトラエン、ゲルマニウム粒子、シリコン粒子のいずれかである。リポソームに1種の電解発光物質を内封してもよく、2種以上の電解発光物質を内封してもよい。電解発光物質はリポソームの内水相に含有される。
【0012】
上記の配位子に複素環系化合物を有する金属錯体が配位子にピリジン部位を有する金属錯体であることが好ましい。配位子にピリジン部位を有する金属錯体が、金属ビピリジンまたは金属フェナントロリン錯体であることがさらに好ましい。また、配位子に複素環系化合物を有する金属錯体の中心金属が、ルテニウムまたはオスミウムであることが好ましい。該複素環部分は、以下にピリジン部分に関して説明するように、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基を有する側鎖を1~6個有していてもよい。
【0013】
本発明に使用する電解発光物質として好ましいものの例としてはルテニウム(II)錯体が挙げられる。そのようなルテニウム(II)錯体として、トリス(2,2’-ビピリジン)ルテニウム(II)錯体を基本骨格とするものが挙げられる。これらのルテニウム(II)錯体のピリジン部分はヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基を有する側鎖を1~6個有していてもよい。該側鎖の炭素数が1~6の錯体、特に水溶性が高く取り扱いが容易なアミノブチル基を2個有する錯体が好ましい。これらのルテニウム(II)錯体は、公知であるか、例えば、本明細書の参考例に示す方法により製造することができる。本発明において使用するルテニウム(II)錯体の好ましい具体例としては、トリス(2,2’-ビピリジン)ルテニウム(II)錯体、ビス(2,2’-ビピリジン)-{4,4’-ビス[フタルイミノブチル]-2,2’-ビピリジン}ルテニウム(II)錯体、ビス(2,2’-ビピリジン)-[4,4’-ビス(4-アミノブチル)-2,2’-ビピリジン]ルテニウム(II)錯体、ビス(2,2’-ビピリジン)-(4-アミノブチル-4’-メチル-2,2’-ビピリジン)ルテニウム(II)錯体またはビス(2,2’-ビピリジン)-[2,2’-ビス(4-メルカプトブチル)-2,2’-ビピリジン]ルテニウム(II)錯体が挙げられる。
【0014】
上記の本発明の方法の工程(i)は、電解発光物質を内封するリポソームの表面上で被検物質とそれに特異的に結合する物質とを反応させることである。工程(i)において、被検物質もしくは被検物質の一部またはそれに特異的に結合する物質のいずれかがリポソーム表面上に結合されている。本明細書において「被検物質の一部」とは、被検物質全体ではなくその一部分、例えば、特異的結合反応に関与する部分(抗原決定基、リガンドの一部分、酵素基質の一部分などが例示されるがこれらに限らない)であってもよいことを意味する。この工程は、リポソームの表面に結合された被検物質もしくは被検物質の一部と被検物質に特異的に結合する物質との反応、あるいはリポソームの表面に結合された被検物質に特異的に結合する物質と被検物質との反応により進行する。これらの反応は競合反応であってもよく、競合反応でなくてもよい。本明細書において「反応」という場合には、競合反応および競合反応でない反応の両方を被検物質または被検物質と特異的に結合する物質のリポソーム表面への結合は、これらの物質およびリポソームの特性に応じて当業者が公知の方法で行うことができる。
【0015】
本発明における被検物質とそれに特異的に結合する物質の組合せは特に限定されず、いずれの組合せであってもよい。例えば、酵素と基質、抗原と抗体、受容体とリガンド、アプタマーとその分子、特異的結合性タンパクとその結合分子等の組合せが挙げられる。
【0016】
本発明の方法の第1工程における反応条件は、被検物質とそれに特異的に結合する物質の特性等の因子を考慮して当業者が適宜選択・決定することができる。例えば、該反応が抗原抗体反応に基づくものである場合には、通常、例えば4℃~室温において、5~120分間行うことにより反応が完了する。
【0017】
本発明の方法の工程(ii)は、工程(i)における反応がその表面上で完了したリポソームに電圧を印加して電解発光強度を測定することである。電圧印加前に、上記リポソーム以外の物質(未反応の被検物質、それに特異的に結合する物質、反応副産物、バッファー等)を除去してもよい。電解発光は電解液の存在下でリポソームに正の電圧を印加することにより達成される。電解液の種類は特に限定されないが、リポソームの破壊を招くものは避けるべきである。電解液の例としては、トリエチルアミンなどの第3級アミンあるいはシュウ酸、プロリン等を含む緩衝液が一般的である。電解液の種類、その成分濃度、印加電圧等の電解発光条件は、リポソームに内封される電解反応物質の種類や濃度、リポソームの特性、電解液の種類やその成分濃度などの諸因子に応じて当業者が容易に決定することができる。なお、本明細書において、「電解発光」を「ECL」ということがある。電解発光強度の測定には、電圧印加装置(ポテンシオスタット)と光電子増倍管などによる光検出装置を組み合わせた装置が使用される。電解発光強度の測定の際に、あらかじめ検量線を得ておくことが好ましい。本発明における電解発光強度の測定はいずれの様式で行ってもよいが、後で説明するような電極上にリポソームを結合させる具体例の場合には、通常、金作用電極を用いたチップリーダーで電解発光(ECLということもある)の量または強度を測定することが好ましい。
【0018】
所望により、上記工程(i)と(ii)の間に、該反応が表面上で起こったリポソームと、該反応が表面上で起こらなかったリポソームとを分離する工程を行ってもよい。このような分離は、該反応が起こったリポソームと、該反応が起こらなかったリポソームとの間に物理化学的差異があることを利用して、行うことができる。例えば、荷電状態の相違、重さの相違、サイズの相違などに基づいて、分離を行うことができ、そのための方法も当業者に公知である。例えば、電気泳動、ゲル濾過などのクロマトグラフィー、遠心分離などの方法を用いることができる。
【0019】
本発明の方法の最大の特徴は、リポソームを破壊せずに電圧を印加して電解発光させることによりアッセイを行うことである。リポソームを破壊しないので、操作工程の省略が可能となり、短時間で高感度測定を実現することができる。また、リポソームの破壊による電解発光物質の漏出、リポソーム破壊に伴う不純物や夾雑物の混合がないので、測定誤差も少なくなる。
【0020】
さらに本発明は、本発明のアッセイ方法に用いられるリポソームであって、上記電解発光物質、特にルテニウム(II)錯体を内封したリポソーム試薬を提供する。該リポソーム試薬は電解発光させる際に破壊する必要はない。さらに本発明は、上記電解発光物質、特にルテニウム(II)錯体を内封したリポソーム試薬を必須成分として含むアッセイキットを提供する。本発明のアッセイキットは電解発光反応に際してリポソームを破壊しないことを特徴とする。本発明のキットは上記リポソーム試薬以外にも、被検物質などの条件に応じてアッセイに必要な試薬類、器具類等を適宜含んでいてもよい。本発明のキットに説明書を添付するのが通常であり、その説明書にはリポソームを破壊しないことを記載する。
【0021】
上記の本発明のアッセイ方法の1つの具体例として以下のような方法(方法A)が挙げられる。すなわち、
下記工程:
(a)被検物質もしくは被検物質の一部を表面に有し、電解発光物質を内封するリポソームと、リポソームに結合されていない被検物質とを、固相表面に固定化された被検物質と特異的に結合する物質と反応させ、
(c)該固相表面上の被検物質もしくは被検物質の一部と特異的に結合する物質に結合したリポソームに電圧を印加して電解発光強度を測定する
を含む、被検物質の検出または定量方法であって、リポソームの破壊を行わないことを特徴とする、被検物質のアッセイ方法である。
【0022】
上記方法の工程(a)における反応はいずれの様式で行ってもよい。被検物質と特異的に結合する物質を固相に固定化しておくことが、後の操作の簡略化、アッセイ精度の向上等の点から好ましい。被検物質と特異的に結合する物質を固定化した固相を含む溶液反応系において、被検物質を表面に有し、電解発光物質を内封するリポソームと被検物質とを混合し、固相上の被検物質と特異的に結合する物質に対する反応を行わせることができる。
【0023】
被検物質と特異的に結合する物質の固相への固定化は、当業者に公知の方法により行うことができる。そのような方法として、固相表面上の官能基と目的物質の官能基との間の共有結合、イオン結合、静電気的結合、物理的吸着等を用いる方法が例示される。共有結合を用いる場合には固相表面と目的物質との間に適当なリンカーを設けてもよい。固相の形状はいずれの形状でもよく、特に限定されないが、板状のものが好ましい。
【0024】
上記方法の工程(c)については上述のとおりである。固相を電極とすることにより、リポソームの回収等の操作が不要であり、リポソームを結合させたまま電圧を印加できるので、操作を簡略化することができる。好ましくは、電極は基盤状のものである。電極の材料、サイズ等については、アッセイ規模、使用する電解発光物質の特性、リポソームや結合すべき物質の特性、被検物質の特性などに応じて当業者が適宜選択することができる。電極の材料は導電体であれば特に限定されず、例えば、金、白金、炭素、カーボンペースト、チタン、ニッケル、ITOガラス等が例示される。
【0025】
上記工程(a)と(c)との間に、所望により、工程(b):
被検物質と特異的に結合する物質が結合したリポソームを、被検物質と特異的に結合する物質が結合していないリポソームから分離する
が含まれていてもよい。工程(b)の分離操作は様々な様式にて行うことができる。典型的には、反応後にリポソームが結合した固相を反応系から取り出すことに行われうる。さらに、取り出した固相を水やバッファーなどの適当な流体にて洗浄してもよい。このような操作も、被検物質と特異的に結合する物質を固相に固定化しておくことにより迅速かつ確実に行うことができるものである。
【0026】
以下に、上記方法Aの具体的実施態様として、ルテニウム(II)錯体を内包したリポソームを用い、固相を電極基盤とし、被検物質としてタンパク質(例えば抗体または抗原、あるいは酵素など)、これに特異的に結合する物質として、例えば抗原または抗体、あるいは基質などを用いる場合が挙げられる。
【0027】
上記実施態様では、検体液(被検タンパク質の溶液)または、被検タンパク質を表面に結合させた、ルテニウム(II)錯体を内包したリポソーム含有液を、電極基盤上で、電極基盤に固定した該タンパク質と抗原抗体反応する物質と反応させることにより実施できる。リポソームは、被検タンパク質濃度に依存して電極表面に結合される。電解液を加え、電圧を印加して電解発光させて発光強度を測定し、予め被検タンパク質の標準品を用いて同様な操作により作成した検量線により検体中のタンパク質を定量する。
【0028】
検体(被検タンパク質)は特に限定するものではなく、検体は、特殊な前処理を必要とせず、要すれば、適宜濃縮または蒸留水、各種緩衝液(例えば、リン酸緩衝食塩水(PBS)緩衝液、トリス-塩酸緩衝液等)で分散、溶解、希釈して使用する。被検タンパク質は抗原たるタンパク質でも、抗体たるタンパク質(モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体を含む)でもよい。
【0029】
この実施態様に使用するルテニウム(II)錯体およびリポソームは上で説明したものであってよい。また、電極基盤の材料、被検物質に特異的に結合する物質の電極基盤への固定化も上で説明したとおりであり、当業者が適宜選択し、実施することができる。
【0030】
この実施態様における電極基盤上での被検タンパク質と、被検タンパク質を表面に結合させた、ルテニウム(II)錯体を内包したリポソームとの電極基盤に固定した抗原または抗体に対する反応は、被検タンパク質の種類にもよるが、通常、4℃~室温において、5~120分間行うことにより完了する。
【0031】
電極基盤を洗浄後、トリエチルアミンを含有する緩衝液(例えば、リン酸緩衝食塩水(PBS)緩衝液、トリス-塩酸緩衝液等)のような電解液を添加して、リポソームを破壊することなく電極に電圧を印加し、吸着したルテニウム(II)錯体を電解発光させ、その発光強度を測定し、それに基づいて、別途作成した検量線を用いて被検タンパク質を定量する。
【0032】
この実施態様においては、金作用電極を用いたチップリーダーで電解発光(ECL)強度を測定することが好ましい。例えば、被検物質とそれに特異的に結合する物質との間で抗原抗体反応が行われる場合であれば、この電極基盤上に、被検タンパク質と抗原抗体反応する物質、例えば、被検タンパク質が抗原であれば、それに対する抗体、被検タンパク質が抗体であれば、それに対する抗原を固定化する。この固定化も、固定化すべき物質に応じて自体公知の方法により行うことができる。
【0033】
上記方法(A)の変法として以下に述べる方法(A’)がある。方法(A’)は、
下記工程:
(a’)被検物質と特異的に結合する物質を表面に有し、電解発光物質を内封するリポソームを、固相表面に固定化された被検物質もしくは被検物質の一部および固相表面に固定化されていない被検物質と反応させ、
(c’)該固相表面上の被検物質もしくは被検物質の一部に結合したリポソームに電圧を印加して電解発光強度を測定する
を含む、固相表面に固定化されていない被検物質の検出または定量方法であって、リポソームの破壊を行わないことを特徴とする、被検物質のアッセイ方法である。すなわち、方法(A’)ではリポソーム表面に被検物質と特異的に結合する物質を結合させ、固相表面に被検物質もしくは被検物質の一部を固定化する。それに対し、方法(A)ではリポソーム表面に被検物質もしくは被検物質の一部を結合させ、固相表面に被検物質と特異的に結合する物質を固定化する。方法(A’)の実施に際して、方法(A)についての説明を参照することができる。
【0034】
本発明のアッセイ方法のもう1つの具体例として以下のような方法(方法B)が挙げられる。すなわち、
下記工程:
(d)被検物質と特異的に結合する物質を表面に有し、電解発光物質を内封するリポソームと、被検物質とを反応させ、
(e)被検物質が結合したリポソームを、被検物質が結合していないリポソームから分離し、次いで、
(f)被検物質が結合したリポソームあるいは結合していないリポソームに電圧を印加して電解発光強度を測定する
を含む、被検物質の検出または定量方法であって、リポソームの破壊を行わないことを特徴とする、被検物質のアッセイ方法である。
【0035】
上記方法の工程(d)における被検物質と特異的に結合する物質のリポソーム表面への結合、該リポソームと被検物質との反応は上で説明したとおりである。
【0036】
上記方法の工程(e)における分離操作において、該反応が起こったリポソームと、該反応が起こらなかったリポソームとの間に物理化学的差異があることを利用して、行うことができる。例えば、荷電状態の相違、重さの相違、サイズの相違などに基づいて、分離を行うことができ、そのための方法も当業者に公知である。例えば、電気泳動、ゲル濾過などのクロマトグラフィー、遠心分離などの方法を用いることができる。かかる分離操作は、例えば、電気泳動、クロマトグラフィー、膜分離などの方法を用いて行うことができる。アッセイの迅速化、操作の簡素化・迅速化の観点から、分離操作をフロー形式とすることも好ましい。フロー形式の分離操作の例としては、キャピラリー電気泳動、ゲルクロマトグラフィー、膜分離、イムノクロマトグラフィーなどが挙げられる。
【0037】
上記方法の工程(f)は、分離後のリポソームに電圧を印加して電解発光強度を測定する工程である。すなわち、被検物質が結合したリポソームあるいは結合していないリポソームに電圧を印加して電解発光強度を測定する。被検物質が結合したリポソームおよび結合していないリポソームの両方について電解発光強度を測定してもよい。この工程における電解発光強度の測定については上で説明したとおりである。
【0038】
上記方法Bの具体的実施態様としては、ルテニウム(II)錯体を内包したリポソームを用い、被検物質としてタンパク質(例えば抗体または抗原、あるいは酵素など)、これに特異的に結合する物質として、例えば抗原または抗体、あるいは基質などを用い、リポソームの分離手段としてキャピラリー電気泳動を用いる場合が挙げられる。
【0039】
この実施態様において、例えば、抗体(または抗原)を表面に結合させた、ルテニウム(II)錯体を内包したリポソーム含有液を、抗原抗体反応する抗原(または抗体)と反応させる。被検抗原(あるいは抗体)濃度に依存してリポソーム表面での結合が起こる。この溶液をそのままあるいは電解液を加えた後、キャピラリー電気泳動に供する。被検抗原が結合しているリポソームと結合していないものに分離する。検出部位では電圧を印加してリポソーム内のルテニウム(II)錯体を電解発光させて発光強度を測定し、予め被検抗原の標準品を用いて同様な操作により作成した検量線により検体中の抗原を定量する。この実施態様におけるルテニウム(II)錯体、リポソーム等は上で説明したとおりであってよい。
【0040】
この実施態様において、被検抗原(あるいは抗体)は特に限定するものではなく、検体は、特殊な前処理を必要とせず、要すれば、適宜濃縮または蒸留水、各種緩衝液[例、リン酸緩衝食塩水(PBS)緩衝液、トリス-塩酸緩衝液等]で分散、溶解、希釈して使用する。被検タンパク質は抗原たるタンパク質でも、抗体たるタンパク質(モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体を含む)でもよい。
【0041】
この実施態様におけるリポソームの分離は、通常、フロー形式での分離を必要とするが、該分離方法としてキャピラリー電気泳動、ゲルクロマトグラフィー、膜分離、イムノクロマトグラフィーなどが例示される。
【0042】
以下に参考例および実施例を示して本発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが、実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
参考例、実施例中で使用する略号は以下の意味を有する。
BSA:ウシ血清アルブミン
PBSまたはPB:リン酸緩衝食塩水
DPPE:ホスファチジルエタノールアミンジパルミトイル
DPPC:ホスファチジルコリンジパルミトイル
SPDP:N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート
DTP-DPPE:N-3-(2-ジチオピリジル)プロピオニル ジパルミトイル
ホスファチジルエタノールアミン
DTT:ジチオソレイトール
WSC:水溶性カルボジイミド
NHS:N-ヒドロキシスクシンイミド
DMF:ジメチルホルムアミド
TLC:薄層クロマトグラフィー
PB:リン酸緩衝液
【参考例1】
【0043】
4,4’-ビス〔(フタルイミノブチル)-2,2’-ビピリジンの合成
【化1】
JP0005344450B2_000002t.gif
反応装置内を窒素置換し、加熱乾燥した後に4,4’-ビス(4-ブロモブチル)-2,2’-ビピリジン1.94g(4.54×10-3mol)、フタルイミドカリウム1.85g(1.00×10-2mol)を入れ、上記反応式に従って反応させた。窒素置換したシリンジを用いてDMF(脱水)を20mL測り取り、注入した(黄色溶液)。160~170℃で加熱還流し、TLCで反応を追跡した。
【参考例2】
【0044】
5時間後に反応を終了した(濃茶色溶液)。反応溶液をクロロホルムと飽和食塩水から抽出した後、クロロホルム層に0.2Mの水酸化ナトリウム水溶液50mLを加えて抽出する操作を2回行った。蒸留水で3~4回洗浄した後、硫酸ナトリウムを加えてかく拌し、自然ろ過をした。エバポレーターでクロロホルムを留去し、得られた黄土色物質をクロロホルムとジエチルエーテルを用いて再結晶した後、真空乾燥(60℃、3時間)し、黄土色針状結晶の式:
【化2】
JP0005344450B2_000003t.gif
で表される標記化合物を得た。収量:1.85g、収率:72.55%、融点:212.6~215.7℃
【参考例3】
【0045】
ビス(2,2’-ビピリジン)-{4,4’-ビス〔フタルイミノブチル-2,2’-ビピリジン}ルテニウム(II)錯体の合成
【化3】
JP0005344450B2_000004t.gif
反応装置を加熱乾燥、窒素置換させた後に、参考例1で得られた4,4’-ビス〔フタルイミノブチル〕-2,2’-ビピリジン503.40mg(8.99×10-4mol)を入れた。窒素置換したシリンジを用いてエタノール80mLを注入した。120~130℃で加熱還流して4,4’-ビス〔(フタルイミノブチル〕-2,2’-ビピリジンを溶解させた後、室温まで冷却してビス(2,2’ビピリジン)ルテニウム(II)錯体480.90mg(9.93×10-4mol)を加えて120~130℃で加熱還流し(黒色溶液)、上記式に従って反応させた。
【0046】
TLCで反応を追跡し、5時間後に反応を終了した(深赤色溶液)。エタノールをエバポレーターで留去し、蒸留水を150mL加えて自然ろ過した(深赤色溶液)。ろ液に1.0M過塩素酸溶液を加え、かく拌した。得られた橙色沈殿物を吸引ろ過により採取した後、メタノールとテトラヒドロフランを用いて再結晶し、真空乾燥(45℃、5時間)し、赤色針状結晶の式:
【化4】
JP0005344450B2_000005t.gif
で表される標記化合物を得た。収量:887.90mg、収率:84.56%
【0047】
表1に標記化合物の1H-NMRの帰属を示す。
【表1】
JP0005344450B2_000006t.gif
【0048】
ビス(2,2’-ビピリジン)-[4,4’-ビス(4-アミノブチル)-2,2’-ビピリジン]ルテニウム(II)錯体の合成
【化5】
JP0005344450B2_000007t.gif
反応装置に、参考例2で得られたビス(2,2’-ビピリジン)-{4,4’-ビス〔(フタルイミノブチル〕-2,2’-ビピリジン}ルテニウム(II)錯体703.70mg(6.00×10-4mol)、ヒドラジン一水和物120mL(2.40×10-3mol)を入れた。シリンジを用いてメタノール30mLを注入した。100~110℃で加熱還流し、上記式に従って反応させ、TLCで反応を追跡した。
【0049】
6時間加熱還流した後、室温まで冷却した。蒸留水15mLを加え、メタノールをエバポレーターで留去した。反応液(赤褐色溶液)に濃塩酸1.1mL(3.58×10-2mol)を加えた。3時間加熱還流した後、室温まで冷却し、氷中で一晩冷却した。析出した白色沈殿物を自然ろ過により除去し、ろ液(赤褐色溶液)の塩酸を炭酸水素ナトリウムで気泡が出なくなるまで中和した後、2Mの水酸化ナトリウム溶液でpH11に調整し、氷中で一晩冷却した。析出した褐色物質を自然ろ過により除去し、ろ液(赤褐色溶液)の水をエバポレーターで留去した。アセトニトリルを加え、析出した褐色物質を吸引ろ過して除去し、エバポレーターでアセトニトリルを留去した。得られた粗生成物を少量のアセトニトリルに溶解し、シリカゲルを充填したカラム(φ1.5×10cm)2本を用いて、アセトニトリル:蒸留水:飽和硝酸カリウム水溶液=45:4:1で展開した。採取したフラクション(各10mL)をTLC(アセトニトリル:蒸留水:飽和硝酸カリウム水溶液=10:4:1)で分析し、生成物が確認されたフラクションを濃縮した。これをアセトニトリルに溶解し、吸引ろ過により硝酸カリウム、シリカゲルを除去した。エバポレーターを用いてアセトニトリルを留去し、残渣をアセトンに溶解し、吸引ろ過により除去しきれなかったシリカゲルを除いた。エバポレーターを用いてアセトンを留去し、真空乾燥(50℃、15時間)を行い、式:
【化6】
JP0005344450B2_000008t.gif
で表される標記化合物を得た。収量:280.20mg、収率:49.48%
【0050】
表2にビス(2,2’-ビピリジン)-[4,4’-ビス(4-アミノブチル)-2,2’-ビピリジン]ルテニウム(II)錯体のH-NMRの帰属を示す。
【表2】
JP0005344450B2_000009t.gif

【実施例1】
【0051】
実施例1:リポソーム調製と測定操作からなるヘマグルチニン抗原ペプチド測定
この実施例は上記方法Aに関するものである。
【0052】
リポソームの調製
(1)DPPEの活性化(DTP-DPPE調製)
10μmolのDPPE(6.9mg/700μL(CHCl:CHOH=9:1))と12μmolのSPDP(3.7mg/300μL(CHOH))さらに300μmolのトリエチルアミン(2.8μL/200μL(CHCl))を加え、室温で2時間かく拌しながら反応させた。ついで、PB(0.1M、pH7.4)を2mL加え、かく拌後、振とうすると2層に分かれるので、その水層を除去した。この操作を3回繰り返した後、得られた下層(クロロホルム層)をN気流下でエバポレートし溶媒を留去した。得られた活性型のDTP-DPPEを濃度が4mMになるようにクロロホルム:メタノール=9:1溶液で溶解した。
(2)DTP-DPPEを含むリポソームの調製
DPPC10μmol、コレステロール5μmol、DTP-DPPE 0.15μmolから脂質フィルムを形成し、参考例3に示す方法により合成したビス(2,2’-ビピリジン)-[4,4’-ビス(4-アミノブチル)-2,2’-ビピリジン]ルテニウム(II)錯体(5mM)を含む1mL PBを加え水和し、多重層リポソームを得た。超音波を10分間照射し、さらに遠心によりチタンを取り除いた後、ゲルろ過クロマトグラフィーし、リポソームを得た。
(3)抗体の活性化
1mg(5.2x10-9mol)/1mL(PB)のヘマグルチニン抗体に、1.3μL(2.6x10-8mol)の20mMSPDP架橋剤を加え(mol比でSPDP:ヘマグルチニン抗体=5:1)、室温で30分間インキュベートした。この反応溶液を3日間4℃で透析した(再生セルロース分画分子量:1000ダルトン)。透析外液は酢酸緩衝生理食塩水(pH4.5)を用いた。ついで、50mM DTT500μLとSPDP修飾抗体1mLを混ぜ、室温30分間インキュベートし、SPDP部位を還元する。ゲルろ過クロマトグラフィー(セファデックスG-25)により、PB(pH7.4)で溶出し、活性化抗体を得た。
(4)活性部位をもつリポソームと活性化ヘマグルチニン抗体の結合
PB(pH7.4)溶液中、リポソーム(DTP-DPPEとして5x10-5M)と活性化ヘマグルチニン抗体(200μg/mL=1.3x10-6M)を窒素雰囲気下、室温で24時間反応させた。ついで、ゲルろ過クロマトグラフィー(セファロース4B)により、PB(pH7.4)で溶出して遊離した抗体を除去し、ヘマグルチニン抗体結合リポソームを得た。
【0053】
測定操作
(1)電極をピラニヤ洗浄(HSO:H=3:1、1分)の溶液を4μL、作用電極上に滴下し、蒸留水で洗浄し、風乾した。
(2)ジチオジブタン酸(DTBA)71.5mg(2.52×10-4mol)/30mL EtOH溶液を調製し、電極を7mLの溶液中(シャーレ中)に浸して12時間室温で緩やかにかく拌した(SAMの形成)。反応後、EtOHで洗浄した。
(3)WSC 50mg(2.61×10-4mol)、NHS 30mg(2.61×10-4mol)/10mL PB溶液を調製し、電極を10mLの溶液中(シャーレ中)に浸して1時間室温で緩やかにかく拌した(カルボキシル基の活性化)。反応後、PB溶液で洗浄した。
(4)抗原ペプチド1mg(4.74×10-7mol)/100mL PBS溶液を調製し、電極を10mL溶液に浸して4℃、15時間緩やかにかく拌する(抗原の固定化)。反応後、PB溶液で洗浄した。
(5)2-アミノエタノール61.0mg(1.0×10-3mol)/10mL PB溶液を調製し、電極を10mL溶液に浸して4℃、1時間緩やかにかく拌した(ブロッキング)。反応後、常温に戻して0.02%Tween20含有PB溶液で洗浄した。
(6)電極を風乾し、測定部位以外をシリコンシートで覆った。電極のウェルに種々の濃度の抗原ペプチド溶液(50μL)を入れ、次にリポソーム溶液10μLを入れて室温で1時間競合反応した。
(7)電極ウェルの溶液を取り除き、PB溶液で洗浄後、0.1M電解質溶液(0.1M TEA+0.1M PBS)60μLを入れECL測定した。印加電圧は+1.3V(vs.金電極)であった。
(8)図1の結果が得られた。被検試料中の抗原ペプチド濃度と電解発光強度との間に負の相関関係が認められ、この系を用いて、被検試料中の抗原ペプチド量をfg~pgオーダーで測定できることがわかった。
【実施例2】
【0054】
実施例2:ヘマグルチニンタンパクの分析例
この実施例は上記方法Aに関するものである。上記と同じリポソーム調製操作を行い、測定操作では上記測定操作(4)の一部が異なる((4’))。
(4’)ヘマグルチニンタンパク溶液(16.8μg/mL)を50μLずつ作用極に滴下し、4℃、15時間緩やかにかく拌した(抗原の固定化)。反応後、PB溶液で洗浄した。
その後の測定操作は同じあり、図2に示す結果が得られた。被検試料中のヘマグルチニンタンパク濃度と電解発光強度との間に負の相関関係が認められ、この系においても、被検試料中のヘマグルチニンタンパク量をfg~pgオーダーで測定できることがわかった。
【実施例3】
【0055】
実施例3:ヘマグルチニンタンパクの分析例
この実施例は上記方法Bに関するものである。
(1)上記と同じリポソーム調製操作を行った。
(2)マイクロチューブ内に各種濃度のヘマグルチニン溶液50μLとリポソーム溶液10μLを加え、30℃1時間インキュベートした。
(3)トリス-塩酸(pH7~9)緩衝溶液を移動相としたキャピラリー電気泳動装置(フューズドシリカ 75μmx60cm、12kV)に(2)の溶液を注入した。
(4)電気泳動により分離したリポソームの各成分を白金電極上で酸化(1.2V vs. Ag/AgCl)し、電解発光を測定した。
(5)タンパクとの未結合リポソームあるいはタンパク結合リポソームの発光強度を利用してタンパクHA2の検量線を得た(図3)。なお縦軸は、すべてのリポソームに起因する発光シグナルのピーク面積に対するHA2未結合リポソームのピーク面積の割合(%)である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、タンパク質などの被検物質の迅速かつ高感度なアッセイを可能とするものであり、生化学、医学、薬学等の分野で利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は実施例1で得られた被検試料中の抗原ペプチド量の測定結果である。
【図2】図2は実施例2で得られた被検試料中のヘマグルチニンタンパク量の測定結果である。
【図3】図3は実施例3で得られた被検試料中のヘマグルチニンタンパク量の測定結果である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2