TOP > 国内特許検索 > 核酸切断剤 > 明細書

明細書 :核酸切断剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公表番号 特表2009-528816 (P2009-528816A)
公報種別 特許公報(B2)
公表日 平成21年8月13日(2009.8.13)
特許番号 特許第5156953号 (P5156953)
登録日 平成24年12月21日(2012.12.21)
発行日 平成25年3月6日(2013.3.6)
発明の名称または考案の名称 核酸切断剤
国際特許分類 C07K  19/00        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C12N   1/15        (2006.01)
C12N   1/19        (2006.01)
C12N   1/21        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
C12P  21/02        (2006.01)
FI C07K 19/00 ZNA
C12N 15/00 A
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/00 101
C12P 21/02 C
請求項の数または発明の数 19
全頁数 17
出願番号 特願2008-542543 (P2008-542543)
出願日 平成19年3月7日(2007.3.7)
国際出願番号 PCT/JP2007/055016
国際公開番号 WO2007/102618
国際公開日 平成19年9月13日(2007.9.13)
優先権出願番号 2006063061
優先日 平成18年3月8日(2006.3.8)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成22年2月15日(2010.2.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】世良 貴史
個別代理人の代理人 【識別番号】110000109、【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
審査官 【審査官】神谷 昌男
参考文献・文献 特表2004-519211(JP,A)
Biochemistry,2002年,41,p.7074-81
Biochemical and Biophysical Research Communications,2005年,330(1),p.247-52
Accounts of Chemical Research,2006年,39(1),p.45-52
調査した分野 C12N15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
核酸中の標的切断部位を特異的に切断可能な核酸切断剤であって、(1)核酸切断部、及び(2)該核酸切断部に結合した少なくとも2個のジンクフィンガータンパク質を含み、該ジンクフィンガータンパク質のうち少なくとも1個のジンクフィンガータンパク質が標的切断部位の上流に位置する塩基配列に対して特異的に結合することができ、残りのジンクフィンガータンパク質のうち少なくとも1個のジンクフィンガータンパク質が標的切断部位の下流に位置する塩基配列に対して特異的に結合することができ、かつ上記の各ジンクフィンガータンパク質が該核酸切断部に独立にペプチドリンカーを介して結合しており、上記ペプチドリンカーが独立に5個~50個のアミノ酸残基を含むオリゴペプチドリンカーである核酸切断剤。
【請求項2】
2個のジンクフィンガータンパク質が該核酸切断部に結合した請求項1に記載の核酸切断剤。
【請求項3】
上記の2個のジンクフィンガータンパク質に含まれるジンクフィンガードメインの総数が4~8個である請求項2に記載の核酸切断剤。
【請求項4】
それぞれのジンクフィンガータンパク質に含まれるジンクフィンガードメインが4個以下である請求項2に記載の核酸切断剤。
【請求項5】
それぞれのジンクフィンガータンパク質に含まれるジンクフィンガードメインが3個である請求項2に記載の核酸切断剤。
【請求項6】
核酸がDNA又はRNAである請求項1ないし5のいずれか1項に記載の核酸切断剤。
【請求項7】
核酸切断部が核酸切断酵素若しくはその核酸切断ドメイン、核酸切断活性を有する金属錯体、又は金属の配位により核酸切断活性を有する有機配位子である請求項1ないし6のいずれか1項に記載の核酸切断剤。
【請求項8】
核酸切断部がスタフィロコッカルヌクレアーゼ(SNase)、その核酸切断ドメイン、又は核酸切断活性を有するスタフィロコッカルヌクレアーゼ改変タンパク質である請求項1ないし7のいずれか1項に記載の核酸切断剤。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の核酸切断剤をコードする核酸配列を含む単離された核酸。
【請求項10】
核酸がDNA又はRNAである請求項9に記載の核酸。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の核酸を含む組換え発現ベクター。
【請求項12】
請求項11に記載の組換え発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項13】
核酸切断剤の製造方法であって、(a)該切断剤を発現する時間及び条件下で請求項12に記載の宿主細胞を培養する工程、及び(b)該切断剤を回収する工程を含む方法。
【請求項14】
核酸を部位特異的に切断する方法であって、(a)標的切断部位を有する核酸と、該部位に特異的な請求項1ないし8のいずれか1項に記載の核酸切断剤とを該部位の切断する時間及び条件下で反応させる工程を含む方法。
【請求項15】
上記切断が触媒的に進行する請求項14に記載の方法。
【請求項16】
外標的切断部位がゲノムDNA上の唯一の部位である請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
所望のDNA領域を置き換えるための細胞内インビボ相同組換え方法であって、(a)該領域内又は近傍に標的切断部位を有するDNAと、該部位に特異的な請求項1ないし8のいずれか1項に記載の核酸切断剤とを該部位においてDNAに切れ込みを導入する時間及び条件下で反応させる工程;(b)該部位又はその周囲における該領域と相同な配列を含むDNAフラグメントを該細胞内に導入する工程;及び(c)相同組換えを達成する工程を含む方法(ただしヒト生体内において細胞内インビボ相同組換えを行う場合を除く)
【請求項18】
該DNAフラグメントの導入前に該核酸切断剤が該細胞内に存在する請求項17に記載の方法。
【請求項19】
該核酸切断剤及び該DNAフラグメントが同時に該細胞内に導入される請求項17に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は核酸切断剤に関する。より具体的には、ゲノム上の特定の塩基配列を認識して部位特異的にゲノムを切断することができる核酸切断剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
制限酵素の発見により組換えDNA工学による遺伝子クローニングが可能になった。遺伝子工学は様々な産業や研究のめざましい発展をもたらしている。特定塩基配列を選択的に切断できる種々の制限酵素が知られている。これらの酵素は遺伝子工学に不可欠なツールであり遺伝子構造などの解析に広く用いられている。
【0003】
従来、制限酵素としては天然由来の制限酵素のみが用いられているが、天然由来の制限酵素を用いた遺伝子組み換え操作はプラスミドのように小さなDNAを対象とするものに限定されている。しかしながら、多くのDNAはプラスミドよりもはるかに巨大であり、従来入手可能な制限酵素を用いて処理を行うと極めて多数の箇所で切断されてフラグメント化してしまい、目的の遺伝子組み換え操作ができなくなる。この理由から、巨大なDNAを自在に操作する手段の提供が求めれている。とりわけ、巨大DNA分子中の特定塩基配列を選択的に切断することができる制限酵素の提供が求められている。
【0004】
例えば、特開2005-143484号公報には、2本のペプチド核酸(PNA)をDNAに侵入させてDNA中の所望の位置のリン酸ジエステル結合を活性化し、その後、Ce(IV)/EDTA錯体を加えて活性部位(ホット・スポット)選択的に核酸を切断する方法が開示されている。この方法では、ホット・スポットの形成に用いるPNAの配列や長さに制限がないことから、いかなる大きさのDNAも所望の部位で正確に切断できるとされる。しかしながら、細胞内で所望の切断を行った実例は示されていない。
【0005】
ジンクフィンガータンパク質(Zinc-Finger-Protein: ZEP)などのDNA結合タンパク質に核酸切断活性を有する酵素や酵素活性部位を結合した融合タンパク質が知られている。例えば、キムらはジンクフィンガータンパク質を制限酵素FokIの触媒活性部位に結合した融合タンパク質を提案している(Kim, Y., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93, pp.1156-1160, 1996)。ビビコヴァらはキメラ・ジンクフィンガー・ヌクレアーゼ(ZFN)を用いたカエル、ショウジョウバエ、及びヒト細胞の相同組換えを報告している(Bibikova M., et al., Science, 300, p.764, 2003)。ZFNでは、ジンクフィンガードメインを異なる特異性を有する他のドメインと交換することにより異なる標的部位を切断するようにできる。理想的には、このヌクレアーゼはゲノム上の任意の配列を標的として設計することができる(Nature Methods 2, 405 (2005), doi:10.1038/nmeth0605-405)。
【0006】
もっとも、このZFNを用いて核酸を切断するためには2分子のZFNが協調して作用することが必要である。すなわち、2分子のZFNがDNA上の所望の部位の両側に結合して2本鎖DNAに切り込みが入ると、その後、染色体とドナーDNA分子との間で相同組換えが生じて所望の塩基配列に置き換わる。それゆえ、例えばDNA鎖の長い領域を除去して遺伝子治療を行う場合などは、2箇所の切断部位のそれぞれについて2分子ずつのZFNを用いて相同組換えを行わなければならないという問題がある。このZFN分子はジンクフィンガータンパク質(3、4、又は6個のジンクフィンガードメインを有するジンクフィンガータンパク質を含む)の末端に酵素切断部位を結合した構造を有している。この分子は核酸を切断した後にも標的部位に対する親和性が低下せず、核酸に結合したまま残る。従って、結合に続く切断とその後の解離及び再結合のサイクルを繰り返して切断作用を触媒的に発揮することができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、巨大なDNAやRNA分子に存在する所望の切断部位に対して特異的な切断活性を有する核酸切断剤を提供することにある。より具体的には、1分子が単独で所望の切断部位を有効に切断することができ、触媒的に作用可能で上記のZFNの問題を回避する核酸切断剤を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記の目的を達成すべく、少なくとも2個の独立したジンクフィンガータンパク質(例えば、それぞれ3ジンクフィンガーを有するジンクフィンガータンパク質)を核酸切断部に結合させ、少なくとも1個のジンクフィンガータンパク質が標的切断部位の上流に結合し、残りのジンクフィンガータンパク質のうちの少なくとも1個が標的切断部位の下流に結合するような核酸切断剤を設計した。この核酸切断剤では、核酸切断前には少なくとも2個のジンクフィンガータンパク質により(例えばそれぞれ3個のジンクフィンガードメインを含む2つのジンクフィンガータンパク質により、すなわち合計6個のジンクフィンガーにより)強固に核酸に結合する。核酸切断後には、2つに分かれた核酸(切断されたフラグメント)の1つずつに各ジンクフィンガータンパク質が結合する。この形だと切断剤の核酸に対する親和性が切断前よりも大幅に低下することになり、切断後の核酸から切断剤が容易に解離する。本発明者らは、本発明の核酸切断剤を切断剤に対して大過剰の核酸を用いた核酸切断反応に使用することにより、ジンクフィンガータンパク質の末端に核酸切断部を結合したZFNなどの融合タンパク質よりも同一条件下においてより効率的に核酸を切断することができた。反応機構に拘泥するわけではないが、本発明における高い核酸切断活性は、本発明の核酸切断剤による核酸切断活性の繰り返しターンオーバーによるものと思われる。
【0009】
すなわち、本発明により、核酸に存在する標的切断部位を特異的に切断可能な核酸切断剤であって、(1)核酸切断部、及び(2)該核酸切断部に結合した少なくとも2個のジンクフィンガータンパク質を含み、該ジンクフィンガータンパク質のうち少なくとも1個のジンクフィンガータンパク質が標的切断部位の上流に位置する塩基配列に対して特異的に結合することができ、残りのジンクフィンガータンパク質のうち少なくとも1個のジンクフィンガータンパク質が標的切断部位の下流に位置する塩基配列に対して特異的に結合することができる核酸切断剤が提供される。
【0010】
上記発明の好ましい態様では、上記の核酸切断剤は核酸切断部に結合したジンクフィンガータンパク質を2個有する。好ましい態様の一つでは、上記の2個のジンクフィンガータンパク質に含まれるジンクフィンガードメインの総数が4~8ドメイン、好ましくは5~7ドメインである。他の好ましい態様では、本発明の核酸切断剤はそれぞれ4個以下のジンクフィンガードメインを有する2個のジンクフィンガータンパク質を有しており、さらに好ましくは、各ジンクフィンガータンパク質は3個のジンクフィンガードメインを有する。
【0011】
別の好ましい態様によれば、本発明の核酸切断剤はリンカーにより核酸切断部に結合したジンクフィンガータンパク質を含む。2個のジンクフィンガータンパク質を有する態様では、上記の核酸切断剤はそれぞれペプチドリンカーにより核酸切断部に結合した2個のジンクフィンガータンパク質を有する。各ペプチドリンカーはそれぞれ独立に5個~50個のアミノ酸残基を含む独立のオリゴペプチドリンカーである。さらに他の好ましい態様では、上記の核酸切断剤は、核酸切断酵素若しくはその核酸切断ドメイン、又は核酸切断活性を有する金属錯体である核酸切断部位を有する。他の好ましい態様では、上記核酸切断剤の核酸切断部位がスタフィロコッカル・ヌクレアーゼ(SNase)又はその核酸切断ドメインである。上記核酸切断剤の好ましい標的はDNAであり、ゲノムDNA、染色体DNA、及び巨大ウイルスDNAを含む。
【0012】
本発明の別の観点からは、本発明の核酸切断剤をコードする核酸、組換えベクター、特に上記核酸を含む発現ベクター、本発明の組換え発現ベクターを含む宿主細胞、及び上記宿主細胞を上記切断剤を発現する時間及び条件で培養し上記核酸切断剤を回収する上記核酸切断剤の製造方法が提供される。上記核酸及び組換えベクターはDNA又はRNAであってもよく、好ましくは上記組換えベクターは哺乳類動物において上記核酸切断剤を発現できる。
【0013】
本発明のさらに別の観点は、標的切断部位を有する核酸をこの所望の標的切断部位に対して特異的な本発明の核酸切断剤を該部位の切断に要する時間及び条件で反応させて部位特異的に核酸を切断する方法に関する。この反応は、好ましくは触媒的に進行する。ある態様によれば、該標的切断部位はゲノムDNA又は他の巨大DNA若しくはRNA上の唯一の部位である。
【0014】
本発明の他の観点は、本発明の核酸切断剤をDNAフラグメントを置き換えるため及び抗ウイルス剤として相同組換えのために使用する方法に関する。例えば、所望のDNA領域を置き換える細胞中インビボ相同組換えの一つの方法は、この領域又はその近傍に標的切断部位を有するDNAに対して、該DNAの所望部位に切れ目を導入し該部位又はその周囲の領域に相同な配列を含むDNAフラグメントを該細胞に導入して相同組換えを起こすために必要な時間及び条件下で所望の標的切断部位に特異的な本発明の核酸切断剤を反応させることにより達成される。上記核酸切断剤は該DNAフラグメントの導入に先立って又は同時に細胞内に導入することができる。同様にその細胞において該切断剤がすでにコードされていてもよい。
【0015】
抗ウイルス剤として用いる場合には、本発明の核酸切断剤はウイルス核酸上の標的切断部位に特異性を有しており、タンパク質、核酸又は組換え発現ベクターとして導入することができる。この抗ウイルス剤は所望により薬学的に許容される担体と混合することもできる。従って、本発明により、治療を必要とする患者に対してその患者の体内でウイルス核酸を切断するのに要する時間及び量の本発明の抗ウイルス剤を投与するウイルス疾患の治療方法が提供される。ウイルス量を減じると症状及び/又は疾患の全経過が改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の核酸切断剤は、核酸中の標的切断部位、好ましくは巨大DNA又はRNA中の唯一の部位を特異的に切断可能である。本発明の核酸切断剤は、(1)核酸切断部、及び(2)該核酸切断部に結合した少なくとも2個のジンクフィンガータンパク質を含み、該ジンクフィンガータンパク質のうち少なくとも1個が標的切断部位の上流に位置する塩基配列に対して特異的に結合することができ、かつ残りのジンクフィンガータンパク質のうち少なくとも1個が標的切断部位の下流に位置する塩基配列に対して特異的に結合することができる。
【0017】
本発明の核酸切断剤の好ましい態様の一例を図1に示す。この好ましい態様においては、標的核酸はDNAであり、DNA切断部には2個の独立したジンクフィンガータンパク質が結合している。以下、この好ましい態様に従って本発明を具体的に説明するが、本発明はこの好ましい態様に限定されることはない。
【0018】
図1中、中央の楕円は核酸切断部を示しており、その好ましい態様としてSNaseを示している。その核酸切断部に2つの独立したジンクフィンガータンパク質(それぞれ3つずつのジンクフィンガードメインを有する)が結合しており、それらのうちの1つが標的切断部位の上流のDNA配列に特異的に結合しており(このジンクフィンガータンパク質の上記DNAに対する結合定数をK1とする)、他方が標的切断部位の下流のDNA配列に特異的に結合している(このジンクフィンガータンパク質の上記DNAに対する結合定数をK2とする)。この核酸切断剤の上記DNAに対する結合定数はK1×K2となる。この核酸切断剤は6個のジンクフィンガードメインにより上記DNAに強固に結合する。
【0019】
上記核酸切断剤の核酸切断部により標的切断部位が切断されると、上記のDNAは2つの切断生成物に分かれるが、それぞれの切断生成物には1個のジンクフィンガータンパク質が結合する。これらの切断生成物に対してジンクフィンガータンパク質の結合定数はK1又はK2であり、核酸切断剤の上記未切断DNAに対する結合定数(K1×K2)に比べてはるかに小さいので、それぞれのジンクフィンガータンパク質は各切断生成物から解離する。このようにして2個の未結合切断生成物がフリーの核酸切断剤(すなわち切断生成物に結合していない切断剤)とともに生成する。このフリーの核酸切断剤は再び標的核酸に結合して上記説明と同一のプロセスで標的核酸を切断することができる。この結合-切断-解離サイクルは触媒のように継続される。
【0020】
本発明の核酸切断剤の標的核酸としてはDNA又はRNAを挙げることができ、好ましくはDNAを標的核酸とすることができる。本発明の核酸切断剤は巨大DNA(又はRNA分子)上の唯一の部位を標的として設計できるので、巨大DNA、例えばゲノムDNA、コスミド、染色体DNA、及び巨大ウイルスDNAを単一部位で切断できる。
【0021】
核酸切断部は核酸切断活性を有する物質が選択される限りその種類は限定されず、DNA切断酵素やRNA切断酵素などの核酸切断酵素、あるいは核酸切断活性を有する金属錯体や金属が配位することにより核酸切断活性を発揮する有機配位子など、核酸切断活性を有する物質であればいかなるものを用いてもよい。例えば、核酸切断酵素の全体又は該酵素の全長の一部である核酸切断ドメインを用いることができる。天然型の核酸切断酵素、例えば制限酵素やSNaseなどのほか、遺伝子工学的手法や他の手法により改変された核酸切断酵素を用いてもよい。核酸切断酵素中の核酸切断ドメインは常法により当業者が容易に特定することができ、遺伝子工学的な手法により容易に入手することが可能である。核酸切断酵素としては、例えば、DNA及びRNAに対して切断活性を有するスタフィロコッカルヌクレアーゼ(SNase)又はその核酸切断ドメイン、あるいはSNaseの1又は2以上、好ましくは数個の構成アミノ酸残基を置換、挿入、欠失した変異体SNaseなどを用いることができるが、核酸切断部位はこれらに限定されることはない。また、核酸切断部位として、核酸切断活性を有する金属錯体や金属が配位することにより核酸切断活性を発揮する有機配位子などを用いてもよい。この目的に合致する金属錯体としてセリウム錯体などが挙げられるが、これらに限定されることはない(例えば特開2005-143484号公報などを参照のこと)。これらの錯体を核酸切断部として用いることもできる。
【0022】
本発明の核酸切断剤においては、核酸切断部は標的切断部位の配列に対して配列特異的な切断活性を有している必要はなく、DNAやRNAなどの核酸に対してランダムな切断活性を有していればよい。核酸における標的切断部位は、使用するジンクフィンガータンパク質の種類(標的切断部位周囲の塩基配列に対する特異性など)及び2個のジンクフィンガータンパク質の配置(標的切断部位をはさんで少なくとも2個のジンクフィンガータンパク質の距離など)により適宜決定できる。少なくとも2個のジンクフィンガータンパク質は、標的切断部位をその上流(5’側)に該ジンクフィンガータンパク質のうちの少なくとも1個、及びその下流(3’側)に残りのジンクフィンガータンパク質のうちの少なくとも1個が配列特異的に結合するように選択される。好ましくは2個のジンクフィンガータンパク質が、標的切断部位の上流に1個、及びその下流に他の1個が配列特異的に結合できるように選択される
【0023】
本発明の好ましい態様として2個のジンクフィンガータンパク質を含む核酸切断剤を図1に概観的に示す。ジンクフィンガータンパク質により認識される各核酸配列は10個の塩基からなり、各ジンクフィンガータンパク質はそれぞれK1及びK2の結合定数を有する3個のジンクフィンガードメインを有する。これらのジンクフィンガータンパク質の結合部位の間(すなわち中央部位)に位置する塩基は核酸切断様式や核酸切断部位の大きさなどにより適宜選択できる。上記配列は好ましくは約5~50塩基、より好ましくは約10~40塩基、さらに好ましくは約15~30塩基からなる。中央部位を構成する1塩基又は数個の連続した塩基を標的切断部位として選択することができる。例えば、中央部位が20塩基で構成される場合、2個のジンクフィンガータンパク質の配置を適宜調整することにより、例えば10番目と11番目の塩基の間で該配列を切断するように標的切断部位を設計することができる。
【0024】
そのような設計を効率的に行うために、核酸切断部とジンクフィンガータンパク質とを適宜のリンカー、例えば1個のアミノ酸残基からなるリンカー、オリゴペプチドリンカー、又はポリペプチドリンカーなどの任意のリンカーを介して結合する(共有結合によりつなげる)ことが好ましい。オリゴペプチドリンカー又はポリペプチドリンカーとしては、アミノ酸残基を約2~約200個のアミノ酸残基、好ましくは約3~約100個のアミノ酸残基、より好ましくは約5~約50個のアミノ酸残基を含むオリゴペプチドリンカーが好ましい。アミノ酸残基1個をリンカーとして用いることもできる。リンカーとしては、ペプチドリンカーのほか、例えばアルキレン鎖やポリエチレングリコール鎖などの合成リンカーや糖鎖などを用いてもよい。核酸切断部と2個のジンクフィンガータンパク質のそれぞれを結ぶリンカーの種類や長さを適宜選択することによって、2個のジンクフィンガータンパク質が結合する各認識塩基配列の間にはさまれる中央部位に対して所望の位置に核酸切断部を配置することが可能である。少なくとも2個のジンクフィンガータンパク質を連結するためのリンカーは、例えば特表2002-505111号公報などに記載があり、これらのリンカーを用いることもできる。
【0025】
核酸切断部及びジンクフィンガータンパク質は、核酸切断部の領域又は部分に対して十分な親和性を持つ領域を有するタンパク質により、親和性を有するそれらの領域が各ドメインの活性を阻害しないように、及びそれらのドメインの親和性が切断反応条件下において複合体を維持するのに十分に強くなるように、互いに非共有結合により結合していてもよい。例えば、適宜配置されたストレプ-アビジン又はビオチン-アビジン複合体(例えばタンパク質上にビオチン、切断部にアビジン)を結合パートナーとして用いることができる。核酸切断部に対する1つのジンクフィンガータンパク質の結合パートナーは、核酸切断部に対する他のジンクフィンガータンパク質の結合パートナーとは異なることが好ましい。
【0026】
ジンクフィンガータンパク質としては、数個のジンクフィンガードメイン(本明細書においてジンクフィンガードメインとはジンクフィンガータンパク質に存在する核酸結合部位、好ましくはDNA結合部位を構成するドメインのことを意味しており、単に「フィンガー」と呼ばれる場合もある。代表的にはジンクフィンガータンパク質は2個、3個、4個、又は6個のジンクフィンガードメインを有している。)を含むジンクフィンガータンパク質の全長ポリペプチドのほか、その部分配列であるジンクフィンガー部分ポリペプチドなどを用いてもよい。天然由来のジンクフィンガータンパク質のほか、1個又は数個のアミノ酸残基が置換、挿入、又は欠失した改変ジンクフィンガータンパク質や2種以上のジンクフィンガータンパク質のジンクフィンガードメインを組み合わせたキメラジンクフィンガータンパク質などを用いることもできる。さらに、これらのジンクフィンガータンパク質には、他のタンパク質由来の1又は2以上の核酸結合ドメインが結合されていてもよい。そのような核酸結合ドメインとしては、制限酵素や核ホルモンレセプターなど核酸に結合可能なタンパク質のDNA結合ドメインなどを挙げることができる。
【0027】
ジンクフィンガータンパク質のジンクフィンガードメインを適宜修飾ないし変更することにより、ある特定の塩基配列に対して特異性を有するジンクフィンガータンパク質を調製することができ、そのような技術は当業者に周知である。DNA以外にもRNAに対して結合可能なジンクフィンガータンパク質を調製できることが知られている。ジンクフィンガータンパク質は、理論上、ゲノム上の任意の所望配列に対して特異性を有するように設計できると認識されており、所望の切断部位に応じて適宜の改変又は修飾ジンクフィンガータンパク質を設計することは当業者にとって容易である。
【0028】
本発明の核酸切断剤の設計にあたって、例えばゲノムDNAを標的核酸とする場合には、まずゲノム上の標的切断部位を特定して、その部位を含む適当な長さの(例えば10~30塩基程度の)塩基配列を中央部位の配列として決める。次に、その中央部位の上流側の塩基配列(例えば8~12塩基程度)及び下流側の塩基配列(例えば8~12塩基程度)に特異的に結合可能なジンクフィンガータンパク質を設計する。そして、適宜の核酸切断部(例えばSNaseなど)を選択して、その核酸切断ドメインが標的切断部位に接近できるように、好ましくは適宜のリンカー(数個ないし30個程度のアミノ酸残基を含むペプチドリンカーなど)を介して少なくとも2個、好ましくは2個のジンクフィンガータンパク質と核酸切断部とを結合する。それぞれのジンクフィンガータンパク質を結合するためのリンカーは同一でも異なっていてもよい。本発明の核酸切断剤の製造方法の一例を本明細書の実施例に具体的に示した。当業者は上記の一般的説明及び実施例の具体的説明を参照しつつ、適宜の材料を選択し、必要に応じて実施例に開示された具体的方法に適宜の修飾ないし改変を加えることにより、本発明の核酸切断剤を容易に製造することが可能である。
【0029】
本発明の核酸切断剤は、例えば、遺伝子工学における制限酵素と同様にDNAやRNA中の所望の標的切断部位を切断するために用いることができるが、本発明の核酸切断剤は巨大DNAに対しても使用できることが特徴である。例えば、ゲノムDNAに切断を入れるとその部位で相同性組換えが起きやすくなることが知られている。本発明の本発明の核酸切断剤を用いてゲノム上の所望の部位に切断を導入した後、その領域に相同で、かつ改変したい配列を含むDNAフラグメントを外部から細胞内導入することにより相同性組換えを行い、ゲノム常法を自在に加工できるようになる。
【0030】
また、本発明の核酸切断剤は、例えば、再生医療、遺伝子治療、又は抗ウイルス剤などの医薬として用いることもできる。例えば、2種類の異なる核酸切断剤を組み合わせて用いることにより、ゲノム上の異なる2箇所を切断することができるが、その2箇所にはさまれるゲノム領域を相同性組換えにより除去することが可能である。例えば、このような技術により、HIV患者のゲノムに組み込まれたHIVゲノムを除去することも可能になる。あるいは、生体に侵入してくるウイルスDNAのみに特異的な配列を標的として該核酸を切断し、ウイルス感染を予防することもできる。ウイルスDNAのみに特異的でヒトゲノムには存在しない配列としてはDNAウイルスのDNA自体のほか、RNAウイルスから転写されたDNAが挙げられる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
例1
A.材料と方法
(1)クローニング
(a) 6-Finger-SNase
まず、(GGGGS)4-SNase-(GGGGS)4 (G: Gly, S: Ser)をコードするDNAフラグメントをPCRで作成し、大腸菌発現ベクターpET-21a (Novagen)にクローニングした。このベクター pET-SNaseの第一の(GGGGS)4ペプチドリンカーのN末側に5'-GGTCGGGACCGAAAACGGT-3'を認識する6個のジンクフィンガードメインを含む人工DNA結合タンパク質(6-Finger)をコードするDNAフラグメントをクローニングし、6-FingerとSNaseとがペプチドリンカーで結合された融合タンパク質(6-Finger-SNase)を発現する大腸菌ベクターを作成した。
(b) 3-Finger-SNase-3-Finger(3+3-フィンガー-SNase)
【0032】
このタンパク用のベクターは2段階で作成した。まず5'-CGAAAACGGT-3'を認識する3個のジンクフィンガードメインを含む人工DNA結合タンパク質3-FingerをコードするDNAフラグメントを上述のベクターpET-SNaseの第一の(GGGGS)4ペプチドリンカーのN末側にクローニングした。次に、5'-GGTCGGGACC-3'を認識する人工DNA結合タンパク質(第2の3-Finger)をコードするDNAフラグメントをこのベクターの第二の(GGGGS)4ペプチドリンカーのC末側にクローニングし、2個の3-Fingerがそれぞれペプチドリンカーを介してSNaseに結合した融合タンパク質(3+3-Finger-SNase)を発現する大腸菌ベクターを作成した。
【0033】
(2)融合タンパク質の調製
上記の2種の融合タンパク質のそれぞれをBL21(DE3)pLysS大腸菌株(Novagen)を用いて発現させた。上記大腸菌を37℃で培養し、OD600の値が0.6になったときに1 mM IPTGを加えて、融合タンパク質発現を誘導した。3時間培養後大腸菌を集菌して超音波破砕し、Bi-Rex 70陽イオン交換樹脂カラム(Bio-Rad)を用いて発現融合タンパク質を精製した。得られた融合タンパク質の純度はSDS-PAGEによる分析で95%以上であった。各々のタンパク質の濃度はProtein Assay ESL (Roche Molecular Biochemicals)で決定した。
【0034】
(3)標的DNAの作成
(a)6-Finger-SNase用
6-Fingerの認識配列5'-GGTCGGGACCGAAAACGGT-3'を有する2重鎖DNAをpBluescriptII KS+ (Stratagene)のHind III/EcoR Iサイトにクローニングした。このベクターを大腸菌で大量培養して精製した。このベクターをXmn Iで切断して直鎖DNAにした後、フェノール抽出してDNAを精製した。
(b)3+3-Finger-SNase用
2個の3-Fingerである ZFP1及びZFP2がそれぞれ認識する配列5'-GGTCGGGACC-3'及び5'-CGAAAACGGT-3'を含む2重鎖DNAをスペーサーDNA 5'-ATATGTATACATATGTATAC -3'で連結し、pBluescriptII KS+ (Stratagene)のHind III/EcoR Iサイトにクローニングした。このベクターを大腸菌で大量培養して精製し、Xmn Iで切断して直鎖DNAにしてフェノール抽出によりDNAを精製した。
【0035】
(4)切断反応
H2O 4μlに10×Reaction Buffer (0.5 M Tris-HCl (pH 7.5)、1M NaCl)、tRNA (10 μg/μl) 1 μl、直鎖状標的DNA 1 μl、及び適宜の融合タンパク質2 μlを添加し、氷上で10分放置した。その後、100 mM CaCl2 1 μlを加えて37℃で30分間反応させた。反応終了後、フェノール抽出によりタンパク質を除去し、得られた核酸切断反応生成物を0.8%アガロースゲル電気泳動により解析した。切断反応の概略を図2に示す。
【0036】
B.結果
結果を図3に示す。6-Finger-SNase及び3+3-Finger-SNaseは基質DNAを標的切断部位で位置特異的に切断した。本発明の核酸切断剤3+3-Finger-SNaseでは、6-Finger-SNaseに比べて高濃度の核酸に対して極めて高い切断活性を有していた。この理由は、多量のDNA基質を切断する場合に、6-Finger-SNaseでは切断後の片側のDNA切断生成物上に6-Finger-SNaseが結合したまま残り、過剰のDNAに対して核酸切断剤の量が不足することにより切断効率が低下するが、一方、本発明の3+3-Finger-SNaseでは、切断後にDNA切断生成物から核酸切断剤が解離してフリーとなり(すなわち再生され)、基質核酸に再び結合できるフリーの切断剤となるためターンオーバーが達成されたものと考えられる。
【0037】
さらに、2種類のコントロール、すなわち配列5'-GGTCGGGACC-3'を認識する3フィンガータンパク質を有するZFP1をSNaseのN末端側に結合したZFP1-SNase(3-Finger-SNase)及び配列5'-CGAAAACGGT-3'を認識する3フィンガータンパク質を有するZFP2をSNaseのC末端側に結合したSNase-ZFP2(3-Finger-SNase)を作成した。それらの標的切断活性を上記と同一条件にて検討した。ZFP1-SNaseについては全く活性が認められず、SNase-ZFP2については若干の活性が認められたもののターンオーバーは認められなかった。
【0038】
例2
A.材料と方法
(1)クローニング
(a) 6-Finger-SNase(2)
まず、(GGGGS)4-SNase-(GGGGS)4 (G: Gly, S: Ser)をコードするDNAフラグメントをPCRで作成し、大腸菌発現ベクターpET-21a (Novagen)にクローニングした。このベクター pET-SNaseの第一の(GGGGS)4ペプチドリンカーのN末側に5'-GGTCGGGACGTTGCGGGAT-3'を認識する6個のジンクフィンガードメインを含む人工DNA結合タンパク質6-Finger(2) をコードするDNAフラグメントをクローニングし、6-FingerとSNaseとがペプチドリンカーで結合された融合タンパク質(6-Finger-SNase(2))を発現する大腸菌ベクターを作成した。
(b) 3-Finger-SNase-3-Finger(2)(3+3-フィンガー-SNase(2))
【0039】
このタンパク用のベクターは2段階で作成した。まず、5'-GTTGCGGGAT-3'を認識する3個のジンクフィンガードメインを含む人工DNA結合タンパク質3-FingerをコードするDNAフラグメントを上述のベクターpET-SNaseの第一の(GGGGS)4ペプチドリンカーのN末側にクローニングした。次に、5'-GGTCGGGACC-3'を認識する人工DNA結合タンパク質(第2の3-Finger)をコードするDNAフラグメントをこのベクターの第二の(GGGGS)4ペプチドリンカーのC末側にクローニングし、2個の3-Fingerがそれぞれペプチドリンカーを介してSNaseに結合した融合タンパク質(3+3-Finger-SNase(2))を発現する大腸菌ベクターを作成した。
【0040】
(c) 3-Finger-SNase (2)
ベクター pET-SNaseの第一の(GGGGS)4ペプチドリンカーのN末側に5'-GTTGCGGGAT-3'を認識する6個のジンクフィンガードメインを含む人工DNA結合タンパク質3-FingerをコードするDNAフラグメントをクローニングし、6-FingerとSNaseとがペプチドリンカーで結合された融合タンパク質を発現する大腸菌ベクターを作成した。
【0041】
(d) SNase-3-Finger (2)
ベクター pET-SNaseの第二の(GGGGS)4ペプチドリンカーのC末側に5'-GGTCGGGACC-3'を認識する6個のジンクフィンガードメインを含む人工DNA結合タンパク質3-FingerをコードするDNAフラグメントをクローニングし、6-FingerとSNaseとがペプチドリンカーで結合された融合タンパク質を発現する大腸菌ベクターを作成した。
【0042】
(2)融合タンパク質の調製
上記の各融合タンパク質をBL21(DE3)pLysS大腸菌株(Novagen)を用いて発現させた。上記大腸菌株を37℃で培養し、OD600の値が0.6になったときに1 mM IPTGを加えて融合タンパク質発現を誘導した。3時間培養後大腸菌を集菌して超音波破砕し、Bi-Rex 70陽イオン交換樹脂カラム(Bio-Rad)を用いて発現融合タンパク質を精製した。得られた融合タンパク質の純度はSDS-PAGEによる分析で95%以上であった。各々のタンパク質の濃度はProtein Assay ESL (Roche Molecular Biochemicals)で決定した。
【0043】
(3)標的DNAの作成
(a)6-Finger-SNase(2)用
6-Fingerの認識配列5'-GGTCGGGACGTTGCGGGAT-3'を有する2重鎖DNAをpBluescriptII KS+ (Stratagene)のHind III/EcoR Iサイトにクローニングした。このベクターを大腸菌で大量培養して精製した。このベクターをXmn Iで切断して直鎖DNAにした後、フェノール抽出してDNAを精製した。
【0044】
(b)3+3-Finger-SNase(2)、3-Finger-SNase(2)、及びSNase-3-Finger(2)用
2個の3-FingerであるZFP3及びZFP2がそれぞれ認識する配列5'-GGTCGGGACC-3'及び5'-GTTGCGGGAT-3'を含む2重鎖DNAをスペーサーDNA 5'-ATATGTATACATATGTATAC-3'で連結し、pBluescriptII KS+ (Stratagene)のHind III/EcoR Iサイトにクローニングした。このベクターを大腸菌で大量培養して精製し、Xmn Iで切断して直鎖DNAにした後、フェノール抽出して精製した。
【0045】
(4)切断反応
H2O 34μlに10×Reaction Buffer (0.5 M Tris-HCl (pH 7.5)、1M NaCl) 20μl、tRNA (10 μg/μl) 1 μl、標的DNAプラスミド 123 μl(1.63μg/μl)、及び適宜の融合タンパク質2 μl(25 nM)を添加し、氷上で10分放置した。その後、反応混合物に100 mM CaCl2 20 μlを加えて37℃で300分間反応させた。反応終了後、反応混合物をXmn I (200ユニット)を用いて37℃で60分消化し、フェノール抽出によりタンパク質を除去し、得られた核酸切断反応生成物0.1μgを0.8%アガロースゲル電気泳動により解析した。
【0046】
B.結果
結果を図Aに示す。3+3-Finger-SNase(2)は大量(200μg)の基質DNAを標的切断部位において部位特異的に切断した。この実験で使用したDNA量は各SNase修飾体の量の200倍である。同一条件下で他の3種のSNase修飾体である6-Finger-SNase(2)、3-Finger-SNase(2)、及びSNase-3-Finger(2)ではDNA切断反応のターンオーバーは認められなかった。
【0047】
例3
A.材料と方法
Example 3
(1) Alexa680でラベルした標的DNAの調製
(a)センス鎖の5'末端をラベルしたDNA
3+3-Finger-SNase (2)の認識配列である 5'-GGTCGGGACC ATATGTATAC ATATGTATAC GTTGCGGGAT-3'を有する200塩基の2重鎖DNAをプラスミドを鋳型としてプライマー5'-Alexa680-CTGGGTACCGGGCCCCCCCTCGAGGTCGAC-3' 及び 5'-
TTGTAAAACGACGGCCAGTGAGCGCGCGTA-3'を用いたPCRで増幅した。得られたPCR産物をQIAquick PCR 精製キット(Qiagen)で精製した。
【0048】
(b)アンチセンス鎖の5'末端をラベルしたDNA
3+3-Finger-SNase (2)の認識配列である 5'-GGTCGGGACC ATATGTATAC ATATGTATAC GTTGCGGGAT-3'を有する200塩基の2重鎖DNAをプラスミドを鋳型としてプライマー5'- TCACACAGGAAACAGCTATGACCATGATTA-3' 及び 5'-
Alexa680-GGCGGCCGCTCTAGAACTAGTGGATCCCCC-3'を用いたPCRで増幅した。得られたPCR産物をQIAquick PCR 精製キット(Qiagen)で精製した。
【0049】
(2) 切断反応:6% 変性ゲルでの分析
H2O 4μlに10×Reaction Buffer (0.5 M Tris-HCl (pH 7.5)、1M NaCl) 1μl、tRNA (10 μg/μl) 1 μl、センス鎖又はアンチセンス鎖の5'末端ラベルを含む標的DNA 1 μl(0.1μg/μl)、及び適宜の融合タンパク質2 μl(25 nM)を添加し、氷上で10分放置した。その後、反応混合物に100 mM CaCl2 1 μlを加えて37℃で30分間反応させた。反応終了後、フェノール抽出によりタンパク質を除去し、得られた核酸切断反応生成物を6%変性ゲル電気泳動により解析した。
【0050】
B.結果
結果を図Bに示す。図Bに示されるように3+3-フィンガー-SNase(2)は主として標的DNAを各DNA鎖の単一部位で切断した。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の核酸切断剤はゲノムDNAなどの巨大な核酸の所望の塩基配列、好ましくはそのようなDNAの唯一の部位に対して特異的な切断活性を有する。本発明の核酸切断剤は、切断部位に対して1分子で所望の切断活性を発揮し、触媒的なターンオーバーにより効率的に核酸を切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は本発明の核酸切断剤の作用を示した概略図である。図中、3フィンガー又は6フィンガーの右末端はN間端を示し、3フィンガー又は6フィンガーの左末端はC末端を示す。上側の図においてC末端においてリンカー(GGGGS)4に結合している右側に示された3フィンガーはJournal of Virology, Vol.80, No.11, pp.5405-5412, 2006のFig.1-cに示されたアミノ酸配列のアミノ酸番号1から84のアミノ酸配列を有し、N末端においてリンカー(GGGGS)4に結合している左側の3フィンガーは同アミノ酸配列のアミノ酸番号85から168のアミノ酸配列を有する。
【図2】図2は例1における切断反応のスキームを示した図である。
【図3】図3は例1における切断反応生成物を示したアガロースゲルの写真である。図中、1~20の数字は核酸切断剤に対するDNA基質の割合(倍)を示す。
【図4】図4は例2における切断反応生成物を示したアガロースゲルの写真である。この実験では核酸切断剤に対して200倍過剰のDNA基質を用いた。
【図5】図5は例2における基質の各DNA鎖の切断部位を示す変性ゲルの写真である。
図面
【図2】
0
【図1】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4