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明細書 :複合培養による二次代謝産物の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5643475号 (P5643475)
公開番号 特開2009-207385 (P2009-207385A)
登録日 平成26年11月7日(2014.11.7)
発行日 平成26年12月17日(2014.12.17)
公開日 平成21年9月17日(2009.9.17)
発明の名称または考案の名称 複合培養による二次代謝産物の製造方法
国際特許分類 C12P   1/02        (2006.01)
C12P   1/04        (2006.01)
C12P   1/06        (2006.01)
C12N   1/14        (2006.01)
C12N   1/20        (2006.01)
C12Q   1/02        (2006.01)
C12R   1/15        (2006.01)
C12R   1/365       (2006.01)
FI C12P 1/02 A
C12P 1/02 Z
C12P 1/04 A
C12P 1/04 Z
C12P 1/06 A
C12P 1/06 Z
C12N 1/14 B
C12N 1/20 A
C12Q 1/02
C12P 1/04 A
C12R 1:15
C12P 1/04 A
C12R 1:365
請求項の数または発明の数 6
全頁数 15
出願番号 特願2008-052002 (P2008-052002)
出願日 平成20年3月3日(2008.3.3)
審査請求日 平成22年12月17日(2010.12.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000236920
【氏名又は名称】富山県
発明者または考案者 【氏名】尾仲 宏康
【氏名】五十嵐 康弘
【氏名】森 夕希子
個別代理人の代理人 【識別番号】100092347、【弁理士】、【氏名又は名称】尾仲 一宗
審査官 【審査官】松原 寛子
参考文献・文献 特開2008-054637(JP,A)
日本農芸化学会2006年度大会講演要旨集,2006年,p.239,3B19p05
混合培養による二次代謝産物生産に関する研究 ,日本放線菌学会大会講演要旨集 ,2007年,22nd,p.82
調査した分野 C12P 1/02
C12N 1/14
C12N 1/20
C12P 1/04
C12Q 1/02
SwissProt/GeneSeq
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
JSTPlus(JDreamIII)


特許請求の範囲 【請求項1】
少なくとも1種の微生物, 及び少なくとも1種の被検菌である放線菌又は糸状菌を複合して培養し,培養液中に生産される二次代謝産物を採取することから成る二次代謝産物の製造方法において,
前記微生物は,細胞壁にミコール酸を含有することによって,共存する前記放線菌又は前記糸状菌の二次代謝産物産生を誘導する能力を持ち,ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans) の色素産生を誘導する能力を持っており,
前記細胞壁に前記ミコール酸を含有する前記微生物は,コリネバクテリウム
(Corynebacterium) 属,ロドコッカス(Rhodococcus) 属,ゴルドニア(Gordonia)属,ダイエットジア(Dietzia) 属,ノカルジア(Nocardia)属,スケルマニア(Skermania) 属,ウィラムジア(Williamsia)属,又はマイコバクテリウム(Mycobacterium) 属に属することを特徴とする二次代謝産物の製造方法。
【請求項2】
コリネバクテリウム(Corynebacterium) 属,ロドコッカス(Rhodococcus) 属,又はゴルドニア(Gordonia)属に属する前記微生物は,シーエフィシエンス(C.efficiens),シーグルタミカム(C.glutamicum),ジールブリペルティンクタ(G.rubripertincta),アールコプロフィラス(R.coprophilus),アールエリスロポリス(R.erythropolis),アールウラチスラビエンシス(R.wratislaviensis),又はアールゾプフィイ(R.zopfii)に属することを特徴とする請求項1に記載の二次代謝産物の製造方法。
【請求項3】
前記放線菌は,クリプトバクテリウム(Cryptobacterium) ,ルブロバクター
(Rubrobacter) ,アクチノバチュラム(Actinobaculum) ,アクチノマイセス
(Actinomyces) ,コリネバクテリウム(Corynebacterium) ,ゴルドニア(Gordonia),
マイコバクテリウム(Mycobacterium) ,ノカルディア(Nocardia),ロドコッカス
(Rhodococcus) ,ミクロスファエラ(Microsphaera),クリプトスポランギウム
(Cryptosporangium),ミクロコッカス(Micrococcus) ,アースロバクター
(Arthrobacter),ブレビバクテリウム(Brevibacterium),セルロモナス(Cellulomonas),ミクロバクテリウム(Microbacterium),アグロマイセス(Agromyces) ,クリオバクテリウム(Cryobacterium) ,ミクロモノスポラ(Micromonospora),アクチノプラネス
(Actinoplanes),ダクチロスポランギウム(Dactylosporangium) ,ノカルディオイデス
(Nocardioides),シュードノカルディア(Pseudonocardia),アクチノビスポラ
(Actinobispora) ,アミコラトプシス(Amycolatopsis) ,サッカロモノスポラ
(Saccharomonospora) ,アクチノシネマ(Actinosynnema) ,アクチノキネオスポラ
(Actinokineospora),ストレプトマイセス(Streptomyces),キタサトスポラ
(Kitasatospora) ,ストレプトスポランギウム(Streptosporangium) ,ミクロビスポラ
(Microbispora),ミクロテトラスポラ(Microtetraspora) ,ノノムラエ(Nonomuraea),ノカルディオプシス(Nocardiopsis),アクチノマデュラ(Actinomadura),キネオコッカス(Kineococcus) ,キネオスポリア(Kineosporia) ,及びサーモビスポラ(Thermobispora)からなる群より選択されるいずれかに属することを特徴とする請求項1又は2に記載の二次代謝産物の製造方法。
【請求項4】
前記糸状菌は,アクレモニウム(Acremonium),アルテルナリア(Alternaria),アスペルギルス(Aspergillus) ,ボーベリア(Beauveria) ,ボトリティス(Botorytis) カララ
(Chalara) ,セルコスポラ(Cercospora),セファロスフォリウム(Cephalosporium),クリソスポリウム(Chrysosporium) ,コクシジオイデス(Coccidioides),クリプトコッカス
(Cryptococcus),クルブラリア(Curvularia),シリンドロカルポン(Cylindrocarpon),シリンドロクラディウム(Cylindrocladium),カニングハメラ(Cunninghamella),ドレクスレラ(Drechslera),エピコッカム(Epicoccum),ユーペニシリウム(Eupenicillium) ,フザリウム(Fusarium),ジオトリカム(Geotrichum),グリオクラディウム(Gliocladium),グラフィウム(Graphium),ヘルミントスポリウム(Helminthosporium),ヒアロデンドロン(Hyalodendron),イサリア(Isaria),メタルヒジウム(Metarhizium),モニリア
(Monilia),モルティレラ(Mortierella),ムコール(Mucor),ノデュリオスポリウム
(Nodulisporium),パエシロマイセス(Paecilomyces),ペニシリウム(Penicillium),ピリキュラリア(Pyricularia),フィアロマイセス(Phialomyces),リゾクトニア
(Rhizoctonia),スポロスリクス(Sporopthrix),トリコヒートン(Trichophyton),トリコデルマ(Trichocderma),及びトリコセシウム(Trichothecium)からなる群より選択されるいずれかに属することを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の二次代謝産物の製造方法。
【請求項5】
前記二次代謝産物は,抗菌性抗生物質,制癌性抗生物質,抗寄生虫物質, 又は酵素阻害剤であることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の二次代謝産物の製造方法。
【請求項6】
前記細胞壁に前記ミコール酸を含有する前記微生物, 及び前記放線菌又は前記糸状菌がいずれも生菌体として共存した状態で培養することを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の二次代謝産物の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は,複合培養による二次代謝産物であって,特に,細胞壁にミコール酸を含有する微生物との複合培養を用いる二次代謝産物である抗菌性抗生物質,制癌性抗生物質,抗寄生虫物質,又は酵素阻害剤の二次代謝産物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物培養において,純粋培養は,コッホ以来の基本的概念とされている。抗生物質スクリーニングにおいても,純粋培養された菌株からこれまでに多くの有用物質が発見されている。
【0003】
自然環境下での微生物は,外部の様々な環境要因の影響を受けて生育するため,純粋培養状態で自然環境下と全く同一の生育を再現することは困難である。医薬品をはじめ,天然物からの抗生物質スクリーニングには,純粋分離された菌株を使用するのが一般的である(例えば,非特許文献1及び2参照)。
【0004】
現在,ミコール酸を含有する細菌として知られている微生物には,コリネバクテリウム(Corynebacterium) 属,ロドコッカス(Rhodococcus) 属,ゴルドニア(Gordonia)属,ダイエットジア(Dietzia) 属,ノカルジア(Nocardia)属,スケルマニア(Skermania) 属,ウィラムジア(Williamsia)属,マイコバクテリウム(Mycobacterium) 属,及びツカムレラ
(Tsukamurella)属が知られている(例えば,非特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】Bibb M, The regulation of antibiotic production in Streptomyces coelicolorA3(2).Microbiology. 1996 142:1335-44
【非特許文献2】田中晴雄,土屋友房編,微生物薬品化学改訂第4版,P325-326 南江堂
【非特許文献3】日本放線菌学会編,放線菌の分類と同定,P179-191 日本学会事務センター
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら,自然界においては,様々な環境要因が抗生物質の生産に影響を与えているため,純粋培養ではスクリーニング菌株の抗生物質生産能力を全て引き出すことは難しい。この点から抗生物質生産においても純粋培養が個々の菌株の物質生産能力を完全に引き出しているとは考え難く,培養法の工夫は重要である。
【0007】
本発明者は,先にスクリーニング菌株の新たな二次代謝産物生産能力を引き出し得る新たな培養方法を用いた二次代謝産物のスクリーニング方法及び製造方法を開発し,先に出願した〔特願2006-238547号(特開2008-54637号公報)参照〕。該二次代謝産物のスクリーニング方法は,16SrDNA遺伝子の塩基配列が配列番号1記載の塩基配列と95%以上の相同性を示すコリネ型細菌に属する少なくとも1 種の微生物及び少なくとも1種の被検菌を混合して培養し,培養液中に二次代謝産物が含まれているかを確認するものである。また,上記二次代謝産物の製造方法は,コリネ型細菌に属する少なくとも1 種の微生物及び少なくとも1種の放線菌または糸状菌を混合して培養し,培養液中に生産される二次代謝産物を採取するものである。また,培養物は,コリネ型細菌に属する少なくとも1 種の微生物及び少なくとも1種の放線菌または糸状菌を混合して培養し,培養液中に二次代謝産物を蓄積させたものである。
【0008】
上記特許出願の発明は,ツカムレラ属5種については混合培養活性(ストレプトマイセス・リビダンスに赤色色素を生産誘導させる活性)があることを明らかにしている。本発明者は,更に研究を重ねてツカムレラ属以外のコリネバクテリウム, ロドコッカス,ゴルドニア等の7種の細菌についても混合培養活性があることを新たに確認した。これらはツカムレラ・プルモニスとの間で16SrDNA配列において,88.4~95.6%の相同性がある。更に,これらの菌株とツカムレラ・プルモニスに共通している性質として,ミコール酸と呼ばれる物質を細胞壁成分に有していることが確認された。ミコール酸の合成阻害剤であるイソニアジドを添加して混合培養すると,活性は消失することが確認できた。このことからミコール酸の存在が混合培養活性に関係していることが明らかになった。
【0009】
そこで,本発明者は,ツカムレラ・プルモニス(Tsukamullera pulmonis) と
16SrDNA配列が95%以上ある菌とは別に,ミコール酸を生合成する菌のうちコリネバクテリウム, ロドコッカス,ゴルドニア属についても赤色色素を生産誘導させる活性を持つことを確認した。更に,これらツカムレラ属とは異なる属のミコール酸含有微生物と放線菌とを混合培養すると,ミコール酸含有微生物ごとに異なる二次代謝産物生産を誘導する例が後述の実施例2にも示すように得られた。この結果は,混合培養を行う際に,ツカムレラ・プルモニス以外の菌も合わせて用いることにより,ツカムレラ・プルモニスでは誘導できない二次代謝産物を誘導できることを示している。このような研究成果より,本発明者は,ツカムレラ・プルモニス(Tsukamullera pulmonis) 又はその類縁菌と様々な放線菌との複合培養をすることにより,純粋培養では生産しない新規化合物を生産する現象を解明し,この発明に至ったのである。
【0010】
この発明の目的は,スクリーニング菌株の新たな二次代謝産物生産能力を引き出し得る,新たな培養方法を用いたものであって,特に,新規な抗菌性抗生物質,制癌性抗生物質,抗寄生虫物質,又は酵素阻害剤等の新規な二次代謝産物の製造,純粋培養では産生量が少ない二次代謝産物の産生量を増大させる二次代謝産物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
の発明は,少なくとも1 種の微生物, 及び少なくとも1種の被検菌である放線菌又は糸状菌を複合して培養し,培養液中に生産される二次代謝産物を採取することから成る二次代謝産物の製造方法において,
前記微生物は,細胞壁にミコール酸を含有することによって,共存する前記放線菌又は前記糸状菌の二次代謝産物産生を誘導する能力を持ち,ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans) の色素産生を誘導する能力を持っており,
前記細胞壁に前記ミコール酸を含有する前記微生物は,コリネバクテリウム
(Corynebacterium) 属,ロドコッカス(Rhodococcus) 属,ゴルドニア(Gordonia)属,ダイエットジア(Dietzia) 属,ノカルジア(Nocardia)属,スケルマニア(Skermania) 属,ウィラムジア(Williamsia)属,又はマイコバクテリウム(Mycobacterium) 属に属することを特徴とする二次代謝産物の製造方法に関する。
【0012】
なお,細胞壁にミコール酸を含有する微生物としては,ツカムレラ・プルモニスと16SrDNA配列が95%未満の相同性を示すコリネ型細菌〔コリネバクテリウム(Corynebacterium) 属,ロドコッカス(Rhodococcus) 属,ゴルドニア(Gordonia)属,〕に属するものに,特に有効に適用できるものである。
【0013】
この二次代謝産物の製造方法において,コリネバクテリウム(Corynebacterium) 属,ロドコッカス(Rhodococcus) 属,又はゴルドニア(Gordonia)属に属する前記微生物は,シーエフィシエンス(C.efficiens),シーグルタミカム(C.glutamicum),ジールブリペルティンクタ(G.rubripertincta),アールコプロフィラス(R.coprophilus),アールエリスロポリス(R.erythropolis),アールウラチスラビエンシス(R.wratislaviensis),又はアールゾプフィイ(R.zopfii)に属するものであることが好ましい。
【0014】
この二次代謝産物の製造方法において,前記放線菌は,クリプトバクテリウム
Cryptobacterium ),ルブロバクター(Rubrobacter ),アクチノバチュラム
Actinobaculum ),アクチノマイセス(Actinomyces ),コリネバクテリウム
Corynebacterium),ゴルドニア(Gordonia),マイコバクテリウム(Mycobacterium ),ノカルディア(Nocardia),ロドコッカス(Rhodococcus ),ミクロスファエラ
Microsphaera),クリプトスポランギウム(Cryptosporangium),ミクロコッカス
(Micrococcus),アースロバクター(Arthrobacter),ブレビバクテリウム(Brevibacterium),セルロモナス(Cellulomonas),ミクロバクテリウム(Microbacterium),アグロマイセス(Agromyces ),クリオバクテリウム(Cryobacterium ),ミクロモノスポラ
Micromonospora),アクチノプラネス(Actinoplanes),ダクチロスポランギウム
Dactylosporangium),ノカルディオイデス(Nocardioides),シュードノカルディア
Pseudonocardia),アクチノビスポラ(Actinobispora ),アミコラトプシス
Amycolatopsis ),サッカロモノスポラ(Saccharomonospora ),アクチノシネマ
Actinosynnema ),アクチノキネオスポラ(Actinokineospora),ストレプトマイセス(Streptomyces),キタサトスポラ(Kitasatospora ),ストレプトスポランギウム
Streptosporangium ),ミクロビスポラ(Microbispora),ミクロテトラスポラ
Microtetraspora ),ノノムラエ(Nonomuraea),ノカルディオプシス(Nocardiopsis),アクチノマデュラ(Actinomadura),キネオコッカス(Kineococcus ),キネオスポリア(Kineosporia ),及びサーモビスポラ(Thermobispora )からなる群より選択されるいずれかの属に属する放線菌であるものである。
【0015】
この二次代謝産物の製造方法において,前記糸状菌は,アクレモニウム(Acremonium),アルテルナリア(Alternaria),アスペルギルス(Aspergillus) ,ボーベリア(Beauveria),ボトリティス(Botorytisカララ(Chalara) ,セルコスポラ(Cercospora),セファロスフォリウム(Cephalosporium),クリソスポリウム(Chrysosporium ),コクシジオイデス(Coccidioides),クリプトコッカス(Cryptococcus),クルブラリア(Curvularia),シリンドロカルポン(Cylindrocarpon),シリンドロクラディウム(Cylindrocladium),カニングハメラ(Cunninghamella),ドレクスレラ(Drechslera),エピコッカム
Epicoccum ),ユーペニシリウム(Eupenicillium),フザリウム(Fusarium),ジオトリカム(Geotrichum),グリオクラディウム(Gliocladium ),グラフィウム(Graphium),ヘルミントスポリウム(Helminthosporium),ヒアロデンドロン(Hyalodendron),イサリア(Isaria),メタルヒジウム(Metarhizium ),モニリア(Monilia ),モルティレラ(Mortierella),ムコール(Mucor),ノデュリオスポリウム(Nodulisporium),パエシロマイセス(Paecilomyces),ペニシリウム(Penicillium ),ピリキュラリア
Pyricularia ),フィアロマイセス(Phialomyces ),リゾクトニア(Rhizoctonia),スポロスリクス(Sporopthrix ),トリコヒートン(Trichophyton),トリコデルマ
Trichocderma),及びトリコセシウム(Trichothecium )からなる群より選択されるいずれかの属に属するものである。
【0016】
この二次代謝産物の製造方法において,前記二次代謝産物は,抗菌性抗生物質,制癌性抗生物質,抗寄生虫物質,又は酵素阻害剤である。
【0017】
また,この二次代謝産物の製造方法において,前記細胞壁に前記ミコール酸を含有する前記微生物及び前記放線菌または前記糸状菌は,いずれも生菌体として共存した状態で培養するものが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
この発明の二次代謝産物の製造方法によれば,純粋培養では産生が確認されなかった,新規な抗生物質等の二次代謝産物をスクリーニングし,又は二次代謝産物を製造することができる。更に,この発明の二次代謝産物の製造方法によれば,純粋培養では産生量が少ない二次代謝産物の産生量を増大することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
-スクリーニング方法-
この発明による二次代謝産物のスクリーニング方法は,ミコール酸を細胞壁に含有する微生物及び少なくとも1種の被検菌を複合して培養し,培養液中に二次代謝産物が含まれているかを確認することに特徴を有している。
【0020】
この二次代謝産物のスクリーニング方法では,細胞壁にミコール酸を含有する微生物を用いるものであり,ミコール酸を含有する微生物であれば,アールエリスロポリス
R. erythropolis)PR4 と同等の効果が得られることは実施例において具体的に示す通りである。
【0021】
この二次代謝産物のスクリーニング方法に用いられるミコール酸を細胞壁に含有する微生物は,共存する微生物の二次代謝産物産生を誘導する能力を持つ微生物である。
【0022】
さらに,本発明のスクリーニング方法に用いられるミコール酸を細胞壁に含有する微生物は,ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans) の色素産生を誘導する能力を持つ微生物であることができる。ストレプトマイセス・リビダンスは,純粋培養では赤色色素であるアクチノロージン及びウンデシルプロディギオシンの産生を行わないことが知られている。これは、ストレプトマイセス・リビダンスは,赤色色素の生合成遺伝子を有しているが,通常の純粋培養時には,これら生合成遺伝子の転写が行われていないからである。本願発明に述べる複合培養法においては,ミコール酸を含有する微生物がストレプトマイセス・リビダンスに培養液中で刺激を与えることにより,ストレプトマイセス・リビダンスの色素生合成遺伝子の転写スイッチが入り,赤色色素産生が認められるようになったと結論できる。そこで,本願発明に適する微生物であるかどうかの判定は,ストレプトマイセス・リビダンスの色素産生能力を誘導するかどうかで判定することができる。
【0023】
実施例において詳述するように,アールエリスロポリス(R. erythropolis)PR4 もしくはシーグルタミカム(C.glutamicum)はストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces
lividans) の赤色色素生産を誘導する菌株として発見された。ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans) と様々な属の菌との複合液体培養を行ったところ,顕著な赤色色素生産を誘導する組み合わせは,検討した範囲では,シーエフィシエンス
C.efficiens ),シーグルタミカム(C.glutamicum),ジールブリペルティンクタ
G.rubripertincta),アールコプロフィラス(R.coprophilus ),アールエリスロポリス(R.erythropolis),アールウラチスラビエンシス(R.wratislaviensis ),又はアールゾプフィイ(R.zopfii)に属する微生物だけであり,本菌株に特異的な性質であることが明らかになった。そこで,シーグルタミカム(C.glutamicum) ,又はアールエリスロポリス(R.erythropolis)と139株の放線菌との複合培養を行い,培養抽出物の抗菌アッセイを行ったところ,放線菌単独培養では検出できない抗菌物質を生産する例が39例,単独培養よりも抗菌物質生産が増大する例が56例見出された。従って,本発明に用いられるミコール酸を含有する微生物は,ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces
lividans) の色素産生を誘導する能力をもつ微生物であることができる。
【0024】
細胞壁にミコール酸を含有する微生物は,マイコバクテリウム(Mycobacterium) 属をはじめとする抗酸性細菌とその近縁細菌に限られ,それらの細胞表層の疎水性や抗酸性に関与していると考えられている。現在,ミコール酸を含有する細菌として知られている微生物には,コリネバクテリウム(Corynebacterium) 属,ロドコッカス(Rhodococcus) 属,ゴルドニア(Gordonia)属,ダイエットジア(Dietzia) 属,ノカルジア(Nocardia)属,スケルマニア(Skermania) 属,ウィラムジア(Williamsia)属,マイコバクテリウム
(Mycobacterium) 属,及びツカムレラ(Tsukamurella)属が知られている。本発明で用いられるミコール酸を含有する微生物は,好ましくはコリネバクテリウム(Corynebacterium) 属又はロドコッカス(Rhodococcus) 属に属する微生物,例えば,アールエリスロポリス
R. erythropolis)PR4 ,又はシーグルタミカム(C. glutamicum) に属する微生物であることができる。しかし,アールエリスロポリス(R. erythropolis)PR4 或いはシーグルタミカム(C. glutamicum) に属する微生物以外のロドコッカス(Rhodococcus) 属,コリネバクテリウム(Corynebacterium) 属に属する微生物や,ロドコッカス(Rhodococcus) 属,又はコリネバクテリウム(Corynebacterium) 属以外に属する微生物であっても,ミコール酸を含有する微生物であれば使用できる。
【0025】
ミコール酸を細胞壁に含有する微生物が複合培養活性を有する根拠は,(1)実施例に詳細を示した通り,ミコール酸生合成阻害剤であるイソニアジドを添加した状態でアールエリスロポリス(R. erythropolis)PR4 ,又はシーグルタミカム( C. glutamicum)とストレプトマイセス・リビダンスを複合培養しても,赤色色素生産誘導が行われないこと,(2)調べた限りミコール酸を含有する微生物以外に複合培養活性を有する微生物が見いだせないことが挙げられる。
【0026】
ミコール酸を細胞壁に含有する微生物と複合培養される被検菌は,二次代謝産物を産生することが期待される菌であれば,特に限定されるものではない。被検菌としては,例えば,放線菌及び糸状菌を挙げることができる。
【0027】
放線菌としては,例えば,クリプトバクテリウム(Cryptobacterium ),ルブロバクター(Rubrobacter ),アクチノバチュラム(Actinobaculum ),アクチノマイセス
(Actinomyces),コリネバクテリウム(Corynebacterium ),ゴルドニア(Gordonia),マイコバクテリウム(Mycobacterium ),ノカルディア(Nocardia),ロドコッカス
Rhodococcus ),ミクロスファエラ(Microsphaera),クリプトスポランギウム
(Cryptosporangium),ミクロコッカス(Micrococcus),アースロバクター(Arthrobacter),ブレビバクテリウム(Brevibacterium),セルロモナス(Cellulomonas),ミクロバクテリウム(Microbacterium),アグロマイセス(Agromyces ),クリオバクテリウム
(Cryobacterium),ミクロモノスポラ(Micromonospora),アクチノプラネス(Actinoplanes),ダクチロスポランギウム(Dactylosporangium),ノカルディオイデス(Nocardioides),シュードノカルディア(Pseudonocardia),アクチノビスポラ(Actinobispora ),アミコラトプシス(Amycolatopsis ),サッカロモノスポラ(Saccharomonospora ),アクチノシネマ(Actinosynnema ),アクチノキネオスポラ(Actinokineospora),ストレプトマイセス(Streptomyces),キタサトスポラ(Kitasatospora ),ストレプトスポランギウム(Streptosporangium ),ミクロビスポラ(Microbispora),ミクロテトラスポラ(Microtetraspora ),ノノムラエ(Nonomuraea),ノカルディオプシス(Nocardiopsis),アクチノマデュラ(Actinomadura),キネオコッカス(Kineococcus ),キネオスポリア(Kineosporia),及びサーモビスポラ(Thermobispora )からなる群より選択されるいずれかの属に属するものを挙げることができる。
【0028】
糸状菌としては,例えば,アクレモニウム(Acremonium),アルテルナリア
Alternaria),アスペルギルス(Aspergillus ),ボーベリア(Beauveria ),ボトリティス(Botorytis )カララ(Chalara ),セルコスポラ(Cercospora),セファロスフォリウム(Cephalosporium),クリソスポリウム(Chrysosporium ),コクシジオイデス(Coccidioides),クリプトコッカス(Cryptococcus),クルブラリア(Curvularia),シリンドロカルポン(Cylindrocarpon),シリンドロクラディウム(Cylindrocladium ),カニングハメラ(Cunninghamella),ドレクスレラ(Drechslera),エピコッカム
Epicoccum ),ユーペニシリウム(Eupenicillium ),フザリウム(Fusarium),ジオトリカム(Geotrichum),グリオクラディウム(Gliocladium),グラフィウム(Graphium),ヘルミントスポリウム(Helminthosporium),ヒアロデンドロン(Hyalodendron),イサリア(Isaria),メタルヒジウム(Metarhizium ),モニリア(Monilia ),モルティレラ(Mortierella ),ムコール(Mucor ),ノデュリオスポリウム(Nodulisporium ),パエシロマイセス(Paecilomyces),ペニシリウム(Penicillium ),ピリキュラリア(Pyricularia ),フィアロマイセス(Phialomyces ),リゾクトニア(Rhizoctonia ),スポロスリクス(Sporopthrix ),トリコヒートン(Trichophyton),トリコデルマ
Trichocderma), 及びトリコセシウム(Trichothecium )からなる群より選択されるいずれかの属に属するものを挙げることができる。
【0029】
二次代謝産物は,例えば,抗菌性抗生物質,制癌性抗生物質,抗寄生虫物質,又は酵素阻害剤であることができる。
【0030】
複合培養は,細胞壁にミコール酸を含有する微生物と被検菌を複合して行う。ミコール酸を細胞壁に含有する微生物及び被検菌は,いずれも単独であっても,或いは,2種以上であってもよい。複合培養の方法や条件は,ミコール酸を含有する微生物及び被検菌の性質を考慮して適宜決定できる。温度,pH,培地栄養源,培養時間は,単独に被検菌を培養した場合と同様の条件で行うことができる。ミコール酸を含有する微生物と被検菌との複合割合については,同量ずつであることが好ましいが,被検菌の生産能力を誘導する点を考慮すると被検菌の菌数を多くしてもよい。
【0031】
ミコール酸を細胞壁に含有する微生物及び被検菌株は,いずれも生菌体として共存した状態で培養することが好ましい。いずれも生菌体として共存した状態で培養することで,被検菌による二次代謝産物の産生を容易に行わせることができる。いずれも生菌体として共存した状態で培養することをここでは複合培養と定義する。実施例に示した産生方法はいずれの場合もミコール酸を細胞壁に含有する微生物を生菌の状態で複合培養している。死菌体や菌体抽出物の添加など,生菌体ではない状態での接触や,透析膜などによって両生菌体の接触を物理的に制限すると,被検菌は二次代謝産物の産生を行わない場合があるため,生菌体同士を複合培養することが好ましい。尚,生菌体とは,培養終了後の複合培養液より菌株が平板分離できる菌体を意味する。
【0032】
培養液中に二次代謝産物が含まれているかの確認は,二次代謝産物の種類に応じて,公知の方法を用いて行うことができる。
【0033】
-製造方法-
本発明の二次代謝産物の製造方法は,ミコール酸を細胞壁に含有する微生物及び少なくとも1種の被検菌である放線菌又は糸状菌を複合して培養し,培養液中に産生される二次代謝産物を採取することを特徴とする。
【0034】
ここで使用されるミコール酸を細胞壁に含有する微生物,及び放線菌又は糸状菌は,上記スクリーニング方法で説明したものと同様である。但し,被検菌である放線菌又は糸状菌は,上記スクリーニング方法で二次代謝産物を生産することが確認された菌であることが適当である。
【0035】
培養方法及び条件も,上記スクリーニング方法で説明したものと同様であるが,所望の二次代謝産物の産生量が多くなるように最適化して行われることが好ましい。培養は,所定量の二次代謝産物が産生され,培養液に蓄積された時点で終了し,培養液から二次代謝産物を採取する。二次代謝産物の採取方法は,二次代謝産物の種類に応じて,公知の方法から適宜選択することができる。
【0036】
上記培養においては,ミコール酸を細胞壁に含有する微生物,及び被検菌である放線菌又は糸状菌は,いずれも生菌体として共存した状態で培養することが好ましい。いずれも生菌体として共存した状態で培養することで,ミコール酸を細胞壁に含有する微生物が放線菌,又は糸状菌を刺激し,放線菌,又は糸状菌の二次代謝生産が開始される。ミコール酸を細胞壁に含有する微生物が生菌体でなければ,放線菌,又は糸状菌の二次代謝生産誘導を示さない場合がある。なお,生菌体の定義は,前述の通りである。
【0037】
-培養物-
本発明は,ミコール酸を細胞壁に含有する微生物に属する少なくとも1種の微生物,及び少なくとも1種の放線菌または糸状菌を複合して培養し,培養液中に二次代謝産物を蓄積させた培養物も包含する。本発明で得られる培養物は,本発明の製造方法において,所定量の二次代謝産物が産生され,培養液に蓄積された時点で培養を終了して得られる培養液であることができる。又は,この培養液をさらに処理や加工したものであることもできる。この培養物は,二次代謝産物を含有しており,そのまま,又は更に処理や加工を施して,二次代謝産物含有物として利用することができる。
【0038】
次に,本発明を,実施例により更に詳細に説明する。
複合培養活性を有する微生物の分離と同定
ニュートリエントブロース軟寒天にストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces
lividans) TK23株の胞子約100万個を混ぜ,ベネットグルコース培地上に重層する。さらにその軟寒天の上に被検菌をエーゼで接種し,30℃で培養する。2~3日後にストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans) が一面に生育した際,被検菌を中心として,赤色色素が誘導されている菌株を得る。赤色色素を誘導したシーエフィシエンス(C.efficiens) NBRC100395株,シーグルタミカム(C.glutamicum)ATCC13869 株,ジールブリペルティンクタ(G.rubripertincta)JCM3204 株,アールコプロフィラス(R.coprophilus)JCM320株,アールエリスロポリス(R.erythropolis)NBRC100887株,アールウラチスラビエンシス(R.wratislaviensis)JCM9689 株,又はアールゾプフィイ(R.zopfii)JCM9919 株を得た。
【0039】
図1には,上記で得られた赤色色素を誘導したシーグルタミカム(C.glutamicum)
ATCC13869 を用いた場合と,用いなかった場合の培養物の写真を,図1に示す。
図1には,ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans )とコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)の液体培養を示す。ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans) (図1の左側L) ,及びコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum) (図1の中央C) のそれぞれの純粋培養では赤色色素生産は見られないが,両者を複合培養すると赤色色素生産が見られ,培養液が赤くなる(図1の右側R) 。即ち,図1の左側Lの培養液は,日本の伝統色でいうと,紅檜皮色であり,黄みの暗い赤色であった。図1の中央Cの培養液は,日本の伝統色でいうと,桜鼠色であり,紫みの明るい灰赤色であった。図1の右側Rの培養液は,日本の伝統色でいうと,桑染色であり,赤みの暗い赤紫色であった(上申書に添付の写真参照)。
【0040】
〔ニュートリエントブロース軟寒天〕
0.8% Nutrient Broth(Difco) ,0.5% 寒天末
〔ベネットグルコース培地〕
0.1%酵母抽出物,0.1%肉エキス(エルリッヒ) ,0.2%NZ Amine
Type A,1%グルコース,2%寒天,pH7.2
【0041】
-実施例1-
ミコール酸生合成阻害剤であるイソニアジドを用いた複合培養方法
ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans) をV-22液体培地で30℃3日間振とう培養した。一方,シーエフィシエンス(C.efficiens) ,シーグルタミカム
(C.glutamicum),アールエリスロポリス(R.erythropolis),アールウラチスラビエンシス(R.wratislaviensis),アールコプロフィラス(R.coprophilus)を培養した場合はV-22液体培地で30℃1日間,アールゾプフィイ(R.zopfii),ジールブリペルティンクタ
(G.rubripertincta)は2日間振とう培養した。イソニアジドをアールウラチスラビエンシス(R.wratislaviensis)には0.01mg/ml,他は1mg/mlの濃度で添加したA-3M培地にストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans) は3%,そして,シーエフィシエンス(C.efficiens) ,シーグルタミカム(C.glutamicum),アールエリスロポリス(R.erythropolis)NBRC100887株,アールウラチスラビエンシス
R.wratislaviensis), アールコプロフィラス(R.coprophilus), アールゾプフィイ
(R.zopfii),ジールブリペルティンクタ(G.rubripertincta)は,それぞれ1%植菌し7日間30℃で振とう培養した。また,イソニアジドを添加しないA-3M培地でも同様に行った。
【0042】
ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans) による赤色色素生産は目視にて判定した。被検菌全てにおいて,赤色色素生産は見られず色素生産誘導はされなかった。イソニアジドを添加した場合と添加していない場合の写真を,図2に示す。イソニアジドを添加した場合は赤色色素生産が誘導されない。これは,ミコール酸が生合成されなくなったために,誘導活性が消失したことを意味している。本実験結果,及び赤色色素誘導活性を有する微生物が全てミコール酸を含有する微生物であることから,細胞壁にミコール酸を含有する微生物においてのみが赤色色素生産誘導活性を有すると結論した。
図2には,ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans )とコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)の液体培養を示す。イソニアジドを添加しない複合培養では赤色色素生産が誘導され,培養液が赤くなる(図2の左側L)が,イソニアジドを添加した複合培養では色素生産が見られないため,培養液の色は培地由来の黄土色のままである(図2の右側R)。即ち,図2の左側Lの培養液は,日本の伝統色でいうと,韓紅花色であり,紫みのさえた赤色であった。図2の右側Rの培養液は,日本の伝統色でいうと,琥珀色であり,黄みの深い黄赤色であった(上申書に添付の写真参照)。
【0043】
〔V-22液体培地〕
0.1%澱粉,0.5%グルコース,0.3%NZ-case,0.2%酵母抽出物,0.5%トリペプトン,0.1%K2 HPO4 ,0.5%MgSO4 ・7H2 O,
0.3%CaCO3 ,pH7.0
〔A-3M培地〕
0.5%グルコース,2.0%グリセロール,2.0%澱粉,1.5%ファーマメディア(Pharmamedia),0.3%酵母抽出物,1.0%HP-20 (脱気した後,pH調整後に複合した) ,pH7.0
【0044】
-実施例2- 複合培養を用いた抗生物質スクリーニング方法
自然環境から分離した放線菌,139株をV-22液体培地で30℃,3日間培養した。
一方,アールエリスロポリス(R.erythropolis)PR4 株, 或いはシーグルタミカム
(C.glutamicum)をV-22液体培地で30℃,1日間培養した。培養液をそれぞれ3%,1%ずつA-3M培地に植菌し,30℃で5~10日間培養した。培養液を等量のブタノールで抽出し,抗菌アッセイ用サンプルとした。
【0045】
抗菌アッセイは被検菌として大腸菌(Escherichia coli),スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus) ,バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis) ,ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus),サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae),カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)の6菌株を用い,10mmのペーパーディスクにサンプルを染みこませ,培地上に静置し,抗菌阻止円の大きさで抗菌活性を判定した。その結果も一部を表1に示す。
【0046】
【表1】
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【0047】
表1には,139株の放線菌との複合培養結果のうちKK001,KK016,KK017,KK020,KK052,KK059,KK076株についての結果を示す。数字は抗菌阻止円の直径をmm単位で表したものである。数字の大きい方が多量の抗菌物質を産生していることを意味する。表1において,「-」は単独培養であり,「Cg,Re」は,アールエリスロポリス(R.erythropolis)PR4 株,或いはシーグルタミカム(C.glutamicum)との複合培養を意味する。表1に示す結果から,単独培養では抗菌成分を産生しない菌体であっても,シーグルタミカム(C.glutamicum)又はアールエリスロポリス(R.erythropolis)PR4 株と複合培養することで,抗菌成分を産生したり増加したりすることが明らかである。純粋培養に比べて,抗菌成分に新たに産生したり,生産量を増加させたりする放線菌は72株,逆に複合培養をすることで抗菌活性が減少したり消失したりする放線菌は78株であった。表1において,単独培養時よりも活性が上がった組み合わせ及び新しく活性が検出された組み合わせの数値に○印を付して表示している。
【0048】
また,純粋培養,及び複合培養における抗菌活性の状況を表2に示す。表2において,純粋培養でのみ抗菌活性を有するものは,2.9%であった。複合培養で新たに抗菌活性を生じるものは,28.1%であった。複合培養すると抗菌活性が増加するものは,
40.3%であった。複合培養すると抗菌活性が消失するものは,39.6%であった。複合培養すると抗菌活性が減少するものは,43.2%であった。
【0049】
【表2】
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【0050】
次に,抗菌アッセイを行った放線菌139株のうち,純粋培養で抗菌活性が見られた放線菌86株について,HPLCによってブタノール抽出物の分析を行った。その結果を表3に示し,クロマトグラムを図3に示す。
【0051】
【表3】
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【0052】
二次代謝産物の生産パターンが純粋培養時と複合培養時で変化している例が多数見られた。HPLCの結果より純粋培養に比べ二次代謝産物の生産量が増大する放線菌がCgとの複合培養で27株であり,Reとの複合培養で41株であり,複合培養すると新たに生産物を生産する放線菌はCgとの複合培養で18株であり,Reとの複合培養で19株であった。
【0053】
図3には,複合培養による二次代謝パターンの変化をHPLCで測定したクロマトグラムを示している。二種類の放線菌Aと放線菌Bを純粋培養及び複合培養した際の培養液を回収し,それをブタノールで抽出したサンプルをHPLCで解析したものである。縦軸は二次代謝産物のパターンを254nmの紫外線の吸光度ピークで示しており,横軸は経過時間(min)を示している。上段より放線菌A又は放線菌Bの純粋培養を示し,中段がアールエリスロポリス(R.erythropolis)(図3では,Reで示す)と放線菌A又は放線菌Bの複合培養を示し, 下段がシーグルタミカム(C.glutamicum)(図3では,Cgで示す)と放線菌A又は放線菌Bの複合培養を示している。図中,矢印は複合培養によって新たに生産が確認できた二次代謝産物のピーク, 若しくは複合培養によって生産量が増大したピークを示している。
【0054】
-実施例3-
複合培養を用いた抗生物質スクリーニング方法(糸状菌)
自然分離糸状菌をF1液体培地で,25℃の条件で3日間培養した。一方,アールエリスロポリス(R.erythropolis)PR4 株,又はシーグルタミカム(C.glutamicum)をLB培地で30℃の条件で1日間培養した。糸状菌を3%,アールエリスロポリス(R.erythropolis)PR4 株,又はシーグルタミカム(C.glutamicum)を1%ずつ,F1液体培地にそれぞれ植菌し,30℃で7日間培養した。培養液を等量のブタノールで抽出し,抗菌アッセイ用サンプルとした。
F1液体培地は次のとおりである。 1%グルコース,2%澱粉,2%ソイプロ,0.1%KH2 PO4
0.05%MgSO4 ・7H2 O,pH無調整。
【0055】
抗菌アッセイは,被検菌としてバチルス・サブチリス(Bacilus subtilis) を用い,
10mmのペーパーディスクにサンプルを染み込ませ,培地上に静置し,抗菌阻止円の大きさで抗菌活性を判定した。その結果を表4に示す。
【0056】
【表4】
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【0057】
表4において,数字は抗菌阻止円の直径をmm単位で表わした。「-」は単独培養であり,Cg,Reは,シーグルタミカム(C.glutamicum)との複合培養,又はアールエリスロポリス(R.erythropolis)PR4 株との複合培養を示している。表4に示す結果から,単独培養では抗菌成分を産生しない菌体であっても,シーグルタミカム(C.glutamicum)との複合培養,又はアールエリスロポリス(R.erythropolis)PR4 株との複合培養することで抗菌成分を新たに生産するようになったことが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0058】
この発明は,抗生物質等の生理活性物質のスクリーニング,及びその製造方法に用いて有用であり,また,それらで得られる培養物を有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】赤色色素を誘導した微生物とシーグルタミカム(C.glutamicum)ATCC13869 株を用いた場合と用いなかった場合の培養物の写真を示す。
【図2】実施例1でイソニアジドを添加した場合と添加しなかった場合のストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans) とシーグルタミカム(C.glutamicum)ATCC13869 株の複合培養物の写真を示す。
【図3】実施例2で得られた培養物の高速液体クロマトグラムを示す。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2