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明細書 :画像処理装置、画像処理プログラム、記憶媒体及び超音波診断装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4879872号 (P4879872)
公開番号 特開2009-148395 (P2009-148395A)
登録日 平成23年12月9日(2011.12.9)
発行日 平成24年2月22日(2012.2.22)
公開日 平成21年7月9日(2009.7.9)
発明の名称または考案の名称 画像処理装置、画像処理プログラム、記憶媒体及び超音波診断装置
国際特許分類 A61B   8/08        (2006.01)
FI A61B 8/08
請求項の数または発明の数 8
全頁数 18
出願番号 特願2007-328325 (P2007-328325)
出願日 平成19年12月20日(2007.12.20)
審査請求日 平成22年11月22日(2010.11.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304019399
【氏名又は名称】国立大学法人岐阜大学
発明者または考案者 【氏名】横田 康成
【氏名】野方 文雄
【氏名】河村 洋子
個別代理人の代理人 【識別番号】100068755、【弁理士】、【氏名又は名称】恩田 博宣
【識別番号】100105957、【弁理士】、【氏名又は名称】恩田 誠
審査官 【審査官】川上 則明
参考文献・文献 特開2005-185575(JP,A)
調査した分野 A61B 8/08
JSTPlus(JDreamII)
JMEDPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
連続したフレームからなる超音波Bモード画像列を取得して、所定のフレームに描画される頸動脈短軸断面の頸動脈壁を推定する頸動脈壁推定手段と、
推定された頸動脈壁及びその周辺組織を含む領域の画像をテンプレート画像とし、このテンプレート画像の頸動脈壁と前記周辺組織を含む領域の画像を、変形させて、変形後のテンプレート画像と、前記取得した各フレームの画像との誤差を最小にすることにより頸動脈壁の径の大きさを推定して頸動脈壁の時間変化を取得する心拍変動追跡手段を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記頸動脈壁推定手段は、
頸動脈の位置と形状を決める頸動脈パラメータが含まれて頸動脈であるらしさを表わす評価関数を最大にすることにより、頸動脈壁を推定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記心拍変動追跡手段は、前記フレームが、フレーム毎に頸動脈の中心が変動している場合には、頸動脈の中心座標のずれも推定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
コンピュータを、
連続したフレームからなる超音波Bモード画像列を取得して、所定のフレームに描画される頸動脈短軸断面の頸動脈壁を推定する頸動脈壁推定手段と、
推定された頸動脈壁及びその周辺組織を含む領域の画像をテンプレート画像とし、このテンプレート画像の頸動脈壁と前記周辺組織を含む領域の画像を、変形させて、変形後のテンプレート画像と、前記取得した各フレームの画像との誤差を最小にすることにより頸動脈壁の径の大きさを推定して頸動脈壁の時間変化を取得する心拍変動追跡手段として機能させることを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項5】
前記頸動脈壁推定手段が、
頸動脈の位置と形状を決める頸動脈パラメータが含まれて頸動脈であるらしさを表わす評価関数を最大にすることにより、頸動脈壁を推定することを特徴とする請求項4に記載の画像処理プログラム。
【請求項6】
前記心拍変動追跡手段が、
前記フレームが、フレーム毎に頸動脈の中心が変動している場合には、頸動脈の中心座標のずれも推定することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の画像処理プログラム。
【請求項7】
請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載の画像処理プログラムを記憶した記憶媒体。
【請求項8】
請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載の画像処理装置に接続され、探触子の超音波送受信により得られたエコー信号を基に生体内の超音波Bモード画像列を生成し、前記画像処理装置に前記超音波Bモード画像列を出力することを特徴とする超音波診断装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理プログラム、記憶媒体及び超音波診断装置に係り、特に、頸動脈の超音波画像の画像処理装置、画像処理プログラム、記憶媒体及び超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
動脈硬化症は、生活習慣の不摂生が危険因子となる生活習慣病の一つであり、自覚症状がほとんどないまま若年層から進行し、放っておくと脳梗塞、心筋梗塞、狭心症などに発展する可能性がある。動脈硬化症は治癒が困難であるため、早期に動脈硬化の兆候をとらえて患者に生活習慣の改善を促し、病気の進行を遅らせることが重要である。
【0003】
動脈硬化症の検査の中で、超音波エコー検査は、非侵襲に血管を直接観察できることから、現在の臨床診断において必要不可欠な検査として定着しつつある。動脈硬化のための超音波エコー検査では、血管内部に付着したプラークと呼ばれる脂肪分の有無や内膜中膜複合体厚(IMT: intima-media complex thickness)を評価する。しかし、動脈硬化初期段階ではプラークもなく、IMTも薄くて計測が困難であるため、こうした形態学的観察では、初期の兆候をとらえることは難しい。
【0004】
これに対し、動脈硬化は動脈が硬化し弾力性を失うことであるから、心拍動に伴う動脈の動きの良さを評価すればよいという考え方がある。プラーク、IMTなどの形態学的計測とは異なり、動脈の動きの定量的計測を行う場合、計算機の援用が不可欠である。
【0005】
特許文献1では頸動脈径の心拍変動を測定することにより、動脈硬化の指標を得ることが提案されている。さらに、本出願人は特願2007-239198号で、超音波Bモード長軸断面像を用いて頸動脈径の心拍変動を推定する方法を提案している。非特許文献1では、Bモード画像上で頸動脈壁の1点を手動で指定したのち、RF信号を用いて指定した頸動脈壁の動きを10μmの精度で追跡する手法を提案し実用化している。非特許文献1では、RF信号を用いているため、一部の超音波診断装置でしか利用できないが、現在のところ最も高い精度を有していると推察される。
【0006】
なお、非特許文献2~5は、出願時の技術水準が記載されている。

【特許文献1】特許第3882084号
【非特許文献1】原田烈光,「エコートラッキング法による動脈硬化指標の計測」,超音波検査技術,Vol.28(3):pp.29-35,2003.
【非特許文献2】ジーエッチ・グランルンド、「フーリエ プレプロセシング フォー ハンド プリント キャラクタ レコグニッシヨン(Fourier preprocessing for hand character recognition)」、IEEE Trans. on Computers, Vol. C-21, pp.195-201,1972.
【非特許文献3】クリス・エル・デ・コルテ他、「キャラクタリゼーション オブ プラーク コンポーネンツ ウイズ イントラバスキュラ ウルトラサウンド エラストグラフィ イン ヒューマン フェモラル アンド コロナリイ アーテェリーズ イン ヴィトロ(Characterization of Plaque Components With Intravascular Ultrasound Elastgraphy in Human Femoral and Coronary Arteries In Vitro)」、
【非特許文献4】ラジ・エー・バルデュシング,クリス・エル・デ・コルテ他,「コンパリソン オブ ファイナイト エレメンツ モデル エラストグラムス アイヴィユーエス エラストグラムス アクワイヤド フロム ファントム アンド アーテェリーズ(Comparison of Finite Elements Model Elastograms and IVUS Elastograms acquied from Phantoms and Arteries)」、IEEE Symposium, pp.1873-1875,2002
【非特許文献5】林香苗、「日本人並びに日本産医学実験動物の解剖及び生理学係数」、第2版(訂正復刻版)、文京書院、1965,pp9
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願人が提案した超音波Bモード長軸断面像を用いて頸動脈径の心拍変動を推定する方法は、頸動脈は長軸(y軸)座標に関わらず長軸においては同質であり、等しい心拍変動を示すという前提条件で行う。多くの場合は、こうした条件で行うことができるが、局所的に動脈硬化が進行するケースもあり、このようなケースでは、前記前提条件を満たさないため、前述の方法を適用することはできない。なお、本明細書では、頸動脈が延びる方向を長軸とし、長軸に直交する平面(横断面)に含まれる軸を短軸という。
【0008】
ところで、局所的に頸動脈に動脈硬化が生ずる場合は、超音波Bモード画像である頸動脈の短軸断面像を使用して頸動脈の心拍変動を推定することが考えられるが、超音波Bモード画像の1画素のサイズは、おおよそ0.07mm~0.11mmであり、十分に高い解像度とはいえない。そのため、1画素よりも細かい精度で心拍変動を捉える技術が不可欠であると考えられていた。
【0009】
又、非特許文献1のようにRF信号を用いる場合には、高いサンプリングレートで行って、位相差追跡法を用いれば高い推定精度を得ることができるが、Bモード画像には適用できない。さらに、非特許文献1では、頸動脈の動きの追跡では、精度の観点からRF信号を用いることが有利であるものの、RF信号を出力可能な超音波診断装置は一部の機種に限られていることから、現時点では一般的とはいえず、汎用性に欠ける。
【0010】
特願2007-239198号では、y軸に延びる頸動脈画像の空間的形状を利用して推定精度を改善している。しかし、短軸(x-z)断面では、下記の理由により形状情報を利用することが難しいため、これまでの方法では、十分な精度で頸動脈の心拍変動を追跡できない問題がある。1つ目は、頸動脈短軸断面形状はおおよそ円形であるが、個人差が大きいため、統一した形状では表現しにくい。2つ目は短軸断面では、超音波画像中の頸動脈が占める面積は、長軸断面の場合に比して小さいため、利用できる空間情報が少ない。
【0011】
本発明の目的は、局所的に頸動脈に動脈硬化が生ずる場合にも、超音波Bモード画像を使用して十分な精度で頸動脈の心拍変動を追跡できる画像処理装置を提供することにある。
【0012】
又、本発明の他の目的は、局所的に頸動脈に動脈硬化が生ずる場合にも、超音波Bモード画像を使用して十分な精度で頸動脈の心拍変動を追跡できる画像処理プログラムを提供することにある。
【0013】
又、本発明の他の目的は、局所的に頸動脈に動脈硬化が生ずる場合にも、超音波Bモード画像を使用して十分な精度で頸動脈の心拍変動を追跡できる画像処理プログラムを記憶した記憶媒体を提供することにある。
【0014】
さらに、本発明の他の目的は、上記画像処理装置を備えた超音波診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、連続したフレームからなる超音波Bモード画像列を取得して、所定のフレームに描画される頸動脈短軸断面の頸動脈壁を推定する頸動脈壁推定手段と、推定された頸動脈壁及びその周辺組織を含む領域の画像をテンプレート画像とし、このテンプレート画像の頸動脈壁と前記周辺組織を含む領域の画像を、変形させて、変形後のテンプレート画像と、前記取得した各フレームの画像との誤差を最小にすることにより頸動脈壁の径の大きさを推定して頸動脈壁の時間変化を取得する心拍変動追跡手段を備えることを特徴とする画像処理装置を要旨とするものである。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1において、前記頸動脈壁推定手段は、頸動脈の位置と形状を決める頸動脈パラメータが含まれて頸動脈であるらしさを表わす評価関数を最大にすることにより、頸動脈壁を推定することを特徴とする。
【0017】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2において、前記心拍変動追跡手段は、前記フレームが、フレーム毎に頸動脈の中心が変動している場合には、頸動脈の中心座標のずれも推定することを特徴とする。
【0018】
請求項4の発明は、コンピュータを、連続したフレームからなる超音波Bモード画像列を取得して、所定のフレームに描画される頸動脈短軸断面の頸動脈壁を推定する頸動脈壁推定手段と、推定された頸動脈壁及びその周辺組織を含む領域の画像をテンプレート画像とし、このテンプレート画像の頸動脈壁と前記周辺組織を含む領域の画像を、変形させて、変形後のテンプレート画像と、前記取得した各フレームの画像との誤差を最小にすることにより頸動脈壁の径の大きさを推定して頸動脈壁の時間変化を取得する心拍変動追跡手段として機能させることを特徴とする画像処理プログラムを要旨とするものである。
【0019】
請求項5の発明は、請求項4において、前記頸動脈壁推定手段が、頸動脈の位置と形状を決める頸動脈パラメータが含まれて頸動脈であるらしさを表わす評価関数を最大にすることにより、頸動脈壁を推定することを特徴とする。
【0020】
請求項6の発明は、請求項4又は請求項5において、前記心拍変動追跡手段が、前記フレームが、フレーム毎に頸動脈の中心が変動している場合には、頸動脈の中心座標のずれも推定することを特徴とする。
【0021】
請求項7の発明は、請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載の画像処理プログラムを記憶した記憶媒体を要旨とするものである。
請求項8の発明は、請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載の画像処理装置に接続され、探触子の超音波送受信により得られたエコー信号を基に生体内の超音波Bモード画像列を生成し、前記画像処理装置に前記超音波Bモード画像列を出力することを特徴とする超音波診断装置を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明によれば、局所的に頸動脈に動脈硬化が生ずる場合にも、超音波Bモード画像を使用して十分な精度で頸動脈の心拍変動を追跡できる効果を奏する。特に、超音波Bモード画像の1画素のサイズは、おおよそ0.07mm~0.11mmであり、十分に高い解像度とはいえないにも拘わらず、頸動脈とともにその周辺組織をも考慮することにより十分な精度で頸動脈の心拍変動を追跡できる意義はおおきいといえる。又、超音波Bモード画像を取得することができる一般的な超音波診断装置を使用することができるため、汎用性に富むことができる。
【0023】
請求項2の発明によれば、頸動脈壁推定手段が、頸動脈の位置と形状を決める頸動脈パラメータが含まれて頸動脈であるらしさを表わす評価関数を最大にすることにより、頸動脈壁を容易に推定することができる。
【0024】
請求項3の発明によれば、心拍変動追跡手段が、前記フレームが、フレーム毎に頸動脈の中心が変動している場合には、頸動脈の中心座標のずれも推定することにより、フレーム毎に中心が変動している場合においても、請求項2、又は請求項1の効果を容易に奏することができる。
【0025】
請求項4の発明によれば、局所的に頸動脈に動脈硬化が生ずる場合にも、超音波Bモード画像を使用して十分な精度で頸動脈の心拍変動を追跡できる画像処理装置としてコンピュータを機能させることができる画像処理プログラムを提供できる。
【0026】
請求項5の発明によれば、コンピュータを、頸動脈の位置と形状を決める頸動脈パラメータが含まれて頸動脈であるらしさを表わす評価関数を最大にすることにより、頸動脈壁を容易に推定することができる画像処理装置として機能させることができる画像処理プログラムを提供できる。
【0027】
請求項6の発明によれば、コンピュータを、フレームが、フレーム毎に頸動脈の中心が変動している場合には、頸動脈の中心座標のずれも推定することにより、頸動脈の心拍変動を容易に追跡することができる画像処理装置として機能させることができる画像処理プログラムを提供できる。
【0028】
請求項7の発明によれば、局所的に頸動脈に動脈硬化が生ずる場合にも、超音波Bモード画像を使用して十分な精度で頸動脈の心拍変動を追跡できる画像処理装置としてコンピュータを機能させることができる画像処理プログラムを記憶した記憶媒体を提供できる。
【0029】
請求項8の発明によれば、請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載の効果を備えた超音波診断装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1~13を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の画像処理装置11は、頸動脈壁推定手段、心拍変動追跡手段としてのコンピュータ12、ディスプレイ13、プリンタ14、キーボード15、及び超音波診断装置16を備えている。
【0031】
前記超音波診断装置16は、探触子21、表示部22及び図示しない超音波発生源が備えられている。超音波診断装置16は、探触子21の先端面から生体内にパルス波を送波するとともに頸動脈23からの反射波(エコー信号)を受波する。この超音波診断装置16は、前記探触子21の先端面が長四角形状に形成されており、前記エコー信号に基づいて頸動脈23のBモードで取得された短軸断面形状(すなわち、頸動脈短軸断面形状)を含むエコー動画像(すなわち、Bモード画像)を生成する。このエコー動画像は、超音波Bモード画像列に相当する。超音波診断装置16の表示部22には、被検者の頸動脈23が拡張収縮変形する際の動画像が表示される。なお、図5には、頸動脈短軸断面での座標系を示している。
【0032】
超音波診断装置16のビデオ出力から前記Bモード画像が出力され、図示しないDVコンバータにより所定の解像度(m×n画素)、所定数のフレーム/秒でビデオキャプチャされた後、IEEE1394信号として、コンピュータ12に入力される。所定数のフレーム/秒は、本実施形態では30フレーム/秒としているが、この値が限定されるものではなく、頸動脈の心拍動の変化を明確に観測できる値であればよい。
【0033】
また、ディスプレイ13で表示される超音波画像領域の画素数は、水平方向にNx、垂直方向にNyである。本実施形態では、ディスプレイ13で表示される超音波画像領域の画素数は、Nx=540(pixel),Ny=420(pixel)としているが、この数値に限定されるものではない。
【0034】
前記超音波診断装置16により取得されたエコー動画像がコンピュータ12に入力されたコンピュータ12が備える記憶装置44に格納される。前記記憶装置44は、例えばハードディスクや半導体記憶装置からなり、前述した前記各種情報の読み出し及び書き込みが可能である。
【0035】
図2に示すように、コンピュータ12はCPU41(中央処理装置)、ROM42、RAM43を備え、記憶媒体としてのROM42に格納された画像処理プログラムを実行する。RAM43は、前記プログラムを実行する際の作業用メモリである。
【0036】
(実施形態の作用)
次に上記のように構成された画像処理装置11において、CPU41が実行する画像処理プログラムの処理を説明するが、このプログラム処理の説明の前に「頸動脈、及び周辺組織の応力・歪み特性、二層円筒モデル、並びに心拍変動追跡法の概略」について説明する。
【0037】
(頸動脈、及び周辺組織の応力・歪み特性)
頸動脈は心拍動により拡張・収縮を繰り返すが、それに伴い頸動脈の周辺にある脂肪などの周辺組織もまた押し縮められ、復元する。一般にこうした物質の応力と歪みの関係は材料力学の立場から示される。
【0038】
図3に、超音波Bモード画像における頸動脈の短軸断面画像(以下、単に断面画像又は単に画像という)が示されている。図3において、ほぼ中央の円形のものが頸動脈50であり、黒い部分(図においてはハッチング部分)が頸動脈内腔50a、周辺の白い部分環状部分が頸動脈の血管壁(以下では頸動脈壁50bという)であり、その周囲に脂肪などの周辺組織がある。
【0039】
(二層円筒モデル)
ここで頸動脈と周辺組織を、図4に示すように一様な二層円筒(材料力学的には二層厚肉円筒)でモデル化する。頸動脈壁の内径(内半径)をrとし、外半径(外径)をrとする。周辺組織は、rから無限遠まで存在するものとする。頸動脈壁の弾性係数をEとする。頸動脈壁の外側には、r,rに比べ十分大きな半径まで脂肪などの周辺組織があり、その周辺組織の弾性係数をEとする。また、頸動脈壁、周辺組織のポアソン比をいずれも0.5とする。一般的には、この半径r,rは、内圧0の時を考えるが、生体の場合、内圧すなわち血圧が0の状態を考えられないため、ある適当な内圧(血圧)がかかっている場合を基準内圧とする。この基準内圧からさらに内圧(血圧)Pが頸動脈に加えられた際の半径rでの半径方向の変位d(r)は、二層円筒モデルの理論式(1)で表わすことができる。
【0040】
【数1】
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すなわち、半径rにある組織は、内圧Pにより、半径r+d(r)に移動する。内圧Pが正の場合、変位dは正、つまり拡張し、内圧Pが負の場合、変位dは負、すなわち収縮を表わす。
【0041】
式(1)にr=rを代入すれば、頸動脈壁の内面(以下、頸動脈内壁という)での変位は、
【0042】
【数2】
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となる。ここで、生理学的見地から、頸動脈の弾性係数Eと周辺組織Eの弾性係数は、それほど大きく違わないことが非特許文献3,4から分かっている。また、頸動脈壁の厚みW=r-rは、20,30歳代で約0.73mm、40歳代で約0.79mm、50歳代で約0.98mm、60歳代で約1.00mm、70歳代で約1.04mm程度であることが、非特許文献5で分かっており、頸動脈の直径(6-12mm)や周辺組織の厚みに比べて十分に薄いといえる。以上のことから、式(1)は、
【0043】
【数3】
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と近似できる。
【0044】
この式(3)は、心収縮、すなわち、血圧上昇により、頸動脈は拡張するが、周辺組織もまた拡張し、その拡張の度合い、つまり変位は、頸動脈中心からの距離rに反比例することを意味している。この一例として、E=200kPa、E=100kPa、r=4.0mm、r=4.8mm、P=40mmHg(=5.3kPa)の時の半径rと変位d(r; P, r1, r2, E1, E2)の関係を図6に示す。この条件において、基準血圧からの内圧をP=-10,0,20,40mmHgとした際の「半径-変位曲線」の一例を図7に示す。同図に示すように内径rと変位dとの関係は、内圧P(血圧)に関わりなく、反比例で表わされる。
【0045】
(心拍変動追跡法の概略)
ここで、最も重要なことは式(3)は反比例を表わす式であるため、図6,7のグラフ中、例えば、頸動脈壁の内径rとその点での変位dが与えられれば、周辺組織も含めて任意の半径rでの変位は完全に決定できる。すなわち、1フレームの断面画像Img1(テンプレート画像)があったとき、その画像における頸動脈壁の内径rが分かっていれば、その画像を用いて式(3)のように変形させれば、その他の任意の血圧時における断面画像Img2(変形後のテンプレート画像)を模擬的に作成できる。その際、拡張、或いは収縮の度合いを制御するパラメータはdのみである。
【0046】
断面画像Img1からdにより模擬的に作成した画像(変形後のテンプレート画像)と、計測された断面画像Img2の差を最小にするようにパラメータdを決定すれば、それは、元の断面画像Img1からの断面画像Img2における変位dの推定値となっている。すなわち、断面画像Img1では頸動脈壁の内径がrであったが、計測された断面画像Img2では頸動脈壁の内径がr+dになったと解釈できる。
【0047】
これを計測されたすべての断面画像について行えば、頸動脈壁の内径の時間変化を追跡できたことになる。
この心拍変動追跡法のポイントは、頸動脈壁の心拍変動を追跡するために、頸動脈の周辺組織の心拍動による変位を利用していることである。頸動脈壁の動きを追跡することは、線の追跡であるのに対し、こうした方法では、面の追跡となっており、追跡の精度を大幅に改善でき、さらに、利用できる面(すなわち、周辺組織)の面積が大きければ、それだけ精度改善ができる。
【0048】
(画像処理プログラムの処理)
次に画像処理装置11において、CPU41が実行する画像処理プログラムの処理を説明する。CPU41は、図10のS10~S40の処理を行うことにより、頸動脈の心拍変動追跡を行う。又、心拍変動追跡法の概念を図12に示す。
【0049】
S10では、CPU41は、断面画像列(すなわち、動画像)を取得して計測する。ここで、取得された超音波Bモード画像列をI(x,y,t),x=1,...,Nx,y=1,...,Ny,t=1,...,Ntとする。x,y,tはそれぞれ水平方向の画素番号、垂直方向の画素番号、フレーム番号を表わす。たたじ、画像の左上をx=1,y=1とする。また、Nx,Ny,Ntは水平方向の画素総数、垂直方向の画素総数、フレーム総数を表わす。1枚の画像に着目する場合は、I(x,y)、x=1,...,Nx,y=1,...,Nyと書く。
【0050】
S20では、断面画像列の中の適当な1つのフレーム(所定フレーム)の画像Img1について、頸動脈内壁の位置と形状r(θ)を推定する(図9参照)。なお、詳細は後述する。
【0051】
S30では、CPU41は、所定のフレームの画像を式(3)により心拍変動を与えた画像とその他のフレームの画像の誤差を最小にするように、変位dを推定する。そして、上記の処理を全てのフレームについて行い、変位の時間変化d(t)を得る。なお、詳細は後述する。
【0052】
S40では、頸動脈形状、つまり、頸動脈壁の内径の時間変化を、r(θ)+d(t)としてディスプレイ13やプリンタ14の出力装置に出力する。
(一つのフレームの画像での頸動脈壁の内径r(θ)の推定;S20の詳細)
前記S20においては、CPU41は、画像列中の適当な一つのフレームの画像Img1を選択し、その画像中の頸動脈壁の内径r(θ)を推定する。この選択されるフレームは、限定されるものではなく、無作為に選択しても、最初のフレームでもよい。或いは、この選択されるフレームは、頸動脈が最も鮮明に映っているフレーム、頸動脈収縮期にあるフレーム、頸動脈拡張期にあるフレームとしてもよい。
【0053】
頸動脈内壁は、真円、もしくは、多少歪んだ円である。そこで、頸動脈内壁の内径r(θ)、すなわち、頸動脈短軸断面での頸動脈内壁形状は、閉曲線を表現するためのフーリェ記述子でモデル化する。なお、フーリェ記述子については非特許文献2に記載されている。
【0054】
フーリェ記述子で頸動脈内壁形状、すなわち頸動脈壁をモデル化するにあたり、画像の座標x,yを複素数x+iyで表わすものとする。ただし、iは虚数単位を表わす。フーリェ記述子fは媒介変数sを用いて、複素平面上の閉曲線を
【0055】
【数4】
JP0004879872B2_000005t.gif
として表現する。cはフーリェ記述子と呼ばれ、閉曲線の位置や形状を決めるパラメータである。また、整数Kを大きな値にするほど入り組んだ複雑な閉曲線を表現できるようになる。なお、頸動脈の場合、K=5程度とすればよいが、この値に限定されるものではない。これらのフーリェ記述子により頸動脈の形状が規定されるから、これらのフーリェ記述子をまとめて頸動脈パラメータp={ck|k=0,±1,±2,....,±K}と呼ぶことにする。
【0056】
頸動脈内腔は、閉曲線f(s)で囲まれる領域であり、これらの領域に含まれる画素(x,y)の集合をTとする。また、頸動脈壁の厚みをWとして、Tから距離W以下の距離にある画素(x,y)の集合を頸動脈壁を表わす画素(x,y)の集合と考え、これを集合Bとおく。集合Bは次式で与えられる。
【0057】
【数5】
JP0004879872B2_000006t.gif
画像において、頸動脈壁は強いエコーのために白く、頸動脈内腔はエコーが弱いため黒く描かれる。すなわち、頸動脈壁を表わすBでは画素値が大きく、頸動脈壁内腔を表わすTでは画素値は小さくなる。そこで、位置・形状を与える頸動脈パラメータpに対し、それが頸動脈であるらしさを表わす以下の評価関数を導入する。
【0058】
【数6】
JP0004879872B2_000007t.gif
ただし、α、βは、いずれも正値の定数であり、|・|は、集合の要素数を表わす。右辺第1項は、頸動脈壁の想定する位置で画素値が大きい、つまり白いほど大きな値をとり、第2項は、頸動脈内腔と想定される位置で画素値が小さい、つまり黒いほど大きな値をとる。第3項において、g(A;Amin,Amax)は次式で表わされる関数である。
【0059】
【数7】
JP0004879872B2_000008t.gif
ここで、Aは内腔部、すなわち、集合Tの面積を表わし、Amin,Amaxは、それぞれ頸動脈内腔面積の考え得る最小値と最大値である。式(6)の第3項は、その範囲を外れた場合のペナルティを表わす。Amin,Amaxは収集した画像サンプルに基づいて予め固定値として入力して設定される。例えば、Amin=20(mm),Amax=110(mm)の値等が設定されるが、この値に限定されるものではない。また、βはコンピュータにおいて、丸め誤差が生じない程度に十分な大きな正数を選択すればよい。式(6)において、αは頸動脈壁と頸動脈内腔でのエコーの強さの比、超音波診断装置16の画像出力などの仕様に依存するが、予備試験によりα=2.0程度を選択すればよい。
【0060】
なお、式(6)は、重み
【0061】
【数8】
JP0004879872B2_000009t.gif
を定義すれば、
【0062】
【数9】
JP0004879872B2_000010t.gif
と書くこともできる。
【0063】
この重み関数w(x,y;p)の例を図8に示す。
画像I(x,y)における頸動脈の位置と形状、すなわち頸動脈パラメータpの値は、式(6)、若しくは式(9)で与えられるE(p)を最大にするように決定する。こうしたパラメータの値は解析的には求められないため、最急降下法などの非線形最適化法を利用して求める。なお、画像中には、頸動脈に類似した円形の組織はないため、局所解に陥ることは少ない。
【0064】
CPU41は、得られた頸動脈内壁の輪郭線、すなわち、閉曲線f(s),0≦s≦1から頸動脈壁のθ毎の内径r(θ)は以下のように求める。まず、頸動脈の中心座標は、0次フーリェ記述子c0を用いて(Re(c0),Im(c0))で与えられる。ただし、Re(・),Im(・)はそれぞれ「・」の実部、虚部を表わす。従って、頸動脈の中心から見た輪郭線はf(s)-c0,0≦s≦1となるから、ある媒介変数sでの値での動径r(s)と偏角θ(s)は、それぞれ
【0065】
【数10】
JP0004879872B2_000011t.gif

【0066】
【数11】
JP0004879872B2_000012t.gif
となる。そして、媒介変数sを外し、r(s)をθ(s)の関数と見たものが頸動脈内壁の形状の極座標表示r(θ),0≦θ≦2πとなる。
【0067】
CPU41により推定された頸動脈壁(頸動脈内壁)の輪郭線、すなわち、内径r(θ)の一例を図11に示す。図11において、Qが頸動脈の輪郭線を示している。
(他のフレームの画像での頸動脈の変位dの推定;S30の詳細)
上記のように推定された頸動脈内壁とその周辺組織を適当に含む領域をCPU41は、切り出す。すなわち、上記フレームの画像Img1において、推定された頸動脈の中心を原点として極座標表示されたものをテンプレート画像template(r,θ)とする。
【0068】
又、CPU41は、任意のフレーム(t番目のフレーム)の画像について、前記S20で推定された頸動脈の中心を原点として極座標表示したものをI(r,θ,t)で表わす。
【0069】
原理的には、任意のフレームでの頸動脈、及び周辺組織を含む画像I(r,θ,t)は、テンプレート画像を適当なdにより変形、すなわち、拡張、或いは収縮させて
【0070】
【数12】
JP0004879872B2_000013t.gif
と近似できる。この近似の2乗誤差
【0071】
【数13】
JP0004879872B2_000014t.gif
を最小にするように、すなわち、
【0072】
【数14】
JP0004879872B2_000015t.gif
として、CPU41は、dを決定する。このdが時刻tにおける変位となる(図9参照)。
【0073】
ところで、rは2乗誤差を評価するために利用される領域の半径であり、rを大きくすると、すなわち、周辺組織をより多く含むように切り出すと、頸動脈形状の心拍変動の推定に利用できる領域が増え、推定精度も高くなることが期待できる。しかし、一方、むやみに周辺組織をより多く含むように切り出すと、周辺組織の非一様性などの影響もでてきて、逆に推定精度を悪化させることになる。この場合、頸動脈壁の内径r(θ)の2~3倍程度の半径の周辺組織を含むように切り出すのが好ましい。
【0074】
ここで、一例として、あるフレームの画像について、テンプレート画像との2乗誤差を算出した結果が図12に示されている。ただし、rは、平均の半径
【0075】
【数15】
JP0004879872B2_000016t.gif
を表わす。この図12では、変化率d/r=0.08で2乗誤差Jが最小になっており、この値が変位の推定値となる。図12では、変化率と2乗誤差Jの関係を示している。
【0076】
こうした処理をCPU41は、テンプレート画像に使用したフレームを除いて、取得したすべてのフレームについて行うことにより、変位の時間変化d(t)を得る。この結果、頸動脈壁の角θ方向の半径変化は、r(θ)+d(t)となり、CPU41により、頸動脈形状の心拍変動の追跡が行われたことになる。
【0077】
(頸動脈の中心が変動している場合)
CPU41は、頸動脈の中心位置が変動している場合には、dだけでなく、中心座標のずれ(x0,y0)も合わせて推定する。
【0078】
この場合、I(r,θ,t)の中心座標を(x0,y0)だけシフトさせた画像をI’(r,θ,t)とし、式(13),式(14)の代わりに
【0079】
【数16】
JP0004879872B2_000017t.gif

【0080】
【数17】
JP0004879872B2_000018t.gif
とする。
【0081】
また、元のテンプレート画像template(r,θ)から心拍変動を与えた画像template(r+d(r;r(θ),d),θ)を作成する際、標本点(画素)の位置は、画像を伸縮させるため、元のテンプレート画像とは異なる。このままでは、計測画素I(r,θ,t)との誤差を評価できないため、標本点を一致させるリ・サンプリングを行う必要がある。上記の説明では、2次元線形補間を利用しているが、その他、モーフィングなどで利用される様々な補間(内挿)技術、例えば、2次元キュービック補間、2次元スプライン補間などの補間(内挿)法を利用できる。
【0082】
(推定結果)
20歳と60歳の健常男性に対する頸動脈超音波Bモード画像列の動画像を取得して、それらの頸動脈形状の心拍変動(θ=0度方向の半径変化r(θ)+d(t)),0≦t≦4(秒)の推定結果を図13(a)~(l)に示す。図13(a)~(f)は20歳健常男性、図13(g)~(l)は60歳健常男性に対する頸動脈形状の心拍変動の推定結果である。図13(a)~(l)において、縦軸は頸動脈の半径(mm)であり、横軸は時間(s)である。図13(a)~(f)及び図13(g)~(l)のそれぞれにおいて順に末端側(脳側)から心臓側へ5mm間隔毎に頸動脈短軸断面を移動させて頸動脈の心拍変動を推定した結果が示されている。なお、図13(g)~(l)の縦軸のスケールは、図13(a)~(l)の縦軸のスケールに対して2倍ほど異なる。
【0083】
20歳男性に対する頸動脈の心拍変動は、大きくはっきりとしている。一方、60歳男性に対する頸動脈の心拍変動は、小さく、周期性も乏しい。又、20歳男性においてはどの断面でも同じような心拍変動を示しているが、図13(h)及び図13(k)に示すように60歳男性での頸動脈の短軸断面では、その他の部位に比べ心拍変動がやや小さく、局所的に動脈硬化が進んでいることが予想される。
【0084】
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1) 本実施形態の画像処理装置11は、コンピュータ12が頸動脈壁推定手段として、連続したフレームからなる超音波Bモード画像列を取得して、所定のフレームに描画される頸動脈短軸断面の頸動脈壁を推定するようにしている。そして、コンピュータ12が心拍変動追跡手段として推定された頸動脈壁及びその周辺組織を含む領域のテンプレート画像の頸動脈壁と前記周辺組織を含む領域の画像を変形させ、変形後のテンプレート画像と、取得した各フレームの画像との誤差を最小にすることにより頸動脈壁の径の大きさを推定して頸動脈壁の時間変化を取得するようにしている。
【0085】
この結果、本実施形態では、局所的に頸動脈に動脈硬化が生ずる場合にも、超音波Bモード画像を使用して十分な精度で頸動脈の心拍変動を追跡できる。特に、超音波Bモード画像の1画素のサイズは、おおよそ0.07mm~0.11mmであり、十分に高い解像度とはいえないにも拘わらず、頸動脈とともにその周辺組織をも考慮することにより十分な精度で頸動脈の心拍変動を追跡できる。さらに、超音波Bモード画像を取得することができる一般的な超音波診断装置を使用することができるため、汎用性に富むことができる。
【0086】
(2) また、本実施形態の画像処理装置11は、コンピュータ12が、頸動脈壁推定手段として、頸動脈の位置と形状を決める頸動脈パラメータが含まれて頸動脈であるらしさを表わす評価関数を最大にすることにより、頸動脈壁を推定する。この結果、頸動脈壁を容易に推定することができる。
【0087】
(3) 本実施形態の画像処理装置11は、コンピュータ12が、心拍変動追跡手段として、フレームが、フレーム毎に頸動脈の中心が変動している場合においても、頸動脈の中心座標のずれも推定するようにした。この結果、フレームが、フレーム毎に頸動脈の中心が変動している場合においても、頸動脈壁を容易に推定することができる。
【0088】
(4) 本実施形態の画像処理プログラムは、コンピュータ12を、頸動脈壁推定手段として、連続したフレームからなる超音波Bモード画像列を取得して、所定のフレームに描画される頸動脈短軸断面の頸動脈壁を推定させる。又、画像処理プログラムは、コンピュータ12を、心拍変動追跡手段として、前記推定された頸動脈壁及びその周辺組織を含む領域の画像をテンプレート画像とし、同画像の頸動脈壁と前記周辺組織を含む領域の画像を変形させる。そして、画像処理プログラムは、コンピュータ12を、心拍変動追跡手段として、変形後のテンプレート画像と、取得した各フレームの画像との誤差を最小にすることにより頸動脈壁の径の大きさを推定して頸動脈壁の時間変化を取得させる。この結果、局所的に頸動脈に動脈硬化が生ずる場合にも、超音波Bモード画像を使用して十分な精度で頸動脈の心拍変動を追跡できる画像処理装置としてコンピュータを機能させることができる画像処理プログラムを提供できる。
【0089】
(5) 本実施形態の画像処理プログラムは、コンピュータ12を、頸動脈壁推定手段として、頸動脈の位置と形状を決める頸動脈パラメータが含まれて頸動脈であるらしさを表わす評価関数を最大にすることにより、頸動脈壁を推定させる。この結果、頸動脈壁を容易に推定することができる画像処理プログラムを提供できる。
【0090】
(6) 本実施形態の画像処理プログラムは、コンピュータ12を、心拍変動追跡手段として、フレームが、フレーム毎に頸動脈の中心が変動している場合には、頸動脈の中心座標のずれも推定させる。この結果、頸動脈の心拍変動を容易に追跡することができる画像処理装置として機能させることができる画像処理プログラムを提供できる。
【0091】
(7) 本実施形態のROM42は、前記画像処理プログラムを記憶した記憶媒体とした。この結果、局所的に頸動脈に動脈硬化が生ずる場合にも、超音波Bモード画像を使用して十分な精度で頸動脈の心拍変動を追跡できる画像処理プログラムを記憶した記憶媒体を提供できる。
【0092】
(8) 本実施形態の超音波診断装置16は、画像処理装置11に接続されているため、上記(1)乃至(3)の効果を容易に実現できる超音波診断装置となる。
なお、前記実施形態を次のように変更して構成することもできる。
【0093】
○ 前記実施形態では、ROM42を画像処理プログラムを記憶する記憶媒体としたが、記憶装置44を画像処理プログラムを記憶する記憶媒体にしてもよく、或いは、CDや、DVD、USBメモリ等の記憶媒体に画像処理プログラムを格納して、CDやDVD等の記憶媒体を読込みするドライバ装置等にて読込みして実行するようにしてもよい。
【0094】
○ 前記動脈硬化解析結果は、ディスプレイ13またはプリンタ14のいずれか一方のみから出力されているように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明を具体化した一実施形態の画像処理装置11の概略図。
【図2】画像処理装置11の概略電気ブロック図。
【図3】超音波Bモード画像における頸動脈の短軸断面画像。
【図4】二層円筒モデルの説明図。
【図5】頸動脈短軸断面での座標系の説明図。
【図6】半径rと変位d(r; P,r1,r2,E1,E2)の関係を示すグラフ。
【図7】基準血圧との差を-10,0,20,40mmHgとした際の半径-変位曲線の説明図。
【図8】重み関数wの説明図。
【図9】心拍変動追跡法の概念図。
【図10】コンピュータ12が処理する画像処理プログラムのフローチャート。
【図11】CPU41により推定された頸動脈壁(頸動脈内壁)の輪郭線Qの説明図。
【図12】変化率d/rと変化率と2乗誤差Jの関係を示すグラフ。
【図13】(a)~(f)は20歳の健常男性に対する頸動脈に対する推定結果の説明図、(g)~(l)は60歳の健常男性に対する頸動脈に対する推定結果の説明図。
【符号の説明】
【0096】
11…画像処理装置、
12…コンピュータ(頸動脈壁推定手段、心拍変動追跡手段)、
13…ディスプレイ、16…医用超音波装置、
21…探触子、42…ROM(記憶媒体)。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12