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明細書 :往復機械用振動除去装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5103653号 (P5103653)
公開番号 特開2009-222135 (P2009-222135A)
登録日 平成24年10月12日(2012.10.12)
発行日 平成24年12月19日(2012.12.19)
公開日 平成21年10月1日(2009.10.1)
発明の名称または考案の名称 往復機械用振動除去装置
国際特許分類 F16F  15/26        (2006.01)
F02B  77/00        (2006.01)
FI F16F 15/26 N
F16F 15/26 R
F02B 77/00 L
F16F 15/26 L
請求項の数または発明の数 2
全頁数 8
出願番号 特願2008-067238 (P2008-067238)
出願日 平成20年3月17日(2008.3.17)
審査請求日 平成23年3月15日(2011.3.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504224153
【氏名又は名称】国立大学法人 宮崎大学
発明者または考案者 【氏名】岡部 匡
個別代理人の代理人 【識別番号】240000039、【弁護士】、【氏名又は名称】弁護士法人 衞藤法律特許事務所
審査官 【審査官】竹村 秀康
参考文献・文献 実開昭52-071601(JP,U)
実公昭48-043281(JP,Y1)
実開平02-146250(JP,U)
特開平04-029642(JP,A)
調査した分野 F16F 15/26
F02B 77/00
特許請求の範囲 【請求項1】
スライダ・クランク機構を用いた往復機械において、該クランク機構のクランク軸に設けられた一対のつり合い錘と、該クランク軸と平行に配設され、該クランク軸と1次バランスシャフトに設けられた歯車対、又はプーリーとタイミングベルトから構成される第一の回転伝達機構によって夫々前記クランク軸の回転数と同一回転数、且つ逆方向に回転する一対の1次バランスシャフトと、該1次バランスシャフトの軸方向中央部に保持され、前記2次バランスシャフトの端部に設けられた外歯車と、該外歯車と歯合すると同時に前記1次バランスシャフトを挿通し、架台に固定された内歯車とから構成される第二の回転伝達機構によって前記クランク軸の回転数の2倍の回転数で1次バランスシャフトと逆方向に回転する一対の2次バランスシャフトを備え、前記1次バランスシャフトと2次バランスシャフトの夫々の重心位置が、クランク機構のスライダ部重心軸に対して対称位置であり、且つ前記クランク機構のコンロッドとクランクの運動平面と同一平面上とされたことを特徴とする往復機械用振動除去装置。
【請求項2】
前記1次バランスシャフトおよび2次バランスシャフトは、柱状部材の重心位置を回転軸から径方向にずらして形成されたことを特徴とする請求項1記載の往復機械用振動除去装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、スライダ・クランク機構で駆動される往復機械の振動除去装置であって、とくに単一のスライダ・クランク機構の振動を防止する往復機械用振動除去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジン、ポンプ、空気圧縮機など、回転運動を往復運動へ、または往復運動を回転運動に変換する機構として、スライダ・スランク機構が広く利用されている。この機構においては、往復運動部(スライダ)、クランク、コネクティングロッド(以下コンロッドと呼ぶ)の運動に起因した不つり合い慣性力を励振力として、有害な振動や騒音が発生する。この不つり合い慣性力は、クランクのクランク軸の回転と同期した1次成分以外に、クランク軸1回転あたり偶数回変動する高次成分を有する。
【0003】
例えば、自動車用の多気筒エンジンのように、複数個のスライダ・クランク機構を直列に連結した機械の場合、各気筒の位相をずらすことによって、上記の不つり合い慣性力の1次成分のつり合わせを行なうことが可能であり、振動を低減することができる。
【0004】
しかしながら、単気筒エンジンのように単一のスライダ・クランク機構のみで構成される往復機械の場合、上記の不つり合い慣性力の1次および高次成分をつり合わせを行なうことは困難である。
【0005】
そこで、エンジンのクランクケースとリコイルスタータとの間に、クランク軸に連動して、互いに反対方向に、かつ回転位相に対称に回転する一対の重錘をクランク軸と等しい回転速度で回転して設け、エンジンの往復運動部分の運動と、この往復運動方向における重錘の運動を互いに反対方向に設けたバランサー付エンジンが提案されている(特許文献1参照。)。
【0006】

【特許文献1】特開平05-149387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら上記のバランサー付エンジンは、単気筒エンジンの1次慣性力をつり合わせる構造であり、2次慣性力に関しては何ら考慮したものではなく、十分な振動除去ができるものではなかった。
【0008】
上記の問題点に鑑み本発明者は、鋭意研究の結果、単一のスライダ・クランク機構による往復機械において、つり合い錘と2種のバランスシャフトを用いることによって、1次および2次の慣性力をつり合わせ、この慣性力のつり合わせによる1次および2次振動の除去を可能とする往復機械用振動除去装置を提供するにいたった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このため本発明の往復機械用振動除去装置は、スライダ・クランク機構を用いた往復機械において、該クランク機構のクランク軸に設けられた一対のつり合い錘と、該クランク軸と平行に配設され、該クランク軸と1次バランスシャフトに設けられた歯車対、又はプーリーとタイミングベルトから構成される第一の回転伝達機構によって夫々前記クランク軸の回転数と同一回転数、且つ逆方向に回転する一対の1次バランスシャフトと、該1次バランスシャフトの軸方向中央部に保持され、前記2次バランスシャフトの端部に設けられた外歯車と、該外歯車と歯合すると同時に前記1次バランスシャフトを挿通し、架台に固定された内歯車とから構成される第二の回転伝達機構によって前記クランク軸の回転数の2倍の回転数で1次バランスシャフトと逆方向に回転する一対の2次バランスシャフトを備え、前記1次バランスシャフトと2次バランスシャフトの夫々の重心位置が、クランク機構のスライダ部重心軸に対して対称位置であり、且つ前記クランク機構のコンロッドとクランクの運動平面と同一平面上とされたことを第1の特徴とする。
【0012】
しかも、前記1次バランスシャフトおよび2次バランスシャフトは、柱状部材の重心位置を回転軸から径方向にずらして形成されたことを第4の特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る往復機械用振動除去装置によれば、クランク機構のクランク軸に設けられたつり合い錘と、該クランク軸と平行に配設され、第一の回転伝達機構によって夫々逆方向に回転する一対の1次バランスシャフトと、該1次バランスシャフトの軸方向中央部に保持され、第二の回転伝達機構によって前記クランク軸の回転数の2倍の回転数で1次バランスシャフトと逆方向に回転する一対の2次バランスシャフトを備えているため、往復機械の振動源である1次、2次の不つり合い慣性力を除去できるという優れた効果を有する。
【0014】
また、前記1次バランスシャフトと2次バランスシャフトの夫々の重心位置が、クランク機構のスライダ部重心軸に対して対称位置であり、且つ前記クランク機構のコンロッドとクランクの運動平面と同一平面上とされているため、バランスシャフトを設置することによるクランク軸回りの慣性偶力が発生しないという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を図面に基づいて説明する。
図1はスライダ・クランク機構で駆動される往復機械の原理を説明する説明図、図2は本発明のスライダ・クランク機構で駆動される往復機械用振動除去装置の原理を示す説明図である。
【0016】
図1は通常のスライダ・クランク機構で駆動される往復機械の原理図を示している。図に示すように、往復機械1はクランク2、コンロッド3、スライダ部4からなり、スライダ部4はy軸方向の往復運動、コンロッド3は揺動運動、クランク2は回転運動が生じる。これらの運動に伴って下記の数式1に示す、不つり合い慣性力が発生し、この慣性力がクランク軸5の支持部(図示せず)を通して往復機械1本体に有害な振動を発生させる。
【0017】
【数1】
JP0005103653B2_000002t.gif

【0018】
数式1において、不つり合い力fの第1添字は、不つり合い慣性力の分力の方向を示し、第2添字は不つり合い慣性力の回転速度の次数を示している。例えばfx,1は不つり合い慣性力のx軸の方向分力の1次成分を示し、fy,2は不つり合い慣性力のy軸の方向分力の2次成分を示している。
【0019】
図2は本発明の往復機械用振動除去装置20の原理説明図であり、図1に示した単一のスライダ・クランク機構からなる往復機械1のクランク軸5につり合い錘6を設置し、クランク軸5を中心として平行且つ対称位置に一対の1次バランスシャフト7、7が設けられ、クランク2の回転と同期して夫々クランク軸5の回転数と同一回転数、且つ逆方向に回転する。さらに、この1次バランスシャフト7、7には2次バランスシャフト8、8が回転可能に設けられ、後述する外歯車12及び内歯車22の歯合によって、クランク軸5の回転数の2倍の回転数で夫々逆方向に回転する。
【0020】
まず数式1に示した1次の不つり合い慣性力のx方向分力fx,1は、図2に示すつり合い錘6の回転による遠心力のx方向成分によって相殺し、完全に除去することができる。次に、一対の1次バランスシャフト7、7が夫々逆方向に同一の回転数で回転する際に発生する遠心力のx方向成分は、互いに打ち消し合って相殺され、y方向成分のみの慣性力が発生する。また、上記つり合い錘6の回転による遠心力のy方向成分は前記数式1の1次の不つり合い慣性力のy方向分力fy,1に付加されるため、このy方向の合力と、上記した1次バランスシャフト7のy方向成分の慣性力のつり合わせを行なうことによって、1次の振動は発生しない。
【0021】
次に、2次不つり合い慣性力は数式1から明らかなように、y方向分力fy,2のみであり、図2に示す2次バランスシャフト8、8を夫々クランク軸5の回転数の2倍の回転数で逆方向に回転させることによってつり合わせが可能である。すなわち、この2次バランスシャフト8、8を夫々逆方向に回転させることによって上記した1次バランスシャフト7、7と同様に2次バランスシャフト8、8の遠心力のx方向成分は相殺され、y方向成分のみが発生する。このy方向成分と上記の数式1の不つり合い慣性力の2次成分fy,2をつり合わせることによって、2次の不つり合い慣性力のつり合わせが可能となり、2次の振動を低減できる。
【0022】
尚、スライダ・クランク機構においては、4次以上の高次不つり合い慣性力fy,n(n=2(m+1)mは自然数)も発生するが、上記の1次および2次の慣性力と比較して非常に小さいため、上述した1次および2次バランスシャフトを用いることで、単一のスライダ・クランク機構からなる往復機械の振動を大幅に低減できる。
【0023】
以下本発明を、一実施例を示す図面に基づいて詳細に説明する。尚、本発明が本実施例に限定されないことは無論である。
【実施例1】
【0024】
図3乃至図5は本発明の往復機械用振動除去装置の1実施例を示しており、図3は1次及び2次バランスシャフトの斜視説明図、図4は本発明の往復機械用振動除去装置の斜視図、図5は2次バランスシャフトの回転伝達機構を示す斜視図である。
【0025】
図3に示すように、1次バランスシャフト7は、金属製の円柱体の一部に切り欠き部9と軸受部10を形成し、軸方向の中央部で軸受部10を介して金属製の2次バランスシャフト8を回転可能に保持している。この2次バランスシャフト8は中央部に切り欠き部11を形成し、軸受部10近傍に外歯車12を取り付け、後述する内歯車22と歯合して2次バランスシャフト8を回転させる。ここで、1次バランスシャフト7及び2次バランスシャフト8の重心位置は、切り欠き部9、11によって夫々回転軸13、14から径方向にずれて形成されており、上述した不つり合い慣性力とのつり合い力を発生する。また、2次バランスシャフト8は外歯車12と内歯車22と歯合によって1次バランスシャフト7の1回転に対して2回転する構成となっており、上述した不つり合い慣性力の2次成分とのつり合わせ力を生じる。尚、1次バランスシャフト7及び2次バランスシャフト8の重心位置を径方向に移動させる手段は、上記の切り欠き部9及び11の形成ばかりでなく、重心位置修正用の錘を取り付ける手段も可能である。そして、1次バランスシャフト7上の切り欠き部9や軸受部10及び2次バランスシャフト8の外歯車12の質量は予め上述した往復機械1の1次不つり合い慣性力を考慮して設計される。
【0026】
図4は、本発明の往復機械用振動除去装置20を示しており、架台15に載置された往復機械1は、クランク2と、コンロッド3と、スライダ部4とからなり、クランク軸5の端部に設けられたモーター(図示せず)の回転によってスライダ部4が上下方向に往復運動する。このクランク軸5上には一対のつり合い錘6がクランク2を中心として対称位置に取り付けられ、クランク軸5の一端には歯付きプーリー16及び歯車対17が連結している。そして、クランク軸5と平行して一対の1次バランスシャフト7、7が架台15に設けられた軸受18によって回転可能に保持され、1次バランスシャフト7、7の端部には歯付きプーリー19、19が夫々歯付きプーリー16と対向して取り付けられている。この歯付きプーリー16、19にはタイミングベルト21が捲回され、クランク軸5の回転によって一対の1次バランスシャフト7、7はクランク軸5の回転数と同一回転数、且つ逆方向に回転する。また、1次バランスシャフト7の軸方向の中央部には軸受部10を介して2次バランスシャフト8が設けられており、上述した外歯車12と内歯車22との歯合によって1次バランスシャフト7の回転数の2倍の回転数で、且つ逆方向に回転する。尚、本実施例においては、1次バランスシャフト7、7の回転伝達機構として歯付きプーリー16、19とタイミングベルト21を組合せて構成したが、他の手段(例えばギアの組合せ)による構成であってもかまわない。
【0027】
図5は2次バランスシャフト8の回転伝達機構を示しており、架台15上に取り付けられた内歯車22と、この内歯車22の開口部23を挿通して取り付けられた2次バランスシャフト8の外歯車12からなり、この内歯車22の歯数は、外歯車12の歯合によって1次バランスシャフト7の回転数の2倍の回転数で2次バランスシャフト8が回転する歯数となっている。尚、上記1次バランスシャフト7と2次バランスシャフト8の夫々の重心位置は、図4に示すスライダ部4の重心軸に対して対称位置であり、且つコンロッド3とクランク2の運動平面と同一平面上とされている。
【0028】
上記の構成からなる本発明の往復機械用振動除去装置20は、クランク軸5上に設けられた一対のつり合い錘6と、クランク軸5と平行に配設された一対の1次バランスシャフト7、7の回転によって生じる慣性力で、往復機械1の往復運動の際に生じる1次振動を除去できる。さらに、1次バランスシャフト7、7上に設けられた2次バランスシャフト8、8がクランク軸5の2倍の回転数で回転することによって生じる慣性力で、往復機械1の往復運動の際に生じる2次振動を除去できる。しかも、この2種のバランスシャフト7、8を往復機械1に平行に配設して回転させても、これらバランスシャフト7、8の重心位置がスライダ部4の重心軸に対して対称位置であり、且つコンロッド3とクランク2の運動平面と同一平面上とされているため、慣性偶力が発生せず、この慣性偶力による振動も発生しない。
【0029】
以上、本発明の往復機械用振動除去装置によれば、単一のスライダ・クランク機構による往復機械において、つり合い錘と2種のバランスシャフトを用いることによって、1次および2次の慣性力をつり合わせ、この慣性力のつり合わせによる1次および2次振動を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】従来のスライダ・クランク機構で駆動される往復機械の原理を示す説明図である。
【図2】本発明に係るスライダ・クランク機構で駆動される往復機械用振動除去装置の原理を示す説明図である。
【図3】1次及び2次バランスシャフトの斜視説明図である。
【図4】本発明の往復機械用振動除去装置の斜視図である。
【図5】2次バランスシャフトの回転伝達機構を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1 往復機械
2 クランク
3 コンロッド
4 スライダ部
5 クランク軸
6 つり合い錘
7 1次バランスシャフト
8 2次バランスシャフト
9、11 切り欠き部
10 軸受部
12 外歯車
13、14 回転軸
15 架台
16、19 歯付きプーリー
17 歯車対
18 軸受
20 往復機械用振動除去装置
21 タイミングベルト
22 内歯車
23 開口部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4