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明細書 :農業用植物の熱ショック処理装置及び熱ショック処理方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4863305号 (P4863305)
公開番号 特開2009-225715 (P2009-225715A)
登録日 平成23年11月18日(2011.11.18)
発行日 平成24年1月25日(2012.1.25)
公開日 平成21年10月8日(2009.10.8)
発明の名称または考案の名称 農業用植物の熱ショック処理装置及び熱ショック処理方法
国際特許分類 A01G   7/00        (2006.01)
FI A01G 7/00 604Z
請求項の数または発明の数 6
全頁数 7
出願番号 特願2008-074812 (P2008-074812)
出願日 平成20年3月24日(2008.3.24)
審査請求日 平成23年2月23日(2011.2.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504203572
【氏名又は名称】国立大学法人茨城大学
発明者または考案者 【氏名】佐藤 達雄
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100176164、【弁理士】、【氏名又は名称】江口 州志
【識別番号】100074631、【弁理士】、【氏名又は名称】高田 幸彦
審査官 【審査官】竹中 靖典
参考文献・文献 特開平11-318240(JP,A)
特開平9-37658(JP,A)
Tatsuo Sato, et al.,“Heat Shock Induces a Systemic Acquires Resistance(SAR)-Related Gene Via Salicylic Acid Accumulation in Cucumber(Cucumis sativus L.)”,熱帯農業,2003年,47(2),p.77-82
調査した分野 A01G 9/14- 9/26
A01G 1/00- 1/02
A01G 1/06- 1/12
A01G 7/00- 7/06
A01M 1/00-99/00
J-STAGE
特許請求の範囲 【請求項1】
圃場に生育する植物を外部から覆うように、前記圃場に列状に生育する植物に沿って移動する手段を有するカバーと、温湯発生装置と、前記カバーの内部に温湯を噴霧する噴霧手段とから成る植物の熱ショック処理装置。
【請求項2】
前記温湯発生装置は、前記温湯の温度と圧力を制御する温湯発生装置であることを特徴とする請求項1に記載の植物の熱ショック処理装置。
【請求項3】
前記カバーの進行方向の前部及び後部は切込みを入れた軟質カバーが配置されていることを特徴とする請求項1記載の植物の熱ショック処理装置。
【請求項4】
前記移動は温湯発生装置の湯温が所定値内になったら開始することを特徴とする請求項記載の植物の熱ショック処理装置。
【請求項5】
湯温の設定は植物に接して設置した温度センサーにより検出された温度と霧滴温度との差が所定値内になるように湯温を制御することを特徴とする請求項1記載の植物の熱ショック処理装置。
【請求項6】
圃場に列状に生育する植物に沿って移動する手段を有するカバーによって外気から隔離するように前記植物を覆い、前記カバーの内部に、与圧され温度制御された温湯を該温湯の霧滴が前記カバー内部で浮遊するように噴霧することによって前記植物に熱ショックを与えることを特徴とする植物の熱ショック処理方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、生育しつつある植物に熱ショックを与えることにより植物の抗生耐性向上を図る熱ショック処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植物の熱ショック処理方法としては、植物種子をインキュベートすることで種子の寿命延長を図ったものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、生育しつつある植物の地上部分を温湯に浸漬することで植物温上昇を図ったものが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
また、栽培施設を密閉し太陽熱または暖房機により施設内気温を上昇することで植物温上昇を図ったものも知られている(例えば、非特許文献2参照)。
【0003】
非特許文献1には図4のごとき温湯浸漬による熱ショック処理方法が示されている。図において、18は熱ショック処理を施す対象である植物である。目的とする温度の温湯22を満たした水槽21に植物18を浸漬することで熱ショック処理を行う。
【0004】
非特許文献2に示される図5,図6により栽培施設を密閉し太陽熱または暖房機により施設内気温を上昇することによる熱ショック処理について説明する。図5において、栽培施設23は側窓24、天窓25、暖房機26を有している。この栽培施設23を図6のように側窓24,天窓25を閉め、太陽熱あるいは温風を供給する暖房機26を運転することにより施設内気温を目的とする温度に上昇させ、植物18に熱ショック処理を行う。
【0005】

【特許文献1】「処理種子」、特許公開平7-255218
【非特許文献1】「熱ショック処理がトマトに誘導する病害抵抗性機作の解析」、植物化学調節学会研究発表記録集、植物化学調節学会、2005年、p.33
【非特許文献2】「熱ショックによるキュウリ(Cucumis sativus L.)のサリチル酸応答系全身獲得抵抗性(SAR)遺伝子の誘導」、熱帯農業、2003年、p.77-82
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上に述べた従来の熱ショック処理方法のうち、非特許文献1の温湯浸漬による方法については、根のついた植物を倒立して温湯に浸漬する必要があることから圃場に生育する植物を処理することは不可能であるとともに、鉢植えの植物であっても多数の植物を短時間に処理することは困難であった。また、非特許文献2の栽培施設の密閉による方法については、暖房機による加温はエネルギーを大量に消費することから太陽熱により十分な内気温上昇が達成できる夏期に適用時期が限られるとともに、葉からの水分蒸散により、植物に必要な高温の熱ショックを与えるよう速やかな植物温上昇を得ることが困難であった。温湯をホース、じょうろ等で流水として散布することも考えられるが、葉裏や植物下層部分に流水を付着させることは困難である上、温湯は植物に付着したか否かに関わらず速やかに流失することから処理時間ならびにエネルギーロスが大きい。
【0007】
本発明は、このような従来の技術の構成が有していた問題を解決しようというものであ
り、植物生育地の温度環境条件に関係なく圃場に生育する植物に効率的に熱ショック処理
を実現するための熱ショック処理装置及び熱ショック処理方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、第1の課題解決手段は上記目的を達成するため、与圧された霧滴が蒸発し気化熱を奪うことによって霧滴温度が低下することを防止するために外気から隔離するよう熱ショック処理を行う植物を覆う目的で、圃場に列状に生育する植物に沿って移動する手段を有するカバーを設けると共に、カバーの内部に所定の温度に温度制御された温湯の霧滴をカバー内部で浮遊するように、温湯発生装置と温湯をカバー内部に噴霧する温湯の噴霧口を設けた熱ショック処理装置である。前記のカバーを設けることによって、低エネルギーロスで植物の温度を上昇させ、適切な熱ショック処理を行うことを特徴とする
【0009】
また、第2の課題解決手段は、前記温湯発生装置が噴霧する温湯の温度や圧力を制御するものであり、噴霧口から与圧された霧滴カバー内部で浮遊させることにより植物のすみずみまで霧滴が付着し、低エネルギーロスで植物の温度を上昇させることを特徴とする。
【0011】
の解決手段は、前記カバーの進行方向の前部及び後部は切込みを入れた軟質カバーが配置されていることによって、移動により植物を傷つけない構造であることを特徴とする。
【0012】
の解決手段は、前記移動は植物に接して設置した温度センサーにより温湯発生装置の温湯が所定値内になったら開始することを特徴とする。
【0013】
の解決手段は、噴霧口に供給する湯温の設定は植物に接して設置した温度センサーにより検出された温度と噴霧口に供給する湯温との差が所定値内になるように湯温を制御することを特徴とする。
さらに、第の解決手段は上記目的を達成するため、圃場に列状に生育する植物に沿って移動する手段を有するカバーによって外気から隔離するように前記植物を覆い、前記カバー内部に、与圧され温度制御された温湯を該温湯の霧滴が前記カバー内部で浮遊するように噴霧することによって植物に熱ショックを与えることを特徴とする植物の熱ショック処理方法である。
【発明の効果】
【0014】
上述したように、本発明の熱ショック処理装置及び熱ショック処理方法は、圃場に生育する植物に対するカバーとこのカバー内部で霧滴が浮遊するように温湯を噴霧する噴霧手段を設けたので、周辺温度環境の影響を受けずエネルギーロスの少ない熱ショック処理装置及び熱ショック処理方法を提供することができた。
【0015】
また、圃場に列状に配置された生育する植物に沿ってカバーが移動することで、広い圃場に対して最適な霧滴の散布を低エネルギーロスで反復して確実に与えることができる効果を発揮するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図1~図3に基づいて説明する。
【実施例】
【0017】
図1、2においては、1は圃場に列状に生育する植物18の上を移動する側面断熱カバー、2は前記側面断熱カバー1に一体に取り付けられた上面断熱カバーで、側面断熱カバー1にはそれぞれ片側2個、合計4個の車輪3が車軸20により取り付けられている。上面断熱カバー2の進行方向側には取り付け金具4が取り付けられ、ワイヤー5で牽引することにより植物18をまたいで走行する。
【0018】
上面カバー2には噴霧口6をカバー内に取り付けたパイプ7をねじ8で固定し、ホース9で温湯発生装置12に接続する。
【0019】
温度センサー本体13は植物18に貼付した温度センサー感知部10によって感知した温度信号を、ケーブル11を通じて受信し、植物18の温度を温度表示部15に表示する。カバー移動開始前に、止まった状態でこの表示値に対して温湯調節ボタン17により湯温を指示し、取水ホース16より流入した水に対して温度調節器14が給湯温度を調節する。例えば植物の処理温度を50℃とする場合、温度表示部15に示される値が50℃となるように温湯調節ボタン17で指示する。
【0020】
図3においては、側面断熱カバー1,上面断熱カバー2の前後両端に軟質プラスチック製のスリット状に切り込みが入った前面カバー19及び後面カバー19’を装備することによりカバー内の密閉度を上げ、霧滴の気化による霧滴雰囲気温度の低下を防止する。
【0021】
以下、上記構成の動作を説明する。噴口6から噴霧される、与圧され所定の温度に温度制御された霧滴は側面カバー1ならびに上面カバー2、前面カバー19及び後面カバー19’により構成される空間内に充満し、
側面断熱カバー1、上面断熱カバー2、前面カバー19及び後面カバー19’によって形成されるカバーの内部空間の移動により植物の上下表裏にまんべんなく付着するとともに雰囲気温度を上げることによって地上の植物のみにエネルギーロスを少なく効果的に熱ショック処理を行う。
ここで、側面カバー1ならびに上面カバー2、前面カバー19及び後面カバー19’により構成される断熱のカバー空間内に充満する霧滴は、霧滴であるが故に移動中にカバー空間内に浮遊することになり植物18の入り組んだ表面に効果的に付着することとなる。このようなカバーを、ワイヤー5で牽引し、車輪3が回転することによってこれら装置可動部分は列状に配置された植物に沿って移動し、連続的な処理が可能である。また、抗生耐性向上を図るため複数回繰り返すことも容易である。
【0022】
列状に配置された植物18の一部に貼付した温度センサー感知部10の情報に基づき、温度調節器14により噴霧される温湯の温度調節を行うことで任意の所期の温度での熱ショック処理が可能である。
【0023】
本装置可動部分の移動速度ならびに噴口の数、形状、配置等による噴霧量は植物に対して設定された温度と霧滴温度との差が設定値内になるように調節可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態を示す農業用植物の熱ショック処理装置の側面断面図。
【図2】本発明の一実施形態を示す農業用熱ショック処理装置の上面図。
【図3】本発明の一実施形態を示す農業用熱ショック処理装置の前面図。
【図4】従来の種子の温湯浸漬による熱ショック処理の概念図。
【図5】従来の栽培施設の密閉による熱ショック処理の概念図。
【図6】従来の栽培施設の密閉による熱ショック処理の概念図。
【符号の説明】
【0025】
1 側面カバー
2 上面カバー
3 車輪
4 取り付け金具
5 ワイヤー
6 噴口
7 パイプ
8 ねじ
9 ホース
10 温度センサー感知部10
11 ケーブル
12 温湯発生装置
13 温度センサー本体
14 温度調節器
15 温度表示部
16 取水ホース
17 手動入力キー
18 植物
19 前面カバー
20 車軸
19’ 後面カバー
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5