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明細書 :光触媒並びに硝酸イオンおよび亜硝酸イオン還元方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5071857号 (P5071857)
公開番号 特開2009-214033 (P2009-214033A)
登録日 平成24年8月31日(2012.8.31)
発行日 平成24年11月14日(2012.11.14)
公開日 平成21年9月24日(2009.9.24)
発明の名称または考案の名称 光触媒並びに硝酸イオンおよび亜硝酸イオン還元方法
国際特許分類 B01J  35/02        (2006.01)
C02F   1/70        (2006.01)
C02F   1/30        (2006.01)
B01J  23/78        (2006.01)
FI B01J 35/02 J
C02F 1/70 Z
C02F 1/30
B01J 23/78 A
請求項の数または発明の数 4
全頁数 17
出願番号 特願2008-060893 (P2008-060893)
出願日 平成20年3月11日(2008.3.11)
審査請求日 平成23年3月9日(2011.3.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】803000115
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
発明者または考案者 【氏名】工藤 昭彦
【氏名】岡 万里絵
【氏名】三石 雄悟
個別代理人の代理人 【識別番号】100078754、【弁理士】、【氏名又は名称】大井 正彦
審査官 【審査官】壺内 信吾
参考文献・文献 特開平07-088370(JP,A)
特開2004-283769(JP,A)
特開平10-085607(JP,A)
特開平09-070533(JP,A)
特開平10-244164(JP,A)
特開平09-234347(JP,A)
特開平11-151445(JP,A)
特開2001-038348(JP,A)
特開2002-355551(JP,A)
飯塚光祐ほか,ALa4Ti4O15(A=Ca,Sr,Ba)光触媒を用いたCO2還元反応,第100回触媒討論会討論会A予稿集,日本,触媒学会,2007年 9月17日,p.399
三石雄悟ほか,層状ペロブスカイト構造を有するALa4Ti4O15(A=Ca,Sr,Ba)光触媒による水の完全分解反応,第98回触媒討論会討論会A予稿集,日本,触媒学会,2006年 9月26日,p.212
調査した分野 B01J21/00-38/74
C02F1/70-1/78
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(1)で表される層状ペロブスカイト化合物よりなる触媒物質の表面に、ニッケル、銅および銅とニッケルとを組み合わせてなるもののいずれかよりなる助触媒が担持されてなる構造を有し、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの少なくとも一方を含有する水溶液中において、当該水溶液に含有されている硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを還元することを特徴とする光触媒。
【化1】
JP0005071857B2_000009t.gif

〔式中、Aは、カルシウム原子、ストロンチウム原子またはバリウム原子を示す。〕
【請求項2】
硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの少なくとも一方を含有する水溶液中に、下記一般式(1)で表される層状ペロブスカイト化合物よりなる触媒物質の表面に、ニッケル、銅および銅とニッケルとを組み合わせてなるもののいずれかよりなる助触媒が担持されてなる構造を有する光触媒が分散されてなる光触媒分散液に対して光を照射し、当該光触媒分散液に含有されている硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを還元することを特徴とする硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの還元方法。
【化2】
JP0005071857B2_000010t.gif

〔式中、Aは、カルシウム原子、ストロンチウム原子またはバリウム原子を示す。〕
【請求項3】
光触媒分散液に緩衝液が含有されていることを特徴とする請求項2に記載の硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの還元方法。
【請求項4】
緩衝液が、リン酸水溶液またはホウ酸水溶液であることを特徴とする請求項3に記載の硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの還元方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒並びに硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの還元方法に関し、更に詳しくは、紫外光照射下において硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの少なくとも一方を含有する水溶液中において、当該水溶液中に含有されてなる硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを還元させる光触媒、並びに硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの還元方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場などにおける廃水には、硝酸イオンが多く含まれており、このような多量の硝酸イオンを含む汚水は水質汚染の原因の1つの原因とされている。
また、この硝酸イオンは、体内に吸収されることにより、亜硝酸イオンとなって血中ヘモグロビンと結合して酸素欠乏をひき起こす、更には、発ガン物質とされるニトロソアミンの原料物質となるなど、人体に害を及ぼすものである。
【0003】
このような多量の硝酸イオンを含有する汚水を処理する方法としては、汚水の硝酸イオン濃度を、定められている排出基準以下の濃度にまで薄める手法、アンモニアを還元剤として用いて処理する手法などが広く用いられている。
しかしながら、これらのいずれの手法においても、特に前者の手法によっては根本的な解決が得られず、また後者の手法によっては還元剤として用いられているアンモニアがその取扱に注意を要するものである、などの種々の問題があることから、新たな処理方法の開発が切望されている。
【0004】
近年、硝酸イオンなどの水質汚染の原因とされる物質を含有する廃水や、例えば窒素酸化物などを含有する排ガスの処理に、光触媒を用いることが提案されている(例えば、特許文献1~特許文献3参照。)。
【0005】
また、本発明者らも、硝酸イオンの還元に光触媒を用いることについて検討を重ね、例えばTiO2 、K3 Ta3 2 12、NaTaO3 、KTaO3 などの触媒物質よりなる紫外光応答性光触媒や、例えばNi-ZnSなどの触媒物質よりなる可視光応答性光触媒が硝酸イオンの還元反応に活性を示し、これらの光触媒を用いることによって硝酸イオンを最終的には窒素(窒素ガス)にまで転換することが可能であることを見出したが(非特許文献1~4参照。)、これらのいずれの光触媒を用いた場合においても、高い効率で硝酸イオンの還元反応を進行させることができていないのが現状である。
【0006】

【特許文献1】特開2001-38348号公報
【特許文献2】特開平11-151445号公報
【特許文献3】特開平9-234347号公報
【非特許文献1】A.Kudo,K.Domen,K.Maruyama and T.Onishi,Bull.Chem.Soc.Jpn.1988.
【非特許文献2】T.Kurihara,Y.Miseki,H.Kato and A.Kudo,第98回触媒討論会,富山,2006年9月.
【非特許文献3】Hideki Kato and Akihiko Kudo,Phys.Chem.Chem.Phys.,2002,4,2833-2838.
【非特許文献4】Osamu Hamanoi and Akihiko Kudo,Chem.Lett.,2002,31,838.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の事情に基づいて、更に硝酸イオンの還元に光触媒を用いることについて研究を重ねた結果、見出されたものであって、その目的は、優れた硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの還元反応に対する活性を有し、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの少なくとも一方を含有する水溶液中において、当該水溶液中に含有されている硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを高い効率で還元することのできる新規な光触媒を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、紫外光照射下において容易に高効率で硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの還元を行なうことのできる硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの還元方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光触媒は、下記一般式(1)で表される層状ペロブスカイト化合物よりなる触媒物質の表面に、ニッケル、銅および銅とニッケルとを組み合わせてなるもののいずれかよりなる助触媒が担持されてなる構造を有し、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの少なくとも一方を含有する水溶液中において、当該水溶液に含有されている硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを還元することを特徴とする。

【0009】
【化1】
JP0005071857B2_000002t.gif

【0010】
〔式中、Aは、カルシウム原子、ストロンチウム原子またはバリウム原子を示す。〕
【0012】
本発明の硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの還元方法は、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの少なくとも一方を含有する水溶液中に、上記一般式(1)で表される層状ペロブスカイト化合物よりなる触媒物質の表面に、ニッケル、銅、コバルトおよび銅とニッケルとを組み合わせてなるもののいずれかよりなる助触媒が担持されてなる構造を有する光触媒が分散されてなる光触媒分散液に対して光を照射し、当該光触媒分散液に含有されてなる硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを還元することを特徴とする。


【0013】
本発明の硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの還元方法においては、光触媒分散液に緩衝液が含有されていることが好ましい。
【0014】
本発明の硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの還元方法においては、緩衝液が、リン酸水溶液またはホウ酸水溶液であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の光触媒によれば、上記一般式(1)で表される層状ペロブスカイト化合物よりなる触媒物質の表面に助触媒が担持されてなる構造を有してなるものであり、当該触媒物質に由来の紫外光吸収能を有し、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの還元反応に対する活性を有すると共に、助触媒の担持によって発現された水分解反応に対する活性を有するものであることから、紫外光照射下の硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンを含有する水溶液中において、水を還元剤とする硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの還元反応を、水分解反応と共に競争的に生じさせることができるため、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの還元反応に対して高い活性が得られ、その結果、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの少なくとも一方を含有する水溶液中において、当該水溶液中に含有されてなる硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを高い効率で還元することができる。
【0016】
本発明の硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの還元方法によれば、上記の本発明の光触媒を用いることにより、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの少なくとも一方を含有する水溶液中において、水を還元剤として硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを還元することができることから、還元剤の取扱に特段の注意を要することがなく、紫外光照射下において容易に高効率で硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの還元を行なうことができる。
【0017】
また、本発明の硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの還元方法においては、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの少なくとも一方を含有する水溶液中に光触媒が分散されてなる光触媒分散液中に、緩衝液を含有させることにより、当該緩衝液のpH調整作用により、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの還元反応が進行することに伴ってその反応系が高アルカリ性となることを抑制することができるため、より一層高い効率で硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの還元を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0019】
本発明の光触媒は、上記一般式(1)で表される層状ペロブスカイト化合物よりなる触媒物質(以下、「特定触媒物質」ともいう。)よりなり、当該特定触媒物質の表面に助触媒が担持されてなる構造を有する光触媒(以下、「特定光触媒」ともいう。)である。
この特定光触媒は、紫外光照射下において、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの少なくとも一方を含有する水溶液(以下、「還元対象イオン含有水溶液」ともいう。)中において、当該還元対象イオン含有水溶液中に含有されてなる硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを還元する紫外光活性を有する光触媒である。
【0020】
特定光触媒の好ましい具体例としては、特定触媒物質の粒子の表面に助触媒が担持されてなる構成の光触媒が挙げられる。
ここに、特定触媒物質の粒子は、例えば形状が板状体(板状結晶)であって、長手方向の長さが例えば1μm、短手方向の長さが例えば500nm~1μm、厚みが例えば数十nm~100nmである。
【0021】
特定触媒物質を構成する層状ペロブスカイト化合物を表す一般式(1)において、Aは、カルシウム原子(Ca)、ストロンチウム原子(Sr)またはバリウム原子(Ba)を示し、特にバリウム原子であることが好ましい。その理由は、Ba体(BaLa4 Ti4 15 )が硝酸イオンの還元反応に最も高い活性を示すからである。
【0022】
助触媒は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、コバルト(Co)および銅とニッケルとを組合せてなるもののいずれかよりなるものであることが好ましく、特にニッケルよりなるものであることが好ましい。
【0023】
助触媒の担持量は、0.5~3.0質量%であることが好ましく、特に0.5質量%であることが好ましい。
助触媒の担持量が上記の範囲内であることにより、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンをより一層高い効率で還元し、還元生成物である窒素(窒素ガス)を高い効率で発生させることができる。
【0024】
以上のような特定光触媒は、例えば特定触媒物質を構成する層状ペロブスカイト化合物を錯体重合法によって合成する触媒物質合成工程と、この触媒物質合成工程において得られた一般式(1)で表される層状ペロブスカイト化合物よりなる特定触媒物質に対して助触媒を担持させる助触媒担持工程とを経ることによって製造することができる。
【0025】
触媒物質合成工程においては、錯体重合法、すなわち合成すべき層状ペロブスカイト化合物に応じた原料物質と、錯化剤と、適宜の溶剤(例えばエタノール)を混合した後、加熱反応させ、得られた反応生成物(以下、「触媒物質前駆体」ともいう。)を焼成処理することにより、一般式(1)で表される層状ペロブスカイト化合物よりなる特定触媒物質を得ることができる。
【0026】
原料物質は、具体的に、一般式(1)において、Aがバリウム原子である層状ペロブスカイト化合物を合成目的物とする場合には、炭酸バリウム(BaCO3 )と、チタン酸テトラブチル(Ti(OC4 9 4 )と、硝酸ランタン水和物(La(NO3 3 ・6H2 O)とである。また、一般式(1)において、Aがカルシウム原子である層状ペロブスカイト化合物を合成目的物とする場合には、炭酸カルシウム(CaCO3 )と、チタン酸テトラブチル(Ti(OC4 9 4 )と、硝酸ランタン水和物(La(NO3 3 ・6H2 O)とが原料物質であり、一般式(1)において、Aがストロンチウム原子である層状ペロブスカイト化合物を合成目的物とする場合には、炭酸ストロンチウム(CaCO3 )と、チタン酸テトラブチル(Ti(OC4 9 4 )と、硝酸ランタン水和物(La(NO3 3 ・6H2 O)とが原料物質である。
【0027】
錯化剤としては、例えばプロピレングリコール、エチレングリコールおよびクエン酸などが挙げられる。
これらは、単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いることもできる。
錯化剤の使用量は、例えばBa体(BaLa4 Ti4 15 )を合成目的物とし、錯化剤としてクエン酸とプロピレングリコールとを用いる場合には、クエン酸は、金属イオンの物質量(具体的には、Ba、TiおよびLaの各々に係る物質量を足し合わせた合計量)の5倍量、プロピレングリコールは、クエン酸の物質量の4倍量である。
【0028】
原料物質と錯化剤との混合は、温度80℃以下の条件下において行なうことが好ましい。
また、原料物質と錯化剤との加熱反応は、その反応条件が、例えば反応温度120℃、反応時間10時間である。
ここに、触媒物質前駆体は、原料物質と錯化剤との加熱反応によって得られる反応生成物をマントルヒータにより400℃で加熱し、有機物を焼き飛ばすことによって得られるものである。
【0029】
焼成処理は、例えば電気炉を用いて加熱することによって行うことができ、その処理条件は、例えば加熱温度1100℃、加熱時間10時間である。
【0030】
助触媒担持工程においては、例えば含浸法と水素還元処理とを組み合わせた手法および光電着法などを用いることにより、特定触媒物質の粒子の表面に助触媒を担持させることができる。
この助触媒を担持させる手法としては、含浸法と水素還元処理とを組み合わせた手法を用いることが好ましい。
【0031】
具体的に、含浸法と水素還元処理とを組み合わせた手法によれば、例えば、先ず、磁性るつぼに特定触媒物質を入れた後、担持させるべき量の適宜の助触媒を含有する金属硝酸塩水溶液を滴下し、湯浴上において混ぜ合わせながら蒸発乾固させる。次いで、担持させるべき助触媒がニッケルである場合には、電気炉を用い、加熱温度270℃、加熱時間1時間の条件で焼成し、硝酸塩を熱分解することによって特定触媒物質上に酸化ニッケル(NiO)を担持させ、更に水素200torrの雰囲気下において温度500℃、処理時間2時間の条件で水素還元処理を施すことにより、特定触媒物質の表面に、金属硝酸塩水溶液中に存在する助触媒(ニッケル)の全量を担持させることができる。
また、担持させるべき助触媒が銅またはコバルトである場合には、電気炉を用い、加熱温度130℃、加熱時間1時間の条件で焼成し、硝酸塩を熱分解することによって特定触媒物質上に酸化物(具体的には酸化銅あるいは酸化コバルト)を担持させ、更に水素200torrの雰囲気下において温度500℃、処理時間2時間の条件で水素還元処理を施すことにより、特定触媒物質の表面に、金属硝酸塩水溶液中に存在する助触媒(銅またはコバルト)の全量を担持させることができる。
また、担持させるべき助触媒が銅とニッケルである場合(共担持)には、電気炉を用い、加熱温度270℃、加熱時間1時間の条件で焼成し、硝酸塩を熱分解することによって特定触媒物質上に酸化物(具体的には酸化銅および酸化ニッケル)を担持させ、更に水素200torrの雰囲気下において温度500℃、処理時間2時間の条件で水素還元処理を施すことにより、特定触媒物質の表面に、金属硝酸塩水溶液中に存在する助触媒(銅およびニッケル)の全量を担持させることができる。
【0032】
また、光電着法によれば、例えば担持させるべき量の適宜の助触媒を含有する金属硝酸塩水溶液中に特定触媒物質を分散させることによって得られる分散液に対して光を照射することにより、特定触媒物質において光生成した励起電子によって金属硝酸塩水溶液中の金属イオンが還元され、金属微粒子が特定触媒物質上に高分散に担持されることとなり、その結果、特定触媒物質の表面に、金属硝酸塩水溶液に存在する助触媒の全量を担持させることができる。
【0033】
還元対象イオン含有水溶液は、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの濃度が3~30mmol/Lであることが好ましい。
ここに、この還元対象イオン含有水溶液は、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンのうちの一方が含有されてなるものであっても、両方を含有するものであってもよい。
なお、硝酸イオンのみを含有するものであっても、特定光触媒を用いて硝酸イオンを還元する過程においては、硝酸イオンから亜硝酸イオンが生成される(後述の反応式(a)~反応式(h)参照)ことなどから、硝酸イオンと亜硝酸イオンとが存在することとなる。
【0034】
還元対象イオン含有水溶液の具体例としては、例えば硝酸ナトリウム水溶液が挙げられる。
【0035】
この特定光触媒によれば、光を照射することにより、還元対象イオン含有水溶液中において、水を還元剤として硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンを還元させ、その結果、還元生成物である窒素ガスを発生させることができる。
具体的には、還元対象イオン含有水溶液中に、特定触媒物質の表面に助触媒が担持されてなる構成の特定光触媒を分散し、得られた光触媒分散液に対して光を照射することにより、当該特定光触媒の光触媒機能によって硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンの還元反応と水分解反応(水の酸化反応)とが競争的に生じ(具体的には、下記の反応式(a)~反応式(h)で表される反応であって、反応式(a)~反応式(f)に係る反応は還元反応、反応式(g)および反応式(h)に係る反応は酸化反応である)、その結果、水を還元剤とする硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの還元反応が高効率で進行され、窒素ガスが発生されることとなる。
【0036】
【化2】
JP0005071857B2_000003t.gif

【0037】
また、還元対象イオン含有水溶液中に特定光触媒が分散されてなる光触媒分散液には、緩衝液が含有されていることが好ましい。
光触媒分散液中に緩衝液が含有されている場合には、当該緩衝液のpH調整作用により、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの還元反応が進行することに伴って当該光触媒分散液が高アルカリ性となることを抑制することができ、従ってより一層高い効率で硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの還元を行なうことができる。
【0038】
緩衝液としては、ホウ酸(H3 BO3 )水溶液、リン酸水素二ナトリウム(Na2 HPO4 )水溶液、リン酸二水素ナトリウム(NaH2 PO4 )水溶液、リン酸二水素カリウム(KH2 PO4 )水溶液等のリン酸水溶液などを好適に用いることができる。
これらは、単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0039】
緩衝液の含有量は、光触媒分散液のpHを6~10の範囲内、好ましくはpH9に調整することができる量、具体的には、光触媒分散液を構成する緩衝液の濃度が還元対象イオン含有水溶液の濃度の等倍~2倍であることが好ましく、特に2倍であることが好ましい。
ここに、光触媒分散液のpHが5以下である場合には、例えば助触媒を構成するニッケルが溶解してしまうなどの弊害が生じ、特定光触媒が光触媒機能を十分に発揮することができなくなるおそれがある。
【0040】
以上の特定光触媒を用い、還元対象イオン含有水溶液中において、硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンを還元させる還元方法において、照射する光は、特定光触媒の光触媒機能が十分に発現される光、具体的に紫外光であることが好ましい。
【0041】
光触媒分散液に対して紫外光を照射するための光源としては、特に限定されず、紫外光を放射することのできるもの、例えば高圧水銀灯(波長245nm、274nm、290nm、303nmおよび313nmの輝線を有し、最大強度が波長313nmであるもの)などを用いることができる。
【0042】
以上のように、本発明は、上記一般式(1)で表される層状ペロブスカイト化合物よりなる特定触媒物質の表面に、特定の助触媒を担持させることにより、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの還元反応活性と共に水分解反応活性を発現させることができ、これにより、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの少なくとも一方を含有する水溶液中において、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを高い効率で還元することができる光触媒材料を見出すことによってなされたものである。
【0043】
而して、本発明の光触媒によれば、上記一般式(1)で表される層状ペロブスカイト化合物よりなる特定触媒物質の表面に助触媒が担持されてなる構造を有してなるものであり、当該特定触媒物質に由来の紫外光吸収能を有し、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの還元反応に対する活性を有すると共に、助触媒の担持によって発現された水分解反応に対する活性を有するものであることから、紫外光照射下の硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンを含有する還元対象イオン含有水溶液中において、水を還元剤とする硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの還元反応を、水分解反応と共に競争的に生じさせることができるため、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの還元反応に対して高い活性が得られ、その結果、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの少なくとも一方を含有する水溶液中において、当該水溶液中に含有されてなる硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを高い効率で還元することができる。
【0044】
そして、このような本発明の光触媒を用いることにより、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの少なくとも一方を含有する還元対象イオン含有水溶液中において、水を還元剤として硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを還元することができることから、還元剤の取扱に特段の注意を要することがなく、紫外光照射下において容易に高効率で硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの還元を行なうことができる。
【0045】
また、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの少なくとも一方を含有する水溶液中に光触媒が分散されてなる光触媒分散液中に、緩衝液を含有させることにより、当該緩衝液のpH調整作用により、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの還元反応が進行することに伴ってその反応系が高アルカリ性となることを抑制することができるため、より一層高い効率で硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの還元を行なうことができる。
【0046】
従って、本発明は、工場における廃水などの、多量の硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを含有する汚水を処理するための処理方法として利用することができる。特に、本発明は、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを還元して最終的に無害な窒素ガスに転換することができ、また、この硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの還元が還元剤として水を用いる反応を利用するものであることから、従来のアンモニアを還元剤とする処理方法に比して容易なものとなる。
また、本発明は、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの還元過程において、最終的に転換される窒素ガスの他、酸素ガスおよび水素ガスが生成されるものであることから(上述の反応式(a)~反応式(h))、窒素ガス、酸素ガスおよび水素ガスの製造方法として利用することも可能である。
【実施例】
【0047】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0048】
実施例1においては、一般式(1)においてAがバリウム原子である触媒物質を得、この触媒物質に助触媒としてニッケルを担持させてなる構成の光触媒を製造し、光触媒機能の評価を行なった。
併せて、比較例1においては、実施例1における触媒物質それ自体の光触媒機能の評価を行なった。
【0049】
〔実施例1〕
(触媒物質の作製例1)
炭酸バリウム(BaCO3 )(Kanto-kagaku社製;99.0%)0.987gと、チタン酸テトラブチル(Ti(OC4 9 4 )(Kanto-kagaku社製;97.0%)6.6806gと、硝酸ランタン水和物(La(NO3 3 ・6H2 O)(Wako社製;99.9%)8.660gと、錯化剤としてプロピレングリコール(Kanto-kagaku社製;99.0%)68.49gおよびクエン酸(Aldrich chemical社製;99.5%)43.23gと、溶剤としてのエタノール(Kanto-kagaku社製;99.5%)30mlとを、温度80℃の条件下において混合して溶剤中にすべての他の材料を溶解させた後、温度120℃で10時間かけて反応させ、得られた反応生成物をマントルヒータを用いて400℃に加熱することによって有機物を除去し、白色の触媒物質前駆体を得た。その後、触媒物質前駆体を電気炉を用い、加熱温度1100℃、加熱時間10時間の条件で焼成処理することにより、白色粉末5.6gを得た。
得られた白色粉末は、Rigaku社製「MiniFlex」を用いた粉末X線回析により、一般式(1)において、Aがバリウム原子である層状ペロブスカイト化合物(以下、「触媒物質(1)」ともいう。)であると同定された。
また、この触媒物質(1)は、紫外-可視-近赤外拡散反射スペクトル(DRS)を、紫外可視近赤外分光光度計「UbestV-570」(Jasco社製)を用いて測定し、得られた拡散反射スペクトルをKubelka-Munk法によって吸収モードに変換することにより、紫外光吸収能を有することが確認された。
【0050】
(光触媒の作製例1:助触媒の担持例)
先ず、磁性るつぼに、触媒物質(1)0.5gを入れた後、当該触媒物質に対する担持量が2質量%となる量のニッケルを含有する硝酸ニッケル(Ni(NO3 2 )水溶液を滴下し、湯浴上において混ぜ合わせながら蒸発乾固させた。次いで、電気炉を用い、加熱温度270℃、加熱時間1時間の条件で焼成し、更に水素200torrの雰囲気下において温度500℃、処理時間2時間の条件で水素還元処理を施すことにより、触媒物質(1)の表面に2質量%のニッケルが担持されてなる構成の光触媒(以下、「光触媒(1)」ともいう。)を作製した。
【0051】
(光触媒機能の評価)
図1~図3に示す閉塞循環系の反応装置を用い、得られた光触媒(1)の硝酸イオンの還元反応に対する活性として、10時間の反応時間で発生する窒素(窒素ガス)量を測定することによって光触媒機能の評価を行なった。
ここに、図1~図3において、10は石英製内部照射型反応管、17は真空ポンプに接続される発生ガス排気系真空ライン、22はスターラー、23は撹拌子、24は循環器、25は圧力計、26はガスクロマトグラフ、27はリービッヒ冷却管である。同図の石英製内部照射型反応管10は、反応管本体11と、当該反応管本体11の内部空間に配設される石英管12と、当該石英管12の内部空間に、冷却水流路13Aを有する冷却用ブロック13によって固定されて配設される光源Lとにより構成されている。
【0052】
具体的には、図1~図3の反応装置における石英製内部照射型反応管10の反応管本体11に、光触媒(1)0.5g(触媒物質の質量)を、還元対象イオン含有水溶液としての濃度27mMの硝酸ナトリウム水溶液370ml中に懸濁させた懸濁液よりなる光触媒分散液を仕込み、更に、この反応管本体11内に、450Wの高圧水銀灯よりなる光源Lが円柱状の内部空間に挿入されてなる石英管12を挿入する。そして、この光源Lを点灯させて光触媒分散液に対して光を10時間照射し、この光を照射している10時間において発生する窒素(窒素ガス)量を、ガスクロマトグラフ「GC-8A」(島津製作所社製;MS-5A column;Ar carier)よりなるガスクロマトグラフ26によって測定し、その測定値に基づいて、下記の式(1)によって窒素転化率を算出した。結果を表1に示す。
なお、表1には、10時間の反応時間内に発生した反応生成物(還元生成物としての水素ガス(H2 )、亜硝酸イオン(NO2 - )、アンモニウムイオン(NH4 + )、および酸化生成物としての酸素ガス(O2 ))の量、および10時間の反応時間経過後の硝酸イオンの残量を共に示す。生成ガスの分析には、ガスクロマトグラフ「GC-8A」(島津製作所社製;MS-5A column;Ar carier)を用い、溶液定性分析には、イオンクロマトグラフ「ICA-200」(東亜DKK社製)を用いた。
【0053】
【数1】
JP0005071857B2_000004t.gif

【0054】
この式(1)において、「初期硝酸モル量」とは、光触媒機能評価に用いた硝酸ナトリウム水溶液(還元対象イオン含有水溶液)中の硝酸イオンのモル量である。
【0055】
〔比較例1〕
実施例1において、触媒物質(1)にニッケルよりなる助触媒を担持しなかったこと以外は実施例1と同様にして比較用の光触媒(以下、「比較用光触媒(1)」ともいう。)を得、この比較用光触媒(1)について光触媒機能の評価を行なった。結果を表1に示す。
ここに、比較用光触媒(1)は、実施例1における触媒物質(1)と同一のものである。
【0056】
【表1】
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【0057】
以上の実施例1および比較例1の結果から、一般式(1)で表される層状ペロブスカイト化合物よりなる触媒物質(1)は、それ自体のみでは硝酸イオンの還元反応に対して高い活性を有さないものであることが確認された。
その理由は、一般式(1)で表される層状ペロブスカイト化合物よりなる触媒物質それ自体は水分解反応に対する活性を有さないものであるが、助触媒をその表面に担持することによって水分解反応に対する活性が得られることとなるためである。
なお、比較例1において、少量の窒素ガスが生成されると共に亜硝酸イオンが生成されているが、これは、硝酸イオンの還元反応が進行しているのではなく、主として硝酸イオンが光分解したことに起因するものである。
【0058】
実施例2~実施例5においては、一般式(1)においてAがバリウム原子である触媒物質を得、この触媒物質に助触媒としてニッケルを0.5~3質量%の担持量で担持させてなる構成の光触媒を製造し、光触媒機能の評価を行なった。
【0059】
〔実施例2~実施例5〕
実施例1において、触媒物質の作製例1と同様にして触媒物質(1)を得、この触媒物質(1)に対する助触媒の量を変更したこと以外は光触媒の作製例1と同様の手法によって光触媒を得、また得られた光触媒に対して、光触媒分散液を構成する還元対象イオン含有水溶液として、濃度27mMの硝酸ナトリウム水溶液370mlに代えて濃度10mMの硝酸ナトリウム水溶液350mlを用いたこと以外は実施例1と同様の手法によって光触媒機能の評価を行なった。結果を表2に示す。
ここに、実施例2に係る光触媒のニッケル担持量は0.5質量%であり、実施例3に係る光触媒のニッケル担持量は1.0質量%であり、実施例4に係る光触媒のニッケル担持量は2.0質量%であってこの光触媒は実施例1に係る光触媒(1)と同一のものであり、実施例5に係る光触媒のニッケル担持量は3.0質量%である。また、実施例5に係る光触媒機能の評価においては、亜硝酸イオン、アンモニウムイオンの生成量および硝酸イオンの残量の各々について、8時間の反応時間内における生成量および8時間経過後の残量を測定し、その値を表2に示した。すなわち、表2において、実施例5に係る亜硝酸イオンの生成量、アンモニウムイオンの生成量および硝酸イオンの残量は、各々、8時間経過後の測定値である。
【0060】
【表2】
JP0005071857B2_000006t.gif

【0061】
以上の実施例2~実施例5の結果から、助触媒の担持量が0.5~3質量%である場合には、硝酸イオンの還元が高い効率で行なわれることが確認され、特に助触媒の担持量が0.5質量%である場合(実施例2)には、他の場合に比して、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの消費速度が大きくて早い段階で減少し、水素ガスおよびアンモニウムイオンの生成量が多く、かつ窒素ガスが定常的に生成されていることが確認される。
更に、実施例4の結果を、実施例1の結果と比較することにより、還元対象イオン含有水溶液の濃度が高いほど水素ガスの生成が抑制されると共に硝酸イオンの還元反応が促進され、窒素ガスの生成速度が大きくなることが確認された。
なお、実施例1においては、初期の還元対象イオン含有水溶液の濃度が高いために、窒素ガス(N2 )への転化率が低い値となっている。
【0062】
実施例6~実施例13においては、一般式(1)においてAがバリウム原子である触媒物質を得、この触媒物質に適宜の助触媒を適宜の量で担持させてなる構成の光触媒を製造し、緩衝液が含有されてなる光触媒分散液を用いて光触媒機能の評価を行なった。
【0063】
〔実施例6〕
実施例2において得られた光触媒を用い、この光触媒に対して、光触媒分散液中に、濃度10mMのホウ酸水溶液よりなる緩衝液を含有させたこと以外は実施例2と同様の手法によって光触媒機能の評価を行なった。結果を表3に示す。
なお、この実施例6に係る光触媒分散液は、濃度10mMの硝酸ナトリウム水溶液と、濃度10mMのホウ酸水溶液との混合液350ml中に、光触媒が分散されてなる構成を有するものである。
【0064】
〔実施例7および実施例8〕
実施例1において、触媒物質の作製例1と同様にして触媒物質(1)を得、この触媒物質(1)に担持させる助触媒の種類および担持量を変更し、電気炉を用いた加熱温度を270℃、加熱時間を1時間に変更したこと以外は光触媒の作製例1と同様の手法によって光触媒を得、また得られた光触媒に対して、実施例6と同様の手法によって光触媒機能の評価を行なった。結果を表3に示す。
ここに、実施例7に係る光触媒は、銅0.5質量%とニッケル0.5質量%とを助触媒として共担したものであり、実施例8に係る光触媒は、銅0.2質量%とニッケル0.8質量%とを助触媒として共担持したものである。
【0065】
〔実施例9〕
実施例6において、緩衝液としてのホウ酸水溶液の濃度を3mMに変更したこと以外は実施例6と同様の手法によって光触媒機能の評価を行なった。結果を表3に示す。
【0066】
〔実施例10〕
実施例6において、緩衝液としてのホウ酸水溶液の濃度を6mMに変更し、光の照射時間を15時間に変更したこと以外は実施例6と同様の手法によって光触媒機能の評価を行なった。結果を表3および図4に示す。
また、光照射後に、反応系を暗所に放置し、その状態における、反応生成物の生成量および窒素ガスの生成量の測定を行なった。結果を図4に示す。
なお、表3において、この実施例10に係る亜硝酸イオンの生成量、アンモニウムイオンの生成量および硝酸イオンの残量は、各々、5時間経過後の測定値である。
【0067】
〔実施例11〕
実施例1において、触媒物質の作製例1と同様にして触媒物質(1)を得、この触媒物質(1)に対して、電気炉を用いた加熱温度を130℃、加熱時間を1時間に変更し、助触媒として1.0質量%の担持量で銅を担持させたこと以外は光触媒の作製例1と同様の手法によって光触媒を得、実施例6と同様の手法によって光触媒機能の評価を行なった。結果を表3に示す。
【0068】
〔実施例12〕
実施例2において得られた光触媒を用い、この光触媒に対して、光触媒分散液を構成する還元対象イオン含有水溶液として、濃度3mMの硝酸ナトリウム水溶液を用い、更に、光触媒分散液中に、濃度3mMのリン酸水素二ナトリウム水溶液と濃度3mMのリン酸二水素ナトリウム水溶液とよりなる緩衝液を含有させたこと以外は実施例2と同様の手法によって光触媒機能の評価を行なった。結果を表3に示す。
なお、この実施例12に係る光触媒分散液は、濃度3mMの硝酸ナトリウム水溶液と、濃度3mMのリン酸水素二ナトリウム水溶液と、濃度3mMのリン酸二水素ナトリウム水溶液との混合液350ml中に、光触媒が分散されてなる構成を有するものである。
【0069】
〔実施例13〕
実施例12において、光触媒分散液中に、濃度3mMのリン酸水素二ナトリウム水溶液と濃度3mMのリン酸二水素ナトリウム水溶液とよりなる緩衝液に代えて、濃度3mMのリン酸二水素カリウム水溶液と濃度3mMのリン酸水素二ナトリウム水溶液とよりなる緩衝液を含有させたこと以外は実施例12と同様にして光触媒機能の評価を行なった。結果を表3に示す。
なお、この実施例12に係る光触媒分散液は、濃度3mMの硝酸ナトリウム水溶液と、濃度3mMのリン酸二水素カリウム水溶液と、濃度3mMのリン酸水素二ナトリウム水溶液との混合液350ml中に、光触媒が分散されてなる構成を有するものである。
【0070】
【表3】
JP0005071857B2_000007t.gif

【0071】
以上の実施例6~実施例13の結果から、以下のことが確認された。
(1)実施例6、実施例12および実施例13の結果と、実施例2の結果とを比較することにより、緩衝液を用いることによって、窒素転化率、すなわち窒素ガスの生成量が飛躍的に向上していることから、光触媒分散液に緩衝液を含有させることにより、より一層高い効率で硝酸イオンの還元を行なうことができる、ということが確認された。
(2)実施例7および実施例8の結果から、助触媒として銅とニッケルとを共担持させることによっても、得られる光触媒に硝酸イオンの還元反応に対する高い活性が得られることが確認された。
(3)実施例6、実施例9および実施例10の結果から、緩衝液の使用量を、緩衝液の濃度が還元対象イオン含有水溶液の濃度の2倍となる量とすることにより、硝酸イオンの還元反応をスムーズに進行させることができる、ということが確認された。
具体的に、光触媒分散液中において、緩衝液の濃度が還元対象イオン含有水溶液の濃度の2倍である実施例10においては、図4からも明らかなように、5時間で90%以上の硝酸イオンを窒素(窒素ガス)にまで転換することができた。
(4)実施例11の結果から、助触媒として銅を用いることによっても、得られる光触媒に硝酸イオンの還元反応に対する高い活性が得られることが確認された。
(5)実施例6~実施例13の結果から、助触媒としては、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの消費速度が早く、また窒素ガスへの転化率、反応性の観点から、ニッケルを、担持量0.5質量%で用いることが好ましい、ということが確認された。
【0072】
実施例14および実施例15においては、各々、一般式(1)においてAがカルシウム原子またはストロンチウム原子である触媒物質を得、この触媒物質にニッケルよりなる助触媒を0.5質量%の量で担持させてなる構成の光触媒を製造し、緩衝液が含有されてなる光触媒分散液を用いて光触媒機能の評価を行なった。
【0073】
〔実施例14〕
実施例1において、原料物質として炭酸バリウム(BaCO3 )0.987gに代えて、炭酸カルシウム(CaCO3 )0.500gを用いたこと以外は触媒物質の作製例1と同様にして、一般式(1)においてAがカルシウム原子である層状ペロブスカイト化合物よりなる触媒物質5.1gを得、この触媒物質に対してニッケルよりなる助触媒を0.5質量%の担持量で担持させたこと以外は光触媒の作製例1と同様の手法によって光触媒を得、またこの光触媒に対して、実施例10と同様の手法によって光触媒機能の評価を行なった。結果を表4に示す。
ここに、この実施例14に係る光触媒分散液は、濃度3mMの硝酸ナトリウム水溶液と、濃度6mMのホウ酸水溶液との混合液350ml中に、光触媒が分散されてなる構成を有するものである。
また、実施例14に係る光触媒を構成する触媒物質は、Rigaku社製「MiniFlex」を用いた粉末X線回析により、一般式(1)において、Aがカルシウム原子である層状ペロブスカイト化合物であると同定された。
また、この触媒物質は、紫外-可視-近赤外拡散反射スペクトル(DRS)を、紫外可視近赤外分光光度計「UbestV-570」(Jasco社製)を用いて測定し、得られた拡散反射スペクトルをKubelka-Munk法によって吸収モードに変換することにより、紫外光吸収能を有することが確認された。
【0074】
〔実施例15〕
実施例1において、原料物質として炭酸バリウム(BaCO3 )0.987gに代えて、炭酸ストロンチウム(SrCO3 )0.775gを用いたこと以外は触媒物質の作製例1と同様にして、一般式(1)においてAがストロンチウム原子である層状ペロブスカイト化合物よりなる触媒物質5.3gを得、この触媒物質に対してニッケルよりなる助触媒を0.5質量%の担持量で担持させたこと以外は助触媒の担持例1と同様の手法によって光触媒を得、またこの光触媒に対して、実施例10と同様の手法によって光触媒機能の評価を行なった。結果を表4に示す。
ここに、この実施例15に係る光触媒分散液は、濃度3mMの硝酸ナトリウム水溶液と、濃度6mMのホウ酸水溶液との混合液350ml中に、光触媒が分散されてなる構成を有するものである。
また、実施例15に係る光触媒を構成する触媒物質は、Rigaku社製「MiniFlex」を用いた粉末X線回析により、一般式(1)において、Aがストロンチウム原子である層状ペロブスカイト化合物であると同定された。
また、この触媒物質は、紫外-可視-近赤外拡散反射スペクトル(DRS)を、紫外可視近赤外分光光度計「UbestV-570」(Jasco社製)を用いて測定し、得られた拡散反射スペクトルをKubelka-Munk法によって吸収モードに変換することにより、紫外光吸収能を有することが確認された。
【0075】
【表4】
JP0005071857B2_000008t.gif

【0076】
以上の実施例14および実施例15の結果から、一般式(1)においてAがカルシウム原子である層状ペロブスカイト化合物よりなる触媒物質および一般式(1)においてAがストロンチウム原子である層状ペロブスカイト化合物よりなる触媒物質は、いずれも、その表面に助触媒を担持させることによって得られる光触媒が水溶液中に含有されてなる硝酸イオンを高い効率で還元することができる、ということが確認された。
【0077】
これらの実施例1~実施例15の結果から、特定の触媒物質の種類、助触媒の種類および担持量、還元対象イオン含有水溶液の濃度、緩衝液の種類および濃度などを調整することにより、反応生成物(具体的には、水素ガス、窒素ガス、酸素ガス等)の生成量を制御することができる可能性がある、ということが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】実施例および比較例において光触媒機能を評価するために用いた閉鎖循環系の反応装置の構成を示す説明図である。
【図2】図1の反応装置における石英製内部照射型反応管の構成部材を示す説明図である。
【図3】図1の反応装置における石英製内部照射型反応管の構成を示す説明図である。
【図4】実施例10における紫外光照射下および紫外光照射後における単位時間当たりの窒素ガス(N2 )、水素ガス(H2 )、亜硝酸イオン(NO2 - )、アンモニウムイオン(NH4 + )および酸素ガス(O2 )の各々の生成量、並びに硝酸イオン(NO3 - )の残量を示すグラフである。
【符号の説明】
【0079】
10 石英製内部照射型反応管
11 反応管本体
12 石英管
13 冷却用ブロック
13A 冷却水流路
17 発生ガス排気系真空ライン
22 スターラー
23 撹拌子
24 循環器
25 圧力計
26 ガスクロマトグラフ
27 リービッヒ冷却管
L 光源
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3