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明細書 :粘性流体に含まれる気泡の除去方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4644808号 (P4644808)
公開番号 特開2007-054680 (P2007-054680A)
登録日 平成22年12月17日(2010.12.17)
発行日 平成23年3月9日(2011.3.9)
公開日 平成19年3月8日(2007.3.8)
発明の名称または考案の名称 粘性流体に含まれる気泡の除去方法
国際特許分類 B01D  19/00        (2006.01)
FI B01D 19/00 B
B01D 19/00 Z
請求項の数または発明の数 2
全頁数 9
出願番号 特願2005-239470 (P2005-239470)
出願日 平成17年8月22日(2005.8.22)
審査請求日 平成20年5月30日(2008.5.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
発明者または考案者 【氏名】岩田 修一
【氏名】森 秀樹
【氏名】新垣 勉
個別代理人の代理人 【識別番号】110001128、【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
審査官 【審査官】神田 和輝
参考文献・文献 特開昭64-047412(JP,A)
特開平05-293306(JP,A)
特開平07-256235(JP,A)
特開平10-057944(JP,A)
特開2003-225509(JP,A)
調査した分野 B01D 19/00
特許請求の範囲 【請求項1】
剪断により見かけ粘度が低下する性質を示す粘性流体から気泡を除去する気泡除去方法であって、
容積が変化できる構造を有する容器に前記粘性流体を充填し
前記容器の一部を振動させることによって、前記気泡が含まれる前記粘性流体の容積を変化させ、前記容器内の減圧・加圧を交互に行い、前記気泡体積を増加・減少させ、前記気泡の周囲に剪断流れを生じさせ、前記粘性流体の粘性抵抗を減少させ、前記気泡の上昇速度を増加させることを特徴とする気泡除去方法。
【請求項2】
前記容器として、薄膜を有するものを用い、
前記薄膜に振動を与えることによって、前記容器内の減圧・加圧を交互に行い、前記気泡の体積を増加・減少させ、前記気泡の上昇速度を増加させることを特徴とする請求項1に記載の気泡除去方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、粘性流体に含まれる気泡の除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、粘性流体中からの気泡除去装置として、特許文献1、2に開示された装置がある。これらの気泡除去装置の特徴は、被脱泡溶液を充填する容器の体積は一定であり、その容器全体に対して衝撃または低周波振動を与え、脱泡を行うことである。
【0003】
特許文献3には、真空タンク中の被脱泡溶液の撹拌により気液分離を行う気泡除去装置が提案されている。
【0004】
非特許文献1では、リザーバータンクから供給された気泡を含まないShear-Thinning性流体に関し、流路途中のテストセクション(鉛直管)に対し、鉛直方向に振動を与え、振動の有無による流量変化について、実験的な比較検討ならびにその単純化モデル系での非ニュートン流体による流動解析が行われた。その結果、振動を加えた方が、静止時よりも流量が増加することが報告された。

【特許文献1】特開平8-290008
【特許文献2】特開平10-263311
【特許文献3】特開2000-42304
【非特許文献1】N. S. Deshpande and M. Barigou: Vibrational flow of non- Newtonian fluids, Chem. Eng. Sci., 56, 3845-3853(2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示された気泡除去装置は、被脱泡溶液を入れた容器全体を垂直方向に衝撃を与える方法であるため、容器等に十分な強度が要求され、また、装置のスケールアップが難しいという問題点があった。
特許文献2、3に開示された装置は、真空系に振動を与える特徴がある。したがって、振動に耐えうる高度な真空技術が必要であり、装置構造の複雑化ならびに真空ポンプ等の運転コスト、その設置スペースの確保という問題があった。特に前者の装置では、シリンジ全体が振動するため、シリンジサイズが大きくなるにつれ振動装置の動力増加の問題が生じる。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであり、容器全体を振動させず、粘性流体の気泡除去を行うことを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の気泡除去方法は、剪断により見かけ粘度が低下する性質を示す粘性流体から気泡を除去する気泡除去方法であって、容積が変化できる構造を有する容器に前記粘性流体を充填し前記容器の一部を振動させることによって、前記気泡が含まれる前記粘性流体の容積を変化させ、前記容器内の減圧・加圧を交互に行い、前記気泡体積を増加・減少させ、前記気泡の周囲に剪断流れを生じさせ、前記粘性流体の粘性抵抗を減少させ、前記気泡の上昇速度を増加させることを特徴とする。
第2発明の気泡除去方法は、第1発明において、前記容器として、薄膜を有するものを用い、前記薄膜に振動を与えることによって、前記容器内の減圧・加圧を交互に行い、前記気泡の体積を増加・減少させ、前記気泡の上昇速度を増加させることを特徴とする
【0008】
本発明における気泡除去の原理を、図1~図3を参照しつつ説明する。図1は、静止時の気泡、図2は、気泡収縮時における気泡近傍の流れの様子、図3は、気泡膨張時における気泡近傍の流れの様子を示す模式図である。
【0009】
浮力と粘性抵抗との力の収支式であるStokesの式より、静止流体中での気泡上昇速度は、液体と気体との密度差に比例し、また気泡半径の2乗で比例し、液体粘度に反比例する。
【0010】
本発明による気泡除去方法は、振動による容積変化により、容器内は加圧・減圧を交互に行い、気泡が収縮・膨張することから、気泡近傍には放射状の流れが発生する。この流れは、気泡表面から距離が離れるほど減衰するため、気泡周囲に速度勾配(剪断流れ)が生じることを意味する。特にShear thinning性を示す被脱泡溶液では、剪断により見かけ粘度が低下する性質がある。したがって、気泡近傍における局所剪断場の形成は、その部分の被脱泡溶液のみかけ粘度を低下させるため、粘性抵抗が減少し、気泡上昇速度が増加する。
【0011】
また、上昇しながら膨張・収縮する気泡の近傍には、上記の剪断流れ以外にも気泡膨張時の浮力増加や複雑な流れが生じることが考えられ、気泡上昇速度の向上が期待される。このことは、Shear thinning性を示さない被脱泡溶液、すなわち、Newton流体でも気泡除去効果が期待されることを意味する。
本発明による気泡除去方法は、真空タンクや静置タンクなどの大型タンクを必要としないため設置スペースが小さいこと、溶液の粘度を低下させるために加熱を必要としないため、加熱により物性が変化してしまう物質にも適用可能である特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、第1、2発明を具体化した実施例1について、図4を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0013】
実施例1の示す気泡除去方法は、図4に示すように、樹脂またはゴム製の薄膜4を有するシリンジ3、ならびにシリンジ3を固定するシリンジ固定器具5、薄膜4に振動を与える振動装置6を用いて実施された。
ここに、シリンジ3は、薄膜4ならびにこの薄膜4をシリンジ3に固定する薄膜固定用シリンジキャップ12から構成される。本実施例では、薄膜4にはテフロン製の薄膜シートが、シリンジ3には内径19mm、高さ55mmのガラス製円筒セルがそれぞれ用いられた。
はじめに、シリンジ3に被脱泡溶液8を充填する。次に、シリンジ3に薄膜4を設置したシリンジキャップ12を閉め、シリンジ3を密閉する。これにより、外部より薄膜4を垂直方向に力を加えることにより、シリンジ3の内部圧力を変化することが可能となる。シリンジ3をシリンジ固定器具5で固定後、装置本体11にセットする。
波形制御装置10により出力された低周波信号は、アンプ9によって出力が増幅され、振動装置6を作動する。これにより、薄膜4を通じ、波形制御装置10の低周波信号で振動し、シリンジ3内の被脱泡溶液8中に混入した気泡の収縮、膨張が起こる。気泡が収縮、膨張を繰り返すことにより前述の原理で気泡上昇速度が向上する。
【0014】
前述の図4の実験装置を用い、気泡の混入した粘性流体に関し、本発明による気泡除去方法を適用した場合と、適用しなかった場合との気泡上昇速度を比較した。粘性流体は、Shear thinning性を有する溶液とShear thinning性を持たない溶液である。
【0015】
Shear thinning性を有する粘性流体として、零剪断粘度16Pa・s、濃度1.01wt%のポリアクリル酸ナトリウム水溶液を、Shear thinning性を持たない粘性流体として、粘度20Pa・s、濃度89.4wt%の水飴水溶液を用いた。実施例1で用いた気泡を含まない試料容液に関し、それぞれの剪断粘度特性を図5及び図6に示す。図5のShear thinning性を有するポリアクリル酸ナトリウム水溶液では、剪断流動に伴い、粘度が下がるものの、図6のNewton流体の水飴水溶液では、剪断によっても粘度は変化しないことがわかる。
【0016】
実施例1では、周波数200Hzの正弦波を用い、無次元最大加速度10~55Gの低周波振動を薄膜4に与えた。設置した気泡は1個であり、気泡体積は0.2~5μlで調整し、実験を行なった。ここに、Gは、振動子の最大加速度を重力加速度で無次元化した無次元最大加速度である。
【0017】
実験結果を図7及び図8に示す。図7はポリアクリル酸ナトリウム水溶液、図8は水飴水溶液における実験結果である。横軸は、振動子の無次元最大加速度Gであり、縦軸は、
同一気泡径における無振動時の自然上昇速度U0で無次元化された無次元気泡上昇速度εである。
【0018】
ポリアクリル酸ナトリウムに注目すると、無次元気泡上昇速度εは、最大で220あることがわかり、本発明は、気泡除去において非常に有効な方法であることが確認された。
一方、水飴でも無次元気泡上昇速度εは最大で10であり、本発明は、Shear thinning性を示さないNewton流体でも有効な方法であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の気泡除去装置は高粘性を持つ樹脂、接着剤、食品等、さまざまな高粘性物質の脱泡処理において利用可能であり、産業上極めて有益である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】静止時の気泡を示す図である。
【図2】気泡収縮時における気泡近傍の流れの様子を示す模式図である。
【図3】気泡膨張時における気泡近傍の流れの様子を示す模式図である。
【図4】本発明による気泡除去装置での実施例1の装置図
【図5】実施例1で用いた試料溶液(ポリアクリル酸ナトリウム水溶液)の剪断粘度曲線
【図6】実施例1で用いた試料溶液(水飴水溶液)の剪断粘度曲線
【図7】実施例1の実験結果で得られたポリアクリル酸ナトリウム水溶液における無次元気泡上昇速度分布図
【図8】実施例1の実験結果で得られた水飴水溶液における無次元気泡上昇速度分布図
【符号の説明】
【0021】
1 気泡 2 高粘性流体 3 シリンジ 4 薄膜
5 シリンジ固定器具 6 振動面 7 振動子 8 被脱泡溶液
9 アンプ 10 制御装置 11 装置本体
12 薄膜固定用シリンジキャップ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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