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明細書 :高靭性軽合金材料及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5202038号 (P5202038)
公開番号 特開2009-208099 (P2009-208099A)
登録日 平成25年2月22日(2013.2.22)
発行日 平成25年6月5日(2013.6.5)
公開日 平成21年9月17日(2009.9.17)
発明の名称または考案の名称 高靭性軽合金材料及びその製造方法
国際特許分類 B22D  17/00        (2006.01)
B21C  23/00        (2006.01)
C22C  21/02        (2006.01)
FI B22D 17/00 332
B21C 23/00 A
C22C 21/02
請求項の数または発明の数 1
全頁数 7
出願番号 特願2008-052393 (P2008-052393)
出願日 平成20年3月3日(2008.3.3)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 ▲1▼発行所 社団法人 日本塑性加工学会 刊行物名 第58回塑性加工連合講演会 講演論文集 発行日 平成19年10月12日 ▲2▼発表集会名 第3回複合材料研究センター発表会 主催者名 同志社大学、同志社大学複合材料研究センター 発表日 平成20年2月15日
審査請求日 平成23年3月2日(2011.3.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
発明者または考案者 【氏名】田中 達也
【氏名】鈴木 毅
【氏名】松葉 卓也
個別代理人の代理人 【識別番号】100065215、【弁理士】、【氏名又は名称】三枝 英二
【識別番号】100108084、【弁理士】、【氏名又は名称】中野 睦子
【識別番号】100115484、【弁理士】、【氏名又は名称】林 雅仁
【識別番号】100148998、【弁理士】、【氏名又は名称】菱田 高弘
審査官 【審査官】池ノ谷 秀行
参考文献・文献 特開2000-225412(JP,A)
特開平06-292961(JP,A)
国際公開第2005/052204(WO,A1)
特開2003-096549(JP,A)
特開2007-002318(JP,A)
調査した分野 B22D 17/00
B21C 23/00
特許請求の範囲 【請求項1】
軽合金の半凝固材にECAP加工(Equal Channel Angular Pressing)により剪断力を加えることにより得られる、高靭性軽合金材料であって、
前記軽合金が、アルミニウムを基にした合金であり、前記半凝固材が、球状化した固体と液体とが共存している状態で成型することにより得られたものであり、前記高靭性軽合金材料のシャルピー衝撃試験(JISZ2202 3号)の値が200kJ/m以上である、高靭性軽合金材料。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高靭性軽合金材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軽合金の結晶粒を微細化することにより、強度特性が向上する。結晶粒の微細化は、軽合金の異方性を打ち消す上でも有効である。しかしながら、熱処理加工による結晶粒の微細化には限界があるため、強加工で導入される歪を用いた結晶粒微細化が検討されている。強加工によって結晶粒を微細化する方法としては、例えば、圧縮捻り法、ECAP法(Equal Channel Angular Pressing)、繰返し圧延接合法等がある。
【0003】
圧縮捻り法では、円柱状のコンテナに円柱状金属試料を装填し、パンチを用いて圧縮力、捻り力を金属試料の一端に加えることによって強歪を導入し、結晶粒を微細化している。ECAP法では、L型孔をもつ金型内に棒状の金属試料を押し通し、断面形状を変えることなく強歪加工することによって結晶粒を微細化している。繰返し圧延接合法では、板状金属試料を圧延し、折り重ねた後で再度圧延を繰り返すことによって導入される強歪によって結晶粒を微細化している。
【0004】
このように、歪みを用いた結晶粒の微細化により軽合金は高強度化する。しかしながら、高強度化は可能であっても、靭性の向上は十分とは言い難い。よって、強度及び高靭性を兼ね備えた改良された軽合金材料の開発が望まれている。

【特許文献1】軽金属フォーラム第5巻(1999)第32~40頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、強度と共に高靭性を有する軽合金材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、軽合金の半凝固材に剪断力を加えて金属組織を微細化することにより得られる軽合金材料が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、下記の高靭性軽合金材料及びその製造方法に関する。
1. 軽合金の半凝固材に剪断力を加えて金属組織を微細化することにより得られる、高靭性軽合金材料。
2.前記軽合金は、アルミニウム及びマグネシウムの少なくとも1種を含有する、上記項1に記載の高靭性軽合金材料。
3.ECAP加工(Equal Channel Angular Pressing)により剪断力を加える、上記項1又は2に記載の高靭性軽合金材料。
4.シャルピー衝撃試験(JISZ2202 3号)の値が200kJ/m以上である、上記項1~3のいずれかに記載の高靭性軽合金材料。
5.軽合金の半凝固材に剪断力を加えて金属組織を微細化することを特徴とする、高靭性軽合金材料の製造方法。
【0008】

以下、本発明の高靭性軽合金材料及びその製造方法について説明する。
【0009】
本発明の高靭性軽合金材料は、軽合金の半凝固材に剪断力を加えて金属組織を微細化することにより得られる。
【0010】
上記特徴を有する本発明の高靭性軽合金材料は、軽合金の半凝固材に剪断力を加えて金属組織を微細化することにより、伸びのある金属部分(例えば、純アルミニウム及び純マグネシウム)と残りの共晶部分とがそれぞれに微細化され、伸びのある金属組織が軽合金材料の全体に均一に分散することによって強度と共に高靭性を有する。
【0011】
軽合金としては、例えば、融点が650℃以下の金属元素単体又はこれらの金属を基にした合金を用いる。具体的には、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、錫、鉛、ビスマス、テルビウム、テルル、カドミウム、タリウム、アスタチン、ポロニウム、セレン、リチウム、インジウム、ナトリウム、カリウム、ルビジュウム、セシウム、フランシウム、ガリウム等を挙げることできるが、特にアルミニウム、マグネシウム、鉛、亜鉛、ビスマス、錫の単体及びそれらの金属を基にした合金が望ましい。本発明では、これらの中でも、アルミニウム及びマグネシウムの少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0012】
軽合金の半凝固材の製造方法は特に限定されず、例えば、軽合金の溶湯を機械撹拌しながら冷却し、撹拌により球状化した固体と液体とが共存している状態で型に流し込んで成型することにより得る。軽合金は、半凝固材とすることにより、固相が一部晶出した状態で成型されるため、液体金属をそのまま成型した場合(即ち全溶融材)と比べて、凝固収縮に起因するポロシティ、偏析等の内部欠陥が少ない、結晶粒や金属間化合物等の晶出物が微細になることが特徴であり、伸びや金属疲労が抑制されて機械的強度が向上する。
【0013】
軽合金の半凝固材に剪断力を加える手段としては、例えば、圧縮捻り法、ECAP法(Equal Channel Angular Pressing)、繰返し圧延接合法等が挙げられる。
【0014】
上記手段の中でも、本発明ではECAP法が好ましい。ECAP装置の模式図を図1に示す。図1に示すECAP装置は、断面形状が等しく、折れ曲がった溝孔を有するダイスを有する。ダイスは、例えば、チャンネル形状が正方形断面(10×10mm)であり、チャンネル角が90°とする。ECAP加工は、ダイス上部から柱状の試料を装填し、荷重によりダイスの他端から押出す。なお、押出し後の試料の断面形状は変わらないため押出しを繰り返すことができ、押出しを繰り返す(1Pass、2Pass等)際は、試料を90°回転させて再押出し(いわゆるルートB)を行うことが好ましい。
【0015】
ECAP加工の加工条件は、例えば、加工温度473K、押出し速度0.5mm/secとする。加工条件は試料の種類に応じて、十分な剪断力を与えられる範囲で調整する。
【0016】
ECAP加工中、組織は初期状態で亜結晶粒が形成され、繰り返し加工による歪みの増大とともに結晶間の方位差が増大し、高傾角化には三次元的に剪断ひずみを加えることが有効とされている。
【0017】
上記手段により金属組織を微細化して得られる本発明の高靭性軽合金材料は、例えば、シャルピー衝撃試験(JISZ2202 3号)の値が、好ましい実施態様では200kJ/m以上である。このような高靭性は、合金化されていない伸びのある組織(例えば、純アルミニウム及び純マグネシウム)と残りの共晶部分がそれぞれに微細化され、伸びのある金属組織が軽合金材料の全体に均一に分散することによって得られると考えられる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の高靭性軽合金材料は、軽合金の半凝固材に剪断力を加えて金属組織を微細化することにより、伸びのある金属部分(例えば、純アルミニウム及び純マグネシウム)と残りの共晶部分とがそれぞれに微細化され、伸びのある金属組織が軽合金材料の全体に均一に分散することによって強度と共に高靭性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0020】
実施例1及び比較例1
下記表1に示す組成のAC4CHアルミニウム鋳造合金を用意した。そして、当該鋳造合金から得られる「AC4CH半凝固材」を実施例1で用いる試料とした。また、当該鋳造合金から得られる「AC4CH全溶融材」を比較例1で用いる試料とした。
【0021】
【表1】
JP0005202038B2_000002t.gif

【0022】
[表1中、数値は「重量%」を示す]
(ECAP加工)
超微細結晶材(UFG材)を作製するECAP装置として、図1に示される、断面形状が等しく、折れ曲がった溝孔を有するダイスを用意した。ダイスは、チャンネル形状が正方形断面(10×10mm)であり、チャンネル角が90°とした。ECAP加工は、ダイス上部から柱状の試料を装填し、荷重によりダイスの他端から押出す。ここで、押出し後の試料の断面形状は変わらないため押出しを繰り返すことができる。押出しを繰り返す(1Pass、2Pass等)際は、試料を90°回転させて再押出しを行ういわゆるルートBを用いた。
【0023】
ECAP加工の加工条件は、加工温度473K、押出し速度0.5mm/secとした。試料の押出しには、オートグラフ(島津製作所AG-500kN型)を用いた。
【0024】
AC4CH半凝固材について、(a)0Pass、(b)4Pass、(c)8Passの3サンプルを作製した。
【0025】
AC4CH全溶融材について、(a)0Pass、(b)4Pass、(c)8Passの3サンプルを作製した。
【0026】
なお、未加工のもの(0Pass)を、特にCG材(粗粒材)とも言う。以下、半凝固3サンプルと全溶融3サンプルを合わせて、「6サンプル」と総称する。
(組織観察)
前記6サンプルを、湿式エメリペーパー(♯1000~♯2000)で研磨し、ダイヤモンドペースト(1μm)でバフ研磨を施して鏡面に仕上げた。次に、2%フッ酸水溶液で腐食後、光学顕微鏡にて組織観察した。
(静的引張試験)
前記6サンプルから、I型試験片を作製し、静的引張試験片とした。
【0027】
島津製作所製精密万能試験機(AG-100kN型)を用いて静的引張試験を行った。その際、平均ひずみ速度は1.6×10-3-1とした。
(シャルピー衝撃試験)
前記6サンプルから、JISZ2202 3号試験片(幅7.5mm)を作製し、シャルピー衝撃試験片とした。
【0028】
島津製作所製シャルピー衝撃試験機(5kgf・m)を用いた。
≪結 果≫
(組織観察)
光学顕微鏡を用いて撮影したECAP加工前後のAC4CH半凝固材の組織写真を図2(a)~(c)に示す。
【0029】
ECAP加工前のCG材(図2(a))において、球状化している100μm~500μm程度の初晶アルミニウムが確認できる。これに対して、ECAP加工を4Pass施した図2(b)では、加工中の剪断歪みの影響により組織が破壊され、初晶アルミニウムと共晶組織とが混ざり始めて球状ではなくなった。また、ECAP加工を8Pass施した図2(c)では、組織の均一化が進んでいることが分かる。
(静的引張試験)
AC4CH全溶融材、AC4CH半凝固材の静的引張試験により得た公称応力-歪み線図を図3に示す。
【0030】
AC4CH全溶融材では、ECAP加工による最大引張応力は向上しなかったが、破断歪みは大きな値となった。
【0031】
本来、強度と伸びはトレードオフの関係にある。しかしながら、ECAP加工により作製したUFG材は、転位で構成される結晶粒界の近傍に多くの転位が存在している。そのため、粒界エネルギーが大きく結晶粒内にまで大きな応力場が広がっているため、一般的な粒界と異なる不安定な状態である非平衡粒界と呼ばれている。この非平衡粒界を有する材料の特徴として、トレードオフ関係の不成立が報告されている。本結果においても、AC4CH全溶融材にECAP加工を施したUFG材は、伸びが向上しているが強度は保持されており、靭性が向上していることが確認できた。
【0032】
AC4CH半凝固材のCG材(0Pass)では、AC4CH全溶融材に比べて伸びが向上していることが分かる。これは、全溶融材の場合、ECAP加工の初期の段階から初晶デンドライトのアームが破壊され均一な組織になっていくのに対して、半凝固材では、図2から分かるように球状化していた初晶の形態が崩れて不均一な組織になった後、均一な組織に近づいていることに起因すると考えられる。
(シャルピー衝撃試験)
AC4CH全溶融材、AC4CH半凝固材のシャルピー衝撃試験により得たシャルピー衝撃値を図4に示す。
【0033】
AC4CH半凝固材はいずれもAC4CH全溶融材と比較してシャルピー衝撃値が高いことがわかる。また、それぞれの試料においてECAP加工を施すことでシャルピー衝撃値が大幅に向上していることが分かる。
(破断面観察)
シャルピー衝撃試験後のSEMを用いて撮影した破断面の拡大写真を図5、図6に示す。図5、図6のいずれからも、Pass数の増加に伴い、破断面の様相が変化していくことが確認できる。特に半凝固材においては8Passで多くのディンプルが確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施例1、比較例1で用いたECAP装置の模式図である。
【図2】半凝固材試料の0Pass、4Pass、8Passの組織観察図である。
【図3】実施例1、比較例1の静的引張試験の結果を示す図である。
【図4】実施例1、比較例1のシャルピー衝撃試験の結果を示す図である。
【図5】全溶融材試料の0Pass、4Pass、8Passの破断面観察図である。
【図6】半凝固材試料の0Pass、4Pass、8Passの破断面観察図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5