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明細書 :マグネシウム合金用鋳型及びマグネシウム合金鋳造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4748426号 (P4748426)
公開番号 特開2009-233690 (P2009-233690A)
登録日 平成23年5月27日(2011.5.27)
発行日 平成23年8月17日(2011.8.17)
公開日 平成21年10月15日(2009.10.15)
発明の名称または考案の名称 マグネシウム合金用鋳型及びマグネシウム合金鋳造方法
国際特許分類 B22D  21/04        (2006.01)
B22C   1/00        (2006.01)
FI B22D 21/04 B
B22C 1/00 G
B22C 1/00 C
B22C 1/00 Z
請求項の数または発明の数 4
全頁数 8
出願番号 特願2008-080509 (P2008-080509)
出願日 平成20年3月26日(2008.3.26)
審査請求日 平成23年3月14日(2011.3.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
発明者または考案者 【氏名】高島 正之
【氏名】米沢 晋
【氏名】阿良田 吉昭
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100088133、【弁理士】、【氏名又は名称】宮田 正道
審査官 【審査官】池ノ谷 秀行
参考文献・文献 特開平04-333343(JP,A)
特開昭61-115643(JP,A)
特開2000-239998(JP,A)
調査した分野 B22D 21/04
B22C 1/00
特許請求の範囲 【請求項1】
型及び/又は中子は、通気性のある素材で形成されており、この通気性のある素材は、網体、複数の孔を有する板若しくは布のいずれか又はその組み合わせから構成されていることを特徴とするマグネシウム合金用鋳型。
【請求項2】
網体、板又は布は、金属、化学繊維若しくはセラミックスのいずれか又はその組み合わせからなることを特徴とする請求項1に記載のマグネシウム合金用鋳型。
【請求項3】
網体、板及び布は可撓性を有することを特徴とする請求項2に記載のマグネシウム合金用鋳型。
【請求項4】
型及び/又は中子が通気性のある素材で形成されており、この通気性ある素材は、網体、複数の孔を有する板若しくは布のいずれか又はその組み合わせから構成されている鋳型を使用することを特徴とするマグネシウム合金鋳造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネシウム合金用鋳型及びマグネシウム合金鋳造方法に関し、詳しくはマグネシウム合金の溶湯の流動性を確保することができるマグネシウム合金用鋳型及びマグネシウム合金鋳造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マグネシウムは実用金属としては最も軽い材料であり、比強度及び比剛性が鋼やアルミニウムより優れていることや、電磁波シールド性、切削性、振動吸収性、耐くぼみ性及びリサイクル性も優れていることにより、マグネシウムの適用範囲が拡大している。
特に、マグネシウム合金は自動車や携帯用端末の部品の材料として使用され急激に需要が伸びている。
従来、このような部品を製造する際には、マグネシウム合金を鋳造によって成形する方法が採用されている。
【0003】
しかしながら、マグネシウム合金を金属製の鋳型を用いて鋳造する際には、マグネシウム合金の単位体積あたりの潜熱が小さく、溶湯と金属製の鋳型との間の熱伝導率が大きいため、マグネシウム合金の溶湯が金属製の鋳型に接触すると瞬時に凝固し流動性を失い、鋳型全体に溶湯が行き渡らせることが困難であるという問題があった。
特に小さな部品や薄肉の部品の鋳造する場合には、凝固したマグネシウム合金が溶湯が流れる空間を塞いでしまい、鋳型全体に溶湯が行き渡らせることが困難であった。
そのため、金属の鋳型を加熱することによって、マグネシウム合金の溶湯の流動性を確保する方法で鋳造が行われてきた。
【0004】
このように金属の鋳型を加熱して行われる鋳造は、特開2002-129272に開示されている。
特開2002-129272では、金属製の鋳型を200℃に加熱して溶湯の流動性を確保して鋳造を行っている。

【特許文献1】特開2002-129272
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、金属の鋳型を加熱して行われる鋳造では、金属製の鋳型を加熱する発熱体及び温度測定装置が必要になるため、鋳造装置の製造コストが増大し、さらに加熱することによってエネルギーコストも増大するという問題があった。
【0006】
上記点より本発明は、鋳造装置の製造コスト及び加熱することによって生じるエネルギーコストを低減しつつマグネシウム合金溶湯の流動性を確保できるマグネシウム合金用鋳型及びその鋳型を利用したマグネシウム合金鋳造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1のマグネシウム合金用鋳型は、型及び/又は中子は、通気性のある素材で形成されており、この通気性のある素材は、網体、複数の孔を有する板若しくは布のいずれか又はその組み合わせから構成されている。
【0008】
請求項2のマグネシウム合金用鋳型は、網体、板又は布が金属、化学繊維、セラミックスのいずれか又はその組み合わせからなる
【0009】
請求項3のマグネシウム合金用鋳型は、網体、板及び布が可撓性を有する。
【0010】
請求項4のマグネシウム合金鋳造方法は、型及び/又は中子が通気性のある素材で形成されており、この通気性ある素材は、網体、複数の孔を有する板若しくは布のいずれか又はその組み合わせから構成されている鋳型を使用する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1のマグネシウム合金用鋳型によれば、マグネシウム合金用鋳型の型及び/又は中子が通気性のある素材で形成されていることによって、溶湯とマグネシウム合金用鋳型との間のみかけの熱伝導係数が小さくなる。
みかけの熱伝導係数が小さくなることにより、溶湯がマグネシウム合金用鋳型に接触しても瞬時に固まることがなく溶湯の流動性が確保され、マグネシウム合金用鋳型全体に溶湯が行き渡るようになる。
したがって、マグネシウム合金用鋳型を加熱する発熱体及び温度測定装置が必要ないので、鋳造装置の製造コストを低減することができる。
さらに、鋳造の際にマグネシウム合金用鋳型を加熱する必要がないので、加熱することによって生じるエネルギーコストを低減することができる。
通気性のある素材は網体、複数の孔を有する板又は布のいずれか若しくはその組み合わせから構成されているので、マグネシウム合金の溶湯の単位体積あたりの潜熱の小ささ及び表面張力の影響によって、マグネシウム合金用鋳型と接触した溶湯は網の間、孔、織目及び繊維の間等から流出することなく凝固する。
また、通気性のある素材は網体、複数の孔を有する板又は布のいずれか若しくはその組み合わせから構成されているので、マグネシウム合金用鋳型に空気を抜くための穴を新たに設ける必要がない。
さらに、溶湯の熱による線膨張の影響をマグネシウム合金用鋳型全体で緩和吸収し、型及び/又は中子が歪みにくい。
【0012】
請求項2のマグネシウム合金用鋳型によれば、マグネシウム合金の組成、鋳造品の大きさや形状等を考慮して、鋳造に最適な網体、板又は布の材料を選択することができる。
【0013】
請求項3のマグネシウム合金用鋳型によれば、網体、板及び布が可撓性を有することによって、マグネシウム合金用鋳型の製造を容易に行うことができる。
さらに、マグネシウム合金用鋳型の形状を変更することによって、マグネシウム合金の鋳造品の形状を変更することも容易に行うことができる。
【0014】
請求項4のマグネシウム合金鋳造方法によれば、マグネシウム合金用鋳型の型及び/又は中子が通気性のある素材で形成されていることによって、溶湯とマグネシウム合金用鋳型との間のみかけの熱伝導係数が小さくなる。
みかけの熱伝導係数が小さくなることにより、溶湯がマグネシウム合金用鋳型に接触しても瞬時に固まることがなく溶湯の流動性が確保され、マグネシウム合金用鋳型全体に溶湯が行き渡るようになる。
したがって、マグネシウム合金用鋳型を加熱する発熱体及び温度測定装置が必要ないので、鋳造装置の製造コストを低減することができる。
さらに、鋳造の際にマグネシウム合金用鋳型を加熱する必要がないので、加熱することによって生じるエネルギーコストを低減することができる。
通気性のある素材は網体、複数の孔を有する板若しくは布のいずれか又はその組み合わせから構成されているので、マグネシウム合金の溶湯の単位体積あたりの潜熱の小ささ及び表面張力の影響によって、マグネシウム合金用鋳型と接触した溶湯は網の間、孔、織目及び繊維の間等から流出することなく凝固する。
また、通気性のある素材は網体、複数の孔を有する板若しくは布のいずれか又はその組み合わせから構成されているので、マグネシウム合金用鋳型に空気を抜くための穴を新たに設ける必要がない。
さらに、溶湯の熱による線膨張の影響をマグネシウム合金鋳型全体で緩和吸収し、型及び/又は中子が歪みにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。
図1は、柱状のマグネシウム合金鋳造品を鋳造する過程を示す断面図である。
本実施形態で使用するマグネシウム合金は、AZ91Dである。
【0016】
図1(a)に示すように、マグネシウム合金用鋳型の型1は、通気性のある素材の網体から構成されている。
網体はステンレスから形成されており、網の線径は0.30mm、メッシュは20である。
型1は上型11及び下型12から構成されている。
【0017】
図1(b)に示すように、上型11及び下型12で形成される空間に、坩堝4で溶融させたマグネシウム合金の溶湯3を流し込む。
溶湯の温度は560℃~800℃である。
【0018】
上型11及び下型12は通気性のある網体から構成されていることによって、溶湯3と上型11及び下型12との間のみかけの熱伝導係数が小さくなる。
みかけの熱伝導係数が小さくなることにより、溶湯3が上型11及び下型12に接触しても瞬時に固まることなく溶湯3の流動性が確保され、上型11及び下型12で形成される空間全体に溶湯3が行き渡る(図1(c)参照)。
冷却後、上型11及び下型12を外せば柱状のマグネシウム合金鋳造品31が得られる(図1(d)参照)。
【0019】
図2は、中空の球体状のマグネシウム合金鋳造品を鋳造する過程を示す断面図である。
マグネシウム合金は、図1と同様AZ91Dである。
図2(a)に示すように、マグネシウム合金用鋳型の型1及び中子2は、通気性のある素材の網体から構成されている。
【0020】
網体はステンレスから形成されており、網の線径は0.30mm、メッシュは20である。
型1は上型11及び下型12から構成されている。
図2(b)に示すように、上方11及び下型12と中子2とによって形成される空間に、坩堝4で溶融させたマグネシウム合金の溶湯3を流し込む。
溶湯3の温度は560℃~800℃である。
【0021】
上型11、下型12及び中子2は通気性のある網体から構成されていることによって、溶湯3と上型11、下型12及び中子2及び中子との間のみかけの熱伝導係数が小さくなる。
みかけの熱伝導係数が小さくなることにより、溶湯3が上型11、下型12及び中子2に接触しても瞬時に固まることなく溶湯3の流動性が確保され、上型11、下型12及び中子2で形成される空間全体に溶湯3が行き渡る(図2(c)参照)。
冷却後、上型11及び下型12を外せば中空の球状のマグネシウム合金鋳造品31が得られる(図2(d)参照)。
中子2はマグネシウム合金鋳造品31の内部にあるので、出来上がった鋳造品は、マグネシウム合金とステンレスとの複合材料の成形品である。
中子2の材料を換えることによって、マグネシウム合金と中子2の材料との複合材料の成形品を鋳造することができる。
【0022】
上記のように、型1及び中子2が網体から構成されていることによって、型1及び中子2を加熱しなくても溶湯3の流動性が確保される。
したがって、マグネシウム合金用鋳型1を加熱する発熱体及び温度測定装置が必要ないので、鋳造装置の製造コストを低減することができる。
さらに、鋳造の際にマグネシウム合金用鋳型1を加熱する必要がないので、加熱することによって生じるエネルギーコストを低減することができる。
【0023】
型1及び中子2が網体から構成されていても、マグネシウム合金の溶湯3の単位体積あたりの潜熱の小ささ及び表面張力の影響によって、型1及び/又は中子2と接触した溶湯3は網の間から流出することなく凝固する。
また、マグネシウム合金用鋳型の型1及び中子2が網体から構成されているので、型1及び中子2に空気を抜くための穴を新たに設ける必要がない。
さらに、溶湯3の熱による網の線膨張の影響をマグネシウム合金用鋳型全体で緩和吸収し、マグネシウム合金用鋳型の型1及び中子2が歪みにくい。
【0024】
本実施形態では、柱状及び中空の球体状のマグネシウム合金鋳造品31を鋳造する場合について説明したが、これに限定されることなく、マグネシウム合金用鋳型の形状を変えることによって、本発明で鋳造される鋳造品の形状を任意に変えることができる。
【0025】
本実施形態では、通気性のある素材として網体を使用し、鋳型全体が通気性のある素材で形成されている場合について説明したが、これに限定されることなく、例えば、鋳型の一部が通気性のある素材で形成されていてもよい。
鋳型の一部が通気性のある素材で形成されていることによって、溶湯の流動性が失われやすい細部や薄肉部にも溶湯が行き渡るようになる。
【0026】
本実施形態では、通気性ある素材として網体を使用したが、これに限定されることなく、複数の孔を有する板(パンチングメタル)又は布若しくは網体、複数の孔を有する板(パンチングメタル)又は布の組み合わせから構成されていてもよい。
これらのような通気性ある素材を使用しても、みかけの熱伝導係数が小さくなることにより、溶湯3が型1及び中子2の鋳型に接触しても瞬時に固まることなく溶湯3の流動性が確保され、型1及び中子2全体に溶湯3が行き渡る。
【0027】
本実施形態では、マグネシウム合金はAZ91Dを使用したが、これに限定されることなく、マグネシウムにアルミニウム、亜鉛、マンガン、希土類、重希土類、イットリウム、カルシウム、ストロンチウム、銀、珪素、ジルコニウム、ベリリウム、ニッケル、鉄、銅、コバルト、ナトリウム、カリウム、バリウムの中から適宜選択し添加したマグネシウム合金を使用してもよい。
【0028】
また、網体は、平織、綾織、撚線織、杉綾織、繻子織、平畳織、綾畳織、逆畳織、延織、鎖状縦三本織スダレ織等の織り方で織られたものを使用することができる。
本実施形態では、メッシュが20の網体を使用したが、メッシュは1.5~3600の範囲で選択することができる。
また、本実施形態では網の線径が0.30mmの網体を使用したが、網の線径は0.02mm~6mmの範囲で選択することができる。
これにより、マグネシウム合金の組成、鋳造品の大きさや形状等を考慮して、鋳造に最適な網体を選択することができる。
【0029】
複数の孔を有する板を使用する場合は、板厚、通気性に影響を及ぼす孔の形状及び開口率を任意の値に設定することができる。
これにより、マグネシウム合金の組成、鋳造品の大きさや形状等を考慮して、鋳造に最適な複数の孔を有する板を選択することができる。
【0030】
布を使用する場合は、通気性がある織布及び不織布を使用することができ、任意の織布の織り方、不織布の製法及び繊維の径を選択することができる。
通気性がある織布としては、例えば、通気性のある炭素繊維のプリプレグ等がある。
これにより、マグネシウム合金の組成、鋳造品の大きさや形状等を考慮して、鋳造に最適な布を選択することができる。
【0031】
本実施形態では、網体はステンレスから形成されているが、これに限定されることなく、網体が例えば、アルミニウム合金、ニッケル、モネル、黄銅、丹銅、燐青銅、銅、銀、金、鉄、チタン、ニクロム、ハステロイ又はインコネル等の金属、PBO、炭素繊維又はメタ系アラミド繊維等の耐熱性のある化学繊維、カーボン、ムライト、アルミナ及びジルコニア等の耐熱性のあるセラミックスのいずれか若しくはその組み合わせから形成されていてもよい。
同様に、複数の孔を有する板及び布も上記金属、化学繊維及びセラミックスのいずれかもしくはその組み合わせから形成されていてもよい。
これにより、マグネシウム合金の組成、鋳造品の大きさや形状等を考慮して、鋳造に最適な網体、板又は布の材料を選択することができる。
【0032】
また、網体、板及び布は可撓性を有していてもよい。
これにより、網体、板及び布が可撓性を有することによって、マグネシウム合金用鋳型の製造を容易に行うことができる。
さらに、型の形状を変更することによって、マグネシウム合金の鋳造品の形状を変更することも容易に行うことができる。
【0033】
なお、本発明は、連続鋳造にも適用することができ、連続鋳造に適用する場合は例えば、連続鋳造装置の鋳型、連続鋳造ロール及びベルトを通気性のある素材で形成する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】柱状のマグネシウム合金鋳造品を鋳造する過程を示す断面図
【図2】中空の球体状のマグネシウム合金鋳造品を鋳造する過程を示す断面図
【符号の説明】
【0035】
1 型
2 中子
3 溶湯
4 坩堝
11 上型
12 下型
31 マグネシウム合金鋳造品
図面
【図1】
0
【図2】
1