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明細書 :心音周波数解析装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5207174号 (P5207174)
公開番号 特開2009-240527 (P2009-240527A)
登録日 平成25年3月1日(2013.3.1)
発行日 平成25年6月12日(2013.6.12)
公開日 平成21年10月22日(2009.10.22)
発明の名称または考案の名称 心音周波数解析装置
国際特許分類 A61B   7/04        (2006.01)
A61B   5/025       (2006.01)
FI A61B 7/04 L
A61B 5/02 350
請求項の数または発明の数 3
全頁数 9
出願番号 特願2008-090594 (P2008-090594)
出願日 平成20年3月31日(2008.3.31)
審査請求日 平成23年2月9日(2011.2.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】江 鐘偉
【氏名】崔 三晋
審査官 【審査官】門田 宏
参考文献・文献 特開2005-296643(JP,A)
特開2003-108185(JP,A)
特開2002-153434(JP,A)
特開2001-224563(JP,A)
特開2003-000558(JP,A)
国際公開第2007/046504(WO,A1)
調査した分野 A61B 7/04
A61B 5/025
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
医学中央雑誌WEB
特許請求の範囲 【請求項1】
人体から収集した心音聴診データを解析して、心臓疾患を解析する心音解析装置であって、
前記心音聴診データから第1音及び第2音を含む1心音周期分を1周期心音データとして切り出す手段と、
前記1周期心音データをスペクトルパワー密度データに変換する手段と、
前記スペクトルパワー密度データにおいて信号強度が最大になる周波数Fmaxを求める手段と、
前記スペクトルパワー密度データにおいて、複数個の信号強度閾値THV(i=1~n)を設定して、それぞれのTHVに対する周波数幅Fwidthを求める手段と、
複数の心音周期の前記Fmax、THV及びFwidthに基づいて、心臓疾患の解析をする解析手段と、を有する
ことを特徴とする心音解析装置。
【請求項2】
前記解析手段は、サポートベクトルマシン識別学習方法を用いて心臓疾患の解析をする、
ことを特徴とする請求項1記載の心音解析装置。
【請求項3】
さらに、心音収集手段を有し、
前記心音収集手段は、人体に密着させる複数のチェストピースと、前記複数のチェストピースを固定するバンドまたはジャケットとからなり、
前記チェストピースは、前記バンドまたはジャケットを人体に装着したときに前記チェストピースが大動脈弁、肺動脈弁、三尖弁、僧帽弁のいずれかの近傍に配置されるように、前記バンドまたはジャケットに固定されている、
ことを特徴とする請求項1または2記載の心音解析装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、人体から収集した心音聴診データを周波数解析して、異常心音を識別する、心音周波数解析装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心音データには多くの情報が含まれており、これらの情報を解析すれば、多くの心臓疾患が識別可能であることが知られている。通常は、医者が聴診器を用いて患者の心音を聞き、経験に基づいて心臓疾患などの識別を行っている。ただ、従来の方法は医者の経験に基づくものであるので、汎用性が無い。心音データをコンピュータ等により解析する方法もいくつか知られているが、心音はノイズが多く、解析するのは容易ではない。もし、心音データをコンピュータ等により解析して心臓疾患の識別ができれば、在宅医療・介護・在宅ヘルスケアなどへ応用に貢献することができる。
【0003】
従来技術としては、特許文献1乃至3がある。
特許文献1には、心音データを周波数解析して、大動脈弁の開放時期を決定する技術が記載されている。しかしながら、特許文献1では、心音データを周波数解析しているものの、信号強度が最大になる周波数Fmax、複数個の信号強度閾値THV(i=1~n)、及び、それぞれのTHVに対する周波数幅Fwidthに基づいて、心臓疾患の解析をすることは記載も示唆もされていない。
特許文献2には、心音データを周波数解析することにより周波数帯域幅を求めて、この周波数帯域幅に基づいて心音成分を決定する技術が記載されている。しかしながら、特許文献2では、閾値は1つであり、その閾値に基づいて1つの周波数帯域幅を求めているだけである。また、信号強度が最大になる周波数Fmaxを心臓疾患の解析に用いていない。
特許文献3には、心音データを周波数解析して心臓疾患を解析することが記載されている。また、各区間ごとの代表周波数を求めることも記載されている(段落0016)。しかしながら、心臓疾患の解析に、複数個の信号強度閾値THV(i=1~n)、及び、それぞれのTHVに対する周波数幅Fwidthを用いることは記載も示唆もされていない。

【特許文献1】特開2001-224563号公報
【特許文献2】特開2003-558号公報
【特許文献3】特開2002-153434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、今まで、心音データの周波数解析を効果的に行う心音周波数解析技術はなかった。本発明は、心音データを周波数解析して、自動的に異常心音や心臓疾患の解析が行うことができる、心音周波数解析装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は以下の構成を有する。
人体から収集した心音聴診データを解析して、心臓疾患を解析する心音解析装置であって、
前記心音聴診データから第1音及び第2音を含む1心音周期分を1周期心音データとして切り出す手段と、
前記1周期心音データをスペクトルパワー密度データに変換する手段と、
前記スペクトルパワー密度データにおいて信号強度が最大になる周波数Fmaxを求める手段と、
前記スペクトルパワー密度データにおいて、複数個の信号強度閾値THV(i=1~n)を設定して、それぞれのTHVに対する周波数幅Fwidthを求める手段と、
複数の心音周期の前記Fmax、THV及びFwidthに基づいて、心臓疾患の解析をする解析手段と、を有する
ことを特徴とする心音解析装置。
【0006】
また、以下の好ましい実施態様がある。
前記解析手段は、サポートベクトルマシン識別学習方法を用いて心臓疾患の解析をする。
さらに、心音収集手段を有し、
前記心音収集手段は、人体に密着させる複数のチェストピースと、前記複数のチェストピースを固定するバンドまたはジャケットとからなり、
前記チェストピースは、前記バンドまたはジャケットを人体に装着したときに前記チェストピースが大動脈弁、肺動脈弁、三尖弁、僧帽弁のいずれかの近傍に配置されるように、前記バンドまたはジャケットに固定されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明は上記構成を採用したことにより、心音データのスペクトルパワー密度から効率よく異常心音や心臓疾患の解析を行うことができる。特に、スペクトルパワー密度データにおいて、信号強度が最大になる周波数Fmaxと、複数個の信号強度閾値THV(i=1~n)と、それぞれのTHVに対する周波数幅Fwidthを用い、これらの多数のパラメータをサポートベクトルマシン識別学習方法のような学習型アルゴリズムを用いて、より正確に心音データから心臓疾患の解析ができる。Fmaxは第1音及び第2音の主要周波数を代表し、Fwidthは心雑音を代表する。通常用いられる閾値は1個であるが、本発明では、信号強度閾値THV(i=1~n)は複数個であり、それに対応した周波数幅Fwidthも複数個であるので、より多くのパラメータにより心音データを解析することができ、学習型アルゴリズムなどによる解析において精度が向上する。
また、本発明では、バンドまたはジャケットを人体に装着したときにチェストピースが大動脈弁、肺動脈弁、三尖弁、僧帽弁のいずれかの近傍に配置されるように、チェストピースをバンドまたはジャケットに固定することにより、簡単で正確に心音収集部(チェストピース)を人体の最適位置に配置できる。大動脈弁、肺動脈弁、三尖弁、僧帽弁などの位置は、熟練した医師ではないとなかなかわかりにくいが、本発明の構成により簡単にそれらの位置に心音収集部(チェストピース)を配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態の心音解析装置のブロック図である。心音センサ1は、身体に取付けられていて、身体からの心音を収集する。心音センサ1は、身体からの心音を収集できれば何でも良いが、例えば、聴診器で用いるチェストピースなどを用いると良い。心音センサ1で得られた心音データは心音受信手段2に送られる。心音受信手段2は、例えば、マイクロフォン、A/D変換器などを備えており、心音をデジタル信号に変換して出力する。心音受信手段2から出力された心音データは、PC等の演算手段3に送られる。なお、この図では、心音センサ1からの心音を直接演算手段3に取り込む例を示しているが、これに限らず、別の場所で事前に録音やデータ蓄積された心音データを演算手段3に取り込む構成にしても良い。演算手段3は、内部に、1周期心音切り出し部31、スペクトル変換部32、Fmax・Fwidth抽出部33、心臓疾患解析部34、サポートベクトルマシン35などを含んでいる。演算手段3により解析された結果は、表示手段4に出力される。
【0009】
図2は、心音センサ1を身体に取り付けるためのジャケットの例である。心音を効果的に収集するためには、心音センサ1を正確な位置に設置する必要があるが、一般の人がその位置を正確に把握するのは難しい。本実施形態では、予め心音を収集できる場所に心音センサ1を配置したジャケット5を用い、このジャケット5を着用することで、自動的に心音センサ1が身体の最適位置に配置される。心音センサ1の配置場所は、例えば、大動脈弁、肺動脈弁、三尖弁、僧帽弁の近傍などである。
【0010】
図3は、本実施形態における心音解析アルゴリズムのフローチャートである。ステップ61で心音受信手段2で受信された心音データを取り出し、ステップ62で1心音周期分の1周期心音データを切り出し、ステップ63で前記1周期心音データをスペクトルパワー密度データに変換し、ステップ64で前記スペクトルパワー密度から信号強度が最大になる周波数Fmaxを算出し、ステップ65でn個の信号強度閾値THV(i=1~n)に対する周波数幅Fwidthを算出し、ステップ66でFmax、THV及びFwidthから心臓疾患の解析し、ステップ67で解析結果を出力する。個々のステップの細かい演算方法に関しては後で説明する。
【0011】
以下、本実施形態における心音解析原理について詳しく説明する。
図4は、主な聴診音の周波数分布を表す図である。図4から、一部異常心音の周波数は正常周波数と重なり、正常心音か異常心音か区別が難しいことがわかる。本発明はこのような場合も異常心音を識別する方法を提案するものである。
具体的には、収録した心音から第1音と第2音を1セグメントとして切り出し(図5)、それぞれのセグメントに対してスペクトルパワー密度解析を行う。その結果の最大値が1となるように正規化する(図6)。
【0012】
図5(a)が正常心音の1セグメントの波形、図5(b)が異常心音の1セグメントの波形である。この図からわかるように、正常心音に比べて異常心音の方が雑音成分が多い。雑音成分が多いということは、それだけ周波数帯域幅が広くなることを意味する。図6(a)は図5(a)の波形をスペクトル変換したグラフ、図6(b)は図5(b)の波形をスペクトル変換したグラフである。図6から、異常心音の方が周波数帯域Fwidthが広いことがわかる。
【0013】
異常心音の識別に使用するパラメータとして、図6で定義される、『信号強度が最大になる周波数Fmax』、『信号強度閾値THV(i=1~n)』、『信号強度閾値THV(i=1~n)に対する周波数幅Fwidth』を導入する。なお、『信号強度閾値THV(i=1~n)』は、異なる値の閾値が複数個(n個)設定される。Fmaxは第1音と第2音の主要周波数を表わすもの、Fwidthは心雑音のパラメータとして用いる。図7(THVが信号強度最大値の10%)からわかるように、一般的に、正常心音の場合はFmaxが50Hz付近、Fwidthが200Hz付近に分布し、異常心音の場合はFmaxが50Hz以上、Fwidthが200Hz以上の広い範囲に分布している。
【0014】
複数個(n個)の信号強度閾値THV(i=1~n)とそれに対する周波数幅Fwidthを用いることで、正常心音の周波数と異常心音の周波数とが近くても、複数個のTHVの値により区別することが可能となる。図8はTHVをそれぞれ10%、20%、30%、40%とした場合に求められたFmaxとFwidthの分布をプロットしたものである。ここで(NM1、NM2、NM3)は健常者のサンプル、AF、MS、ARはそれぞれ心房(性)細動(不整脈の一種)、僧帽弁狭窄症、大動脈弁閉鎖不全または大動脈弁逆流である。
【0015】
異常心音の識別方法として、図8のFmaxとFwidthi(i=1~n)の値をサポートベクターマシン(SVM)識別学習方法によって学習し、各種心疾病によって発生する異常心音が対応するSVMモジュールの境界線を決定する。SVMモジュールの境界線の一例を図9に示す。また、図10に示すSVM識別フローチャートにおいて、まずSVM1モジュールにより正常心音を異常心音から仕分ける。次に異常心音データをSVM2aとSVM2bモジュールを通し、AS(大動脈弁狭窄症)とARとに仕分ける。その他のデータを次のSVM3aとSVM3bモジュールに入力し、ARとASを識別する。必要に応じてSVM4、SVM5と他の異常心音を判別していく。図11にSVM識別方法を用いた識別精度(Accuracy)、敏感度(sensitivity)、特異度(specificity)を示す。図11(a)は各SVMモジュールの識別精度(ACC)を表す図、図11(b)は正常心音を正しく識別できた割合(SPE)を表す図、図11(c)は各異常心音を正しく識別できた割合(SEN)を表す図である。これらの図からわかるように、正常心音を正しく識別できた割合は99.60%、異常心音を正しく識別できた割合は98.90%であり、高い割合で正常と異常とを識別できていることがわかる。また、異常心音がどの心臓疾患に相当するかも比較的高い精度で識別できていることがわかる。
【0016】
ここで、サポートベクターマシン(SVM)について簡単に説明する。サポートベクターマシンとは、ニューラルネットワークの一種であり、学習型のクラスタリングを行うアルゴリズムの1つである。図9のように、2次元に分布しているデータを複数種類に分ける場合の境界線を学習により決定する。この際、各境界線において、できるだけマージンが大きくなるように境界線の決定を行う。境界線が学習により決定されると、そのルール(SVMモジュール)にしたがって、入力されたデータが振り分けられる。本発明においては、複数個のTHV(i=1~n)とそれに対応したFwidthを用いているため、多くのSVMモジュールを定義可能であり、図10に示すように多段階でデータの分類が可能であるので、より高い精度で心音の識別が可能である。
【0017】
以上、本発明の実施形態の一例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇において各種の変更が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態のブロック図。
【図2】心音センサを身体に配置するためのジャケットの図。
【図3】本実施形態の動作を示すフロー図。
【図4】各聴診音の周波数分布を説明する図。
【図5】正常心音と異常心音の心音波形の一例を示す図。
【図6】図5の波形をスペクトル変換した図。
【図7】正常心音と異常心音のFmaxとFwidthの分布の一例を示す図。
【図8】THVを変化させた場合のFmaxとFwidthの分布を示す図。
【図9】各SVMモジュールの境界線を示す図。
【図10】SVM識別フロー図。
【図11】本実施形態による識別結果を示すグラフ。
【符号の説明】
【0019】
1:心音センサ、
5:ジャケット
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10