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明細書 :DNA結合能をもつ高等植物のSpo11類縁タンパク質の調製法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5441022号 (P5441022)
公開番号 特開2009-235042 (P2009-235042A)
登録日 平成25年12月27日(2013.12.27)
発行日 平成26年3月12日(2014.3.12)
公開日 平成21年10月15日(2009.10.15)
発明の名称または考案の名称 DNA結合能をもつ高等植物のSpo11類縁タンパク質の調製法
国際特許分類 C12P  21/02        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C07K  14/415       (2006.01)
C07K  19/00        (2006.01)
FI C12P 21/02 C
C12N 15/00 A
C07K 14/415 ZNA
C07K 19/00
請求項の数または発明の数 5
全頁数 16
出願番号 特願2008-086248 (P2008-086248)
出願日 平成20年3月28日(2008.3.28)
審査請求日 平成23年2月15日(2011.2.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503359821
【氏名又は名称】独立行政法人理化学研究所
発明者または考案者 【氏名】新宮 良宣
【氏名】美川 務
【氏名】柴田 武彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100137512、【弁理士】、【氏名又は名称】奥原 康司
【識別番号】100149294、【弁理士】、【氏名又は名称】内田 直人
審査官 【審査官】吉田 知美
参考文献・文献 再公表特許第2005/113768(JP,A1)
特開2000-189163(JP,A)
特開2008-189556(JP,A)
Protein Expression and Purification,2004年,Vol.38,p.136-144
Nucl. Acids Res.,2000年,Vol.28, No.7,p.1548-1554
DEFINITION: Oryza sativa Japonica Group OsSPO11A mRNA for topoisomerase Spo11, complete cds.,GenBank: AB219537 [online],2008年 2月15日,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/AB219537
FEBS J.,2010年,277,p.2360-2374
調査した分野 C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/WPIDS/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
Spo11タンパク質を、トリガーファクターとSpo11タンパク質の融合タンパク質と、宿主大腸菌内で同時に発現させ、該宿主大腸菌細胞を破砕し、可溶性成分を回収し、該可溶性成分から可溶性Spo11タンパク質を調製する方法
【請求項2】
前記Spo11タンパク質をコードする核酸と、前記トリガーファクターとSpo11タンパク質の融合タンパク質をコードする核酸が同一の組換えベクターに、同時発現可能に挿入されており、該組換えベクターを前記宿主大腸菌内に導入することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記Spo11タンパク質をコードする核酸が以下の(a)又は(b)で示される核酸を含む組換えベクターを前記宿主大腸菌内に導入することにより達成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
(a)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7又は配列番号9で表されるヌクレオチド配列からなる核酸、
(b)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7又は配列番号9で表されるヌクレオチド配列からなる核酸と、90~99%の相同性を有する配列からなる核酸であって、該核酸がコードするポリペプチドがDNA結合能を有する核酸
【請求項4】
前記Spo11タンパク質が以下の(a)又は(b)で示されるポリペプチドであることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
(a)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8又は配列番号10で表されるアミノ酸からなるポリペプチド、
(b)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8又は配列番号10で表されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失若しくは挿入を持つアミノ酸配列からなり、かつ、DNA結合能を有するポリペプチド
【請求項5】
前記トリガーファクターが、配列番号12で表されるアミノ酸からなるポリペプチドであることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質の調製法に関する。より詳細には、活性を保持したSpo11類縁タンパク質の調製法に関する。
【背景技術】
【0002】
交配による品種改良において、減数分裂期の相同DNA組換え(遺伝的組換え、普遍的組換え、相同的組換えともいう)は重要な働きをしていると考えられている。その相同DNA組換えは、ゲノムDNAに多数存在する特定の部位にDNA二本鎖切断が導入されることで開始される。このDNA二本鎖切断は、真核生物では、パン酵母で発見されたSpo11タンパク質若しくはその類縁タンパク質、又は、該タンパク質が核になったタンパク質複合体が行うと考えられている(非特許文献1~3)。
相同DNA組換えのメカニズムをより詳細に解明する上で、Spo11タンパク質(及び類縁タンパク質)及び該タンパク質を含む複合体の機能を明らかにすることは、極めて重要なことであるが、そのためには、まず、Spo11タンパク質の生化学的な機能解析を行う必要がある。活性を保持したSpo11タンパク質を調製する試みは、これまでに多数行われているが、Spo11タンパク質の発現自体が困難な上、発現した場合でも、可溶化したタンパク質を調製することに成功した例がない。Wuらは、大腸菌内で発現させた不溶性のSpo11(Rec12)タンパク質を、尿素、グアニジン塩酸等による変性-再折りたたみの過程を経て、可溶性のSpo11タンパク質を調製したことを報告している(非特許文献4)。Wuらは、調製されたSpo11タンパク質には、一本鎖DNAへニックを入れる活性及び二本鎖のスーパーコイルDNAに切断を入れる活性を有するとも報告しているが、精製タンパク質とDNAとが実際に接触あるいは結合したとの証拠は示されておらず、活性を有するとの報告には疑問が残る(非特許文献4)。
【0003】
遺伝子の組み換え技術の進歩により、所望のタンパク質を自由に設計し、大腸菌を用いて大量に取得し得る可能性が示されてきたが、実際には、大腸菌内で発現したタンパク質は正常な立体構造を取らず、その結果、本来の活性を発揮しないことが多かった。そこで、大腸菌内で発現したタンパク質の構造を正常に折りたたませるために、分子シャペロンを利用する試みが行われ、ある程度の成果を上げている。トリガーファクター(以下、TF:trigger factor)は、大腸菌由来の分子シャペロンの1種で、大腸菌を用いた組換えタンパク質の発現において、発現タンパク質を可溶化した状態で取得するために利用することができ、目的のタンパク質にTFを融合させて発現させることで、可溶化型の目的タンパク質を得ることができる。しかし、タンパク質の生化学的特徴を正確に解明するためには、TFを融合させずに目的タンパク質のみを可溶化した形態で取得し、機能解析を行う必要がある。
【0004】

【非特許文献1】Keeneyら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 92:11274-11278,1995
【非特許文献2】Keeneyら,Cell,88:375-384,1997
【非特許文献3】Keeneyら,Genomics,61:170-182,1999
【非特許文献4】Wuら,Protein Expr Purif,38:136-144,2004
【非特許文献5】Merzら,J.Biol.Chem.,281:31963-31971,2006
【非特許文献6】Hesterkampら,J.Biol.Chem.,272:21865-21871,1997
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、上記事情に鑑み、DNA結合能を保持したSpo11タンパク質を調製する方法について鋭意研究を行った結果、大腸菌由来のTFと融合させたSpo11タンパク質とSpo11タンパク質のみを同時に発現させることで、Spo11タンパク質単独の可溶化形態の調製が可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
よって、本発明は、DNA結合能を持つ可溶性Spo11タンパク質(TFと融合していない)の提供を目的とする。
また、本発明は、DNA結合能を持つ可溶性Spo11タンパク質(TFと融合していない)を調製する方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すでに、発明者らはTFと融合した可溶性Spo11タンパク質を調製することを見出し、該タンパク質がDNAとの結合能を有することを明らかにしている。このようなTFとの融合タンパク質(以下、TF-Spo11タンパク質とも記載する)については、TFとSpo11タンパク質との間にプロテアーゼの認識部位を導入し、TF-Spo11タンパク質を調製後、プロテアーゼによって、TFとSpo11タンパク質を分離することも可能であると考えられた。しかしながら、TFと融合して発現させた可溶性Spo11タンパク質は、TFと分離すると不安定となり、Spo11タンパク質を単独で取得することは困難であった。そこで、発明者らは、TF-Spo11タンパク質とSpo11タンパク質のみを同時に発現させたところ、Spo11タンパク質を単独で可溶化できることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は以下の(1)~(8)に関する。
(1)本発明の第1の態様は、「Spo11タンパク質を、トリガーファクター又はトリガーファクターとSpo11タンパク質の融合タンパク質と、宿主大腸菌内で同時に発現させ、該宿主大腸菌細胞を破砕し、可溶性成分を回収し、該可溶性成分から可溶性Spo11タンパク質を調製する方法」である。
(2)本発明の第2の態様は、「Spo11タンパク質を、トリガーファクターとSpo11タンパク質の融合タンパク質と、宿主大腸菌内で同時に発現させ、該宿主大腸菌細胞を破砕し、可溶性成分を回収し、該可溶性成分から可溶性Spo11タンパク質を調製することを特徴とする上記(1)に記載の方法」である。
(3)本発明の第3の態様は、「前記Spo11タンパク質をコードする核酸と、前記トリガーファクターとSpo11タンパク質の融合タンパク質をコードする核酸が同一の組換えベクターに、同時発現可能に挿入されており、該組換えベクターを前記宿主大腸菌内に導入することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の方法」である。
(4)本発明の第4の態様は、「前記Spo11タンパク質をコードする核酸が以下の(a)又は(b)で示される核酸を含む組換えベクターを前記宿主大腸菌内に導入することにより達成されることを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の方法。
(a)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7又は配列番号9で表されるヌクレオチド配列からなる核酸、
(b)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7又は配列番号9で表されるヌクレオチド配列からなる核酸の相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸であって、該核酸がコードするポリペプチドがDNA結合能を有する核酸」である。
(5)本発明の第5の態様は、「前記Spo11タンパク質が以下の(a)又は(b)で示されるポリペプチドであることを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の方法。
(a)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8又は配列番号10で表されるアミノ酸からなるポリペプチド、
(b)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8又は配列番号10で表されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失若しくは挿入を持つアミノ酸配列からなり、かつ、DNA結合能を有するポリペプチド」である。
(6)本発明の第6の態様は、「前記トリガーファクターが、配列番号12で表されるアミノ酸からなるポリペプチドであることを特徴とする上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の方法」である。
(7)本発明の第7の態様は、「上記(1)乃至(6)に記載のいずれかの方法により調製された可溶性Spo11タンパク質」である。
(8)本発明の第8の態様は、「配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるペプチドに対する抗体」である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法によれば、可溶性であり、かつ完全長のSpo11タンパク質であって、DNA結合能を保持したタンパク質を調製することができる。
【0009】
本発明のSpo11タンパク質は、可溶性であり、かつ、完全長の形態を備えているため、完全長のSpo11タンパク質に対する抗体の作製の用に供することができる。
【0010】
本発明のSpo11タンパク質を用いることで、減数分裂期相同DNA組換えにおいて誘導されるDNAの二本鎖切断の分子メカニズムを明らかにすることが可能となる。
【0011】
本発明のSpo11タンパク質を用いることで、これまで明らかにされていなかった、Spo11タンパク質との相互作用因子(活性化因子など)の同定、及び、Spo11タンパク質を含む機能複合体の作用機序の解明が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施態様の1つは、「Spo11タンパク質を、トリガーファクター又はトリガーファクターとSpo11タンパク質の融合タンパク質と、宿主大腸菌内で同時に発現させ、該宿主大腸菌細胞を破砕し、可溶性成分を回収し、該可溶性成分から可溶性Spo11タンパク質を調製する方法」である。なお、本明細書中では、TFとSpo11タンパク質(又は、Spo11-1タンパク質若しくはSpo11-2タンパク質など)との融合タンパク質を、TF-Spo11タンパク質(又は、TF-Spo11-1タンパク質若しくはTF-Spo11-2タンパク質など)と記載する。
本発明の「Spo11タンパク質」とは、配列番号2、4、6、8又は10で表されるアミノ酸配列と同一又は実質的に同一のアミノ酸配列を含むタンパク質である。ここで、「実質的に同一のアミノ酸配列を含むタンパク質」とは、配列番号2、4、6、8又は10で表わされるアミノ酸配列と約60%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%,81%,82%,83%,84%,85%,86%,87%,88%,89%,90%,91%,92%,93%,94%,95%,96%,97%,98%,最も好ましくは約99%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、DNA結合能を有するタンパク質である。
あるいは、配列番号2、4、6、8又は10で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含むタンパク質としては、配列番号2、4、6、8又は10で表わされるアミノ酸配列中の1又は数個(好ましくは、1~30個程度、より好ましくは1~10個程度、さらに好ましくは1~5個)のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、DNA結合能を有するタンパク質である。上記アミノ酸の欠失、付加及び置換は、タンパク質をコードする核酸に元々存在した変異であってもよく、また、該核酸を当該技術分野で公知の手法によって改変することによって新たに導入したものであってもよい。該改変は、例えば、特定のアミノ酸残基の置換は、市販のキット(例えば、MutanTM-G(TaKaRa社)、MutanTM-K(TaKaRa社))等を使用し、Guppedduplex法やKunkel法等の公知の方法あるいはそれらに準じる方法により塩基の置換を行なうことによって実施することができる。
【0013】
本発明の調製方法において、Spo11タンパク質を、トリガーファクター(TFと称する)又はTFとSpo11タンパク質との融合タンパク質と、同一の宿主大腸菌内で、同時に発現させることで、Spo11タンパク質のみの可溶性の形態が調製される。ここで、TFは大腸菌由来のものが好ましい。Spo11タンパク質とTF、あるいは、Spo11タンパク質とTF-Spo11タンパク質を、同一の宿主大腸菌内で発現させる方法は、当業者であれば容易に選択することができ、Spo11タンパク質をコードする核酸(以下、ここではSpo11核酸と称する)とTFをコードする核酸(以下、ここではTF核酸と称する)、あるいは、Spo11核酸とTF-Spo11タンパク質をコードする核酸(以下、ここでは、TF-Spo11核酸と称する。TF-Spo11-1タンパク質等についても同様。)を、同時に発現することができるように、各々、異なる2つのプロモーターの制御下にてコントロールし、発現を誘導することができる。この場合、両タンパク質をコードする核酸は、同一の発現ベクターに挿入されていても、異なる発現ベクターに個別に挿入されていてもよいが、同一の発現ベクターに挿入されている方が好ましい。
【0014】
TF-Spo11核酸の発現コンストラクト部分については、Spo11核酸とSpo11核酸の5’側にTF核酸を配置し、同一の発現ベクターに組み込むことができる。当該コンストラクト部分の構築において、Spo11核酸とTF核酸との間に介在配列(介在ヌクレオチド配列)を配置させてもよいが、Spo11タンパク質及びTF-Spo11タンパク質が正しいアミノ酸配列によって構成される状態で発現可能なように、読み枠を合わせて構築する必要がある。また、この介在ヌクレオチド配列の部分を特定のペプチダーゼ(例えば、トロンビンなど)が認識し得るペプチド配列をコードする配列として構築することもできる。このように構築することにより、生産された融合タンパク質に特定のペプチダーゼ(例えば、トロンビン)を作用させることで、Spo11タンパク質とTFを分離し、Spo11タンパク質のみの形態を取得することが可能となる。さらに、該融合タンパク質のコード領域の5’側、3’側等に、タンパク質の精製に有効なタグ配列(例えば、Hisタグ、HAタグなど)をコードする核酸配列を配置してもよい。本発明のSpo11タンパク質には、Spo11タンパク質の全長が含まれているものであれば、Spo11タンパク質のみの形態、TF及び/又はタグ配列との融合した形態のいずれも含まれるものとする。
【0015】
本発明に使用されるTFは、大腸菌のtig遺伝子に由来するもので(配列番号11及び12)、pTIG2(Guthrieら,EMBO J.,7:1831-1835,1988)などのtig遺伝子を保持するベクターから取得することが好適である。取得したtig遺伝子を適当なタンパク質発現用のベクターに導入することで、TFとの融合タンパク質発現用のベクターを構築するができる。あるいは、tig遺伝子が予め構築された市販の発現プラスミド(例えば、pColdTF DNA、TaKaRa社)にSpo11核酸を構築して、発現用のベクターを調製することもできる。本発明で使用可能なTFは、TFの部分アミノ酸から構成されるものであっても、シャペロン活性を有するものであれば、使用することができる。例えば、配列番号12で表されるアミノ酸配列において、248~432番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド(C領域と称する)を必須構成部分とし、1~144番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド(N領域と称する)又は145~247番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド(P領域と称する)と融合した形態を用いてもよい。
【0016】
本発明のSpo11タンパク質をコードする核酸は、配列番号1、3、5、7又は9で表される核酸配列からなるDNAのみならず、配列番号1、3、5、7又は9で表される核酸配列からなるDNAと相補的な配列からなるDNAと高ストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ、DNA結合能を有するタンパク質をコードするDNAからなるものも含まれる。配列番号1、3、5、7又は9で表わされる核酸配列からなるDNAと相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、配列番号1、3、5、7又は9で表わされるヌクレオチド配列と好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%,81%,82%,83%,84%,85%,86%,87%,88%,89%,90%,91%,92%,93%,94%,95%,96%,97%,98%,最も好ましくは約99%の核酸配列相同性を有する配列からなるDNA等が挙げられる。
【0017】
ここで、ストリンジェントな条件とは、当業者によって容易に決定されるハイブリダイゼーション条件のことで、一般的にプローブ長、洗浄温度、及び塩濃度に依存する経験的な実験条件である。一般に、プローブが長くなると適切なアニーリングのための温度が高くなり、プローブが短くなると温度は低くなる。ハイブリッド形成は、一般的に、相補的鎖がその融点よりやや低い環境における再アニール能力に依存する。
具体的には、例えば、低ストリンジェントな条件として、ハイブリダイゼーション後のフィルターの洗浄段階において、37℃~42℃の温度条件下、0.1×SSC、0.1%SDS溶液中で洗浄することなどが上げられる。また、高ストリンジェントな条件として、例えば、洗浄段階において、65℃、5×SSCおよび0.1%SDS中で洗浄することなどが挙げられる。ストリンジェントな条件をより高くすることにより、相同性の高い核酸を得ることができる。
【0018】
本発明のSpo11核酸は、全ての真核生物のゲノムデータベース、又は、cDNAバンクデータからの抽出により推認することができる。なお、本願出願時点までに、パン酵母(出芽酵母)、分裂酵母、ヒトを含む哺乳類、又はショウジョウバエにおいては、各々、1種類、イネからは4種類以上、シロイヌナズナからは3種類の遺伝子が推認できている。本発明の調製方法において使用可能なSpo11核酸は、真核生物由来のものであれば、使用可能であるが、特に、イネ又はシロイヌナズナ由来のものが好ましい。
【0019】
本発明のSpo11タンパク質を発現させるための発現ベクターは、予めTFをコードする核酸が挿入されている市販のベクター(例えば、pColdTF DNA、TaKaRa社)を利用し、Spo11をコードする核酸を該ベクターに挿入することで取得することができる。その他使用可能なベクターとしては、例えばpBR322、pBR325、pUC118、pUC119、pUC18、pUC19等を用いることもできる。
また、発現ベクターに用いられるプロモーターとしては、目的の核酸の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであれば特に限定されない。例えば、tacプロモーター、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーター、Csプロモーター、T7プロモーター等が挙げられる。
【0020】
上述のベクターに対するSpo11核酸又はTF核酸の挿入は、クローニングされたDNAをそのまま、又は制限酵素で消化して、リンカーを付加し、ベクターDNAの制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入することにより行うことができる。連結するDNAはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGA又はTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することもできる。連結するDNAは、当該DNA中にコードされている本発明のポリペプチドが宿主細胞中で発現されるようにベクターに組み込まれることが必要である。
ペプチドをコードするDNA配列を含むベクターを構築することができる。また、本発明のSpo11タンパク質をコードする核酸を保持した発現ベクターを宿主大腸菌に導入する方法としては、カルシウムイオンを用いる方法、エレクトロポレーション法等が利用可能である。
【0021】
本発明のSpo11タンパク質は、宿主大腸菌を破砕して得られる可溶性画分から取得するこができる。宿主大腸菌を培養するにあたり、培地としては、微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。炭素源としては、グルコース、フルクトース、スクロース、デンプン等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類が用いられる。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸若しくは有機酸のアンモニウム塩又はその他の含窒素化合物のほか、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカー等が用いられる。無機塩類としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等が用いられる。
培養は、宿主大腸菌に適した条件下で行う。例えば、培養する際の培地としては、LB培地、M9培地等が好ましい。所望によりプロモーターを効率よく働かせるために、イソプロピル-1-チオ-β-D-ガラクトシド、3β-インドリルアクリル酸のような薬剤を加えることができる。培養は、通常約15~37℃で約3~24時間行い、必要により、通気や撹拌を加えることもできる。
【0022】
Spo11タンパク質を培養菌体から抽出するに際しては、培養後、公知の方法で菌体を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチーム及び/又は凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊したのち、遠心分離や濾過により、可溶性抽出液を取得する。得られた抽出液からDNA結合能を保持したSpo11タンパク質を精製するにあたり、公知の分離・精製法を適切に組み合わせて行うことができる。これらの公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、及びSDS-PAGE等の主として分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの電荷の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィー(例えば、Hisタグを用いた場合には、Ni-NTA樹脂やCoベースの樹脂を、HAタグを用いた場合には、抗HA抗体結合カラムが使用可能である)などの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。ただし、本発明のSpo11タンパク質は、プロテアーゼ等によるタンパク質分解の影響を受け易いため、Spo11タンパク質の完全長を安定に取得するためには、ヘパリンカラムクラマトグラフィーを精製過程のいずれかの工程で用いることが望ましい。また、TFタンパク質と有効に分離するためには、ヘパリンカラムクロマトグラフィーを用いてグラジエント溶出を行うことが有効である。グラジエントは、例えば、NaCl又はKClなどの塩による濃度勾配により実施することができ、例えば、塩濃度の下限を0M、0.3M、0,5M又は0.7Mとし、上限を0.9M、1.0M、1.2M又は1.5Mとすることができ、好ましくは、下限が0M、0.3M、0,5M又は0.7M、上限が0.9M、1.0M又は1.2Mであり、より好ましくは、下限が0,5M又は0.7M、上限が0.9M又は1.0Mであり、最も好ましくは下限が0.7M、上限が1.0Mである。
【0023】
本発明の他の実施態様は、「本発明のSpo11タンパク質に対する抗体」である。本発明の抗体には、完全長のSpo11タンパク質と特異的に結合する抗体、及びそのFab又はF(ab’)2などの抗体断片が含まれる。
本発明の「抗体」(Spo11タンパク質の活性(DNA結合能)を促進又は阻害する抗体を含む)には、DNA結合能を保持するSpo11タンパク質に対するモノエピトープ特異抗体、ポリエピトープ特異抗体、単一鎖抗体、及びこれらの断片が含まれる。これらの抗体には、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト化抗体などが含まれる。
ポリクローナル抗体は、例えば、哺乳類宿主動物に対して、免疫原及びアジュバントの混合物をインジェクトすることにより調製することができる。通常は、免疫原及び/又はアジュバントを宿主動物の皮下又は腹腔内へ複数回インジェクトする。免疫原には本発明のDNA結合能を保持した可溶性Spo11タンパク質を使用することができる。アジュバントの例には、完全フロイト及びモノホスホリル脂質A合成-トレハロースジコリノミコレート(MPL-TDM)が含まれる。
【0024】
モノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ法を用いて調製することができる。
この方法には以下に示す4つの工程が含まれる:(i)宿主動物または、宿主動物由来のリンパ球を免疫する、(ii)モノクローナル抗体分泌性(又は潜在的に分泌性)のリンパ球を回収する、(iii)リンパ球を不死化細胞に融合させる、(iv)所望のモノクローナル抗体を分泌する細胞を選択する。
マウス、ラット、モルモット、ハムスター、又は他の適当な宿主動物が、免疫動物として選択され免疫原がインジェクトされる。或いは、免疫動物から取得したリンパ球をインビトロで免疫化してもよい。ヒト細胞が望ましい場合には、末梢血リンパ球(PBLs)が一般に使用される。しかしながら、他の哺乳類由来の脾臓細胞又はリンパ球がより一般的で好ましい。
【0025】
免疫後、宿主動物から得られたリンパ球はハイブリドーマ細胞を樹立するために、ポリエチレングリコールなどの融合剤を用いて不死化細胞株と融合する。融合細胞としては、トランスフォーメーションによって不死化されたげっ歯類、ウシ、又はヒトのミエローマ細胞が使用されるか、ラットもしくはマウスのミエローマ細胞株が使用される。細胞融合を行った後、融合しなかったリンパ球及び不死化細胞株の成長又は生存を阻害する一又は複数の基質を含む適切な培地中で細胞を生育させる。通常の技術では、酵素のヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠く親細胞を使用する。この場合、ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンがHGPRT欠損細胞の成長を阻害し、ハイブリドーマの成長を許容する培地(HAT培地)に添加される。このようにして得られたハイブリドーマから、所望の抗体を産生するハイブリドーマを選択し、該ハイブリドーマが生育する培地から、定法に従い、目的のモノクローナル抗体を取得することができる。
【0026】
本発明のSpo11タンパク質に対する抗体には、Spo11タンパク質とDNAの結合を阻害する抗体も含まれる。そのような抗体としては、例えば、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24又は配列番号25で示されるアミノ酸配列からなるペプチドを、特異的に認識し結合する抗体が含まれる。
【0027】
以下に実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0028】
1.TF-Spo11タンパク質
シロイヌナズナのSpo11-1核酸(配列番号1)及びSpo11-2核酸(配列番号3)をA.thalianaから調製した総RNAに対してRT-PCRを行って取得した。
Spo11-1核酸は、NdeIサイトとBamHIサイトを含む以下のプライマーセットにより、さらに、増幅を行ったのち、増幅産物をNdeI、BamHIサイトで切断後、pColdTFベクター(TaKaRa社)にクローニングした。
Spo11-1に対するプライマー対
At1F-N:5’- GGATCCATATGGAGGGAAAATTCGCTAT -3’(配列番号13)
At1R-B:5’- TTTGGATCCTCAAGGAGAGCTTACTTC-3’(配列番号14)
下線部はNdeIおよびBamHIサイトを示す。
また、Spo11-2核酸についても、以下のプライマーセットを用いて、Spo11-1核酸と同様に、pColdTFベクターにクローニングした。
Spo11-2に対するプライマー対
At2F-N:5’- GGATCCATATGGAGGAAAGTTCAGGACT -3’(配列番号15)
At2R-B:5’- TTTGGATCCTTATATGTATTTGCCTTG-3’(配列番号16)
下線部はNdeIおよびBamHIサイトを示す。
【0029】
上述の方法で構築したTF-Spo11発現ベクターを大腸菌(BL21(DE3)、Rosetta(DE3)、OrigamiB(DE3)、及びRosetta-gami2(DE3))(Novagen社)に導入した。
形質転換した大腸菌をOD600=0.4になるまで、37℃で液体培養し、IPTGを0.4mMになるように加え、さらに、15℃にて24時間培養した。次に、培養した大腸菌を、遠心分離によって回収し、50mMリン酸バッファー(pH7.0)、300mM NaCl、0.5% Briji58に懸濁し、菌体の粘性が低下するまで、氷上にて、ソニケーションを行った。その後、22,000×g、30分間、4℃にて遠心分離を行い、その上清を回収した。回収された上清を、TFのN末端に付随しているHis-tag(pCpldTFに予めコードされている)を利用し、TALON CellThru Resinカラム(Clontech社)に通した。50mMリン酸バッファー(pH7.0)、300mMNaClにてカラムの洗浄を行い、その後、50mMリン酸バッファー(pH7.0)、300mMNaCl、0~150mMイミダゾールによって、グラジエント溶出を行った。
目的サイズのタンパク質が溶出されているフラクションを、Heparin Sepharose 6 Fast Flow(GEヘルスケアバイオサイエンス)カラムに通し、50mMリン酸バッファー(pH7.0)にて洗浄を行った。その後、0~1M NaClグラジエント溶出を行った。得られたTF-Spo11タンパク質は、脱塩後、YM-30カラム(Milipore社)を用いて濃縮した。
【0030】
2.可溶性Spo11タンパク質の発現
上述のTF-Spo11タンパク質は、TFとSpo11タンパク質間でトロンビンにより切断できるようにデザインされているので、理論的には、トロンビン切断により、TFを含まない可溶性Spo11タンパク質を取得できるはずであった。しかし、TFを除去したSpo11タンパク質は不安定なため、わずかな量しか得ることができなかった。そこで、Spo11タンパク質をTF又はTF-Spo11タンパク質と、同一宿主大腸菌内で同時に発現させることを試みた。
同時発現用のベクターとして、コールドショックプロモーター(Cs)のコントロール下でTF核酸が発現され、Spo11-1又はSpo11-2核酸(TFと融合されていない)のORFがT7プロモーターのコントロール下で発現されるベクター構築し(CV1、図1A)、大腸菌BL21に導入し、発現を行った。図1に示されるように、量的には少ないがSpo11-1及びSpo11-2タンパク質が可溶性画分(図1、レーン2及び4)に回収された。次に、コールドショックプロモーター(Cs)のコントロール下でTF-Spo11-1核酸が発現され、Spo11-1又はSpo11-2核酸(TFと融合されていない)のORFがT7プロモーターのコントロール下で発現されるベクター構築し(CV2、図1A)、同様に発現を行ったところ、ほとんどのSpo11-1タンパク質(TFと融合されていない)を可溶性画分に回収することができた(図1B、レーン6)。
以上の結果から、本発明により、TFと融合することなく、Spo11タンパク質を可溶性の形態で取得できることが示される。
【0031】
3.TF-Spo11タンパク質のDNA結合活性
調製したTF-Spo11タンパク質のDNA結合能について検討を行った。
TF-Spo11タンパク質(0-12pmol)を、ネガティブスーパーコイル型閉環状二重鎖DNAであるpUC18(TaKaRa社)(70fmol)、M13mp18一本DNA(TaKaRa社)(20fmol)又は180bp-DNA(70fmol)と、反応液(10μl)(20mM HEPES(pH7.4)、150mM NaCl、0.5mM MgCl、0.02mg/ml BSA)中で、37℃、5分間反応させた後、エチジウムブロマイドの存在下、アガロースゲル電気泳動を行った。なお、180bp-DNA(直鎖状二重鎖DNA)は、以下のプライマーセットを用いて、pUC18からPCRにより増幅した。
180bp-DNA増幅プライマーセット
180-F:5’-GTTTTCCCAGTCACGAC-3’(配列番号17)
180-R:5’-ACTTTATGCTTCCGGCTC-3’(配列番号18)
【0032】
アガロース電気泳動の結果、pUC18にTF-Spo11-1タンパク質が結合して、量依存的に上方にシフトしたDNAのバンドが確認された(図2A、TF-SPO11-1)。一方、Spo11-1タンパク質を欠いたTFのみを発現させた調製物では、バンドのシフトが起こらなかった(図2A、TF)。また、180bp-DNAに関しても、同様の結果が得られた(図2B)。さらに、一本鎖DNAに関しても、二重鎖DNAに比べると弱いものの、TF-Spo11-1タンパク質が結合し得ることが分かった(図3A)
一方、TF-Spo11-2タンパク質に関しても、TF-Spo11-1タンパク質と同様の結果が得られた(図3A,B)。TF-Spo11-1タンパク質とTF-Spo11-2タンパク質のDNA結合能に顕著な相違は認められず、両タンパク質を混合した場合においても、相乗的効果は認められなかった(図3B)。
以上のことから、本発明の方法により調製したSpo11タンパク質は可溶性の状態で取得することができ、かつ、DNA結合能を保持していることが明らかとなった。
【0033】
4.Spo11タンパク質のDNA結合部位の同定
分裂酵母のSpo11(Rec12)タンパク質に関する研究により、202番目のGlyがDNA結合との結合に重要であることが示唆されていたが(DeWallら,Gene 356:77-84 2005)、この点を生化学的に証明したとの報告は未だにない。Spo11ファミリータンパク質は5つの保存されたアミノ酸配列モチーフ(I-V)(図4A)を有しており、モチーフIII及びIVがDNA結合部位を形成していると予想される(DeWallら,Gene 356:77-84 2005)。
そこで、モチーフIに含まれる130番目のArg、モチーフIVに含まれる215番目のGly、222番目のArg、223番目のArg、2226番目のArg、及びモチーフ外に存在する207番目のArg及び254番目のArgを、各々、酸性アミノ酸であるグルタミン酸に置換した変異体TF-Spo11-1タンパク質を作成し、各変異体のDNA結合能について検討した。その結果、モチーフIVに変異を持つ全ての変異体(G215E,R222E,R223E,R226E)がDNA結合能を喪失又は低下させたのに対し、それ以外の変異体(R130E,R207E,R254E)は、野生型と同等のDNA結合能を示した(図5)。以上の結果から、215番目のGly、222番目のArg、223番目のArg、226番目のArgがDNA結合において重要な役割を果たしており、モチーフIV(図4B)のアミノ酸領域がSpo11タンパク質のDNA結合能に重要であると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のSpo11タンパク質は、TFなどの他のタンパク質と融合させることなく、DNA結合能を保持した可溶性のタンパク質として、初めて調製されたものである。Spo11タンパク質は、減数分裂期相同DNA組換えにおけるDNA二重鎖の切断過程において、重要な働きを行っていることから、本発明のSpo11タンパク質を用いた作用メカニズムの解明により、高等動植物の減数分裂期相同DNA組換えの人為的な制御方法を開発することが可能となる。さらに、本発明のSpo11タンパク質は、ゲノムの特定部位や特定核酸を標的とした効率的な遺伝情報修飾技術の開発の促進に多大なる効果をもたらすものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】TFと融合していない可溶性Spo11タンパク質とTF-Spo11タンパク質との共発現の結果を示す。(A)共発現ベクターのORFを模式的に示した図である。TF-SPO11-1はコールドショックプロモーター(CsP)のコントロール下にあり、TFと融合していないSPO11-1又はSPO11-2はT7プロモーター(T7P)のコントロール下にある。(B)TF、TF-SPO11-1及びSPO-11-1又はSPO-11-2(TFと融合していない)の共発現の結果を抗Hisタグ抗体によるイムノブロッティグにより解析した結果である。sup(レーン2、4、6、8)とppt(レーン1、3、5、7)は、各々、タンパク質を発現させた大腸菌を破砕し、遠心後に得られた、可溶性画分(上清)と不溶性画分(ppt)である。矢印は、各々、His-TF-SPO11-1(94kDa)、His-TF(53kDa)、His-SPO11-1(44kDa)又はHis-SPO11-2(45kDa)の位置を示す。
【図2】TF-Spo11-1タンパク質を用いたDNA結合アッセイの結果を示す。(A)二重鎖DNAとの結合アッセイの結果を示す。pUC18(70fmol)をTFのみ又はTF-Spo11-1タンパク質(0、4、8、12pmol)と37℃、5分間反応させ、アガロースゲル電気泳動を行い、エチジウムブロマイドで染色した結果である。(B)180bp-DNAとの結合アッセイの結果を示す。180bp-二重鎖DNA(70fmol)をTFのみ又はTF-Spo11-1タンパク質(0、4、8、12pmol)と37℃、5分間反応させ、アガロースゲル電気泳動を行い、エチジウムブロマイドで染色した結果である。
【図3】TF-Spo11-1タンパク質又はTF-Spo11-2タンパク質を用いたDNA結合アッセイの結果を示す。(A)一本鎖DNAとの結合アッセイの結果を示す。M13mp18一本鎖DNA(20fmol)をTF-Spo11-1タンパク質又はTF-Spo11-2タンパク質(0、4、8、12pmol)と37℃、5分間反応させ、アガロースゲル電気泳動を行い、エチジウムブロマイドで染色した結果である。(b)pUC18(70fmol)をTF-Spo11-1タンパク質又はTF-Spo11-2タンパク質(各0、4、8、12pmol)の混合物と37℃、5分間反応させ、アガロースゲル電気泳動を行い、エチジウムブロマイドで染色した結果である。
【図4】Spo-11-1タンパク質のアミノ酸置換変異体の模式図及びモチーフIVのアミノ酸配列を示す。(A)Spo11-1タンパク質の各モチーフの位置とアミノ酸変異の位置を示す。(B)異なる種に由来するSpo11-1タンパク質のモチーフIVのアミノ酸配列を比較した図である。SPO1-1及びSPO11-2はArabidopsis thaliana由来、DmSpo11はDrosophila melanogaster由来、HsSpo11はHomo sapiens由来、ScSpo11はSaccharaomyces cerevisiae由来、SpSpo11はSchizosaccharomyces pombe由来、MjTop6はMethanococcus jannaschii由来のモチーフIVの配列を示す。
【図5】変異体TF-Spo-11-1タンパク質の二重鎖DNAに対する結合能を検討した結果を示す。pUC18DNAを各変異体TF-Spo1-1タンパク質(8又は12fmol)と37℃で5分間反応させた後、アガロースゲル電気泳動を行い、エチジウムブロマイドで染色した結果である。wildは、変異を導入していないTF-Spo-11-1タンパク質のことを示す。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4