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明細書 :高温環境下に存在する物体の状態を測定するための超音波センサ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4911630号 (P4911630)
公開番号 特開2009-212776 (P2009-212776A)
登録日 平成24年1月27日(2012.1.27)
発行日 平成24年4月4日(2012.4.4)
公開日 平成21年9月17日(2009.9.17)
発明の名称または考案の名称 高温環境下に存在する物体の状態を測定するための超音波センサ
国際特許分類 H04R  17/00        (2006.01)
G01N  29/24        (2006.01)
G21C  17/003       (2006.01)
G21C  17/08        (2006.01)
FI H04R 17/00 332B
H04R 17/00 330J
G01N 29/24 502
G21C 17/00 F
G21C 17/08
請求項の数または発明の数 1
全頁数 7
出願番号 特願2008-053251 (P2008-053251)
出願日 平成20年3月4日(2008.3.4)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成19年9月7日 社団法人 日本原子力学会発行の「日本原子力学会 2007年秋の大会 予稿集」に発表
審査請求日 平成21年6月5日(2009.6.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】独立行政法人日本原子力研究開発機構
発明者または考案者 【氏名】田川 明広
【氏名】山下 卓哉
【氏名】上田 雅司
個別代理人の代理人 【識別番号】100074631、【弁理士】、【氏名又は名称】高田 幸彦
審査官 【審査官】大野 弘
参考文献・文献 特開平10-104387(JP,A)
特開平08-292179(JP,A)
特開2005-175919(JP,A)
調査した分野 H04R 17/00
G01N 29/24
G01S 7/521
G01S 15/89
G21C 17/003
G21C 17/08
特許請求の範囲 【請求項1】
それぞれが金属製のフレームに固定収納されている、マトリクス状に配列された複数個のセンサ要素から構成され、各センサ要素が、
一方の電極を構成する平面状のセンサフレームと、該センサフレームの同一面上にマトリクス状に形成された複数個のセンサ素子から構成され、
前記センサ素子のそれぞれが、一方の面が前記センサフレームに接続された、超音波を発信/受信する圧電素子と、該圧電素子の他方の面に垂直に配置された、アルタマイトから構成された超音波減衰用のダンピング材と、該ダンピング材と前記圧電素子の間に配置された他方の電極とから構成される超音波センサ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高温環境下にある測定対象物の変形、破壊等の状態を目視測定するための超音波センサに関するものである。さらに詳細には、本発明は、高速増殖炉の冷却材のような高温ナトリウム(Na)中においても使用可能な超音波センサに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波を利用した各種センシング技術は、圧電素子を利用することによって、超音波の発信から受信までの到達時間差を把握することで、被対象物の有無、形状、欠陥等を測定するために、幅広い産業分野において利用されている。
解像度を向上させ、測定対称物の解析精度を向上させるため、圧電素子を平面状に均等配列(マトリックス配列)させた超音波センサや、超音波の送信と受信を別々の圧電素子に分担させる構造を持つ超音波センサなどが、既に多くの産業分野において使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示された「超音波装置」では、水中あるいは大気中において、圧電素子をマトリックス状に複数併設し、超音波による解析精度を上げ、かつ、各圧電素子間のクロストークを減少させるためのインピーダンスの整合性を取る等の工夫がなされている。
【0004】
また、特許文献2に開示された「リアルタイム3次元超音波映像装置および探触子」では、水中あるいは大気中において、マトリックス状に複数併設した圧電素子を、送信用と受信用とに使いわけ、それらを交互に配列し、超音波による解析精度向上と、解析時間短縮が図られている。
【0005】
さらに、特許文献3に開示された「液体金属用超音波トランジューサ」では、特許文献1あるいは特許文献2とは異なり、超音波トランジューサの液体重金属との接液界面における音圧透過効率の悪さを改善するため、圧電素子の振動伝達部に液体重金属との濡れ性を持たせる工夫がなされている。

【特許文献1】特開2001-197593号公報
【特許文献2】特開2003-000599号公報
【特許文献3】特開2006-322749号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の各超音波装置では、ダンピング材の材質が環境が厳しい分野での使用、例えば、高速増殖炉の検査時のナトリウム液中のように高温環境下(200℃)、高放射線下(10Gy)での測定、さらに、プラント配管の探傷等の高温環境下、各種液体の取扱い環境下での測定のように、使用環境が極めて厳しい分野での使用に耐えないという欠点があった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、測定対象物が高速増殖炉の高温ナトリウム中に存在する場合のように、高温環境下であっても使用でき、かつ高解像度の測定画像を得ることのできる超音波センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの観点に係る超音波センサは、マトリクス状に配列された複数個のセンサ要素から構成され、各センサ要素が、一方の電極を構成する平面状のセンサフレームと、該センサフレームの同一面上にマトリクス状に形成された複数個のセンサ素子から構成され、前記センサ素子のそれぞれが、一方の面が前記センサフレームに接するように接続された、超音波を発信/受信する圧電素子と、該圧電素子の他方の面に垂直に配置された超音波減衰用のダンピング材と、該ダンピング材と前記圧電素子の間に配置された他方の電極とから構成される超音波センサであって、前記各センサ要素がそれぞれ金属製のフレームに固定されており、前記ダンピング材が、少なくとも熱衝撃に対して大きな抵抗を示す材料から構成されている。このように、各センサ要素をフレームに収納するようにしているので、高温環境下で使用しても熱歪みが抑えられ、高解像度を得ることができる。
【0009】
より好適には、前記ダンピング材の材料として、アルマタイトを用いることがのぞましい。アルマタイトは、同じように熱衝撃特性に優れた他の材料、例えば、ボロンナイトライトなどよりも超音波のダンピング特性に優れていることから、高温環境下で使用される超音波センサのダンピング材としては最適である。
【0010】
さらにより好適には、前記他方の電極が前記ダンピング材の底面及び少なくとも1つの側面に蒸着された金属から構成することが望ましい。電極を蒸着することで、センサ要素自体を小型化できるので、よりセンサ素子数の多い小型の超音波センサが得られるようになる。また、この蒸着金属としては、耐久性等の面からチタン(Ti)を用いることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る超音波センサは、稼働中の高速増殖炉の高温ナトリウムのような高温環境下で使用できる構造に作られているので、従来は測定対象物が入った高温の液体はすべて取除いた上で超音波測定を行なっていたものを、高温の液体が存在したままであっても超音波測定を実現できる。従って、原子力機器、プラント等が運転中であっても超音波検が可能となり、各種運転機器の操業度を低下させずに、かつ、供用期間中の超音波測定が可能になることにより、早期の異常把握が可能となり、各種運転機器のより一層の安全性向上を図ることができる。
【0012】
勿論、上記のような過酷な条件下でその効果を発揮する本発明は、一般の水中等であっても充分その性能、効果を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の好適な超音波センサは、例えば、4×4のマトリクス状に配列された複数個のセンサ要素から構成される。各センサ要素は、一方の電極を構成するセンサフレームと、センサフレームの同一平面上に、例えば、8×8のマトリクス状に形成された複数個のセンサ素子から構成される。センサフレームを一方の電極として使用することにより、超音波センサ自体の構造を簡潔かつ強固にすることができる。これらセンサ素子のそれぞれは、一方の面がセンサフレームに接続された、超音波を発信/受信する圧電素子と、圧電素子の他方の面に垂直に配置された超音波減衰用のダンピング材と、ダンピング材と圧電素子の間に配置された他方の電極とから構成される。
【0014】
ダンピング材は、圧電素子に電圧をかけて超音波を発信させたときに発生する第2波以降の波を吸収するためのものであり、超音波の進行方向に長い直方体の形状をしている。また、約220℃という稼働中の高速増殖炉の高温ナトリウムに接しても変形しないように、熱衝撃に対して大きな抵抗を示す材料で構成される。熱衝撃に対して大きな抵抗を示す材料、すなわち、耐熱性の高い材料として、最高仕様温度2000℃、耐熱衝撃温度1500℃、密度2.0のボロンナイトライト(六方結晶化ホウ酸)と、最高仕様温度1500℃、耐熱衝撃温度1200℃、密度3.3のアルマタイト(チタン酸アルミ)を選択し、試験を行ってこれらの材料の超音波減衰特性を調べた。その結果を図4の(a)及び(b)に示す。ここで、(a)はアルマタイトの減衰特性を示し、(b)はボロンナイトライトの減衰特性を示している。図4に示された減衰特性から、ボロンナイトライトのよりもアルマタイトの方が優れた減衰特性を示すことがわかる。
【0015】
さらにまた、各センサ要素が熱歪みを起こし、得られる画像が不鮮明にならないように、各センサ要素はそれぞれ金属製のフレームに固定収納される。このフレームの材質としては、熱変形の抑制の観点からスーパーインバー金属を用いることが好ましい。スーパーインバーは、鉄やステンレス鋼に比べて熱膨張係数が10分の1以下であり、温度が変わっても変形し難い性質があるためである。各フレームを縦方向に4個、横方向に4個マトリクス状に配置して1個の超音波センサを形成する。超音波センサの解像度は、受信素子の超音波向角が大きいほど(圧電素子の場合には素子の直径が小さいほど超音波向角が大きい)、また素子の個数が多いほど高くなる。しかし、素子の個数を多くすると画像化に時間がかかるため、現実的な画像処理時間にするために素子数は、256個すなわちセンサ要素数16個(4×4マトリクス)程度が好ましい。
【0016】
次に、本発明に係る超音波センサを用いた高温ナトリウム内の対象物の測定装置及びその方法について、図5を用いて説明する。図5は、本発明の超音波センサを使用した超音波測定装置を概略的に表わしている。図5において、符号1は本発明に係る超音波センサを示し、100は高温ナトリウム中の測定対象物である。超音波センサ1は、測定対象物100への超音波の発信と、発信した超音波が測定対象物100から反射した反射波を受信する機能とを兼ね備えている。
【0017】
超音波測定時は、上記超音波センサ1の圧電素子(図1参照)を所定時間動作させることにより、測定対象物100に向けて超音波を発信させる。この際、ダンピング材(図1の符号6)によって超音波の余分な成分が減衰させられるので、残響が少ない超音波が発信させられる。その後、超音波発信を停止し、測定対象物100からの反射波を受信する。この反射波もダンピング材によって余分な周波数成分が減衰させられるため、残響が少ない超音波として圧電素子によって受信される。
【0018】
1回の操作毎に得られたデータは、発信/受信器101でアナログ信号として受信されたのち、AD変換部201でディジタル信号に変換され、高速信号処理部301に送られる一時的に記憶される。高速信号処理部301では、繰り返し実行され、得られた対象物のデータに基づいて3次元開口合成処理プログラムによって、合成処理がおこなわれる。このようにして得られた対象物に関するデータは、インターフェース401を介して、例えば、パーソナルコンピュータ501に送られ、そのディスプレイ601に目視可能な画像として表示される。
【実施例】
【0019】
以下、図1乃至図3を参照して、本発明に係る超音波センサの一実施例について説明する。図1は、本発明に係る超音波センサに使用されるセンサ素子の一実施例の構成を概略的に示している。また、図2は、図1に示されたセンサ素子をマトリクス状に配列した構成を示している。図3は、本発明によって測定した測定対象物の高速画像処理結果の例を示している。
【0020】
図1において、センサ素子3は、始めに真空スパッタによりダンピング材にチタン(Ti)を蒸着させ、電極6を形成し、その後、圧電素子4と、電極6が形成されたダンピング材5を積層することにより作成した。電極6をこのように形成することで、余計なリード線が不要になり、断線等の排除、省スペース化、軽量化が図られた。圧電素子4とダンピング材5は、高温用の半田で接合した。このようにして作られたセンサ素子3を、電極を兼ねたスーパーインバー製のフレームの同一平面上に8×8のマトリクス状に均一に配列し、センサ要素10が構成された。なお、作成されたセンサ素子3において、圧電素子4の厚さは0.4mm、縦横の幅はそれぞれ2.5mmであり、ダンピング材の厚さ(高さ)は5mm、縦横の幅はそれぞれ2.5mmである。各センサ要素の周囲を金属製のフレームで囲むことで、超音波センサ全体の物理的強度が向上し、しいては、良好な解像度を有する。
【0021】
上述のようにして構成されたセンサ要素10を同一平面上に2×2のマトリクス状に配列し、合計16×16(256個)のセンサ素子3から構成される超音波センサ1を作成した。この超音波センサ1を図2に示す。なお、作られた超音波センサの一辺の長さは、約80mmで、センサ素子間の距離(センサ素子の中心から隣りのセンサ素子の中心までの距離)は、4mmである。
【0022】
図3に、上述の超音波センサを用いて、水中に存在する模擬対象物を測定して得た、3D画像解析の結果を示す。水中と高温ナトリウム中では超音波特性が異なるため、この画像がそのまま高温ナトリウム中で得られるものではないが、本発明に係る超音波センサを使用すれば、多少の画像処理の調整によってほぼ同様の画像が得られると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明によれば、原子力設備の共用期間中であっても、設備機器の測定が可能になるため、各種運転機器の安全性をこれまで以上に向上させることができる。また、高温下、放射線環境下等の過酷環境であっても、遠隔(約100m程度)にある測定対象物に対して高解像度(2mm程度)、解析処理時間も0.5秒程度の超音波測定装置が実現できるので、点検検査の精度をこれまで以上に向上させることができ、原子力プラント、化学プラント等において極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る超音波センサに使用されるセンサ素子の一実施例の構成説明図である。
【図2】図1に示されたセンサ素子をマトリクス状に配列した構成を示す図である。
【図3】本発明によって測定した測定対象物の高速画像処理結果の例を示す図である。
【図4】超音波センサに使用可能な2種類のダンピング材のそれぞれの超音波特性を示す図である。
【図5】本発明の超音波センサを用いて行う超音波測定装置の概略説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1 超音波センサ
2 センサフレーム
3 センサ素子
4 圧電素子
5 ダンピング材
6 電極
7 信号ケーブル
10 センサ要素
100 測定対象物
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4