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明細書 :渦電流探傷方法及び装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4986066号 (P4986066)
公開番号 特開2009-210402 (P2009-210402A)
登録日 平成24年5月11日(2012.5.11)
発行日 平成24年7月25日(2012.7.25)
公開日 平成21年9月17日(2009.9.17)
発明の名称または考案の名称 渦電流探傷方法及び装置
国際特許分類 G01N  27/90        (2006.01)
FI G01N 27/90
請求項の数または発明の数 4
全頁数 11
出願番号 特願2008-053326 (P2008-053326)
出願日 平成20年3月4日(2008.3.4)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成19年9月7日 社団法人 日本原子力学会発行の「日本原子力学会 2007年秋の大会 予稿集」に発表
審査請求日 平成21年6月5日(2009.6.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】独立行政法人日本原子力研究開発機構
発明者または考案者 【氏名】山口 智彦
【氏名】ミハラケ オビデウ
【氏名】宮原 信哉
【氏名】山下 卓哉
個別代理人の代理人 【識別番号】100074631、【弁理士】、【氏名又は名称】高田 幸彦
審査官 【審査官】田中 洋介
参考文献・文献 実公平04-038287(JP,Y2)
特許第3422661(JP,B2)
調査した分野 G01N 27/72-27/90
JSTPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
蒸気発生器の容器からナトリウムを抜き取った状態で前記容器内に支持板により支持して設置された伝熱管の内側の検査位置に渦電流探傷装置のECTプローブを挿入して該伝熱管の肉厚の変化に応じて変化する渦電流を計測し、この計測信号を解析することにより前記伝熱管の外周に発生している減肉を探傷する渦電流探傷方法において、
探傷検査対象となる前記支持板に支持された伝熱管を模擬した試験体を用意し、
前記試験体の検査位置に対して周波数νとνを使用して減肉探傷と同様な計測を行って基準計測信号SPを取得してメモリに記憶させて保持し、
前記メモリから前記基準計測信号SPデータN,N(Nは周波数νにおける基準計測信号SPデータ、Nは周波数νにおける基準計測信号SPデータ)を読み出して数値的シミュレーションを行い、
前記シミュレーションと校正誤差を、前記試験体に種々の構造でナトリウムを付着させた形態で計測して取得した試験的計測信号SPのデータを用いて校正し、
前記数値的シミュレーションにより各ナトリウム構造(i)の下で前記支持板の信号を模擬すると共に、2つの周波数ν,νにおけるSP信号の減算処理を行ってのノイズ信号N(i)を算出してメモリに記憶させて保持し、
支持板とナトリウム構造(i)からのノイズ信号N(i)jkが最小となる回転角度(リサージュ波形を合わせるための信号回転角度)αと増幅度βN(i)jk=N(i)-β・α(N(i))の関係式により求め(ここで、βは増幅計数であり、jは0.1~10の範囲で変化する変数、αは回転角度であり、kは0度~360度の範囲で変化する変数)
支持板近くに存在するナトリウム構造(i)の下で減肉の信号をシミュレーションして、減肉信号(S(j))とノイズ信号(N(j))を計算し、
総てのナトリウム構造(i)について、(S(j))/(N(j))比を最大化する回転角度αと増幅度βを求めてメモリに記憶させて保持し、
支持板とナトリウム構造(i)からのノイズの最大値Nを求めてメモリに記憶させて保持し、
探傷検査実機の検査位置に対して、周波数νとνを使用して減肉探傷計測を行って実機計測信号SPを取得してメモリに記憶させて保持し、
周波数νの実機計測信号SPを前記回転角度αで回転させると共に前記増幅度βで増幅し、
前記周波数νの実機計測信号SPから相回転及び増幅処理後の前記周波数νの実機計測信号SPを減算して実機減肉信号Sを計算し、
∥S∥/∥N∥≧ 判定基準値 の判定処理によって減肉欠陥の有無を判定することを特徴とする渦電流探傷方法。
【請求項2】
請求項1において、前記判定基準値は、減肉の信号をシミュレーションして得た減肉信号(S(j))とノイズ信号(N(j))のリサージュ図形を目視観測して減肉信号波形を明確に識別することができる最低限度のリサージュ図形であると判断して特定されたリサージュ図形における減肉信号(S(j))とノイズ信号(N(j))のS/N比の値としたことを特徴とする渦電流探傷方法。
【請求項3】
ECTプローブと制御処理装置を備え、蒸気発生器の容器からナトリウムを抜き取った状態で前記容器内に支持板により支持して設置された伝熱管の内側の検査位置に渦電流探傷装置のECTプローブを挿入して該伝熱管の肉厚の変化に応じて変化する渦電流を計測し、この計測信号を解析することにより前記伝熱管の外周に発生している減肉を探傷する渦電流探傷装置において、
前記制御処理装置は、
探傷検査対象となる前記支持板に支持された伝熱管を模擬した試験体に対して、
前記試験体の検査位置に対して周波数νとνを使用して減肉探傷と同様な計測を行って基準計測信号SPを取得してメモリに記憶させて保持し、
前記メモリから前記基準計測信号SPデータN,N(Nは周波数νにおける基準計測信号SPデータ、Nは周波数νにおける基準計測信号SPデータ)を読み出して数値的シミュレーションを行い、
前記シミュレーションと校正誤差を、前記試験体に種々の構造でナトリウムを付着させた形態で計測して取得した試験的計測信号SPのデータを用いて校正し、
前記数値的シミュレーションにより各ナトリウム構造(i)の下で前記支持板の信号を模擬すると共に、2つの周波数ν,νにおけるSP信号の減算処理を行ってのノイズ信号N(i)を算出してメモリに記憶させて保持し、
支持板とナトリウム構造(i)からのノイズ信号N(i)jkが最小となる回転角度(リサージュ波形を合わせるための信号回転角度)αと増幅度βN(i)jk=N(i)-β・α(N(i))の関係式により求め(ここで、βは増幅計数であり、jは0.1~10の範囲で変化する変数、αは回転角度であり、kは0度~360度の範囲で変化する変数)
支持板近くに存在するナトリウム構造(i)の下で減肉の信号をシミュレーションして、減肉信号(S(j))とノイズ信号(N(j))を計算し、
総てのナトリウム構造(i)について、(S(j))/(N(j))比を最大化する回転角度αと増幅度βを求めてメモリに記憶させて保持し、
支持板とナトリウム構造(i)からのノイズの最大値Nを求めてメモリに記憶させて保持し、
探傷検査実機の検査位置に対して、周波数νとνを使用して減肉探傷計測を行って実機計測信号SPを取得してメモリに記憶させて保持し、
周波数νの実機計測信号SPを前記回転角度αで回転させると共に前記増幅度βで増幅し、
前記周波数νの実機計測信号SPから相回転及び増幅処理後の前記周波数νの実機計測信号SPを減算して実機減肉信号Sを計算し、
∥S∥/∥N∥≧ 判定基準値 の判定処理によって減肉欠陥の有無を判定する制御処理を行うことを特徴とする渦電流探傷装置。
【請求項4】
請求項3において、前記判定基準値は、減肉の信号をシミュレーションして得た減肉信号(S(j))とノイズ信号(N(j))のリサージュ図形を目視観測して減肉信号波形を明確に識別することができる最低限度のリサージュ図形であると判断して特定されたリサージュ図形における減肉信号(S(j))とノイズ信号(N(j))のS/N比の値としたことを特徴とする渦電流探傷装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ナトリウム冷却高速炉における蒸気発生器伝熱管の供用期間中における検査において、前記伝熱管の外面減肉を体積検査により検出する渦電流探傷方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ナトリウム冷却高速炉における蒸気発生器伝熱管の供用期間中における前記伝熱管の外面減肉を体積検査する渦電流探傷は、探傷検査対象の蒸気発生器の容器からナトリウムを抜き取った状態で前記伝熱管の内側の検査位置にECTプローブを挿入して該伝熱管の肉厚の変化に応じて変化する渦電流を計測し、計測信号を解析することにより行う。このような検査において、導電性物質であるナトリウムが伝熱管41の外表面に付着していると渦電流に影響を与え、また、伝熱管を支持する支持板も影響を与えることが知られている。
【0003】

【特許文献1】特開2002-181793号公報
【特許文献2】特開2007-263946号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ナトリウム冷却高速炉における蒸気発生器伝熱管の供用期間中における前記伝熱管の外面減肉を体積検査する渦電流探傷において、伝熱管に付着した導電性物質であるナトリウムや伝熱管を支持する支持板の影響を軽減して、正確な探傷(減肉判定)を実現することができる渦電流探傷方法及び装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の渦電流探傷方法は、
蒸気発生器の容器からナトリウムを抜き取った状態で前記容器内に支持板により支持して設置された伝熱管の内側の検査位置に渦電流探傷装置のECTプローブを挿入して該伝熱管の肉厚の変化に応じて変化する渦電流を計測し、この計測信号を解析することにより前記伝熱管の外周に発生している減肉を探傷する渦電流探傷方法において、
探傷検査対象となる前記支持板に支持された伝熱管を模擬した試験体を用意し、
前記試験体の検査位置に対して周波数νとνを使用して減肉探傷と同様な計測を行って基準計測信号SPを取得してメモリに記憶させて保持し、
前記メモリから前記基準計測信号SPデータN,N(Nは周波数νにおける基準計測信号SPデータ、Nは周波数νにおける基準計測信号SPデータ)を読み出して数値的シミュレーションを行い、
前記シミュレーションと校正誤差を、前記試験体に種々の構造でナトリウムを付着させた形態で計測して取得した試験的計測信号SPのデータを用いて校正し、
前記数値的シミュレーションにより各ナトリウム構造(i)の下で前記支持板の信号を模擬すると共に、2つの周波数ν,νにおけるSP信号の減算処理を行ってのノイズ信号N(i)を算出してメモリに記憶させて保持し、
支持板とナトリウム構造(i)からのノイズ信号N(i)jkが最小となる回転角度(リサージュ波形を合わせるための信号回転角度)αと増幅度βN(i)jk=N(i)-β・α(N(i))の関係式により求め(ここで、βは増幅計数であり、jは0.1~10の範囲で変化する変数、αは回転角度であり、kは0度~360度の範囲で変化する変数)
支持板近くに存在するナトリウム構造(i)の下で減肉の信号をシミュレーションして、減肉信号(S(j))とノイズ信号(N(j))を計算し、
総てのナトリウム構造(i)について、(S(j))/(N(j))比を最大化する回転角度αと増幅度βを求めてメモリに記憶させて保持し、
支持板とナトリウム構造(i)からのノイズの最大値Nを求めてメモリに記憶させて保持し、
探傷検査実機の検査位置に対して、周波数νとνを使用して減肉探傷計測を行って実機計測信号SPを取得してメモリに記憶させて保持し、
周波数νの実機計測信号SPを前記回転角度αで回転させると共に前記増幅度βで増幅し、
前記周波数νの実機計測信号SPから相回転及び増幅処理後の前記周波数νの実機計測信号SPを減算して実機減肉信号Sを計算し、
∥S∥/∥N∥≧ 判定基準値 の判定処理によって減肉欠陥の有無を判定することを特徴とする。
【0006】
また、渦電流探傷装置は、
ECTプローブと制御処理装置を備え、蒸気発生器の容器からナトリウムを抜き取った状態で前記容器内に支持板により支持して設置された伝熱管の内側の検査位置に渦電流探傷装置のECTプローブを挿入して該伝熱管の肉厚の変化に応じて変化する渦電流を計測し、この計測信号を解析することにより前記伝熱管の外周に発生している減肉を探傷する渦電流探傷装置において、
前記制御処理装置は、
探傷検査対象となる前記支持板に支持された伝熱管を模擬した試験体に対して、
前記試験体の検査位置に対して周波数νとνを使用して減肉探傷と同様な計測を行って基準計測信号SPを取得してメモリに記憶させて保持し、
前記メモリから前記基準計測信号SPデータN,N(Nは周波数νにおける基準計測信号SPデータ、Nは周波数νにおける基準計測信号SPデータ)を読み出して数値的シミュレーションを行い、
前記シミュレーションと校正誤差を、前記試験体に種々の構造でナトリウムを付着させた形態で計測して取得した試験的計測信号SPのデータを用いて校正し、
前記数値的シミュレーションにより各ナトリウム構造(i)の下で前記支持板の信号を模擬すると共に、2つの周波数ν,νにおけるSP信号の減算処理を行ってのノイズ信号N(i)を算出してメモリに記憶させて保持し、
支持板とナトリウム構造(i)からのノイズ信号N(i)jkが最小となる回転角度(リサージュ波形を合わせるための信号回転角度)αと増幅度βN(i)jk=N(i)-β・α(N(i))の関係式により求め(ここで、βは増幅計数であり、jは0.1~10の範囲で変化する変数、αは回転角度であり、kは0度~360度の範囲で変化する変数)
支持板近くに存在するナトリウム構造(i)の下で減肉の信号をシミュレーションして、減肉信号(S(j))とノイズ信号(N(j))を計算し、
総てのナトリウム構造(i)について、(S(j))/(N(j))比を最大化する回転角度αと増幅度βを求めてメモリに記憶させて保持し、
支持板とナトリウム構造(i)からのノイズの最大値Nを求めてメモリに記憶させて保持し、
探傷検査実機の検査位置に対して、周波数νとνを使用して減肉探傷計測を行って実機計測信号SPを取得してメモリに記憶させて保持し、
周波数νの実機計測信号SPを前記回転角度αで回転させると共に前記増幅度βで増幅し、
前記周波数νの実機計測信号SPから相回転及び増幅処理後の前記周波数νの実機計測信号SPを減算して実機減肉信号Sを計算し、
∥S∥/∥N∥≧ 判定基準値 の判定処理によって減肉欠陥の有無を判定する制御処理を行うことを特徴とする。
【0007】
そして、前記判定基準値は、減肉の信号をシミュレーションして得た減肉信号(S(j))とノイズ信号(N(j))のリサージュ図形を目視観測して減肉信号波形を明確に識別することができる最低限度のリサージュ図形であると判断して特定されたリサージュ図形における減肉信号(S(j))とノイズ信号(N(j))のS/N比の値としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、ナトリウム冷却高速炉における蒸気発生器伝熱管の供用期間中における前記伝熱管の外面減肉を体積検査する渦電流探傷において、伝熱管に付着した導電性物質であるナトリウムや伝熱管を支持する支持板の影響を軽減して、正確な探傷(減肉判定)を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、蒸気発生器の容器からナトリウムを抜き取った状態で前記容器内に支持板により支持して設置された伝熱管の内側の検査位置に渦電流探傷装置のECTプローブを挿入して該伝熱管の肉厚の変化に応じて変化する渦電流を計測し、この計測信号を解析することにより前記伝熱管の外周に発生している減肉を探傷する渦電流探傷方法または装置において、
探傷検査対象となる前記支持板に支持された伝熱管を模擬した試験体を用意し、
前記試験体の検査位置に対して周波数νとνを使用して減肉探傷と同様な計測を行って基準計測信号SPを取得してメモリに記憶させて保持し、
前記メモリから前記基準計測信号SPデータN,N(Nは周波数νにおける基準計測信号SPデータ、Nは周波数νにおける基準計測信号SPデータ)を読み出して数値的シミュレーションを行い、
前記シミュレーションと校正誤差を、前記試験体に種々の構造でナトリウムを付着させた形態で計測して取得した試験的計測信号SPのデータを用いて校正し、
前記数値的シミュレーションにより各ナトリウム構造(i)の下で前記支持板の信号を模擬すると共に、2つの周波数ν,νにおけるSP信号の減算処理を行ってのノイズ信号N(i)を算出してメモリに記憶させて保持し、
支持板とナトリウム構造(i)からのノイズ信号N(i)jkが最小となる回転角度(リサージュ波形を合わせるための信号回転角度)αと増幅度βN(i)jk=N(i)-β・α(N(i))の関係式により求め(ここで、βは増幅計数であり、jは0.1~10の範囲で変化する変数、αは回転角度であり、kは0度~360度の範囲で変化する変数)
支持板近くに存在するナトリウム構造(i)の下で減肉の信号をシミュレーションして、減肉信号(S(j))とノイズ信号(N(j))を計算し、
総てのナトリウム構造(i)について、(S(j))/(N(j))比を最大化する回転角度αと増幅度βを求めてメモリに記憶させて保持し、
支持板とナトリウム構造(i)からのノイズの最大値Nを求めてメモリに記憶させて保持し、
探傷検査実機の検査位置に対して、周波数νとνを使用して減肉探傷計測を行って実機計測信号SPを取得してメモリに記憶させて保持し、
周波数νの実機計測信号SPを前記回転角度αで回転させると共に前記増幅度βで増幅し、
前記周波数νの実機計測信号SPから相回転及び増幅処理後の前記周波数νの実機計測信号SPを減算して実機減肉信号Sを計算し、
∥S∥/∥N∥≧ 判定基準値 の判定処理によって減肉欠陥の有無を判定するようにし、
前記判定基準値は、減肉の信号をシミュレーションして得た減肉信号(S(j))とノイズ信号(N(j))のリサージュ図形を目視観測して減肉信号波形を明確に識別することができる最低限度のリサージュ図形であると判断して特定されたリサージュ図形における減肉信号(S(j))とノイズ信号(N(j))のS/N比の値とする。
【実施例1】
【0010】
図1は、渦電流探傷装置のブロック図である。
【0011】
この実施例1における渦電流探傷装置は、ナトリウム冷却高速炉における蒸気発生器伝熱管の供用期間中における検査において、前記伝熱管の外面全周減肉を体積検査により検出するために使用するのに好適な装置である。
【0012】
図1において、検査対象である伝熱管内に挿入して計測信号を取得するECT(Eddy Current Testing)プローブ1は、従来から使用されているような既知のECTプローブ構成である。
【0013】
制御処理装置2は、コンピュータを使用して構成し、図示説明は省略するが、導線3を介して前記ECTプローブ1の励磁コイルに供給する励磁電流を制御し、検出コイルから出力される計測信号を取り込むECTプローブ制御処理機能部と、取り込んだ計測信号を処理して前記伝熱管の減肉欠陥の有無を判定する計測信号処理機能部と、キーボードやマウスなどの入力部と、CRTやLCDなどの表示部を備える。前記処理機能部は、コンピュータに実装した制御処理プログラムによって実現するように構成する。
【0014】
検査対象となるナトリウム冷却高速炉における蒸気発生器4は、蒸気発生用伝熱管41を導電性の支持板42により支持してナトリウム流通容器43内に設置している。
【0015】
伝熱管41の減肉検査は、蒸気発生器4の容器43からナトリウム44を抜き取った状態で前記伝熱管41の内側の検査位置にECTプローブ1を挿入して該伝熱管41の肉厚の変化に応じて変化する渦電流を計測し、計測信号を解析することにより行う。この検査において、導電性物質であるナトリウム44が伝熱管41の外表面に付着していると渦電流に影響を与え、また、伝熱管41を支持する支持板42も影響を与えることが知られている。
【0016】
従って、この検査においては、伝熱管41に対する付着ナトリウム44や支持板42による影響を考慮して伝熱管41の減肉状態を判別する信号処理を行う。
【0017】
そのための信号処理は、前述したように、制御処理装置2におけるコンピュータに内蔵した信号処理プログラムによって実行する。
【0018】
この渦電流探傷装置を使用しての検査に際しては、まず、その準備段階として、検査対象となるナトリウム冷却高速炉の蒸気発生器4における蒸気発生用伝熱管41と支持板42の構成を模擬した試験体を作成して用意し、この試験体に対して、渦電流探傷装置を使用して次のような計測と信号処理を実行する。
【0019】
図2は、渦電流探傷装置における探傷のために制御処理装置2が実行する信号処理のフローチャートである。
【0020】
準備段階として試験体を使用して行う計測と信号処理は、次の通りである。
【0021】
ステップS1
試験体(減肉及びナトリウム付着なし)における各検査位置に対して、周波数νとνを使用して減肉探傷と同様な計測を行って基準計測信号SPを取得し、メモリに記憶させて保持する。ここで、周波数νにおける基準計測信号SPデータをNとし、周波数νにおける基準計測信号SPデータをNとする。
【0022】
ナトリウムを伴わない状態で行う検査のための準備段階の処理は、次の通りである。
【0023】
ステップS02
基準計測信号SPデータN,Nをメモリから読み出し、読み出した基準計測信号SPデータNとNが同一位相となる(リサージュ波形を合わせる)ように回転角αを変えて前記基準計測信号SPデータNを回転(移相)させる処理を行う。同一位相となる回転角(移相)αを創設してメモリに記憶させて保持する。
【0024】
ステップS03
前記基準計測信号SPデータNとNが同一大きさとなるように前記基準計測信号SPデータNを増幅する。
【0025】
大きさが同一となる増幅度βを創設してメモリに記憶させて保持する。
【0026】
ステップS04
メモリに記憶して保持している基準計測信号SPデータN,Nと回転角αと増幅度βを読み出し、次式(数1)を用いてノイズレベルNを計算し、計算結果をメモリに記憶させて保持する。
N=N-β・α(N) ……(数1)
次に、試験体の各検査位置に対して種々の形態のナトリウムが付着している状態で行う検査のための準備段階の処理は、次の通りである。
【0027】
ステップS2
メモリから前記基準計測信号SPデータN,Nを読み出して数値的模擬(シミュレーション)を行い、このシミュレーションと校正誤差を、前記試験体を計測して取得した試験的計測信号SPのデータを用いて校正する。この試験的計測信号SPのデータは、前記試験体に対して種々の構造でナトリウムを付着させて計測することにより取得する。この試験的計測信号SPを得る計測を行うために試験体に付着させるナトリウムの構造としては、ナトリウムの種々の層厚、ナトリウム付着滴の支持板からの種々の異なる距離、それらの組合せ、支持板の下の空隙を満たしているナトリウム、その他の種々の異なるナトリウム構造(i)を定義する。ナトリウム構造“i”は、1、2、3…nとする。
【0028】
ステップS3
ステップS2で定義したナトリウム構造(i)の下で支持板の信号(SP信号)を模擬(シミュレーション)解析する。
【0029】
各ナトリウム構造(i)の下で、周波数νにおける解析信号N(i)からパラメータα(リサージュ波形を合わせるための信号回転角),β(大きさを一致させるための信号増幅度)の任意の値を用いて調整した周波数νにおける解析信号N(i)を減算してSP信号を減少させることによりノイズN(i)を計算し、計算結果をメモリに記憶する。ここで、周波数νにおけるノイズをN(i)とし、周波数νにおけるノイズをN(i)とし、“i”は、1、2、3…nとする。
【0030】
SP信号を減少させてノイズN(i)を得るための式(数2)は、次の通りである。
N(i)jk=N(i)-β・α(N(i)) ……(数2)
ここで、
βは、増幅係数であり、jは0.01刻み値で0.1~10の範囲で変化させ、
αは、回転角度であり、kは1度刻み値で0度~360度の範囲で変化させ、
i,j,kの総ての組合せについて計算する。
【0031】
jとkの刻み値は、お互いに依存し合わないように考慮する。
ステップS4
支持板とナトリウム構造(i)からのノイズN(i)jkの大きさが最小値となる最適値α(最適回転角度)とβ(最適増幅度)を見つけ出してメモリに記憶させて保持する。
ステップS5
周波数ν及びνにおいて、支持板の近くの伝熱管に減肉(例えば、伝熱管の全周に亘って管肉厚が幅5mmで20%減肉)が存在することを定義する模擬パラメータを入力し、ナトリウム構造(i)(ステップS2で特定した)の存在の下で減肉信号の模擬(シミュレーション)解析を行う。ここで、周波数ν1における模擬減肉信号をS(i)、周波数ν2における模擬減肉信号をS2(i)、“i”を1、2、3……nとする。
【0032】
そして、次式(数3),(数4)を用いて、先に見つけ出して保持した最適回転角度αと最適増幅度βのパラメータを使用してナトリウム構造(j)における模擬減肉信号(S(j))とノイズ信号(N(j))を計算し、計算結果をメモリに記憶させて保持する。
(j)=S(j)-β・α(S(j)) ……(数3)
(j)=N(j)-β・α(N(j)) ……(数4)
また、この模擬減肉のシミュレーションにおいて、模擬減肉シミュレーション信号のリサージュ図形をオペレータに目視観測させ、ノイズ信号波形に対して減肉信号波形を明確に識別することができる最低限度のリサージュ図形である判断して特定させたリサージュ図形における減肉信号(S(j))とノイズ信号(N(j))のS/N比の値を後述する実機減肉欠陥有無の判定に使用する判定基準値とする。
ステップS6
ステップS4よりの最適回転角度αiと最適増幅度βiのパラメータを使用して、総てのナトリウム構造(j)に対して、(S(j))/(N(j))比が最大化するαとβを見つけ出して決定し、メモリに記憶させて保持する。
ステップS7
ステップS6で見つけ出して保持したαとβのパラメータを使用して支持板とナトリウム構造(i)からのノイズの最大値Nを計算し、計算結果をメモリに記憶させて保持する。
【0033】
次に、実機を検査対象として行う検査のための計測と信号処理は、次の通りである。
ステップS8
ナトリウム44を抜き取った容器43の伝熱管41の検査位置にECTプローブ1を挿入して周波数νとνにおける実機計測信号SPを取得し、メモリに記憶させて保持する。ここで、周波数νにおける実機計測信号SPのデータをSとし、周波数νにおける実機計測信号SPのデータをSとする。
ステップS9
メモリから実機計測信号SPデータS,Sを読み出し、実機計測信号SPデータSを回転角αで回転(移相)させ、増幅度βで増幅する。そして、次式(数5)を用いて実機減肉信号Sを計算し、計算結果をメモリに記憶させて保持する。
S=S-β・α(S) ……(数5)
ここで、回転角αと増幅度βは、検査対象とした実機にナトリウムが付着していない場合には、ステップS02,03で見つけ出して保持した値を使用し、ナトリウムが付着している場合には、ステップS6で見つけ出して保持した値を使用する。
ステップS10
次式(数6)を用いて実機減肉欠陥有無の判定を行う。S/N比が判定基準値として設定した2以上である場合には、減肉欠陥が存在する、と判定し、2未満である場合には、減肉欠陥が存在しない、と判定する。
∥S∥/∥N∥≧2(=判定基準値) ……(数6)
ここで、ノイズNは、検査対象とした実機にナトリウムが付着していない場合には、ステップS04で見つけ出して保持した値を使用し、ナトリウムが付着している場合には、ステップS7で見つけ出して保持した値を使用する。
【0034】
ここで、判定基準値(この実施例では“2”)は、前述した処理ステップS5における模擬減肉のシミュレーションにおいて、模擬減肉シミュレーション信号のリサージュ図形をオペレータが目視観測し、ノイズ信号波形に対して減肉信号波形を明確に識別することができる最低限度のリサージュ図形である判断して特定されたリサージュ図形における減肉信号(S(j))とノイズ信号(N(j))のS/N比の値である。
【0035】
この探傷技術分野において、一般には、S/N比が2以上あれば減肉欠陥の存在を検出することができる、としている。この実施例における多重周波数演算においても、S/Nが2以上であれば、減肉欠陥を確実に検出することができることを実測及びシミュレーションの実験により確認することができたことから、判定基準値を“2”に設定した。
【0036】
この判定基準値は、ステップS5において、オペレータからのリサージュ図形特定指示入力に従って制御処理装置2が自動的に算出して式(数6)に設定し、またはオペレータが算出して式(数6)に設定入力するように構成する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施例1における渦電流探傷装置と探傷検査対象物の模式図である。
【図2】本発明の実施例1における渦電流探傷装置を用いて行う探傷検査における信号処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0038】
1…ECTプローブ、2…制御処理装置、4…蒸気発生器、41…伝熱管、42…支持板、43…容器、44…ナトリウム。
図面
【図1】
0
【図2】
1