TOP > 国内特許検索 > 信号処理装置 > 明細書

明細書 :信号処理装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5103606号 (P5103606)
公開番号 特開2007-166315 (P2007-166315A)
登録日 平成24年10月12日(2012.10.12)
発行日 平成24年12月19日(2012.12.19)
公開日 平成19年6月28日(2007.6.28)
発明の名称または考案の名称 信号処理装置
国際特許分類 H03H  17/02        (2006.01)
H03H  17/06        (2006.01)
G10L  19/00        (2006.01)
FI H03H 17/02 641N
H03H 17/06 641N
H03H 17/02 601G
H03H 17/02 635B
H03H 17/06 635B
G10L 19/00 220Z
請求項の数または発明の数 4
全頁数 9
出願番号 特願2005-360789 (P2005-360789)
出願日 平成17年12月14日(2005.12.14)
審査請求日 平成20年7月30日(2008.7.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
発明者または考案者 【氏名】佐藤 寧
個別代理人の代理人 【識別番号】110000925、【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
審査官 【審査官】白井 孝治
調査した分野 H03H17/00~17/08
G10L19/00~19/02
G11B20/10
G11B20/20~20/22
特許請求の範囲 【請求項1】
量子化された原信号のビット数を拡張する信号処理装置であって、
量子化された原信号のビット数を拡張すると共に、拡張されたビットによる高調波成分を遮断するフィルタ手段と、
前記フィルタ手段の出力を、前記原信号に対して拡張分の任意の下位ビットを追加した信号から減算する第1の演算手段と、
前記第1の演算手段の出力に対して前記量子化のサンプリングより長い時定数でピークの移動修正平均値を計算し、前記計算された移動修正平均値により前記第1の演算手段の出力の振幅を制限して、前記第1の演算手段の出力に乗算する第2の演算手段と
前記第2の演算手段の出力を前記フィルタ手段の出力に加算する第3の演算手段と、を備えることを特徴とする信号処理装置。
【請求項2】
前記フィルタ手段は、遅延手段を含む可変フィルタとその係数を制御する修正部から形成されており、
前記修正部は、前記量子化された原信号と前記原信号の傾向によって決定される外部信号が入力され、前記外部信号に応じて遮断周波数制御されるローパスフィルタの出力と、前記可変フィルタの出力との誤差εを計算する第4の演算手段を含み、前記第4の演算手段の出力である前記誤差εを最小とする修正アルゴリズムを用いて前記可変フィルタの係数の制御を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記原信号は音響信号を量子化した信号である、請求項1または2に記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記原信号の傾向によって決定される外部信号とは、前記音響信号の会話と音楽の別、及び/または音楽のジャンルを示す信号である、請求項2または3に記載の信号処理装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば量子化された音響信号のビット数を拡張する際に使用して好適な信号処理装置に関する。詳しくは、拡張されたビットによる高調波成分を遮断しつつ、良好なビット数の拡張が行われるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
従来の信号処理装置では、帰還形のフィルタを用いてノイズ低減等の処理を行うことが知られている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0003】
また、量子化された信号に対して、帰還形のフィルタを用いてバンド幅を変換する装置も提案されているものである(例えば、特許文献3参照。)。
【0004】
すなわち、従来から量子化された信号に対して、帰還形のフィルタを用いて処理を行う装置は知られているものである。

【特許文献1】米国特許6055318号公報
【特許文献2】米国特許6154547号公報
【特許文献3】米国特許3889108号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えばコンパクトディスク(CD)においては、音響信号(audio signal)をサンプリング周波数44.1kHz、量子化ビット数16ビットでデジタル化して記録することが、一般的に広く普及している。ところが、記録された16ビットの信号をそのままD/A(Digital to Analog)変換していると、再生音質の微妙な部分でニュアンスが物足りないという意見が出てくるようになってきた。
【0006】
一方、音響信号のD/A変換では、例えば24ビットの変換手段も安価に入手可能となってきており、そのような変換手段を用いることで音質の改善を図ることが考えられる。しかし、例えば16ビットの情報の下位に、単純に8ビットの値0を挿入して拡張を行うと、多量のノイズが発生して著しく音質が劣化するなどの問題が生じる。また、このようなノイズをローパスフィルタを用いて除去すると、全体にこもった感じの音になってしまうものである。
【0007】
この発明はこのような問題点に鑑みて成されたものであって、本発明の目的は、例えばコンパクトディスクでの記録のように少ないビット数で量子化された情報信号のビット数を拡張すると共に、その拡張の際にノイズの発生等の情報の劣化が生じないようにするものである。これにより、従来のコンパクトディスク等の記録にもそのまま応用可能な信号処理装置を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し本発明の目的を達成するため、本発明は、量子化された原信号のビット数を拡張する信号処理装置であり、量子化された原信号のビット数を拡張すると共に、拡張されたビットによる高調波成分を遮断するフィルタ手段と、このフィルタ手段の出力を、原信号に対して拡張分の任意の下位ビットを追加した信号から減算する第1の演算手段を有する。そして、第1の演算手段の出力に対して量子化のサンプリングより長い時定数でピークの移動修正平均値を計算し、この計算された移動修正平均値により第1の演算手段の出力の振幅を制限して、第1の演算手段の出力に乗算する第2の演算手段とを備える。更に第2の演算手段の出力をフィルタ手段の出力に加算する第3の演算手段と、を備えている。
【0009】
本発明の好ましい形態の信号処理装置においては、フィルタ手段は、遅延手段を含む可変フィルタとその係数を制御する修正部から形成されており、修正部は、量子化された原信号とこの原信号の傾向によって決定される外部信号が入力され、外部信号に応じて遮断周波数制御されるローパスフィルタの出力と、可変フィルタの出力との誤差εを計算する第4の演算手段を含み、この第4の演算手段の出力である誤差εを最小とする修正アルゴリズムを用いて可変フィルタの係数の制御を行うようにしている。
【0011】
また、本発明の好ましい形態の信号処理装置においては、原信号は音響信号を量子化した信号であり、原信号の傾向によって決定される外部信号とは、音響信号の会話と音楽の別、及び/または音楽のジャンルを示す信号である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、例えばコンパクトディスクでの記録のように少ないビット数で量子化された情報信号のビット数を拡張すると共に、その拡張の際にノイズの発生等の情報の劣化が生じないようにすることができ、これにより、従来のコンパクトディスク等の記録にもそのまま応用可能な信号処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明を説明するに、図1は本発明による信号処理装置を適用した音響信号処理装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【0016】
図1において、入力端子1には、例えば16ビットのPCM信号が供給される。この入力端子1からの信号が所定の遅延手段2を通じて可変フィルタ3に供給される。また、入力端子1からの信号がローパスフィルタ(LPF)4を通じて演算手段5に供給され、前記可変フィルタ3の出力との差分が算出されて係数修正手段6に供給される。そしてこの係数修正手段6で求められた係数が可変フィルタ3に供給される。
【0017】
さらに、入力端子1からの信号が所定の遅延手段7を通じて下位ビット追加回路8に供給され、例えば16ビットの入力信号の下位に値0のビットが8ビット挿入されて24ビットとされる。この24ビットの信号が演算手段9に供給され、前記可変フィルタ3の出力との差分が算出される。そしてこの差分値(24ビット)が加重回路10を通じて加算回路11で可変フィルタ3の出力に加算され、出力端子12に取り出される。
【0018】
また、演算手段9からの差分値がピーク検出回路13に供給され、ピーク検出された信号がローパスフィルタ(LPF)14を通じてリミッタ回路15に供給されて下位8ビットに相当する信号が削除される。そしてこのリミッタ回路15の出力により、加重回路10での加重が行われる。これによって情報信号のビット数の拡張が行われると共に、その拡張による情報の劣化等に対する補正処理が行われる。
【0019】
さらにこの回路において、可変フィルタ3は、例えば図2に示すようなFIR形のデジタルフィルタであって、入力信号が縦続に接続された複数段の単位遅延手段Z-1に供給され、各段の出力が重み付け回路hを通じて加算手段(+)で加算される。この加算値が出力値y(n)として取り出されると共に、演算手段5で目的値d(n) との差分が算出され、この差分値が最小になるように、係数修正手段6で重み付け回路hの係数が求められる。
【0020】
すなわち、可変フィルタ3に供給される信号をx(n)とすると、その出力値y(n)は次のように表される。
【数1】
JP0005103606B2_000002t.gif

【0021】
また、差分値(誤差信号)ε(n)は
ε(n)=d(n)-y(n)
であり、この2乗平均誤差e
e=E{ε2(n)}
が最小となるように係数修正手段6で係数が求められる。
【0022】
そこで、2乗平均誤差eが最小となる条件は、
e=E{d2(n)}-2E{d(n)・y(n)}+E{y2(n)}
として、
E{d2(n)}=Pd
とすると、以下のようになる。
【0023】
すなわち、
【数2】
JP0005103606B2_000003t.gif
であるから、
【数3】
JP0005103606B2_000004t.gif
である。
【0024】
一方、
x(n)=Sin(2πn/N)
であり、
d(n)=Cos(2πn/N)+s(n)
ただし、s(n)は白色信号であり、
s(n)=E{s2(n)}=σ2
である。
【0025】
ここで、図3のAに示すような例えば周波数1kHzの正弦波信号に対して、図3のBに示すような回路で下位に値0のビットを8ビット挿入した場合には、図3のCの(a)に示すように量子化された信号が、同図の(b)に示すように量子化の各段の段差が大きくなるような変化となる。そしてこのような信号の周波数スペクトラムは、元の正弦波信号では図3のD(a)に示すように単一であったものが、ビットの挿入によって同図の(b)に示すように高調波が発生してしまうものである。
【0026】
これに対して図4のAに示すようにローパスフィルタ(LPF)を設けることによって、図4のBの(a)に示すように高調波の発生した信号から、同図の(b)に示すように高調波成分を除去することができる。しかしこれだけではこもった音になってしまうものである。そこで、さらに図5のAに示すように、入力信号とローパスフィルタ(LPF)の出力との差分信号から、リミッタで元の量子化以下のビットを削除した信号をローパスフィルタ(LPF)の出力に加算する。
【0027】
これによれば、図5のBの(a)に示すように量子化された信号が、ローパスフィルタ(LPF)によって同図の(b)に示すように波形が滑らかにされ、さらに同図の(c)に示すようにローパスフィルタ(LPF)によって削除された高周波成分が加算されることで、こもった音になることを防止することができる。すなわちこの場合には、ローパスフィルタ(LPF)の帯域は24ビットの高音質になると共に、高い音はそのままスルーして加算されるので、こもった音になることが防止される。
【0028】
さらに図4、図5の構成では、波形を滑らかにする手段としてローパスフィルタ(LPF)を用いているが、これでは遮断周波数が固定に掛かってしまう問題がある。そこで、図6のAに示すように遅延手段を利用した適応フィルタ(LMS)を用いる。すなわち、このような適応フィルタは、図1及び図2に示した可変フィルタと同等のものであって、これによって図6のBの(a)に示すような高調波成分の含まれた信号から、同図の(b)に示すように高調波成分を適応的に除去して波形を滑らかにすることができる。
【0029】
また、図6のAの回路では、連続性のある信号に着目して適応フィルタ(LMS)により取り出すようにしたものであるが、連続性のある信号でも量子化ノイズは高い周波数には多く存在する。そこで図7に示すように、ローパスフィルタ(LPF)を用いて高い周波数の量子化ノイズを除去して適応フィルタ(LMS)の係数の修正を行う。ここでローパスフィルタ(LPF)の遮断周波数は、サンプリング周波数が44.1kHzの場合は約10kHz、すなわちナイキストの半分の周波数を用いるのが一般的である。
【0030】
さらに、このローパスフィルタ(LPF)の遮断周波数は、元の音響信号の会話と音楽の別や音楽のジャンル等によって、例えば通過帯域を狭くするなどの変更を加えることができる。これによって、例えば音楽のジャンル等に応じてより良好な音質改善を行うことができるものである。
【0031】
すなわち、上述の図1において、例えばコンパクトディスク(CD)の音楽情報は16ビットである。よって、ディレイ部+可変フィルタ部によって適応フィルタを形成して、基準信号にLPFを通して高調波を削除して24ビットに拡張した信号源に近づく様に最小二乗法で可変フィルタ制御する。この結果、ディレイの影響で連続的(再現性の高い信号)に関してはフィルタリング効果で、16ビットから24ビットへと補間される。ただし、この音は再現性のある信号なので、こもった音になる。
【0032】
そこで次に、可変フィルタ処理分のみ遅延した源信号の下位8ビットを追加し(下位8ビットは0)、適応フィルタとの差分を計算する。この差分信号は、高域部分の信号であるが、量子化誤差以下の大きさの信号の場合には追加しないことで24ビットへ拡張することが可能となり、高域情報は従来の信号が追加されるので、こもる問題を解決できる。
【0033】
また、図1のピーク検出は、追加するか否かを、量子化誤差だけの大きさで判断すると、急激に追加したり、しなかったりする場面が発生するのでポップ雑音が発生する恐れがある。そこで、ピーク検出で量子化誤差を最大1.0として計算して、誤差の大きさに応じて、誤差量を掛け算することでスムーズに、高域信号を追加できるのでポップ雑音を除去することができる。
【0034】
さらに、本発明の信号処理装置においては、ジャンル別のLPF(または固定のLPF)を設けることで、目的信号の低域部分だけを、適応フィルタのターゲット値とすることができる。これによれば、LPFによりビット精度を24ビットへ拡張することが可能なのと適応フィルタも連続性の高い信号でも高域の信号には追従しなくなる。
【0035】
これは、高域の信号の場合、量子化誤差でサイクリックな信号もあるので、この様な信号には反応しない様にしたものである。また、誤差信号をピーク検出して移動修正平均(LPF)を使うことで急激な音楽信号に過敏に反応することを抑制する。これよってポップノイズを無くすことができる。また、ピーク検出にリミットをかけて、誤差信号の振幅を制御することで、変化率を2乗にすることができるものである。
【0036】
こうして、本発明の信号処理装置によれば、例えばコンパクトディスク(CD)の音源は16ビットであり、高音質と言う面でみると足りない。一方、現在は24ビットのDACも安価に使えることで、24ビット音源も少なくない。そこで本発明は、下位8ビットを予測して拡張することで音質を良くする効果があり、従来のCDにも容易に対応できるものである。
【0037】
なお、図8には、波形により本発明の効果を説明する。ここで図8のAは計算開始直後の波形を示し、ここでは量子化のイズが発生している。これに対して同図のBは計算開始から100ms後の波形を示し、ここでは量子化のイズが減少されていることを表しているものである。
【0038】
従って上述の実施形態においては、例えばコンパクトディスクでの記録のように少ないビット数で量子化された情報信号のビット数を拡張すると共に、その拡張の際にノイズの発生等の情報の劣化が生じないようにすることができ、これにより、従来のコンパクトディスク等の記録にもそのまま応用可能な信号処理装置を提供することができる。
【0039】
こうして本発明の信号処理装置によれば、量子化された信号のビット数を拡張する信号処理装置であって、量子化された原信号のビット数を拡張すると共に拡張されたビットによる高調波成分を遮断するフィルタ手段と、フィルタ手段の出力を原信号に対して拡張分の任意の下位ビットを追加した信号から減算する第1の演算手段と、第1の演算手段の出力をフィルタ手段の出力に加算する第2の演算手段とを有することにより、良好なビット数の拡張を行うことができるものである。
【0041】
なお本発明は、上述の説明した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載を逸脱しない範囲において、種々の変形が可能とされるものである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明による信号処理装置を適用した音響信号処理装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】その要部の構成を示すブロック図である。
【図3】その説明のための図である。
【図4】その説明のための図である。
【図5】その説明のための図である。
【図6】その説明のための図である。
【図7】その説明のための図である。
【図8】その効果の説明のための波形図である。
【符号の説明】
【0043】
1…入力端子、2…遅延手段、3…可変フィルタ、4…ローパスフィルタ(LPF)、5…演算手段、6…係数修正手段、7…遅延手段、8…下位ビット追加回路、9…演算手段、10…加重回路、11…加算回路、12…出力端子、13…ピーク検出回路、14…ローパスフィルタ(LPF)、15…リミッタ回路
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7