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明細書 :金属材料表面へのクラッド層形成方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5070539号 (P5070539)
公開番号 特開2008-013794 (P2008-013794A)
登録日 平成24年8月31日(2012.8.31)
発行日 平成24年11月14日(2012.11.14)
公開日 平成20年1月24日(2008.1.24)
発明の名称または考案の名称 金属材料表面へのクラッド層形成方法
国際特許分類 C23C  24/08        (2006.01)
FI C23C 24/08 C
C23C 24/08 A
請求項の数または発明の数 3
全頁数 7
出願番号 特願2006-184159 (P2006-184159)
出願日 平成18年7月4日(2006.7.4)
審査請求日 平成21年6月10日(2009.6.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
発明者または考案者 【氏名】西尾 一政
【氏名】山口 富子
個別代理人の代理人 【識別番号】100112771、【弁理士】、【氏名又は名称】内田 勝
審査官 【審査官】伊藤 寿美
参考文献・文献 特開平05-001364(JP,A)
特開2005-002446(JP,A)
特開平09-268303(JP,A)
特開昭61-159577(JP,A)
特開2001-276978(JP,A)
調査した分野 C23C 24/00-30/00
B23K 11/00-13/08
JSTPatM
特許請求の範囲 【請求項1】
金属材料の表面に平均粒子径が0.5μm~50μmのWC粉末またはWC系合金粉末の層を配し、加圧手段を備えた対向する電極間で加圧、通電加熱して、クラッド層を形成することを特徴とする金属材料表面へのクラッド層形成方法。
【請求項2】
前記WC粉末またはWC系合金粉末をバインダーと混合して金属材料の表面に塗布することを特徴とする請求項1記載の金属材料表面へのクラッド層形成方法。
【請求項3】
前記対向する電極が棒状電極であることを特徴とする請求項1記載の金属材料表面へのクラッド層形成方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材料表面へのクラッド層形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、耐摩耗性が要求される機械部品等において、耐摩耗性を高めるために、アーク溶接により基盤材料の表面に硬質材料を肉盛溶接することが行われている。
しかしながら、アーク溶接の場合、基盤材料への熱影響を考慮すると、例えば厚みが10mm以上の厚板を基盤材料に用いることが必要である。また、このような重量の大きな厚板で作製した機械部品等が高所や狭い場所に設けられるときは、溶接や取り付けの作業性等の面で支障が大きい。
【0003】
これに対して、本発明者等は、溶接作業性に優れ、基盤材料に熱的影響を極力与えない方法として、抵抗溶接の一種である抵抗クラッディング法を先に提案している。抵抗クラッディング法は、シーム溶接機を用いて、ジュール熱により粉末層内の低融点物質を溶融凝固させてクラッド層を形成する方法である。この抵抗クラッディング法は、ランニングコストが安い、大量生産に適している、溶接材表面の美観をあまり損なわない等の利点もある。
【0004】
また、本発明者等は、さらに、一般冷間圧延鋼板(SPCC、板厚2mm、幅80mmおよび長さ300mm)の基材上に耐摩耗金属粉末として高炭素鋼粉末(SHA)および WC-6.5Co粉末の混合物を塗布し、冷間圧延鋼板の表面にクラッド層を形成する技術を開示している(非特許文献1参照)。
この場合、高炭素鋼粉末が溶融凝固することによって冷間圧延鋼板にクラッド層を接合することができる。またこのとき、母材(冷間圧延鋼板)としてアーク溶接の場合と異なり上記したように軽量な薄板を用いることができる。

【非特許文献1】西尾ほか、「抵抗クラッディング法によって形成した超硬合金クラッド層のミクロ組織」溶接学会全国大会講演概要 第77集、社団法人溶接学会発行、平成17年8月20日、p.432-p.433
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した抵抗クラッディングでクラッド層の材料に低融点粒子を配したものは、さらに耐摩耗性を改善する余地がある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、クラッド層の耐摩耗性をさらに向上させることができる金属材料表面へのクラッド層形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記背景技術の欄で説明したように、クラッド層を形成するときには、ロウ材や低融点粒子を用いることが、接合性等を確保する上で必須と考えられていた。
しかしながら、本発明者等が鋭意検討した結果、高融点高機能粒子として従来のものに比べて微粒化したものを用いることにより、ロウ材や低融点粒子を用いることなしに接合性が確保できることを見出し、本発明に想達した。
すなわち、本発明に係る金属材料表面へのクラッド層形成方法は、金属材料の表面に平均粒子径が0.5μm~50μmのWC粉末またはWC系合金粉末の層を配し、加圧手段を備えた対向する電極間で加圧、通電加熱して、クラッド層を形成することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る金属材料表面へのクラッド層形成方法は、前記WC粉末またはWC系合金粉末をバインダーと混合して金属材料の表面に塗布することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る金属材料表面へのクラッド層形成方法は、前記対向する電極が棒状電極であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る金属材料表面へのクラッド層形成方法は、金属材料の表面に平均粒子径が0.5μm~50μmのWC粉末またはWC系合金粉末の層を配し、加圧手段を備えた対向する電極間で加圧、通電加熱して、クラッド層を形成するため、ロウ材や低融点粒子を用いるときに比べて高い耐摩耗性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態について、以下に説明する。
【0013】
本発明に係る金属材料表面へのクラッド層形成方法は、金属材料の表面に平均粒子径が0.5μm~50μmの高融点高機能粒子の層を配し、加圧手段を備えた対向する電極間で加圧、通電加熱して、クラッド層を形成するものである。
【0014】
ここで、高融点高機能粒子は、母材となる金属材料に比べて、また、通常クラッド層の材料に配されるロウ材や低融点金属に比べて高い融点を有し、少なくとも耐磨耗性に優れる金属粒子をいい、この条件を有するものである限り、適宜の金属あるいは合金を用いることができる。例えば、WC(タングステンカーバイト)やWC/Co等のWC系合金を好適に用いることができ、また、ステライト、MoB(ホウ素モリブデン)等であってもよい。
粒子の平均粒子径は、質量基準の平均直径である。平均粒子径は、10μm以下であることがより好ましい。また、例えば500μm程度以上の径の大きな粒子を含まないことがより好ましい(。
【0015】
クラッド層を形成するのに用いる装置は、シーム溶接機が好適であるが、これに限らず、スポット溶接機等の溶接機を用いてもよい。
【0016】
また、本発明に係る金属材料表面へのクラッド層形成方法において、高融点高機能粒子をバインダーと混合したものを金属材料表面に塗布して塗布層を形成した状態で加圧、通電加熱してクラッド層を形成すると、任意の厚さのクラッド層を形成することができて、より好適である。バインダーは、例えば、ニクロブレイズセメント((HARDFACE WELD Co. LTD.製)や一般的な接着剤等の適宜のものを用いることができる。或いは、この方法に変えて、基材上に鋳型のような枠を配し、その内部に高融点高機能粒子を任意の厚さになるまで充填させてもよい。
【0017】
また、例えばシーム溶接機を用いてクラッド層を形成する場合、対向する電極として一対のロール電極を用いてクラッド層を帯状に形成してもよいが、これにかえて、対向する電極として一対の棒状電極を用いることにより、クラッド層を局所的に形成することができる。
【0018】
以上説明した本発明に係る金属材料表面へのクラッド層形成方法によれば、ロウ材や低融点粒子を用いることなく金属材料表面へクラッド層を良好に接合できるとともに、ロウ材や低融点粒子を用いるときに比べて高い耐摩耗性を得ることができる。
また、本発明に係る金属材料表面へのクラッド層形成方法によれば、溶接時の金属材料表面への熱影響が小さいので金属材料として軽量な薄板を用いることができるため、アーク溶接に比べて、例えば、高所や狭い場所等で溶接する場合の作業性に優れるとともに別途方法で作製したクラッド層を有する複合薄鋼板を高所や狭い場所等に取付ける作業が容易である。
また、本発明に係る金属材料表面へのクラッド層形成方法によれば、アーク溶接では不可能であったWC粉末のクラッド化が可能である。
【実施例】
【0019】
実施例を挙げて、本発明をさらに説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0020】
(1)使用材料
金属材料は、板厚2 mmの一般冷間圧延鋼板(SPCC)を用いた。SPCCの鉄以外の成分組成(単位:質量%)を表1に示す。また、高融点高機能粒子は、(1)粒径1.5μmのWCおよび(2)粒径1~5μm のWC-6.5Coの2種類を用いた。
【0021】
【表1】
JP0005070539B2_000002t.gif

【0022】
(2)クラッド層形成方法
アセトンで洗浄したSPCC表面に、バインダーにニクロブレイズセメントを用いてWC-6.5Coまたは
WCを幅10×長さ130mmの平面形状で約1〜2mmの厚みに塗布した。
そして、塗布層を室温で4時間以上を乾燥させた後、厚さ50μmの SUS304をその上にのせ、単相交流定置式小形シーム溶接機を用いてシーム溶接を行い、クラッド層を形成した。このときの溶接条件は、電極間の加圧力Fを196N、溶接速度vを1.0 m/minおよび溶接電流Iを2.0 kAと一定にして行った。
【0023】
(3)クラッド層の評価
形成したクラッド層を溶接線に対して垂直方向に切断した後、断面を鏡面になるまで研磨して約4質量%のピクラール液を用いて腐食後または鏡面のまま、断面外観を観察した。また、クラッド層の接合状態を調査するために、SEM観察およびEPMA分析を行った。
【0024】
(横断面外観観察)
図1(a)および(b)にそれぞれWC-6.5CoおよびWCを溶接したクラッド層の横断面外観を示す。
WC-6.5Coの場合、厚さ約0.6 mmのクラッド層が形成できた。また、クラッド層とSPCCとの界面部分と中間部分では、異なる組織が確認された。一方、WCの場合、厚さ約0.4 mmのクラッド層が形成できた。
【0025】
(クラッド層内の元素分布)
図2(a)および(b)にそれぞれWC-6.5CoおよびWCを溶接したクラッド層とSPCC界面近傍のSEM観察およびEPMA線分析結果を示す。SEM像中の縦線は線分析の場所を示す。
EPMA線分析においてはFeがクラッド層内に分布していることが分かる。これは溶接によって界面のSPCCが溶融され、その主要構成元素であるFeがクラッド層内部に拡散したためと考えられる。また、WC-6.5Coクラッド層においては界面近傍にはCoは認められない。
【0026】
(まとめ)
抵抗クラッディング法を用いて板厚2mmのSPCC上にWC-6.5CoおよびWCを単独にクラッディングの材料として用いることにより、金属材料(母材)中のFeがクラッド層内に溶融、拡散することで、金属材料にクラッド層が接合されるとともに耐摩耗性改質層が形成されることが分かった。なお、WC-6.5Coクラッド層の場合、低融点金属であるC oが金属材料とクラッド層の界面近傍には認められないことから、金属材料へのクラッド層の接合力は、WCの場合と同様に金属材料(母材)中のFeのクラッド層内への溶融、拡散によって得られたものであることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】クラッド層の横断面外観を示す写真図であり、(a)はクラッド層材料がWC-6.5Coの場合を、(b)はクラッド層材料がWCの場合を、それぞれ示す。
【図2】WC-6.5CoおよびWCを溶接したクラッド層とSPCC界面近傍のSEM観察およびEPMA線分析結果を示す図であり、(a)はクラッド層材料がWC-6.5Coの場合を、(b)はクラッド層材料がWCの場合を、それぞれ示す。
図面
【図1】
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【図2】
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