TOP > 国内特許検索 > インクジェット式液滴ノズル > 明細書

明細書 :インクジェット式液滴ノズル

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4945753号 (P4945753)
公開番号 特開2008-119908 (P2008-119908A)
登録日 平成24年3月16日(2012.3.16)
発行日 平成24年6月6日(2012.6.6)
公開日 平成20年5月29日(2008.5.29)
発明の名称または考案の名称 インクジェット式液滴ノズル
国際特許分類 B41J   2/06        (2006.01)
B41J   2/16        (2006.01)
B05C   5/00        (2006.01)
FI B41J 3/04 103G
B41J 3/04 103H
B05C 5/00 101
請求項の数または発明の数 5
全頁数 7
出願番号 特願2006-304655 (P2006-304655)
出願日 平成18年11月10日(2006.11.10)
審査請求日 平成21年10月6日(2009.10.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
発明者または考案者 【氏名】馬場 昭好
個別代理人の代理人 【識別番号】100108660、【弁理士】、【氏名又は名称】大川 譲
審査官 【審査官】数井 賢治
参考文献・文献 特開昭60-145861(JP,A)
特開昭63-013750(JP,A)
特開昭60-247574(JP,A)
特開昭61-084254(JP,A)
特開平05-162329(JP,A)
特開2000-006420(JP,A)
特開2000-279296(JP,A)
特開平07-304175(JP,A)
特開2004-314619(JP,A)
調査した分野 B41J 2/06
B05C 5/00
B41J 2/16
特許請求の範囲 【請求項1】
吐出液の容器となるインクタンクと、このインクタンクの吐出液吐出側の面に配置された開口部と、該開口部に先端部が挿入されるニードル及び該ニードルに電圧を印加するバイアス電源及びパルス電源と、対向電極と、該対向電極に電圧を印加する液滴加速用電源とを備え、前記ニードルの移動を制御することにより吐出液の供給量を制御するインクジェット式液滴ノズルにおいて、
前記ニードルは、先端部を円錐形の針形状にして親水処理をし、かつ、前記開口部は、内壁面を撥水処理し、
前記ニードルを前記開口部内に出し入れするニードル出し入れ機構を、前記インクタンクの前記開口部とは反対側の後板外部に配置して、前記ニードルをこの後板に形成したニードル貫通穴を通して駆動し、
前記ニードル貫通穴として、ニードルを作っているワイヤー径よりもわずかに大きな穴を作製し、かつ、該ニードル貫通穴内部及びニードルの貫通部付近をフッ素化合物系撥水剤を使用し撥水性にすることで表面処理した
ことから成るインクジェット式液滴ノズル。
【請求項2】
前記ニードルは、材料として金属或いは半導体を用いて、酸或いはアルカリ液中での機械研磨により先端を針形状にした請求項1に記載のインクジェット式液滴ノズル。
【請求項3】
前記ニードルの親水処理は、イオンスパッタ或いは化学エッチングにより表面に凹凸を作製した後、酸化チタンによる被膜の形成或いは塩素系ガスによるプラズマ処理することにより親水面を実現した請求項1に記載のインクジェット式液滴ノズル。
【請求項4】
前記開口部内壁面の撥水処理は、イオンスパッタ或いは化学エッチングにより表面に凹凸を作製した後、フッ素化合物による被膜を形成することにより行った請求項1に記載のインクジェット式液滴ノズル。
【請求項5】
前記開口部は、徐々に先細り化した先端部を切除した円錐筒形状として、その外壁面についても内壁面と同様な撥水処理をした請求項に記載のインクジェット式液滴ノズル。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板配線、フォトマスク作製、リソグラフィー、電子デバイス作製などに用いることのできるインクジェット式液滴ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
キャピラリーとニードル(針)を組み合わせた静電型のインクジェットノズルにより、1ミクロン以下の細線(液滴量1 fl)を形成できる事が実証されている(特許文献1、特許文献2参照)。図5は、特許文献1に記載のキャピラリーとニードル(針)を組み合わせた静電誘引式液滴ノズルを示す図である。静電誘引式液滴ノズルは、直方体の容器であるインクタンクの前方側に配置される一方、インクタンクの後方側の板には、吐出液の供給口が形成されている。
【0003】
静電誘引式液滴ノズルは、シリコン基板からなるノズル本体と、ノズル本体の吐出液吐出側の面に所定ピッチで配置された複数(3個を図示)の吐出電極(ニードル)と、前板を介してインクタンクに固定されるキャピラリーとを備えている。キャピラリーは、外周に沿って徐々に先細り化された円錐筒形状を有して、その内部空間は、液流路の一部分を構成して、その先端に液吐出口を有する。ニードルは、液吐出口から針先を突出させた状態で、対応するキャピラリーの内部空間にゆとりをもって収納されている。ノズル本体の両側面とインクタンクの両側板との間に、吐出液のための液流路となる隙間が形成され、かつノズル本体とインクタンクの供給口側の板との空間は、吐出液の貯液部分となっている。
【0004】
液吐出方向の所定位置には、平板形状を有する対向電極が配置されている。対向電極のノズル側の面には、基板裏面を接触させた状態で、有機ELディスプレイ用のガラス基板が配置されている。
【0005】
図示のインクジェット式液滴吐出装置の使用方法としては、まずインクタンク内の貯液部分に吐出液を貯液するとともに、バイアス電源からの電圧を吐出電極(ニードル)に印加する。これにより、貯液部分に貯液された吐出液は、ノズル本体の両側の隙間を通って、キャピラリーの内部空間に到達する。キャピラリー内では、吐出液が、吐出電極のニードルに沿って、対応するニードル先端まで流動していく。こうして、液吐出口に直径1μm程度の液滴が形成される。続いて、パルス電源からの電圧を吐出電極(ニードル)に重畳する。これにより、液吐出口の液滴内の微粒子が、対向電極側に配置された有機ELディスプレイ用のガラス基板に向かって吐出される。
【0006】
しかし、例示したような従来の装置は、針先までの液供給が不安定であるため微少液滴の安定吐出には至っていない。本発明は、針先までの液供給を安定化させ、微少液滴吐出を実現するものである。

【特許文献1】特許第3680855号公報
【特許文献2】特許第3687074号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、係る問題点を解決して、吐出電極の針先に液を安定供給することにより、液滴径1ミクロン程度(1flオーダー)の液滴の安定吐出を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のインクジェット式液滴ノズルは、吐出液の容器となるインクタンクと、このインクタンクの吐出液吐出側の面に配置された開口部と、該開口部に先端部が挿入されるニードル及び該ニードルに電圧を印加するバイアス電源及びパルス電源と、対向電極と、該対向電極に電圧を印加する液滴加速用電源とを備えて、ニードルの移動を制御することにより吐出液の供給量を制御する。そして、このニードルは、先端部を円錐形の針形状にして親水処理をし、かつ、開口部は、内壁面を撥水処理したことを特徴としている。
【0009】
また、ニードルを開口部内に出し入れするニードル出し入れ機構が、インクタンクの開口部とは反対側の後板外部に配置されて、各ニードルをこの後板に形成したニードル貫通穴を通して駆動する。このニードル貫通穴として、ニードルを作っているワイヤー径よりもわずかに大きな穴を作製し、かつ、ニードルの動きを滑らかにすると共に液漏れを防ぐために、該ニードル貫通穴内部及びニードルの貫通部付近を表面処理する。
【0010】
ニードルは、材料として金属或いは半導体を用いて、電解研磨或いは機械加工により形成し、酸或いはアルカリ液中での機械研磨により先端を針形状にする。このニードルの親水処理は、イオンスパッタ或いは化学エッチングにより表面に凹凸を作製した後、酸化チタンによる被膜の形成或いは塩素系ガスによるプラズマ処理をすることにより親水面を実現する。
【0011】
開口部内壁面の撥水処理は、イオンスパッタ或いは化学エッチングにより表面に凹凸を作製した後、フッ素化合物による被膜を形成することにより行う。開口部は、徐々に先細り化した先端部を切除した円錐筒形状として、その外壁面についても内壁面と同様な撥水処理をする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、吐出電極としてのニードルの針先に液を安定供給することにより、サブミクロンからミクロンオーダーのリソグラフィーが実現できるため、現状のフォトリソグラフィーよりも安価でしかもスピーディーな電子デバイスの作製が実現でき、ディスプレイ素子やLSI配線といった直接の描画が可能となる。
【0013】
また、本発明は、キャピラリー(穴)をインクのリザーバーとするための撥水処理をし、キャピラリーから微小針先まで液を供給する際、親水処理した微細針を用いることで針先まで液の安定供給が可能となる。ニードル(針)の出し入れにより、キャピラリー先端面とニードル先端の距離が変わり、それに応じて供給量を制御する。これによって、安定した微小液滴の吐出が可能となり、また、液の物性(粘性、導電率、染料・顔料など)に応じた微少液滴制御が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、例示に基づき本発明を説明する。図1は、本発明に基づき構成したインクジェット式液滴ノズルを例示する図である。本発明のインクジェット式液滴ノズルは、直方体の容器からなるインクタンクと、このインクタンクの吐出液吐出側の面に縦及び横の両方向に所定ピッチで配置された複数の開口部(キャピラリー)と、該開口部に先端部が挿入されるニードルと、その移動を制御するニードル出し入れ機構と、該ニードルにバイアス電源及びパルス電源を個々に印加するバイアス電源及びパルス電源(1つのニードル用のみ図示)と、対向電極と、該対向電極に電圧を印加する液滴加速用電源とで構成される。電源の極性は、対向電極とニードルに対して互いに逆方向に印加されるが、吐出液の種類によっては、図示の場合とは逆方向の電圧となる。また、図示省略したが、図5を参照して前述したように、描画対象(例えば、有機ELディスプレイ用のガラス基板)が対向電極のニードルに面する側に配置される。なお、図1には、所定ピッチで配置された複数の開口部と、該開口部のそれぞれに先端部が挿入される複数のニードルを例示しているが、本発明は、1個の開口部及び1個のニードルのみを有する液滴ノズルに対しても適用することができる。
【0015】
インクタンクは、ニードルとの電気的絶縁を取るために、ガラス、セラミック、樹脂などの電気的絶縁物質により形成される。インクタンクの後板には、吐出液の供給口(液入口)が一部に形成されている。ニードルをキャピラリー内に出し入れするニードル出し入れ機構は、インクタンクの開口部とは反対側(以下、後方側)の後板のさらに後側に配置されて、各ニードル(針)はこの後板を貫通させて駆動する。ニードル貫通穴として、ニードルを作っているワイヤー径よりも100mm程度大きな穴を、例えば、放電加工、ドリル加工、サンドおよび水によるジェット加工、レーザー加工、超音波加工により作製することができる。穴内部は、フッ素化合物系撥水剤を使用し撥水性にすることで表面処理し、針の動きを滑らかにすると共に、液漏れを防ぐ。ニードルもまた貫通部付近を、フッ素化合物系撥水剤を使用し撥水性にすることで表面処理して、針の動きを滑らかにすると共に、液漏れを防ぐ。
【0016】
このように構成されたインクタンク内に吐出液を貯液し、キャピラリー内部へ液を供給するとともに撥水効果によりキャピラリー外部への液の浸みだしを抑制する。この状態で、バイアス電源からの電圧を各々のニードルに電圧を印加する。これにより、キャピラリー内部の吐出液は、ニードル表面の親水処理および電界による親水化の効果によりニードル側面に沿ってニードル先端部まで流動していく。こうして、ニードル先端(液吐出口)に液量1fl(液滴径換算 直径1μm)程度の液が供給される。続いて、パルス電源からの電圧をニードルに個々に重畳する(一個のニードルのためのバイアス電源及びパルス電源のみを図示して、他は図示省略)。これにより、液吐出口の液滴内の微粒子が、対向電極側に配置された描画対象としての、例えば、有機ELディスプレイ用のガラス基板(図示省略)に向かって吐出される。図示したように、インクタンクに設けた穴そのものをキャピラリーとして用いることができるが、その内壁は、図3を参照して後述する他のキャピラリーの例と同様に表面処理する。本発明は、ニードル先端部を円錐形の針形状にして親水処理をすると共に、キャピラリー内壁面を撥水処理したことを特徴としている。以下、ニードル、キャピラリー、及びニードル出し入れ機構について、さらに説明する。
【0017】
図2は、ニードルについて説明する図である。ニードルは、材料として金属或いは半導体を用いて、電解研磨或いは機械加工により形成する。例えば、酸或いはアルカリ液中での機械研磨により、先端径が20nm~50μm程度の微小針を作製する。円錐形の針形状にした先端部は、水との接触角60°以下の親水処理をする。例えば、イオンスパッタ、化学エッチング(ウェットおよびドライ)により表面に凹凸を作製した後、酸化チタンによる被膜(ディップ、スプレー塗布、スピン塗布)を形成することにより、或いは塩素系ガスによりプラズマ処理をすることにより超親水面を実現する。キャピラリーから針先まで液を供給する際、超親水処理した微細針を用いることで針先まで液の安定供給が可能となる。
【0018】
図3は、キャピラリーを説明する図である。キャピラリーは、材料として、金属、半導体、或いは絶縁体を用いて、先端穴径1~500μmに形成する。絶縁体としては、セラミック、ガラス、樹脂、フッ素化合物を用いる。キャピラリーの形は、徐々に先細り化した先端部を切除した円錐筒形状として図示したが、これ以外にも、円柱状、楕円柱状、多角柱状など形状は問わない。キャピラリーは、単一ノズルとして1個、或いはマルチノズルとして、図1に例示したようなアレイ状、或いはライン状に複数個並べる。このように構成したキャピラリーは、図5を参照して前述したように、前板を介してインクタンクに形成した前面開口部に固定することができる。先端が円錐形の針を、キャピラリー内に出し入れすることにより、液の吐出および停止の制御を行う。
【0019】
キャピラリー内壁は撥水処理をする。これは、キャピラリー(穴)をインクのリザーバーとするため(液が漏れ出ないようにするため)、水との接触角60°以上の撥水処理をすることによって行う。撥水面の実現は、イオンスパッタ、化学エッチング(ウェットおよびドライ)により表面に凹凸を作製した後、フッ素化合物による被膜(ディップ、スプレー塗布、スピン塗布)を形成することにより行う。また、外壁へのインクの浸み出しを防止するため、キャピラリー外壁についても内壁と同様な撥水処理をする。
【0020】
図4は、ニードル出し入れ機構について説明する図である。(A)はニードルに固定したニードル出し入れ機構単独で示す図であり、(B)はニードルをキャピラリー内に挿入した状態で示す図である。ニードルの駆動は、機械式、電気機械式、或いは電気式のいずれも用いることができる。例えば、ピエゾ素子を用い針先の出し入れを行うとか、空気圧(ピストン)により針の出し入れを行うとか、或いはネジにより針先の出し入れを行うことによって、ニードルを駆動する。針の出し入れにより、キャピラリー先端面とニードル先端の距離が変わり、それに応じて供給量を制御する。供給の停止は、キャピラリー先端面からニードル先端を所定長さ突き出すことで行うことができる。ニードルのぬれ性を利用して液を供給しているため、ニードルを突き出し、液面とニードル先端の距離が長くなると、ニードル先端への液供給が出来にくい状況になる。マルチノズルの場合、ニードルの出し入れにより、液を吐出させたいノズルの選択が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に基づき構成したインクジェット式液滴ノズルを例示する図である。
【図2】ニードルについて説明する図である。
【図3】キャピラリーを説明する図である。
【図4】ニードル出し入れ機構について説明する図である。
【図5】従来技術のキャピラリーとニードル(針)を組み合わせた静電誘引式液滴ノズルを示す図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4