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明細書 :粒子の電気化学的固定化法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5124769号 (P5124769)
公開番号 特開2008-121047 (P2008-121047A)
登録日 平成24年11月9日(2012.11.9)
発行日 平成25年1月23日(2013.1.23)
公開日 平成20年5月29日(2008.5.29)
発明の名称または考案の名称 粒子の電気化学的固定化法
国際特許分類 C25D  15/02        (2006.01)
FI C25D 15/02 F
C25D 15/02 L
請求項の数または発明の数 11
全頁数 10
出願番号 特願2006-304671 (P2006-304671)
出願日 平成18年11月10日(2006.11.10)
審査請求日 平成21年10月19日(2009.10.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
発明者または考案者 【氏名】春山 哲也
【氏名】坂元 博昭
個別代理人の代理人 【識別番号】100100181、【弁理士】、【氏名又は名称】阿部 正博
審査官 【審査官】市枝 信之
参考文献・文献 国際公開第2005/090486(WO,A1)
国際公開第2005/000441(WO,A1)
特開2006-097111(JP,A)
国際公開第2004/081567(WO,A1)
調査した分野 C25D 13/00 ~ 21/22
C25D 5/00 ~ 7/12
C23C 24/00 ~ 30/00
B22F 1/00 ~ 8/00 C22C 1/00 ~ 1/04
特許請求の範囲 【請求項1】
導電性材料への金属コロイド、フラーレン、カーボンナノチューブ及びセラミック粒子から成る群から選択される粒子の電気化学的固定化法であって、
(1)リンカーを介して金属イオン配位結合部位及び粒子結合部位を夫々一端に含むタグと該粒子を反応させて、粒子結合部位を介して該タグを該粒子の表面に結合させる工程、
(2)工程(1)で得られたタグ修飾粒子に該金属イオンを配位させる工程、及び
(3)工程(2)で得られた金属イオン配位粒子を導電性材料に近接させ、該導電性材料に還元電位を印加することにより、該金属イオン配位粒子を該金属イオンの還元により生じる金属原子を介して該導電性材料に固定化する工程、
を含むことを特徴とする前記電気化学的固定化法。
【請求項2】
導電性材料への金属コロイド、フラーレン、カーボンナノチューブ及びセラミック粒子から成る群から選択される粒子の電気化学的固定化法であって、
(1)リンカーを介して金属イオン配位結合部位及び粒子結合部位を夫々一端に含むタグに金属イオンを配位させる工程、
(2)工程(1)で得られた金属イオン配位タグを導電性材料に近接させ、該導電性材料に還元電位を印加することにより、該タグを該金属イオンの還元により生じる金属原子を介して該導電性材料に固定化させる工程、及び
(3)工程(2)で得られたタグ修飾材料と該粒子を反応させて、該粒子を該導電性材料に固定化する工程、
を含むことを特徴とする前記電気化学的固定化法。
【請求項3】
タグの金属イオン配位結合部位がポリヒスチジンである、請求項1又は2に記載の固定化法。
【請求項4】
タグの粒子結合部位が金属結合性基である、請求項1~3のいずれか一項に記載の固定化法。
【請求項5】
金属結合性基がチオール基である、請求項4記載の固定化法。
【請求項6】
導電性材料が金属化合物又は金属から成る、請求項1~5のいずれか一項に記載の固定化法。
【請求項7】
導電性材料の金属化合物がインジウムスズオキサイドである、請求項6記載の固定化法。
【請求項8】
導電性材料の金属が金、銀、銅、アルミニウム、及び白金からなる群より選ばれる一または二以上の金属である、請求項6記載の固定化法。
【請求項9】
金属原子が、2価の金属イオンの還元により生ずる金属である、請求項1~8のいずれか一項に記載の固定化法。
【請求項10】
金属原子がニッケルである、請求項9記載の固定化法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の固定化法で製造される、リンカーを介して金属イオン配位結合部位及び粒子結合部位を夫々一端に含むタグを介して金属コロイド、フラーレン、カーボンナノチューブ及びセラミック粒子から成る群から選択される粒子が導電性材料の表面に結合されていることを特徴とする、粒子固定化導電性材料。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、金属イオン配位子を固定化タグとして用いる電気化学的方法を利用した、導電性材料への粒子の可逆的な電気化学的固定化法、及び該方法で得られる粒子固定化導電性材料等に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者等は、金属イオン配位子に配位した金属を、電極電位により0価まで還元すると電極表面に析出し、かつ配位子との結合を保つことを見出し、この発見に基づき、「生体物質固定化チップおよびその利用」に関する国際特許出願(特許文献1)を行った。
【0003】
上記国際特許出願に記載されている発明は、タンパク質及び核酸のような生体物質にポリヒスチジンのようなペプチドから成る金属イオン配位結合部位を遺伝子工学的に結合させた上で、該ペプチドを導入した融合タンパク質等の固定化を行う技術である。

【特許文献1】国際公開第WO2004/081567号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、上記特許文献1に記載されたペプチドやタンパク質等の生体物質よりも大きなマクロな粒子を電気化学的反応を利用して可逆的に固定化する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、金属イオン配位結合部位及び粒子結合部位を夫々一端に含むタグを開発し、それを用いることによって上記課題を解決することに成功し、本発明を完成させた。
【0006】
即ち、本方法は以下の態様を有する。
[態様1]導電性材料への粒子の電気化学的固定化法であって、
(1)金属イオン配位結合部位及び粒子結合部位を夫々一端に含むタグと粒子を反応させて、粒子結合部位を介して該タグを該粒子の表面に結合させる工程、
(2)工程(1)で得られたタグ修飾粒子に該金属イオンを配位させる工程、及び
(3)工程(2)で得られた金属イオン配位粒子を導電性材料に近接させ、該導電性材料に還元電位を印加することにより、該金属イオン配位粒子を該金属イオンの還元により生じる金属原子を介して該導電性材料に固定化する工程、
を含むことを特徴とする前記電気化学的固定化法。
[態様2]導電性材料への粒子の電気化学的固定化法であって、
(1)金属イオン配位結合部位及び粒子結合部位を夫々一端に含むタグに金属イオンを配位させる工程、
(2)工程(1)で得られた金属イオン配位タグを導電性材料に近接させ、該導電性材料に還元電位を印加することにより、該タグを該金属イオンの還元により生じる金属原子を介して該導電性材料に固定化させる工程、及び
(3)工程(2)で得られたタグ修飾材料と粒子を反応させて、該粒子を該導電性材料に固定化する工程、
を含むことを特徴とする前記電気化学的固定化法。
[態様3]金属イオン配位結合部位及び粒子結合部位を夫々一端に含むタグを介して粒子が導電性材料の表面に結合されていることを特徴とする、粒子固定化導電性材料。
[態様4]本発明の粒子固定化導電性材料が担持されて成る基材。
【発明の効果】
【0007】
本発明の固定化法においては、固定化する粒子に予めタグを導入しておくことにより、導電性材料の表面へ電気化学的(還元反応)に粒子を固定化することができる。或いは、別方として、タグを予め導電性材料へ固定化し、その固定化されたタグを介して導電性材料へ粒子を固定化させることも可能である。こうして固定化された粒子は導電性材料に強固に保持される。更に、粒子を固定化した材料を、再度電池系へ接続し、逆反応(酸化反応)を行うことにより、該粒子を導電性材料から容易に脱離させることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の第一の態様は、(第1工程)金属イオン配位結合部位及び粒子結合部位を夫々一端に含むタグが表面に結合して成るタグ修飾粒子を調製し、(第2工程)該タグ修飾粒子に該金属イオンを配位させ、(第3工程)得られた金属イオン配位粒子を該金属イオンの還元により生じる金属原子を介して該導電性材料に固定化する、ことによって導電性材料へ粒子を電気化学的に固定化する方法に係る。かかる第一の態様の一具体例として、本明細書中の実施例1を挙げることができる。
【0009】
本発明の第二の態様は、(第1工程)上記タグに金属イオンを配位させて金属イオン配位タグを調整し、(第2工程)得られた金属イオン配位タグを該金属イオンの還元により生じる金属原子を介して該導電性材料に固定化し、(第3工程)得られたタグ修飾材料と粒子を反応させて、該粒子を該導電性材料に固定化する、ことによって導電性材料へ粒子を電気化学的に固定化する方法に係る。かかる第二の態様の一具体例として、本明細書中の実施例2を挙げることができる。
【0010】
本発明の第三の態様は、金属イオン配位結合部位及び粒子結合部位を夫々一端に含むタグを介して粒子が導電性材料の表面に結合されていることを特徴とする、粒子固定化導電性材料に係る。尚、タグは粒子又は導電性材料のいずれと最初に結合してもかまわない。いずれの場合でも、製造される粒子固定化導電性材料は上記タグを介して粒子が導電性材料の表面に結合された構造を有することを特徴とする。このような粒子固定化導電性材料の製造方法に特に制限はないが、好ましくは上記本発明の固定化法によって製造することができる。
【0011】
更に、本発明の第四の態様は、粒子固定化導電性材料が担持されて成る基材に係る。
【0012】
本発明において、「粒子」とは、ペプチドやタンパク質等の生体物質に比べて数オーダー大きいマクロな粒子を意味し、例えば、粒径が数nm~数十nmの程度の当業者に公知の任意のものを含む。尚、粒子の形態は、必ずしも球状に限定されず、棒状等の任意の形状をとることが出来る。粒子の材質に特に制限はないが、粒子の代表的な例として、例えば金コロイドのような金属コロイド、フラーレン、カーボンナノチューブ及びセラミック粒子を挙げることが出来る。又、粒子が、タグの粒子結合部位と結合することができる適当な官能基で予め活性化されたものでも良い。
【0013】
このような粒子は、夫々の物理的特性に応じて、当業者に公知の任意の方法で容易に作製することが可能である。
【0014】
本発明方法で使用する「タグ」の各端は、夫々、金属イオン配位結合部位及び粒子結合部位から成っている。
【0015】
「金属イオン配位結合部位」は当業者に公知の任意の構造を有することが出来、例えば、金属に配位結合可能な原子(窒素原子、硫黄原子、酸素原子など)を含む分子鎖・分子骨格などが挙げられる。このような分子鎖・分子骨格はペプチドであってもよいし、それ以外の化合物であってもよい。具体的には、ポリヒスチジンを含むペプチド(ポリヒスチジン)、ポルフィリン、チオール基を含むペプチドや化合物などが挙げられる。この中で、特に好適には、ポリヒスチジンが挙げられる。ここで、ポリヒスチジンとはヒスチジンを2個以上含むポリペプチドをいう。ヒスチジンの個数としては、2個以上であれば、固定化されるタンパク質の機能に影響を及ぼさない範囲の個数でよいが、好ましくは5~8個である。なお、ポリヒスチジンは必ずしも連続している必要はなく、各ヒスチジンの間に他のアミノ酸又はその他の分子が1~数個挿入されたものであってもよい。
【0016】
「粒子結合部位」は、粒子の物理化学的な性質に応じて、当業者に公知の任意の構造とすることができる。例えば、粒子が金属コロイド等である場合には、チオール基のような金属結合性基である。
【0017】
更に、本発明方法で使用するタグでは、金属イオン配位結合部位と粒子結合部位とがリンカーを介して結合されていることが好ましい。このリンカーは当業者に公知の適当な構造、例えば、数個の炭素数を有するアルキル基のような、適当な長さを有する不活性な有機基とすることが出来る。このようにタグの中央に介在させたリンカーは、チオール基等の金属結合性基において不要な電気化学反応が生起するのを防ぐのに有効である。その一方で、リンカーが長すぎるとリンカー分子に揺らぎが生じ、その結果、固定化反応が阻害される懸念がある。このような点を考慮して、本明細書の実施例においては、リンカーは7個の炭素数から成るアルキル基とした。
【0018】
以上のような構造を有するタグは、各部位、及びリンカーのいずれか一つ又は2つを含む適当な化合物を用いて当業者に公知の任意の方法で合成することが出来る。例えば、本明細書に実施例に記載されているように、粒子結合部位(チオール基)とリンカー(ヘプチル基)を含む化合物(7-Carboxy-1-heptanethiol)を金属イオン配位結合部位(ポリヒスチジン)とを反応させることによってタグを合成することが出来る。
【0019】
本発明の「導電性材料」は電位を印加し得る材料である、金属化合物又は金属から成る電極であることが好ましい。金属化合物の例としては、ITO(インジウムスズオキサイド)等の金属酸化物、GaAs、シリコン等の半導体、及びカーボン等を挙げることが出来る。又、金属の例としては、金、銀、銅、アルミニウム、又は白金を挙げることが出来る。例えば、合金のように、これらの二種以上を適当に混合して使用することも可能である。
【0020】
本発明において、金属イオンの還元により生ずる金属原子はタグの金属イオン配位結合部位と配位結合を形成することが可能な金属イオンが還元されて生ずる金属が好ましい。例えば、金属イオン配位結合部位としてポリヒスチジンを用いた場合には、2価の陽イオン、すなわち、Cu2+、Zn2+、Ni2+、Ca2+、Co2+、及びMg2+等が還元されて生ずる金属が好ましい。
【0021】
タグ(第一の態様の第1工程)又はタグ修飾材料(第二の態様の第3工程)と粒子とを結合させる反応は、両者を適当な緩衝液中で所定時間反応させたり、粒子を含む緩衝液をタグ修飾材料に滴下することによって行うことができる。その際の各種反応条件(緩衝液の種類・濃度、温度、反応時間等)は、粒子の物理化学的性質及びタグにおける粒子結合部位の化学構造等に応じて、当業者が出来適宜選択することが出来る。
【0022】
上記金属イオン配位結合部位を有するタグ修飾粒子(第一の態様の第2工程)又はタグ(第二の態様の第1工程)に該金属イオンを配位結合させる反応は、これらを含む適当な緩衝液中にNiCl等の上記金属イオンに対応する塩を加えることによって実施することできる。その際の各種反応条件(緩衝液の種類・濃度、温度、反応時間等)は、粒子の物理化学的性質及びタグにおける金属イオン配位結合の化学構造等に応じて、当業者が出来適宜選択することが出来る。尚、遊離の金属イオンを除くために、配位結合反応を行った後に、金属イオンとタグ修飾粒子等との配位結合体を金属イオンを含まない緩衝液に対して透析することが好ましい。
【0023】
更に、金属イオン配位粒子(第一の態様の第3工程)又は金属イオン配位タグ(第一の態様の第2工程)を該金属イオンの還元により生じる金属原子を介して該導電性材料に固定化する反応において、「導電性材料に近接させ」とは、金属イオンとの配位複合体である金属イオン配位粒子又は金属イオン配位タグを、導電性材料の近傍に配置することをいう。好ましくは、上記配位複合体を含む溶液中に導電性材料を浸すことによって容易に実施することができる。導電性材料を浸す溶液は、電位の印加が可能な限り特に限定されないが、例えば、リン酸緩衝液等を用いることができる。
【0024】
上記固定化法において、導電性材料への電位の印加は、例えば、金属イオン配位粒子又は金属イオン配位タグのような配位結合体を含む電解液中に、導電性材料である作用極と参照電極とを浸し、通常の電源を用いて電位を印加することにより行うことができる。ここで、参照電極としては、例えば、銀塩化銀電極等が挙げられる。印加する電位は還元電位であるが、還元電位とは、参照電極に対してマイナスとなる電位をいう。還元電位として、好ましい電位は、導電性材料の種類により異なるが、導電性材料として白金を用いた場合には、参照電極に対して-10mV以下の電位が好ましく、参照電極に対して-100mV以下の電位がより好ましく、参照電極に対して-200mV以下の電位が特に好ましい。
【0025】
このようにして製造される本発明の粒子固定化導電性材料は、更に当業者に公知の適当な基材に担持させることも出来る。このような基材として用いることのできる素材の例として、プラスチック、無機高分子、天然高分子及びセラミック等を挙げることが出来る。プラスチックとして具体的には、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリアミド、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレン、ポリイミド及びアクリル樹脂等が、無機高分子としては、ガラス、水晶、カーボン、シリカゲル、及びグラファイト等が、天然高分子としては、セルロース、セルロース誘導体、キチン、キトサン、アルギン酸及びアルギン酸塩等が、セラミックとしては、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、窒化ケイ素及び炭化ホウ素等を例示することができる。
【0026】
尚、上記基材は、例えば、フィルム、平板、成型品(ビーズ、ストリップ、マルチウェルプレートのウェルまたはストリップ、チューブ、メッシュ、連続発砲フォーム、膜、紙、針、ファイバー、プレート、スライドおよび細胞培養容器)、ラテックス、カンチレバーの探針等の当業者に公知の任意の適当な形状をとることができ、またその大きさについては特に制限はない。又、本発明の粒子固定化導電性材料は、当業者に公知の適当な方法で基材に担持させることができる。
【0027】
更に、こうして製造される粒子固定化導電性材料の粒子の表面に、当業者に公知の任意の方法で、例えば、タンパク質若しくは核酸等の生体物質、蛍光物質等の検出用物質、その他の各種化合物を結合させることもできる。このような粒子への各種化合物の結合は、該粒子が導電性材料上に固定化される前後を問わず実施することができる。従って、このような生体物質が結合した粒子を使用して得られた粒子固定化導電性材料は、上記特許文献1に記載された各種の分析方法及び精製方法に応用することができる。
【0028】
本発明の第一及び第二の態様で示される2通りの固定化法はいずれも金属錯体の還元反応による金属析出を介した固定化である。よって、固定化後の電極に対し、適当な電圧、例えば、+500mVの電位を印加し酸化反応を行うことで、容易に粒子を脱固定化することができる。
【0029】
以下、実施例に則して本発明を詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0030】
実施例1:本発明の第一の態様
(1)ポリヒスチジン修飾金コロイド粒子の作製
金コロイドは塩化金酸(HAuCl4)をクエン酸とタンニン酸で還元合成した。即ち、1%塩化金酸1ml、純水79ml、及び、還元剤として1%クエン酸4mlと1%タンニン酸を混合し60℃に加熱した。色が赤くなった後、5-10 分程沸騰させることにより直径8.3nmの金コロイド粒子を得た。
【0031】
一方、常法により、あらかじめ固相合成によってポリヒスチジン(6個のヒスチジンから構成)を得た。得られたポリヒスチジンを、N,N-ジメチルホルムアミド (N,N-Dimethylformamide, DMF)中で、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(N,N-diisopropylethylamine;DIEA)4モル等量を縮合剤として、7-Carboxy-1-heptanethiol(同仁化学)4モル等量と一晩室温で撹拌することによって、チオール基修飾ポリヒスチジンを得た。
【0032】
金コロイド粒子へのポリヒスチジン修飾はAu-Sのメルカプト結合を利用した。即ち、10nM金コロイド粒子と100μMチオール基修飾ポリヒスチジンを10mMクエン酸緩衝液(pH6.0)中で12時間反応させ、その後、緩衝液を交換していくことによって未反応ペプチドを除去することにより、ポリヒスチジン修飾金コロイド粒子(タグ修飾粒子)を得た。
【0033】
(2)Ni2+配位金コロイド粒子の作製
上記(1)で得たポリヒスチジン修飾金コロイド粒子を0.1Mグリシン緩衝液(pH9)中で、最終濃度10μMとなるようにNiCl2を添加し、2時間反応させ、Ni2+をポリヒスチジン修飾金コロイド粒子に配位させた。未配位のNi2+を除去するために、透析カセット(スライドAライダー、Pierce社)を用いてNi2+配位金コロイド粒子(金属イオン配位粒子)を得た。
【0034】
(3)ポリヒスチジン修飾金コロイド粒子ニッケル錯体の電気化学固定化
このNi2+配位金コロイド粒子(コロイド粒子の濃度:0.25A520(520 nmの吸光度が0.25になる濃度))を含むトリシン緩衝液(0.1M、pH8.0、0.1M KCl含有)中に、導電性材料として、ITO(Indium-Tin Oxide)電極を挿入し、このITO電極を作用極とし、対極として白金電極、参照極として銀塩化銀電極をもちいた3電極系により、Ni2+の還元電位である-100mVを10分間印加し、金コロイド粒子の固定化反応を実施して、本発明の粒子固定化導電性材料を製造した。
【0035】
(4)固定化状態の評価
こうして得られた材料を、JEOL EM-2000FXを用いて透過型顕微鏡(TEM)で測定した。その結果、コロイドの固定化を示唆するTEM像が観察された。又、NanoScope IIIa(Veeco metrology group/Digital Instruments)を用いた原子間力顕微鏡(AFM)(観察環境:気中、観察モード:タッピング)で測定した。その結果、ポリヒスチジン修飾金コロイド粒子が導電性材料の表面に非常に密に固定化されたことが確認された(図1・右)。尚、AFM測定用の試料としてITO電極の代わりに白金電極を用い同条件下で導電性材料を製造した。
【0036】
実施例2:本発明の第二の態様
本実施例では、まず、導電性材料上にチオール修飾ポリヒスチジン分子(金属イオン配位タグ)から成る層を電気化学固定化法により構築し、その後、金コロイド微粒子を自己集積させことにより、本発明の粒子固定化導電性材料を製造した。
【0037】
(1)金属イオン配位タグの作製
実施例1と同様な方法でチオール基修飾ポリヒスチジンを得た。尚、アルキル鎖のような直線的な構造を持った分子は導電性材料のような固相へ固定された後に分子の揺らぎが起き、その結果、揺らぎによる固定化反応阻害が懸念される。そこで、チオール基とポリヒスチジン配列のリンカーとして機能するアルキル鎖は短い方が望ましい。一方で、適度なリンカーがなければチオール基が電気化学反応を起こしてしまう可能性もあるので、本実施例で使用するタグ中のリンカーのアルキル鎖の炭素数は7とした。次に、実施例1(2)に準じて、こうして得られたチオール基修飾ポリヒスチジンペプチドにNi2+を加えることで錯体を(金属イオン配位タグ)形成させ、未配位のNi2+を透析によって除去した。
【0038】
(2)金属イオン配位タグの電気化学固定化
実施例1(3)と同様に、ITO電極を作用極、白金電極を対極、銀塩化銀電極を参照極として3電極系において還元反応を行うことによって、チオール基標識ポリヒスチジンペプチド層を電極上に形成させ、タグ修飾材料を得た。
【0039】
(3)蛍光コロイド粒子(ビーズ)の電気化学固定化
こうして得られたタグ修飾材料(電極)に対し、蛍光コロイド粒子(ナノマグ社製「nanomagR-D-spio 50nmコロイド」:アミノ基活性化物)(0.25 A520(520 nmの吸光度が0.25になる濃度))を含有する0.1Mグリシン緩衝液(pH9)を滴下し、25℃で3時間ゆるやかに攪拌しながら該蛍光コロイド粒子と架橋剤(ピアス社製 SMCC:製品番号22360)とを反応させ、蛍光コロイド粒子のアミノ基とポリヒスチジンペプチド層末端チオール基とを架橋結合することにより、コロイド粒子をポリヒスチジンペプチド層上へ自己集積させ、本発明の粒子固定化導電性材料を製造した。
【0040】
実施例1と同様に、TEM及びAFMで測定した。その結果、蛍光コロイド粒子が導電性材料の表面に密に固定化されたことが確認された。
【0041】
実施例3:固定化したポリヒスチジン導入蛍光コロイド粒子の脱固定化
以上の2通りの固定化法はいずれも金属錯体の還元反応による金属析出を介した固定化である。よって、固定化後の電極に対し、+500mVの電位を印加し酸化反応を行うことで、粒子を脱固定化することができる。実施例2で得られた粒子固定化導電性材料を用いて得られた脱固定化の結果を以下の表1に示す。尚、蛍光コロイド粒子の蛍光性により固定化量を蛍光測定した。具体的には、ニコン社製落射蛍光顕微鏡で固定化表面を観察し、その蛍光画像を浜松ホトニクス製高感度カメラおよび画像解析装置AQUA COSMOSシステムにより定量評価した。得られた結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
JP0005124769B2_000002t.gif

【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の固定化方法で製造される粒子固定化導電性材料、又は、該材料が担持されて成る基材は、センサ材料、磁気記録デバイス、及び光学材料等の様々な分野に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の固定化法で製造した粒子固定化導電性材料をAFM(観察環境:気中、観察モード:タッピング)で測定した結果を示す写真である。左は導電性材料(白金電極)、右はポリヒスチジン修飾金コロイド粒子が表面に非常に密に固定化された導電性材料である。尚、各写真の左下のスケールバーは1μmを示している。
図面
【図1】
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