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明細書 :ユーロピウムジケトンキレート化合物及びそれを用いた蛍光材料

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3975278号 (P3975278)
登録日 平成19年6月29日(2007.6.29)
発行日 平成19年9月12日(2007.9.12)
発明の名称または考案の名称 ユーロピウムジケトンキレート化合物及びそれを用いた蛍光材料
国際特許分類 C09K  11/06        (2006.01)
C07C  49/92        (2006.01)
C07F   5/00        (2006.01)
FI C09K 11/06
C07C 49/92
C07F 5/00
請求項の数または発明の数 7
全頁数 20
出願番号 特願2006-531335 (P2006-531335)
出願日 平成17年7月7日(2005.7.7)
国際出願番号 PCT/JP2005/012541
国際公開番号 WO2006/016455
国際公開日 平成18年2月16日(2006.2.16)
優先権出願番号 2004233137
優先日 平成16年8月10日(2004.8.10)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成18年10月19日(2006.10.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
発明者または考案者 【氏名】森口 哲次
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100112771、【弁理士】、【氏名又は名称】内田 勝
審査官 【審査官】前田 憲彦
参考文献・文献 特開平10-231477(JP,A)
特開平05-255661(JP,A)
特開平01-006085(JP,A)
特開平01-026583(JP,A)
特開昭61-037885(JP,A)
調査した分野 C09K 11/00
C07C 49/00
C07F 5/00
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記式(1)で示されるユーロピウムジケトンキレート化合物を含有することを特徴とする蛍光材料。
【化1】
JP0003975278B1_000028t.gif
式(1)
(式中、Xはヘテロ環カチオン性ポリマー、カチオン性オリゴマーであり、Rは芳香族化合物基又は二重結合を複数含む複素環化合物基であり、Zは水素原子又は脂肪族若しくは脂環式化合物の置換基である)
【請求項2】
前記式(1)中、Xがポリビニルピリジニウム又はポリピロールカチオンであることを特徴とする請求項1記載の蛍光材料。
【請求項3】
下記式(3)又は記式(4)で示されるユーロピウムジケトンキレート化合物を含有することを特徴とする蛍光材料。
【化3】
JP0003975278B1_000029t.gif
式(3)
【化4】
JP0003975278B1_000030t.gif
式(4)
(式中、Xはヘテロ環カチオン性ポリマー、カチオン性オリゴマー又は置換基を有するカチオン性ヘテロ芳香族化合物であり、Rは芳香族化合物基、架橋芳香族基、又は二重結合を複数含む複素環化合物基であり、Zは水素原子又は脂肪族若しくは脂環式化合物の置換基であり、アニオンがリンカーRによって結合したユーロピウムジケトンキレートの2核体である)
【請求項4】
前記式(3)又は式(4)中、Rが芳香族化合物基、架橋芳香族基、又は二重結合を複数含む複素環化合物基に代えて、アルキル基又はアルコキシ基であることを特徴とする請求項3記載の蛍光材料。
【請求項5】
前記リンカーRが下記式(5)、式(6)又は式(7)で示されることを特徴とする請求項3記載の蛍光材料。
【化5】
JP0003975278B1_000031t.gif
式(5)
【化6】
JP0003975278B1_000032t.gif
式(6)
【化7】
JP0003975278B1_000033t.gif
式(7)
【請求項6】
下記式(8)で示されるユーロピウムジケトンキレート化合物を含有することを特徴とする蛍光材料。
【化8】
JP0003975278B1_000034t.gif
式(8)
(式中、Xn+はn価のカチオン性ポリマーであり、Arは任意の置換芳香族基、縮環芳香族基又はヘテロ環芳香族基であり、Zは水素原子又は脂肪族若しくは脂環式化合物の置換基である)
【請求項7】
n+がポリビニルピリジニウム又はポリピロールカチオンであることを特徴とする請求項6記載の蛍光材料。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明はユーロピウムジケトンキレート化合物及びそれを用いた蛍光材料に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、有機EL、エネルギー変換素子或いは表示素子等に様々な発光物質が用いられている。これらの発光物質は、有価証券偽造防止手段、接着表面検査手段、更には微量物質検知手段等にも用いられている。
【0003】
上記発光物質は、有価証券偽造防止手段等の用途においては、見た目は目立たず或いは無色であって、検査時等に光を当てることで発色して容易に目視できるものであることが望まれる。
【0004】
このような発光物質として、従来、赤色を呈する有機材料が知られている。しかしながら、従来の赤色発光有機材料は、見た目に色を有するものがほとんどである。
【0005】
この課題に鑑み、赤色発光有機材料としてユーロビウム(Eu)錯体を含む化合物を用いる方法が開示されている。
例えば、テトラ-n-ブチルアンモニウム塩を対イオンに有するテトラ4,4,4-トリフルオロ-1-(2-チエニル)-1,3ブタンチオナートユーロビウム錯体からなる蛍光材料を用いたインクジェット用記録液が提案されている(特許文献1参照。)。
この記録液は、可視光のもとでは無色であり254~365nmの波長の紫外線のもとで600~650nm波長の赤色を呈し、発光強度が大きく、耐光性に優れるとされている。
【0006】
また、トリフルオロ-フェニルブタンジオンを配位子とするユーロビウム錯体を含有する紫外線発光糊が提案されている(特許文献2参照。)。
この紫外線発光糊は、見た目は無色のまま、紫外線照射により発光することで糊の有無の視認性に優れるとされている。
【0007】
また、ユーロピウムジケトンキレート化合物の合成とそれら化合物の物性値についての報告もあり、その中でこれら化合物が強い赤色発光を呈することが開示されている(非特許文献1参照。)。
【特許文献1】
特開平8-239609号公報
【特許文献2】
特開2004-115559号公報
【非特許文献1】
論文:Susumu Sato etal,Some Properties of Europium β-diketone Chelates I(Synthesis and Fluorescent Properties),Japanese Journal of AppliedPhysics,Vol.7,No.1,pp.7-13,January(1968).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した従来のユーロピウムジケトンキレート化合物は、結晶性が高いものがほとんどである。これら結晶性が高い塩は、塗布、製膜、ポリマー基材への分散等の加工性が悪く、発光性能的にも均一性や劣化等の問題がある。
また、用途によっては、ポリマー分散性が要求される場合があるが、これら結晶性が高い塩は、粒子となり良好なポリマー分散性が得られないので、濃度消光を起こしやすい問題がある。
【0009】
また、非特許文献1に開示されている種々のユーロピウムジケトンキレート化合物は、イオン結合を含み蒸気圧が低く、減圧下でも加熱により溶融或いは酸化分解するので、蒸着による製膜ができない等の問題もある。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、紫外線照射で安定に赤色発光を示す新規なユーロピウムジケトンキレート化合物及びそれを用いた蛍光材料を提供することを目的とする。
また、本発明は、ガラス基板上に塗布し或いはプラスチックに配合したときに高い分散性を有するユーロピウムジケトンキレート化合物及びそれを用いた蛍光材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係るユーロピウムジケトンキレート化合物は、下記式(1)で示される。
JP0003975278B1_000002t.gif(式中、Xはヘテロ環カチオン性ポリマー又はカチオン性オリゴマーであり、Rは芳香族化合物基又は二重結合を複数含む複素環化合物基であり、Zは水素原子又は脂肪族若しくは脂環式化合物の置換基である)
[0012]
また、本発明に係るユーロピウムジケトンキレート化合物は、式(1)中、Xがポリビニルピリジニウム又はポリピロールカチオンであることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係るユーロピウムジケトンキレート化合物は、下記式(3)又は記式(4)で示される。
【化11】
JP0003975278B1_000003t.gif 式(3)
【化12】
JP0003975278B1_000004t.gif 式(4)
(式中、Xはヘテロ環カチオン性ポリマー、カチオン性オリゴマー又は置換基を有する
カチオン性ヘテロ芳香族化合物であり、Rは芳香族化合物基、架橋芳香族基、又は二重結合を複数含む複素環化合物基であり、Zは水素原子又は肪族若しくは脂環式化合物の置換基であり、アニオンがリンカーRによって結合したユーロピウムジケトンキレートの2核体である)
【0016】
また、本発明に係るユーロピウムジケトンキレート化合物は、前記式(3)又は式(4)中、Rが芳香族化合物基、架橋芳香族基、又は二重結合を複数含む複素環化合物基に代えて、アルキル基又はアルコキシ基であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係るユーロピウムジケトンキレート化合物は、前記リンカーRが下記式(5)、式(6)又は式(7)で示されることを特徴とする。
【化13】
JP0003975278B1_000005t.gif 式(5)
【化14】
JP0003975278B1_000006t.gif 式(6)
【化15】
JP0003975278B1_000007t.gif 式(7)
【0018】
また、本発明に係るユーロピウムジケトンキレート化合物は下記式(8)で示される。
【化16】
JP0003975278B1_000008t.gif 式(8)
(式中、Xn+はn価のカチオン性ポリマーであり、Arは任意の置換芳香族基、縮環芳香族基又はヘテロ環芳香族基であり、Zは水素原子又は肪族若しくは脂環式化合物の置換基である。)
【0019】
また、本発明に係るユーロピウムジケトンキレート化合物は、Xn+がポリビニルピリジニウム又はポリピロールカチオンであることを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る蛍光材料は、上記のユーロピウムジケトンキレート化合物を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る蛍光材料は、紫外線照射で安定に赤色発光を示す新規なユーロピウムジケトンキレート化合物を含むものである。
また、本発明に係るユーロピウムジケトンキレート化合物を含有する蛍光材料は、ガラス基板上に塗布し或いはプラスチックに配合したときに高い分散性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1のユーロピウムジケトンキレート化合物の反応スキームを示す図である。
【図2】実施例2のユーロピウムジケトンキレート化合物の反応スキームを示す図である。
【図3】実施例3の本発明に係るユーロピウムジケトンキレート化合物の反応スキームを示す図である。
【図4】実施例4のユーロピウムジケトンキレート化合物の一例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施の形態について、以下に実施例を用いて説明する。
【実施例1】
【0024】
本発明に係る、下記式(8)で示されるユーロピウムジケトンキレート化合物及びユーロピウムジケトンキレート化合物を含有した蛍光材料の実施例について説明する。
【0025】
【化17】JP0003975278B1_000009t.gif 式(8)
【0026】
実施例のユーロピウムジケトンキレート化合物は、式(8)において、Xn+をn価のポリマーカチオンとし、Arは任意の置換芳香族基、縮環芳香族基又はヘテロ環芳香族基とし、Zは水素原子又は肪族若しくは脂環式化合物の置換基としたものある。
【0027】
式(8)においてXn+がポリビニルピリジニウムである場合、即ち、下記式(9)で示されるポリビニルピリジニウム・テトラキス(アリールトリフルオロメチルプロパンジオナト)ユウロペート化合物(以下PVPEu化合物と表示する。)を例にとって、化合物及び化合物を蛍光材料に用いた蛍光層のそれぞれの製法と特性を具体的に説明する。
【0028】
【化18】JP0003975278B1_000010t.gif 式(9)
【0029】
PVPEu化合物の製法を図1の反応スキームを参照して説明する。
ジケトン配位子(Ar-CO-CZ-CO-CF、Arはフルオレニル基、Zは水素原子)2.0mMのジクロロメタン溶液20ミリリットルを、脱脂した水素化ナトリウム8.0mMのメタノール-ジクロロメタン溶液50ミリリットルに滴下し、室温で10分間撹拌した(図1中、反応(1))。
次いで、反応(1)で生成した反応溶液に塩化ユウロピユウム0.50mMのメタノール溶液10ミリリットルを滴下し、更に10分間室温で撹拌した(図1中、反応(2))。
更に、反応(2)で生成した反応液にポリビニルピリジン0.50mMのジクロロメタン溶液4.5ミリリットルを滴下し、生成したポリマー様固体が分散するまで更に10時間撹拌した(図1中、反応(3))。
反応(3)で生成した溶液を減圧にすることにより溶媒を総て除去し固形物を得た。次いで、その固形物にジクロロメタンを加え、固形物を懸濁させた。
更に、懸濁液中の固体を濾過し、ポリマー様沈殿を得た。このポリマー様沈殿を水洗し、副生物の塩化ナトリウムを取り除いた後、ポリマー様沈殿をメタノールに溶解させ、不溶物を濾過により除去した。不溶物を除去されたメタノール溶液を減圧処理することによりメタノールを除去してポリマー様固体のPVPEu化合物を得た。PVPEu化合物の収率は80%であった。
【0030】
得られたPVPEu化合物は、無色であり、紫外線(ブラックライト)の照射により赤色を発光した。
上記PVPEu化合物は、ベンゼン、トルエン、ジクロロメタン、アセトン、クロロホルム、ヘキサンなどの溶媒には不溶であるが、エタノール、メタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒やジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、Nメチルピロリドン等のプロトン性極性有機溶媒に可溶であった。また、水には不溶であった。
また、上記PVPEu化合物は非晶質であった。
【0031】
次に、上記PVPEu化合物を含有する蛍光材料を用いた蛍光層の製法とその特性を以下に示す。
PVPEu化合物0.10gをエタノール10ミリリットルに溶解し、2.0 mm×2.0mmのガラス板に塗布・乾燥させた。PVPEu化合物は塗膜内で結晶化することなく透明な蛍光層となった。この場合、エタノールに代えてメタノールを用いてもよい。
得られた蛍光層に紫外線(ブラックライト)照射することによって、蛍光層は赤色光を発光した。
PVPEu化合物は、トルエン・酢酸エチル系接着剤又はアルコール主剤塗料に混合することもでき、混合した塗料を塗布・乾燥することにより蛍光層を形成すできともできる。
【0032】
また、ポリプロピレン及びポリエチレンの溶融体のそれぞれに、上記PVPEu化合物を分散させた。そしてPVPEu化合物を分散した樹脂を冷却して、均一組成の透明な樹脂体を得た。
【0033】
この透明な樹脂体に紫外線(ブラックライト)を照射すると赤色を発光した。
上記PVPEu化合物及びPVPEu化合物を含有した蛍光層の非結晶性、製膜性、発光強度、膜耐久性、ポリマー基材分散性の結果について、表1に実施例1(1)として示す。
ここで、ここで非結晶性は融点測定装置及び示差熱分析装置(DSC)により評価したものであり、○は常温で結晶化しないもの、△は特定の溶媒から結晶化するもの或いは結晶化しないが相の転移が見られるもの、×は常温で容易に結晶化するものを表す。
また、製膜性は、ガラス基板表面への直接塗布やスピンコーティングによって透明性を保っているか目視及び顕微鏡評価したものであり、○は透明であり微粉状にならない状態、△は半透明であり微粉末状に一部なっている状態、×は不透明であり微粉末状になっている状態を表す。
また、発光強度は、蛍光測定装置を用い対照化合物の発光量子収率と比較して評価したものであり、○は対照化合物に比べて強度が勝っているもの、△は同程度のもの、×は少々劣っているものを表す。
また、膜耐久性は、ガラス基板や樹脂板上に形成された膜を触指するか或いは若干基板をたわませることにより亀裂生成や剥離を目視評価したもので、○は変化が見られない状態、△は剥離或いは亀裂のいずれかが生じた状態、×は剥離及び亀裂が双方大きく生じた状態を表す。
【0034】
【表1】JP0003975278B1_000011t.gif【0035】
なお、表1には示していないが、上記ポリビニルピリジニウムに代えて、ポリピロールカチオン、ポリビニルアンモニウム(下記式(10))、ポリアリルアンモニウム(下記式(11))、ポリエチレンイミンの窒素原子にプロトンが結合してなるカチオンポリマー(下記式(12))などのカチオンポリマーを用いても上記と同様の効果が得られた。
【0036】
【化19】JP0003975278B1_000012t.gif 式(10)
【0037】
【化20】JP0003975278B1_000013t.gif 式(11)
【0038】
【化21】JP0003975278B1_000014t.gif 式(12)
【0039】
又、式(1)において、XがポリビニルピリジニウムでR1がドデシルオキシフェニル、XがポリピロールカチオンでR1がドデシルオキシフェニルの組み合わせについてそれぞれ上記と同様の実験を行った。Zはいずれも水素原子或いは脂肪族であるメチル基のものである。実験により得られたPVPEu化合物及びPVPEu化合物を含有した蛍光層の特性を、表1の実施例1(2)、実施例1(3)に示す。
【実施例2】
【0040】
本発明に係る、下記式(1)で示されるユーロピウムジケトンキレート化合物及びユーロピウムジケトンキレート化合物を含有した蛍光材料の実施例について説明する。
【0041】
【化22】JP0003975278B1_000015t.gif 式(1)
【0042】
実施例のユーロピウムジケトンキレート化合物は、Xがヘテロ環カチオン性ポリマー、カチオン性オリゴマー又は置換基を有するカチオン性ヘテロ芳香族化合物であり、Rが芳香族化合物基又は二重結合を複数含む複素環化合物である。なお、Xの化合物群の各化合物とR及びZの化合物群の各化合物や置換基は、任意の組み合わせを採用することができる。
【0043】
式(1)においてXがビピリジニウムでRがドデシル、Xアルキルピリジニウム
でRがターフェニル基でありZが水素原子、XがアルキルピリジニウムでRがフル
オレニル基、XがアルキルピリジニウムでRがドデシルでありZが水素原子の組み合わせを例にとって、化合物及び化合物を蛍光材料に用いた蛍光層を調製し、評価した。
【0044】
実施例1と同様の製法で、化合物及び化合物を蛍光材料に用いた蛍光層を得た。
得られた蛍光層は、表1の実施例2(4)、実施例2(5)、実施例2(6)、実施例2(7)にそれぞれ示すように、製膜性及び膜耐久性が若干劣るが実施例1とほぼ同様の結果が得られた。
【0045】
(比較例1)
上記式(1)において、XがブチルアンモニウムでRがチオフェン基でありZが水素原子、XがピペリジニウムでRパラメチルフェニル基でありZが水素原子の組み合わせで実施例2と同様の実験を行った。
得られた化合物は、発光強度は良好であるが、結晶性であった。また、蛍光層は、製膜性が悪く、膜耐久性及びポリマー基材分散性も悪いものであった。結果を表1の比較例1(1)、(2)に示す。
【実施例3】
【0046】
本発明に係る、下記式(2)で示されるユーロピウムジケトンキレート化合物及びユーロピウムジケトンキレート化合物を含有した蛍光材料の実施例について説明する。
【0047】
【化23】JP0003975278B1_000016t.gif 式(2)
【0048】
実施例のユーロピウムジケトンキレート化合物は、Yが1価のカチオンであり、Zが水素原子、Rが複素芳香族基、3置換型アリール基、3環以上のポリアリール基、4環以上の縮合系アリール基、フルオレニル基、拡張共役π系アルケン化合物基、拡張共役π系アルキン化合物基、環状若しくは非環状のポリエーテル基、錯体基又はデンドリマー基である。
【0049】
式(2)においてYが任意のカチオンであり、Zが水素原子、Rを下記の置換基群に示すような置換芳香族基、縮環芳香族基又はヘテロ環芳香族基とした場合、即ち、Y・テトラキス(R—トリフルオロメチルプロパンジオナト)ユウトペート(以下、Y・T REu化合物という。)を例にとって、化合物及び化合物を蛍光材料に用いた蛍光層を調製し、評価した。
【0050】
【化24】JP0003975278B1_000017t.gif【0051】
・T REu化合物の製法を図2の反応スキームを参照して説明する。
ジケトン配位子(R-CO-CZ-CO-CF、ここでRはピリジニル基、Zは水素原子)2.0mMのジクロロメタン溶液20ミリリットルを、脱脂した水素化ナトリウム8.0mMのメタノール-ジクロロメタン溶液50ミリリットルに滴下し、室温で10分間撹拌した(図2中、反応(4))。
【0052】
次いで、反応(4)で生成した反応溶液に塩化ユウロピユウム0.50mMのメタノール溶液10ミリリットルを滴下し、更に10分間室温で撹拌した(図2中、反応(5))。
【0053】
更に、反応(5)で生成した反応液に対カチオンとなる塩基(ここではピペリジン)0.50mMのジクロロメタン溶液4.5ミリリットルを滴下し、更に10時間撹拌した(図2中、反応(6))。
【0054】
反応(6)で生成した沈殿を減圧濾過し、次いで水洗し副生成物の塩酸塩を取り除いた後、目的とするY・T REu化合物を得た(ここで得られたものはピペリジニウム(チオフェニル-トリフルオロメチルプロパンジオナト)ユウトペートである。)。化合物の平均収率は80%であった。
【0055】
得られたY・T REu化合物は、無色であり、紫外線(ブラックライト)の照射により赤色を発光した。
また、Y・T REu化合物は、ベンゼン、トルエン、ジクロロメタン、アセトン、クロロホルム、ヘキサンなどの溶媒には可溶であるが、エタノール、メタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒に難溶で、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のプロトン性極性有機溶媒に易溶であった。また、水には不溶であった。
【0056】
上記Y・T REu化合物の特性を表2の実施例3(1)に示す。
【0057】
【表2】JP0003975278B1_000018t.gif【0058】
ここで、Zにメチル基を導入することで、日光照射下、化合物の発光の退色が数十%抑制される。
元々発光体は酸素存在下での日光暴露によって化学変化を引き起こし退色するものが殆どである。これは酸素存在下において紫外線励起された有機化合物が容易に酸化されることに起因する。用途によってはこの耐候性が問題になるため、本化合物骨格にZ置換基を導入することで解決した。溶解度、発光強度、分散性についてはZが水素原子の場合と大差なかった。
【0059】
また、上記と同様の合成方法で、式(2)においてYがピペリジニウム又はピリジニウムでRが上記した置換基群のそれぞれの組み合わせで合成し、Y・T REu化合物を得た。得られたY・T REu化合物は、置換基がトリアルコキシフェニル(1)、メトキシポリエトキシフェニル(7)、クラウンエーテル(10)、デンドリマー(11)を持つものを除いて全て非晶質であった。
【0060】
得られたY・T REu化合物のうち非晶質のものについて、0.10gをジメチルスルホキシド10ミリリットルに溶解し、2.0 mm×2.0mmのガラス板に塗布・乾燥させた。Y・T REu化合物は塗膜内で結晶化することなく透明な蛍光層となった。
得られた蛍光層に紫外線(ブラックライト)を照射することによって、蛍光層は赤色光を発光した。
また、上記Y・T REu化合物は、トルエン・酢酸エチル系接着剤又はアクリル系塗料に混合することもでき、混合した塗料を塗布・乾燥することにより蛍光層を形成することができる。
更に、ポリプロピレンやポリエチレンの各樹脂の溶融体に、Y・T REu化合物を分散させた。Y・T REu化合物を分散した樹脂を冷却して、均一組成の透明な樹脂体が得られた。透明な樹脂体に紫外線(ブラックライト)を照射すると赤色を発光した。
【0061】
なお、フルオレニル2、ターフェニル5、フェニルエチニルフェニル6、スチルベニル8を置換基に持つY・T REu化合物は、下記式(13)~(16)に示されるものであり、これらの化合物は、上記のように結晶性であるが、発光特性のうち励起波長制御及び4つの配位子の拡張π電子系に取り囲まれた空間を利用する分子或いはイオン検出能を有するものである。
【0062】
【化25】JP0003975278B1_000019t.gif 式(13)
【0063】
【化26】JP0003975278B1_000020t.gif 式(14)
【0064】
【化27】JP0003975278B1_000021t.gif 式(15)
【0065】
【化28】JP0003975278B1_000022t.gif 式(16)
【0066】
これらのY・T REu化合物は、配位子π共役系を拡張型に替えることにより従来技術で限定されていた蛍光励起波長の制御が可能となった。即ち、Y・T REu化合物の励起波長はそれぞれ356,349,375,360/285nmであった。表3にY・T REu化合物の光学的性質を示す。
【0067】
【表3】JP0003975278B1_000023t.gif【0068】
また、前記置換基群に示すピリジン(4)やクラウンエーテル(10)を置換基として有するY・T REu化合物は、そのピリジン置換基が酸性条件下においてプロトネーションされ、配位子のエネルギー順位を変化させることにより、従来困難であった有機溶媒中のpH依存発光スイッチングON-OFF機能を有する。酸性でOFF、アルカリ性でONである。
上記のY・T REu化合物は、更に、白金や金等金属イオンとの錯形成能を有し、それらのイオンを補足した際にスイッチングがOFF或いはONとなる。これは水系においても錯体担持された膜や錯体そのものによって補足され検出しうる。
【0069】
また、前記置換基群に示すフェロセニル(9)置換基を有するY・T REu化合物はそのフェロセニル置換基が酸化還元条件下において価数が変化し、配位子のエネルギー順位を変化させることにより、従来困難であった有機溶媒中の酸化還元電位依存発光スイッチングON-OFF機能を有する。酸化状態でOFF、還元状態でONである。
【0070】
また、前記置換基群示すデンドリマー(n世代:nは任意)(11)置換基を有するY・T REu化合物は、発光強度が強く安定であるとともに、溶媒分散性や溶解性に優れ、他のイオン化学種の発光への影響が見られない。デンドリマーリンク部位はエーテル結合であるが他のリンカーでも良い。
【0071】
Yと Rを組み合わせて合成したY・T REu化合物の組み合わせ条件及び化合物の特性を表2の実施例3(2)、実施例3(3)、実施例3(4)、実施例3(5)、実施例3(6)、実施例3(7)、実施例3(8)、実施例3(9)、実施例3(10)に示す。
【0072】
(比較例2)
上記式(2)において、YがブチルアンモニウムでRがチオフェン基でありZが水素原子、YがピペリジニウムでRがパラメチルフェニル基でありZが水素原子の組み合わせで実施例3と同様の実験を行った。
得られたY・T REu化合物の特性を表2の比較例2(3)、比較例2(4)に示す。これらのY・T REu化合物は、発光強度は良好であるが、発光ON/OFF機能はなく、ポリマー基材分散性及び膜特性は悪い。
【実施例4】
【0073】
本発明に係る、下記式(3)で示されるユーロピウムジケトンキレート化合物及びユーロピウムジケトンキレート化合物を含有した蛍光材料の実施例について説明する。
【0074】
【化29】JP0003975278B1_000024t.gif 式(3)
【0075】
実施例のユーロピウムジケトンキレート化合物は、Xはヘテロ環カチオン性ポリマー、Zが水素原子、カチオン性オリゴマー又は置換基を有するカチオン性ヘテロ芳香族化合物であり、Rは芳香族化合物基、架橋芳香族基、若しくは二重結合を複数含む複素環化合物基、又はルキル基又はアルコキシ基であり、アニオンがリンカーRによって結合したユーロピウムジケトンキレートの2核体である。なお、Xの化合物群の各化合物とZ及びRの化合物群の各化合物及び置換基は、任意の組み合わせを採用することができる。
【0076】
式(3)においてXがピペリジニウムであり、Rがパラフェニレン基でありZが水素原子、リンカーRが下記の置換基群に示すような置換基とした化合物を例にとって、化合物及び化合物を蛍光材料に用いた蛍光層を調製し、評価した。
【0077】
【化30】JP0003975278B1_000025t.gif【0078】
上記化合物(錯体)の製法を図3の反応スキームを参照して説明する。
式(3)においてRがパラフェニレン基でありZが水素原子、リンカーRが下記式(17)で示されるビスジケトン配位子 1.0 mM のジメチルクロロメタン溶液 20 ミリリットル をメタノール-ジメチルクロロメタン 溶液 50 ミリリットル に滴下し、室温で10分間攪拌した(図3中、反応(7))。
【0079】
【化31】JP0003975278B1_000026t.gif 式(17)
【0080】
次いで、反応溶液に塩化ユウロピウム 0.50
mM のメタノール溶液 10 ミリリットルを滴下し更に10分間室温で攪拌した。更に、対カチオンとなる塩基としてピペリジン0.50
mM のジクロロメタン溶液を反応溶液に滴下し、更に室温で10時間攪拌した(図3中、反応(8))。
生成した沈殿を減圧下で濾過し、次いで水洗し副生成物の塩酸塩を取り除いた後、錯体を平均収率80%で得た。
【0081】
得られた錯体は、無色であり、紫外線(ブラックライト)の照射により赤色を発光した。
また、上記錯体は、ベンゼン、トルエン、ジクロロメタン、アセトン、クロロホルム、ヘキサンなどの溶媒に可溶であるが、エタノール、メタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒に難溶であり、又ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のプロトン性極性有機溶媒に易溶であった。また水には不溶であった。
【0082】
上記錯体 0.10 g をジメチルスルホキシド 10 ミリリットル
に溶解させ、2.0mm×2.0mmのガラス板に塗布・乾燥させた。錯体は塗膜内で結晶化することなく透明な蛍光層となった。蛍光層に紫外線(ブラックライト)照射によって、赤色光を発光した。
また、上記溶媒としてジメチルスルホキシドの代わりにエタノールを用いても同様の結果を得ることができた。
また、上記錯体はトルエン・酢酸エチル系接着剤又はアクリル系塗料に混合することもでき、混合した塗料を塗布・乾燥することにより蛍光層を形成することができる。
【0083】
上記錯体の特性を表4の実施例4(1)~実施例4(3)、実施例4(5)~実施例4(7)に示す。
ここで、ホストゲスト機能は、金属ピクレート塩による液液抽出を紫外可視吸収スペクトル測定により評価したものであり、○は完全に錯体が存在する有機溶媒側に抽出され溶媒が着色した状態、△は一部有機溶媒が着色した状態、×は全く抽出されず溶媒が着色しなかった状態を表す。
また、錯体形成能は、ルテニウムや白金等重金属塩と錯体が複核錯体を形成しうるか紫外可視吸収スペクトル測定により反応で評価したものであり、○は複核錯体が形成し新たな吸収が出現した場合、△は変化が見られた場合、×は全く変化が見られなかった場合を表す。
また、発光強度は、蛍光測定装置を用い評価したものであり、対照化合物の発光量子収率と比較したものであり、○は対照化合物に比べて強度が勝っているもの、△は同程度のもの、×は少々劣っているものを表す。
また、ポリマー基材分散性は、溶融ポリプロピレンやアラルダイト接着剤への溶解分散によって透明性を保っているか目視及び顕微鏡評価したものであり、○は透明性及び微粉状にならない状態、△は半透明で微粉末状に一部なっている状態、×は不透明であり微粉末状になっている状態を表す。
【0084】
【表4】JP0003975278B1_000027t.gif【0085】
また、式(3)で示される化合物(錯体)として、4つの架橋基(リンカー)により図4に示すような2核体を形成することもできる。
2核体はカチオンをゲストとして内部に捕捉する能力を有する。ゲストとしては、K、Na、Ca等の金属カチオンのほかCu、Ru等の遷移重金属カチオン、芳香族の有機カチオンや有機中性ゲストも捕捉することができる。錯体は、これら補足されたゲストによってEu発光強度が変化するので、ゲストの定性、定量分析に利用することもできる。特に錯体の架橋部位が芳香族化合物の場合、主にメチルピリジニウムなどの有機N-アルキル塩ゲストと相性がよく、架橋芳香族の電子状態がゲストとの錯化により変化し、配位子部位での励起エネルギーに空間を通して遠隔的に影響を与えるため、錯化すると発光強度に大きな変化が見られた。
【0086】
上記錯体の特性を表4の実施例4(4)に示す。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3