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明細書 :穿刺焼灼プランニング支援装置及びそのプログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5157024号 (P5157024)
公開番号 特開2009-233043 (P2009-233043A)
登録日 平成24年12月21日(2012.12.21)
発行日 平成25年3月6日(2013.3.6)
公開日 平成21年10月15日(2009.10.15)
発明の名称または考案の名称 穿刺焼灼プランニング支援装置及びそのプログラム
国際特許分類 A61B  19/00        (2006.01)
A61B  18/12        (2006.01)
FI A61B 19/00 502
A61B 17/39
請求項の数または発明の数 8
全頁数 11
出願番号 特願2008-081879 (P2008-081879)
出願日 平成20年3月26日(2008.3.26)
審査請求日 平成23年1月27日(2011.1.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
発明者または考案者 【氏名】藤江 正克
【氏名】小林 洋
【氏名】渡辺 広樹
個別代理人の代理人 【識別番号】100114524、【弁理士】、【氏名又は名称】榎本 英俊
審査官 【審査官】菅家 裕輔
参考文献・文献 特開2006-218237(JP,A)
特開2004-344491(JP,A)
特開2007-215672(JP,A)
調査した分野 A61B 19/00
A61B 18/12 - 18/16
G06T 19/00
G06F 17/00 - 19/00
G09B 9/00
特許請求の範囲 【請求項1】
生体組織の外側から内部のターゲットに向かって刺入されて当該ターゲットを焼灼する電極針の刺入条件と当該電極針への供給電力量について、モデルを使ったシミュレーションにより判定する穿刺焼灼プランニング支援装置であって、
前記電極針が前記ターゲット或いはその近傍に達したときの生体組織の変形状態を前記刺入条件から求める変形シミュレーション手段と、前記供給電力量による前記電極針の発熱量で焼灼すると仮定し、前記変形シミュレーション手段で求めた変形状態での前記生体組織内の温度分布を求める温度シミュレーション手段と、前記温度分布に基づいて前記刺入条件及び前記供給電力量の適否を判定する判定手段とを備えたことを特徴とする穿刺焼灼プランニング支援装置。
【請求項2】
前記判定手段では、前記ターゲット全域が所定の焼灼目標温度に達していないときに、前記刺入条件及び/又は前記供給電力量が不適当であると判定することを特徴とする請求項1記載の穿刺焼灼プランニング支援装置。
【請求項3】
前記判定手段では、前記生体組織内で予め設定された焼灼禁止領域の少なくとも一部が予め設定された禁止温度以上になるときに、前記刺入条件及び/又は前記供給電力量が不適当であると判定することを特徴とする請求項1又は2記載の穿刺焼灼プランニング支援装置。
【請求項4】
前記判定手段では、前記生体組織内で予め設定された焼灼禁止領域と所定の焼灼目標温度以上となる組織との最短離間距離が求められ、当該最短離間距離が所定の閾値未満になるときに、前記刺入条件及び/又は前記供給電力量が不適当であると判定することを特徴とする請求項1~の何れかに記載の穿刺焼灼プランニング支援装置。
【請求項5】
予め取得した前記生体組織の画像データから前記生体組織のモデルを作成するモデル作成手段を更に備えたことを特徴とする請求項1~の何れかに記載の穿刺焼灼プランニング支援装置。
【請求項6】
前記刺入条件は、前記電極針の刺入位置及び刺入角度であることを特徴とする請求項1~の何れかに記載の穿刺焼灼プランニング支援装置。
【請求項7】
前記刺入条件は、前記電極針の刺入位置、刺入角度及び刺入速度であることを特徴とする請求項1~の何れかに記載の穿刺焼灼プランニング支援装置。
【請求項8】
生体組織の外側から内部のターゲットに向かって刺入されて当該ターゲットを焼灼する電極針の刺入条件と当該電極針への供給電力量について、モデルを使ったシミュレーションにより判定する穿刺焼灼プランニング支援装置にインストールされるプログラムであって、
前記電極針が前記ターゲット或いはその近傍に達したときの生体組織の変形状態を前記刺入条件から求める変形シミュレーション手段と、前記供給電力量による前記電極針の発熱量で焼灼すると仮定し、前記変形シミュレーション手段で求めた変形状態での前記生体組織内の温度分布を求める温度シミュレーション手段と、前記温度分布に基づいて前記刺入条件及び前記供給電力量の適否を判定する判定手段として、前記穿刺焼灼プランニング支援装置内のコンピュータを機能させることを特徴とする穿刺焼灼プランニング支援装置用プログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、穿刺焼灼プランニング支援装置及びそのプログラム、並びに穿刺焼灼条件判定方法に係り、更に詳しくは、臓器等の生体組織の患部に焼灼治療を行う前に、生体組織に対する電極針の刺入位置や刺入角度等の穿刺条件と電極針の供給電力量の適否をシミュレーションにより判断する穿刺焼灼プランニング支援装置及びそのプログラム、並びに穿刺焼灼条件判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近時の医療において、患者への負担の少ない低侵襲治療が求められているが、その中でも、臓器の患部に針を刺して治療する穿刺治療法が注目を集めている。この穿刺治療法としては、例えば、肝臓がんの治療等に用いられるRFA(ラジオ波焼灼療法)がある。このRFAは、がん細胞に電極針を刺し、当該電極針の先端からラジオ波による高熱をがん細胞に与えることで、がん細胞を壊死させる療法である。ここで、がん細胞等のターゲットが臓器の内部に存在する場合、電極針を臓器表面から刺してその内部のターゲットに到達させなければならない。ところが、穿刺の対象となる肝臓等の臓器は軟組織により構成されるため、穿刺時における臓器への押圧力によって当該臓器が変形し、これに伴ってターゲットが移動変形してしまう。従って、電極針の先端をターゲットに正確に到達させるには、穿刺時の生体組織の変形を考慮した穿刺経路のプランニングをしなければならず、このプランニングは、相当の熟練度を要し、医師の経験と勘に頼るところが大きい。特に、最も柔らかい臓器の一つである肝臓は、熟練した医師であっても、穿刺経路のプランニングが難しいと言われている。また、RFAでは、ラジオ波によってターゲットに与えられる熱で当該ターゲットとなるがん細胞等の病巣部位を壊死させるが、電極針への供給電力量の大きさとしては、病巣部位を確実に壊死させる一方で、ターゲットの周囲に存在する血管等の器官を損傷しない大きさが要求される。この際、電極針によるターゲットの焼灼時には、穿刺による前述の臓器変形により、ターゲットが穿刺前の状態から移動変形してしまうため、当該移動変形後のターゲットの形状や血管等の器官の位置関係を把握しつつ、電極針の先端位置の周囲の温度分布を考慮しながら、電極針に供給すべき最適な電力量を決定する必要がある。
【0003】
ところで、先端が球状に展開するRFA穿刺針のエリアデータを画像データに重畳して表示する治療支援装置が特許文献1に開示されている。この治療支援装置は、種々のRFA穿刺針の中から使用者が所定の針を選択したときに、当該針の展開径をデータベースから読み出して展開針エリアデータを生成し、当該展開針エリアデータを超音波診断装置によって得られた患部画像に重ねて表示し、術前の焼灼範囲の確認を可能にするものである。

【特許文献1】特開2007-215672号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1の治療支援装置にあっては、展開針の展開範囲を確認するものに過ぎず、前述した穿刺時の臓器の変形を全く考慮していないばかりか、焼灼時におけるターゲット及びその周囲の温度分布をシミュレーションするものではない。従って、前記治療支援装置では、病巣部位となるターゲットの周囲に存在する器官の損傷を阻止しつつ病巣部位を確実に壊死させるという観点により、電極針の刺入条件や供給電力量について判定することができない。
【0005】
本発明は、以上のような課題に鑑みてして案出されたものであり、その目的は、病巣部位となるターゲットの周囲に存在する器官の損傷を阻止しつつ病巣部位を確実に壊死させるという観点により、電極針の刺入条件や供給電力量について判定することができる穿刺焼灼プランニング支援装置及びそのプログラム、並びに穿刺焼灼条件判定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、生体組織の外側から内部のターゲットに向かって刺入されて当該ターゲットを焼灼する電極針の刺入条件と当該電極針への供給電力量について、モデルを使ったシミュレーションにより判定する穿刺焼灼プランニング支援装置であって、
前記電極針が前記ターゲット或いはその近傍に達したときの生体組織の変形状態を前記刺入条件から求める変形シミュレーション手段と、前記供給電力量による前記電極針の発熱量で焼灼すると仮定し、前記変形シミュレーション手段で求めた変形状態での前記生体組織内の温度分布を求める温度シミュレーション手段と、前記温度分布に基づいて前記刺入条件及び前記供給電力量の適否を判定する判定手段とを備える、という構成を採っている。
【0007】
また、前記判定手段では、前記ターゲット全域が所定の焼灼目標温度に達していないときに、前記刺入条件及び/又は前記供給電力量が不適当であると判定する、という構成を採ることが好ましい。
【0008】
更に、前記判定手段では、前記生体組織内で予め設定された焼灼禁止領域の少なくとも一部が予め設定された禁止温度以上になるときに、前記刺入条件及び/又は前記供給電力量が不適当であると判定する、という構成を採るとよい。
【0009】
また、前記判定手段では、前記生体組織のうち前記ターゲットを除いた正常組織の中で前記焼灼目標温度以上となる高温の正常組織の総面積が求められ、当該総面積が所定の閾値を超えているときに、前記刺入条件及び/又は前記供給電力量が不適当であると判定する、という構成を採ることが好ましい。
【0010】
更に、前記判定手段では、前記生体組織内で予め設定された焼灼禁止領域と前記焼灼目標温度以上となる組織との最短離間距離が求められ、当該最短離間距離が所定の閾値未満になるときに、前記刺入条件及び/又は前記供給電力量が不適当であると判定する、という構成を採るとよい。
【0011】
また、予め取得した前記生体組織の画像データから前記生体組織のモデルを作成するモデル作成手段を更に備える、という構成を採用することが好ましい。
【0012】
更に、前記刺入条件を電極針の刺入位置及び刺入角度とすることができる。
【0013】
また、前記刺入条件を電極針の刺入位置、刺入角度及び刺入速度とすることもできる。
【0014】
更に、本発明は、生体組織の外側から内部のターゲットに向かって刺入されて当該ターゲットを焼灼する電極針の刺入条件と当該電極針への供給電力量について、モデルを使ったシミュレーションにより判定する穿刺焼灼プランニング支援装置にインストールされるプログラムであって、
前記電極針が前記ターゲット或いはその近傍に達したときの生体組織の変形状態を前記刺入条件から求める変形シミュレーション手段と、前記供給電力量による前記電極針の発熱量で焼灼すると仮定し、前記変形シミュレーション手段で求めた変形状態での前記生体組織内の温度分布を求める温度シミュレーション手段と、前記温度分布に基づいて前記刺入条件及び前記供給電力量の適否を判定する判定手段として、前記穿刺焼灼プランニング支援装置内のコンピュータを機能させる、という構成を採っている。
【0015】
また、本発明は、生体組織の外側から内部のターゲットに向かって刺入されて当該ターゲットを焼灼する電極針の刺入条件と当該電極針への供給電力量について、モデルを使ったシミュレーションにより判定する方法であって、
前記電極針が前記ターゲット或いはその近傍に達したときの生体組織の変形状態を前記刺入条件から求める変形状態算出ステップと、前記供給電力量による前記電極針の発熱量で焼灼すると仮定し、前記変形シミュレーション手段で求めた変形状態での前記生体組織内の温度分布を求める温度分布算出ステップと、前記温度分布に基づいて前記刺入条件及び前記供給電力量の適否を判定する判定ステップとを順に行う、という手法を採っている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、予め設定した電極針の刺入条件によって穿刺したときの生体組織の変形状態がシミュレーションされ、その変形状態の下で、予め設定した電極針への供給電力量で焼灼したときの生体組織の温度分布が求められ、当該温度分布から前記刺入条件及び前記供給電力量の適否が判定されるため、病巣部位となるターゲットの周囲に存在する器官の損傷を阻止しつつ病巣部位を確実に壊死させるという観点により、電極針の刺入条件や供給電力量についての判定が可能になる。
【0017】
特に、モデル作成手段を備えることで、焼灼治療の対象となる患者のモデルに基づいて刺入条件及び供給電力量を判定することができ、当該判定の精度を一層向上させることができる。
【0018】
また、刺入条件に刺入速度を加えることで、生体組織の粘弾性特性をも考慮することができ、刺入条件に対する一層正確な判定が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1には、本発明の実施形態に係る穿刺焼灼プランニング支援装置の機能ブロック図が示されている。この図において、前記穿刺焼灼プランニング支援装置10は、生体組織としての臓器に電極針を刺入してターゲットとなるがん細胞等の病巣部位を焼灼壊死させる焼灼治療の前に、予め設定した刺入条件及び電極針への供給電力量を入力すると、これら入力条件の下で、モデルを使って穿刺による臓器の変形状態及び温度分布がシミュレーションされ、前記入力条件の適否が判定されるようになっている。この穿刺焼灼プランニング支援装置10は、所定のコンピュータからなり、当該コンピュータを以下の手段として機能させるプログラムがインストールされている。なお、本実施形態では、前記刺入条件として、電極針を刺す臓器表面の位置である刺入位置と、電極針を臓器表面に刺入する際の電極針の角度となる刺入角度が用いられる。
【0021】
前記穿刺焼灼プランニング支援装置10は、予め取得した臓器の画像データから当該臓器のモデルを作成するモデル作成手段11と、予め入力した前記刺入条件から、モデルを使ったシミュレーションにより、電極針が臓器内のターゲット或いはその近傍に達したときの臓器の変形状態を求める変形シミュレーション手段12と、前記供給電力量による電極針からの発熱量で焼灼すると仮定し、変形シミュレーション手段12で求めた変形状態での臓器内の温度分布を求める温度シミュレーション手段13と、温度シミュレーション手段13で求めた温度分布に基づいて前記入力条件の適否を判定する判定手段15とを備えている。
【0022】
前記モデル作成手段11は、臓器の弾性率やポアソン比等の基礎データが臓器の構成組織(実質細胞、血管、神経等)毎に記憶された記憶部18と、磁気画像共鳴診断装置(MRI)、コンピュータ断層撮影装置(CTスキャン)、超音波画像診断装置等の撮像装置Cで撮像した画像データに基づき、臓器の全体形状及び各構成組織の位置を求める形状位置特定部19と、形状位置特定部19で求められた臓器の形状に基づいて臓器を複数の要素に分割する要素分割部20と、記憶部18で記憶された前記基礎データに基づいて外力と変位の関係を要素毎に求め、臓器に作用する外力ベクトルと当該臓器の変位ベクトルとの関係を表す剛体方程式を有限要素法で求める剛体方程式決定部21とを備えている。
【0023】
前記変形シミュレーション手段12では、図2(A)に示されるように、予め入力された刺入位置S及び刺入角度θのときに、モデル作成手段11で作成された臓器のモデル26を使って、がん細胞等のターゲットT或いはその近傍に電極針25の先端が達したときの臓器の変形状態が求められる。すなわち、図2(A)、(B)に示されるように、穿刺時において、肝臓のように軟組織で構成された臓器は、電極針25で押圧されることで変形するとともに、当該変形により、臓器内のターゲットTの形状が変化しながら移動することになる。このとき、ターゲットTの周囲に存在する血管等、焼灼してはならない正常器官からなる焼灼禁止領域Bについても、同様に移動変位する。そこで、変形シミュレーション手段12では、電極針25での焼灼時点におけるターゲットT及び焼灼禁止領域Bを含む臓器の各部位の位置及び形状が、モデル作成手段11の剛体方程式決定部21で求められた剛体方程式を使って算出される。詳細については後述する。
【0024】
前記温度シミュレーション手段13では、予め記憶された後述の熱伝導モデル式に、予め任意に入力された電極針25への供給電力量を代入することにより、変形シミュレーション手段12で求めた変形状態における臓器内の各位置の温度が求められる。すなわち、温度シミュレーション手段13では、ターゲットT及び焼灼禁止領域Bを含む臓器内の温度分布が求められる。
【0025】
前記判定手段15では、ターゲットTの全域が予め設定された焼灼目標温度に達しているか(条件1)、焼灼禁止部位Bの全域が予め設定された禁止温度未満になっているか(条件2)、臓器内の組織のうち、ターゲットTを除いた正常組織の中で前記焼灼目標温度以上となる高温の正常組織の総面積が所定の閾値以下になっているか(条件3)、焼灼禁止領域Bと前記焼灼目標温度以上となる組織との最短離間距離が所定の閾値以上になっているかの観点により、入力条件である前記刺入条件と前記供給電力量の適否について判定される。つまり、判定手段15では、前記条件1~4までを総合的に判断し、全ての条件をクリアした入力条件が適当であると判定される。なお、判定の対象となる臓器によっては、前記条件1~4の何れか条件を省略して入力条件の適否を判定することもできる。但し、前記条件1及び2は、必須条件にすることが好ましい。
【0026】
次に、本実施形態の穿刺焼灼プランニング支援装置10で行われる処理について、図3のフローチャートを用いながら以下に説明する。なお、以下においては、処理対象となる臓器を肝臓として説明するが、これに限定されるものではない。
【0027】
先ず、医師等によって、刺入条件として任意に設定した刺入位置S及び刺入角度θと、電極針25の供給電力量Pとが装置10内に入力される。
【0028】
また、モデル作成手段11において、前記撮像装置Cで撮像した画像データに基づき、焼灼治療の対象となる患者の肝臓が以下の手順でモデル化される(モデル作成ステップS101)。
【0029】
ここで、学術的に解明されている一般的なヒトの肝臓の弾性率及びポアソン比の基礎データが、肝細胞(肝実質細胞)、血管、神経等の肝臓の構成組織毎に記憶部18に記憶されている。
【0030】
そして、患者の肝臓が撮像装置Cで撮像された後、形状位置特定部19において、撮像装置Cの画像データから肝臓の形状と当該肝臓の各構成組織の位置が次のように設定される。すなわち、前記画像データに基づいて、コンピュータを使った公知の画像処理により、穿刺前の肝臓の三次元形状若しくは所定断面の二次元形状が導出され、且つ、その中の構成組織(肝実質細胞、血管、神経等)の位置が特定される。なお、肝臓の形状及び/又は各構成組織の位置は、前述の自動処理でなく、前記画像データを視認した医師等による手入力で設定してもよい。また、がん細胞等のターゲットTや焼灼してはならない血管等の焼灼禁止領域Bの特定についても、同様に前記画像データを視認した医師等によって行われる。
【0031】
次に、要素分割部20において、有限要素法における要素Mの形状と当該各要素Mの節点(ノードN)の数とを指定することで、デラウニー法等の公知の手法により、形状位置特定部19で求めた肝臓の形状から、肝臓全体を複数領域に分割し、メッシュ(図2(A)参照)が生成される。なお、図2(A)においては、図面の錯綜を回避するため、肝臓モデル26の一部領域のみ要素Mを記載し、残りの領域における要素Mの記載は省略している。
【0032】
その後、剛体方程式決定部21では、以下のように有限要素法を使って剛体方程式が決定される。すなわち、先ず、形状位置特定部19で求められた肝臓の各構成組織の位置と、要素分割部20で決定された穿刺前の各要素Mとを対比することにより、各要素Mが、どの構成組織に該当するのかが特定される。そして、各要素Mそれぞれについて、記憶部18で構成組織毎に記憶された肝臓の弾性率及びポアソン比のうち該当する組織のものが選択され、公知の構造計算によって、各要素Mの周囲のノードNにかかる荷重と当該要素Mの変形情報との関係式が求められる。ここでの変形情報は、要素Mを構成するノードNの変位と、当該要素M内に作用する応力及びひずみを指す。そして、前記関係式から肝臓モデル全体の剛性方程式が求められる。ここで、剛性方程式は、各ノードNに作用する外力ベクトルF、全体の剛性マトリックスK、ノードNの変位ベクトルUとすると、次式(1)の関係で表せる。
【数1】
JP0005157024B2_000002t.gif
以上の剛性方程式により、各ノードNに作用する強制変位が特定できれば、そのノードNに作用する外力、各ノードNの変位、及び各要素Mの応力が算出可能となる。
【0033】
また、作成された肝臓モデル26について、肝臓表面における電極針25の刺入位置Sに該当する刺入ノードNが特定され、肝臓内部のターゲットTと焼灼禁止領域Bを構成するノードNがそれぞれ特定される。
【0034】
次に、変形シミュレーション手段12により、モデル作成手段11で作成された肝臓モデル26を使ってシミュレーションを行うことにより、電極針25の先端がターゲットT若しくはその近傍に達したときの肝臓全体の変形状態が、以下のように求められる(変形状態算出ステップS102)。
【0035】
ここでは、予め設定した刺入角度θで電極針が一定方向に一定速度で刺入ノードNを押圧し、当該刺入ノードNが強制変位すると仮定して演算が行われる。つまり、肝臓モデル26内に作用する外力は、刺入ノードNのみ一定方向しか作用せず、肝臓表面が切断された後は電極針が撓ますに直線移動するものと仮定される。この仮定では、外力ベクトルFが一定の大きさ及び方向となるため、上式(1)の剛体方程式を解くことで、臓器内の各ノードNの位置が演算される。これに伴い、ターゲットTを構成する各ノードNによって囲まれる複数のメッシュMの位置及び形状と、焼灼禁止領域Bを構成する各ノードNによって囲まれる複数のメッシュMの位置及び形状とが求められ、ターゲットTと焼灼禁止領域Bを含む臓器の変形状態がシミュレーションされる。
【0036】
次いで、温度シミュレーション手段13により、予め設定した電極針25への供給電力量Pが次式(2)の熱伝導モデル式に代入され、変形状態の臓器内の温度分布が算出される(温度分布算出ステップS103)。
【数2】
JP0005157024B2_000003t.gif
この式において、ρは肝臓の密度、cは肝臓の比熱、θ(x,t)は、肝臓内部の適当な位置に設定された座標系から見た任意要素に対する位置ベクトルxと、時間tとで表される肝臓温度の関数、λは肝臓の熱伝導率、Q(P)は、電極針25への供給電力量Pと肝臓の電気伝導率によって求まる電極針25の発熱量、ρは血液の密度、cは血液の比熱、wは血液環流率、θは血液の温度、Qは肝臓の産熱量である。
【0037】
すなわち、ここでは、変形シミュレーション手段12での演算により、電極針25の刺入条件から、ターゲットT内或いはターゲットTに最も近接した地点のどこに電極針25の先端位置が存在するのか判明するので、当該先端位置からの離間距離に応じて上式(2)から、変形状態における肝臓内の各位置の温度が求まることになる。そして、同一となる温度部分毎に肝臓を領域分けした温度分布が得られる。なお、ここでは、電極針25で加熱した直後となる所定時間の温度が求められる。従って、上式(2)では、θ(x)以外は、Q(P)を含めて全て定数となり、上式(2)の方程式を解くことで、肝臓内の各位置xの温度θが求められる。
【0038】
そして、判定手段15により、前記温度分布に基づき、前記入力条件の適否が次の手順を経て判定される(判定ステップS104~S114)。
【0039】
先ず、ターゲットTの全域が、ターゲットTであるがん細胞等の病巣を壊死させる焼灼目標温度以上になっているか否かが判断される(ステップS104)。ここで、ターゲットTの少なくとも一部が、前記焼灼目標温度に達していなければ、入力条件が不適当であると判定される(ステップS105)。
【0040】
そして、ターゲットTの全域が前記焼灼目標温度以上であると判断されると、焼灼禁止領域Bの全域が、正常な組織器官に影響を与える温度の最低値である禁止温度よりも低い温度になっているか否かが判断される(ステップS106)。ここで、焼灼禁止領域Bの少なくとも一部が、前記禁止温度以上になっていれば、入力条件が不適当であると判定される(ステップS107)。
【0041】
次に、焼灼禁止領域Bの全域が前記禁止温度未満であると判断されると、病巣のない正常組織のうち前記焼灼目標温度以上となる高温の正常組織の総面積、すなわち、ターゲットTを除いた肝臓の部分のうち前記焼灼目標温度以上となる部分の総面積が求められる(ステップS108)。そして、高温の正常組織の総面積が所定の閾値(面積閾値)以下になっているか否かが判断される(ステップS109)。ここで、高温の正常組織の総面積が前記面積閾値を超えていれば、入力条件が不適当であると判定される(ステップS110)。
【0042】
最後に、前記高温の正常組織の総面積が前記面積閾値以下になっていると判断されると、焼灼禁止領域Bと、焼灼目標温度以上となる肝臓内の全ての組織である高温組織との最短離間距離が求められる(ステップS111)。つまり、ここでの高温組織は、ターゲットT及び高温の正常組織からなる。そして、前記最短離間距離が所定の閾値(距離閾値)以上になっているか否かが判断される(ステップS112)。ここで、最短離間距離が前記距離閾値未満であれば、入力条件が不適当であると判定される(ステップS113)一方、そうでなければ、入力条件が適当であると判定される(ステップS114)。
【0043】
以上の各ステップS104、S106、S109、S112において、入力条件が不適当と判定された場合の要因としては、次の点が挙げられる。すなわち、供給電力量の大きさが不適当であるため、ターゲットTの周囲の組織が、損傷を与える程度に高温になるとシミュレーションされ、或いは、ターゲットTが、効果的な焼灼治療が出来ない程度に低温になるとシミュレーションされたためである。また、刺入条件が不適当であるため、そのときの肝臓の変形により、ターゲットT及び焼灼禁止領域Bに対する電極針25の先端位置の関係やターゲットT及び焼灼禁止領域Bの変形状態が好ましくないとシミュレーションされたためである。このように入力条件が不適当と判定された場合には、入力条件を変えて前述の処理を再び行うことで、ターゲットTの周辺組織を損傷させずにターゲットTの病巣を確実に壊死させる最適な入力条件を探し出すことができる。
【0044】
従って、このような実施形態によれば、電極針25で穿刺した際の臓器の変形によるターゲットTや焼灼禁止領域Bの変形や変位を考慮しながら、電極針25の刺入条件や供給電力量の適否が判定されることから、効果的な焼灼治療のための刺入条件や供給電力量を治療前に正確に把握することができ、穿刺による焼灼治療のプランニングに好適となる。
【0045】
なお、前記実施形態の変形例として、刺入位置P及び刺入角度θの他に刺入速度を刺入条件として予め入力し、刺入速度を含めた刺入条件及び前記供給電力量の適否を判定可能にする構成を採用することもできる。この場合は、モデル作成手段11で、臓器の弾性率やポアソン比の他に粘弾性係数が基礎データとして臓器の構成組織毎に記憶され、刺入速度も考慮したモデル26が作成される。このときの方程式は、粘弾性モデルを使った次式となる。
【数3】
JP0005157024B2_000004t.gif
ここで、Cは、粘性マトリックスである。
この変形例においては、上式(1)に代えて上式(3)が使用される。その他は、前記実施形態と同様である。
【0046】
また、前記実施形態及び変形例について、種々異なる入力条件を一度に複数入力し、若しくは、複数の入力条件を装置内で自動的に生成し、前記判定手段15で、最も良い結果が得られた入力条件を最適条件として呈示するようにしてもよい。
【0047】
更に、撮像装置Cによる撮像データを使って臓器モデル26を作成せずに、所定の臓器モデル26を予め装置内に記憶させることで、前記モデル作成手段11の省略も可能である。
【0048】
その他、本発明における装置各部の構成は図示構成例に限定されるものではなく、実質的に同様の作用を奏する限りにおいて、種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本実施形態に係る穿刺焼灼プランニング支援装置の機能ブロック図。
【図2】(A)は、有限要素法上のメッシュとノードを説明するための臓器(肝臓)の概念図であり、(B)は、(A)に対する変形状態を説明するための概念図である。
【図3】前記穿刺焼灼プランニング装置での処理手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0050】
10 穿刺焼灼プランニング支援装置
11 モデル作成手段
12 変形シミュレーション手段
13 温度シミュレーション手段
15 判定手段
25 電極針
26 モデル
B 焼灼禁止領域
S 刺入位置
T ターゲット
θ 刺入角度
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2