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明細書 :蛍光体及びランプ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5216993号 (P5216993)
公開番号 特開2008-163061 (P2008-163061A)
登録日 平成25年3月15日(2013.3.15)
発行日 平成25年6月19日(2013.6.19)
公開日 平成20年7月17日(2008.7.17)
発明の名称または考案の名称 蛍光体及びランプ
国際特許分類 C09K  11/79        (2006.01)
H01L  33/00        (2010.01)
FI C09K 11/79 CQD
H01L 33/00
請求項の数または発明の数 3
全頁数 10
出願番号 特願2006-350724 (P2006-350724)
出願日 平成18年12月27日(2006.12.27)
審査請求日 平成21年12月1日(2009.12.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
発明者または考案者 【氏名】植田 和茂
個別代理人の代理人 【識別番号】100112771、【弁理士】、【氏名又は名称】内田 勝
審査官 【審査官】井上 恵理
参考文献・文献 国際公開第2005/112135(WO,A1)
Journal of Alloys and Compounds,1998年,268,272-277
調査した分野 C09K 11/00-11/89
CA/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
L(28+x)/3(Si6O24-xNx)O2:R(Lはランタノイドであり、0<x≦2。RはGd及びTbから選ばれるいずれか1つ又は双方であり、発光中心となる)で表わされることを特徴とする蛍光体。
【請求項2】
前記式中Rの元素の含有量が、Lの元素の個数の内数として0.01%~40%の範囲にあることを特徴とする請求項1記載の蛍光体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の蛍光体を、紫外線源又は可視光源に用いることを特徴とするランプ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体及びランプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無機化合物を母体(蛍光体母体)とし、この母体に蛍光を放ち得るイオンを発光中心(附活剤)として添加した蛍光体が多数知られている。このような蛍光体は、電子線、X線、紫外線あるいは可視光等の照射や、電界の印加などの外部励起手段によって、紫外~可視~赤外の光を放つ性質を有するため、数多くの光電変換素子又は光電変換機器等に応用されている。
上記蛍光体の母体となる無機化合物の中の代表的な化合物は無機酸化物である。
【0003】
一方、最近、白色LED用の母体として、無機窒化物や無機酸窒化物が注目され、有効な幾つかの材料が見出されている。
前者の無機窒化物を母体とする蛍光体の多くは、合成時の窒化反応において、大気圧以上の高圧と高温を条件とするため、大型の高圧加熱装置が必要である。このため、大型装置の設備投資を必要とせず、また、ランニングコストの大きくない、大気圧程度の圧力下で簡便な装置により合成できる酸窒化物蛍光体材料が望まれている。後者の無機酸窒化物の一例としてサイアロンなどの無機酸窒化物蛍光体を挙げることができる。
【0004】
一方、蛍光体の発光中心イオンについては、例えば、蛍光灯で用いられている蛍光体として、SbやMnを発光中心として添加したアパタイト型ハロ燐酸カルシウム(例えば、Ca(POF)が古くから知られている。このアパタイト型ハロ燐酸カルシウムは、可視光効率の高さと安定性から幅広く使用されてきた。
しかし、このSbやMnを発光中心として添加したアパタイト型ハロ燐酸カルシウムは、赤色領域の不足による演色性不良という欠点がある。
【0005】
なお、現在広く利用されている蛍光灯は、紫外線発生源としての水銀を含み、環境汚染や健康への影響が懸念されており、脱水銀の照明の開発が望まれている。その一つの解決策として、水銀の輝線以外の紫外線を放出する紫外線発生源の開発が求められている。
【0006】
また、同じアパタイト型ハロ燐酸塩に、例えばEu等の、発光の半値幅の狭い希土類元素を発光中心として添加したアルカリ土類金属ハロ燐酸アパタイト型蛍光体が、発光ダイオード用の蛍光体として研究開発されている。(例えば、特許文献1参照)。

【特許文献1】特開2005-340748号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の希土類元素を発光中心として添加したアルカリ土類金属ハロ燐酸アパタイト型蛍光体は、蛍光灯の管壁に蛍光膜を塗布した後、有機バインダを揮散させるためのベーキング工程で発光効率の低下が起こる。この原因は、還元雰囲気で焼成された価数の変化しやすいEu2+等の発光中心が部分的に酸化されることによるものであり、このとき、ベーキング温度を低下させると、有機バインダの不完全燃焼により遊離した炭素が蛍光体膜中に残留して着色するため、効率が低下する(蛍光灯作製時の劣化)。
また、上記アルカリ土類金属ハロ燐酸アパタイト型蛍光体は、燐酸骨格を有するため、放電ガスに暴露されることによる結晶構造の変化により効率が低下する(長時間の劣化)。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、例えば蛍光灯に用いるときに蛍光体の劣化が少ない、新規な希土類元素を発光中心とするアパタイト型蛍光体及びランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る蛍光体は、L(28+x)/3(Si6O24-xNx)O2:R(Lはランタノイドであり、0<x≦2。RはGd及びTbから選ばれるいずれか1つ又は双方であり、発光中心となる)で表わされることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る蛍光体は、好ましくは、前記式中Rの元素の含有量が、Lの元素の個数の内数として0.01%~40%の範囲にあることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るランプは、上記の蛍光体を、紫外線源又は可視光源に用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る蛍光体は、L(28+x)/3(Si6O24-xNx)O2:R(Lはランタノイドであり、0<x≦2。RはGd及びTbから選ばれるいずれか1つ又は双方であり、発光中心となる)で表わされる蛍光体であるため、例えば蛍光灯に用いるときに蛍光体の劣化が少ない。
また、本発明に係るランプは、上記の蛍光体を紫外線源又は可視光源に用いるため、上記の蛍光体の効果を好適に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の形態について、以下に説明する。
【0015】
本実施の形態に係る蛍光体は、L(28+x)/3(Si24-x)O:Rで表される。
ここで、Lはランタノイド及びYからなる群から選ばれる1又は2以上の元素であり、0<x≦2である。Rはランタノイド及びYからなる群から選ばれる、Lとは異なる1又は2以上の主として3価の元素であり、発光中心となる。
本実施の形態に係る蛍光体は、従来の蛍光灯で用いられていた蛍光体の母体を構成するアパタイト型ハロ燐酸カルシウム(Ca(POF)のCaがLに、PがSi(珪素)に、FがO(酸素)に、そしてOの一部がN(窒素)に、それぞれ置換されたアパタイト構造を有する酸窒化物蛍光体である。
【0016】
発光中心となるRは、特に限定するものではないが、Ce、Pr、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Er及びTmからなる群から選ばれた1又は2以上の元素が好ましく、青色、緑色、赤色、紫外線の発光を得ることができる。
RとしてTbを用いると緑色発光を好適に得ることができ、RとしてGdを用いると良好な紫外線発光強度を得ることができる。この紫外発光は、人の健康への影響が大きい短波長紫外線(UV-C 波長100nm~280nm)を吸収して、近紫外線(UV-B 波長280nm~315nm)、中波長紫外線(UV-A 波長315nm~400nm)に変換するものであり、水銀などのガスの放電では得られない紫外線発光を得ることができる。
【0017】
発光中心となるRの元素の含有量が、Lの元素の個数の内数として0.01%~40%の範囲にあることが好ましい。
【0018】
Lが例えばLa及びYの同じ個数の2元素で構成され、x=2であり、Rが例えばTbであってLの元素の個数の内数として20%の場合、蛍光体は(La0.40.4Tb0.210(Si22)Oで表される。
【0019】
上記の蛍光体は、発光中心となる希土類元素Rが主に3価であるため、蛍光灯作製時の蛍光体の劣化が軽減される。また、酸窒化物型であるため、蛍光体の結晶構造の変化による長時間の劣化が軽減される。
【0020】
つぎに、本実施の形態に係るランプは、上記本実施の形態に係る蛍光体を、例えば蛍光灯の場合の水銀に変えて紫外線源又は可視光源に用いたものである。
本実施の形態に係るランプによれば、上記の蛍光体の効果を好適に得ることができる。また、紫外線放電源に水銀を用いるときに生じうる環境汚染や健康への影響が少ない。また、水銀などのガスによる放電ではない固体による安定な紫外線発光を得ることができる。
【0021】
本実施の形態に係る蛍光体は、原料を化学量論比に調製し、従来公知の固相反応法で合成することができる。また、従来の酸窒化物蛍光体と異なり、大型の高圧加熱装置を必要とせず、大気圧程度の圧力下で簡便な加熱装置により蛍光体を合成することができる。
【0022】
以上説明した本実施の形態に関わらず、本発明の蛍光体は、X線や紫外線などの光を照射し、蛍光体を発色させる光励起蛍光体材料として、一般的な蛍光灯用の材料や蛍光顔料等への応用が可能である。また、高速・低速電子線励起蛍光体材料として、ブラウン管などの発光管を始めとする蛍光体を被着した陽極と電子銃からなる蛍光表示装置(VFD)、又は電界放出形陰極を電子源に用いた表示装置(FED)等に用いることができる。また、高・低電界励起蛍光体材料として、蛍光体を透明電極等で挟み込み、電極間に直流又は交流電界を加えて発光させる、無機ELデバイス用の蛍光体として用いることができる。
【実施例1】
【0023】
実施例を挙げて、本発明をさらに説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0024】
(実施例1~実施例4)
母体原料として、実施例1及び実施例2ではLaを、また、実施例3及び実施例4ではYを、をそれぞれ用いるとともに、各実施例共通にSiO、Siを使用した。また、発光中心原料として、実施例1及び実施例3ではTbを、また、実施例2及び実施例4ではGdをそれぞれ用いた。実施例1~実施例4のいずれの場合も、蛍光体の式中x=2、すなわち窒素元素の個数が2である。なお、実施例1では、Tbの濃度を0.5mol%、1.0mol%、3.0mol%、5.0mol%、10.0mol%、15.0mol%、20.0mol%、30.0mol%、40.0mol%と変化させた。同様に、実施例2では、Gdの濃度を1.0mol%、5.0mol%、7.0mol%、10.0mol%、15.0mol%、20.0mol%と変化させ、実施例3では、Tbの濃度を5.0mol%、10.0mol%、15.0mol%、20.0mol%、25.0mol%、30.0mol%と変化させ、実施例4では、Gdの濃度を1.0mol%、5.0mol%、7.0mol%、10.0mol%、15.0mol%、20.0mol%と変化させた。
各原料について所定量(母体原料については化学量論比)を秤量後、充分に混合し、高周波炉で1500~1600℃で4~8時間焼成した。焼成時の高周波炉の雰囲気は窒素とした。
【0025】
図1にCu-Kα線をX線源として用いて測定した実施例1~実施例4の蛍光体(実施例1 La10(Si22)O:Tb、実施例2 La10(Si22)O:Gd、実施例3 Y10(Si22)O:Tb、実施例4 Y10(Si22)O:Gd)のX線回折パターンを示す。
いずれの蛍光体(試料)も文献で報告されている結晶構造から計算されたシミュレーションのパターンとほぼ同一で、単一相であり、不純物は観察されなかった。
【0026】
図2に実施例1及び実施例2の蛍光体並びに発光中心無添加の蛍光体について紫外・可視分光光度計で測定した拡散反射スペクトルから求めた光吸収スペクトルを示す。また、図3に実施例3及び実施例4の蛍光体並びに発光中心無添加の蛍光体について同様の光吸収スペクトルを示す。
可視光領域では、いずれの実施例においても、ほぼ一定の低い光吸収を示し、蛍光体はいずれも薄い灰白色であった。また、添加した元素による色の変化はほとんど観察されなかった。
【0027】
図4に実施例1~実施例4の蛍光体と市販蛍光体(LaPO:Ce、Tb)を、蛍光光度計で励起波長を254nmとして測定した発光スペクトルを示す。実施例1の蛍光体(La10(Si22)O:Tb)は4つピークを示し、その波長は約490、545、585、620nmであった。また、実施例1の蛍光体は緑色の発光であった。一方、実施例2の蛍光体(La10(Si22)O:Gd)は、ピーク波長が約315nmにピークを有する紫外発光であった。
【0028】
図5に実施例1~実施例4の蛍光体の発光相対強度の濃度依存性を示す。実施例1の蛍光体の最適なTb濃度は、20.0mol%であり、実施例2の蛍光体の最適なGd濃度は、7.0mol%であった。
【0029】
(実施例5、実施例6)
実施例5及び実施例6としてそれぞれ母体のLとしてLa及びYの2元素を用いるとともに、発光中心の元素Rとして実施例5ではTbを20.0mol%、実施例6ではGdを7.0mol%用いた。各実施例において、Yの濃度は0.0mol%、25.0mol%、50.0mol%、75.0mol%、100.0mol%とした。Laの濃度は、Y及びTbの濃度によって規定される残分濃度とした。実施例1~4と同様な方法で合成を行い、実施例5、6の蛍光体を作製しそれらの蛍光評価を行った。
図6に実施例5、6の蛍光体(実施例5 {(La1-y0.80Tb0.2010(Si22)O、実施例6 {(La1-y0.93Gd0.0710(Si22)O)の発光相対強度の濃度依存性を示す。
【0030】
(実施例7)
実施例7として{(La1-zCe0.80Tb0.2010(Si22)O蛍光体を、発光中心となるRとしてのTbの濃度を20.0mol%、Ceの濃度を1.0mol%(z=0.01)、3.0mol%(z=0.03)、5.0mol%(z=0.05)、7.0mol%(z=0.07)として、実施例1~6と同様な方法で合成し、それらの蛍光評価を行った。
図7に実施例7の蛍光体の励起スペクトルを示す。また、図8に励起光254nm及び365nm照射下での実施例7の蛍光体の発光相対強度濃度依存性を示す。
【0031】
(実施例8~実施例18)
実施例8~実施例18の蛍光体として、表1の組成のものを作製しそれらの蛍光測定を行った。いずれも、母体材料としてLa又はYとSiOとSiを使用し、発光中心材料として、CeO、Pr11、Ln(Ln=Eu、Dy、Tm、Sm)を用いた。前記各原料の所定量を秤量後、充分に混合し、高周波炉で1500~1600℃で4~8時間焼成した。発光中心の元素濃度は全て、5.0mol%とし、焼成時の高周波炉の雰囲気は窒素とした。
これら実施例8~実施例18の蛍光体の蛍光スペクトルのピーク波長を表1にまとめて示す。
【0032】
【表1】
JP0005216993B2_000002t.gif

【0033】
(実施例19、実施例20)
母体原料としてLaとSiOとSiを用い、発光中心原料として、Tbを用い、酸素と窒素の比を変えた(La0.8Tb0.2(28+x)/3(Si24-x)O蛍光体を作製した。酸素と窒素の比の変更は、実施例19では原料のSiOとSiの比を変えて行い、実施例20では(La0.8Tb0.210(Si22)Oを酸化することで行った。各サンプルは前記各原料の所定量を秤量後、充分に混合し、高周波炉で1500~1600℃で4~8時間焼成した。実施例20の酸化はアルゴン・酸素混合雰囲気中で300~700℃で1時間アニールすることによって行った。
図9に実施例19及び実施例20の蛍光体の励起光254nm照射下での相対蛍光強度を示す。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施例1~実施例4の蛍光体のX線回折パターンを示す図である。
【図2】実施例1及び実施例2の蛍光体の拡散反射スペクトルから求めた光吸収スペクトルを示す図である。
【図3】実施例3及び実施例4の蛍光体の拡散反射スペクトルから求めた光吸収スペクトルを示す図である。
【図4】実施例1~実施例4の蛍光体の発光スペクトルを示す図である。
【図5】実施例1~実施例4の蛍光体の発光相対強度の濃度依存性を示す図である。
【図6】実施例5、6の蛍光体の発光相対強度の濃度依存性を示す図である。
【図7】実施例7の蛍光体の励起スペクトルを示す図である。
【図8】実施例7の蛍光体の発光相対強度濃度依存性を示す図である。
【図9】実施例19及び実施例20の蛍光体の相対蛍光強度を示す図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
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