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明細書 :真空アーク放電発生方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5023332号 (P5023332)
公開番号 特開2008-210733 (P2008-210733A)
登録日 平成24年6月29日(2012.6.29)
発行日 平成24年9月12日(2012.9.12)
公開日 平成20年9月11日(2008.9.11)
発明の名称または考案の名称 真空アーク放電発生方法
国際特許分類 H05H   1/54        (2006.01)
FI H05H 1/54
請求項の数または発明の数 9
全頁数 9
出願番号 特願2007-048406 (P2007-048406)
出願日 平成19年2月28日(2007.2.28)
審査請求日 平成21年11月25日(2009.11.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
発明者または考案者 【氏名】豊田 和弘
【氏名】趙 孟佑
【氏名】坂本 裕太
個別代理人の代理人 【識別番号】100092347、【弁理士】、【氏名又は名称】尾仲 一宗
審査官 【審査官】藤本 加代子
参考文献・文献 特開昭62-232880(JP,A)
特開平09-124808(JP,A)
豊田和弘 他5名,超高速インターネット衛星搭載用太陽電池アレイの地上放電試験,日本航空宇宙学会論文集,日本,日本航空宇宙学会,2004年 2月18日,第52巻 第606号,第328-336頁
福重進也 他9名,YAGレーザで模擬したデブリ衝突の誘起プラズマによる太陽電池アレイの放電実験,第49回宇宙科学技術連合講演会講演集,日本,日本航空宇宙学会,2005年11月,第1386-1391頁
調査した分野 H05H 1/00-1/54
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
電気機器の帯電可能な誘電体に対して真空中でアーク放電を発生させる真空アーク放電発生方法において,
前記誘体の表面に対して相対移動可能な隔置状態の2本の針電極を配設し,前記誘体の前記表面に直接又は間接的に接触させ,前記針電極間に高電圧パルスを印加して前記針電極間の前記誘体表面上に沿面放電を発生させ,前記誘電体に対して前記沿面放電により生じたプラズマを介して真空アーク放電を誘発させることを特徴とする真空アーク放電発生方法。
【請求項2】
前記誘電体と前記針電極との間に,放熱機能を持ち且つ保護機能を有するカバーガラス等の絶縁体を介在させることを特徴とする請求項1に記載の真空アーク放電発生方法。
【請求項3】
前記針電極間に印加する前記高電圧は,昇圧器で高電圧にされた数10kVであることを特徴とする請求項1又は2に記載の真空アーク放電発生方法。
【請求項4】
前記電気機器は宇宙環境を模擬した真空チャンバ内に収容された人工衛星に取付け可能な太陽電池アレイの太陽電池セルであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の真空アーク放電発生方法。
【請求項5】
前記針電極間に前記高電圧パルスを印加することにより,前記針電極と前記誘電体又は前記誘電体上のカバーガラスとの間に放電が発生して前記誘電体又は前記カバーガラス上に前記沿面放電が発生し,次いで,前記沿面放電によりプラズマ状態になり,前記プラズマを介して前記誘電体の前記太陽電池セルと前記真空チャンバの壁との間に真空アーク放電が発生することを特徴とする請求項4に記載の真空アーク放電発生方法。
【請求項6】
前記放電状態は,前記真空チャンバの外側に設置した赤外線光の照射で監視範囲を強制的に明るく映し出すIRカメラによって,前記真空チャンバに設けた監視用窓を通して撮影できることを特徴とする請求項4又は5に記載の真空アーク放電発生方法。
【請求項7】
前記針電極を前記誘電体に対して相対移動させ,前記誘電体に対して真空アーク放電を発生させるべき予め決められた所定の領域に前記針電極を設定することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の真空アーク放電発生方法。
【請求項8】
前記針電極間に前記高電圧パルスを印加して前記誘電体に対して前記真空アーク放電を発生させ,前記誘電体の前記領域における放電影響及び/又は蓄積電荷量を検出することを特徴とする請求項7に記載の真空アーク放電発生方法。
【請求項9】
前記針電極を前記誘電体に対して相対移動させて前記針電極間に前記高電圧パルスを印加して前記誘電体に対して前記真空アーク放電が発生し易い領域を検出することを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の真空アーク放電発生方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は,例えば,宇宙を周回する人工衛星に搭載される太陽電池アレイに発生する放電現象による太陽電池の損傷低減を計るため,太陽電池アレイの表面の放電現象による影響等の情報を検出するための真空アーク放電発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年,人工衛星等の宇宙機では,大電力を必要とするようになり,それに伴って使用する電力は高電圧化となってきている。そのため,人工衛星に搭載されている太陽電池アレイにおいて,放電現象が頻繁に起こるようになってきた。太陽電池アレイの放電による事故を防ぐため,現在,宇宙機の打ち上げ前に太陽電池アレイに対して発生する放電現象,その影響等の地上試験を行っている。太陽電池アレイを地上試験する場合に,宇宙機の軌道環境を考慮して,太陽電池アレイの太陽電池セルの誘電体を模擬したクーポンを作製し,該クーポンに対して電子ビーム又はプラズマを用いて帯電放電試験を行っている。電子ビームを用いた帯放電試験では,クーポンに対する放電発生頻度が低いため,放電試験の所要時間が長くなっているのが現状である。また,太陽電池アレイに対する放電は,太陽電池アレイにおける誘電体が帯電している所,即ち,至る所で発生するため任意の場所で放電を発生させることは難しい。誘電体に対してプラズマを用いて放電を発生させる場合には,放電頻度は高くなるが,誘電体の予め決められた所定の位置で放電を発生させる制御は困難である。
【0003】
一般に,宇宙環境を模擬した真空中での誘電体のクーポンに対する放電試験では,プラズマや電子ビームを用いて誘電体を帯電させる自動的な方法がとられている。能動的な方法としては,細い抵抗線に電流を流し,焼き切れる時に発生するプラズマを用いる方法があるが,1回放電したら抵抗線を交換する必要があった。
【0004】
従来,宇宙用太陽電池アレイは知られている。該太陽電池アレイは,基板上に設けられたインターコネクタによって接続された多数の太陽電池セルと,これらの太陽電池セル上に接合された透明性を有するカバー部材とを備え,カバー部材の表面を透明性を有する導電膜で被覆し,該導電膜とインターコネクタとを電気的に接続したものである(例えば,特許文献1参照)。
【0005】
また,三相交流を用いたプラズマ発生装置が知られている。該プラズマ発生装置は,長さが1mを越えるフィラメント励起長尺のものであり,安価な電源によって空間的,時間的に一様なプラズマ密度を実現できるものであり,3本1組の3mの直線状フィラメントを,組をなす3本のフィラメントが正三角形をなすようにチャンバの長手方向に張り,組をなす3本のフィラメントの一端を三相交流の3つの端子に接続し,他端は纏めてアーク電源に接続したものである(例えば,特許文献2参照)。
【0006】
また,人工衛星等の宇宙空間飛翔体に搭載する太陽電池電源装置が知られている。該太陽電池電源装置は,太陽フレアに含まれる太陽プロトンによる放射線を検出する複数の放射線検出器と,太陽フレアが発生しない時は太陽電池電源装置の出力に基づいて太陽電池アレイの受光面の向きを放射線の被曝を最小とする方向に駆動する太陽電池アレイ駆動装置とを備えたものである(例えば,特許文献3参照)。
【0007】
また,処理レートの速い沿面放電を用いた被処理体へのダメージが少ない表面処理装置が知られている。該沿面放電を用いた表面処理装置は,誘電体を挟んで配置された第1の電極及び第2の電極を含む沿面放電用の電極を有する。第1の電極には,交流電源が接続され,接地された第2の電極は開口を有する。開口近傍の領域に沿面放電を誘起して,該沿面放電により生成された活性種により,第2の電極と対向して近接配置された被処理体の表面を処理するものである(例えば,特許文献4参照)。

【特許文献1】特開昭61-202475号公報
【特許文献2】特開2000-12282号公報
【特許文献3】特開平6-8894号公報
【特許文献4】特開平9-186135号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら,誘電体に対して真空中でアーク放電を発生させる場合に,誘電体を帯電させて,電子ビームやプラズマを用いて偶発的に放電が発生するのを待つ必要があり,誘電体の特定の場所で所定の時間に放電を発生させることができないため,放電試験の効率が悪かった。ところで,放電は,太陽電池アレイ上のあらゆる場所で発生する可能性があるが,太陽電池アレイにおける放電発生場所が太陽電池アレイに与える影響を評価するには,多くの箇所で放電を発生させなければならず,誘電体に多数回の放電をさせるために長期間を要することになり,放電試験の所要期間は長くなるものである。これらを改善するため,太陽電池アレイ等の電気機器に対して,誘電体の予め決められた所定の位置,所定の時間に放電を発生させることができる放電試験装置が望まれている。
【0009】
この発明の目的は,上記の問題を解決するため,太陽電池アレイ等の電気機器の誘電体に対して真空アーク放電を発生させるために,例えば,電子ビーム銃やプラズマ源といった大がかりな装置を必要とせず,誘電体の予め決められた所定の場所で所定の時間に放電を発生させることができ,それによって誘電体に与える放電影響,誘電体の放電の発生し易い領域,誘電体に対して帯電し易い領域を検出すると共に,放電試験を迅速に短時間で且つ安価に達成でき,また,それらの情報に伴って誘電体の構造を改良する情報を確保することができる真空アーク放電発生方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は,電気機器の帯電可能な誘電体に対して真空中でアーク放電を発生させる真空アーク放電発生方法において,前記誘体の表面に対して相対移動可能な隔置状態の2本の針電極を配設し,前記誘体の前記表面に直接又は間接的に接触させ,前記針電極間に高電圧パルスを印加して前記針電極間の前記誘体表面上に沿面放電を発生させ,前記誘電体に対して前記沿面放電により生じたプラズマを介して真空アーク放電を誘発させることを特徴とする真空アーク放電発生方法に関する。
【0011】
この真空アーク放電発生方法は,前記誘電体と前記針電極との間に,放熱機能を持ち且つ保護機能を有するカバーガラス等の絶縁体を介在させることができる。
【0012】
また,この真空アーク放電発生方法において,前記針電極間に印加する前記高電圧は,昇圧器で高電圧にされた数10kVである。
【0013】
また,この真空アーク放電発生方法では,前記電気機器は宇宙環境を模擬した真空チャンバ内に収容された人工衛星に取付け可能な太陽電池アレイの太陽電池セルである。
【0014】
また,この真空アーク放電発生方法は,前記針電極間に前記高電圧パルスを印加することにより,前記針電極と前記誘電体又は前記誘電体上のカバーガラスとの間に放電が発生して前記誘電体又は前記カバーガラス上に前記沿面放電が発生し,次いで,前記沿面放電によりプラズマ状態になり,前記プラズマを介して前記誘電体の前記太陽電池セルと前記真空チャンバの壁との間に真空アーク放電が発生するものである。
【0015】
また,この真空アーク放電発生方法は,前記針電極を前記誘電体に対して相対移動させ,前記誘電体に対して真空アーク放電を発生させるべき予め決められた所定の領域に前記針電極を設定することができる。更に,この真空アーク放電発生方法は,前記針電極間に前記高電圧パルスを印加して前記誘電体に対して前記真空アーク放電を発生させ,前記誘電体の前記領域における放電影響及び/又は蓄積電荷量を検出することができるものである。
【0016】
また,この真空アーク放電発生方法は,前記針電極を前記誘電体に対して相対移動させて前記針電極間に前記高電圧パルスを印加して前記誘電体に対して前記真空アーク放電が発生し易い領域を検出することができるものである。
【0017】
また,この真空アーク放電発生方法において,前記放電状態は,前記真空チャンバの外側に設置した赤外線光の照射で監視範囲を強制的に明るく映し出すIRカメラによって,前記真空チャンバに設けた監視用窓を通して撮影できるものである。
【発明の効果】
【0018】
この真空アーク放電発生方法は,上記のように構成されているので,太陽電池アレイとうの電気機器の誘電体に対して,真空アーク放電を発生させるための電子ビーム,プラズマ銃等の大掛かりな装置を必要とせず,誘電体の予め決められた所定の場所,所定の時間に短時間に且つ安価に真空アーク放電を発生させ,誘電体に与える放電影響等の情報を検出し,その情報に基づいて太陽電池アレイ等の電気機器の改良に寄与させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下,図面を参照して,この発明による真空アーク放電発生方法の実施例について説明する。この発明による真空アーク放電発生方法は,本来,帯電可能な太陽電池アレイ等の電気機器の誘電体として作製したクーポン2に対して,宇宙環境を模擬した真空チャンバ1内にクーポン2を配設し,誘電体のクーポン2に真空中でアーク放電を容易に且つ安価に発生させることを特徴としている。宇宙を飛翔する宇宙器に搭載された太陽電池アレイは,その誘電体に宇宙からの光等が当たると,帯電して太陽電池アレイと電極との間に放電することがあり,太陽電池アレイの破損や故障の原因になっている。そこで,この真空アーク放電発生方法は,太陽電池アレイ等の電気機器に対して,電気機器の誘電体の帯電し易い領域,誘電体が帯電状態或いは無帯電状態で放電した時の放電影響等を検証するのに適用できるものである。太陽電池アレイは,基板上に設けられたインターコネクタによって接続された多数の太陽電池セルから構成されている。
【0020】
この真空アーク放電発生方法は,主として,真空雰囲気即ち真空環境を模擬した真空チャンバ1内の真空中に,太陽電池アレイ等の電気機器の誘電体として作製した試験試料のクーポン2を配設し,クーポン2に2本の針電極5を間接的/直接的に強制的に接触させ,針電極5間に電源4から供給される電力を昇圧器7によって昇圧した高電圧パルスを印加し,針電極5間に印加された高電圧パルスによって針電極5間にクーポン2の表面に沿って沿面放電を発生させ,該沿面放電によってその領域にプラズマを発生させ,次いで,プラズマを通じてクーポン2と真空チャンバ1の壁との間で短絡させ,誘電体のクーポン2に真空アーク放電を誘発させることを特徴としている。この時に,針電極5は,例えば,その径が0.2mm程度である。また,2本の針電極5は,予め決められた所定の距離,例えば,0.1mm程度に隔置状態に保持して針電極5同士が接触しないように設置されている。
【0021】
また,この真空アーク放電発生方法は,クーポン2と針電極5との間には,放熱機能と保護機能を有するカバーガラス3等の絶縁体を介在させることができる。カバーガラス3を針電極5とクーポン2との間に介在させることによって,不要な光を反射させ,放電に寄与しないようにすることができる。この真空アーク放電発生方法は,クーポン2と針電極5との間にカバーガラス3を介在させた場合には,沿面放電はカバーガラス3の表面に沿って発生することになる。この真空アーク放電発生方法では,クーポン2として,太陽電池アレイにおける太陽電池セルとその両側に配置されている電極(図示せず)から構成したものを使用している。カバーガラス3をクーポン2と針電極5との間に介在させる場合には,カバーガラス3側の電極を櫛歯状に配列させることが好ましい。針電極5は,クーポン2即ち放電対象物にカバーガラス3等の絶縁体が介在している時には,絶縁体上に配置し,絶縁体と針電極5とを一体化した組立体として沿面放電発生装置として使用することができ,放電対象物の放電をさせたい箇所に配置して放電を発生させることができる。カバーガラス3としては,例えば,その板厚が略100μmである。太陽電池セルは,その板厚がカバーガラス3と同様に略100μmである。
【0022】
この真空アーク放電発生方法は,針電極5を誘電体のクーポン2に対して相対移動させ,クーポン2に対して真空アーク放電を発生させるべき予め決められた所定の場所を選定できるように構成されている。即ち,この真空アーク放電発生方法は,誘電体のクーポン2に対して放電を発生させたい部位に針電極5を設置するものであり,従って,針電極5はクーポン2の全領域に対して相対移動できるように設置することが必要である。針電極5は,図1に示すように,電極支持棒10,11によって支持されている。そこで,電極支持棒10,11をクーポン2に対して三次元的に相対移動できるように,従来周知の直動案内軸受,X-Y-Z軸及び回転軸等からなる位置決め装置等を用いて設置することが好ましいものである。実験室等では,手動で針電極5又はクーポン2を相対移動させればよいことは勿論である。
【0023】
また,この真空アーク放電発生方法において,針電極5間に印加する高電圧は,例えば,昇圧器7で高圧にされた数10kVを使用することができる。昇圧器7は,電源4からの電力をスイッチ6の断接で付勢することができる。また,この真空アーク放電発生方法を達成する真空アーク放電発生装置は,宇宙環境を模擬した真空チャンバ1内に収容された太陽電池セルを模擬した試料即ちクーポン2であり,クーポン2と針電極5との間に介在された絶縁体はカバーガラス3を使用したものである。
【0024】
また,この真空アーク放電発生方法において,放電は,まず,カバーガラス3に接触させた針電極5間が印加されると,カバーガラス3の表面に沿面放電が発生し,次いで,クーポン2とカバーガラス3との間に発生し,その領域がプラズマ状態になり,そこで,プラズマを介して即ち通じて放電が帯電しているクーポン2と真空チャンバ1の壁に達し,真空アーク放電が発生する。即ち,この真空アーク放電発生方法は,沿面放電により生じたプラズマを介してクーポン2に真空アーク放電を誘発することによって,クーポン2即ち太陽電池セルにおける真空アーク放電の発生領域に与える影響等の情報を検出することができることになる。太陽電池セルがアーク放電をする時には,太陽電池セルの外周端面近傍で発生するので,この真空アーク放電発生方法では,針電極5をクーポン2の周端縁に沿って相対移動させ,放電し易い箇所を検出することができ,また,放電による影響を検証することができる。
【0025】
この真空アーク放電発生方法では,放電は,真空チャンバ1の外側に設置した赤外線光の照射で監視範囲を強制的に明るく映し出すIRカメラ9によって真空チャンバ1に設けた監視用窓8を通して撮影できるものであり,IRカメラ9で撮像された情報はコンピュータ/パソコン13で処理され,例えば,図3に示すように意図的に発生させた放電電流・電圧波形を検出することができる。更に,この真空アーク放電発生方法は,針電極5間に高電圧パルスを印加してクーポン2に対して真空アーク放電を発生させるので,クーポン2に対してその領域における放電影響及び/又は蓄積電荷量を検出することができる。また,この真空アーク放電発生方法は,針電極5をクーポン2に対して相対移動させて針電極5間に高電圧パルスを印加してクーポン2に対して真空アーク放電が発生させるので,クーポン2の真空アーク放電の発生し易い領域を検出することができるものである。
【0026】
-実験概要-
この真空アーク放電発生方法は,針電極5の高電圧パルスの印加によりカバーガラス3の面が帯電すると,太陽電池セル2とカバーガラス3面で逆電位勾配が発生する。そして,電界放出によりインタコネクタから電子が飛びだし,その電子がカバーガラス3の側面をたたき衝突二次電子と脱ガスを発生させてカバーガラス3の側面が帯電する。これにより電界がさらに強くなり,カバーガラス3とクーポン2の間で絶縁破壊が起き,第一の放電が発生すると考えられている。次いで,第一の放電によって宇宙機と宇宙空間のキャパシタンスに蓄えられていた電荷が放電され,次に,放電箇所以外のカバーガラス3に蓄えられていた電荷も放電することになる。
【0027】
カバーガラス3とクーポン2の間で起きる第一の放電を発生させることにより,これに続く放電を発生させることができると考えた。そこで,放電を発生させたい場所で意図的にプラズマを発生させ,放電を誘発させる放電発生手法を開発した。その手法として,図1に示すように,針電極5に昇圧器7を用いて高電圧をかけ,カバーガラス3の表面に沿って沿面放電を発生させるようにする。本実験では,真空チャンバ1内に太陽電池クーポン2を設置し,宇宙環境を模擬したものである。図1に示すこの真空アーク放電発生方法を達成させる実験装置では,太陽電池アレイには,至る所に真空アーク放電の電源部12となる帯電して電荷が蓄積されるので,それを模擬するため,コンデンサCextは,実際の大きさの太陽電池アレイを真空チャンバ1内に入れることはできないため,他のカバーガラス3に蓄えられる電荷を模擬する。また,高電圧電源Vbiasにより周辺プラズマに対する人工衛星の電位を模擬する。放電が発生すると,コンデンサCextから電子が放出され,太陽電池アレイを模擬したクーポン2を通り,放電プラズマを介して真空チャンバ1の壁に達し,グラウンドへ電流が流れる。この電流(ブローオフ電流)を電流プローブで測定し,放電が発生したのを確認する。また,真空チャンバ1内で発生した放電を,IRカメラ9を用いて監視用窓8から撮影した。IRカメラ9で撮影した情報は,コンピュータ/パソコンで処理し,電圧/電流の波形を得ることができる。
【0028】
太陽電池クーポン2の予め決められた所定の位置即ち任意の位置で放電を発生させるために,2本の針電極5としてタングステンを用い,放電させたい位置にその針電極5を2本の針電極5同士が接触しないように,略0.1mm程度に隔置状態で設置する。予め決められた時間,即ち,任意の時間に昇圧器7のスイッチ6を入れ,電源4からの電力で高電圧パルスを発生させ,放電を発生させた。
【0029】
この真空アーク放電発生方法についての実験結果は,実験により取得した放電波形の一例を図3に示す。図3において,横軸に経過時間(μS),縦軸に電圧波形(kV)と電流波形(A)をとり,電圧波形を符号VPの波形で示し,電流波形を符号CPの波形で示しており,特に,符号EDの領域において真空アーク放電が発生した状態を確認することができる。バイアス電圧Vbiasが0Vに急激に上がると同時に,ブローオフ電流が流れたことが確認できる。即ち,昇圧器7により高圧をかけることで,宇宙環境を模擬した真空チャンバ1内の真空中で任意の位置,時間で放電を発生させることができた。
【産業上の利用可能性】
【0030】
この発明による真空アーク放電発生方法は,例えば,太陽電池アレイの太陽電池セル等の電気機器に対して,沿面放電を発生させてプラズマ状態を発生させ,プラズマを介して真空アーク放電を発生させ,太陽電池セル等の電気機器に対する放電影響等の情報を検出するための放電試験,真空放電に適用して好ましいものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明による真空アーク放電発生方法を達成するための真空アーク放電発生装置の回路図の一実施例を示す説明図である。
【図2】図1の回路図における針電極とカバーガラスの関係を示す説明図である。
【図3】この真空アーク放電発生方法によって得たアーク放電の電圧と電流の波形の一例を示す放電波形図である。
【符号の説明】
【0032】
1 真空チャンバ
2 太陽電池クーポン
3 カバーガラス
4 電源
5 針電極
6 スイッチ
7 昇圧器
8 監視用窓
9 IRカメラ
10 電極支持棒
11 電極支持棒
12 真空アーク放電の電源部
13 コンピュータ/パソコン
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2