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明細書 :バリ発生の検知方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5176100号 (P5176100)
公開番号 特開2008-249612 (P2008-249612A)
登録日 平成25年1月18日(2013.1.18)
発行日 平成25年4月3日(2013.4.3)
公開日 平成20年10月16日(2008.10.16)
発明の名称または考案の名称 バリ発生の検知方法
国際特許分類 G01B  21/32        (2006.01)
FI G01B 21/32
請求項の数または発明の数 2
全頁数 7
出願番号 特願2007-093691 (P2007-093691)
出願日 平成19年3月30日(2007.3.30)
審査請求日 平成21年11月25日(2009.11.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
発明者または考案者 【氏名】是澤 宏之
【氏名】鈴木 裕
【氏名】楢原 弘之
【氏名】清水 康弘
個別代理人の代理人 【識別番号】100090697、【弁理士】、【氏名又は名称】中前 富士男
【識別番号】100139262、【弁理士】、【氏名又は名称】中嶋 和昭
審査官 【審査官】櫻井 仁
参考文献・文献 特開平05-177681(JP,A)
特開平09-192816(JP,A)
特開平11-320069(JP,A)
調査した分野 G01B 21/00~21/32
G01B 11/00~11/30
G01B 7/00~ 7/34
B22D 15/00~17/32
B22C 5/00~ 9/30
特許請求の範囲 【請求項1】
固定型に可動型を密着させ所定の型締め力で保持した成形金型内に材料を供給して加圧成形する際に発生するバリを検出するバリ発生の検知方法において、
前記成形金型内に供給した材料の加圧成形時に前記可動型の下側面の前記成形金型の型締め方向の変位を測定し、該側面の変位が予め設定した基準値を超えた時点でバリが発生したと判断することを特徴とするバリ発生の検知方法。
【請求項2】
請求項記載のバリ発生の検知方法において、前記側面の変位は、前記可動型の下側面の基準位置に対する位置変化量を測定することにより求めることを特徴とするバリ発生の検知方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属、溶融樹脂等の流動物質を金型内に射出成形する場合、あるいは粉末のように加圧下で流動物と類似した挙動を示す物質を金型内に供給して加圧成形する場合のバリ発生の検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、射出成形時に生じるバリは、金型の加工精度が低いために金型の分割面に形成された隙間により発生する場合を除いて、成形時の金型変形により金型分割面に発生する隙間に物質が侵入することにより、あるいは成形圧力が型締め圧力より大きいために成形時の金型分割面の開口により発生する隙間に物質が侵入することにより発生する。従って、バリの発生を検知するには、非特許文献1に記載されているように、1)金型分割面の先端付近の隙間の幅を直接計測する方法、2)金型内部の成形圧力を計測する方法、3)金型下面内での歪み量を計測する方法がある。更に、4)成形中の成形機からの情報(例えば、射出圧力、スクリュー位置)を収集する方法がある。
【0003】

【非特許文献1】村田泰彦、外2名、「プラスチック射出成形品におけるバリ発生検知方法」、型技術、2006年7月、第21巻、第8号、p.128-129
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、1)の隙間の幅を直接計測する方法では金型にセンサを取付けセンサからの信号線を取出すための加工を施す必要があることから、2)の金型内部の成形圧力を計測する方法は圧力センサが高価で、かつ金型に圧力センサの取付けおよび信号線を取出すための加工を行なう必要があることから、生産設備に対しては非現実的な方法になるという問題がある。3)の金型下面の歪みを計測する方法では、金型には冷却媒体を通過させるための孔や各種センサ用の取付け穴、成形体を金型から離型させるために用いられるエジェクタピンのための孔、更に金型組立ておよび型締の際に使用する複数の穴や多数の切り欠きが設けられているため、金型には多くの応力集中部が存在することになって、成形時に発生した応力集中が互いに干渉して金型内および金型表面に発生する応力場は非常に複雑になる。このため、最適な位置に歪みセンサを配置しないと計測される歪み量が穴の影響を強く受け、バリ発生と関連する歪み量を計測することができないという問題が生じるが、歪みセンサを配置する最適位置を見出すことは非常に困難である。更に、4)の成形中の成形機からの情報を収集する方法は、成形機からの情報とバリの発生が必ずしも連動しているとは言えず、常にバリの発生を安定して検出することができないという問題がある。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、金型の構造上の影響を受けずに容易かつ安価にバリの発生を検知することが可能なバリ発生の検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う本発明に係るバリ発生の検知方法は、固定型に可動型を密着させ所定の型締め力で保持した成形金型内に材料を供給して加圧成形する際に発生するバリを検出するバリ発生の検知方法において、
前記成形金型内に供給した材料の加圧成形時に前記可動型の下側面の前記成形金型の型締め方向の変位を測定し、該側面の変位が予め設定した基準値を超えた時点でバリが発生したと判断する。
【0007】
そして、前記側面の変位は、前記可動型の下側面の基準位置に対する位置変化量を測定することにより求めることができる。
【発明の効果】
【0008】
請求項1、2記載のバリ発生の検知方法においては、成形時の成形金型に発生する変位分布は、成形金型内に存在する応力集中部の影響を受けないので、変位量の計測が容易になって変位量とバリ発生との関連付けが容易になる。その結果、連続成形中での成形条件の変動に伴うバリ発生を検知することが可能になる。
また、成形金型の変位分布が応力集中部の影響を受けないため、数値解析結果(数値解析で求めた変位量)から判断できるバリ発生と実際の成形金型におけるバリ発生を比較検討することが可能になり、数値解析結果の精度を向上させることができるとともに、変位量を成形状態の再現性を検討する際の指標の一つとして用いることもできる。更に、数値解析モデルを単純化でき、短時間で効率的かつ高品質の成形金型の設計が可能になる。
【0009】
特に成形金型は型締め方向に変位し易いので、可動型の下側面の型締め方向の変位を測定することで、バリ発生との対応が容易になる。
また、可動型は固定型と比較して変位し易いので、可動型の側面の変位を測定することにより、変位の測定を容易かつ正確に行なうことができる。
請求項記載のバリ発生の検知方法においては、可動型の下側面に対する位置変化量を測定するので、測定機器の設置が容易となって測定を正確かつ容易に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1は本発明の一実施の形態に係るバリ発生の検知方法を適用する成形金型の構造を示す模式図、図2(A)は応力集中を考慮した数値解析で求めた可動型の外側面における型締め方向の変位分布を示す説明図、(B)は応力集中を考慮せずに数値解析で求めた可動型の外側面における型締め方向の変位分布を示す説明図、図3(A)は加圧成形時に測定した可動型の外側面における型締め方向の変位の変化挙動を示すグラフ、(B)は加圧成形時に測定した固定型と可動型の境界面の間隙の変化挙動を示すグラフ、図4は可動型の外側面の変位、保圧力、およびバリ発生の関係を示す説明図である。
【0011】
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係るバリ発生の検知方法を適用する成形金型の一例である射出成形金型10は、成形機のフレーム(図示せず)に固定側取付け板11を介して固定される固定型12と、成形機のフレームに設けられた可動側取付け板13に複数のスペーサブロック15を介して取付けられた可動型16とを有している。これによって、固定型12に対して、可動側取付け板13の移動によって可動型16は移動(昇降)する。なお、可動型16と可動側取付け板13との間には、複数のスペーサブロック15によって空間部14が形成される。
そして、可動型16を上昇させて固定型12に密着させ所定の型締め力で保持することにより射出成形金型10が形成される。固定型12の下部には下側に開口する凹部17が形成されており、固定型12の凹部17と可動型16の上面で囲まれた所定形状を有する空洞18内に、空洞18に連通する材料供給路18aを介して材料を所定の圧力で射出し、保圧することで、材料を所定の形状に成形できる。
【0012】
続いて、本発明の一実施の形態に係るバリ発生の検知方法について説明する。
図1に示すように、射出成形金型10内に供給した材料の加圧成形を行なうと、空洞18内の材料により固定型12の凹部17の内面および可動型16の上面の一部(凹部17の開口を覆う領域)に成形圧力(射出圧力と引き続いて負荷される保圧力)が印加される。このため、固定型12と可動型16には変形が生じ、射出成形金型10の外側面、すなわち、固定型12と可動型16の外側面にはそれぞれ変位が生じる。一方、射出成形金型10の構造上、空洞18に作用する成形圧力は、特に型締め方向に作用しており、射出成形金型10は型締め方向に変位し易い。また、固定型12と可動型16を比較すると、可動型16の底壁外面(下側面)の一部は、空間部14と接しているために、強度的に弱い構造となっており変位し易い。従って、加圧成形時の射出成形金型10の挙動を把握するには、可動型16の底壁外面の変位量が有効となる。
【0013】
そこで、可動型16の下側面における型締め方向の変位挙動を把握するために行なった、数値解析の結果を図2(A)、(B)に示す。図2(A)は可動型16に設けられた冷却媒体を通過させるための孔や各種センサ用の取付け穴、成形体を金型から離型させるために用いられるエジェクタピンのための孔、可動型16の組立ておよび型締の際に使用する複数の穴や多数の切り欠きによる応力集中を考慮した場合の可動型16の下側面における変位分布を、(B)は応力集中を考慮しない場合の可動型16の下側面における変位分布を示す。(A)と(B)の変位分布の状態を比較すると、変位分布には応力集中の影響が現われないことが判る。なお、図2(A)、(B)では、可動型16の下側面の変位分布の対称性から、可動型16の下側面の半分の領域の変位分布のみを示している。
【0014】
ここで、可動型16の下側面の変位は、例えば、基準位置の一例である可動側取付け板13の上面に対する可動型16の下側面の位置変化量を測定することにより得られる。そこで、図1に示すように、変位センサの一例である渦電流式変位センサ19を、空間部14内に配置されるように可動側取付け板13に固定部材20を介して取付けることにより、可動型16の下側面の位置変化量を測定する。
一方、可動型16の下側面の変位分布が応力集中の影響を受けないことから、可動型16の下側面内の任意の位置における変位を求めることで、加圧成形時の射出成形金型10の挙動が把握できる。
【0015】
従って、適切な射出条件を設定し、一定の成形圧力(保圧力ともいう)で加圧成形したときの可動型16の下側面の、例えば中央部における型締め方向の変位d1を測定した結果を図3(A)に示す。また、固定型12と可動型16との境界部(分割面)に生じる隙間d2の加圧成形時における変化をギャップセンサで測定した結果を図3(B)に示す。ここで、型締め方向の変位d1および隙間d2は、いずれも型締め時を基準(d1=0、d2=0)としている。なお、加圧終了時で隙間d2が0に戻らないのは、隙間d2内でバリが発生し保圧力が0になっても隙間d2が消失できないことによる。
【0016】
図3(A)、(B)から可動型16の下側面の変位d1の変化挙動と、境界部の隙間d2の変化挙動の間にはよい対応関係が認められ、変位d1の絶対値が最大値を示す時間と隙間d2が最大となる時間は一致することが確認できる。ここで、バリ発生の機構から、固定型12と可動型16との境界部に生じる隙間d2の変化挙動とバリ発生の有無との間には明確な対応関係が存在していることが明らかなので、境界部の隙間d2とよい対応関係を持つ可動型16の下側面の変位d1の変化挙動とバリ発生の有無との間にも、明確な対応関係を存在すると解される。
【0017】
そこで、固定型12と可動型16に一定の型締め力を負荷して射出成形金型10を形成し、保圧力を変化させながら成形を行ない、バリの発生状況を調べるとともに、加圧成形時の可動型16の下側面における型締め方向の変位d1を測定した。可動型16の下側面の変位d1の絶対値の最大値、保圧力、およびバリ発生の関係を図4に示す。また、図4には、固定型12と可動型16との分割面に生じる隙間d2の最大値、保圧力、およびバリ発生の関係も合わせて示す。
【0018】
図4から、保圧力が低く所定形状の成形体が得られない場合(ショートショットの場合)は、バリの発生はなく、可動型16の下側面の変位d1の絶対値の最大値および境界部の隙間d2の最大値はいずれも小さいことが判る。一方、保圧力が大きくなると、所定形状の成形体が得られるが同時にバリも発生するようになり、可動型16の下側面の変位d1の絶対値の最大値および境界部の隙間d2の最大値は増加することが判る。また、ショートショットとなる保圧力とバリが発生する保圧力の間に、所定形状の成形体が得られ、しかもバリ発生がない適正成形領域が存在することが判る。そして、図4の場合、適正成形領域における可動型16の下側面の変位d1の絶対値の最大値の範囲は0.0025mm未満となる。従って、例えば、0.002mmを基準値として予め設定しておくと、可動型16の下側面の型締め方向の変位d1の絶対値の最大値を測定して、得られた変位の値が予め設定した基準値を超えた時点でバリが発生したと判断することが可能になる。
【0019】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
例えば、可動型の外側面(即ち、下側面)における型締め方向の変位を渦電流式変位センサで測定したが、レーザ変位計または差動変圧器式変位センサを使用することもできる。
更に、本実施の形態では、変位センサ(渦電流式変位センサ)を基準位置(可動側取付け板)側に取付けて成形金型の外側面(可動型の下側面)の位置変化量を測定したが、変位センサを成形金型の外側面に取付けて基準位置に対する成形金型の外側面の位置変化量を測定するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態に係るバリ発生の検知方法を適用する成形金型の構造を示す模式図である。
【図2】(A)は応力集中を考慮した数値解析で求めた可動型の外側面における型締め方向の変位分布を示す説明図、(B)は応力集中を考慮せずに数値解析で求めた可動型の外側面における型締め方向の変位分布を示す説明図である。
【図3】(A)は加圧成形時に測定した可動型の外側面における型締め方向の変位の変化挙動を示すグラフ、(B)は加圧成形時に測定した固定型と可動型の境界面の間隙の変化挙動を示すグラフである。
【図4】可動型の外側面の変位、保圧力、およびバリ発生の関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0021】
10:射出成形金型、11:固定側取付け板、12:固定型、13:可動側取付け板、14:空間部、15:スペーサブロック、16:可動型、17:凹部、18:空洞、18a:材料供給路、19:渦電流式変位センサ、20:固定部材
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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