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明細書 :微細穴の加工方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5120839号 (P5120839)
公開番号 特開2009-050883 (P2009-050883A)
登録日 平成24年11月2日(2012.11.2)
発行日 平成25年1月16日(2013.1.16)
公開日 平成21年3月12日(2009.3.12)
発明の名称または考案の名称 微細穴の加工方法
国際特許分類 B21D  28/16        (2006.01)
C23F   1/00        (2006.01)
FI B21D 28/16
C23F 1/00 Z
請求項の数または発明の数 3
全頁数 6
出願番号 特願2007-219162 (P2007-219162)
出願日 平成19年8月27日(2007.8.27)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成19年5月11日 社団法人日本塑性加工学会発行の「平成19年度塑性加工春季講演会講演論文集」に発表
審査請求日 平成22年7月6日(2010.7.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
発明者または考案者 【氏名】広田健治
審査官 【審査官】内藤 真徳
参考文献・文献 特開昭57-211500(JP,A)
特開2000-124376(JP,A)
調査した分野 B21D 28/16
特許請求の範囲 【請求項1】
金属の板材や管材に所望形状の微細な穴を加工する方法において、錐状の先端または角柱の稜線を頂部とする突起工具を平坦な支持工具と板押さえの間で挟持されている被加工材表面に、被加工材の厚さの60~90%押し込むことで、それぞれ点状圧痕または線状圧痕を成形する第一工程、及び、成形された圧痕の裏側表面をエッチングにより化学的に溶解除去する第二工程により、圧痕底部の断面と同形状の微細な穴または細長いスリット穴を被加工材に与える微細穴加工方法。
【請求項2】
第二工程において圧痕を成形した面をエッチング液に対して不溶性の被覆材で覆うことを特徴とする請求項1に記載の微細穴加工方法。
【請求項3】
突起工具の錐状の先端または角柱の稜線が、目標とする穴形状と同じ断面形状で、穴の径またはスリット穴の幅と同程度高さの平行突出部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の微細穴加工方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、金属の板材や管材への穴あけ加工に関するものであって、特に板や管の厚さが薄い場合において所望の形状の微細な穴を破断やバリなどの欠陥を生じることなく精密に加工する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
微細な穴は液体の噴射ノズルやフィルタなどに利用されており、微細精密化が求められている。従来技術としてコストと生産性の観点からプレスせん断加工が多く用いられているが、穴が微細になるほどパンチが細くなり折損しやすくなるほか、加工面には破断面やバリが生じる。また、均一なクリアランスを維持して嵌合しあうパンチとダイが必要となり、対象が微細になるほど金型の製作とパンチとダイの芯合わせ作業が難しくなる。
【0003】
また、エンボス加工により穴形状に沿って一方の面に凹みを、反対側の面に隆起を生じさせ、隆起した部分を機械的に研磨することにより除去し凹み部分を貫通させて微細な穴をあける方法(特許文献1)がある。この方法では第一工程でエンボス加工、第二工程で機械的研磨を用いているのに対し、本発明では第一工程では圧印加工、第二工程では化学的なエッチングを用いている。その効果として、第一工程においてエンボス加工ではプレスせん断加工と同様にパンチ以外にダイの製作と芯合わせ作業が必要となるのに対し、圧印加工では裏面側は平坦な工具でよいためパンチとの芯合わせが不要となる。第二工程に関して、機械的な研磨では研磨方向にバリが生じて穴がバリでふさがれてしまう。このためバリを破る工程が必要となり、専用のパンチの製作と芯合わせ作業が別途必要となる。化学的なエッチングではこうした問題が解決される。
【0004】
本発明に先行して、発明者は金属薄板に対して切断輪郭に沿って板厚の薄い部分を成形し、該部分を化学的な溶解により除去して分離を達成することで、破断やバリを生じることなく精密に輪郭を分離する方法(特許文献2)を発明している。上記発明と本発明は、ともにプレス加工により与えた最薄部をエッチングにより消失させるものであるが、目的により重視する技術的要素が異なる。すなわち、前記発明では輪郭形状を精密に分離することを目的としており、最薄部分は分離する輪郭に沿って平滑に深い圧痕や段差を与えることがポイントとなり、最薄部は分離する輪郭に沿って単純に消失させればよい。これに対して、本発明では最薄部が消失した後にできる形状を穴として利用する。このため、最薄部の断面形状や最薄部が消失してからのエッチング量が加工精度に影響し、それらを適切にコントロールすることがポイントとなる。

【特許文献1】特開2000-107948号公報
【特許文献2】特開2007-61992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、微細な穴をプレス加工であける方法において破断やバリが生じること、穴が微細になるほどパンチが細くなり折損しやすくなること、微細なクリアランスを維持して嵌合するパンチとダイの製作及びその芯合わせ作業が難しくなることを解決し、微細で高精度な穴を加工する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のうち、請求項1に記載された発明は金属板材に所望の形状の微細な穴またはスリット穴を加工する方法において、錐状の先端を頂部とする突起工具を平坦な支持工具と板押さえの間で挟持されている被加工材表面に、被加工材の厚さの60~90%押し込むことで円形、楕円形もしくは多角形の点状圧痕を成形する、または角柱の稜線を頂部とする突起工具を平坦な支持工具と板押さえの間で挟持されている被加工材表面に、被加工材の厚さの60~90%押し込むことで線状圧痕を成形する第一工程、及び、成形された圧痕の裏側表面をエッチングにより化学的に溶解除去する第二工程により、バリや破断を生じることなく圧痕底部の断面と同形状の微細な穴を被加工材に与える微細穴加工方法である。本発明において、被加工材は突起工具の押し込みが可能な材質で、板や管のような部材をあげることができる。


【0007】
請求項2に記載の発明は、記載の第二工程において圧痕を成形した面をエッチング液に対して不溶性の被覆材で覆うことからなる請求項1に記載の微細穴加工方法である。不溶性の被覆材としてはめっき用のマスキングテープやエッチング用のフォトレジストなどをあげることができる。
【0008】
請求項3に記載の発明は、突起工具の錐状の先端または角柱の稜線が、目標とする穴形状と同じ断面形状で、穴の径またはスリット穴の幅と同程度高さの平行突出部を有することを特徴とすることで、第二工程におけるエッチングによる溶解量の誤差により穴形状が変化することを防ぐことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の高精度の微細穴加工方法である。
【発明の効果】
【0009】
穴形状を規定する第一工程に関して、圧痕を与える圧印加工は圧縮応力場での成形加工のため、引張応力場のプレスせん断加工やエンボス加工のように破断を生じる危険が少なく、突起工具に付与した穴形状を精密に被加工材表面に転写することができる。穴を貫通させる第二工程ではエッチングによる化学的溶解を用いるため、穴が貫通したときにプレスせん断加工や切削加工のようにバリを生じることがない。以上より圧印加工により付与した圧痕の底部をその断面形状を損なうことなく貫通させることができ、微細かつ精度の良い穴を加工することが可能となる。
【0010】
線状圧痕によりスリット穴を被加工材に与える微細穴加工方法においては、被加工材の端部に複数の線状圧痕を近接させて並列に成形することで櫛歯状の形状を加工することもできる。
【0011】
加工の実施に関して、第一工程では突起工具の負荷を受ける工具は平坦でよく、せん断加工やエンボス加工のようにパンチとダイを嵌合させる必要がないため工具の製作と組付けが容易になる。
【0012】
また、エッチングを行う第二工程では、深い圧痕を与えることで短時間のエッチングで穴を貫通させることができ、フォトマスクを用いるエッチング加工に比べて少工程かつ短時間で実施できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の形態について、以下に説明する。
【0014】
エッチング工程での溶解量を低減するために第一工程では板厚の半分以上の深い押し込みを与えることが望ましい。押し込み量によっては反り変形が生じる場合があるため、突起工具周辺を板押さえ工具で押圧して加工する。また、加工抵抗の低減のために突起工具の側面は垂直状態から外向きに20゜~60゜の傾斜を与えることが好ましく、更に好ましくは、30゜~45゜程度の傾斜を与えることが望ましい。60°を超えると圧痕周辺の反り変形や材料の隆起が顕著になり加工精度が低下する問題があり、20°未満では工具が細長くなり折損の危険が高くなるという問題がある。
【0015】
エッチング工程では圧痕を成形した面をエッチング液に対して不溶性の被覆材で覆うことが望ましく、このような被覆材として、特に限定されるものではないが、めっき用マスキングテープやエッチング用のレジスト皮膜などがあげられる。
【0016】
以下、図面を用いて本発明の実施の様態について板材を対象とした例を説明する。図1に第一工程の断面図を示す。1は突起工具、2は板押さえ、3は被加工材、4は支持工具である。被加工材3を支持工具4に載せ、板押さえ2で反り変形を抑制しながら突起工具1を押し込む。突起工具の押し込み量hは加工抵抗と所要エッチング量との兼ね合いから被加工材の厚さtの60~90%程度にすることが望ましい。90%を超えると突起工具にかかる面圧が過大となり工具破損の危険が高くなるという問題があり、60%未満では穴の貫通に要するエッチング量が増え、材料の利用効率が悪くなり加工時間が増えるという問題がある。
【0017】
図2に第二工程の一例を示す。5はエッチング加工用容器、6はエッチング液、7はエッチング液に対して不溶性の被覆材を示す。第一工程で圧痕を成形した側の表面を被覆材7で被覆した後、エッチング液6を満たした容器5内に一定時間浸漬する。被加工材は、被覆材を施していない側の面から均一にエッチング除去されていき、除去深さがt-hになると圧痕底部が貫通する。そこからさらにエッチングを進めると穴の大きさは圧痕の側面の傾き(突起工具側面の傾き)に沿って大きくなっていく。穴の寸法dは圧痕底部からの溶解量δと圧痕側面の傾きθにより決まり、溶解量を調整することで所望の穴の寸法を加工することができる。なお、第二工程については、溶解速度の速いスプレー式のエッチング方法を用いても同様の加工ができる。
【0018】
図3に穴の寸法形状を安定させるための突起工具の例を示す。突起の先端部に目的とする穴寸法dを有する平行部h’を設けることで、溶解量に誤差が生じても平行部h’が溶解する間は穴形状が変化しないようにすることができる。ここでいう平行とは厳密な意味での平行である必要はなく、平行部の区間でdの寸法誤差が±5%程度以内であれば良い。なお,h’は大きすぎると圧印加工において折損する恐れがあるため,dと同程度以下にすることが望ましい。ここでいう同程度とは、dに対して±20%程度であり、被加工材が硬い場合や穴形状が軸対称でない場合には小さめにすることが望ましい。
【0019】
図4には線状の圧痕を成形した場合に得られる加工形状を示す。9は被加工材の内部に線状圧痕を成形した場合に得られるスリット穴である。10は被加工材の端部に線状圧痕を並列に複数個成形した場合に得られる櫛歯形状である。
【実施例】
【0020】
本発明について、具体的に金属板材への微細丸穴加工を行った。板厚100μmの純銅箔に対して、側面の傾斜角が45゜の円錐突起工具(先端部:ダイヤモンド製)を70μm押し込みを行った。次に、突起を押し込んだ面全体をめっき用のマスキングテープ(材質:ポリ塩化ビニル樹脂)で被覆してエッチング液(工業用塩化第二鉄溶液:JISK1447
第1種、40℃)に浸漬し、被覆していない側の表面を約30μm溶解除去した。加工後の試片を電子顕微鏡で観察した結果、直径約20μmの良好な丸穴を穴の縁にバリなどの欠陥を生じることなく得ることができた。

【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第一工程の断面図である。
【図2】本発明の第二工程の概略図である。
【図3】先端に平行部の付いた突起工具を用いた場合の第一工程の断面図である。
【図4】線状の圧痕を成形した場合に得られる加工形状の模式図である。
【符号の説明】
【0022】
1 突起工具
2 板押さえ
3 被加工材
4 支持工具
5 エッチング加工用容器
6 エッチング液
7 被覆材
8 平行部付き突起工具
9 スリット穴
10 櫛歯形状
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3