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明細書 :制御システム、振動制御装置及び制御信号生成方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5224506号 (P5224506)
公開番号 特開2009-211334 (P2009-211334A)
登録日 平成25年3月22日(2013.3.22)
発行日 平成25年7月3日(2013.7.3)
公開日 平成21年9月17日(2009.9.17)
発明の名称または考案の名称 制御システム、振動制御装置及び制御信号生成方法
国際特許分類 G05B  13/02        (2006.01)
G05D  19/02        (2006.01)
FI G05B 13/02 B
G05D 19/02 D
請求項の数または発明の数 6
全頁数 25
出願番号 特願2008-052752 (P2008-052752)
出願日 平成20年3月4日(2008.3.4)
審査請求日 平成22年12月20日(2010.12.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
発明者または考案者 【氏名】山川 烈
【氏名】常盤 達司
個別代理人の代理人 【識別番号】100116573、【弁理士】、【氏名又は名称】羽立 幸司
【識別番号】100136180、【弁理士】、【氏名又は名称】羽立 章二
審査官 【審査官】青山 純
参考文献・文献 特開平06-028006(JP,A)
特開2002-155868(JP,A)
特開2004-104987(JP,A)
山下 育民,複数個の仮想環境を用いた2足歩行ロボットの制御,第22回日本ロボット学会学術講演会予稿集CD-ROM,日本,社団法人日本ロボット学会,2004年 9月15日,1K25 第1-4頁
泉 清高,ファンデルポール振動子を用いたCPGネットワークの一構成法,日本機械学会第16回インテリジェント・システム・シンポジウム講演論文集,日本,社団法人日本機械学会,2006年 9月25日,第365-368頁
調査した分野 G05B 13/02
G05D 19/02
特許請求の範囲 【請求項1】
制御信号を生成する複数の振動制御装置と、前記各振動制御装置に対して目標信号を生成する目標信号生成装置を含む制御システムであって、
前記各振動制御装置は、
振幅に関するパラメータ及び周期に関するパラメータに基づいて制御信号を生成する信号生成手段と、
他の前記振動制御装置とは独立に、当該振動制御装置に対する前記目標信号及び当該振動制御装置が備える前記信号生成手段が生成した前記制御信号に基づいて、前記振幅に関するパラメータ及び前記周期に関するパラメータの少なくとも一方を調整する調整手段、
を備える制御システム。
【請求項2】
i番目(iは前記振動制御装置の個数以下の自然数)の振動制御装置において、
前記信号生成手段は、(eq1)式に基づいて信号xiを生成し、
前記調整手段は、Ai及びBiの少なくとも一方を調整する、
請求項1に記載の制御システム。
【数1】
JP0005224506B2_000008t.gif

【請求項3】
前記目標信号生成装置は、(eq4)式に基づいてi番目(iは前記振動制御装置の個数以下の自然数)の振動制御装置に対する目標信号Xを生成する、請求項1又は2に記載の制御システム。
【数2】
JP0005224506B2_000009t.gif

【請求項4】
前記目標信号生成装置は、前記各振動制御装置に対して、他の前記振動制御装置の一つに対する前記目標信号と同位相の前記目標信号又は位相差のある前記目標信号を生成するものであり、
前記調整手段は、前記目標信号と前記制御信号の位相差に基づき、前記振幅に関するパラメータ及び前記周期に関するパラメータの少なくとも一方を調整する、請求項1から3のいずれかに記載の制御システム。
【請求項5】
前記調整手段は、前記目標信号と前記制御信号の差を計算する差分演算手段を有する、請求項1から4のいずれかに記載の制御システム。
【請求項6】
制御信号を生成する複数の振動制御装置と、前記各振動制御装置に対して目標信号を生成する目標信号生成装置を含む制御システムにおいて、制御信号を生成する制御信号生成方法であって、
前記各振動制御装置が備える信号生成手段が、当該振動制御装置に対する目標信号及び当該振動制御装置が生成した制御信号に基づいて、他の振動制御装置とは独立に、振幅に関するパラメータ及び周期に関するパラメータの少なくとも一方を調整する調整ステップと、
前記各振動制御装置が備える信号生成手段が、調整後の前記振幅に関するパラメータ及び前記周期に関するパラメータに基づいて、他の振動制御装置とは独立に、新たな制御信号を生成する信号生成ステップ、
を含む制御信号生成方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本願発明は、制御システム、振動制御装置及び制御信号生成方法に関し、特に目標信号を生成する目標信号生成装置と制御信号を生成する複数の振動制御装置を含む制御システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
動物や人間などの生物の移動運動は、脊髄に存在するといわれているパターン発生器、つまり神経振動子CPG(Central Pattern Generator)ネットワークによって生成・制御されているといわれている。なお、以下では、CPGネットワークに含まれる複数の非線形振動子をCPGと呼び、CPGネットワークとCPGを区別する。
【0003】
これまで、CPGネットワークモデルとして、Matsuokaモデルなど、多くのモデルが提案され、実機(ロボット)への応用も行われている(非特許文献1、2、3参照)。Tagaは感覚入力を介してCPGネットワークと筋骨格系が相互引き込みを起こすことを証明し、二足歩行のシミュレーションを行っている。Kimuraらは、Tagaモデルを拡張し、四脚歩行ロボットを作成し、CPGネットワークの引き込み能力を利用して、不整地歩行を実現している。このように、CPGネットワークは、生物が有する不整地歩行などの能力を説明可能なパターン発生器である。
【0004】
従来のCPGネットワークモデルは、生体内の神経の構造・活動を模擬したモデルであり、各CPGが結合荷重を介して相互結合しており、一つのCPG内に神経の疲労度や内部状態を表す神経が設計されている。
【0005】
これに対し、振動子同士の相互結合を用いず、位相の制御が可能な位相制御法として、Phaselock Techniquesが知られている。Phase-Locked loop(PLL)は、Phaselock Techniquesの具体例であり、Phase Detector(PD)とLow pass Filter(LF)とVoltage Controlled Oscillator(VCO)から構成される。PDでは二つの信号の位相差を検出し、VCOでは必要に応じて振動子の周期を制御する。ここで、VCOからの出力信号を制御信号、目標となる信号を目標信号とすると、PLLの動作原理は、制御信号と目標信号の位相差をPDで検出し、PDの出力信号をLFを介してVCOに入力し、VCOの値がゼロになるまでVCOにて制御信号の周期が制御される。
【0006】
Volkovskiiらは、PLLを用いたCPGネットワークモデルを提案している(非特許文献4参照)。これは、CPGモデルとしてsin関数を用いているので、自励振動系ではないCPGネットワークモデルである。また、Hoppensteadtらは、PLLネットワークモデルを提案している(非特許文献5参照)。これは、VCOとして正弦波関数が用いられており、さらに、モデルの応用としてはパターン認識に関するものを提案している。
【0007】
また、Van der Pol(VDP)方程式は、真空管において発生する振動現象を説明可能な数理モデルである(非特許文献6参照)。VDP方程式を用いたCPGネットワークがいくつか提案されている(非特許文献7参照)。
【0008】

【非特許文献1】K.Matsuoka著,“The dynamic model of binocular rivalry,”Biological Cybernetics,Vol.49,pp.201-208,1984.
【非特許文献2】G.Taga,外2名著,“Self-organized control of bipedal locomotion by neural oscillators in unpredictable environment,”Biological Cybernetics,Vol.65,pp.147-159,1991.
【非特許文献3】H.Kimura、外2名著,“Adaptive Dynamic Walking of a Quadruped Robot on Natural Ground Based on Biological Concepts,”International Journal of Robotics Research,Vol.26,pp.475-490,2007.
【非特許文献4】A Volkovskii、外5名著,“Analog electronic model of the lobster pyloric central pattern generator,”Journal of Physics,Conference Series,Vol.23,pp.47-57,2005.
【非特許文献5】Frank C.Hoppensteadt、外1名著,“Pattern Recognition Via Synchronization in Phase-Locked Loop Neural Networks,”IEEE Transactions on neural networks,Vol.11,No.3,2000.
【非特許文献6】Van der Pol著,“On relaxation oscillations,”Phil.Mag.,No.2,pp.987-993,1926.
【非特許文献7】Max S.Dutra、外2名著,“Modeling of a bipedal locomotor using coupled nonlinear oscillators of Van der Pol,”Biological Cybernetics,No.88,pp.286-292,2003.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、移動運動生成のためには、CPGは、引き込み能力を持つ振動子(自励振動系:二階以上の微分非線形微分方程式で表現される)であり、周期と振幅が制御可能である必要がある。CPGネットワークは、複数のCPGから構成されており、CPG間の位相差が制御される必要がある。さらに、最終的に制御された各CPGの出力値は、振幅・周期が同じでなければならない。
【0010】
一方、非特許文献1、2、3などに記載された従来のCPGネットワークモデルは、高次の非線形微分方程式で表現されるCPGが結合荷重を介して相互結合をしたネットワーク構造をしている。そのため、各CPGの出力波形の制御が難しく、結合荷重やネットワーク構造の設計が困難であるという問題がある。例えば、従来の結合荷重の設計は、試行錯誤や遺伝的アルゴリズムなどのニューラルネットワークを用いて行われていた。しかし、いずれの場合も、計算量・時間がかかるものであった。さらに、実機(ロボット)への搭載を考慮した場合、各CPGの出力波形の振幅・周期及びCPG間の位相差は、独立に制御できるほうが望ましい。
【0011】
また、非特許文献4に記載されているように、PLLをCPGネットワークに応用する場合、VCOがCPGに対応する。ここで、所望の位相差を持つ目標信号が設計可能であると仮定し、PLLを必要な個数用意すると、任意の位相差を持つ信号が生成制御できるので、CPGネットワークが設計可能であるとも考えられる。しかしながら、PDの設計方法に関して問題が生じる。すなわち、PDの設計法には、減算法と乗算法の二つがある。減算法はVCOとしてsin関数などの正弦波が用いられるのでCPGには応用できない。乗算法はVCOとして正弦波以外に周期的な波にも使用可能であるが、各振動子の振幅がずれたまま位相が制御される場合があるので、CPGネットワークに応用することができない。
【0012】
さらに、VDPは自励振動系であり、振幅と周期がほぼ独立に制御可能なモデルである。したがって、VDPは、CPGモデルとして適していると考えられる。しかしながら、非特許文献7などに記載されたモデルは、どれもVDPの特長である、周期・振幅の制御性を保持していないCPGネットワークである。
【0013】
そこで、本願発明は、制御性に優れたCPGネットワークを実現可能な制御システム等を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願発明の第1の観点は、目標信号を生成する目標信号生成装置と制御信号を生成する複数の振動制御装置を含む制御システムであって、前記各振動制御装置は、振幅に関するパラメータ及び周期に関するパラメータに基づいて制御信号を生成する信号生成手段と、前記目標信号及び前記制御信号に基づいて、前記振幅に関するパラメータ及び前記周期に関するパラメータの少なくとも一方を調整する調整手段、を備えるものである。
【0015】
本願発明の第2の観点は、第1の観点の制御システムであって、前記各振動制御装置の調整手段が、他の振動制御装置により生成された制御信号とは独立である。
【0016】
本願発明の第3の観点は、第1又は第2の観点の制御システムであって、i番目(iは前記振動制御装置の個数以下の自然数)の振動制御装置において、前記信号生成手段は、(eq1)式に基づいて信号xiを生成し、前記調整手段は、Ai及びBiの少なくとも一方を調整するものである。
【0017】
本願発明の第4の観点は、第1から第3のいずれかの観点の制御システムであって、前記目標信号生成装置が、(eq4)式に基づいてi番目(iは前記振動制御装置の個数以下の自然数)の振動制御装置に対する目標信号Xを生成するものである。
【0018】
本願発明の第5の観点は、1から4のいずれかの観点の制御システムであって、前記調整手段が、前記目標信号と前記制御信号の位相差に基づき、前記振幅に関するパラメータ及び前記周期に関するパラメータの少なくとも一方を調整するものである。
【0019】
本願発明の第6の観点は、1から5のいずれかの観点の制御システムであって、前記調整手段が、前記目標信号と前記制御信号の差を計算する差分演算手段を有するものである。
【0020】
本願発明の第7の観点は、制御信号を生成する振動制御装置であって、所定の目標信号及び生成された制御信号に基づいて、新たに生成する制御信号の振幅及び周期の少なくとも一方を、互いに独立に調整する調整手段、を備えるものである。
【0021】
本願発明の第8の観点は、制御信号を生成する制御信号生成方法であって、所定の目標信号及び生成された制御信号に基づいて、振幅に関するパラメータ及び周期に関するパラメータの少なくとも一方が調整される調整ステップと、調整後の振幅に関するパラメータ及び周期に関するパラメータに基づいて、新たな制御信号を生成する信号生成ステップ、を含むものである。
【0022】
なお、前記目標信号は、設計者により定義された条件を満たすように生成されたものであってもよい。特に、本願発明の第4の観点において、(eq4)の定数ci1及びci2の組み合わせが所定の条件を満たすように自動的に生成されたものであってもよい。
【0023】
また、ある振動制御装置の調整手段が、与えられた目標信号以外にも、例えば、外部信号や他の振動制御装置の制御信号に基づいて新たに生成する制御信号の振幅及び周期の少なくとも一方を調整するものであってもよい。
【0024】
さらに、本願発明を、コンピュータにおいて各請求項に記載された発明を実現するためのプログラムやこのプログラムを記録する記録媒体などとして捉えてもよい。
【0025】
【数1】
JP0005224506B2_000002t.gif

【発明の効果】
【0026】
本願の各請求項に係る発明(以下、「本願発明」という。)によれば、各振動制御装置が独立に振動系を持ち、ネットワーク構造により各振動制御装置を制御可能となり、制御性に優れたCPGネットワークが実現可能となる。
【0027】
さらに、本願発明により実現されるCPGネットワークは、各CPG同士が荷重結合を介して相互結合をしておらず、例えばCPGネットワークの結合構造は歩様遷移図などをもとに一意に設計可能であり、結合荷重の設計を簡略化することができる。
【0028】
さらに、本願発明の第3の観点にあるように、VDP方程式を用いて、VDP方程式の特徴を保持したCPGネットワークが構築可能となる。そのため、各CPGから出力される信号の振幅・周期・位相差をほぼ独立に制御可能となり、これらの設計・制御が容易な、制御性に優れたCPGネットワークが実現可能となる。
【0029】
さらに、本願発明の第6の観点にあるように、出力値の減算処理を用いて目標信号(目標とする信号)と制御信号(制御する信号)の振幅・周期・位相を揃えることにより、CPGネットワークを実現可能となる。

【0030】
本願発明の応用としては、例えば、制御性が重要視されるロボットなどが考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下では、図面を参照して、本願発明の実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0032】
図1は、本願発明の実施の形態に係る制御システム1の概略ブロック図である。
【0033】
制御システム1には、目標信号を生成する目標信号生成装置3と、制御信号を生成するn個の振動制御装置51、・・・、5nが含まれる。
【0034】
本実施例においては、目標信号生成装置3及び振動制御装置51、・・・、5nは、VDP方程式を用いて設計される。そこで、まず、VDP方程式について説明する。
【0035】
VDP方程式は、1926年にVan der Polによって提案された、真空管内で起こる振動現象を説明する方程式である(非特許文献6参照)。VDP方程式は自励振動系(Limit cycleを持つ)である最も単純なモデルの一つであり、(1)式によって表わされる。
【0036】
ここで、A、Bはそれぞれパラメータである。εは非線形率を表し、この値が小さい範囲(0<ε≪1)では、VDPは正弦波振動を行う。ε=0の場合、VDPは調和振動子になり、KryloffとBogoliuboffが提案した近似法(Luis A.Pipes、外1名著,“Mathematics for engineers and physicists”,McGrawHill Education,Third Edition,1970参照)によると、調和振動子の解は、aとφを用いて、(2)式で表現できる。さらに、KryloffとBogoliuboffの解法を用いて(3)式及び(4)式が得られる。
【0037】
(3)式より、VDPの出力値の振幅は、da/dt=0のときに安定状態に落ち着き、その値はa=2Aになることがわかる。なお、実際のシミュレーションでは、振幅は正確に2Aになるとは限らない。これは、この解析が近似を用いた解法であるからである。
【0038】
また、(4)式より、VDPの出力値の位相は時間に依存せず一定であることがわかる。
【0039】
さらに、aとφが定数のとき、(2)式より、VDPの出力波形の周期はパラメータBで制御できることがわかる。
【0040】
以上より、任意定数a及びφに対して、(2)式と(3)式より、VDPの出力値の振幅と周期は、それぞれAとBによって独立に制御可能であり、周期はBに反比例し、振幅は2Aになる。
【0041】
図2は、VDP方程式の出力波形の振幅と周期を測定したシミュレーション結果を示す図である。ε=0.2、初期値として、x=0.5、dx/dt=0.1を用いた。A=0では、VDPは減衰振動を示し、A<Bの範囲でVDPは振動を続けた。図2より、VDPの出力波形の振幅と周期は、パラメータA及びBによってそれぞれほぼ独立に制御可能であることが確認できる。以上のように、VDPは自励振動系であり、振幅と周期の独立制御性を持っているので、制御性に優れたCPGネットワークの設計のために有用であると考えられる。
【0042】
図1を参照して、目標信号生成装置3は、外部より与えられるパラメータA及びBに基づいて、VDP方程式を利用して、振動制御装置5i(iはn以下の自然数)に対する目標信号Xiを生成する。各振動制御装置5iの振幅・周期を揃えるために、目標信号Xi によって、各VDPの振幅・周期制御項を一律に制御する。この処理により、外界の変化に応じて波形を一律に制御可能なCPGネットワークの設計が可能となる。
【0043】
振動制御装置5iは、外部よりパラメータA及びBが与えられ、これらを調整して得られるパラメータAi及びBiに基づいて、(5)式により制御信号xiを生成する。信号制御装置5iは、目標信号Xi及び生成された制御信号xiに基づいて、パラメータAi及びBiの少なくとも一方を調整する調整部9iと、調整部9iによる調整後のパラメータに基づいて新たに制御信号xiを生成する信号生成部11iを備える。
【0044】
図1において、振動制御装置51、・・・、5nは互いに独立であり、それぞれ、目標信号生成装置3により生成された目標信号X1、・・・、Xnを用いて制御信号を生成する。さらに、各振動制御装置51、・・・、5nにおいて、生成される制御信号の振幅及び周期はほぼ独立に調整可能である。そのため、例えば歩様を実現するにあたり、振動制御装置を各脚に対応して設けることにより、各脚は互いに独立に制御可能となり、さらに、二脚、三脚など、任意の脚数に対応可能となる。このように、例えば振動制御装置の数の変化にも対応可能であり、本願発明によりロバストなシステムを実現可能である。このようなシステムは、歩様などの動作の本質に着目したことにより実現しえたものである。
【0045】
【数2】
JP0005224506B2_000003t.gif

【0046】
続いて、VDPを用いた振動制御装置5iの設計について具体的に説明する。ただし、より一般的に、VDPを用いた、CPGネットワーク(図1の制御システム1に対応)を構成するn個のCPG(図1の振動制御装置5iに対応)の設計について、周期に関するパラメータBiのみを調整する場合について具体的に説明する。すなわち、以下の説明では、各CPGにおける振幅に関するパラメータAiは調整せず、外部より与えられるパラメータAと等しいものとする。このように、本願発明は、少なくとも周期に関するパラメータを調整するものであってもよい。
【0047】
図3は、提案するCPGモデルであるCPGi21のブロック図である。CPGi21は、図1の調整部9iに対応する調整部23と、図1の信号生成部11iに対応するVDPi25を備える。
【0048】
i番目のCPGiのVDP方程式(VDPi)は、(6)式で表現される。
【0049】
本実施例では、VDPの特徴である振幅と周期の制御性を保持したままCPG間の位相差を制御するために、以下の方法を用いる。まず、各CPGの出力値xiに対する所望の位相差を持つ信号を目標信号Xiとし、Xiが既知であると仮定する。そして、xiとXiの位相差がゼロになるようにCPGiの周期を一時的に制御することで、CPG間の位相差を制御する方法を考察する。
【0050】
iとXiの差を取り、その値がゼロになるように各CPGの周期のみを制御する。この操作は(7)式のように表現できる。ここで、biはi番目のCPGiの出力波形の周期を一時的に制御するパラメータであり、kはxiとXiの差を周期制御にどのくらい反映させるかを決定するための係数である。以下では、常にk=1とする。
【0051】
次に、biを用いて、(6)式で表現されるCPGiのパラメータBi(周期に関するパラメータ)を、(8)式を用いて制御する。(8)式の物理的意味は、パラメータBが各CPGの自然周波数を表し、biがi番目のCPGiの出力波形xiに対する目標信号Xiの位相のずれを表現している。
【0052】
(7)式及び(8)式により表現される処理をxiとXiの差がなくなるまで繰り返す。この処理により、目標信号Xiが既知の状態では、各CPGの出力値xiは目標信号Xiと同位相の信号を生成することが可能になり、結果的にCPG間の位相を制御することが可能になる。
【0053】
【数3】
JP0005224506B2_000004t.gif

【0054】
続いて、VDPを用いた目標信号生成装置3(目標信号を生成する振動子であり、以下ではリズムジェネレータ(RG)という。)の設計について具体的に説明する。
【0055】
各CPGに固有の目標信号を設定するためには、設計する歩様を定義する必要がある。本実施例では、図4に示す四脚歩行動物の代表的な歩様信号を生成する。図4は、四脚歩行動物の代表的な歩様の遷移図である。(a)はwalkモード、(b)はtrotモード、(c)はboundモード、(d)はgallopモードである。図4において、LF、RF、LH、RHは、それぞれ左前脚、右前脚、左後脚、右後脚を表す。矢印は、位相遷移方向を表し、イコールは位相が同期していることを示す。
【0056】
図4より、制御すべきCPG間の位相差は、0、π/2、π、3π/2の四種類のみであることが確認できる。これらの位相差を表現するための目標信号を生成する方法を考察する。
【0057】
(7)式に関して述べたとおり、目標信号の条件として、各CPGの出力値xiと目標信号Xiの位相差がゼロになった後xi-Xi=0になる必要がある。さらに、目標信号は、一つの波形を基準として0、π/2、π、3π/2の四種類の位相差を持つ波形を生成する必要がある。
【0058】
リズムジェネレータを、VDP方程式を用いて設計する方法を考察する。
【0059】
図5は、提案するリズムジェネレータであるRG31のブロック図である。図5において、VDPR33はRGを構成するVDPであり、出力信号は添え字のRを用いて表現する。VDP方程式を用いてRGを設計することで、VDP内で計算処理されているxR、τdxR/dtに±を付加し、目標信号Xiとすることができる。これにより、xRを基準波形として上述の四種類の位相差が表現可能となる。一例として、X1=XR、X2=τdxR/dtとすると、制御後のx1とx2の位相差はπ/2となる。ただし、これはVDPが安定解を持つ範囲内で使用されることを前提条件とする。
【0060】
図5において、目標信号選択部35は、n個のCPGそれぞれについて、図4の歩様遷移図に基づき、入力された4つの信号から1つの出力値Xiを選択する。各CPGには、パラメータAとBと同じ値が入力され、目標信号Xiとして、目標信号選択部35により選択された±τdxR/dtと±xRのどれか一つが用いられる。(9)式は、これを数式で表現したものである。
【0061】
ここで、本実施例においては、ci1、ci2は0、-1、1のどれかの値をとる。加えて、ci1とci2は必ずどちらかがゼロであり、同時にゼロになることはないという条件を持つ。式中のτは二つの役割を持つ。一つは、時定数でありxRとdxR/dtのどちらかで表わされるXの次元を常にxRの次元に合わせるためである。二つ目は、xRとdxR/dtの出力波形の振幅を常に一定に保つためである。これは、パラメータAとBの値によっては、xRとdxR/dtの出力波形の振幅が異なる場合があり、この状況に対処するためである。よって、τは(10)式によって計算される。max関数は、出力波形xRとτdxR/dtの振幅を表現している。出力波形xRの振幅は、理論上、2Aとなる。
【0062】
【数4】
JP0005224506B2_000005t.gif

【0063】
RGと各CPGはどちらもVDPを用いて設計されるが、各CPGは実際のロボットへ搭載するセンサからのフィードバック信号や、目標信号Xiが入力される点でRGと構造が異なる。
【0064】
なお、本実施例は、従来のCPGネットワークの相互結合・結合荷重の問題を解決するために、Phaselock Techniquesに注目してはいるものの、本実施例では、二つの振動子の振幅・位相を揃えるために、二つの振動子の出力値の減算を行う処理を用いている。減算処理の出力値は、目標信号と制御信号の振幅、位相が同じ場合にはゼロになるが、必ずしも二つの振動子の位相差に比例していない。そのため、PDではない。つまり、減算処理を用いたPhaselock TechniquesはPLLではないといえる。
【0065】
続いて、図3のCPGi及び図5のRGを用いて、四脚歩行動物のためのCPGネットワークの設計について説明する。
【0066】
図6は、四種類の歩様生成のためのCPGネットワークの構造の一例を示す図である。(a)はwalkモード、(b)はtrotモード、(c)はboundモード、(d)はgallopモードである。
【0067】
まず、RGを一個と、必要な個数(n個)のCPGを用意する。本実施例では四脚歩行のための移動運動信号の生成・制御を行うので、CPGは4個(n=4)必要となる。RGと各CPGには、振幅と周期を決定するパラメータA及びBをそれぞれ入力する。
【0068】
各CPGは、各脚に対応させる。本実施例では、CPG1、CPG2、CPG3、CPG4を、それぞれLF、RF、LH、RHとする。
【0069】
各CPGの目標信号Xiは、図4に示す歩様遷移図をもとに決定する。以下では、walkモードにおけるXi(1≦i≦n)の決定法を説明する。
【0070】
1はLFに対応し、CPG間の位相を考慮する場合、四つの足の基本波形になるので、目標信号X1としてxRを入力する。
【0071】
2、x3、x4は、それぞれRF、LF、RHに対応し、LFに比べて位相差がそれぞれπ、3π/2、π/2であるので、それぞれ、目標信号X2、X3、X4として-x、τdxR/dt、-τdxR/dtを入力する。
【0072】
walkモードにおけるCPGネットワークを(9)式と対応させると、c11=1、c21=-1、c31=0、c41=0、c12=0、c22=0、c32=1、c42=-1となる。同様に、trot、bound、gallopモードに関しても、歩様遷移図をもとに一意にネットワークが設計できる。さらに、それぞれの歩様におけるci1とci2の値をまとめると、表1に示す通りになる。
【0073】
【表1】
JP0005224506B2_000006t.gif

【0074】
なお、図7は、本願発明の他の実施例に係る制御システム41の概略ブロック図であるが、例えば図10にあるように、目標信号生成装置43はVDR方程式に基づいて基本的な信号xR、τdxR/dtを生成し、目標信号選択装置45iは、信号xR、τdxR/dtに対して、係数ci1、ci2を用いて(9)式にあるようにして計算を行い、n個の振動制御装置47iは、それぞれ、目標信号選択装置45iにより選択された信号に基づいて出力信号xiを生成するようにしてもよい。
【0075】
また、さらに他の実施例として、図7を参照して、目標信号生成装置43は、各振動制御装置47iに必要な信号(例えば4つの信号xR、-xR、τdxR/dt、-τdxR/dt)を生成し、目標信号選択装置45iはこれらの信号から必要に応じて1つの信号を選択するものであってもよい。
【0076】
このように、目標信号生成装置(リズムジェネレータ)は、図7にあるように、基本的な信号を生成するものとして捉えてもよく(上記実施例ではxR及びτdxR/dtという2信号型)、これらの信号に対して-1倍等の演算を行い、必要な信号を生成する部分も含めて捉えてもよく(上記実施例では4信号型)、さらに、図5にあるように、各振動制御装置(CPG)に与える信号を特定する部分も含めて捉えてもよい(上記実施例ではn信号型)。
【実施例2】
【0077】
続いて、図8、9、10を参照して、Matlabを用いたシミュレーションにより、提案モデルの有効性を示す。非線形微分方程式の解法として、4次のルンゲクッタ法を用いた。
【0078】
図8は、walkモードにおける各CPGの出力信号xiとbiの遷移を示す図である。(a)は各CPGの出力信号xiの遷移を示し、(b)はbiの遷移を示す。ε=0.2、k=1、初期値として、xR=0.1、x1=0.1、x2=-0.5、x3=0.3、x4=0.7、dxR/dt=0.1、dx1/dt=0.1、dx2/dt=0.3、dx3/dt=0.3、dx/dt=0.2を用いた。さらに、振幅と周波数を決定するパラメータは、A=0.5、B=1とした。biはxiの目標信号Xiとの位相のずれを表している。本実験では、bi<0.3以下をゼロとして処理した。この処理は、A、Bのパラメータによっては、xiとXiの位相が同期した後でも、(8)式中のbiが完全にゼロにならない場合があるからである。出力結果より、各CPGの出力波形の位相差がπ/2となるように、各CPGの周期がbiにより制御されていることがわかる。また、各CPGの出力値が各目標信号に制御された後は、biは0になっていることが確認できる。
【0079】
図9は、trot、bound、gallopモードにおける各CPGの出力信号xiの遷移を示す図である。図9において、(a)はtrotモードの、(b)はboundモードの、(c)はgallopモードのシミュレーション結果を表す。ε、k、A、B、初期値として、xR、dxR/dt、xiとdxi/dtはwalkモードでのシミュレーション条件と同じものを用いている。図9より、図4に示す歩様遷移図と同じ位相差を持つ信号が生成・制御されていることが確認できる。また、図8(a)、図9(a)、(b)、(c)の出力結果は、それぞれ同じパラメータAとBを用いているので、各歩様において振幅と周期がそれぞれ同一の値をとっていることが確認できる。また、各モードの出力値は、CPG1の出力値であるx1を基準として所望の位相差を持つ波形(x2、x3、x4)が生成制御されていることが確認できる。
【0080】
図10は、walkモードにおけるパラメータAとBを調整させた場合の実験結果である。(a)はA=0.5、B=0.6のとき、(b)はA=0.5、B=1のとき、(c)はA=0.8、B=1のときである。ε、k、初期値として、xR、dxR/dt、xiとdxi/dtは、上述の値をそのまま用いた。図10より、ネットワーク構造においても、各CPGの出力波形の振幅・周期がそれぞれ独立に制御可能であることが確認できる。さらに、既述のとおり、VDPの出力波形の振幅はパラメータAの2倍、振幅はBに反比例していることが確認できる。このように、パラメータAとBによって出力波形の振幅と周期がそれぞれ独立に制御可能であることが確認できる。また、各信号の周期Tの測定結果は、(a)が105(steps)、(b)が62(steps)、(c)が63(steps)であった。
【0081】
以上のように、本実施例では、CPGネットワークを構成する各CPGがLimit cycleを持っており、RGによってCPG間の位相差のみが制御される。さらに、各CPGは出力値の振幅と周波数がほぼ独立に制御可能な非線形微分方程式であるVDPを用いて表現される。そのため、制御性の高いCPGネットワークの設計が可能となる。
【実施例3】
【0082】
続いて、目標信号選択装置(図5の目標信号選択部35、図7の目標信号選択装置451、・・・、45n参照)につき、他の実施例を説明する。
【0083】
(9)式の係数ci1及びci2の組み合わせを、ある条件の下で自由に選ぶことにより、条件を満たす歩様を自由に切り替えることが可能となる。そこで、代表的な歩様(例えば、図4及び表1参照)のci1及びci2の組み合わせから、規則を見つけ、それを条件とする。
【0084】
表1を参照して規則の例を説明する。x1は、基本波形として固定する(c11=1、c12=0)。表1より、ci1の総和及びci2の総和はゼロである(Σci1=Σci2=0)。また、ci1とci2の和は1又は-1である(ci1+ci2=1又は-1)。このことから、以下に説明するように、CPGネットワークにおける拘束(下記条件1及び条件2)及び生物の歩様における拘束(条件3)に基づいて3つの条件を作成し、目標信号選択装置は、その条件のもとで、ci1及びci2の組み合わせを決定する。
【0085】
第1の条件(条件1)は、すべての生成波形の総和はゼロであることである(Σci1=Σci2=0)。第2の条件(条件2)は、xiとdxi/dtは同時に結合されないことである(ci1+ci2=1又は-1)。第3の条件(条件3)は、同側の前足と後足は同位相になることはないことである(c21≠c41、かつ、c31≠1)。
【0086】
上記の3つの条件を全て同時に満たす歩様は、walk、trot、bound、gallopモード(図4、表1参照)以外に、4つ存在する。表2は、walk、trot、bound、gallopモード以外の4つの歩様のci1及びci2の組み合わせを示す表である。また、図11は、図4に記載されたwalk、trot、bound、gallopモード以外の歩様の遷移図である。
【0087】
これより、上記の3つの条件を満たすパラメータセットは8種類であり、設計者が定義した条件歩様を満たす歩様の獲得が可能となる。
【0088】
【表2】
JP0005224506B2_000007t.gif

【0089】
図12を参照して、シミュレーションにより、提案モデルの有効性を示す。実験及びシミュレーション条件は、上記の条件1・2・3を全て同時に満たすci1及びci2の組み合わせを乱数で生成することである。ただし、乱数がとり得る値は、-1、0、1の三種類の中から選択される。CPGネットワーク構造は、1500ステップごとに乱数を発生させて変更される。
【0090】
図12は、自動的に生成されたci1及びci2の組み合わせによる、(a)各CPGの出力信号xiの遷移及び(b)biの遷移を示す図である。横軸はステップ数を表す。自動生成されたci1及びci2の組み合わせは、1500ステップまではgallopモード、1501~3000ステップは歩様4モード、3001~4500ステップはtrotモードである。図12より、指定された条件を満たす歩様を自動的に生成可能であることが分かる。この条件のもと生成される8種類の信号は、一つの脚が動いている間、常に他の三本脚が地面に着地しているので、安定した移動が期待できる。よって、これらの位相関係で制御される信号は、歩様信号と考えることができる。
【実施例4】
【0091】
続いて、図13~図15を参照して、多様な位相差を生成する機構について、他の実施例を説明する。以下に説明するように、このような位相差の生成を行うことにより、リズムジェネレータRGで生成された基本的な信号による位相差を微調整したり、脚数の変化に対応したりすることが可能となる。
【0092】
図13は、本願発明の他の実施例に係る振動制御装置51i(iはシステムにおける振動制御装置の個数n以下の自然数)の概略ブロック図である。振動制御装置51iは、図1の振動制御装置5iと同様に外部のリズムジェネレータより目標信号Xiが入力される。図13において、調整部53iには外部からの信号(外部信号)eiが入力される。また、調整部53iには、他の振動制御装置から制御信号x1、・・・、xi-1、xi+1、・・・、xnが入力される。
【0093】
まず、調整部53iが外部信号eiを用いて位相差を調整する場合について説明する。本実施例では、(8)式に代えてBi=B+bi+eiを用いる。図14は、1500ステップまではRGを用いて位相差制御を行い、1500ステップ以降は外部信号を利用した場合の(a)各CPGの出力信号xiの遷移及び(b)biの遷移を示す図である。800~1500ステップは、boundモードである。調整部53iは、外部信号ei(1500~1550ステップにおいて外部信号e2=0.2であり、他の部分ではei=0である。)に基づき、Biを調整する。図14より、位相差が変更されていることが分かる。以上より、図14により、外部信号を利用することで、任意の位相差を持つ波形を生成可能であることが分かる。
【0094】
次に、調整部53iが、例えば振動制御装置の数が変更した場合などに、他の振動制御装置の制御信号を用いて位相差を調整する場合について説明する。(一周期×1/n)ずれ波形は、xiの総和がゼロ(Σxi=0)という関係が必ず成り立つ。これにより、(一周期×1/n)ずれの位相差を持つ波形を生成制御することが可能となる。図15は、1500ステップまではRGを用いて位相差制御を行い、1501ステップ以降は制御信号xiの総和がゼロとなるようにbiを制御した場合の(a)各CPGの出力信号xiの遷移及び(b)biの遷移を示す図である。1000~1500ステップは、walkモードであり、位相差は2π/4である。ここで、右前脚(x2)への信号出力部が壊れたと仮定する。この場合、制御信号を生成可能なものは、左前脚(x1)、左後脚(x3)、右後脚(x4)である。そこで、1500ステップ以降は、RGを用いず、x2=0として、xiの総和がゼロとなるようにbiを制御する。これにより、位相差を2π/3とすることができる。図15により、脚数変化にも適応可能であることが分かる。
【0095】
なお、例えば、特開2006-289602号公報には、引き込み特性を持つ振動子を用いて可動部の周期運動の制御を行うロボット装置が記載されている。これは、位相差を揃えるものではあるが、本願発明とは、振幅と周期の独立制御性を有さない点、振動子の引き込みを利用している点(本願発明は、周期を直接制御可能)、Matsuokaモデルを信号生成部で利用している点で異なるものである。
【0096】
本実施例のCPGネットワークに用いられるVDPは、安定解を持つ範囲内でのみ使用される。つまり、提案モデルで表現できる正弦波振動の振幅と振幅は制限されることになる。しかし、実際の四脚歩行ロボットの各脚の移動範囲は機構的に決まっており、その範囲を超えて動かす必要はないので、一つのVDPで表現可能な出力波形の出力範囲と各脚の挙動範囲を対応させることでこの問題を解決できると考えられる。
【0097】
また、四脚歩行動物は、walk、trot、bound、gallopモードと歩様が遷移するに従って、歩行スピードが速くなる。これに対し、本提案手法は、歩様が変化しても歩行スピード(周期)は一定なので、歩様遷移が行われた場合、さらに歩行スピードを決定するためにVDP内のパラメータBを制御する必要がある。
【0098】
しかし、本実施例は、振幅と周期がほぼ独立に制御可能であり、位相差、振幅を固定したまま、歩行スピード(周期)を制御可能であるので、歩様遷移に対処可能である。
【0099】
さらに、実際の歩行動物は、一つの脚が何かに躓いたりすると、他の脚は躓いた脚に影響をうけて巧みに動きを変えながら安定した歩行を続ける。本実施例では、各CPGは相互結合をしていないが、例えば、センサーフィードバックを利用する方法が有効であると考えられる。体のバランスをセンサする信号を各CPGにフィードバックさせ、体のバランスに応じて各CPGが、影響を及ぼしあうCPGネットワークは有効であると考えられる。センサ等の外部装置を付加することで、例えば、歩様は一定のまま歩行周期を調節可能(移動運動の速さを調節可能)となったり、歩様は一定のまま、例えば歩幅を広くするなど歩幅を変更し、設計者が任意にエネルギー関数を設定することで、設計者の好みに応じた歩様を生成可能となったり、一部の脚の歩幅を変更したり、脚数の変化に対応した歩行運動生成のための信号を生成したりすることができる。このようなことは、従来のCPGネットワークでは実現が困難であったものである。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本願発明の実施の形態に係る制御システム1の概略ブロック図である。
【図2】VDP方程式の出力波形の振幅と周期を測定したシミュレーション結果を示す。
【図3】提案するCPGモデルであるCPGi21(図1の振動制御装置51、・・・、5nに対応)のブロック図である。
【図4】四脚歩行動物の代表的な歩様の遷移図である。
【図5】提案するリズムジェネレータであるRG31(図1の目標信号生成装置3に対応)のブロック図である。
【図6】四種類の歩様生成のためのCPGネットワークの構造の一例である。
【図7】本願発明の他の実施例に係る制御システム41の概略ブロック図である。
【図8】walkモードにおける各CPGの出力信号xiとbiの遷移を示す。
【図9】(a)はtrotモード、(b)はboundモード、(c)はgallopモードにおける各CPGの出力信号xiの遷移を示す図である。
【図10】walkモードにおけるパラメータAとBを調整させた場合の各CPGの出力信号xiの遷移を示す図である。
【図11】図4に記載されたwalk、trot、bound、gallopモードより設定された条件と、生物の歩様により得られる拘束に基づき得られる条件を同時に満たす歩様のうち、walk、trot、bound、gallopモード以外の歩様の遷移図である。
【図12】自動的に生成されたci1及びci2の組み合わせによる、(a)各CPGの出力信号xiの遷移及び(b)biの遷移を示す。
【図13】本願発明の他の実施例に係る振動制御装置51i(iはn以下の自然数)の概略ブロック図である。
【図14】1500ステップまではRGを用いて位相差制御を行い、1500ステップ以降は外部信号を利用した場合の(a)各CPGの出力信号xiの遷移及び(b)biの遷移を示す。
【図15】1500ステップまではRGを用いて位相差制御を行い、1500ステップ以降は制御信号x2以外の制御信号xiの総和がゼロとなるようにbiを制御した場合の(a)各CPGの出力信号xiの遷移及び(b)biの遷移を示す図である。
【符号の説明】
【0101】
1 制御システム、3 目標信号生成装置、51,・・・,5n 振動制御装置、91,・・・,9n 調整部、111,・・・,11n 信号生成部、21 CPGi、23 調整部、25 VDPi、31 RG、33 VDPR、43 目標信号生成装置、471,・・・,47n 振動制御装置、51i 振動制御装置、53i 調整部、55i 信号生成部
図面
【図1】
0
【図3】
1
【図4】
2
【図5】
3
【図6】
4
【図7】
5
【図11】
6
【図13】
7
【図2】
8
【図8】
9
【図9】
10
【図10】
11
【図12】
12
【図14】
13
【図15】
14