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明細書 :ロータリエバポレータ及びこのロータリエバポレータを備えた放射性薬剤の自動調剤装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5246842号 (P5246842)
公開番号 特開2009-084246 (P2009-084246A)
登録日 平成25年4月19日(2013.4.19)
発行日 平成25年7月24日(2013.7.24)
公開日 平成21年4月23日(2009.4.23)
発明の名称または考案の名称 ロータリエバポレータ及びこのロータリエバポレータを備えた放射性薬剤の自動調剤装置
国際特許分類 B01D   3/00        (2006.01)
A61K  49/00        (2006.01)
A61K  51/00        (2006.01)
FI B01D 3/00 C
A61K 49/00 C
A61K 49/02 A
請求項の数または発明の数 5
全頁数 18
出願番号 特願2007-258839 (P2007-258839)
出願日 平成19年10月2日(2007.10.2)
審査請求日 平成22年8月12日(2010.8.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301032942
【氏名又は名称】独立行政法人放射線医学総合研究所
発明者または考案者 【氏名】鈴木 和年
【氏名】鈴木 寿
個別代理人の代理人 【識別番号】100064414、【弁理士】、【氏名又は名称】磯野 道造
【識別番号】100111545、【弁理士】、【氏名又は名称】多田 悦夫
審査官 【審査官】山本 吾一
参考文献・文献 登録実用新案第3002981(JP,U)
実開昭60-9501(JP,U)
実開昭54-28488(JP,U)
調査した分野 B01D 1/00 - 5/00
JSTPlus/JMEDPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
溶媒に溶解された放射性化合物を含んでなる試料から前記溶媒を気化させ、残った前記放射性化合物を生理食塩水で再溶解して放射性薬剤を製造するためのロータリエバポレータであって、
調剤用フラスコと、
前記調剤用フラスコを加熱するヒータと、
前記調剤用フラスコが取り付けられてこれを自転させ、当該調剤用フラスコを傾斜させた状態と、垂直の状態と、に可変できる軸部材によって設置台に支持されたロータリホルダと、
前記調剤用フラスコ内に連通され、試料の導入及び導出を行うチューブ材と、を備え、
前記調剤用フラスコは、底部に、前記チューブ材の先端を差し入れることができる凹部を有する
ことを特徴とするロータリエバポレータ。
【請求項2】
前記調剤用フラスコの凹部は、当該調剤用フラスコの口部と対向する位置に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のロータリエバポレータ。
【請求項3】
前記ヒータは、
前記調剤用フラスコを、その外周面から一定距離離間した位置で被覆して加熱する加熱部と、
前記加熱部と前記調剤用フラスコの間に配置される送風管と、
前記送風管の一端部に設けられ、前記調剤用フラスコの前記底部と対向する位置に配置されて、前記加熱部で加熱された熱風を前記調剤用フラスコに向けて吹き出す送風口と、を有する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のロータリエバポレータ。
【請求項4】
前記加熱部は、
二重隔壁構造を有し、当該二重隔壁間を真空とした
ことを特徴とする請求項3に記載のロータリエバポレータ。
【請求項5】
経路内の自動洗浄及び乾燥を行うとともに、異なる放射性薬剤を繰り返し自動調剤するための放射性薬剤の自動調剤装置であって、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のロータリエバポレータと、
前記ロータリエバポレータに接続され、前記放射性化合物を分離精製し、前記ロータリエバポレータに移送するための分離精製装置と、
前記分離精製装置及び前記ロータリエバポレータを制御する制御装置と、を有する
ことを特徴とする放射性薬剤の自動調剤装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性薬剤の製造を行うためのロータリエバポレータ及びこのロータリエバポレータを備えた放射性薬剤の自動調剤装置に関し、特に、複数種類の放射性薬剤を、装置を分解することなく、繰り返し調剤することのできるロータリエバポレータ及びこのロータリエバポレータを備えた放射性薬剤の自動調剤装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放射性薬剤の調剤は、作業者が手動で操作することを前提とした調剤装置を用いて一種類の薬剤のみを調剤するのが一般的であった。しかし、放射性薬剤の調剤処理においては、各工程で、作業者が放射線被爆する危険性がある。このような危険性を低減するため、特に、放射性薬剤の調剤処理の全ての工程を自動化する技術の確立が試みられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、円筒ロータリエバポレータ本体内に、中空の回転シャフトを回転自在に設けるとともに、回転シャフトの端部にエアヒータにより加熱される調剤用フラスコを着脱自在に設け、また試料導出用チューブから製品受槽に至る導管にはそれぞれバルブを介して生理食塩水貯層及び滅菌フィルタを設け、これらバルブ操作を4連ピンチバルブで操作するようにしてなる放射性薬剤調剤製造装置について記載されている。
この放射性薬剤調剤製造装置の一連の動作は、分離精製装置からフラスコに試料を移送し、エアヒータにより熱風を吹き付けながらフラスコを回転させて溶媒を気化させた後に、目的成分を生理食塩水に溶解させた後、滅菌・ろ過して細菌等を除去することにより放射性薬剤が調剤され、この放射性薬剤を圧送して製品受槽に回収することで、調剤処理を自動化している。
このような従来の装置には、フラスコやチューブなどの部品の洗浄機能がないため、繰り返し使用するためには、調剤した放射性薬剤を回収後、装置を分解してフラスコやチューブなどの部品を滅菌洗浄し、再度、組み立てなおすことが必要であった。
【0004】

【特許文献1】特開平6-271479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、短寿命の放射性同位元素を用いた複数種類の放射性薬剤を製造するために1日に何度も製造に供される調剤装置としては、以下の条件を満たすことが求められると考えられている。すなわち、(1)作業者の放射線被爆を避けるために、放射性薬剤の調剤及び洗浄を含む全工程の自動処理が可能であること、製造効率の向上のために、(2)迅速処理が可能であること、及び、(3)効率の良い移送が可能であること、製品として使用しうるために、(4)1台の調剤装置で複数の放射性薬剤を扱ってもクロスコンタミネーションを起こさないこと、及び、(5)1台の調剤装置で装置を分解することなく自動的に複数種類の放射性薬剤の繰り返し調剤処理が可能であること、である。
【0006】
この点に鑑みると、特許文献1に示す放射性薬剤調剤製造装置は、放射性薬剤の調剤処理を自動で行うことが可能であるため、調剤処理に関しては、作業者の放射線被爆の危険性を低減させることができる。しかし、洗浄処理に関しては、なお自動で行うことが困難であった。
【0007】
また、上記(2)~(5)の条件については、なお、満たすことが困難であった。ここで、上記(2)~(5)の条件を満たすためには、調剤された放射性薬剤を効率よく回収し、フラスコ内の放射性薬剤の残留分を最小限に抑えることが必要であると考えられる。しかしながら、特許文献1に示す放射性薬剤調剤製造装置において、放射性薬剤を回収する試料導出用チューブは、フラスコ内部に延びる側が完全に自由端であったため、フラスコ内の放射性薬剤が溜まった箇所にうまく合致しない場合があった。加えて、放射性薬剤は、フラスコ内の広範囲に拡がって溜まるため、チューブの先端では、放射性薬剤を回収しきれず、フラスコ内の放射性薬剤の残留分が多くなってしまっていた。
【0008】
このようにフラスコ内の放射性薬剤の残留分が増えると、製品の回収効率が低下するばかりでなく、洗浄処理の際に、フラスコ内の洗浄回数を増やさなければならず、洗浄処理に長時間を要していた。さらに、このような洗浄効率の低下が洗浄精度の低下を招き、1台の放射性薬剤調剤製造装置で複数の放射性薬剤を扱ったり、同一のフラスコを継続使用して別の放射性薬剤を生成したりすると、クロスコンタミネーションが起こってしまうという問題があり、自動洗浄を行うことができなかった。このため、製造毎に装置を分解し、フラスコやチューブなどの部品を滅菌洗浄した後、再度組み立てる必要があったため、作業者の放射線被爆が避けられなかった。このように装置を分解して再度組み立てると、作業中にフラスコやチューブが細菌などによって汚染される危険性が高まるという問題もあった。
【0009】
さらに、特許文献1に示す放射性薬剤調剤製造装置において、エアヒータの熱風は、フラスコの底面付近のみに吹き付けられていた。このため、フラスコの底面付近のみしか熱が行き渡らないことから、熱効率が悪く、溶媒の気化などに長時間を要していた。これにより、放射性薬剤の製造に時間が掛かってしまい、放射能が減少して製造効率が悪かった。また、局所的に加熱されると、製造した放射性薬剤を分解してしまう危険性があった。
【0010】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、放射性薬剤の回収効率を向上させると共に、ロータリエバポレータの洗浄効率を向上させて、クロスコンタミネーションを防止することで、作業者の放射線被爆を低減させて、短時間かつ1日に複数回、高精度な放射性薬剤を調剤することができるロータリエバポレータ及びこれを備えた放射性薬剤の自動調剤装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決した本発明のロータリエバポレータは、溶媒に溶解された放射性化合物を含んでなる試料から前記溶媒を気化させ、残った前記放射性化合物を生理食塩水で再溶解して放射性薬剤を製造するためのロータリエバポレータであって、調剤用フラスコと、前記調剤用フラスコを加熱するヒータと、前記調剤用フラスコが取り付けられてこれを自転させ、当該調剤用フラスコを傾斜させた状態と、垂直の状態と、に可変できる軸部材によって設置台に支持されたロータリホルダと、前記調剤用フラスコ内に連通され、試料の導入及び導出を行うチューブ材と、を備え、前記調剤用フラスコは、底部に、前記チューブ材の先端を差し入れることができる凹部を有する構成とした。
【0012】
このようなロータリエバポレータによれば、ロータリエバポレータに接続された分離精製装置から移送された試料を、調剤用フラスコ内に連通するチューブ材より調剤用フラスコ内に導入し、調剤用フラスコ内を減圧するとともに、ロータリホルダによって調剤用フラスコを自転させる。この状態で、ヒータを稼動させて調剤用フラスコの周囲を加熱しながら、試料を還流させ、試料に含まれる溶媒を気化させて放射性化合物を得る。ここで、気化された溶媒は、チューブ材から順次導出する。さらに、チューブ材から調剤用フラスコ内に生理食塩水を導入して還流させ、放射性化合物を生理食塩水に溶解させて放射性薬剤を得る。続いて、軸部材を回転させて、調剤用フラスコを傾斜させた状態から垂直な状態にする。このようにして、重力によって流下して調剤用フラスコの凹部に集まった放射性薬剤を、先端が凹部に差し入れ可能に配置されたチューブ材で導出して製品として回収する。続いて、調剤用フラスコを再び傾斜させた状態にして洗浄液を導入して加熱しながら還流させて、蒸発した洗浄液が再び容器表面などで液化して下に落ちることを利用して調剤用フラスコ及びチューブ材を洗浄し、洗浄後、調剤用フラスコを垂直にしてチューブから洗浄液を導出する。
【0013】
本発明のロータリエバポレータによれば、ロータリホルダを回動させて調剤用フラスコを垂直にしたときに、調剤用フラスコ内の放射性薬剤が重力によって流下して底部に集まる。底部には、チューブ材の先端が差し入れ可能に配置された凹部が設けられているので、チューブ材の先端で放射性薬剤が回収されて調剤用フラスコ内の放射性薬剤の残量が少なくなるにつれて、残りの放射性薬剤が凹部内に順次集められることとなり、これにより、チューブ材の先端で放射性薬剤を回収しやすくすることができる。したがって、調剤用フラスコ内の放射性薬剤のほとんど全てを導出することができる。これにより、製品の回収効率を向上させることができる。このように、調剤用フラスコ内の放射性薬剤の残留分を非常に少なくすることができるので、調剤用フラスコの洗浄の負担が大幅に軽減され、洗浄効率及び洗浄精度を向上させることができる。また、連続して複数の放射性薬剤を調剤しても、クロスコンタミネーションが起こりにくくすることができる。さらに、本発明のロータリエバポレータによれば、調剤用フラスコ内やチューブ材を取外し等しなくても洗浄することができるので、作業者の放射線被爆の危険性を大幅に低減させることができる。
【0014】
また、請求項1に記載のロータリエバポレータにおいて、前記調剤用フラスコの凹部は、当該調剤用フラスコの口部と対向する位置に形成されていることが好ましい。
【0015】
このような構成を備えることにより、調剤用フラスコを垂直な状態にしたときに、放射性薬剤をより確実に凹部内に集めることができるため、調剤用フラスコ内の放射性薬剤を、より回収しやすくすることができる。
【0016】
また、請求項1または請求項2に記載のロータリエバポレータにおいて、前記ヒータは、前記調剤用フラスコを、その外周面から一定距離離間した位置で被覆して加熱する加熱部と、前記加熱部と前記調剤用フラスコの間に配置される送風管と、前記送風管の一端部に設けられ、前記調剤用フラスコの前記底部と対向する位置に配置されて、前記加熱部で加熱された熱風を前記調剤用フラスコに向けて吹き出す送風口と、を有する構成とすることが好ましい。
【0017】
このような構成を備えることにより、ヒータは、加熱部内に吹き入れられた風を加熱して、送風管の一端部から調剤用フラスコに吹き付ける。このとき、送風管は、調剤用フラスコの底部と対向する位置に配置され、かつ、加熱部は、調剤用フラスコから一定距離離間した位置で調剤用フラスコを被覆しているため、熱風は、送風口から調剤用フラスコの底部に吹き付けられて、加熱部と調剤用フラスコの間を調剤用フラスコの外周面に沿って上方へ流れていく。これにより、調剤用フラスコの外周面の略全面を略均一に加熱することができるので、調剤用フラスコの外周面の一部が加熱される場合と比較して、熱効率を向上させることができ、より製造効率を向上させることができる。また、加熱部の外周面を断熱部で被覆することにより、調剤用フラスコに、加熱部で発生させた熱をより効率よく伝えることができる。
【0018】
また、望ましくは、前記加熱部は、二重隔壁構造を有し、当該二重隔壁間を真空とする。
このような構成を備えることにより、外部からの熱を遮断することができ、調剤用フラスコ内の加熱効率を向上させることができる。
【0019】
また、本発明は、経路内の自動洗浄及び乾燥を行うととともに、異なる放射性薬剤を繰り返し自動調剤するための放射性薬剤の自動調剤装置であって、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のロータリエバポレータと、前記ロータリエバポレータに接続され、前記放射性化合物を分離精製し、前記ロータリエバポレータに移送するための分離精製装置と、前記分離精製装置及び前記ロータリエバポレータを制御する制御装置と、を有する放射性薬剤の自動調剤装置として構成してもよい。
【0020】
本発明の放射性薬剤の自動調剤装置によれば、分離精製装置とロータリエバポレータは制御装置により制御されているので、放射性薬剤の調剤処理からロータリエバポレータの部品の洗浄処理までの全てを自動で行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のロータリエバポレータによれば、放射性薬剤の回収効率を向上させると共に、複数の放射性薬剤を扱ってもクロスコンタミネーションを起こりにくくすることができる。さらに、洗浄効率を向上させることができる。従って、短時間で高精度な放射性薬剤を製造することができる。
また、本発明のロータリエバポレータは、装置を分解することなく、調剤用フラスコやチューブ材などの部品を自動で洗浄することができ、また、装置を分解することなく繰り返し調剤処理をすることが可能なため、作業者の放射線被爆の危険性を大幅に低減させることができ、短時間内に放射性薬剤の繰り返し製造が可能となる。
また、本発明の放射性薬剤の自動調剤装置によれば、放射性薬剤の調剤処理からロータリエバポレータの部品の洗浄処理までの全てを自動で行うことができる。このため、洗浄処理に要する時間を短縮化することができると共に、作業者の放射線被爆の危険性を大幅に低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明のロータリエバポレータの実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。参照する図面において、図1は、本発明のロータリエバポレータを示す全体斜視図であり、図2は、図1における調剤用フラスコの構成及び動作を説明するために一部断面にした拡大図であって、(a)は、通常の使用時における調剤用フラスコの状態を示し、(b)は、放射性薬剤の回収時の調剤用フラスコの状態を示す図である。
【0023】
図1に示すように、ロータリエバポレータ1は、調剤用フラスコ10Aと、ヒータ20と、ロータリホルダ30と、導入チューブ40と、導出チューブ50と、設置台80と、軸部材81と、支持部材90と、を主に備えて構成されている。なお、導入チューブ40及び導出チューブ50は、特許請求の範囲における「チューブ材」に相当する。
【0024】
図1及び図2に示すように、調剤用フラスコ10Aは、溶媒に溶解された放射性薬剤を含んでなる試料から溶媒を気化させ、残った放射性薬剤を生理食塩水で再溶解して調剤するためのものであって、ロータリホルダ30に取り付けられて使用される。なお、調剤用フラスコ10Aは、ロータリホルダ30の回転に合わせて自転可能となっている。
【0025】
また、調剤用フラスコ10Aは、その底部に口部(図示せず)と対向する部分をさらに調剤用フラスコ10Aの外側に凹ませて形成した凹部11aを有している。
凹部11aは、その形成寸法が、導出チューブ50の差し入れを容易に行うために、導出チューブ50の先端の形成寸法よりも若干大きく、導出チューブ50の先端が配置されたときに、導出チューブ50の先端の周りに若干の隙間を有するように形成されるのが好ましい。このような凹部11aを備えることにより、後記するロータリホルダ30を回動させて調剤用フラスコ10Aを垂直にしたときに、重力により流下した放射性薬剤を凹部11a内に集めることができるため、導出チューブ50で、放射性薬剤を回収しやすくすることができる。
【0026】
また、調剤用フラスコ10A内には、放射性薬剤等の突沸防止のために、その内部を上下2室に分割・区画する隔壁12が設けられていることが好ましい。隔壁12は、略中央部で上下2室を連通する中空円筒状の円筒管13を支持しており、この円筒管13に、導入チューブ40及び導出チューブ50を挿通させて、調剤用フラスコ10Aの内部に放射性薬剤等を導入・導出している。
【0027】
なお、調剤用フラスコ10Aの口部(図示せず)は、摺動・シール機能を有する蓋体110で密閉されている。蓋体110は、調剤用フラスコ10A内の気圧を調節するためのものであって、調剤用フラスコ10A内を減圧するための真空口(図示せず)と、調剤用フラスコ10A内を加圧するためのガス導入口(図示せず)と、を有しており、それぞれ、電磁弁Pを介して、真空ポンプ(図示せず)、窒素ガス導入装置(図示せず)及び減圧装置(図示せず)が接続されている。
【0028】
このような調剤用フラスコ10Aは、ロータリホルダ30によって自転して、放射性薬剤を還流させることでその内壁面に薄い液膜を形成して放射性薬剤の表面積を増加させる。これにより、後記するヒータ20によって放射性薬剤が加熱されると、試料に含まれる溶媒を気化させやすくすることができる。
【0029】
調剤用フラスコ10Aとしては、通常、調剤に用いられるナス型フラスコが好適に用いられるが、これに限られるものではなく、例えば、丸型フラスコを用いてもよい。
【0030】
ヒータ20は、調剤用フラスコ10Aを加熱するためのものであって、調剤用フラスコ10Aを、その外周面から一定距離離間した位置で被覆して加熱する加熱部21と、調剤用フラスコ10Aに熱風を吹き付ける送風管23と、を主に有して構成される。なお、ヒータ20は、調剤用フラスコ10Aを効率よく均一に加熱できるものであればよく、この形態に限られるものではない。本実施形態では、ヒータ20の加熱温度は、100℃から300℃としている。ただし、これに限らず、用いる溶媒、放射性化合物(放射性薬剤)に応じて自由に設定することができ、100℃より低い温度あるいは300℃より高い温度とすることができることはもちろんである。
【0031】
加熱部21は、調剤用フラスコ10Aの外周面の寸法より一回り大きな寸法で、調剤用フラスコ10Aを収容する収容空間を有して形成されており、この空間に、調剤用フラスコ10Aを配置して加熱する。
【0032】
加熱部21には、内壁部21bに添うように渦巻状に電熱線22が配置されており、図示しない電源装置により加熱される。
【0033】
送風管23は、調剤用フラスコ10Aに吹き付ける風を移送するためのものであって、一端部に、送風口24が形成され、他端部が、送風装置(図示せず)と接続されている。送風管23は、内壁部21bと電熱線22の間に、内壁部21bに沿うように配置されている。
【0034】
このように構成されたヒータ20は、送風装置(図示せず)の送風ポンプ(図示せず)から送風管23に風を供給すると、電熱線22により送風管23の内部の風が加熱されて熱風となり、この熱風を、送風口24から調剤用フラスコ10Aの外周面に吹き付けることで、加熱部21で発生させた熱を、次のようにして調剤用フラスコ10Aに伝えて、調剤用フラスコ10Aを加熱している。
【0035】
つまり、送風口24から排出される熱風は、内壁部21bの下部方向から、内壁部21bと調剤用フラスコ10Aの外周面との間を、調剤用フラスコ10Aの外周面に沿って上部方向に向かって流れていくので、調剤用フラスコ10Aの外周面全体に略均一に行き渡らせることができる。これにより、熱効率を向上させることができ、調剤用フラスコ10A内の溶媒を迅速に気化させることができる。
【0036】
なお、ヒータ20は、外壁部21aと内壁部21bとで、二重隔壁を構成しており、隔壁内は、真空状態となっている。真空状態とすることで、外乱による熱効率の低下を防止し、加熱部21で発生させた熱を、調剤用フラスコ10Aに効率よく伝えることができる。
【0037】
ロータリホルダ30は、調剤用フラスコ10Aを支持するとともに自転させるためのものである。ロータリホルダ30は、中空円筒状に形成され、その端部に、例えば、シール用Oリング(図示せず)を介してワンタッチクリップ(図示せず)により調剤用フラスコ10Aの口部側の端部が、着脱自在に取り付けられている。
【0038】
また、ロータリホルダ30は、回転ベルト31によってモータ32と接続されており、モータ32を駆動させることにより、ギヤヘッド(図示せず)及び回転ベルト31が回転し、この回転動作によりロータリホルダ30が回転し、調剤用フラスコ10Aを自転させる。
【0039】
導入チューブ40は、調剤用フラスコ10A内に、分離精製装置Hから放射性化合物を含んでなる試料及び洗浄液槽102から洗浄液(例えば、消毒用エタノール)を導入するためのものであって、一端側が、ロータリホルダ30に介挿された状態で円筒管13を挿通して調剤用フラスコ10A内に延び、他端側が、電磁弁P(図3参照)を介して分離精製装置Hや洗浄液送液シリンジなどに接続されている。
【0040】
導入チューブ40としては、公知のものを適宜用いることができ、例えば、ガラス管や、フッ素樹脂製チューブを用いることができる。なお、洗浄液としては、消毒用エタノールを用いることができるが、これに限定されるものではなく、滅菌水などを用いることもできる。
【0041】
導出チューブ50は、生理食塩水で再溶解されて調剤された放射性薬剤及び洗浄に使用した液の導出を行う。導出チューブ50は、一端側がロータリホルダ30に介挿された状態で円筒管13を挿通して調剤用フラスコ10A内に伸び、他端側には、電磁弁P(図3参照)が取り付けられている。なお、本実施形態において、導出チューブ50は、生理食塩水の導入にも用いられる。
【0042】
このような導出チューブ50は、電磁弁P(図3参照)を開閉することで流路を切り替えて、製品受槽100、廃液受槽101、生理食塩水槽103のそれぞれに導入・導出することができるようになっている。したがって、導出チューブ50を、配置される槽と同数設置する必要はなく、適宜、設置数を変更することができる。
【0043】
導出チューブ50としては、公知のものを適宜用いることができ、例えば、フッ素樹脂製チューブを用いることができる。
なお、導出チューブ50は、調剤用フラスコ10Aを挿通してその先端を凹部11aに配置するのに十分な長さを有するものを使用する。
【0044】
導入チューブ40及び導出チューブ50は、ロータリホルダ30の口部を密閉する蓋体110に対して固定具(図示せず)などにより固定・支持され、その間に介装されたOリング(図示せず)によってシールされている。
【0045】
設置台80は、ロータリエバポレータ1の基台となるものであって、例えば、設置面に水平に横置きされた板状の台座部分とこの台座に立設される棒状の支持台部分とでなる。設置台80の支持台部分の側面部には、支持部材90を支持して回動させるための軸部材81が、設置台80の支持台部分に対して垂直に設置されている。軸部材81としては、例えば、公知のエアシリンダや電動モータを用いることができる。
【0046】
図1及び図2(a)、(b)に示すように、支持部材90は、ロータリホルダ30を傾斜させた状態と、垂直の状態と、に可変させるためのものであって、軸部材81に軸着され、この軸部材81の回転に伴って回動する。支持部材90は、ロータリホルダ30が垂直の状態であるときに設置台80と略平行の背面板91とこの背面板91に対して直角方向に延びる上段の上支持板92と、下段の下支持板93と、を有する。
【0047】
上支持板92は、ロータリホルダ30を介して調剤用フラスコ10Aの口部(図示せず)側の端部付近を支持している。このとき、調剤用フラスコ10Aは、背面板91と略平行になるように、上支持板92に支持されている。
なお、上支持板92は、軸部材81の回転軸と回転自在に固定されており、軸部材81を回転させると、支持部材90が回動するようになっている。
【0048】
下支持板93は、調剤用フラスコ10Aにその外周面から当接するとともに、ヒータ20を保持する。
【0049】
次に、前記したロータリエバポレータ1を備えた放射性薬剤の自動調剤装置1Aの構成について説明する。図3及び適宜図1、図2を参照して説明する。図3は、本発明の自動調剤装置の構成図である。
【0050】
図3に示すように、自動調剤装置1Aは、ロータリエバポレータ1に加えて、さらに、分離精製装置Hと、制御装置120と、を備えて構成されている。なお、自動調剤装置1Aは、窒素ガス供給装置、減圧装置、液体トラップなどを備えた、ユーティリティユニット(いずれも図示せず)と接続されている。
【0051】
分離精製装置Hは、小型サイクロトロンなどで製造した放射性化合物を分離・精製し、溶媒に溶解された状態で当該放射性化合物を含んだ試料を合成する。また、分離精製装置Hは、導入チューブ40を介して、合成した試料を調剤用フラスコ10Aへ移送する。このような分離精製装置Hとしては、例えば、公知の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いることができる。
【0052】
制御装置120は、分離精製装置H及びロータリエバポレータ1を構成する各部材と接続されて、その動作を制御するためのものであって、ホットセル(図示せず)外に配置されており、操作パネル(図示せず)を有して構成されている。作業者が操作パネル(図示せず)に入力した入力信号が送信されると、制御装置120で制御信号が生成され、この制御信号を分離精製装置H及びロータリエバポレータ1の各部材に送信して動作させている。
【0053】
次に、自動調剤装置1Aの動作について適宜図面を参照して説明する。
自動調剤装置1Aの動作は、調剤処理と、調剤処理に続く洗浄処理と、でなる。まず、図4及び適宜図1から図3を参照して、自動調剤装置1Aにより行われる調剤処理について説明する。図4は、自動調剤装置により行われる調剤処理を説明するためのフローチャートである。
【0054】
以下の説明では、予め放射性同位元素を用いて放射性化合物を合成した後、分離精製装置Hによって、反応混合物から、目的とする放射性化合物が分離精製された状態であるものとする。また、各部材(ディスポーザブル製品・製品受槽100・生理食塩水槽101・洗浄液槽102・廃液受槽103等)は、各所に配置されたルア継手(図示せず)により、図3に示す所定位置に配置・接続された状態であるものとする。さらに、調剤用フラスコ10Aは、45°に傾斜した状態であるものとする。
【0055】
図4に示すように、まず、分離精製装置Hから導入チューブ40を通じて調剤用フラスコ10A内へ試料を導入する(ステップS1)。次に、真空ポンプ(図示せず)により、調剤用フラスコ10A内の減圧を開始する(ステップS2)。続いて、ヒータ20により調剤用フラスコ10Aを加熱するとともに、モータ32を駆動させてロータリホルダ30を回転させることにより、調剤用フラスコ10Aを自転させ、この状態を所定時間維持して試料から溶媒を蒸発させて放射性化合物を得る(ステップS3)。なお、ヒータ20の設定温度は、必要に応じて適宜変更するものとする。なお、ステップS2とステップS3は、同時に開始してもよい。
【0056】
次に、調剤用フラスコ10A内の溶媒が底部に塊として見えなくなったら(約0.2mL程度)、ヒータ20を停止して調剤用フラスコ10Aの加熱を停止し、余熱で溶媒を完全に蒸発させる(ステップS4)。
そして、調剤用フラスコ10Aの回転動作を持続させたままで、生理食塩水槽101から電磁弁P及び導出チューブ50を通じて、調剤用フラスコ10A内に、生理食塩水を真空圧により吸引して導入し、還流させ、放射性化合物を生理食塩水に溶解させて放射性薬剤を合成する(ステップS5)。
【0057】
続いて、モータ32を停止してロータリホルダ30及び調剤用フラスコ10Aの回転を停止する。この状態から、図示しないモータにより、軸部材81を、図2(b)に示す矢印方向に回転させ、この軸部材81を支点として、支持部材90で支持するロータリホルダ30を回動させる。この動作により、図2(b)に示すように、ロータリホルダ30に取り付けられた調剤用フラスコ10A及びヒータ20を垂直な状態にする。このようにすることで、傾斜させていたために調剤用フラスコ10A内の側壁部及び底部にわたって拡がっていた放射性薬剤を底部及び凹部11aに集めることができる。そして、窒素ガス導入装置(図示せず)から窒素ガスを調剤用フラスコ10A内に圧送することによって、放射性薬剤を導出チューブ50から製品受槽100に導出する(ステップS6)。導出チューブ50は凹部11aに差し入れ可能に配置されているため、放射性薬剤の略全量を吸出することが可能となっている。
【0058】
なお、放射性薬剤の残量が少なくなると、放射性薬剤が、凹部11a内に自然に流下するので、調剤用フラスコ10A内の放射性薬剤を、ほとんど全て導出することができる。
以上のようにして、自動調剤装置1Aにより放射性薬剤を調剤する。
【0059】
次に、図5及び適宜図1から図3を参照して、自動調剤装置1Aにより行われる洗浄処理について説明する。図5は、自動調剤装置により行われる洗浄処理を説明するためのフローチャートである。
【0060】
調剤用フラスコ10A内の放射性薬剤を導出後、図示しないモータにより軸部材81を回転させて、支持部材90を回動させ、支持部材90で支持するロータリホルダ30(調剤用フラスコ10A)を例えば45°傾斜させた位置まで回動させ、導入チューブ40から調剤用フラスコ10A内へ、洗浄液を例えば6mL流し入れるとともに調剤用フラスコ10Aを自転させる。これにより、濃度の高い放射性薬剤を希釈するとともに、調剤用フラスコ10Aの内部を洗浄する(ステップS10)。
【0061】
続いて、調剤用フラスコ10Aの自転を停止させるとともに、軸部材81を、図2(b)に示す矢印方向に回転させて支持部材90を回動させることにより、ロータリホルダ30を回動させる。そして、図2(b)に示すように、ロータリホルダ30に取り付けられた調剤用フラスコ10A及び調剤用フラスコ10Aに取り付けられたヒータ20を垂直な状態とする。そして、窒素ガス導入装置(図示せず)から圧送された窒素ガスを調剤用フラスコ10A内に送る。これにより、凹部11aに残った放射能を含む液を、適宜の電磁弁P及び導出チューブ50を通じて廃液受槽103へ導出する(ステップS11)。
【0062】
このようにして調剤用フラスコ10A内の濃度の高い残液を回収した後、軸部材81により、再び、調剤用フラスコ10Aを45°傾斜させた位置まで回動させる。これと同時に、ヒータ20の温度を例えば100℃に設定し、調剤用フラスコ10Aに熱風を吹き付けて加熱するとともに調剤用フラスコ10Aを自転させる(ステップS12)。
【0063】
次に、洗浄液槽102から導入チューブ40を通じて、調剤用フラスコ10A内に洗浄液を例えば10mL流し入れ、この洗浄液を、例えば5分間還流させて導入チューブ40及び調剤用フラスコ10Aの内壁に残った放射性薬剤などを還流雰囲気で洗浄する(ステップS13)。
【0064】
次に、ヒータ20の駆動を停止させ、調剤用フラスコ10Aの自転を停止させるとともに、軸部材81を、図2(b)に示す矢印方向に回転させて支持部材90を回動させることにより、ロータリホルダ30を回動させる。そして、図2(b)に示すように、ロータリホルダ30に取り付けられた調剤用フラスコ10A及び調剤用フラスコ10Aに取り付けられたヒータ20を垂直な状態とする。
【0065】
この動作により、それまで傾斜させていたために調剤用フラスコ10A内の側壁部及び底部にわたって拡がっていた洗浄液を底部及び凹部11aに集めることができる。そして、窒素ガス導入装置(図示せず)から調剤用フラスコ10A内に窒素ガスを圧送することで、凹部11aに差し入れ可能に配置された導出チューブ50の先端から、洗浄液を廃液受槽103に導出する(ステップS14)。
【0066】
なお、洗浄液の残量が少なくなると、洗浄液が流下して凹部11a内に集まるので、調剤用フラスコ10A内の洗浄液のほとんど全てを導出することができる。
【0067】
続いて、再び、ロータリホルダ30は、調剤用フラスコ10Aを45°傾斜させて自転させ、導入チューブ40から洗浄液を、例えば10mL流し入れる。このようにして例えば3分間、調剤用フラスコ10A内をすすぐ(ステップS15)。
【0068】
次に、調剤用フラスコ10Aの回転を停止させ、調剤用フラスコ10Aを垂直にし、洗浄液を導出チューブ50から廃液受槽103へ導出する(ステップS16)。
【0069】
次に、ステップS15及びステップS16を再度繰り返す。なお、ステップS15及びステップS16は、調剤用フラスコ10A内をすすぐ目的で行うものであるため、ヒータ20による調剤用フラスコ10Aの加熱は行わなくてもよい。なお、ステップS15、ステップS16は、3回以上行ってもよいことはいうまでもない。
【0070】
次に、調剤用フラスコ10Aを45°傾斜させて自転させるとともに、窒素ガス導入装置(図示せず)から移送された窒素ガスを調剤用フラスコ10A内に送り、例えば100℃に温度設定されたヒータ20から、調剤用フラスコ10Aの外周面に向けて熱風を送って、例えば4分間加熱し、調剤用フラスコ10A及び導出チューブ50内を乾燥させる(ステップS17)。
【0071】
このようにして、調剤用フラスコ10A、導入チューブ40及び導出チューブ50の洗浄・滅菌を行うことで一連の洗浄処理が終了する。
【0072】
本発明の自動調剤装置1Aによれば、以下のような優れた効果が得られる。
本発明の自動調剤装置1Aによれば、連続して、他の異なる試料から放射性薬剤を製造する場合などにおいても、クロスコンタミネーションの発生を防止することができ、製品としての高精度な放射性薬剤を得ることができる。
また、本発明の自動調剤装置1Aは、自動洗浄機能を有するため、短時間内に製造を繰り返しても作業者の放射線被爆の危険性を低減させることができる。
【実施例】
【0073】
以下、本発明のロータリエバポレータを用いた自動調剤装置の実施例について説明する。
実施例では、実験装置として、調剤用フラスコと、調剤用フラスコを加熱するヒータと、調剤用フラスコが取り付けられてこれを自転させ、調剤用フラスコを傾斜させた状態と、垂直の状態と、に可変できる軸部材によって設置台に支持されたロータリホルダと、調剤用フラスコ内に連通され、試料の導入及び導出を行うチューブ材と、を備え、調剤用フラスコは、チューブ材の先端を差し入れることができる凹部を有するロータリエバポレータを使用した。なお、実施例に係るロータリエバポレータは、合成装置(図示せず)・分離精製装置及び制御装置と接続されている。
【0074】
まず、実施例に係るロータリエバポレータに接続された合成装置(図示せず)を用いて、「PET用放射性薬剤の製造及び品質検査-合成と臨床使用へのてびき(PET化学ワークショップ編)-第3版 (平成19年改定版)」(石渡喜一ら編著)に記載の方法にてドーパミンD2受容体計測用[11C]ラクロプライド(以下、単に「ラクロプライド」ともいう。)を合成した。
(参考URL:http://kakuyaku.cyric.tohoku.ac.jp/index-j.htm)。
【0075】
ドーパミンD2受容体計測用[11C]ラクロプライドを合成装置(図示せず)により合成後、分離精製装置から導入チューブを通じて調剤用フラスコ内へ反応混合液を導入した。次に、真空ポンプにより、調剤用フラスコ内の減圧を開始し、続いて、ヒータにより調剤用フラスコを加熱するとともに、モータを駆動させてロータリホルダを回転させることにより、調剤用フラスコを自転させ、この状態を所定時間維持して反応混合液から溶媒を蒸発させた。
【0076】
調剤用フラスコ内の溶媒が底部に塊として見えなくなったら(約0.2mL程度)、ヒータを停止して調剤用フラスコの加熱を停止し、余熱により溶媒を完全に蒸発させた。そして、調剤用フラスコの回転動作を持続させたままで、生理食塩水槽から電磁弁及び導出チューブを通じて、調剤用フラスコ内に、生理食塩水を真空圧により吸引して導入し、還流させ、放射性化合物を生理食塩水10mLに溶解させて放射性薬剤を製造した。
【0077】
そして、このようにして製造した放射性薬剤を、次のようにして回収した。すわなち、モータを停止してロータリホルダ及び調剤用フラスコの回転を停止した。この状態から、モータにより、ロータリホルダを回動させて、ロータリホルダに取り付けられた調剤用フラスコ及びヒータを垂直な状態にして、調剤用フラスコ内の放射性薬剤を底部及び凹部に集めた。そして、窒素ガス導入装置から窒素ガスを調剤用フラスコ内に圧送することによって、放射性薬剤を導出チューブから製品受槽に導出した。
【0078】
次に、実施例の自動調剤装置を用いて、調剤用フラスコ内及び導出チューブ内の洗浄を17分間行った。すなわち、放射性薬剤を回収後、調剤用フラスコを垂直な状態から傾斜させた状態に戻し、導入チューブから調剤用フラスコ内へ洗浄液10mLを流し入れて、調剤用フラスコ内に残った放射性薬剤を希釈し、調剤用フラスコを回転させ、内部を洗浄した。
【0079】
続いて、調剤用フラスコを垂直な状態とし、窒素ガス導入装置(図示せず)から圧送された窒素ガスを調剤用フラスコ内に送ることによって、凹部に残った放射能を含む洗浄液を、適宜の電磁弁及び導出チューブを通じて廃液受槽へ導出した。そして、調剤用フラスコ内に残った放射性薬剤を回収後、調剤用フラスコを傾斜させた状態とした。次に、ヒータから調剤用フラスコに熱風を吹き付けて加熱するとともに調剤用フラスコを自転させ、洗浄液槽から導入チューブを通じて調剤用フラスコ内に洗浄液10mLを流し入れ、この洗浄液を還流させて、導入チューブ及び調剤用フラスコの内壁に残った放射性薬剤などを還流雰囲気で洗浄した。次に、ヒータ及び調剤用フラスコの回転を停止させるとともに、調剤用フラスコを垂直な状態として、調剤用フラスコ内の洗浄液を底部及び凹部に集めた。そして、窒素ガス導入装置から調剤用フラスコ内に窒素ガスを圧送することで、凹部に差し入れ可能に配置された導出チューブの先端から、洗浄液を廃液受槽へ導出した。
【0080】
再び調剤用フラスコを傾斜させた状態として自転させ、導入チューブから洗浄液10mLを流し入れ、調剤用フラスコ内をすすいだ。次に、調剤用フラスコの回転を停止させ、調剤用フラスコを垂直な状態とし、洗浄液を導出チューブから廃液受槽へ導出した。このようなすすぎ処理を2回繰り返した。
【0081】
次に、調剤用フラスコを傾斜させて自転させるとともに、窒素ガス導入装置から移送された窒素ガスを調剤用フラスコ内に送り、ヒータから、調剤用フラスコの外周面に向けて熱風を送って加熱し、調剤用フラスコ内及び導出チューブ内を乾燥させた。
このようにして、調剤用フラスコ内及び導出チューブ内を洗浄した。
【0082】
回収した製品8.75mLを分析した結果、原料の濃度が、製品中0.945μg/8.75mL、ラクロプライドの濃度が製品中0.866μg/8.75mLであった。
【0083】
次に、上述の方法で調剤用フラスコ及び導出チューブ内を洗浄乾燥させた後、合成装置(図示せず)により、「PET用放射性薬剤の製造及び品質検査-合成と臨床使用へのてびき(PET化学ワークショップ編)-第3版 (平成19年改定版)」(石渡喜一ら編著)に記載の方法にて、ベンゾジアゼピン受容体計測用[11C]Ro15-1788(以下、単に「Ro15-1788」ともいう。)を合成した。分離精製装置で分離精製後、前記実施例と同様の調剤処理を行い、製品とした。
(参考URL:http://kakuyaku.cyric.tohoku.ac.jp/index-j.htm)。
回収した製品8.75mLをラクロプライドの分析条件で分析した結果、原料及びラクロプライドの濃度は、共に、0.01μg/mL以下であり、検出限界以下であった。
【0084】
また、回収した製品8.75mLをRo15-1788の分析条件で分析した結果、Ro15-1788の原料の濃度が11.375μg/8.75mL、Ro15-1788の濃度が7.341μg/8.75mLであった。
【0085】
次に、前記実施例と同様の洗浄処理を行い、調剤用フラスコ内及び導出チューブ内を洗浄した。洗浄処理後に、調剤用フラスコ内に生理食塩水を10mL導入して取り出し、Ro15-1788の分析条件を用いて取り出した液体(生理食塩水)を分析した。
その結果、調剤用フラスコ内の、Ro15-1788の原料及びRo15-1788の残留濃度は、共に0.01μg/mL以下であり、検出限界以下であることがわかった。また、放射能による分析では、洗浄処理を行った後には、前製品であるラクロプライドからの放射能ピークは検出されなかった。また、製品Ro15-1788中には、細菌やエンドトキシンなども検出されなかった。
【0086】
以上のように、本発明のロータリエバポレータによれば、複数種類の放射性薬剤を連続して調剤しても、クロスコンタミネーションを起こすことなく、高精度な放射性薬剤が得られることがわかった。また、本発明の自動調剤装置によれば、使用の都度、洗浄のために装置を分解する必要がないため、放射線被爆の危険性を低減することができる。
さらに、洗浄に要する時間を飛躍的に短縮することができるので、放射性薬剤の製造にかかる一連の作業時間を短縮することができ、放射性薬剤の製造効率を向上させることができる。
[比較例]
【0087】
次に、実施例に係る自動調剤装置と比較例に係る調剤装置の比較例として放射能を持たないコールド試料を用いて洗浄機能の性能実験を行った。
【0088】
比較例に係る調剤装置として、実施例に係る自動調剤装置との性能を比較するため、従来公知のロータリエバポレータに、洗浄液の自動導入・導出機能を付加した調剤装置を製造して使用した。なお、この調剤装置に設置される調剤用フラスコは、実施例で用いた調剤用フラスコのように凹部が形成されたものではない。通常用いられるナス型フラスコを使用した。調剤用フラスコは、予め傾斜させた状態で固定される。また、ヒータは、調剤用フラスコと離間した下方に配置されているものである。また、このように構成された比較例に係る調剤装置は、制御装置に接続されている。
【0089】
試料として、水溶性の試薬A(第一製薬社製 アスコルビン酸注射液 ビスコリン注25%[日本薬局方])を100,000μg、脂溶性の試薬B(Sigma社製 Verapamil塩酸塩[>99.9%])を1,000μg溶かした溶液10mLを作製して使用した。また、洗浄液として、公知の注射用蒸留水(大塚製薬社製 注射用水[日本薬局方])を使用した。
【0090】
まず、実施例に係る自動調剤装置を用いて、導入チューブより上記試料を導入して、前記実施例の手順によりコールド薬剤を製品受槽に導出した。その後、前記実施例と同様の洗浄処理を行った。
【0091】
また、比較例に係る調剤装置を用いて、以下のようにして、コールド薬剤の製造を行った。すなわち、導入チューブを通じて調剤用フラスコ内へ試料A、試料Bを溶かした溶液を導入した。次に、真空ポンプにより、調剤用フラスコ内の減圧を開始した。続いて、ヒータにより調剤用フラスコを加熱するとともに、モータを駆動させてロータリホルダを回転させることにより、調剤用フラスコを自転させ、この状態を所定時間維持して試料A、試料Bを溶かした溶液から溶媒を蒸発させてコールド試料を得た。なお、次に、調剤用フラスコ内の溶媒が底部に塊として見えなくなったら(約0.2mL程度)、ヒータを停止して調剤用フラスコの加熱を停止し、余熱により溶媒を完全に蒸発させた。そして、調剤用フラスコの回転動作を持続させたままで、生理食塩水槽から電磁弁及び導出チューブを通じて、調剤用フラスコ内に、生理食塩水を真空圧により吸引して導入し、還流させ、コールド試料を生理食塩水10mLに溶解させてコールド薬剤を製造した。
【0092】
そして、このようにして製造したコールド薬剤を、次のようにして回収した。すわなち、モータを停止してロータリホルダ及び調剤用フラスコの回転を停止した。そして、窒素ガス導入装置から窒素ガスを調剤用フラスコ内に圧送することによって、調剤用フラスコ内に拡がったコールド薬剤を導出チューブから製品受槽に導出した。
【0093】
次に、コールド薬剤を製品受槽に回収後、次のようにして、調剤用フラスコ内及び導出チューブ内の洗浄を約30分間行った。すなわち、調剤用フラスコ内に洗浄液10mLを導入して自転させ、濃度の高いコールド薬剤を希釈した。そして、ヒータで調剤用フラスコを加熱しながら洗浄液を還流させて、調剤用フラスコ内を洗浄した。最後に、残った廃液を廃液受槽に回収した。このような洗浄処理を3回繰り返した。
【0094】
洗浄処理後、実施例に係る自動調剤装置と比較例に係る調剤装置のそれぞれの調剤用フラスコに、注射用蒸留水10mLを入れて、取り出し分析した。
【0095】
その結果、比較例に係る調剤装置によると、洗浄処理後における調剤用フラスコ内の、水溶性の試薬Aの残留濃度は39.3μg/10mLとなり、脂溶性の試薬Bの残留濃度は3.0μg/10mLとなり、水溶性の試薬Aに関しては合格基準を満たしたが、脂溶性の試薬Bに関しては合格基準を満たさなかった。
【0096】
これに対し、実施例に係る自動調剤装置によれば、洗浄処理後における調剤用フラスコ、導入チューブ及び導出チューブ内の水溶性の試薬Aの残留濃度は、20.0μg/10mLとなり、脂溶性の試薬Bの残留濃度は、0.2μg/mL以下(検出限界以下)となり、いずれも上記の基準を満足した。
【0097】
以上のように、本実施形態に係る自動調剤装置によれば、短い洗浄時間で、調剤用フラスコ、導入チューブ及び導出チューブの洗浄精度を飛躍的に高くすることができる。このため、異なる薬剤を繰り返し調剤してもクロスコンタミネーションが起こりにくく、製品としての高精度な放射性薬剤を得ることができる。また、本実施形態の自動調剤装置によれば、調剤処理から洗浄処理までの全工程を自動で処理することができるため、作業者の放射線被ばく無しに、異なる放射性薬剤を連続的に調剤処理することが可能となる。
【0098】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記した実施形態に限られるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、支持部材90を設けなくてもよく、ロータリホルダ30を軸部材81に直接軸着させて回動させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の主要部を構成するロータリエバポレータを示す全体斜視図である。
【図2】図1における調剤用フラスコの構成及び動作を説明するために一部断面にした拡大図であって、(a)は、通常の使用時における調剤用フラスコの設置角度、(b)は、放射性薬剤の回収時の調剤用フラスコの設置角度を示す図である。
【図3】本発明の自動調剤装置の構成図である。
【図4】本発明の自動調剤装置により行われる調剤処理を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の自動調剤装置により行われる洗浄処理を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0100】
1 ロータリエバポレータ
1A 自動調剤装置
10A 調剤用フラスコ
11a 凹部
20 ヒータ
23 送風管
24 送風口
30 ロータリホルダ
40 導入チューブ
50 導出チューブ
80 設置台
81 軸部材
90 支持部材
120 制御装置
H 分離精製装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4