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明細書 :超伝導膜構造及びその作製方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5147121号 (P5147121)
公開番号 特開2009-280442 (P2009-280442A)
登録日 平成24年12月7日(2012.12.7)
発行日 平成25年2月20日(2013.2.20)
公開日 平成21年12月3日(2009.12.3)
発明の名称または考案の名称 超伝導膜構造及びその作製方法
国際特許分類 C01B  31/02        (2006.01)
C01G   1/00        (2006.01)
H01L  39/24        (2006.01)
H01B  12/06        (2006.01)
H01B  13/00        (2006.01)
B82B   1/00        (2006.01)
B82B   3/00        (2006.01)
FI C01B 31/02 101F
C01G 1/00 ZAAS
H01L 39/24 B
H01B 12/06
H01B 13/00 565Z
B82B 1/00
B82B 3/00
請求項の数または発明の数 8
全頁数 10
出願番号 特願2008-134155 (P2008-134155)
出願日 平成20年5月22日(2008.5.22)
審査請求日 平成22年11月26日(2010.11.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】春山 純志
個別代理人の代理人 【識別番号】100101236、【弁理士】、【氏名又は名称】栗原 浩之
【識別番号】100128532、【弁理士】、【氏名又は名称】村中 克年
審査官 【審査官】小野 久子
参考文献・文献 特開2005-096024(JP,A)
国際公開第2007/036641(WO,A1)
国際公開第2007/130869(WO,A1)
国際公開第2007/057501(WO,A1)
国際公開第2008/140649(WO,A1)
KORETSUNE,T. et al,Electronic structure of boron-doped carbon nanotubes ,Phys Rev B Condens Matter Mater Phys,2008年 4月15日,Vol.77, No.16,p.165417.1-165417.5
調査した分野 C01B 31/00-31/36
B82B 1/00
B82B 3/00
C01G 1/00
H01B 12/06
H01B 13/00
H01L 39/24
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
基板上に複数の単層カーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブ膜が形成されてなる超伝導膜構造であって、前記単層カーボンナノチューブが、前記単層カーボンナノチューブを構成する炭素原子の一部がホウ素原子で置換されたホウ素置換型単層カーボンナノチューブであることを特徴とする超伝導膜構造。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブ膜の厚さが、略均一であることを特徴とする請求項1記載の超伝導膜構造。
【請求項3】
前記ホウ素置換型単層カーボンナノチューブ中の前記ホウ素原子の置換率は、炭素原子100に対して、0より多く、かつ4以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の超伝導膜構造。
【請求項4】
前記超伝導膜構造の超伝導転移温度が12K以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の超伝導膜構造。
【請求項5】
基板上に、単層カーボンナノチューブを構成する炭素原子の一部がホウ素原子で置換されたホウ素置換型単層カーボンナノチューブを含む塗布液をスピンコート法により塗布し、カーボンナノチューブ膜を作製する超伝導膜構造の作製方法であって、
前記塗布液は、遠心分離器及び超音波洗浄機にかけられ、かつ、スピンコート時に、回転数を500rpmとして塗布されることを特徴とする超伝導膜構造の作製方法。
【請求項6】
前記カーボンナノチューブ膜形成後、基板を1000℃以上で加熱することを特徴とする請求項5記載の超伝導膜構造の作製方法。
【請求項7】
前記ホウ素置換型単層カーボンナノチューブを、カーボンナノチューブ成長用触媒にホウ素を所定量含有せしめ、このカーボンナノチューブ成長用触媒に対して電気炉内でレーザーを照射させた後に150~250℃で加熱して得たことを特徴とする請求項5に記載の超伝導膜構造の作製方法。
【請求項8】
前記所定量が、カーボンナノチューブ成長用触媒に対して0より多く、4原子%以下であることを特徴とする請求項7に記載の超伝導膜構造の作製方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、超伝導膜構造及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは、その発見以来、次世代の高機能材料として注目されている。カーボンナノチューブには、カーボンナノチューブを構成するグラファイトシートが一層である単層カーボンナノチューブと、2以上のグラファイトシートが同芯軸状に巻かれた多層カーボンナノチューブとがある。
【0003】
多層カーボンナノチューブについては、本発明の発明者らによる多層カーボンナノチューブを用いた超伝導素子が知られている(特許文献1参照)。特許文献1においては、多層カーボンナノチューブと金属電極とを備え、前記多層カーボンナノチューブは、その直径が5~20nm、その層数が2~20であり、かつ、その長手方向に対し垂直に切断された切断面を有し、前記金属電極は、この切断面で多層カーボンナノチューブと接触している超伝導素子が開示されている。
【0004】

【特許文献1】特開2007-251028号公報(請求項1、図5参照)
【非特許文献1】Z.K.Tang et.al., Science 292, 2462(2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、単層カーボンナノチューブについては、その水素貯蔵機能や、電界放出機能などを中心に様々な研究がなされてきたが、超伝導に関する報告はまだ1件のみ(非特許文献1参照)であり、これは転移温度が非常に低く、追試結果を得ることがなかった。
【0006】
ところで、単層カーボンナノチューブ自体が超伝導状態となれば、各単層カーボンナノチューブが強いスピンコヒーレンスとエンタングルメントを持つので、量子コンピュータや量子テレポーテーションなどの次世代量子エレクトロニクス分野において利用することが可能である。またLSI配線への応用も可能である。この場合、すでにその物性が明らかな単層カーボンナノチューブ、またはその集合体を用いることが求められている。
【0007】
そこで、本発明は、多層カーボンナノチューブと同程度の高温で単層カーボンナノチューブを超伝導状態にすることを可能にする超伝導膜構造及びその作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の超伝導膜構造は、基板上に複数の単層カーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブ膜が形成されてなる超伝導膜構造であって、前記単層カーボンナノチューブが、前記単層カーボンナノチューブを構成する炭素原子の一部がホウ素原子で置換されたホウ素置換型単層カーボンナノチューブであることを特徴とする。
【0009】
本発明の超伝導膜構造では、基板上に形成されたカーボンナノチューブ膜を構成する単層カーボンナノチューブとして、ホウ素置換型単層カーボンナノチューブを用いていることで、膜構造を超伝導状態とすることができる。
【0010】
前記カーボンナノチューブ膜の厚さが、略均一であることが好ましい。略均一であることで、マイスナー電流が発生しやすく、膜構造を超伝導状態とすることができる。
【0011】
前記ホウ素置換型単層カーボンナノチューブ中の前記ホウ素原子の置換率は、炭素原子100に対して、0より多く、かつ4以下であることが好ましい。この範囲で置換することで、より高温で単層カーボンナノチューブを超伝導状態とすることができる。
【0012】
このような本発明の超伝導膜構造の超伝導転移温度は12K以下である。
【0013】
本発明の超伝導膜構造の作製方法は、基板上に、単層カーボンナノチューブを構成する炭素原子の一部がホウ素原子で置換されたホウ素置換型単層カーボンナノチューブを含む塗布液をスピンコート法により塗布し、カーボンナノチューブ膜を作製する超伝導膜構造の作製方法であって、前記塗布液は、遠心分離器及び超音波洗浄機にかけられ、かつ、スピンコート時に、回転数を500rpmとして塗布されることが好ましい。

【0014】
前記カーボンナノチューブ膜形成後、基板を1000℃以上で加熱することが好ましい。この温度で加熱することで、塗布液に微量含有されていた超伝導の発現を抑制する強磁性体である触媒を取り除くことができる。
【0015】
ここで、前記ホウ素置換型単層カーボンナノチューブを、カーボンナノチューブ成長用触媒にホウ素を所定量含有せしめ、このカーボンナノチューブ成長用触媒に対して電気炉内でレーザーを照射させた後に150~250℃で加熱して得ることが好ましい。このような方法により、簡易に本発明の超伝導膜に用いるホウ素置換型単層カーボンナノチューブを得ることができる。
【0016】
この場合、前記所定量が、カーボンナノチューブ成長用触媒に対して0より多く、4原子%以下であることが好ましい。この範囲でカーボンナノチューブ成長用触媒中にホウ素を含有させることで、所望の置換量を示すホウ素置換型単層カーボンナノチューブを得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の超伝導膜構造は、多層カーボンナノチューブと少なくとも同程度の高温で超伝導状態となることができるという優れた効果を奏する。また、本発明の超伝導膜構造の作製方法によれば、多層カーボンナノチューブと同程度の高温で単層カーボンナノチューブを超伝導状態にすることが可能となる超伝導膜構造を形成できるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本実施形態のカーボンナノチューブを用いた超伝導膜構造の構成を図1に示す。
【0019】
図1(a)は、超伝導膜構造の断面図である。超伝導膜構造1は、基板S上に形成されたカーボンナノチューブ膜2からなる。カーボンナノチューブ膜2は、ホウ素置換型単層カーボンナノチューブ3が、後述するようにスピンコート法により形成されているものであり、各ホウ素置換型単層カーボンナノチューブ3が多数集積されて構成されている。カーボンナノチューブ膜2の厚さは100~2000nmであり、略均一であることが好ましい。厚さが略均一とならないと、マイスナー電流が形成されず超伝導は出現しないからである。なお、ここで略均一とは、カーボンナノチューブ膜2の各位置における厚さが、カーボンナノチューブ膜2の平均厚さに対してプラスマイナス20%の範囲にあることをいう。好ましくは、カーボンナノチューブ膜2の各位置における厚さが、カーボンナノチューブ膜2の平均厚さに対してプラスマイナス10%の範囲にあることである。
【0020】
ホウ素置換型単層カーボンナノチューブ3は、その直径が0.5~3nm、好ましくは0.5~1nmである。また、長手方向の長さは、例えば1μm以上である。単層カーボンナノチューブの直径及び長手方向の長さがこの範囲にあることで、超伝導状態となりやすいからである。
【0021】
図1(b)は、ホウ素置換型単層カーボンナノチューブ3を構成する一層の展開図であり、この図に示すように、ホウ素置換型単層カーボンナノチューブ3は、単層カーボンナノチューブを構成する炭素原子の一部が、ホウ素で置換されたものである。即ち、ホウ素置換型単層カーボンナノチューブ3は、単層カーボンナノチューブの炭素ネットワーク(炭素による格子)中の一部の炭素原子がホウ素原子に置き換わったものである。なお、ここでは展開図でカーボンナノチューブの構造としてジグザグ型のものを示したが、これに限定されるものではない。
【0022】
このようにホウ素置換型単層カーボンナノチューブ3を用いることで、単層カーボンナノチューブ自体が超伝導転移する。これは、ホウ素で置換することで、単層カーボンナノチューブのフェルミレベルをシフトさせて状態密度が最大であるVan Hove特異点(VHS)に一致させることができるからである。このようにフェルミレベルをVHSに一致させることができると、単層カーボンナノチューブをより高温で超伝導状態とすることができる。ただし、このようなホウ素置換型単層カーボンナノチューブであっても、一本だけでは完全に超伝導状態となることは難しく、本実施形態のように多数のホウ素置換型単層カーボンナノチューブを集積し、その厚さを略均一とすることで、試料を横切るようにマイスナー電流が発生してマイスナー効果が出現し、超伝導状態となるものである。
【0023】
この場合、ホウ素原子の置換率は、ホウ素置換型単層カーボンナノチューブ3を構成する炭素原子100原子%に対し0原子%より多く、4原子%以下であることが好ましい。この範囲でホウ素に置換することで、フェルミレベルを第一のVHSに一致させることができ、より超伝導を発生させやすくすることができる。また、4原子%より大きいと、第1のVHSより高い第2のVHSにフェルミレベルを一致させることができるものの、単層カーボンナノチューブそのものが壊れてしまうことがある。好ましくは、1原子%~3原子%、特に好ましくは1.5原子%~2原子%である。この範囲であれば、カーボンナノチューブのフェルミレベルを第1のVHSにより正確に一致させることができ、超伝導転移温度をより高くすることができる。
【0024】
このような炭素原子の一部をホウ素で置換されたホウ素置換型単層カーボンナノチューブ3を用いたカーボンナノチューブ膜2は、以下のように作製される。まず、ホウ素置換型単層カーボンナノチューブ3を含有する塗布液を基板上に塗布し、その後、スピンコート法により、回転数300~700rpm、好ましくは500rpmで膜を形成し、厚さが略均一なカーボンナノチューブ膜2を形成する。この回転数範囲でカーボンナノチューブ膜を形成することで、カーボンナノチューブ膜の厚さが上記略均一となり、超伝導状態となりやすい。なお、ホウ素置換型単層カーボンナノチューブは、鉄やコバルトなどのカーボンナノチューブ成長用触媒にホウ素を含有せしめ、この含有させた触媒に対して電気炉内でレーザー(Nd:YAGレーザー(1064nm、10Hz))を照射させた後に高温(~250℃、好ましくは150~250℃、好ましくは150~200℃)で加熱することで得られるものである。また、この時の触媒中におけるホウ素の含有割合が、ホウ素置換型単層カーボンナノチューブ中におけるホウ素の置換率に一致する。従って、触媒中のホウ素の含有率は、触媒100原子に対して、0より多く4原子%以下、好ましくは1原子%~3原子%、特に好ましくは1.5原子%~2原子%である。
【0025】
この場合において、塗布液としては、例えば5mg/mlとなるようにジクロロエタン中にホウ素置換型単層カーボンナノチューブ3を含有させ、その後、遠心機及び超音波洗浄機により、複数のホウ素置換型単層カーボンナノチューブ3が集まってできたバンドル状態から個々のホウ素置換型単層カーボンナノチューブ3に分離された状態のものを生成する。バンドル状態のままでは、略均一な膜を形成できないからである。
【0026】
その後、ホウ素置換型単層カーボンナノチューブ3内に残留しているカーボンナノチューブ成長用触媒を取り除くために、膜を1000~2000℃、好ましくは1500~1600℃で加熱する。このように、超伝導発現を抑制する強磁性体であるカーボンナノチューブ成長用触媒を取り除くことで、カーボンナノチューブ膜2は超伝導状態になりやすくなる。
【0027】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
(実験例1)
本実施例では、塗布液に含有させるホウ素置換型単層カーボンナノチューブが、ホウ素置換型であるかどうかを調べた。初めに、以下の手順でホウ素置換型単層カーボンナノチューブを作製した。カーボンナノチューブ成長用触媒としての鉄及びコバルトにホウ素を所定量((1)0原子%、(2)1.5原子%、(3)2.0原子%、(4)3.0原子%、(5)4.5原子%)含有せしめ、このカーボンナノチューブ成長用触媒に対して電気炉内でレーザーを照射させた後に200℃で加熱して、ホウ素置換型単層カーボンナノチューブを得た。
【0028】
次いで、塗布液に含有させるホウ素置換型単層カーボンナノチューブを、ラマン分光法により分析した。ホウ素置換型単層カーボンナノチューブのホウ素原子の割合が、それぞれ(1)0原子%、(2)1.5原子%、(3)2.0原子%、(4)3.0原子%、(5)4.5原子%である各単層カーボンナノチューブのバンドルを、それぞれラマン分光法により分析した。ラマン分光法の結果を図2(a)に示す。また、ホウ素原子の割合が1.5原子%のカーボンナノチューブについて、核磁気共鳴吸収法(NMR)により分析し、単層カーボンナノチューブにおいてホウ素原子が置換されているか、即ち、炭素—ホウ素結合が形成されているかどうかを調べた。NMRの測定結果を、図2(b)に示す。
【0029】
図2(a)に示したように、ホウ素置換型単層カーボンナノチューブのホウ素原子の割合が、(1)~(4)の場合には、カーボンナノチューブに特徴的なラディアルブリージングモード(RBM)におけるピークが見られたが、(5)の場合には、ピークが見られなかった。これにより、4.5原子%でホウ素が含有されると、カーボンナノチューブが壊れている場合があることが分かった。また、(2)(3)の場合にRBMのピークが最も鋭く観察されており、このことから、ホウ素原子が単層カーボンナノチューブの炭素原子に置き換わることで、電子状態密度におけるVHS間の転移エネルギーをシフトさせていることが分かる。
【0030】
また、図2(b)に示したように、NMRのピークとして、a、b、及びcの3つを観測したが、このうち、b及びcがホウ素と炭素との結合に起因しているものである。これにより、カーボンナノチューブ内に単にホウ素が含有されているのではなく、カーボンナノチューブを構成する炭素原子の一部がホウ素原子に置換されていることが分かった。
【0031】
以上の結果から、カーボンナノチューブは、ホウ素原子で置換されたホウ素置換型単層カーボンナノチューブであり、そのホウ素原子の置換率は、4.5原子%以下であることが好ましいことが分かった。
【実施例1】
【0032】
本実施例では、超伝導膜を形成し、その超伝導転移温度を調べた。
【0033】
実験例1で用いた(2)1.5原子%でホウ素が置換されているホウ素置換型単層カーボンナノチューブを含有する塗布液(溶液:ジクロロエタン、カーボンナノチューブ5mg/ml)を、遠心分離器(トミー社:商品名 低速遠心分離器)に48時間かけた後に、超音波洗浄器(アズワン社:商品名 USクリーナー)に80時間かけて、バンドル状態から個々のカーボンナノチューブに分離した状態にして基板上に塗布して、回転数500rpmでスピンコートした。その後、1600℃で基板を焼成して、超伝導膜構造1とした。この場合の超伝導膜構造1の表面SEM写真及び断面SEM写真を、図3に示す。また、比較として、スピンコートを実行しないで単に基板に塗布液を塗布した点以外は全て同一の手順で作製した膜構造についても図3に併せて示す。
【0034】
図3(A)は、スピンコートを実行しなかった場合の基板の表面及び断面SEM写真であり、図3(B)は、本実施形態の超伝導膜構造1、即ちスピンコートを実行した場合の基板の表面及び断面SEM写真である。図3(A)に示すように、スピンコートを実行しなかった場合には表面が略均一とはならず、また、基板表面が被膜されていない部分もあった。他方で、図3(B)に示すように、500rpmでスピンコートを実行した場合には、表面は略均一(平均厚さ約2.5μm、最高厚さ約3μm、最低厚さ2μm)となった。
【0035】
この超伝導膜構造1を超伝導量子干渉計(カンタムデザイン社:商品名MPMS)を用いて、100Oeの磁場をかけた状態(磁場冷却(FC)及びゼロ磁場冷却(ZFC))で超伝導転移温度を調べた。その結果を図4に示す。図4中、縦軸は40Kで規格化された磁化率を、横軸は温度を示す。
【0036】
図4に示したように、FC領域では約8Kから、ZFC領域においては12Kから顕著な磁化率の低下が見られた。これらはマイスナー効果に起因しているものであり、超伝導状態が出現していることが分かった。従って、本実施形態の超伝導膜構造1は、12K以下の温度で超伝導状態となっていることが分かった。
【実施例2】
【0037】
ホウ素置換型単層カーボンナノチューブ3のホウ素原子の置換率が2原子%及び3原子%である点以外は全て実施例1と同一の手順で超伝導膜構造1を作製し、ZFCにおける超伝導転移温度を調べた。結果を図5に示す。なお、参考として実施例1の結果も示す。
【0038】
図5によれば、2原子%の場合の磁化率の落ちが3原子%よりわずかに大きいが、どちらの場合も約12Kから規格化された磁化率の低下がみられ、超伝導状態となっていることが分かった。また、この磁化率の落ちは1.5原子%よりも小さかった。このことから、超伝導状態とホウ素原子の置換率とは密接な関係があり、より超伝導状態を引き起こしやすくするためには、1.5原子%~2原子%が好ましいことが分かった。
【実施例3】
【0039】
実施例1で作製された超伝導膜構造1を、温度は2K~12Kで変化させながら、各温度において磁場を変化させて40Kで規格化された磁化率を測定した。結果を図6(a)に示す。また、この図6(a)の結果から、上部臨界磁場(超伝導状態を破壊する磁場の最大値)の温度依存性を調べた。結果を図6(b)に示す。図6(b)の結果から、温度依存性は線形特性を示し、磁化率—磁場相関と磁化率—温度相関は定性的に一致することが分かった。この結果から、本実施形態の超伝導膜構造1は第二種超伝導体であることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の超伝導膜構造を説明するための模式図である。
【図2】実験例1の測定結果を示すためのグラフである。
【図3】実施例1で用いられた膜構造の電子顕微鏡像である。
【図4】実施例1の測定結果である温度に対する磁化率を示すグラフである。
【図5】実施例2の測定結果である温度に対する磁化率を示すグラフである。
【図6】実施例3の測定結果を示すためのグラフである。
【符号の説明】
【0041】
1 超伝導膜構造
2 カーボンナノチューブ膜
3 ホウ素置換型単層カーボンナノチューブ
S 基板
図面
【図1】
0
【図4】
1
【図5】
2
【図6】
3
【図2】
4
【図3】
5