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明細書 :カーボンナノチューブの製造方法及び製造装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5360643号 (P5360643)
公開番号 特開2009-280450 (P2009-280450A)
登録日 平成25年9月13日(2013.9.13)
発行日 平成25年12月4日(2013.12.4)
公開日 平成21年12月3日(2009.12.3)
発明の名称または考案の名称 カーボンナノチューブの製造方法及び製造装置
国際特許分類 C01B  31/02        (2006.01)
FI C01B 31/02 101F
請求項の数または発明の数 8
全頁数 7
出願番号 特願2008-134922 (P2008-134922)
出願日 平成20年5月23日(2008.5.23)
審査請求日 平成23年4月28日(2011.4.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
発明者または考案者 【氏名】曽我 哲夫
【氏名】シャリフ モハマド モミヌザマン
審査官 【審査官】横山 敏志
参考文献・文献 特開2001-058805(JP,A)
特開2003-292314(JP,A)
特開2004-083293(JP,A)
特開2007-210853(JP,A)
特表2009-538809(JP,A)
国際公開第2004/106234(WO,A1)
Ferenc SIMON et al.,Growth of single wall carbon nanotubes from 13C isotope labelled organic solvents inside single wall carbon nanotube hosts,Los Alamos National Laboratory, Preprint Archive, Condensed Matter (2006) 1-4, arXiv:cond-mat/0603477,18 Mar 2006,URL,http://xxx.lanl.gov/pdf/cond-mat/0603477
H. KATAURA et al.,High-yield fullerene encapsulation in single-wall carbon nanotubes,Synthetic Metals,2001, Vol.121,pp.1195-1196
調査した分野 C01B31/00-31/36
B82B1/00
B82B3/00
CAplus(STN)
JSTPlus(JDreamII)
Science Direct
WPI
CiNii
特許請求の範囲 【請求項1】
反応チャンバ内にて、金属触媒を用いることなく、フラーレンと有機溶媒の混合物を霧状にして、キャリアガスを用いて、当該霧状にした混合物を加熱した雰囲気中に導入し、当該加熱した雰囲気中に置いた基板上あるいは前記反応チャンバの壁にカーボンナノチューブを形成することを特徴とするカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項2】
前記フラーレンは、C60、70、C74のいずれか一つあるいはその混合であることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項3】
前記有機溶媒は、エタノール、メタノール、アセトン、ヘキサン、トルエン、テレビン油、酢酸メチル、酢酸エチル、あるいはエーテルのいずれか一つであることを特徴とする請求項1または2に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項4】
前記キャリアガスが窒素、ヘリウム、あるいはアルゴンのいずれか一つであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項5】
超音波ネブライザを用いて前記フラーレンと有機溶媒の混合物を霧状にすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブの製造方法
【請求項6】
前記加熱した雰囲気を構成する場所を基準にキャリアガスの供給元とは反対側の加熱をしていない場所に置かれた基板上あるいは反応チャンバの壁にカーボンナノチューブを低温で形成することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブの製造方法を実施するための装置であって、反応チャンバと、当該反応チャンバを加熱する手段と、フラーレンと有機溶媒の混合物を当該反応チャンバに導入するための供給手段とを備えることを特徴とするカーボンナノチューブの製造装置。
【請求項8】
前記反応チャンバは石英管であり、反応チャンバを加熱する手段として電気炉を用い、フラーレンと有機溶媒の混合物を当該反応チャンバに導入するための供給手段として超音波ネブライザを用いることを特徴とする請求項7に記載のカーボンナノチューブの製造装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は金属触媒を含まない高純度カーボンナノチューブの製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブはセンサ、水素吸蔵、複合材、キャパシタ、燃料電池、太陽電池等、多くの応用が期待されている。
【0003】
従来、カーボンナノチューブはCVD法(特開2006-117516)、アーク放電法(特開2004-256373)、レーザ蒸発法等で製造されるが、いずれの方法においても金属触媒を用いている。
【0004】
そのために、カーボンナノチューブを利用する際には金属触媒を除去しなければならず、多大な労力が必要である。また、カーボンナノチューブ薄膜として用いる場合は混入した金属触媒を除去することが不可能であった。
金属触媒を全く用いないでカーボンナノチューブを合成できれば金属触媒を除去する精製のプロセスを省くことができ、工業的には大変重要な技術である。また、金属触媒を含まないカーボンナノチューブを製造でき、電気的応用や医療分野での応用等用途が広がる。

【特許文献1】特開2004-256373
【特許文献2】特開2006-117516
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、カーボンナノチューブの合成には金属触媒を必要とし、金属触媒を用いないでカーボンナノチューブを合成することは困難であった。また、カーボンナノチューブ薄膜を堆積する際に基板を高温にしておく必要があった。
【0006】
本発明は、金属触媒を用いることなくカーボンナノチューブを合成でき、金属触媒を含まないカーボンナノチューブを提供することを解決すべき課題としている。また、基板を加熱していない場所においてもカーボンナノチューブ薄膜を作製することができるため、基板の温度を余り上げることなくカーボンナノチューブの合成が可能となる。


【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]反応チャンバ内にて、金属触媒を用いることなく、フラーレンと有機溶媒の混合物を霧状にして、キャリアガスを用いて、当該霧状にした混合物を加熱した雰囲気中に導入し、当該加熱した雰囲気中に置いた基板上あるいは前記反応チャンバの壁にカーボンナノチューブを形成することを特徴とするカーボンナノチューブの製造方法。
【0008】
[2]前記フラーレンは、C6070、C74のいずれか一つあるいはその混合であることを特徴とする前記[1]に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【0010】
[3]前記有機溶媒は、エタノール、メタノール、アセトン、ヘキサン、トルエン、テレビン油、酢酸メチル、酢酸エチル、あるいはエーテルのいずれか一つであることを特徴とする前記[1]または[2]に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【0011】
[4]前記キャリアガスが窒素、ヘリウム、あるいはアルゴンのいずれか一つであることを特徴とする前記[1]乃至[3]のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブの製造方法
【0012】
[5]超音波ネブライザを用いて前記フラーレンと有機溶媒の混合物を霧状にすることを特徴とする前記[1]乃至[4]のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブの製造方法
【0014】
[6]前記加熱した雰囲気を構成する場所を基準にキャリアガスの供給元とは反対側の加熱をしていない場所に置かれた基板上あるいは反応チャンバの壁にカーボンナノチューブを低温で形成することを特徴とする前記[1]乃至[5]のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【0015】
[7]前記[1]乃至[6]のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブの製造方法を実施するための装置であって、反応チャンバと、当該反応チャンバを加熱する手段と、フラーレンと有機溶媒の混合物を当該反応チャンバに導入するための供給手段とを備えることを特徴とするカーボンナノチューブの製造装置
【0016】
[8]前記反応チャンバは石英管であり、反応チャンバを加熱する手段として電気炉を用い、フラーレンと有機溶媒の混合物を当該反応チャンバに導入するための供給手段として超音波ネブライザを用いることを特徴とする前記[7]に記載のカーボンナノチューブの製造装置。
【0017】
本発明は、反応チャンバ内にて、金属触媒を用いることなく、フラーレンと有機溶媒の混合物を霧状にして、キャリアガスを用いて、当該霧状にした混合物を加熱した雰囲気中に導入し、当該加熱した雰囲気中に置いた基板上あるいは前記反応チャンバの壁にカーボンナノチューブを形成することを特徴とする。本発明はカーボンナノチューブの合成には従来用いられている金属触媒の代わりフラーレンを用いる。このため、合成したカーボンナノチューブには不純物となる金属触媒を含んでいない。
【0018】
従来は金属触媒を除去するのに、合成したカーボンナノチューブを酸やアルカリ溶液で処理する必要があったため多大な労力を要していたが、本発明のカーボンナノチューブはこの工程が不要となり、労力を大幅に低減できる。また、酸やアルカリ溶液での処理中にカーボンナノチューブの特性が変化することが報告されているが、本発明のカーボンナノチューブはこれらの処理が不要であり、特性は劣化しない。
【0019】
基板にカーボンナノチューブ薄膜を作製する際に、あらかじめ触媒となる金属をつけておいた基板にメタン等のカーボン原料を供給するか、フェロセン等の触媒となる金属化合物を溶解させたアルコール等を加熱された基板に供給する必要があった。そのために、基板上には必ずカーボンナノチューブと同時に金属が共存していた。また、金属シリサイドの形成や金属炭化物の形成も問題となっていた。本発明で作製するカーボンナノチューブ薄膜には金属成分を全く含まないため、応用分野が広がる。
【0020】
基板を加熱されていない場所に置いてもカーボンナノチューブを合成できるため、ネサガラス、プラスチック、ポリイミド等高温に耐えられない部材にもカーボンナノチューブ薄膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施例について図面を参照しつつ説明する。
【実施例】
【0022】
図1は本発明で用いたカーボンナノチューブの合成装置の略図である。装置は電気炉1、超音波ネブライザ2、石英管3、バブラ4から成る。窒素をキャリアガスとして毎分1.5リットル流し、超音波ネブライザによってエタノール(100ml)とC60(100mg)の混合物を霧状にして温度を850℃に保たれた電気炉内に導入した。位置5、位置6には基板が置かれている。基板としてはシリコンと石英ガラスを用いた。
【0023】
石英管で電気炉内の加熱された部分の管璧に堆積している生成物を透過電子顕微鏡で観察したところ、直径が50~100nmの多層カーボンナノチューブと直径0.4~1nmの単層カーボンナノチューブであることが観測された。基板位置5に置かれたシリコン基板上とガラス基板上にも同様なカーボンナノチューブが堆積していた。シリコン基板上に堆積したカーボンナノチューブの走査電子顕微鏡写真を図2に示す。
【0024】
電気炉の温度を700℃から800℃、窒素の供給量毎分1リットルから4リットルまで変化させて同様な実験を行なったところ、すべての条件でカーボンナノチューブの生成が確認できたが、温度850℃、窒素供給量毎分1.5リットルの時に最も多くカーボンナノチューブが製造できた。
【0025】
石英管内の下流側で電気炉外の加熱されていない部分の管壁に堆積している生成物も透過電子顕微鏡観察と走査電子顕微鏡観察からカーボンナノチューブであることが確認された。図3は電気炉内の温度を850℃、窒素の供給量を毎分1.5リットルとした時の基板位置6の位置に置かれたシリコン基板上に生成されたカーボンナノチューブの走査電子顕微鏡写真である。基板位置6の位置は熱電対による測定から温度は約200℃であると測定され、低い基板温度でのカーボンナノチューブ薄膜の堆積を可能とした。
【0026】
以上において、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。実施例ではキャリアガスとして窒素を用いたが、どんなガスでも構わない。実施例では原料の供給は超音波ネブライザで行なったが、どんな供給方法でも構わない。実施例ではフラーレンとしてC60を用いたが、C70、C74等どんなフラーレンやフラーレンが混合したカーボン材料であれば構わない。実施例では有機溶媒としてエタノールを用いたが、どんな有機溶媒でも構わない。実施例ではエタノール100mlとC60100mgの混合物を用いたが、他の割合でも構わない。

【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は金属触媒を含まない高純度のカーボンナノチューブの合成が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】カーボンナノチューブの製造装置
【図2】図1において基板位置5に置かれたシリコン基板上カーボンナノチューブの走査電子顕微鏡写真。
【図3】図1において基板位置6に置かれたシリコン基板上カーボンナノチューブの走査電子顕微鏡写真。
【符号の説明】
【0029】
1…電気炉
2…超音波ネブライザ
3…石英管
4…バブラ
5…基板
6…基板
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2