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明細書 :表皮効果に起因する損失を抑制可能な導波管及び共振器

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5062576号 (P5062576)
登録日 平成24年8月17日(2012.8.17)
発行日 平成24年10月31日(2012.10.31)
発明の名称または考案の名称 表皮効果に起因する損失を抑制可能な導波管及び共振器
国際特許分類 H01P   3/12        (2006.01)
H01P   7/04        (2006.01)
H01P   7/10        (2006.01)
FI H01P 3/12
H01P 7/04
H01P 7/10
請求項の数または発明の数 8
全頁数 10
出願番号 特願2008-527648 (P2008-527648)
出願日 平成19年6月21日(2007.6.21)
国際出願番号 PCT/JP2007/000668
国際公開番号 WO2008/015772
国際公開日 平成20年2月7日(2008.2.7)
優先権出願番号 2006208789
優先日 平成18年7月31日(2006.7.31)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成22年5月25日(2010.5.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】岩下 芳久
【氏名】田島 裕二郎
個別代理人の代理人 【識別番号】110001069、【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
【識別番号】100095670、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 良平
審査官 【審査官】岸田 伸太郎
参考文献・文献 特開2004-253997(JP,A)
特開2004-120516(JP,A)
特開昭48-76085(JP,A)
調査した分野 H01P 3/12
H01P 7/04
H01P 7/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
導波管の伝播空間側表面に設けた空洞又は誘電体から成るスペーサ層と該スペーサ層の表面に設けた導電体から成る層を有し、該スペーサ層の厚さが該導電体における表面電流の方向に関して中央部よりも両端部の方が大きくなるように形成されていることを特徴とする導波管。
【請求項2】
前記伝播空間が空洞であることを特徴とする請求項1に記載の導波管。
【請求項3】
前記導電体層及び前記スペーサ層が交互に複数積層していることを特徴とする請求項1又は2に記載の導波管。
【請求項4】
前記伝播空間が同軸に配置された外側管と内側管の間の空間であり、前記導電体層及び前記スペーサ層が内側管の外表面及び外側管の内表面の双方に設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の導波管。
【請求項5】
共振器の共振空間側表面に設けた空洞又は誘電体から成るスペーサ層と該スペーサ層の表面に設けた導電体から成る層を有し、該スペーサ層の厚さが該導電体における表面電流の方向に関して中央部よりも両端部の方が大きくなるように形成されていることを特徴とする共振器。
【請求項6】
前記共振空間が空洞であることを特徴とする請求項5に記載の共振器。
【請求項7】
前記導電体層及び前記スペーサ層が交互に複数積層していることを特徴とする請求項5又は6に記載の共振器
【請求項8】
前記共振空間が同軸に配置された外側管と内側管の間の空間であり、前記導電体層及び前記スペーサ層が内側管の外表面及び外側管の内表面の双方に設けられていることを特徴とする請求項5~7のいずれかに記載の共振器
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信機器、放送機器、マイクロ波・高周波機器、粒子の加速器等の多くの分野において用いられる、電磁波の導波管あるいは共振器に関し、特にそれらにおいて生じる表皮効果に起因するエネルギーの損失を抑制するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、マイクロ波帯やミリ波帯といった高周波帯において用いられる電磁波の導波管や共振器において、表皮効果によりエネルギーの損失が生じるという問題が生じていた。表皮効果は、交流電流が導電体の表面付近、即ち表面から表皮厚さδ=(2/ωμσ)1/2までの領域にのみ集中する現象をいう(ここで、ωは交流電流の周波数、μは導電体の透磁率、σは導電体の電気伝導率である。)。表皮効果により消費される(即ち損失となる)電力Pは、導体内の電流分布iを用いて、
P=∫|i|2/σdV …(1)
と表される。
【0003】
(1)式より、消費電力Pを抑制するために、(i)電気伝導率σを大きくすること、及び(ii)電流分布iを制御することが考えられる。このうち電気伝導率σについては、多くの導波管や共振器で用いられている銅(σ=5.96×107S/m)よりも電気伝導率が高い導電体は、実用上、銀(σ=6.30×107S/m)しかなく、たとえ銀を用いたとしても消費電力Pはせいぜい4%程度しか向上させることができない。そのため、電流分布iを制御することを検討する必要がある。
【0004】
特許文献1には、内部が誘電体で満たされた誘電体共振器において、このようなエネルギーの損失を抑制するために、導電体薄膜と誘電体薄膜が交互に積層した薄膜多層電極を用いることが記載されている。その際、各導電体薄膜及び誘電体薄膜の厚さを最適値にすることにより、各導電体薄膜に電流をバランスよく配分し、それにより表皮効果を緩和することができる、とされている。
【0005】
また、特許文献2には、特許文献1と同様の誘電体共振器において、薄膜多層電極の各層の面積を共振器の外側から内側にかけて順に小さくすることが記載されている。これにより、各導電体層に流れる実電流を略等しくすることができ、損失を最小限に抑えることができる、とされている。このような薄膜多層電極の一例を、図1を用いて説明する。図1(a)はその薄膜多層電極11及び12を用いた誘電体共振器10の縦断面図であり、(b)は薄膜多層電極11の上面図である。誘電体共振器10は、電磁波が存在する部分となる円柱状の共振器誘電体13の上下に薄膜多層電極11及び12を挟んで成る。薄膜多層電極11は、円板状の導電体111の上に、それよりも外径が小さく中心に孔が設けられた層間誘電体112を載置し、更に層間誘電体112の上にそれと同じ形状の導電体113を載置したものである。薄膜多層電極12も薄膜多層電極11と同様の構成を有する。
【0006】

【特許文献1】国際公開第95/006336号パンフレット
【特許文献2】特開2004-120516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明者は、層間誘電体112、122の誘電率εaと共振器誘電体13の誘電率εbの比であるεabによる誘電体共振器10のQ値の変化を計算で求めた。その結果を図2のグラフに示す。このグラフの縦軸は、誘電体共振器10のQ値を、薄膜多層電極11及び12の代わりに通常の電極を用いた誘電体共振器のQ値であるQ0で除した値で示した。Q/Q0が大きいほどエネルギーの損失が小さく、Q/Q0が1よりも大きい場合には通常の電極を用いた場合よりもエネルギーの損失が小さいといえる。
【0008】
図2によれば、層間誘電体の誘電率εaが小さいほどエネルギーの損失が小さくなるという傾向がみられる。そして、薄膜多層電極を用いてエネルギーの損失を抑制することができるのはεabが約0.5よりも小さい場合に限られる。このような誘電率の条件は、内部が空洞である空洞共振器及び導波管では満たすことが困難である。即ち、そのような空洞共振器及び導波管では、特許文献1及び2に記載のものと同様の構成によりエネルギーの損失を抑えることが困難である。また、特許文献1及び2に記載の誘電体共振器では、共振空間の誘電体よりも誘電率が低い層間誘電体を用いることにより上記誘電率の条件を満たすことは可能であるが、共振空間の誘電体の材料と層間誘電体の材料の組み合わせに制約が生じる。
【0009】
一方、共振器や導波管において、電磁波のエネルギーの損失を増加させれば、その共振器の共振周波数や導波管の伝搬周波数を持つ電磁波をカットするフィルタとして用いることができる。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、表皮効果によるエネルギーの損失量を制御することが可能な導波管及び共振器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために成された本発明に係る導波管は、
導波管の伝播空間側表面に設けた空洞又は誘電体から成るスペーサ層と該スペーサ層の表面に設けた導電体から成る層を有し、該スペーサ層の厚さが該導電体における表面電流の方向に関して中央部よりも両端部の方が大きくなるように形成されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る共振器は、
共振器の共振空間側表面に設けた空洞又は誘電体から成るスペーサ層と該スペーサ層の表面に設けた導電体から成る層を有し、該スペーサ層の厚さが該導電体における表面電流の方向に関して中央部よりも両端部の方が大きくなるように形成されていることを特徴とする。
【0013】
前記導波管の伝播空間あるいは前記共振器の共振空間は空洞であってもよいし(空洞共振器)、誘電体が満たされていてもよい(誘電体共振器)が、前述のように特許文献1及び2に記載の構成ではエネルギーの損失を抑制することが困難である空洞共振器の方が、本発明の効果がより顕著である。
【0014】
前記導波管あるいは前記共振器には、同軸に配置された外側管及び内側管から成るものを用いることができる。この場合には、外側管と内側管の間の空間が前記伝播空間あるいは共振空間に該当し、外側管の内表面あるいは内側管の外表面が前記伝播空間側表面あるいは共振空間側表面に該当する。この場合、導電体層及びスペーサ層は内側管の外表面及び外側管の内表面の双方に設けることが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る導波管及び共振器によれば、スペーサ層の厚さがその中央部よりも両端部の方が大きくなるように形成されていることにより、スペーサ層が一様な厚さで形成されている場合よりも、導波管又は共振器の内表面と導電体層とスペーサ層から成る等価回路の共振周波数が大きくなり、スペーサ層の誘電率を小さくすることと同様の効果が得られる。これにより、従来よりも容易に、表皮効果によるエネルギーの損失を抑制することができる。特に、従来、エネルギーの損失を抑えることが困難であった、伝播空間が空洞である導波管や共振空間が空洞である共振器においても、本発明によりそれが可能になった。
【0016】
また、導電体層やスペーサ層の厚さや面積によっては、電磁波のエネルギーの損失を増加させることもできる。その場合、本発明の共振器あるいは導波管はその共振周波数あるいは導波管の伝搬周波数を持つ電磁波をカットするフィルタとして用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来の誘電体共振器の一例を示す縦断面図(a)及び薄膜多層電極の一例を示す上面図(b)。
【図2】薄膜多層電極を有する共振器のQ値を計算で求めた結果を示すグラフ。
【図3】本発明における導電体層及びスペーサ層の一例を示す縦断面図。
【図4】スペーサ層24内に形成される電磁波の電場及び磁場の振動方向を示す図、並びに壁22、導電体層23及びスペーサ層24から形成される等価回路を示す図(b)。
【図5】本発明の一実施例に係る同軸共振器30の外観図。
【図6】同軸共振器30の軸方向断面図。
【図7】スペーサ層36内の電磁波の周波数を計算した結果を示す図。
【図8】スペーサ層36内の電磁波の周波数を計算した結果を示すグラフ。
【図9】本実施例の同軸共振器における、Q値の測定条件を示す縦断面図(a)、Q値の測定結果、Q値の計算結果及び周波数の測定結果を示すグラフ(b)。
【図10】同軸共振器30の変形例を示す軸方向断面図。
【図11】本発明の一実施例に係る誘電体共振器40の縦断面図。
【図12】本発明の一実施例に係る円形導波管50の断面図。
【符号の説明】
【0018】
10、40…誘電体共振器
11、12、41、42…薄膜多層電極
111、113、121、123…導電体
112、122…層間誘電体
12…薄膜多層電極
13…共振器誘電体
21…内部空間
22…導電体から成る壁
23、35、413、423、53…導電体層
23A、35A、44A…導電体層の中央部
23B、35B、44B、44C…導電体層の端部
23C…導電体層の中間点
24、36、412、422、52…スペーサ層
26…コンデンサ
27…コイル
30、30A…同軸共振器
31…外側管
31A…外側管及び内側管の端面
32…内側管
33…中心軸
34…中心軸33に垂直な断面
35AB…導電体層の中央部35Aと端部35Bの距離
35C…導電体層の段差
351…外側導電体層
361…外側スペーサ層
36A…ポリイミドフィルム
36B…ポリエチレンメッシュ
37…空洞
50…円形導波管
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に係る導波管及び共振器においては、図3に示すように、導波管において電磁波を伝播させる伝播空間又は共振器において電磁波を共振させる共振空間である内部空間21を囲う導電体から成る壁22の近傍に、空間24を介して、導電体から成る導電体層23が設けられる。壁22には、従来の導波管や共振器で用いられているものと同様のものを用いることができる。壁22と導電体層23の間の空間24が、本願におけるスペーサ層である。スペーサ層24の厚さは、内部空間21に電磁波が存在する時に導電体層23を流れる表面電流の方向に関して、電流値が最大となる中央部23Aよりも端部23Bの方が大きくなるようにされている。
【0020】
スペーサ層24は、本発明の効果を高めるために、誘電率が極力低い材料から成ることが望ましい。そのような材料として、典型的には真空が挙げられる。あるいは、装置の作製を容易にするために、空間24に誘電体が充填されていてもよい。その誘電体には気体、液体、固体のいずれのものも用いることができるが、発泡ポリエチレン等、誘電率が真空の誘電率に近いものを用いることが望ましい。また、スペーサー層にポーラス状やメッシュ状の誘電体を用いることにより、実効的な誘電率を更に低くすることができる。
【0021】
スペーサ層24を上述の形状にするために、導電体層23は、端部23Bの方が壁22から遠くなるように、平坦な状態から変形した形状に形成する。そのような形状として、典型的には図3に示すように中央部23Aと端部23Bの中間点23Cに段差を形成したものが挙げられる。また、中間点23Cとは異なる位置に段差を設けたものや、段差を設ける代わりに中央部23Aから端部23Bに向かうに従って徐々に導電体層23を壁22から遠ざけたもの等も挙げられる。
【0022】
なお、図3では導電体層23及びスペーサ層をそれぞれ1層のみ設けた例を示したが、これらの層を複数、交互に積層させてもよい。
【0023】
導電体層23及びスペーサ層24を設けることにより、図1及び図2に示した従来の共振器と同様に、表皮効果によるエネルギーの損失を抑制することができる。そして、その効果は、導電体層23及びスペーサ層24を上記の形状としたことにより、従来よりも顕著になる。以下に、その理由を説明する。
【0024】
内部空間21内に電磁波が存在し、スペーサ層24の幅がその電磁波の半波長程度であると、スペーサ層24内には内部空間21内の電磁場とは独立の電磁場が形成される(図4(a))。壁22の内表面及び導電体層23に垂直な方向の電場の強さは端部23B付近で最大になり、磁場の強さは中央部23A付近で最大になる。このような電磁場が形成されることにより、スペーサ層24内の電磁場は図4(b)に示した等価回路で表現できる。ここで、壁22、導電体層23及びスペーサ層24の構成は、端部23B付近がコンデンサ26に該当し、中央部23A付近がコイル27に該当する。スペーサ層24の厚さを中央部23A付近で小さくし、端部23B付近で大きくすることは、図4(b)の等価回路のコンデンサ26の静電容量C及びコイル27のインダクタンスLを共に小さくすることに相当する。この等価回路の共振周波数はC-1/2及びL-1/2に比例するため、このように静電容量C及びインダクタンスLを小さくすることによりその等価回路の共振周波数は大きくなる。共振周波数が大きくなることは、スペーサ層24の誘電率が小さくなることと等価である。
このようにスペーサ層24の誘電率が等価的に小さくなることにより、図2に示したように表皮効果に起因するエネルギーの損失を抑制することができる。そのため、本発明において導電体層23及びスペーサ層24を上記の形状としたことにより従来よりもエネルギーの損失を小さくすることができる。
【0025】
導電体層23に垂直な方向の電場及び導電体層23に平行な磁場の成分は中間点23Cを境界として中央部23A側では磁場が、端部23B側では電場が、それぞれ強くなるため、導電体層23はこの中間点23Cに段差を設けたものであることが望ましい。
【実施例】
【0026】
(1) 同軸共振器の実施例
本発明の一実施例である同軸共振器の一例を、図5~図6を用いて説明する。図5は本実施例の同軸共振器30の外観図であり、図6は同軸共振器30の軸方向断面図である。なお、図6の軸方向断面図では説明の都合上、その断面の縦方向を拡大して示した。外側管31及び内側管32は導電体から成り互いに径が異なる管であって、中心軸33を共有する同軸状に配置されている。これら外側管31及び内側管32の間の領域はTEMモードの電磁波を共振させる空洞37となり、これら外側管31及び内側管32が空洞37の壁を構成する。
【0027】
内側管32の外表面近傍に、内側管32を取り巻くように、導電体から成る導電体層35が配置されている。導電体層35は、外側管31の両端面から等距離にある、中心軸33に垂直な断面34を中心として対称な形状を有する。導電体層35の端部35Bは外側管31及び内側管32の端面31Aと断面34から等距離の位置にある。そして、導電体層35の中央部35Aと端部35Bの中間に、導電体層35が端部35B側よりも中央部35A側の方が内側管32に近くなるように段差35Cが設けられている。内側管32と導電体層35の間は空洞であり、この部分がスペーサ層36となる。
【0028】
なお、スペーサ層36内の共振周波数を高くするためにはスペーサ層36は空洞であることが望ましいが、スペーサ層36に誘電体を充填してもよい。その場合、まず内側管32の表面に接着剤となる誘電体により、段差を有するスペーサ層36を形成し、その上に導電体層35を形成する(貼り付ける)ことにより、導電体層35及びスペーサ層36を容易に作製することができる。
【0029】
本実施例の同軸共振器30における、スペーサ層36内の電磁波の周波数を計算で求めた結果を、図7及び図8を用いて説明する。この計算では、導電体層35の中央部35Aから端部35Bまでの距離を250mmとし、中央部35Aから段差35Cまでの距離及び段差35Cから端部35Bまでの距離をいずれも125mmとした。そして、中央部35Aと段差35Cの間におけるスペーサ層36の厚さd0を4mmに固定し、段差35Cと端部35Bの間におけるスペーサ層36の厚さdを1.1d0、2d0、3d0、4d0、8d0、16d0と変化させながら、スペーサ層36内の電磁波の共振周波数を計算した。
【0030】
図7に、厚さdによるスペーサ層36内の共振周波数を計算した結果を示す。なお、図中の縦方向に延びる線は、内側管32の表面に垂直な方向の電気力線を示し、この線の間隔が狭くなる程、その方向の電場が強いことを示している。図8に、この計算結果をグラフに示す。比較例として、特許文献2に記載の共振器と同様に段差35Cのない導電体層を設けた場合について計算を行ったところ、導電体層と内側管の間の共振周波数は、本実施例のいずれの計算結果よりも小さい198MHzであった。即ち、本実施例の構成により、スペーサ層36内の共振周波数を従来よりも高めることができ、それにより表皮効果によるエネルギーの損失を抑制することができる。また、dが大きくなる程、スペーサ層36内の共振周波数が高くなり、本発明の効果がより顕著になる。
【0031】
次に、同軸共振器30において、共振器のQ値及び共振周波数を測定した結果、及びその測定条件に対応する条件を用いて計算によりQ値を求めた結果を、図9を用いて説明する。図9(a)は、測定で用いた同軸共振器30の中央部35Aと、その中央部35Aと端面31Aの中間点38と、の間の領域39における内側管32、導電体層35及びスペーサ層36を拡大して描いたものである。外側管31(図示せず)は全長2131.4mm、外径55mm、内径50mmであり、内側管32は全長2428.2mm、外径40mm(半径20nm)、内径36mmである。導電体層35の厚さは5μmである。内側管32、外側管、導電体層35はいずれも銅製である。スペーサ層36は、中央部35Aと段差35Cの間では厚さ25μmのポリイミドフィルム36Aから成り、段差35Cと導電体層端部35Bの間では厚さ25μmのポリイミドフィルム36Aと厚さ300μmのポリエチレンメッシュ36Bを重ねたものから成る。これら導電体層35及びスペーサ層36は、ポリイミドフィルム36Aの表面に導電体層35が蒸着された市販の「メタロイヤル」(東洋メタライジング株式会社製、登録商標)をポリエチレンメッシュ36Bの表面に被覆することにより作製した。。ここでは測定の都合上、段差35Cは中央部35Aから150mm離れた位置に固定し、導電体層端部35Bの位置を中央部35Aから150mm(段差35Cの位置)~500mm(中間点38付近)の範囲内で変化させながら測定を行った。
【0032】
測定結果及び計算結果を図9(b)に示す。ここで、導電体層35の中央35Aと導電体層端部35Bの距離35ABである。また、縦軸は、各測定点におけるQ値を、導電体層35がない時(横軸の値が0の時)のQ値であるQ0で除した値Q/Q0で示した。Q/Q0値は測定値と計算値がよく一致している。また、距離35ABがおおむね330mm以上の時にQ/Q0が1よりも大きくなる、即ち損失を抑制することができることが示された。一方、距離35ABが330mm未満の場合には、Q/Q0が1よりも小さくなり、共振器の共振周波数を持つ電磁波を抑制するフィルタとして用いることができる。
【0033】
図10に、同軸共振器30の変形例である同軸共振器30Aを示す。同軸共振器30Aは、同軸共振器30と同様の外側管31、内側管32、導電体層35及びスペーサ層36を有し、更に、外側管31の内表面に外側導電体層351及び外側スペーサ層361を有する。外側導電体層351及び外側スペーサ層361は軸を含む断面において、導電体層35及びスペーサ層36に対して線対称な形状を有する。このような外側導電体層351及び外側スペーサ層361を設けることにより、同軸共振器30Aは同軸共振器30よりも更に電力の損失を抑えることができる。
【0034】
(2) 誘電体共振器の実施例
図11を用いて、本発明の他の実施例である誘電体共振器40を説明する。この誘電体共振器40は、図1に示した従来の誘電体共振器10と同様に、円柱状の共振器誘電体43の上下に薄膜多層電極41及び42を挟んで成る。また、薄膜多層電極41(42)が、円板状の導電体411(421)の上にそれよりも外径が小さく中心に孔が設けられたドーナツ状のスペーサ層412(422)を載置し、更にスペーサ層412の上にそれと同じ形状の導電体層413(423)を載置して成る点も誘電体共振器10と同様である。本実施例では、スペーサ層412(422)は、図11に示したドーナツの中心を通る縦断面において、ドーナツの内径の端面44B及び内径の端面44Cよりも中心44Aの方が薄くなるように形成されている。このようにスペーサ層412(422)が形成されていることにより、上述の同軸共振器と同様に、表皮効果によるエネルギーの損失を抑制することができる。
【0035】
(3) 導波管の実施例
図12を用いて、本発明の他の実施例である円形導波管50を説明する。図12は円形導波管50の軸に垂直な断面を示している。この円形導波管50はTE11モードの導波管であり、導電体から成る円形管51内の空間52に電磁波を軸方向に伝播させるものである。円形管51の内表面にその一部を覆うスペーサ層53を設け、スペーサ層53の表面に導電体層54を設ける。スペーサ層53は端部が中央部よりも厚くなるように形成されている。スペーサ層53及び導電体層54は2組、互いに向かい合うように配置される。このようにスペーサ層53が形成されていることにより、表皮効果によるエネルギーの損失を抑制することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
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