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明細書 :踵骨音速測定装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5531307号 (P5531307)
公開番号 特開2008-278991 (P2008-278991A)
登録日 平成26年5月9日(2014.5.9)
発行日 平成26年6月25日(2014.6.25)
公開日 平成20年11月20日(2008.11.20)
発明の名称または考案の名称 踵骨音速測定装置
国際特許分類 A61B   8/00        (2006.01)
FI A61B 8/00
請求項の数または発明の数 6
全頁数 11
出願番号 特願2007-124249 (P2007-124249)
出願日 平成19年5月9日(2007.5.9)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 発行者名:社団法人日本機械学会 刊行物名:第17回バイオフロンティア講演会講演論文集 通計番号:No.06-46 発行年月日:平成18年11月10日
審査請求日 平成22年5月7日(2010.5.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
発明者または考案者 【氏名】水口 義久
【氏名】永井 宏一
個別代理人の代理人 【識別番号】100097043、【弁理士】、【氏名又は名称】浅川 哲
審査官 【審査官】樋口 宗彦
参考文献・文献 特開2006-289072(JP,A)
特開平09-192129(JP,A)
特開平06-197895(JP,A)
特開2006-167097(JP,A)
特開平09-201357(JP,A)
調査した分野 A61B8/00-8/15
特許請求の範囲 【請求項1】
踵の両側を挟む一対の超音波探触子と、この超音波探触子で踵の両側を挟んだ時の踵幅を実測する踵幅測定手段と、前記超音波探触子から踵の内部に入射させた超音波によって測定される透過エコーの波形に基づいて踵全体の音速を測定する音速測定手段と、踵全体の音速測定値と前記踵幅の実測値に基づいて踵骨の音速を算出する演算手段と、前記超音波探触子の近傍に設置されて踵表面の温度を測定する温度センサと、この温度センサから得られた踵表面の測定温度に基づいて前記演算手段で算出された踵骨の音速を補正する補正手段とを備え、
前記超音波が踵全体を最初に透過した時の第1エコーまでの距離と超音波が踵全体を最初に透過した後に反射して再び透過した時の第2エコーまでの距離との差を、第2エコーが判明した数人分の測定データを基にして予め求めておき、この求めた値を位置補正値としてコンピュータ装置内の測定ソフトに組み込み、実際の測定においては、踵全体の音速を第1エコーに基づいて測定する際に、予め求められている位置補正値によって測定値を補正することを特徴とする踵骨音速測定装置。
【請求項2】
前記演算手段は、前記踵全体の音速測定値、前記踵幅の実測値及び踵骨の幅寸法に基づいて前記踵骨の音速を算出する請求項1記載の踵骨音速測定装置。
【請求項3】
前記踵骨の幅寸法は、踵幅の実測値から超音波によって測定される踵骨の周囲を取り囲む軟部組織の肉厚寸法を引き算した値である請求項2記載の踵骨音速測定装置。
【請求項4】
前記軟部組織の厚肉寸法は、踵の両側から内部に入射させた超音波によって測定される踵骨からの反射エコーの波形に基づいて求められる請求項3記載の踵骨音速測定装置。
【請求項5】
前記踵骨の幅寸法は、踵幅の実測値に0.64を乗算した値である請求項2記載の踵骨音速測定装置。
【請求項6】
前記反射エコーの波形に基づいて軟部組織の厚肉寸法を測定する際には、請求項1における透過エコーの波形に基づいて踵全体の音速を測定する際の位置補正値が用いられる請求項4に記載の踵骨音速測定装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は超音波を利用した踵骨音速測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢者人口の増加に伴い、骨粗鬆症による腰椎部、大腿骨部、橈骨遠位部などの骨折が大きな社会問題となっており、骨粗鬆症の原因となる骨密度を簡易かつ正確に測定できる装置の開発が求められている。
【0003】
超音波を用いて踵の骨密度を測定する装置としては、例えば、一対の超音波探触子で踵を挟んで超音波を送受信し、踵の骨を透過した超音波を受信した受信信号から骨中の音速を求め、この音速に基づいて骨密度を測定するものが知られている。
【0004】
ところで、このような超音波を利用した骨粗鬆症の診断においては、踵骨の音速の測定精度が診断結果に大きく影響してくるが、その測定精度は被測定物の温度による影響を受け易いことが知られている。特に、踵が身体の末端にあるために踵の温度は個人差が大きく、また、季節によっても温度変化が大きいことから、正確な音速を測定する妨げとなっていた。
【0005】
従来、超音波を利用した骨密度の測定において、温度による誤差を加味した生体組織評価装置が提案されている(特許文献1参照)。この生体組織評価装置は、被験者の踵に対して送受信を行い、踵骨を伝搬する超音波の音速を測定する測定部を備える装置本体と、この装置本体の上面及び側面の全体をカバーするカバー部材とを有しており、カバー部材の裏面側に温度制御装置が設けられたものである。温度制御装置はペルチェ素子を有しており、前記測定部の周囲を加熱又は冷却することで、カバー部材の内部を所定の温度に保つようにしている。
【0006】
しかしながら、上記従来の生体組織評価装置にあっては、装置本体の内部全体を温度制御するものであり、カバー部材によって被覆された装置本体が所定の温度になるまで測定待機しなければならないために、測定開始までに時間が掛かるといった問題があった。また、踵の表面温度を直接測定するものではないので、正確な温度に基づいた音速測定は難しいものであった。

【特許文献1】特開2002-136518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、簡易な手段でありながら踵の表面温度を即座に測定し、その測定温度を考慮した補正によって、踵骨の音速の測定精度を向上させると共に短時間で音速測定ができる踵骨音速測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る踵骨音速測定装置は、踵の両側を挟む一対の超音波探触子と、この超音波探触子で踵の両側を挟んだ時の踵幅を実測する踵幅測定手段と、前記超音波探触子から踵の内部に入射させた超音波によって測定される透過エコーの波形に基づいて踵全体の音速を測定する音速測定手段と、踵全体の音速測定値と前記踵幅の実測値に基づいて踵骨の音速を算出する演算手段と、前記超音波探触子の近傍に設置されて踵表面の温度を測定する温度センサと、この温度センサから得られた踵表面の測定温度に基づいて前記演算手段で算出された踵骨の音速を補正する補正手段とを備え、前記超音波が踵全体を最初に透過した時の第1エコーまでの距離と超音波が踵全体を最初に透過した後に反射して再び透過した時の第2エコーまでの距離との差を、第2エコーが判明した数人分の測定データを基にして予め求めておき、この求めた値を位置補正値としてコンピュータ装置内の測定ソフトに組み込み、実際の測定においては、踵全体の音速を第1エコーに基づいて測定する際に、予め求められている位置補正値によって測定値を補正することを特徴とする。

【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、踵の表面温度を直接測定し、その測定値に基づいて踵骨の音速を温度補正するので、音速の精度を向上させることができる。また、本発明によれば、踵の表面温度を測定しているので、即座に音速測定の開始が可能となり、測定時間の短縮を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る踵骨音速測定装置の最良の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。本発明の踵骨音速測定装置は、図1及び図2に示されるように、踵2の音速を測定する測定部3と、この測定部3の操作を行なう超音波探傷器4と、測定条件などを設定するコンピュータ装置5とを備える。
【0011】
前記測定部3は、ケーシング6の中央部に踵2をセットする凹所7と、この凹所7の左右両側に配置され踵2を両側から挟む一対の超音波探触子8a,8bと、踵幅を測定する踵幅測定手段とを備える。前記超音波探触子8a,8bの先端にはアタッチメント10a,10bが取り付けられ、このアタッチメント10a,10bを介して超音波探触子8a,8bの先端の振動子面に超音波が伝搬し易いように構成されている。アタッチメント10a,10bは、例えばプラスチックによって円錐台形状に作られ、超音波探触子8a,8bの振動子面に基端部が圧着された状態でネジ部材9a,9bによって締め付け固定されている。なお、超音波探触子8a,8bに超音波が伝搬し易いように、超音波探触子8a,8bとアタッチメント10a,10bとの圧着面に、例えば、ソノゼリー(東芝医療用品株式会社製)のような音響媒質を塗ってから固定するのが望ましい。
【0012】
前記踵幅測定手段は、例えばデジタルキャリパ11によって構成される。このデジタルキャリパ11はキャリパプレート12を備えており、このキャリパプレート12の一端に立設されたアーム13aに一方の超音波探触子8aが固定され、キャリパプレート12にスライド可能に取り付けられたキャリパスケール14に他方の超音波探触子8bがアーム13bを介して固定されている。
【0013】
踵幅を測定する際には、前記測定部3の凹所7に踵2をセットしたのち、固定側の超音波探触子8aに踵2を押し付け、その状態で移動側の超音波探触子8bをキャリパスケール14と共に移動させ、踵2に超音波探触子8bを適当な力で押し付けて踵2を挟む。踵2の両側を挟んだときの超音波探触子8a,8b間の踵幅データは、キャリパスケール14からコンピュータ装置5に出力される。なお、前記超音波探触子8a,8bは各アーム13a,13bに対し上下方向の位置調整が可能であり、踵幅を測定する際および超音波を入射させる際などには、超音波探触子8a,8bが踵2の底面から約30mmの位置に接触するように予め高さ調整しておくのが望ましい。
【0014】
この発明において特徴的な点は、前記固定側の超音波探触子8aに温度センサ15が取り付けてある点である。この温度センサ15は、一対の超音波探触子8a,8bで踵2を両側から挟んだときに、温度センサ15の先端検出部が踵2の表面を適度に押圧するように超音波探触子8aの外周面に取り付けられている。取付手段としては、例えばバネなどの弾性部材で付勢された温度センサ15の先端検出部をアタッチメント10aの先端より僅かに突出させておき、アタッチメント10aの先端が踵2に接触する際に温度センサ15の先端検出部を弾性部材の付勢力によって踵2の表面に確実に当るように構成することもできる。この温度センサ15は、例えば熱電対によって構成され、先端検出部を踵2の表面に接触させるだけで容易に測定することができる。熱電対は温度変化に対する対応が速いので測定時間の短縮化に有効である。測定した踵表面の温度データはコンピュータ装置5に出力され、踵全体の音速測定値を温度補正する際に利用される。
【0015】
なお、この実施形態では温度補正の他に、超音波によって測定される音速のエコー波形を位置補正している。例えば図3は、超音波によって踵全体の音速を測定した時の超音波探傷器4のモニタ上にあらわれた透過エコーの波形である。透過エコーとしては、踵全体を最初の透過した時の第1エコー(a)と、透過した後に反射し再び透過した時の第2エコー(b)とが得られる。モニタ上には第1エコー(a)の波形は明瞭に表示されるが、第2エコー(b)の波形は必ずしも明瞭には表示されない。そのため、第1エコー(a)のみの位置から踵全体の音速を測定するのが望ましいが、モニタ上に表示されるX軸上の0点の位置と、イニシャルパルス(c)の位置とがX軸上でずれていることから、両者間の距離Cが誤差量となり正確な音速が測定できない。
【0016】
そこで、本発明では前記の距離Cを予め求めておき、これを位置補正値としてコンピュータ装置5内の測定ソフトに組み込んでおくことで、踵全体の音速を測定する際には補正された測定値を得るようにしている。具体的には第1エコー(a)と第2エコー(b)とのエコー間距離L’は正確な値として求められるので、モニタ上に表示されるX軸上の0点から第1エコー(a)及び第2エコー(b)までの各距離A,Bを測定し、下の(1)式によりエコー間距離L’を求め、(2)式により補正距離Cを得る。また、(3)式により補正時間Zとして得ることもできる。本実施形態では5人について測定したところ、Z=2.9μsを得たので、この値を補正時間として用いた。このように位置補正を予め行っておくことで、踵全体の音速測定では透過エコーの波形が非常に鮮明である第1エコーのみの測定で済むので、エコーのピーク値の読み取りが非常に容易となり、計測の精度が向上する。
’=B-A・・・・・(1)
C=A-L’/2・・・・・(2)
Z=C/V’・・・・・(3)
なお、(3)式において、V’は踵全体の音速を測定した時の超音波の仮音速値である。
【0017】
上記の位置補正は、踵の軟部組織の肉厚を測定する際の反射エコーに対しても行うのが望ましい。上記と同様にして5人について補正距離C又は補正時間Zを求めたところ、Z=1.45μsを得たので、この値を補正時間として用いた。
【0018】
次に、上記構成からなる踵骨音速測定装置を用いた踵骨の音速測定のステップを図4に基づいて説明する。先ず、図1及び図2に示したように、測定部3の凹所7に踵2をセットし、上述した一対の超音波探触子8a,8bで踵2の両側を挟み込む。その際、踵2の底面及び後面からそれぞれ30mmの位置にアタッチメント10a,10b各先端面が当るように調整する。また、踵2の内部に超音波が入射し易いように、踵2の両側にソノゼリー(東芝医療用品株式会社製)などゼリー状の音響媒質を塗っておくのが望ましい。
【0019】
超音波探触子8a,8bを位置決めしたのち測定開始スイッチを入れて測定を開始する。まず、測定部3のデジタルキャリパ11によって踵幅寸法Lを実測し、その測定データをコンピュータ装置5に出力する(ステップ1)。前記踵幅寸法Lを実測するのと同時に温度センサ15により踵2の表面温度Tを実測し、その測定データをコンピュータ装置5に出力する(ステップ2)。
【0020】
次に、踵骨2aの周囲を取り囲む軟部組織2b,2cの各肉厚寸法L,Lを超音波測定によって求める(ステップ3)。一対の超音波探触子8a,8bのそれぞれから踵2の両側に超音波(音速V=1531m/s)を入射し、踵骨2aからの反射エコーを測定することで左右の軟部組織2b,2cの各肉厚寸法L,Lを求める。具体的には、前記測定した反射エコーの波形を超音波探傷器4のモニタに映し出し、その映像のエコー位置から左右の軟部組織2b,2cの肉厚寸法L,Lを得ることができる。なお、モニタに映し出される反射エコーの波形は位置補正がなされている。なお、踵2に入射する超音波の音速V=1531m/sおよび位置補正時間Z=1.45μsをコンピュータ装置5内の測定ソフトに予め入力しておくことにより、位置補正された肉厚寸法L,Lを求めることができる。また、反射エコーのピーク位置を求め易くするために波形高さを約80%程度にゲイン調整するのが好ましい。
【0021】
次に、上記超音波探触子8a,8bを用いて踵全体を伝搬する音速の測定を行ない、踵全体の踵幅寸法L’を求める(ステップ4)。この測定ではコンピュータ装置5内の測定ソフトに仮の音速として例えばV’=1500m/sと、踵全体の位置補正時間Z=2.9μsを入力しておく。そして、コンピュータ装置9内の測定ソフトを動作させ、超音波探傷器4により一方の超音波探触子8aから1500m/sの超音波を踵2に入射する。透過法により踵全体を伝搬する時の透過エコーを測定することで踵全体の音速を算出する。具体的には、第1エコー(a)の波形を超音波探傷器4のモニタ上に映し出し、エコーのピーク位置から仮音速における踵全体の踵幅寸法L’を得る。この踵幅寸法L’は自動的に位置補正して算出され、そのデータはコンピュータ装置5に出力される。
【0022】
コンピュータ装置5内の演算処理部では、上記で得られた仮音速での踵幅寸法L’、デジタルキャリパ11によって実測された踵幅寸法L及び仮音速V’から、下記の(4)式により踵全体の音速Vが計算される(ステップ5)。
=V’×L’/L・・・・・(4)
【0023】
次に、温度センサ15によって測定した踵2の表面温度Tを考慮して前記で計算された踵全体の音速Vを温度補正する(ステップ6)。本発明者らは踵全体の音速が踵2の表面温度によって影響を受けることに注目し、踵2の表面温度が上がるのに従って踵全体の音速が線形的に下がる傾向を見い出した。以下の実施例3に基づいた結果では踵2の表面温度が1℃上がる毎に踵全体の音速は約2.48m/sずつ下がることが判明し、温度係数-2.48(m/s)/℃を得た。この温度係数-2.48(m/s)/℃を用いて、基準温度を例えば30℃としたときの踵全体の音速を補正した。この温度補正の計算は、コンピュータ装置5に入力された踵2の表面温度Tの測定データを基準温度(30℃)における音速として換算するもので、コンピュータ装置5内の演算処理手段によって、以下の(5)式より補正後の踵全体の音速V″を算出した。
″=V-(30-T)×(-2.48)・・・・・(5)
【0024】
次に、前記で求めた基準温度(30℃)における踵全体の音速V″から踵骨2aのみの音速Vを下記の(6)式によって算出した(ステップ7)。ここでLは踵骨2aのみの幅寸法であり、前記した踵左右の軟部組織2b,2cの肉厚寸法L,Lと、デジタルキャリパ11により計測した踵全体の幅寸法Lから、下記の(7)式により算出した。
/V″=(L+L)/V+L/V・・・・・(6)
=L-(L+L)・・・・・(7)
【0025】
上記で説明したような超音波探傷器4の操作、超音波による音速測定およびコンピュータ装置5内での演算処理は、コンピュータ装置5内に組み込まれた測定ソフトにしたがって自動的に行なわれ、温度補正および位置補正を加えた踵骨2aのみの音速Vが最終的に求められる。
【0026】
次に、踵左右の軟部組織2b,2cの肉厚寸法L,Lを測定せずに、踵全体の音速のみを用いて簡易的に踵骨2aの音速を求める方法について述べる。この方法は、踵全体の幅寸法Lと踵骨2aの幅寸法Lとがほぼ比例関係にあるという事実を用いて行なうものである。多少の個人差はあるものの踵全体の約64%を踵骨2aが占めると云われている。そのことから、踵骨2aの幅寸法Lを以下の(8)式により簡易的に算出し、これを上記の(6)式に算入することで簡易に算出することができる。
=L×0.64・・・・・(8)
【0027】
なお、この簡易方法では軟部組織2b、2cの肉厚寸法L,Lの測定を行なわないが、その他の測定や演算処理は上記と同様の手段で行なう。その場合、踵全体の音速測定では透過エコーの波形が非常に鮮明である第1エコーのみの測定で済むので、エコーのピーク値の読み取りが非常に容易であり、自動計測の精度が向上すると共に計測し易いといった利点がある。
【実施例】
【0028】
(実施例1)
温度補正値を加味した時の踵骨の音速と加味しない時の踵骨の音速とを、二重エネルギーX線吸収法(DXA法)によって得た骨密度(BMD)と比較した。踵骨の音速は上記で説明した演算手段により算出し、BMDはX線骨密度測定装置QDR-4500W(Hologic,USA)を用いて第2~第4腰椎を測定し、その平均値を採用した。なお、被験者は23~25歳の男性6名(A~F)である。
【0029】
踵骨の音速およびBMDの測定値を表1に示す。表1の結果から、BMDと踵骨の音速との相関係数rは、温度補正値を加味しない時が0.929であったのに対して、温度補正値を加味した時が0.948であり、温度補正値を加味することにより両者の相関性が増すことがわかった。
【0030】
【表1】
JP0005531307B2_000002t.gif

【0031】
(実施例2)
上記(6)式において、踵骨幅Lとして簡易的に算出した(8)式の値を用いて踵骨の音速Vを演算した。被験者は実施例1の場合と同じである。踵骨の音速およびBMDの測定値を表2に示す。表2の結果から、BMDと踵骨の音速との相関係数rは、温度補正値を加味しない時が0.903であったのに対して、温度補正値を加味した時が0.936であり、この場合にも温度補正値を加味することにより両者の相関性が増すことがわかった。
【0032】
【表2】
JP0005531307B2_000003t.gif

【0033】
(実施例3)
踵2の温度が踵骨の音速に及ぼす影響について調べた。図5は測定装置の略図であり、この測定装置は、水槽20と、水槽20内に配置した一対の超音波探触子21a,21b、熱電対22およびヒータ23とを備える。水槽20内の水24の温度をヒータ23によって徐々に上げていき、水槽20内に沈めた踵2全体の音速をそれぞれの温度について測定した。このとき、踵2の温度より水24の温度の方が低いため、踵2の温度が安定するまで時間を置き、熱電対22で踵2の温度を測定した後、踵全体の音速測定を開始した。具体的には仮音速をV’=1500m/sとして一方の超音波探触子21aから入射させ、他方の超音波探触子21bで得られた透過エコーのピーク位置から踵全体の音速Vを上述の(4)式より求めた。実際には被験者4名(A~D)について、熱電対22による踵2の温度が約28~36℃まで変化した場合について、約1℃上がることに踵全体の音速を測定し、その結果から踵2の表面温度が音速に及ぼす影響の値である温度係数αを求めた。被験者4名について、踵の温度変化に伴う踵全体の音速の測定結果を図6にグラフで示し、また、温度係数およびその平均値を表3に示す。この実験結果から、温度係数-2.48(m/s)/℃が得られた。
【0034】
【表3】
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【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係る踵骨音速測定装置は、踵骨の音速を測定する際に踵の表面温度を考慮した補正ができるので、簡易な測定法でありながら正確な踵骨の音速を測定することが可能となり、超音波を利用した骨粗鬆症の診断装置の精度を高められる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る踵骨音速測定装置の測定部の概略図である。
【図2】本発明の踵骨音速測定装置のシステムを示す全体図である。
【図3】踵全体を透過するエコー波形の概略図である。
【図4】本発明の踵骨音速測定装置を用いた踵骨の音速測定のステップ図である。
【図5】踵の温度と踵全体の音速との関係を測定するための実験モデル図である。
【図6】踵の温度変化と踵全体の音速との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0037】
2 踵
2a 踵骨
2b,2c 軟部組織
3 測定部
4 超音波探傷器
5 コンピュータ装置
8a,8b 超音波探触子
10a,10b アタッチメント
11 デジタルキャリパ(踵幅測定手段)
12 キャリパプレート
14 キャリパスケール
15 熱電対(温度センサ)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5