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明細書 :超臨界流体又は亜臨界流体を用いた酸化物薄膜、又は金属積層薄膜の成膜方法、及び成膜装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4815603号 (P4815603)
登録日 平成23年9月9日(2011.9.9)
発行日 平成23年11月16日(2011.11.16)
発明の名称または考案の名称 超臨界流体又は亜臨界流体を用いた酸化物薄膜、又は金属積層薄膜の成膜方法、及び成膜装置
国際特許分類 C23C  16/44        (2006.01)
H01L  21/28        (2006.01)
H01L  21/285       (2006.01)
C23C  16/40        (2006.01)
C23C  16/448       (2006.01)
B01J  19/00        (2006.01)
B01J   3/00        (2006.01)
H01L  21/3205      (2006.01)
H01L  23/52        (2006.01)
FI C23C 16/44 A
H01L 21/28 301R
H01L 21/285 Z
C23C 16/40
C23C 16/448
B01J 19/00 K
B01J 3/00 A
H01L 21/88 R
請求項の数または発明の数 5
全頁数 15
出願番号 特願2006-514112 (P2006-514112)
出願日 平成17年6月1日(2005.6.1)
国際出願番号 PCT/JP2005/010040
国際公開番号 WO2005/118910
国際公開日 平成17年12月15日(2005.12.15)
優先権出願番号 2004167782
優先日 平成16年6月4日(2004.6.4)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成20年5月2日(2008.5.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
発明者または考案者 【氏名】近藤 英一
審査官 【審査官】伊藤 光貴
参考文献・文献 特開2000-357686(JP,A)
国際公開第2001/032951(WO,A2)
国際公開第1997/005994(WO,A1)
国際公開第2002/102712(WO,A1)
調査した分野 C23C 16/00-16/56
B01J 3/00
B01J 19/00
H01L 21/28
H01L 21/285
H01L 21/3205
H01L 23/52
特許請求の範囲 【請求項8】
形成目的とする金属酸化物の金属前駆体と、前記金属前駆体を酸化する酸素を除く酸化剤とを超臨界流体中又は亜臨界流体中に溶解し、前記超臨界流体中又は亜臨界流体中に設けられた基板の表面に酸化反応により金属酸化物薄膜を成膜し、
次に、還元剤及び導電性金属前駆体とを超臨界流体又は亜臨界流体中に溶解し、前記基板の表面に形成された金属酸化物薄膜を金属薄膜に還元するとともに、還元された前記金属薄膜上に前記導電性前駆体を還元し、導電性金属の薄膜を積層させることを特徴とする金属薄膜の積層成膜方法。
【請求項9】
請求項8に記載の金属酸化物的はRuOであり、前記金属薄膜はRuであり、前記導電性金属はCuであることを特徴とする請求項8に記載の金属薄膜の積層成膜方法。
【請求項10】
前記還元剤はHであることを特徴とする請求項8に記載の金属薄膜の積層成膜方法。
【請求項11】
形成目的とする金属酸化物の金属前駆体と前記金属前駆体を酸化する酸化剤とを超臨界流体中又は亜臨界流体中に溶解させる手段と、
該流体中に設けられた基板の表面に酸化反応により前記金属酸化物薄膜を形成する手段と、
前記金属酸化物薄膜の成膜終了後、前記超臨界流体又は亜臨界流体を輩出する手段と、
導電性金属前駆体と還元剤とを、超臨界流体中又は亜臨界流体中に溶解させる手段と、
前記基板の表面に形成された金属酸化物薄膜を還元反応により金属薄膜に還元するとともに、該金属薄膜の表面に前記導電性金属前駆体を還元反応により導電性金属の薄膜として形成する手段とを備えたことを特徴とする金属薄膜の積層成膜装置。
【請求項12】
請求項11に記載の金属薄膜の積層成膜装置は、酸化反応及び/又は還元反応の温度を調整する手段を更に備えたことを特徴とする金属薄膜の積層成膜装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化剤と金属前駆体とを超臨界流体又は亜臨界流体に溶解させ、基板上に酸化物薄膜を形成する成膜方法、及び当該方法により生成した酸化物薄膜を還元することにより、金属の積層薄膜を形成する方法、並びにかかる成膜を生成する成膜装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、有機溶媒など環境負荷の大きな物質を用いずに物質合成を行う技術が必要となっている。従来、集積回路の製造などの超微細加工プロセスは、真空中又は希薄気体雰囲気中、あるいはプラズマ放電雰囲気中等の、ドライプロセス(真空プロセス)で行われるのが一般的である。
【0003】
ドライプロセスは、単独の原子や分子あるいはそのイオンを直接加工に利用できる点から、極めて有効な手段としてこれまで発展してきた。しかし、真空の維持用の設備が必要であること、プラズマ発生装置が必要であること等が高コスト化の要因となっている。一方、メッキや洗浄など液体を使うウェットプロセスでは、大量の廃液が発生し環境上の問題がある。
【0004】
CO2を媒質とする超臨界流体は、液体と気体の中間の性質を有し、表面張力がゼロの状態であり、また、他の物質を溶解する能力(溶媒能)が高いなど、特異な性質を兼ね備えている。更に、化学的に安定、かつ安価、無害、低コストといった利点も兼ね備えている。これらに加え、気化・再液化により、CO2そのものの、及びCO2流体中に溶解している物質のリサイクルも可能という多くの特徴がある。
【0005】
集積回路製造プロセスにおけるウェハ洗浄工程を中心に、超臨界CO2を利用する研究・開発が進められている。例えば、洗浄工程では、超臨界CO2の溶媒能と安全性・リサイクル性に着目したプロセスが開発されている。また、超臨界CO2中では、表面張力がゼロであることに着目し、ナノレベルの配線を形成する微細加工プロセスの研究開発が行われている。
[0006] 例えば、半導体装置の製造における主要な機能の一つとして薄膜の形成があるが、超臨界流体を利用した薄膜の形成方法としては、急速膨張法(Rapid Expansion of Supercritical Solution)が知られている。D.Matsonらは、原料物質を溶解した超臨界流体を膨張させ、過飽和となった原料を形成する技術を公表している。また、これを発展させ、超臨界流体中に酸化物錯体を溶解し、加熱された基板に吹き付けて金属酸化物薄膜を得る方法も開示されている(特許文献1および非特許文献1を参照のこと)。
[0007] 超臨界流体は表面張力がゼロであり、拡散係数も大きいので、ナノ細孔内に極めてよく浸透する。超臨界流体そのものを薄膜形成の反応場として用いることができれば超微細な構造内に物質を形成・充填することが可能となり、さらにCVDやメッキに替わる、低コストのグリーンプロセスを構築できる。
[0008] 発明者らは、超臨界CO中に有機金属などの薄膜形成原料を溶解させ、そのまま成膜反応を行わせて薄膜の成膜を行う方法を独自に開発し(E.Kondohand H.Kato、Microelectron.Eng.第64巻(2002)495頁)、バイアホールやトレンチへのCu埋め込みや、Cuの拡散防止膜の形成など集積回路配線の製造に適用している(特願2003-17948「半導体装置の製造方法」、特願2003-17949「半導体装置の製造方法」)。また、同様の方法が特表2003-514115によっても開示されている。
[0009]
【特許文献1】
特開2003-213425
【非特許文献1】
J.Mater.Sci.第22巻6号1918(1987)
【特許文献2】
特願2003-17949
【特許文献3】
特表2003-514115
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
[0010] しかし、これらのいずれの技術においても、金属の薄膜を形成するには、薄膜を形成する基板(下地)に導電性がないと、成膜できないといった問題点があった。このため、所望の場所に配線として金属薄膜を形成するには、成膜した下地にスパッタリング等により導電性を付与するための処理工程が必要であり、このためプロセスが複雑になるとともにコスト高になるといった問題点があった。
【0011】
そこで本発明の課題は、酸化物薄膜、又は金属積層薄膜を、成膜した下地の特性(導電性の有無)に依存することなく、金属積層薄膜を形成する方法を提供することにある。また、かかる緻密な薄膜の成膜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、形成目的とする金属酸化物の金属前駆体と、前記金属前駆体を酸化する酸化剤とを超臨界流体中又は亜臨界流体中に溶解し、前記超臨界流体中又は亜臨界流体中に設けられた基板の表面に酸化反応により、前記金属酸化物の薄膜を形成するものである。
【0013】
ここで、酸化剤はO3、N2O、又はH2Oであることは好適である。O3は基板表面で酸素に分解する際に、原子状酸素を遊離する。かかる原子状酸素は不安定であるため基板表面において超臨界流体中、又は亜臨界流体中に含まれている金属前駆体と反応し、金属酸化物薄膜を成膜するためである。酸化剤としてO2を用いることも考えられるが、O2では緻密な金属酸化物を作ることはできないとの知見を得ている。また、前記超臨界流体、又は亜臨界流体はCO2を媒質とすることは好適である。
【0014】
前記酸化反応は前記金属前駆体の融点以上であり、かつ集積回路等が破壊されない400℃以下の温度下で行うことは好適である。
【0015】
前記金属前駆体は、Ru化合物であることは好適である。これは通常、集積回路の作製プロセスにおいて、Cuを配線の原料として用いるがRuはCuの拡散を防止する効果を持つためである。また、前記O3はCO2で希釈されたものであることは好適である。O3はそのままでは爆発の危険性があるためである。また、前記超臨界流体、又は亜臨界流体の媒質と、前記酸化剤を希釈する媒質とが同質であることは好ましい。同質であれば、互いの物質を不純物とし無用な反応等が起こすことが無いためである。
【0016】
本発明は、形成目的とする金属酸化物の金属前駆体と、前記金属前駆体を酸化する酸化剤とを超臨界流体中又は亜臨界流体中に溶解し、前記超臨界流体中又は亜臨界流体中に設けられた基板の表面に酸化反応により金属酸化物薄膜を成膜し、次に、還元剤及び導電性金属前駆体とを超臨界流体又は亜臨界流体中に溶解し、前記基板の表面に形成された金属酸化物薄膜を金属薄膜に還元するとともに、還元された前記金属薄膜上に前記導電性前駆体を還元し、導電性金属の薄膜を積層させるものである。
[0017] 発明者らは、有機金属錯体を超臨界流体中に溶解し、添加したHによって還元反応を生じさせ金属薄膜を得る技術を開発した。しかしHを添加しない場合には粒子のみが合成され薄膜が形成されないことをこれまでに確認している。
[0018] 金属酸化物はRuOであり、前記金属薄膜はRuであり、前記導電性金属はCuであることは好適である。これは通常、集積回路の作製プロセスにおいて、Cuを配線の材料として用いるがRuはCuの拡散を防止する効果を持つためである。
[0019] 前記還元剤はHであることは好ましい。薄膜の形成には、下地表面および成長表面において、不均質反応が連続的に進行することが必要である。下地上で優先的に反応が起こるためには下地が触媒的に作用する必要がある。Cuの析出の場合には下地金属がHの解離を助けている。発明者らは上記研究のなかでH還元反応が導電性下地上にのみ選択的に起こることを見出した。これはHの解離反応が金属下地上で優先的に進行するためである。
[0020] 本発明は、形成目的とする金属酸化物の金属前駆体と前記金属前駆体を酸素以外の酸化する酸化剤とを超臨界流体中又は亜臨界流体中に溶解させる手段と、該流体中に設けられた基板の表面に酸化反応により前記金属酸化物薄膜を形成する手段と、前記金属酸化物薄膜の成膜終了後、前記超臨界流体又は亜臨界流体を排出する手段と、導電性金属前駆体と還元剤とを、超臨界流体中又は亜臨界流体中に溶解させる手段と、前記基板の表面に形成された金属酸化物薄膜を還元反応により金属薄膜に還元するとともに、該金属薄膜の表面に前記導電性金属前駆体を還元反応により導電性金属の薄膜として形成する手段とを備えた金属薄膜の積層成膜装置である。
[0021] この金属薄膜の積層成膜装置は、酸化反応及び/又は還元反応の温度を調整する手段を更に備える。形成目的とする金属酸化物薄膜の種類や形成目的とする導電性金属薄膜の種類により、反応温度を制御することが好ましいためである。
【発明の効果】
[0022] 本発明によれば、超臨界流体中、又は亜臨界流体中で下地の導電性の有無にかかわらず金属酸化物薄膜を成膜することができる。また、かかる金属酸化物薄膜を金属薄膜に還元し金属薄膜とすることができるとともに、該金属薄膜上に配線材料とし通常使用される金属の薄膜を積層させることができる。本発明によれば、段差被覆性や埋め込み性よく、金属酸化物薄膜、及び金属薄膜を簡便なプロセスにより成膜することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施に係る成膜システムの構成図
【図2】図2は、本発明の実施に係る高圧反応容器の構成図
【図3】Si基板上に得られた薄膜の断面SEM写真
【図4】X線光電子分光法による深さ分析の結果を示した図
【図5】O2を酸化剤としたときの成膜物のSEM写真
【図6】金属積層構造を形成する工程を示した図
【図7】金属積層構造のX線光電子分光法により深さ分析した結果
【符号の説明】
【0024】
1 本発明を実施するためのシステム構成の一例
10 高圧反応容器の構成図
11 基板
12 基板支持具
13 熱電対
14 マグネチックスターラー
15 電熱線
16 流体流出口
17 ボルト
18 攪拌子
19 金属前駆体
20 O3供給ボンベ
30 CO2供給ボンベ
40 高圧反応容器
50 H2供給ボンベ
60 配管切替器
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本明細書で超臨界流体とは、CO2などの気体をその臨界点以上に保つことにより、気液の差がなくなり液体でも気体でもない流体である状態をいう。
【0026】
本明細書で亜臨界流体とは、臨界値の直下にある流体の状態をいう。
【0027】
本明細書で金属前駆体とは、有機金属化合物、有機金属錯体、ハロゲン化金属、ハロゲン化錯体の総称をいう。
【0028】
図1は、本発明を実施するための装置の構成の一例である。超臨界流体、又は亜臨界流体の媒質であるCO2ガスは、CO2ボンベ30から液化器で液化された後、昇圧ポンプで昇圧され、高圧反応容器10に導入される。高圧反応容器10の圧力は、圧力調整弁と圧力計により、CO2の臨界点である7.4MPa以上の圧力に維持することは好適である。亜臨界流体である7.4MPaより僅かに低い圧力であっても良い。
【0029】
高圧反応容器10の下流には、バルブと圧力調整弁を設ける。高圧反応容器10内で反応が終了した後、高圧反応容器内の超臨界流体は、各バルブの開閉を制御することにより気化・分離器40に導入される。超臨界CO2流体は、気化・分離器40において気化されるとともに、当該流体中に溶解している物質を分離回収する。
【0030】
高圧反応容器10にはヒーターと熱電対が設けられており、これらにより所定の温度に加熱・保持されるとともに、温度の調節ができる。また、反応ガスの供給の制御は高圧反応容器10のガス供給口に近接して設けられている制御弁(図外)により行う。
【0031】
図2は、高圧反応容器10の構成例を示したものである。高圧反応容器10はステンレス製の耐圧・耐熱容器であることは好適であるが、これに限定されるものではない。この高圧反応容器10は、例えばオートクレーブ(加圧脱泡装置)を加工することで作製できる。
【0032】
高圧反応容器10の内部には、基板支持具12が設けられ、この基板支持具12に薄膜を形成したい基板を設置する。薄膜は基板表面に形成されるが、形成した面を上向きに設置することは好適である。
【0033】
図2において、CO2および添加ガスを含んだ超臨界流体は流体流出口16から供給される。成膜終了後の超臨界流体はこの配管を通じて、気化・分離器40に排出される。高圧反応容器10内には、形成目的の金属酸化物薄膜の金属前駆体19が入っている。かかる金属前駆体はマグネチックスターラー14により回転する攪拌子18により攪拌され、均一に超臨界流体中に溶解する。
[0034] 攪拌装置の利用ならびに基板11を基板支持具12により固定するのは、金属前駆体を効率的に基板11に供給するようにするためであり、この目的が達成されれば、この構成に限定されるものではない。また、成膜反応は基板表面のみで起こるので、高圧反応容器10の全体を加熱せず基板のみを加熱するように構成しても良い。
【実施例1】
[0035] 本発明の一実施例として、ダイナミックランダムアクセスメモリーのキャパシタ電極として、汎用的に使われているRuO(酸化ルテニウム)を金属酸化物薄膜として成膜した。
[0036] 形成目的とする金属酸化物の金属前駆体は、有機ルテニウム化合物であるビスシクロペンタジエニルルテニウム(RuCp)である。これを所定量秤量し、図2に示す攪拌子18とともに内容量50mLの高圧容器に入れる。次に、希フッ酸で1分間洗浄したSi基板を高圧反応容器10の支持具12に設置し、高圧反応容器にフタをし、ステンレスボルト17により封止する。
[0037] 次に、図1に示す各種バルブ及び配管切替器60を制御し、COで希釈した5%OガスをOガス供給ボンベ20から高圧反応容器10に供給する。このときの圧力は0.1MPaである。これにより高圧反応容器10内は、0.1MPaの圧力で5%Oガスが充填された状態となる。なお、高圧反応容器10内を真空ポンプにより事前に真空としておくことは好適である。事前に真空とせず、CO供給装置30によりCOガスで0.1MPaよりも十分低い圧力にして高圧反応容器10内をCO充填した後、5%Oを0.1MPaの圧力で充填してもよい。
[0038] 次に、各バルブ及び配管切替器60を制御し、CO供給装置30により高圧反応容器10内に液体COを供給して高圧反応容器の圧力を10MPaとする。高圧反応容器10の攪拌器18で攪拌しながら、ヒーター15により容器全体の温度を250℃にし、約3分間反応させた後、各バルブを閉め、ヒーター15による加熱を止めて容器を水冷する。
[0039] 高圧反応容器10の下流にあるバルブを開として、高圧反応容器10内の流体を気化・分離器40を通して排出するとともに、高圧反応容器10のフタをあけてSi基板を取り出したところ、Si基板上には光沢のある成膜物が見られた。
【0040】
図3(a)はSi基板上に得られた薄膜の断面SEM写真を示したものである。緻密で均一な薄膜が約100nm成膜していることがわかる。図3(b)は図3(a)の写真を模式的に示した図である。
【0041】
図4は、X線光電子分光法による深さ分析の結果を示したものである。図4の横軸は、エッチング時間(秒)であり、縦軸は、信号強度である。図4において、RuとOの信号は、350秒まではほぼ均一の強度となっている。一方、Siの信号はほぼ0である。300秒以上経過すると、Siの強度があがりRuとOは減衰していく。これは、Si上にRuとOとの比率が一定であるRuO2薄膜が形成されていることを示している。
【0042】
この膜を4端針プローブにより抵抗を調べたところ、その比抵抗は200マイクロ・オーム・センチメートルであった。
【比較例1】
【0043】
上述したCO2で希釈した5%O3ガスに替えてO2を用いたところ、Si基板上にRuO2の薄膜は形成されなかった。そこで、ヒーター15により温度を250℃から350℃としたところ、粒子ないし粒子が多く混在した薄膜が生成された。かかる条件下で得られた成膜のSEM写真を図5(a)に示す。この成膜は非常にもろく、比抵抗を測定することはできず、導電性はないものと思われる。図5(b)は図5(a)を模式的に示した図である。
【0044】
以上の実施例および比較例から、O3を用いた場合とO2を用いた場合で成膜の性状が著しく異なることが分かった。これはO3が基板表面でO2に分解し、その際原子状酸素を遊離するためである。かかる原子状酸素は不安定であるため、Si基板表面に到達すると高圧反応容器10中の超臨界流体中の金属前駆体であるRuCp2と直ちに反応し、Si基板上にRuO2化合物を生成するものと考えられるためである。Si基板上にのみRuO2の薄膜が形成されるのは、原子状酸素とRuCp2との反応がSi基板の表面でのみ起こるためであると考える。
【0045】
これに対して、酸化剤としてO2を用いた場合にはこのような作用がないので、RuCp2とO2の反応は超臨界流体中で均一に起きる。この結果、超臨界流体中で反応し粒状となった物質がSi基板上に成膜されるものと考えられる。また、O2は安定であるので、反応温度が250℃ではRuCpとOとの反応は起きず、350℃ではじめて反応が起こったものと考える。
[0046] COで希釈した5%Oに代え液体オゾンなどの更に高濃度オゾンも用いても良い。しかし高濃度オゾンは爆発的に自己分解することがあるので、適当な希釈媒体により10%以下程度に希釈することが好ましい。Oの希釈媒体としては不活性ガスたとえばAr、N、XeやCFなどのフロン類を用いることができる。ここで、超臨界流体の媒質と、希釈媒質とを同一物質とすれば、互いが不純物となることがなく、また高圧反応容器の超臨界流体の臨界点などに影響を及ぼすことがないという利点がある。
[0047] 希釈Oガス中にはOも混入しうるが、比較例でみたようにOを酸化剤とした反応の温度は高いので、成膜温度を低く選べば、Oのみを酸化剤とし酸化物薄膜を形成することができる。
[0048] 超臨界流体の媒質はCOとしたが、このほかAr、N、Xeなどの不活性ガス類や、CF、CHF、Clなどのハロゲンガス類、NH、CHOH,HOなどの極性ガスを用いることができる。しかし特に超臨界媒質を反応物質として用いない場合には、安全性、低環境負荷性、コスト、および溶媒能を有する点から、COが好ましい。反応圧力は10MPaとしたが、媒質の臨界点(COは7.4MPa)以上であればよく、原料を溶解する能力(溶媒能)があれば亜臨界状態でもかまわない。COの場合には溶媒能を発揮させるにはその圧力を6MPa以上とすることが望ましく、実験的に決定する必要がある。
[0049] 反応温度は250℃としたが、この温度は試行により適宜最適値を決定する必要がある。本実施例の場合には、RuCpの融点(約100℃)を下限とし、集積回路配線のプロセス許容温度400℃を上限とし、その範囲で実験的に決定した。
[0050] RuCpおよびOの量は以下のように決定した。まず、容器の体積は50mLであり、常温で5%Oを0.1MPa導入したので、Oのモル数は2.0mMol(ミリモル)となる。反応を形式的に、RuCp+2O→RuO+2O+2Cpと考え、必要なRuCpは1.0mMolすなわち230mgとなる。この量を基準に実験的に決定した。上記実施例では、50mgでよい結果が得られた、
[0051] 金属化合物はRuCpとしたが、Ru(CpMe)、Ru(CHF、Ru(C1119、など有機Ru化合物ないし含酸素Ru錯体などを用いることができる。
[0052] 本発明はRuOの製造に限られるものではなく、また化学組成も限定されるものではない。金属酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ビスマス、酸化銅、酸化タンタル、酸化アルミニウ厶、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化リチウム、酸化Si、酸化Mg、酸化鉛、及びそれらにより構成される複合酸化物たとえばチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr、Ti)O、PZT)、YBaCu(YBCO)などの各種高誘電率、強誘電体、超伝導体酸化物の製造に用いることができる。
[0053] 複合酸化物の製造の際には、原料化合物をあらかじめ混合することができる。原料物質としては、ハロゲン化金属、有機金属、金属錯体、含酸素有機金属化合物・錯体、含ハロゲン有機金属化合物・錯体などを用いることができ、たとえば酸化タンタルの製造には、TaBr、TaCl、(CTaH、[(CHN]Ta、Ta(OC、Ta(i-OC、Ta(OCHなど広く用いることができ、またCVD原料として知られているもののほとんどが利用できる。
【実施例2】
[0054] 次に、実施例1で成膜した導電性金属酸化物薄膜を用いて導電性金属を積層した成膜を作製した。
[0055] 本実施例では、薄膜を形成する下地として非導電性物質としてSiを用いた。しかし、ポリイミドやポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの有機薄膜,SiOやAlなどの酸化物薄膜,あるいはSiなどの半導体であっても良い。
[0056] 先ず、上述したプロセスにより、導電性金属酸化物であるRuOを成膜した。このとき用いた酸化剤はOに限定されるものではなく、NO、HOなどを用いても良い。ただし、Oを用いた場合には低温で低抵抗の薄膜を形成することができることはいうまでもない。RuOを成膜する条件は前記したとおりであるが、ここでは成膜時間を短くし、50nmの薄膜を得た。
[0057] RuOの薄膜を形成した後、いったん高圧反応容器10を開放し、その後、100%Hガス、0.1MPaで充填する。RuO酸化物を下地として還元反応によりCuをRuO上に300nm成膜した。Cuの成膜の手順は,実施例1のプロセスと基本的には同様であるが次の点が異なる。
[0058] 先ず、1)形成目的である導電性金属薄膜の金属としてCuを選んだ。また、Cuの前駆体としては、含ハロゲン有機金属CuであるCu(CHFを350mg用いた、2)酸化剤である5%希釈Oに代えて100%Hガスを0.1MPa添加したこと、3)反応温度を230℃としたこと、4)反応時間を5分間としたことが異なる。100%Hガスの供給は、図1に示すHガス供給ボンベ50から各バルブと配管切替器60の制御により行った。
[0059] なお、還元剤としては、HのほかCHOH,CHCOOH,HCOOH,bなどを用いることができる。この還元反応は導電性下地上で優先的におきた。すなわち、導電性のないSi下地にはCuは成膜せず、RuOにより導電性を付与された下地上にのみ成膜した。
[0060] ここで、この実施例で用いた導電性酸化物であるRuOは還元されやすい物質であるため、Cu成膜中に使用する還元剤により、単体金属に還元される。その結果、Si基板上にはCuとルテニウム酸化物の薄膜の積層物ではなく、Cuとルテニウムの積層構造が形成された。
[0061] 即ち、本実施例では、Si基板上には、Ruの薄膜が形成され、その上にCuの薄膜が形成されるといった金属薄膜が積層した構造となった。
[0062] 通常、集積回路の形成プロセスにおいてCu配線を形成する場合、Ru薄膜をスパッタリングにより形成し、その上にCuの薄膜を形成している。これは、Ru金属層をCuの拡散防止膜として必要となっているためである。またRuはRuOに比較するとはるかに電気伝導性が良好であるので、Cuの薄膜配線を形成する場合に、下地が導電性の良いRuであることは、より良好の配線が形成されることから望ましい。
[0063] 本実施例では、300nmのCu膜と50nmのRuの積層構造を同一の装置により得ることができた。図6(a)はこの実施例で示したプロセスにより、Siの基板上にRuとCuとの金属積層構造を形成する工程を示したものである。Si基板上にRuOを実施例1にプロセスにより作製し、その後、実施例2のプロセスによりRuOをHにより還元するとともに、Cu(CHFを還元しCuの薄膜を形成する。
[0064] 図7は、この実施例により得られた金属積層構造のX線光電子分光法により深さ分析した結果である。Cu,Ru,Siが順次積層されていることがわかる。なお,Cu,Ru,Siはエッチング速度がそれぞれ異なるので,エッチング時間の長さが膜厚に直接対応しているわけではない。
[0065] 導電性下地としては,酸化スズ,酸化アンチモン,酸化チタン,酸化インジウム,酸化銅,酸化リチウムなどおよびそれらを含む複合酸化物や,Liをドープした酸化ニッケルなど各種ドープ酸化物を用いることができる。また成膜する金属としては,Ru,Cu,Ni,CO,Cr,Mn,Nb,Tiなど遷移金属などのほかAlなどを用いることができる。
[0066] それらの成膜に必要な原料は,ハロゲン化金属,有機金属,金属錯体,含酸素有機金属化合物・錯体,含ハロゲン有機金属化合物・錯体などを用いることができ,たとえばCuの場合には,(C)CuP(C,CuCl,(C)CuC12,Cu(hfac)TMVSなど当業者に知られた物質を用いることができる。
[0067] 図6(b)は同一条件で、Si基板に代えてTiNを用いて、導電性であるTiN薄膜上には金属Ruを成膜し、更にRu薄膜の上にCuの薄膜を形成する様子を示したものである。TiN薄膜上に金属Ruの成膜、そしてその上にCuの薄膜を形成することができた。しかし、Si基板の上に直接金属Ruの薄膜を形成することはできなかった。
[0068] 以上説明したように、これまではSi基板上にCuやRuなどの導電性薄膜を超臨界流体中、又は亜臨界流体中で直接成膜することはできなかったが、本実施例で示すように、例えばRuOのような金属酸化物の薄膜を一旦成膜し、これを還元することにより、導電性金属の薄膜を形成することが可能となった。これにより、従来、PVD法やCVD法を用いて、配線しようとする下地に別の導電層をあらかじめ形成しておく必要があったものが不要となり、超臨界成膜法の特長を生かすことが可能となった。
【産業上の利用可能性】
[0069] 超臨界流体中又は亜臨界流体中で基材の導電性の有無にかかわらず、導電性金属酸化物薄膜、及び導電性金属薄膜が形成できるので、段差被覆性や埋め込み性のよい薄膜形成ができるので、集積回路プロセスやMEMSに代表される微細加工プロセス等に利用することができる。
図面
【図2】
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【図4】
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【図7】
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【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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