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明細書 :ナノシリコン含有溶解錠剤とその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4931015号 (P4931015)
登録日 平成24年2月24日(2012.2.24)
発行日 平成24年5月16日(2012.5.16)
発明の名称または考案の名称 ナノシリコン含有溶解錠剤とその製造方法
国際特許分類 A61K  49/00        (2006.01)
A61K   9/20        (2006.01)
A61K  47/02        (2006.01)
A61K  31/715       (2006.01)
A61K  38/00        (2006.01)
A61K  45/00        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61K  51/00        (2006.01)
FI A61K 49/00 A
A61K 9/20
A61K 47/02
A61K 31/715
A61K 37/00
A61K 45/00
A61P 35/00
A61K 43/00
請求項の数または発明の数 13
全頁数 20
出願番号 特願2007-533166 (P2007-533166)
出願日 平成18年8月7日(2006.8.7)
国際出願番号 PCT/JP2006/315980
国際公開番号 WO2007/026533
国際公開日 平成19年3月8日(2007.3.8)
優先権出願番号 2005250051
優先日 平成17年8月30日(2005.8.30)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年5月28日(2009.5.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】800000068
【氏名又は名称】学校法人東京電機大学
発明者または考案者 【氏名】佐藤 慶介
【氏名】平栗 健二
個別代理人の代理人 【識別番号】100099759、【弁理士】、【氏名又は名称】青木 篤
【識別番号】100077517、【弁理士】、【氏名又は名称】石田 敬
【識別番号】100087413、【弁理士】、【氏名又は名称】古賀 哲次
【識別番号】100113918、【弁理士】、【氏名又は名称】亀松 宏
【識別番号】100111903、【弁理士】、【氏名又は名称】永坂 友康
審査官 【審査官】伊藤 清子
参考文献・文献 国際公開第2004/108902(WO,A2)
国際公開第2004/63387(WO,A2)
調査した分野 A61K 49/00
A61K 9/20
A61K 31/715
A61K 38/00
A61K 45/00
A61K 47/02
A61K 51/00
A61P 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPI
医学・薬学予稿集全文データベース
特許請求の範囲 【請求項1】
水溶液中で、温熱処理を施し、粒子表面に多数の未結合手を形成した粒子サイズ1.5~2.0nm、2.0~2.5nm、2.5~3.5nmの何れかのナノシリコン粒子を多数含むナノシリコン粒子を塩化ナトリウム粉末に混入した錠剤であって、紫外光線又は可視光線の照射により、血液内において、青色、緑色、赤色の何れかを蛍光発光することを特徴とするナノシリコン含有溶解錠剤。
【請求項2】
前記ナノシリコン粒子が凝集していることを特徴とする請求の範囲1に記載のナノシリコン含有溶解錠剤。
【請求項3】
前記ナノシリコン粒子の表面に、薬剤や多糖・蛋白質などの高分子化合物が付着していることを特徴とする請求の範囲1又は2に記載のナノシリコン含有溶解錠剤。
【請求項4】
水溶液中で、粒子サイズ1.5~2.0nm、2.0~2.5nm、2.5~3.5nmの何れかのナノシリコン粒子を多数含むナノシリコン粒子に温熱処理を施し、ナノシリコン粒子の表面に未結合手を多数形成し、次いで、
上記未結合手を多数有するナノシリコン粒子を塩化ナトリウム粉末に混入する
ことを特徴とするナノシリコン含有溶解錠剤の製造方法。
【請求項5】
水溶液中で、粒子サイズ1.5~2.0nm、2.0~2.5nm、2.5~3.5nmの何れかのナノシリコン粒子を多数含むナノシリコン粒子に温熱処理を施し、ナノシリコン粒子の表面に未結合手を多数形成し、次いで、
上記未結合手を多数有するナノシリコン粒子を、薬剤や多糖・蛋白質などの高分子化合物を混合した溶液に浸漬して、再度、温熱処理を施し、その後、
上記温熱処理後のナノシリコン粒子を塩化ナトリウム粉末に混入する
ことを特徴とするナノシリコン含有溶解錠剤の製造方法。
【請求項6】
前記ナノシリコン粒子が、シリコンを微粉砕して溶液中で処理することにより形成されたものであることを特徴とする請求の範囲4又は5に記載のナノシリコン含有溶解錠剤の製造方法。
【請求項7】
前記微粉砕後のシリコン粒子の粒子サイズが100μm以下であることを特徴とする請求の範囲6に記載のナノシリコン含有溶解錠剤の製造方法。
【請求項8】
前記溶液が、フッ酸、硝酸、酢酸、及び、純水の混合溶液であることを特徴とする請求の範囲6又は7に記載のナノシリコン含有溶解錠剤の製造方法。
【請求項9】
前記ナノシリコン粒子が、高周波スパッタリング法で作製したアモルファス酸化ケイ素膜に熱処理を施し、次いで、フッ酸水溶液処理、溶液処理、攪拌処理を施して形成されたものであることを特徴とする請求の範囲4又は5に記載のナノシリコン含有溶解錠剤の製造方法。
【請求項10】
前記熱処理の温度が900~1200℃で、かつ、同時間が120分以下であることを特徴とする請求の範囲9に記載のナノシリコン含有溶解錠剤の製造方法。
【請求項11】
前記フッ酸水溶液処理において、フッ酸水溶液の濃度が1~50%であり、処理温度が10~70℃であり、かつ、処理時間が10~600秒であることを特徴とする請求の範囲9又は10に記載のナノシリコン含有溶解錠剤の製造方法。
【請求項12】
前記攪拌処理の時間が10~600秒であることを特徴とする請求の範囲9~11のいずれかに記載のナノシリコン含有溶解錠剤の製造方法。
【請求項13】
前記温熱処理の温度が30~100℃で、同時間が10~60分であることを特徴とする請求の範囲4~12のいずれかに記載のナノシリコン含有溶解錠剤の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外光から可視光までの光を照射することにより、血液内において、赤色、緑色、青色(三原色)を蛍光発光するナノシリコン粒子を含有する溶解錠剤、及び、表面に、薬剤や多糖・蛋白質などの高分子化合物を付着させたナノシリコン粒子を含有する溶解錠剤、さらに、それら錠剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナノテクノロジーを取り入れたマテリアルサイエンスの研究開発の発展は著しく、その分野は、光学、工学、医学、化学、物理学などの広い範囲にわたっている。特に、医学分野においては、ナノメディシン・プロジェクト研究が活発に行われている。
そのプロジェクトの中で、血液、動脈、細胞の動的状態を可視化して観察するためのバイオイメージングや病原部位(癌細胞)の可視化と、その部位を薬剤により治療する薬物送達システム(DDS)の研究開発が、実用化を目途に推進されている。
そして、上記可視化のために、生体内において可視光を発することのできるマーカー材料として、半導体ナノ粒子が開発されている。この半導体ナノ粒子は、半導体材料を、ナノメートルスケールの大きさに微粉砕した粒子であり、光を発する機能を備えている。
しかし、半導体ナノ粒子の原材料には、重金属元素や有害物質が含まれているので、半導体ナノ粒子を生体内で使用する場合、生体への安全性が危惧されている。
半導体ナノ粒子の毒性を抑制する方法として、粒子表面を保護膜で包囲する方法があるが、保護膜で包囲すると、粒子サイズ自体が数十ナノメートルと大きくなり、生体内に半導体材料が貯留する恐れがある。
さらに、半導体ナノ粒子材料は、複数の元素が組み合わされて作製されているため、材料が非常に高価である。
このようなことから、マーカー材料として、生体に対し無毒性・無害性で、粒子サイズが小さく、かつ、安価な材料の開発が待たれている。
そこで、上記要因を満足し、発光機能をもつ半導体ナノ材料として、ナノシリコン粒子が開発された(特開平11-201972号公報、参照)。
このナノシリコン粒子は、可視領域(青色~赤色)において、大気中や溶液中で、高輝度の蛍光発光を発するものである(21世紀連合シンポジウム論文集(2002年、東京)、p.477~478、平成16年度照明学会第37回全国大会講演論文集(2004年8月4日)、p.233~234、第51回応用物理学関係連合講演会講演予稿集No.3(2004)、28p-P6-4、東海大学総合科学技術研究所研究会資料集24(2005年3月31日)、p.40~46、参照)。
そして、そのナノシリコン粒子は、粒子サイズが、直径で約3.5nm以下であるので、血管内に注入されても、血管内を自由に循環することができ、生体内に貯留することはない。したがって、ナノシリコン粒子は、マーカー材料として有望である。
さらに、ナノシリコン粒子は、それ自体がシリコンで構成されているので、資源面で豊富であり、かつ、環境面で優しく、また、環境面以外でも、特に、生体に対して優しい材料である。
このように、ナノシリコン粒子は、無毒性・無害性の物質で、しかも、安価な物質として、最大のメリットを有している。
しかし、大気中や溶液中で蛍光発光するナノシリコン粒子のほとんどは、その表面に、熱や経時的変化に対して非常に不安定な水素が吸着されているため、時間経過とともに、発光色や発光輝度が変化し易いという特性を有している。
それ故、発光色や発光輝度が長期間安定した蛍光発光を実現するためには、ナノシリコン粒子の表面を、より安定な材料で包囲する必要がある。
また、安定な材料で包囲したナノシリコン粒子を、生体内で使用可能にするためには、包囲材料として、生体内で溶解する材料を使用する必要がある。
従来は、溶液中で化学エッチング処理を行うウェットプロセス法(特開平11-201972号公報、参照)を用いてナノシリコン粒子を製造しているが、この方法では、ナノシリコン粒子の表面に、安定でかつ生体内で溶解する材料を形成することができない。
【発明の開示】
【0003】
安定でかつ生体内で溶解する材料で包囲され、赤色、緑色、青色(三原色)を蛍光発光するナノシリコン粒子は、環境や生体に対して優しく、かつ、安価な材料によるバイオイメージングやDDSの機能を有する溶解錠剤の開発を促進して、生体内の各部位の観察や、癌治療の分野への幅広い応用を可能にする。
そこで、本発明は、(i)ナノシリコン粒子を、安定でかつ生体内で溶解する材料で包囲すること、(ii)ナノシリコン粒子の表面に、薬剤や多糖・蛋白質などの高分子化合物を付着すること、及び、(iii)ナノシリコン粒子を含有する溶解錠剤を、生体内で溶解し、血液中で、高輝度でかつ安定的な赤色、緑色、青色(三原色)を蛍光発光させること、を課題(又は目的)とする。
また、本発明は、医療分野において多方面にわたる応用が可能な、三原色を蛍光発光するナノシリコン粒子を含有する溶解錠剤を製造する製造方法を確立すること、も課題(又は目的)とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、パウダー状のシリコン粒子を溶液中で処理して粒子サイズを1.5~3.5nm程度に縮小したナノシリコン粒子を含有する溶解錠剤は、生体内に注入されると錠剤が溶解し、溶解後に現出したナノシリコン粒子は、血液内において、赤色、緑色、青色(三原色)の何れかを、高輝度でかつ安定的に蛍光発光することを見いだした。
また、本発明者は、一連のフッ酸水溶液処理、溶液処理及び攪拌処理により、高周波スパッタリング法を用いて粒子サイズを制御しつつ形成した1.5~3.5nm程度のナノシリコン粒子を含有する溶解錠剤は、体内に注入されると錠剤が溶解し、溶解後に現出したナノシリコン粒子は、血液内において、赤色、緑色、青色(三原色)の何れかを、高輝度でかつ安定的に蛍光発光することを見いだした。
さらに、本発明者は、ナノシリコン粒子に温熱処理を施して、表面に薬剤や多糖・蛋白質などの高分子化合物を付着させたナノシリコン粒子を含有する溶解錠剤は、体内に注入されると錠剤が溶解し、溶解後に現出した、薬剤や多糖・蛋白質などの高分子化合物を付着したナノシリコン粒子は、血液内において、赤色、緑色、青色(三原色)の何れかを、高輝度でかつ安定的に蛍光発光することを見いだした。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
(1)水溶液中で、温熱処理を施し、粒子表面に多数の未結合手を形成した粒子サイズ1.5~2.0nm、2.0~2.5nm、2.5~3.5nmの何れかのナノシリコン粒子を多数含むナノシリコン粒子を塩化ナトリウム粉末に混入した錠剤であって、紫外光線又は可視光線の照射により、血液内において、青色、緑色、赤色の何れかを蛍光発光することを特徴とするナノシリコン含有溶解錠剤。
(2)前記ナノシリコン粒子が凝集していることを特徴とする前記(1)に記載のナノシリコン含有溶解錠剤。
(3)前記ナノシリコン粒子の表面に、薬剤や多糖・蛋白質などの高分子化合物が付着していることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のナノシリコン含有溶解錠剤。
(4)水溶液中で、粒子サイズ1.5~2.0nm、2.0~2.5nm、2.5~3.5nmの何れかのナノシリコン粒子を多数含むナノシリコン粒子に温熱処理を施し、ナノシリコン粒子の表面に未結合手を多数形成し、次いで、
上記未結合手を多数有するナノシリコン粒子を塩化ナトリウム粉末に混入する
ことを特徴とするナノシリコン含有溶解錠剤の製造方法。
(5)水溶液中で、粒子サイズ1.5~2.0nm、2.0~2.5nm、2.5~3.5nmの何れかのナノシリコン粒子を多数含むナノシリコン粒子に温熱処理を施し、ナノシリコン粒子の表面に未結合手を多数形成し、次いで、
上記未結合手を多数有するナノシリコン粒子を、薬剤や多糖・蛋白質などの高分子化合物を混合した溶液に浸漬して、再度、温熱処理を施し、その後、
上記温熱処理後のナノシリコン粒子を塩化ナトリウム粉末に混入する
ことを特徴とするナノシリコン含有溶解錠剤の製造方法。
(6)前記ナノシリコン粒子が、シリコンを微粉砕して溶液中で処理することにより形成されたものであることを特徴とする前記(4)又は(5)に記載のナノシリコン含有溶解錠剤の製造方法。
(7)前記微粉砕後のシリコン粒子の粒子サイズが100μm以下であることを特徴とする前記(6)に記載のナノシリコン含有溶解錠剤の製造方法。
(8)前記溶液が、フッ酸、硝酸、酢酸、及び、純水の混合溶液であることを特徴とする前記(6)又は(7)に記載のナノシリコン含有溶解錠剤の製造方法。
(9)前記ナノシリコン粒子が、高周波スパッタリング法で作製したアモルファス酸化ケイ素膜に熱処理を施し、次いで、フッ酸水溶液処理、溶液処理、攪拌処理を施して形成されたものであることを特徴とする前記(4)又は(5)に記載のナノシリコン含有溶解錠剤の製造方法。
(10)前記熱処理の温度が900~1200℃で、かつ、同時間が120分以下であることを特徴とする前記(9)に記載のナノシリコン含有溶解錠剤の製造方法。
(11)前記フッ酸水溶液処理において、フッ酸水溶液の濃度が1~50%であり、処理温度が10~70℃であり、かつ、処理時間が10~600秒であることを特徴とする前記(9)又は(10)に記載のナノシリコン含有溶解錠剤の製造方法。
(12)前記攪拌処理の時間が10~600秒であることを特徴とする前記(9)~(11)のいずれかに記載のナノシリコン含有溶解錠剤の製造方法。
(13)前記温熱処理の温度が30~100℃で、同時間が10~60分であることを特徴とする前記(4)~(12)のいずれかに記載のナノシリコン含有溶解錠剤の製造方法。
本発明によれば、従来の手法では製造が困難であった粒子サイズ1.5~3.5nm程度のナノシリコン粒子を、安定でかつ溶解可能な材料で包囲することができる。また、本発明によれば、ナノシリコン粒子の表面に、薬剤や多糖・蛋白質などの高分子化合物を付着させることができる。
そして、本発明のナノシリコン粒子を含有する溶解錠剤は、生体内に注入されると錠剤が溶解し、溶解後に現出したナノシリコン粒子は、血液内において、赤色、緑色、青色の各色を蛍光発光するので、該蛍光発光を利用して、生体内の各部位を観察したり、癌細胞を色別に又は可視的に検出することができる。
したがって、本発明は、生体内の各部位の計測や、癌の検出・治療に係る医療分野において、ナノシリコン粒子の応用範囲を大きく広げるものである。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1は、本発明のナノシリコン含有溶解錠剤の製造過程を示す図である。(A)は、製造過程の初期段階における溶液中でのナノシリコン粒子の分散態様を示す図であり、(B)は、ナノシリコン粒子を塩化ナトリウム粉末に混入する態様を示す図であり、(C)は、塩化ナトリウム粉末を混入する態様を示す図であり、(D)は、プレス機による処理態様を示す図であり、そして、(E)は、製造過程の終期段階におけるナノシリコン粒子を含有した塩化ナトリウムの態様を示す図である。
図2は、本発明の粒子形状のナノシリコンを分散した溶液の製造過程を示す図である。(A)は、ナノシリコン分散溶液の製造用原料の一例を示す図であり、(B)は、製造過程の初期段階におけるパウダー化の工程を示す図であり、(C)は、シリコンパウダーを混合液で処理する処理態様を示す図であり、そして、(D)は、製造過程の終期段階におけるナノシリコンの粒子単位での分散態様を示す図である。
図3は、本発明の粒子形状のナノシリコンを分散した溶液の製造過程を示す図である。(A)は、製造過程の初期段階におけるナノシリコンの状態を示す図であり、(B)は、フッ酸水溶液処理の態様を示す図であり、(C)は、フッ酸水溶液処理後のナノシリコンの存在態様を示す図であり、(D)は、溶液処理の態様を示す図であり、(E)は、攪拌処理の態様を示す図であり、そして、(F)は、製造過程の終期段階におけるナノシリコンの粒子単位での分散態様を示す図である。
図4は、本発明のナノシリコン粒子に対する温熱処理による薬剤、多糖・蛋白質などの高分子化合物の付着過程を示す図である。(A)は、付着過程の初期段階におけるナノシリコン粒子の態様を示す図であり、(B)は、付着過程の終期段階におけるナノシリコン粒子の態様を示す図である。
図5は、本発明の溶液内に分散された粒子形状のナノシリコンの存在態様(透過型電子顕微鏡写真)を示す図である。
図6は、本発明の溶解錠剤内に含有されるナノシリコン粒子の血液中における蛍光発光スペクトルを示す図である。
図7は、高周波スパッタリング装置の態様を示す図である。
図8は、高周波スパッタリング装置において使用するターゲット材料の態様を示す図である。
図9は、本発明のナノシリコン含有溶解錠剤の発光態様を示す図である。
図10は、本発明のナノシリコン含有溶解錠剤の蛍光発光スペクトルを示す図である。
図11は、本発明のナノシリコン含有溶解錠剤を生理食塩水内で溶解し、分散したナノシリコン粒子の発光態様を示す図である。
図12は、本発明のナノシリコン含有溶解錠剤を生理食塩水内で溶解し、分散したナノシリコン粒子の蛍光発光スペクトルを示す図である。
図13は、本発明のナノシリコン含有溶解錠剤を生理食塩水内で溶解し、分散したナノシリコン粒子を動物の冠動脈に流動させた状態での発光態様を示す図である。
図14は、本発明のナノシリコン含有溶解錠剤を生理食塩水内で溶解し、分散したナノシリコン粒子を動物の冠動脈に流動させた状態での蛍光発光スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明において重要な点は、赤色、緑色、青色の各色を蛍光発光するナノシリコン粒子を、安定でかつ溶解可能な材料で包囲し、そのナノシリコン粒子を含有する溶解錠剤(ナノシリコン含有溶解錠剤)を生体内に注入して錠剤を溶解し、溶解後に現出したナノシリコン粒子を、血液中において、高輝度でかつ安定的に蛍光発光させるということである。
このことを達成するため、本発明のナノシリコン含有溶解錠剤の製造方法においては、固体シリコン(例えば、シリコンウェハー)を微粉砕したシリコン粒子に、フッ酸、硝酸、酢酸、及び、純水を混合した混合溶液で温熱処理を施してナノシリコン粒子を形成し、該ナノシリコン粒子を塩化ナトリウム粉末に混入する。
また、本発明のナノシリコン含有溶解錠剤の製造方法においては、高周波スパッタリング法で作製したアモルファス酸化ケイ素膜に熱処理を施し、さらに、フッ酸水溶液処理、溶液処理、攪拌処理を施してナノシリコン粒子を形成し、該ナノシリコン粒子を塩化ナトリウム粉末に混入する。
また、本発明のナノシリコン含有溶解錠剤の製造方法においては、ナノシリコン粒子に温熱処理を施して、ナノシリコン粒子表面に、薬剤や多糖・蛋白質などの高分子化合物を付着させ、その後、該ナノシリコン粒子を塩化ナトリウム粉末に混入する。
本発明のナノシリコン含有溶解錠剤を生体内に注入すると、錠剤が溶解してナノシリコン粒子が現出し、該ナノシリコン粒子は、血液中において、高輝度でかつ安定的に、赤色、緑色、青色の各色を蛍光発光する。
しかも、ナノシリコン粒子の表面には、薬剤や多糖・蛋白質などの高分子化合物を付着させることができるので、本発明のナノシリコン含有溶解錠剤を用いて、生体内における患部の治療を行うことが可能となる。
してみれば、本発明のナノシリコン含有溶解錠剤は、病原部位の可視化計測や、癌治療などの医学分野において、革新的な医療技術の基盤を築くものである。
以下に、本発明のナノシリコン含有溶解錠剤の製造方法について説明する。
図1に、ナノシリコン含有溶解錠剤を製造する製造過程の概要を示す。ナノシリコン含有溶解錠剤の製造においては、純水又はエタノールなどの溶液1や、薬剤や多糖・蛋白質などの高分子化合物の混合溶液2を収容した容器3内に分散させた粒子状のナノシリコン4を用いる(図1(A)、参照)。
この容器内に分散した粒子状のナノシリコンの製造方法として、本発明では、固体シリコン(例えば、シリコンウェハー)を微粉砕して溶液中で処理して形成する方法や、高周波スパッタリング法で作製したアモルファス酸化ケイ素膜に熱処理を施し、次いで、フッ酸水溶液処理、溶液処理、攪拌処理を施して形成する方法の2種類を用いることができる。
図2に、シリコンウェハーを微粉砕して溶液中で処理することにより、粒子状のナノシリコンを分散した溶液を製造する製造過程を示す。この製造過程においては、例えば、比抵抗率0.01~20Ωcmで、面方位(100)、(110)、(111)のn型又はp型のシリコンウェハー8を用いる(図2(A)、参照)。
上記製造過程の初期段階において、シリコンウェハー8を細かく粉砕し、シリコンチップ9を作製し、乳鉢10内に入れ、すり棒11で擂り、例えば、100μm以下の細粒のシリコンパウダー12を作製する(図2(B)、参照)。
この時のシリコンパウダー12の粒子サイズは、好ましくは50μm以下、さらに好ましくは2~20μmである。
このサイズのシリコンパウダー12を、スターラー又は超音波洗浄器13上に載置した樹脂容器14内のフッ酸、硝酸、酢酸、及び、純水の混合溶液2に混合し、混合溶液2を攪拌しながら、シリコンパウダー12の粒子サイズを、さらに縮小する(図2(C)、参照)。
この時のフッ酸、硝酸、及び、酢酸の濃度は、いずれも1~50%程度であるが、好ましくは20~40%であり、さらに好ましくは30%である。また、処理時間は30~300分であるが、好ましくは60~240分であり、さらに好ましくは120~180分である。
上記溶液処理において、混合溶液2中の硝酸と酢酸が、効率よくシリコンパウダー12の表面を酸化し、粒子表面に酸化ケイ素膜が形成された状態になるが、この酸化ケイ素膜を、フッ酸が最表面側から徐々にエッチングしていくので、シリコンパウダー12の粒子サイズは、ナノメートルサイズにまで縮小され、ナノシリコン4が形成される。
この時のナノシリコン4の粒子サイズは、1.5~3.5nmの範囲内にあり、特に、粒子サイズ1.5~2.0nm、2.0~2.5nm、及び、2.5~3.5nmの何れかのナノシリコン粒子が多数形成されている。
この粒子サイズのナノシリコン粒子が、発光色に直接寄与しているので、ナノシリコンの製造過程で、粒子サイズを自在に制御することにより、発光色を自在に選択することができる。
例えば、粒子サイズ1.5~2.0nmのナノシリコン4を製造する場合には、フッ酸、硝酸、及び、酢酸の濃度を30%、処理時間を180分とする。粒子サイズ2.0~2.5nmのナノシリコン4を製造する場合には、フッ酸、硝酸、及び、酢酸の濃度を30%、処理時間を150分とする。粒子サイズ2.5~3.5nmのナノシリコン4を製造する場合には、フッ酸、硝酸、及び、酢酸の濃度を30%、処理時間を120分とする。
また、シリコンパウダー12からナノシリコン4を形成する方法として、上記方法以外に、恒温水槽を使用する方法がある。この方法では、樹脂容器14を恒温水槽内に設置して、フッ酸、硝酸、酢酸、及び、純水の混合溶液2による溶液処理を行う。
この時のフッ酸、硝酸、及び、酢酸の濃度は、いずれも1~50%程度であるが、好ましくは20~40%であり、さらに好ましくは30%である。
上記溶液処理における処理温度は10~70℃であるが、好ましくは30~50℃であり、さらに好ましくは40℃である。処理時間は1~120分であるが、好ましくは15~90分であり、さらに好ましくは30~60分である。
上記溶液処理は、樹脂容器14を温めながら行う(温熱処理)ので、混合溶液2中の硝酸と酢酸が、短時間でシリコンパウダー12の表面に酸化ケイ素膜を形成し、この酸化ケイ素膜を、フッ酸が最表面側から徐々にエッチングする。
その結果、前記方法と同様に、シリコンパウダー12からナノシリコン4を、しかも、短時間で形成することができる。
この時に形成されるナノシリコン4の粒子サイズは、1.5~3.5nmの範囲内にあり、特に、1.5~2.0nm、2.0~2.5nm、2.5~3.5nmの何れかの粒子サイズのナノシリコン粒子が多数形成される。
粒子サイズ1.5~2.0nmのナノシリコン4を製造する場合には、フッ酸、硝酸、及び、酢酸の濃度を30%、処理温度を40℃、処理時間を60分とする。
粒子サイズ2.0~2.5nmのナノシリコン4を製造する場合には、フッ酸、硝酸、及び、酢酸の濃度を30%、処理温度を40℃、処理時間を45分とする。
粒子サイズ2.5~3.5nmのナノシリコン4を製造する場合には、フッ酸、硝酸、及び、酢酸の濃度を30%、処理温度を40℃、処理時間を30分とする。
このようにして形成したナノシリコン4の表面には、フッ酸、硝酸、及び、酢酸の粒子が付着しているので、ナノシリコン4を、純水又はエタノールなどの溶液1に浸漬して洗浄し、フッ酸、硝酸、及び、酢酸の粒子を完全に除去する(図2(D)、参照)。
フッ酸、硝酸、及び、酢酸の粒子は毒性をもっているので、この除去は、環境や生体への安全性を確保するために行う。
このようにして、純水又はエタノールなどの溶液1中に分散した粒子状のナノシリコン4を得ることができる。
次に、高周波スパッタリング法で作製したアモルファス酸化ケイ素膜に熱処理を施し、次いで、フッ酸水溶液処理、溶液処理、攪拌処理を施すことにより、粒子状のナノシリコンを分散した溶液を製造する製造方法について説明する。
図3に、上記一連の処理により粒子状のナノシリコンを分散した溶液を製造する製造過程の概要を示す。
高周波スパッタリング法(図7、参照)を用いて基板15上に形成したアモルファス酸化ケイ素膜を不活性ガス(アルゴン、ヘリウム等)の雰囲気中で熱処理して、酸化ケイ素膜16内に、粒子サイズ1.5~3.5nm、特に、粒子サイズ1.5~2.0nm、2.0~2.5nm、2.5~3.5nmの何れかのナノシリコン4を多数形成する(図3(A)、参照)。
高周波スパッタリング法を用いると、ナノシリコンの製造初期の段階で、発光色に直接寄与する粒子サイズを自在に制御することができるので、本発明では、様々な発光色を容易に実現することが可能である。
図7に、高周波スパッタリング装置の一態様を示す。この装置は、概略、(a)側面下部にアルゴンガス導入口28と排気口29を備える真空チャンバー30、(b)真空チャンバー30の上面に絶縁材料31を介して取り付けられ、冷却管32から導入、排出される冷却水33で冷却される基板ホルダー34、及び、(c)真空チャンバー30の下面に絶縁材料31を介して取り付けられ、冷却管32から導入、排出される冷却水33で冷却される陰極シールド35を備える高周波電極36、から構成されている。
上記装置において、アルゴンガスを真空チャンバー30内にアルゴンガス導入口28から導入し、高周波コントローラ37によりアルゴンガスをイオン化し、イオン化したアルゴンイオンを、高周波電極36上のターゲット材料38であるシリコンチップ38aと石英ガラス38b(図8、参照。石英ガラス38b上に、シリコンチップ38aが所定の間隔で配列されている。)へ衝突させ、ターゲット材料38から放出されたシリコン原子や酸化ケイ素分子を基板ホルダー34に保持した基板15上に堆積させ、アモルファス酸化ケイ素膜を形成する。
次に、上記酸化ケイ素膜に、不活性ガス(アルゴン、ヘリウム等)の雰囲気中で熱処理を施して、該酸化ケイ素膜16内に、所定粒子サイズのナノシリコン4を多数形成する(図3(A)、参照)。
上記熱処理の際、熱処理温度は900~1200℃とするが、好ましくは1000~1100℃である。また、熱処理時間は120分以下であるが、好ましくは15~100分であり、さらに好ましくは30~80分であり、最も好ましくは50~60分である。
ナノシリコン粒子の粒子サイズは、図8に示すターゲット材料38を構成するシリコンチップ38aと石英ガラス38bの面積比を変えることにより制御することができる。この面積比は、通常、1~50%とするが、好ましくは5~30%であり、さらに好ましくは10~15%である。
また、スパッタリング条件の高周波電力やガス圧(作製中の圧力であり、本製造プロセスではアルゴンガスの圧力)を変えても、粒子サイズを制御することが可能である。この時、高周波電力は10~500Wの範囲内で変化させ、ガス圧は1×10-4~1×10-1torrの範囲内で変化させる。
このように、高周波スパッタリング装置を用いて、粒子サイズが1.5~3.5nmの範囲内にあるナノシリコン粒子、特に、1.5~2.0nm、2.0~2.5nm、2.5~3.5nmの何れかの粒子サイズのナノシリコン粒子を多数含むナノシリコン粒子を作製することができる。
次に、粒子サイズが1.5~3.5nmの範囲内にあるナノシリコン4が形成された酸化ケイ素膜16を載置する基板15を、アクリル板17に貼り付け(図3(A)、参照)、フッ酸水溶液19を収容する樹脂容器14に、上記酸化ケイ素膜16を下にして装着する。
この時、フッ酸水溶液19の濃度は1~50%とするが、好ましくは10~40%であり、さらに好ましくは20~30%である。そして、樹脂容器14を、ヒーター20を備え、純水21を収容する恒温水槽22内に設置し、フッ酸水溶液処理18を行う(図3(B)、参照)。
上記処理の際、処理温度は10~70℃であるが、好ましくは30~50℃であり、さらに好ましくは40℃である。また、処理時間は10~600秒であるが、好ましくは30~300秒であり、さらに好ましくは60~120秒である。
上記フッ酸水溶液処理18においては、樹脂容器14内のフッ酸水溶液19から蒸発したフッ酸粒子が、酸化ケイ素膜16の表面に付着し、酸化ケイ素膜16中の酸化ケイ素を表面から徐々にエッチングしていく。
その結果、基板15上には、多数のナノシリコン4が凝集状態で露出する(図3(C)、参照)。
次に、ナノシリコン4が凝集露出した基板15を、純水又はエタノールなどの溶液1を収容した容器3に浸漬し、容器3を、スターラー又は超音波洗浄器13に載置して、溶液処理23を施し、基板15及びナノシリコン4上に残留しているフッ酸粒子を完全に除去する(図3(D)、参照)。
フッ酸粒子は毒性を持っているので、環境や生体への無毒性や無害性を確保するため、この溶液処理23を行う。この溶液処理23を充分に行うことにより、ナノシリコン粒子が本来有する環境保全性を確実に確保することができる。
その後、ナノシリコン4が凝集露出した基板15を、再び、純水又はエタノールなどの溶液1を収容した容器3に浸漬し、容器3をスターラー又は超音波洗浄器13に載置して、攪拌処理24を施す(図3(E)、参照)。
攪拌処理24の処理時間は、通常、10~600秒とするが、好ましくは30~300秒であり、さらに好ましくは60~120秒である。攪拌処理24により、基板15上に凝集状態で露出していたナノシリコン4は、基板15から分離・離散し、純水又はエタノールなどの溶液1内に分散する(図3(E)、参照)。
そして、攪拌処理24の後、容器3から基板15を取り出せば、純水又はエタノールなどの溶液1中に分散した状態で粒子状のナノシリコン4を得ることができる(図3(F)、参照)。
このように、上記2種類の製造方法により製造した、粒子状のナノシリコンが分散した溶液の透過型電子顕微鏡写真を、図5に示す。図5中、○印の部分がナノシリコン粒子である。
図5において、ナノシリコン粒子は、粒子状で一様に分散しており、しかも、球形で存在していることが解る。なお、ナノシリコン粒子の粒子サイズは、1.5~3.5nmであった。
次に、上記2種類の製造方法により製造した粒子状のナノシリコン表面に、薬剤や多糖・蛋白質などの高分子化合物を付着させる方法について説明する。
図4に、粒子状のナノシリコンに温熱処理を施し、ナノシリコン表面に、薬剤や多糖・蛋白質などの高分子化合物を付着させる付着過程を示す。
本発明の粒子状のナノシリコン4は、フッ酸、硝酸、酢酸、及び、純水の混合溶液やフッ酸水溶液による溶液処理により製造されているので、ナノシリコン4の表面は、酸素原子や多量の水素原子が結合した状態になっている。
この粒子状のナノシリコン4に温熱処理を施すことにより、水素原子の結合を解除し、ナノシリコン4の表面に、未結合手25を多数形成する(図4(A)、参照)。
一般に、シリコン原子と水素原子が結合した材料の場合、熱や経時的変化により、水素原子がシリコン原子と解離していく。これは、シリコン原子と水素原子の結合エネルギーが、他の元素との結合エネルギーよりも非常に弱いためである。
つまり、水素原子が結合しているナノシリコン4に温熱処理を施すことにより、その表面から水素原子を完全に解離することができる。
即ち、本発明の粒子状のナノシリコン4の場合、その表面には多量の水素原子が結合しているが、温熱処理により、この結合を解離して、ナノシリコン4の表面に未結合手25を多数形成することができる。
このようにして未結合手25を多数形成したナノシリコン4を、薬剤や多糖・蛋白質などの高分子化合物の混合溶液2を収容した容器3に浸漬し、容器3を、ヒーター20を備え、純水21を収容する恒温水槽22内に設置し、再度、温熱処理26を行う(図4(A)、参照)。
上記処理の際、処理温度は30~100℃であるが、好ましくは40~80℃であり、さらに好ましくは50℃である。また、処理時間は10~60分であるが、好ましくは20~50分で、さらに好ましくは約30分である。
上記温熱処理26を行なうことにより、ナノシリコン4の表面には、薬剤や多糖・蛋白質などの高分子化合物27以外に、水酸基(OH基)を付着させることができる(図4(B)、参照)。
上記製造方法から製造した、純水又はエタノールなどの溶液1内に分散している粒子状のナノシリコン4、又は、薬剤や多糖・蛋白質などの高分子化合物27の混合溶液2内に分散し、表面に薬剤や多糖・蛋白質などの高分子化合物27が付着している粒子状のナノシリコン4をピペットですくい取る。
このナノシリコン4を、ナノシリコン4が溶液1又は混合溶液2内に分散した状態のまま、粉末状の塩化ナトリウム5を収容する型容器6内に混入する(図1(B)、参照)。
ここで使用する塩化ナトリウム5は、溶液や体内において容易に溶解する材料である。塩化ナトリウム5以外に、溶解性があり、鎮静就眠薬などの医薬品として使用されている臭化カリウムを使用することもできる。
上記処理において、塩化ナトリウム5に付着した溶液1及び混合溶液2は、短時間で蒸発するので、数回に分けて処理することにより、塩化ナトリウム5内に多量のナノシリコン4を混入することができる。
また、粉末状の塩化ナトリウム5内に混入するナノシリコン4として、粒子状のナノシリコン4が分散した水溶液又は混合溶液に濾過処理を施して取り出したナノシリコン4を使用することも可能である。
その後、多量のナノシリコン4を混入した粉末状の塩化ナトリウム5を収容する型容器6内に、さらに、粉末状の塩化ナトリウム5を加える(図1(C)、参照)。
そして、型容器6にフタ7をして、プレス機により、多量のナノシリコン4を混入した塩化ナトリウム5を凝結状態にする(図1(D)、参照)。最後に、凝結したナノシリコン4含有塩化ナトリウム5を型容器6から取り出す(図1(E)、参照)。
ここで、図6に、溶解錠剤内に内蔵したナノシリコン粒子の血液中における蛍光発光スペクトルを示す。溶解錠剤内に存在するナノシリコン粒子からは、血液中において、赤色(波長:660nm)、緑色(波長:560nm)、及び、青色(波長:440nm)の蛍光発光を得ることができる。
この発光色の違いは、ナノシリコン粒子の粒子サイズが各発光色に対して異なっていることによる。
一般に、半導体材料から得られる発光色は、その材料のもつバンドギャップエネルギーに直接依存しており、発光色の波長は、バンドギャップエネルギーと反比例関係にある。
ナノシリコン粒子の場合、バンドギャップエネルギーの大きさは、粒子サイズの縮小とともに増大する。即ち、ナノシリコン粒子の粒子サイズが大きい場合、そのバンドギャップエネルギーは小さくなり、発光色の波長は長波長側になる。
逆に、ナノシリコン粒子の粒子サイズが小さい場合、そのバンドギャップエネルギーは大きくなり、短波長側に波長を有する発光色が得られることになる。
各発光色に対するナノシリコン粒子の粒子サイズの目安については、赤色発光を示すナノシリコ粒子の粒子サイズは、2.5~3.5nmの範囲であり、緑色発光を示すナノシリコン粒子の粒子サイズは、2.0~2.5nmの範囲であり、青色発光を示すナノシリコン粒子の粒子サイズは、1.5~2.0nmの範囲である。
また、各発光色の輝度は、紫外光から可視光までの光を照射することにより室内照明下において肉眼ではっきりと確認することができる程度に強く、しかも、その発光寿命は、長期でかつ安定している。
このように、本発明においては、血液中において、高輝度でかつ安定した赤色から青色までの領域で蛍光発光し、環境・人体に対し無毒・無害のナノシリコン粒子を含有した溶解錠剤を、固体シリコン(例、シリコンウェーハー)を原料とし、(a)フッ酸、硝酸、酢酸、及び、純水の混合溶液による溶液処理、又は、(b)高周波スパッタリング法、熱処理、フッ酸水溶液処理、溶液処理、及び、攪拌処理を用いた製造プロセスで得ることができる。
さらに、温熱処理を用いることにより、ナノシリコン粒子の表面に、薬剤や多糖・蛋白質などの高分子化合物を容易に付着させることができる。
本発明のナノシリコン含有溶解錠剤は、生体内の病原部位の可視化計測や、癌治療に係る医学分野において、バイオイメージングやDDSとして有効に用いることができるものである。
【実施例】
【0006】
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例の条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
[実施例1]
錠剤の発光特性を確認する実施例である。図9に、本発明で作製したナノシリコン(粒子サイズ:2.5~3.5nm)含有溶解錠剤に、直接、紫外光線を照射したときの発光態様を示す。
図9に示すように、ナノシリコン含有錠剤は、室内照明下において肉眼ではっきりと確認することができる輝度の赤色を蛍光発光している。しかも、発光寿命も、長期でかつ安定していることを確認することができた。
図10に、紫外光線を照射したときのナノシリコン含有溶解錠剤の蛍光発光スペクトルを示す。図10により、錠剤内のナノシリコン粒子から、波長:660nmにピークを有する赤色が蛍光発光していることを確認することができる。
図11に、本発明で作製したナノシリコン含有溶解錠剤を生理食塩水に投入して錠剤を溶解し、ナノシリコン粒子を分散させた生理食塩溶液に、直接、紫外光線を照射したときの発光態様を示す。
図11に示すように、生理食塩溶液内に分散したナノシリコン粒子は、室内照明下において肉眼ではっきりと確認することができる輝度の赤色を蛍光発光している。しかも、発光寿命も、長期でかつ安定していることを確認することができた。
図12に、紫外光線を照射したときの生理食塩溶液の蛍光発光スペクトルを示す。生理食塩溶液内に分散したナノシリコン粒子から、錠剤内に内蔵されていた状態の時と同様に、波長:660nmにピークを有する赤色を蛍光発光していることを確認することができる。
[実施例2]
本発明のナノシリコン粒子が、動物の生体内において流動するとともに蛍光発光する様子を観察した実施例である。
図13に、本発明のナノシリコン含有溶解錠剤を生理食塩水に溶解し、同溶液内に分散したナノシリコン粒子を、動物(羊)の冠動脈に、直接、流動させた状態での発光態様を示す。
この生体内流動観察は、動物(羊)を開腹した状態で、外部から、直接、紫外光線を照射しながら行った。
図13から、ナノシリコン粒子が、冠動脈で流動している時においても、ナノシリコン粒子は、室内照明下で肉眼でもはっきりと確認することができる輝度の赤色を蛍光発光していることが解る。しかも、発光寿命も、長期でかつ安定していることを確認することができた。
図14に、冠動脈への流動時におけるナノシリコン粒子の蛍光発光スペクトルを示す。図14から、冠動脈中でのナノシリコン粒子は、錠剤や溶液内に含有されていた状態の時と同様に、波長:660nmにピークを有する赤色を蛍光発光していることを確認することができる。
この生体内流動観察は、冠動脈以外にも、マウスやラットの各部位(小腸壁、皮下)において流動させた状態でも行った。その結果、動物の各部位において、ナノシリコン粒子から高輝度でかつ安定的な赤色が蛍光発光していることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0007】
本発明のナノシリコン含有溶解錠剤は、生体内に注入されると、錠剤が溶解し、溶解後に現出したナノシリコン粒子が、血液中において、高輝度でかつ安定したフルカラー(赤色、緑色、青色)の蛍光発光を呈する。
そして、ナノシリコン粒子は、環境や生体に対し優しく、かつ、安価な材料から製造することができるから、バイオイメージングやDDSの機能を有する溶解錠剤の開発を促進し、生体内の各部位の観察や癌治療に係る技術の発展に貢献する。
また、本発明のナノシリコン含有溶解錠剤は、表面に、薬剤や多糖・蛋白質などの高分子化合物が付着しているので、可視化した病原部位(例えば、癌細胞)を、そのまま治療することができる。
溶解材料としては、塩化ナトリウム粉末の他、応用分野によっては、鎮静就眠薬などの医薬品として使用されている臭化カリウム粉末を使用することもできる。
塩化ナトリウムや臭化カリウムでナノシリコン粒子を包囲した錠剤においては、使用直前に、純水やエタノールなどの溶液中で塩化ナトリウムや臭化カリウムを溶解し、溶解後に現出したナノシリコン粒子を、作製直後の状態で使用することができる。
したがって、本発明は、病原部位の計測技術や治療技術、さらに、その他の技術分野で、利用可能性が大きいものである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図6】
4
【図7】
5
【図8】
6
【図10】
7
【図12】
8
【図14】
9
【図5】
10
【図9】
11
【図11】
12
【図13】
13